JP2807212B2 - 非線形素子および双安定メモリ装置 - Google Patents

非線形素子および双安定メモリ装置

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JP2807212B2 JP8125608A JP12560896A JP2807212B2 JP 2807212 B2 JP2807212 B2 JP 2807212B2 JP 8125608 A JP8125608 A JP 8125608A JP 12560896 A JP12560896 A JP 12560896A JP 2807212 B2 JP2807212 B2 JP 2807212B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トンネリング現象
を利用した非線形素子の改良およびこの改良された非線
形素子を用いて構成される双安定メモリ装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来より、2つの導電層の間に電子の移
動可能な導電レベルよりも高いバリアレベルを有する絶
縁膜を介在させた場合にも、一方の導電層から他方の導
電層にある確率で電子が移動するというトンネリング現
象が知られている。その場合、2つの導電層間に電圧を
印加し、その電圧を増大させていくほど電子の移動確率
が高くなり、2つの導電層間に流れる電流が増加する。
また、2つの導電層間に印加する電圧がある程度以上に
なると、絶縁膜のバリアレベルが実質的に低くなって拡
散電流やFNトンネリングが生じ、電流が増加する。こ
のような電圧の増大に対して電流が単純に増加する電圧
−電流特性は、一般的な導電膜−絶縁膜−導電膜構造の
間に見られる基本的な特性である。
【0003】ところで、このトンネリングを利用して、
電圧の増大に対して電流が単純に増加しないという非線
形特性を有するいわゆる非線形素子も知られている。例
えばトンネルダイオードはその代表的なものであって、
半導体のpn接合部の両側のp型半導体層及びn型半導
体層の不純物濃度を十分高くして空乏層の幅を小さくし
ておき、pn接合部に順方向の電圧を印加していくと、
ある電圧で電流値が極大となるが、それ以上電圧を上げ
ると電流値が逆に減小し(負性抵抗)、さらに電圧を上
げていくと再び電流値が上昇していく現象を利用したも
のである。すなわち、ある電圧範囲で、n型半導体層の
伝導帯とp型半導体層の価電子帯とが同じエネルギー準
位になってトンネリングが生じる現象を利用したもので
ある。そして、このトンネルダイオードは、そのスイッ
チング速度が速い等の優れた特性を有することから、双
安定のマルチバイブレータや高速論理回路等に応用され
ている。
【0004】一方、最近のようにGHz以上の高周波信
号に応じたより高速に作動する素子や、数ボルト程度の
低電圧で動作する素子が要求されるようになると、従来
のトンネルダイオードでは、その機能に限界がある。
【0005】そこで、最近では、共鳴トンネリング現象
を利用した新たな素子が提案されている。例えば、特開
平3−148183号公報に開示されるように、2つの
化合物半導体層であるInAs基板の間に絶縁膜である
InAs酸化膜を介在させて、両側のInAs基板の三
角ポテンシャルによる量子準位が互いに一致したときに
生じる共鳴トンネリングを利用して、電圧−電流特性中
に非線形部分を有する半導体装置が提案されている。こ
のような構造は、2つのInAs基板上にInAs酸化
膜を形成し、両者を張り合わせることにより実現できる
ことが同公報には記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報のように2つの化合物半導体層の間に単に絶縁膜を挟
んで生じる共鳴トンネリング現象を利用するものでは、
以下のような問題があった。
【0007】第1に、化合物半導体層の三角ポテンシャ
ルによる量子準位間で生じる共鳴トンネリングはフォノ
ン散乱を伴ったものであるので、電子の移動確率が極め
て小さい。つまり、厚い絶縁膜の両側に電圧を印加した
ときに生じるトンネリングによる電子の移動確率と余り
変わらない。そのために、電圧−電流特性中に現れる非
線形性の程度は極めて小さく、応用範囲が限定されてし
まう。
【0008】第2に、半導体層の三角ポテンシャルによ
る量子準位は、印加される電圧の大小によって変化しや
すく、少し高めの電圧を印加すると三角ポテンシャルが
