JP2975414B2 - 獣毛の溶解加工法 - Google Patents
獣毛の溶解加工法Info
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- JP2975414B2 JP2975414B2 JP2248456A JP24845690A JP2975414B2 JP 2975414 B2 JP2975414 B2 JP 2975414B2 JP 2248456 A JP2248456 A JP 2248456A JP 24845690 A JP24845690 A JP 24845690A JP 2975414 B2 JP2975414 B2 JP 2975414B2
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Description
【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、獣毛の溶解加工法に関する。
従来の技術 近年、獣毛の用途として、本来の衣料用途のほかに、
高機能性物質としての用途が各方面から注目されるよう
になり、例えば、重金属類の捕捉剤、化粧品や食料品の
添加剤、毛髪栄養剤、衣料の改良剤、抗血栓剤等として
使用されており、さらに広範な用途が期待されている。
高機能性物質としての用途が各方面から注目されるよう
になり、例えば、重金属類の捕捉剤、化粧品や食料品の
添加剤、毛髪栄養剤、衣料の改良剤、抗血栓剤等として
使用されており、さらに広範な用途が期待されている。
このような用途に対しては、繊維状形態の獣毛はその
ままでは不適当で、粉砕処理または溶解加工処理に付さ
なければならない。
ままでは不適当で、粉砕処理または溶解加工処理に付さ
なければならない。
粉砕処理法としては、直接機械的に粉砕する方法、還
元剤等を用いて前処理した後、粉砕する方法および凍結
状態で粉砕する方法が挙げられるが、いずれの場合も粉
砕装置が大掛であったり、達成できる粒度に限度があ
り、完全な粉砕は極めて困難である。
元剤等を用いて前処理した後、粉砕する方法および凍結
状態で粉砕する方法が挙げられるが、いずれの場合も粉
砕装置が大掛であったり、達成できる粒度に限度があ
り、完全な粉砕は極めて困難である。
溶解加工処理法としては、（ｉ）獣毛のジスルフィド
結合を還元切断して溶解した後、蛋白質成分を抽出する
方法、（ii）獣毛を酸化剤で処理した後、アルカリ溶液
中で溶解する方法、および（iii）獣毛に親水性基を導
入して溶解する方法等が知られている。
結合を還元切断して溶解した後、蛋白質成分を抽出する
方法、（ii）獣毛を酸化剤で処理した後、アルカリ溶液
中で溶解する方法、および（iii）獣毛に親水性基を導
入して溶解する方法等が知られている。
しかしながら、（ｉ）の方法においては、溶解性が悪
く、溶解助剤を必要とし、溶解時間もかなり長くなり、
また、透析法または酸性下でのゲル濾過法によって得ら
れる蛋白質ゲルは親水性がかなり高く、水相からの分離
に長時間を要するだけでなく、分離されたゲルのチオー
ル基が再酸化されるという保存上の問題があり、（ii）
の方法においては、溶解に長時間を必要とし、相当量の
未溶解物が残存するだけでなく、蛋白質の抽出にも長時
間を要し、（iii）の方法においては、溶解時間は比較
的短時間であるが、得られる蛋白質が親水性基によって
化学装飾されるために変性するという問題がある。
く、溶解助剤を必要とし、溶解時間もかなり長くなり、
また、透析法または酸性下でのゲル濾過法によって得ら
れる蛋白質ゲルは親水性がかなり高く、水相からの分離
に長時間を要するだけでなく、分離されたゲルのチオー
ル基が再酸化されるという保存上の問題があり、（ii）
の方法においては、溶解に長時間を必要とし、相当量の
未溶解物が残存するだけでなく、蛋白質の抽出にも長時
間を要し、（iii）の方法においては、溶解時間は比較
的短時間であるが、得られる蛋白質が親水性基によって
化学装飾されるために変性するという問題がある。
発明が解決しようとする課題 この発明は、獣毛の加工処理に係わる前記の諸問題を
解決し、複雑な操作や特殊な装置を必要とすることな