形成できなくなって、量子準位が消滅する。そのため、
共鳴トンネリングは生じなくなる。
【0009】第3に、化合物半導体を利用した場合に
は、高速動作を確保することはできるものの、製造コス
トが高くなり、応用分野が限定される。また、同公報に
記載される製造方法では、半導体集積回路上にトランジ
スタと共に搭載するのは困難である。つまり、一般的な
MIS型トランジスタの製造プロセスで安価に形成可能
な非線形素子が要望される。
【0010】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、遷移金属等の元素においては、ある
殻における空の電子軌道を満たすためのエネルギ準位が
比較的低い点に着目し、この空の電子を満たすためのエ
ネルギ準位と電子を供与する層との間で共鳴トンネリン
グを行なわせる構造を実現することにより、集積回路内
への搭載が容易で、高速かつ低電圧で動作する低消費電
力の非線形素子および双安定メモリ装置を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、請求項1〜10に記載される非線形素
子に係る手段と、請求項11〜19に記載される双安定
メモリ装置に係る手段とを講じている。
【0012】請求項1に係る非線形素子は、第1のフェ
ルミ準位を有する第1の導電層と、電圧を印加しない状
態では上記第1のフェルミ準位と同じエネルギ準位に第
2のフェルミ準位を有する第2の導電層と、上記第1の
導電層と第2の導電層との間に介設され、少なくとも電
圧が印加されていない状態で上記各導電層のフェルミ準
位よりも高いエネルギ準位にバリアレベルを有する絶縁
層と、上記絶縁層内に形成され、電子で満たされていな
い空の軌道をいずれかの殻内に有する不純物元素を有
し、上記空の軌道を満たすためのエネルギ準位である不
純物準位が上記第1のフェルミ準位よりも高くかつ上記
バリアレベルよりも低い不純物層とを備え、上記第1の
導電層と上記第2の導電層との間に所定の電圧を印加し
たときに、上記第1及び第2の導電層のうち低電位側の
導電層と上記絶縁層内の不純物層との間に共鳴トンネリ
ングによる電子の移動が生じるように構成されている。
【0013】この構成により、電圧の増大に伴い低電位
側の導電層のフェルミ準位と不純物準位とが合ってくる
と、低電位側の導電層から不純物層に共鳴トンネリング
によって電子が移動し、その電子がさらに不純物層から
他方の導電層に移動する。つまり、第1の導電層と第2
の導電層との間の電圧−電流特性には、ある電圧範囲で
電流が急激に増加するという非線形領域が存在すること
になる。
【0014】このような共鳴トンネリングによる電子の
移動は高速であり、抵抗も極めて小さいので消費電力も
小さい。そして、電圧を印加しない状態では、不純物準
位が各導電層のフェルミ準位よりも高いので、共鳴トン
ネリング以外のトンネリングは生じがたい。また、この
共鳴トンネリングを生ぜしめるための所定電圧は、各導
電層のフェルミ準位と不純物準位との調整,つまり各導
電層の材料と不純物元素の種類の選択によって低く設定
することも可能である。したがって、簡素な構成を有
し、消費電力が小さく,高速かつ低電圧で動作する非線
形素子が得られることになる。
【0015】請求項2に係る非線形素子は、請求項1に
おいて、上記第1及び第2の導電層のうちいずれか一方
を半導体で構成し、他方を金属で構成したものである。
【0016】請求項3に係る非線形素子は、請求項2に
おいて、上記不純物層を上記半導体で構成されている導
電層に近接して形成したものである。
【0017】これらの構成により、上記2つの導電層の
間に電圧を印加し、金属で構成される導電層に高電位側
電圧を印加して電圧を上昇させていくと、金属で構成さ
れる導電層のフェルミ準位が低下しそれに伴い不純物準
位も低下する。そして、半導体で構成される低電位側の
導電層のフェルミ準位と不純物準位とが合ってくると共
鳴トンネリングが生じ、電流値が急激に増大する。電圧
をさらに増大すると、不純物準位が半導体で構成される
導電層のフェルミ準位よりも低くなっていくので、共鳴
トンネリングが生じなくなり、電流が減小する。電圧が
さらに増大して絶縁層のバリアレベルが実効的に低くな
ると、拡散電流やFNトンネリングが生じて電流値が増
大する。一方、金属で構成される導電層に低電位側電圧
を印加しその電圧を増大させると、共鳴トンネリングを
生じた後はほぼ一定の電流が流れ、その後電圧の増大と
共に電流が増加する。
【0018】したがって、半導体で構成される導電層に
低電位側電圧が印加されるときを正の電圧と定義する
と、ある範囲の正の電圧において、共鳴トンネリングに
よって電流が極大となった後電圧の上昇にともない電流
値が減小するという負性抵抗を示す範囲が存在する。し
かも、半導体層(第1の導電層)−絶縁層−金属層(第
2の導電層)という構造はMIS構造であり、多数のト
ランジスタを搭載した半導体集積回路内に実現できる。
すなわち、MIS構造中の絶縁層に不純物層を形成する
ことにより、従来のMIS構造や化合物半導体層を利用
した構造では実現できなかった負性抵抗を示す非線形素
子を半導体集積回路内に組み込むことが可能となる。
【0019】請求項4に係る非線形素子は、請求項1に
おいて、上記第1及び第2の導電層をいずれも金属で構
成したものである。
【0020】この構成により、いずれかの導電層に正の
電圧を印加してその電圧を上昇させていくといくと、共
鳴トンネリングを生じた後は電流がほぼ一定となり、そ
の後、再び電流が増大する。したがって、ある電圧範囲
で電流値が一定となる特性を有する非線形素子が得られ
る。また、このようなMIM構造は、1層ポリシリコン
プロセスや、2層ポリシリコンプロセスで形成される半
導体集積回路内に容易に実現できる構造である。
【0021】請求項5に係る非線形素子は、請求項1に
おいて、上記第1及び第2の導電層をいずれも半導体で
構成したものである。
【0022】この構成により、各導電層における半導体
内の不純物の導電型と不純物濃度とを適宜調整すること
により、一方の導電層に対する電圧が正及び負のいずれ
においても、負性抵抗を示す電圧範囲が存在する電圧−
電流特特性を示す非線形素子が得られることになる。
【0023】請求項6に係る非線形素子は、請求項1に
おいて、上記不純物元素のイオン化傾向が上記絶縁層を
構成する材料のイオン化傾向よりも大きい構成を有して
いる。
【0024】この構成により、電子が絶縁層に吸収され
ることなく導電層から不純物層に移動するので、共鳴ト
ンネリング作用が確実に得られることになる。
【0025】請求項7に記載されるように、請求項1に
おいて、製造の容易性及び安定性を考慮すると、上記絶
縁層は、酸化物,窒化物及び弗化物のうち少なくともい
ずれか1つによって構成することが好ましい。
【0026】請求項8に記載されるように、請求項1,
6又は7において、上記不純物元素は遷移金属とするの
が好ましい。
【0027】遷移金属は、d殻又はf殻内に電子で満た
されていない軌道を有する金属であり、1価と2価、2
価と3価のように複数種類の陽イオンとなる。そして、
それらの価数が異なる陽イオン間のエネルギギャップは
小さい。したがって、ある陽イオンから他の陽イオンへ
の移行を利用して、共鳴トンネリングが生じる電圧と共
鳴トンネリングが生じない電圧との差を小さくできる。
つまり、特に低電圧で電圧−電流特性中に非線形特性を
生ぜしめることができるので、半導体集積回路内に組み
込むのに適した非線形素子が得られる。
【0028】請求項9に記載されるように、請求項1に
おいて、上記不純物層が上記絶縁層内に不純物元素のイ
オンを注入することにより形成されていて、上記絶縁層
の厚み方向における上記不純物層の位置及び厚みと、上
記不純物層内における不純物元素の濃度とがイオン注入
時の条件によって調整されている構成を有していること
が好ましい。
【0029】この構成により、確実に非線形特性を発揮
するために必要な不純物層が絶縁層内に容易に形成され
る。
【0030】ただし、請求項10に記載されるように、
請求項1において、上記絶縁層及び不純物層が共にCV
Dにより形成されており、上記不純物層の位置及び厚み
と上記不純物層内における不純物元素の濃度とがCVD
時の条件によって調整されている構成としてもよい。
【0031】請求項11に係る双安定メモリ装置は、高
電位側の第1の電源と低電位側の第2の電源との間に、
負荷素子と駆動素子とを上記第1電源側から順次直列に
介設してなる双安定メモリ装置であって、上記駆動素子
は、第1のフェルミ準位を有する第1の導電層と、電圧
を印加しない状態では上記第1のフェルミ準位と同じエ
ネルギ準位に第2のフェルミ準位を有し、上記負荷素子
に接続される第2の導電層と、上記第1の導電層と第2
の導電層との間に介設され、少なくとも電圧が印加され
ていない状態で上記各導電層のフェルミ準位よりも高い
エネルギ準位にバリアレベルを有する絶縁層と、上記絶
縁層内に形成され、電子で満たされていない空の軌道を
いずれかの殻内に有する不純物元素を有し、上記空の軌