く、獣毛繊維を短時間で加工処理できる方法を提供する
ためになされたものである。
解決し、複雑な操作や特殊な装置を必要とすることな
く、獣毛繊維を短時間で加工処理できる方法を提供する
ためになされたものである。
課題を解決するための手段 即ちこの発明は、獣毛はpH8〜９の弱アルカリ性の液
状媒体中において、20％以上の過酸化水素の存在下で溶
解させることを特徴とする獣毛の溶解加工法に関する。
状媒体中において、20％以上の過酸化水素の存在下で溶
解させることを特徴とする獣毛の溶解加工法に関する。
本発明を適用し得る獣毛な典型的には羊毛でありその
他アルパカ、モヘア、アンゴラ、カシミア等が例示され
るが、これらに限定されるものではない。
他アルパカ、モヘア、アンゴラ、カシミア等が例示され
るが、これらに限定されるものではない。
本発明に使用し得る液状媒体としては水、アルコール
類（例えば、メタノール、エタノール、プロパノール
等）等が例示され、これらは所望により２種以上の混合
媒体として使用してもよい。
類（例えば、メタノール、エタノール、プロパノール
等）等が例示され、これらは所望により２種以上の混合
媒体として使用してもよい。
獣毛の溶解媒体の弱アルカリ領域へのpH調整剤として
はアンモニア、アミン類、アルカリ金属水酸化物、アル
カリ金属炭酸塩等が例示され、これらは使用する溶解媒
体の種類等に応じて適宜選定すればよい。
はアンモニア、アミン類、アルカリ金属水酸化物、アル
カリ金属炭酸塩等が例示され、これらは使用する溶解媒
体の種類等に応じて適宜選定すればよい。
溶解媒体のpHは通常は４〜12、好ましくは８〜９であ
る。溶解媒体のpHが11よりも大きくなると、主鎖のポリ
ペプタイド結合の分解が必要以上に起こりアミノ酸にま
で分解してしまう。結果として羊毛タンパク質としての
収率が低下する。また、pHが７よりも小さくなると過酸
化水素の分解反応が進みにくく、発熱も不充分で羊毛の
溶解に時間がかかり、又加温が必要であったり、鉄，銅
イオン等の過酸化水素分解促進剤の添加が必要となった
りする。
る。溶解媒体のpHが11よりも大きくなると、主鎖のポリ
ペプタイド結合の分解が必要以上に起こりアミノ酸にま
で分解してしまう。結果として羊毛タンパク質としての
収率が低下する。また、pHが７よりも小さくなると過酸
化水素の分解反応が進みにくく、発熱も不充分で羊毛の
溶解に時間がかかり、又加温が必要であったり、鉄，銅
イオン等の過酸化水素分解促進剤の添加が必要となった
りする。
本発明に使用する過酸化水素には、安価で、取扱い易
く、獣毛溶解後の後処理が容易で、溶解物中に有害成分
を残存させない等の利点がある。
く、獣毛溶解後の後処理が容易で、溶解物中に有害成分
を残存させない等の利点がある。
過酸化水素の濃度は通常は20％以上、好ましくは25〜
35％であり、10％以下の場合には一般に本発明の所期の
目的を達成できない。
35％であり、10％以下の場合には一般に本発明の所期の
目的を達成できない。
本発明による獣毛の溶解化機構は完全には解明されて
いないが、次の様にして考えられている。即ち、獣毛ケ
ラチンのジスルフィド結合に対する酸化剤の作用によっ
て該ジスルフィド結合が開裂し、１個のシスチンから２
個のシステイン酸を生成する。このときの反応熱および
生成したシステイン酸側鎖の電子吸引的作用によって、
該ジスルフィド結合に隣接する主鎖のペプチド結合が切
断され、これによって獣毛はケラトースの形態で可溶化
する。得られるケラトースの大きさはかなり広範囲であ
るが、主成分の分子量は数千から数十万の範囲である。
いないが、次の様にして考えられている。即ち、獣毛ケ
ラチンのジスルフィド結合に対する酸化剤の作用によっ
て該ジスルフィド結合が開裂し、１個のシスチンから２
個のシステイン酸を生成する。このときの反応熱および
生成したシステイン酸側鎖の電子吸引的作用によって、
該ジスルフィド結合に隣接する主鎖のペプチド結合が切
断され、これによって獣毛はケラトースの形態で可溶化
する。得られるケラトースの大きさはかなり広範囲であ
るが、主成分の分子量は数千から数十万の範囲である。
獣毛の溶解性は過酸化水素の濃度および溶解媒体の種
類等によって左右されるが、一般的に溶解時間は、約0.
1〜1.0時間である。
類等によって左右されるが、一般的に溶解時間は、約0.
1〜1.0時間である。
例えば、35％過酸化水素水とアンモニアを用いてpHを
約８に調整した処理水を用いる場合には、獣毛を浸漬す
ると約100℃近くまで自然に昇温し、１時間以内に溶解
は完了し、未溶解物はほとんど残存しない。
約８に調整した処理水を用いる場合には、獣毛を浸漬す
ると約100℃近くまで自然に昇温し、１時間以内に溶解
は完了し、未溶解物はほとんど残存しない。
上記の溶解処理によって得られるケラチン溶液は比較
的安定で、常温下でも数週間は保存可能である。
的安定で、常温下でも数週間は保存可能である。
上記ケラチン溶液のpHは通常4.5〜6.5であり、そのま
まあるいは、pHを適当に調整した後、アクリル系コポリ
マー等各種高分子モノマーとの反応成分として利用でき
る。また、上記ケラチン溶液に、過酸化水素分解酵素を
作用させて、マニキュアや整髪料等の化粧品の配合成分
として利用できる。
まあるいは、pHを適当に調整した後、アクリル系コポリ
マー等各種高分子モノマーとの反応成分として利用でき
る。また、上記ケラチン溶液に、過酸化水素分解酵素を
作用させて、マニキュアや整髪料等の化粧品の配合成分
として利用できる。
また上記ケラチン溶液に架橋剤として例えば酢酸亜鉛
を添加して、抗菌性材料として利用できる。
を添加して、抗菌性材料として利用できる。
さらに上記ケラチン溶液に酢酸等の酸を添加すること
によって得られるゲル状析出物は金属イオンの吸着剤と
して利用でき、また該ゲル状析出物をアルコールやアセ
トン等極性溶媒と混合することによって得られる粉末は
化粧品のほか各種工業的処理剤、例えば塗料等の配合成
分として利用できる。
によって得られるゲル状析出物は金属イオンの吸着剤と
して利用でき、また該ゲル状析出物をアルコールやアセ
トン等極性溶媒と混合することによって得られる粉末は
化粧品のほか各種工業的処理剤、例えば塗料等の配合成
分として利用できる。
さらにまた、該ケラチン溶液の製膜処理（例えばポリ
アミド系プレポリマーとのブレンド）によって得られる
膜は吸着性機能膜等として利用できる。
アミド系プレポリマーとのブレンド）によって得られる
膜は吸着性機能膜等として利用できる。
以下、本発明を実施例によって説明する。
実施例１ アンモニア水を用いてpHを８に調整した35％過酸化水
素水1000mlに、羊毛トップ（メリノー種）200gを浸漬し
た。15分後に過酸化水素の激しい分解反応が起こり、約
100℃まで昇温し、羊毛は１時間でほぼ完全に溶解し、p
H5.8の羊毛溶液が得られた。
素水1000mlに、羊毛トップ（メリノー種）200gを浸漬し
た。15分後に過酸化水素の激しい分解反応が起こり、約
100℃まで昇温し、羊毛は１時間でほぼ完全に溶解し、p
H5.8の羊毛溶液が得られた。
該羊毛溶液を１時間放置し、液温が40〜50℃になった
後、ステンレス製フィルター（100メッシュ）を用いる
濾過処理に付し、羊毛懸濁液約1200mlを得た。不溶残渣
は約0.5gであった。
後、ステンレス製フィルター（100メッシュ）を用いる
濾過処理に付し、羊毛懸濁液約1200mlを得た。不溶残渣
は約0.5gであった。
該羊毛懸濁液のpHを酢酸を用いて約３まで下げること
によってゲル状析出物を得た。
によってゲル状析出物を得た。
該ゲル状析出物をエタノール4000mlに加えた後、5A濾
紙を用いる吸引濾過処理に付し、濾過物をアセトンを用
いて数回洗浄し、次いで80℃で乾燥することによって羊
毛粉末を約170g得た。
紙を用いる吸引濾過処理に付し、濾過物をアセトンを用
いて数回洗浄し、次いで80℃で乾燥することによって羊
毛粉末を約170g得た。
該羊毛粉末は乳鉢を用いて粒径約１〜10μの微粉末に
粉砕した。
粉砕した。
発明の効果 この発明によれば、複雑な操作や特殊な装置を必要と
することなく獣毛を短時間で溶解加工することができ、
これによって得られるケラチン溶液および該溶液の水不
溶化処理によって得られるゲル状物、粉体または皮膜は
化粧品や食料品の添加剤、工業的処理剤や原料の配合成
分、医用材料分野での応用等として極めて広範囲の分野
において利用できる。
することなく獣毛を短時間で溶解加工することができ、
これによって得られるケラチン溶液および該溶液の水不
溶化処理によって得られるゲル状物、粉体または皮膜は
化粧品や食料品の添加剤、工業的処理剤や原料の配合成
分、医用材料分野での応用等として極めて広範囲の分野
において利用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−82450（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−35885（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−247477（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.6，ＤＢ名) C08H 1/06
Claims (4)
- 【請求項１】獣毛をpH8〜９の弱アルカリ性の液状媒体
中において、20％以上の過酸化水素の存在下で溶解させ
ることを特徴とする獣毛の溶解加工法。 - 【請求項２】溶解によって得られるケラチン溶液をゲル
化処理、粉末化処理または製膜化処理に付す請求項１記
載の獣毛の溶解加工法。 - 【請求項３】請求項１記載の方法によって得られるケラ
チン溶液。 - 【請求項４】請求項２記載の方法によって得られるゲル
状物、粉末または膜。
Priority Applications (6)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2248456A JP2975414B2 (ja) | 1990-09-17 | 1990-09-17 | 獣毛の溶解加工法 |
| NZ23979091A NZ239790A (en) | 1990-09-17 | 1991-09-13 | Solubilisation of hair, and preparation of keratin powder |
| DE69111346T DE69111346T2 (de) | 1990-09-17 | 1991-09-14 | Verfahren zur Behandlung von Tierhaaren durch Solubilisation. |
| EP19910115649 EP0476557B1 (en) | 1990-09-17 | 1991-09-14 | A process for treating animal hairs by means of solubilization |
| AU84536/91A AU642530B2 (en) | 1990-09-17 | 1991-09-17 | A process for treating animal hairs by means of solubilization |
| US07/993,522 US5276138A (en) | 1990-09-17 | 1992-12-16 | Process for solubilizing animal hair |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2248456A JP2975414B2 (ja) | 1990-09-17 | 1990-09-17 | 獣毛の溶解加工法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH04126724A JPH04126724A (ja) | 1992-04-27 |
| JP2975414B2 true JP2975414B2 (ja) | 1999-11-10 |
Family
ID=17178407
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2248456A Expired - Fee Related JP2975414B2 (ja) | 1990-09-17 | 1990-09-17 | 獣毛の溶解加工法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2975414B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP3413315B2 (ja) | 1995-08-10 | 2003-06-03 | 倉敷紡績株式会社 | 吸汗発散性を改質したポリウレタン繊維含有繊維製品およびその製造法 |
-
1990
- 1990-09-17 JP JP2248456A patent/JP2975414B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH04126724A (ja) | 1992-04-27 |
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