道を満たすためのエネルギ準位である不純物準位が上記
第1のフェルミ準位よりも高くかつ上記バリアレベルよ
りも低い不純物層とを備え、かつ上記第1の導電層と上
記第2の導電層との間に電圧を印加しながらその電圧を
増大していったときに、ある電圧範囲で上記第1の導電
層と不純物層との間における共鳴状態から非共鳴状態へ
の移行に伴う負性抵抗特性を生じるように構成されてい
て、上記駆動素子と負荷素子との間の中間点の電位は、
上記駆動素子及び負荷素子の各電圧−電流特性曲線の交
点に一致する少なくとも2つの安定点の電位のうちいず
れか一方である。
【0032】この構成により、共鳴トンネリング現象に
よって生じる負荷抵抗特性を有する非線形素子を利用し
て、2つの安定点にある状態を0又は1データとして記
憶させることが可能になる。すなわち、SRAMに相当
する双安定メモリ装置が極めて少ない素子数で構成され
ることになる。
【0033】請求項12に係る双安定メモリ装置は、請
求項11において、上記駆動素子の上記第1の導電層を
半導体で構成し、上記駆動素子の上記第2の導電層を金
属で構成したものである。
【0034】請求項13に係る双安定メモリ装置は、請
求項12において、上記駆動素子の上記不純物層を上記
第1の導電層よりも上記第2の導電層に近い側に形成し
たものである。
【0035】これらの構成により、請求項2又は3の作
用により、駆動素子がある電圧範囲で負性抵抗特性を示
すようになるので、駆動素子の電圧−電流特性曲線と負
荷素子の電圧−電流特性曲線との間に2つの安定な交点
を得るように駆動素子及び負荷素子の特性を調整するこ
とが容易となる。
【0036】請求項14に係る双安定メモリ装置は、請
求項12又は13において、上記負荷素子を、上記駆動
素子と同じ構造からなる第1の導電層,第2の導電層,
絶縁層及び不純物層により構成したものである。
【0037】この構成により、同じ半導体基板上に同じ
構造を有する2つの非線形素子を形成することで、双安
定メモリ装置が得られる。そして、駆動素子も負荷素子
もMIS構造を有しているので、半導体集積回路に搭載
し得る量産に適した双安定メモリ装置を得ることができ
る。
【0038】請求項15に係る双安定メモリ装置は、請
求項14において、上記負荷素子の上記第1の導電層を
上記第1電源に接続し、上記負荷素子の第2の導電層を
上記駆動素子の第2の導電層に接続したものである。
【0039】この構成により、負荷素子の第1の導電層
側に高電位電圧が印加されるので、負荷素子の電圧−電
流特性曲線のうち電圧が負の部分が負荷曲線となる。し
たがって、電圧の負側への増大に対して電流がほぼ一定
となる部分を有する負荷曲線と負性抵抗を有する駆動素
子の電圧−電流特性との交点のうち微係数が正の2つの
交点が双安定点となる。
【0040】請求項16に係る双安定メモリ装置は、請
求項14において、上記負荷素子の上記第2の導電層を
上記第1電源に接続し、上記負荷素子の第1の導電層を
上記駆動素子の第2の導電層に接続したものである。
【0041】この構成により、負荷素子の第2の導電層
側に高電位電圧が印加されるので、負荷素子の電圧−電
流特性曲線のうち電圧が正の部分が負荷曲線となる。し
たがって、電圧の負側への増大に対して負性抵抗を示す
部分を有する負荷曲線と負性抵抗を有する駆動素子の電
圧−電流特性との交点のうち微係数が正の2つの交点が
双安定点となる。
【0042】請求項15又は16のいずれにおいても、
双安定点が確実に得られるので、双安定メモリ装置のデ
ータ保持機能が確実に発揮されることになる。
【0043】請求項17に係る双安定メモリ装置は、請
求項11において、上記駆動素子の上記第1及び第2の
導電層を半導体で構成したものである。
【0044】請求項18に係る双安定メモリ装置は、請
求項17において、上記負荷素子を、上記駆動素子と同
じ構造からなる第1の導電層,第2の導電層,絶縁層及
び不純物層により構成したものである。
【0045】この構成により、請求項15又は16と同
じ作用が生じるので、双安定点が確実に得られ、双安定
メモリ装置のデータ保持機能が確実に発揮される。
【0046】請求項19に係る双安定メモリ装置は、請
求項11において、上記負荷素子を抵抗体により構成し
たものである。
【0047】この構成により、駆動素子の電圧−電流特
性曲線の負性抵抗を示す部分と直線的な負荷曲線との交
点のうち微係数が正の2つの交点が双安定点となる。し
たがって、双安定点が確実に得られ、双安定メモリ装置
のデータ保持機能が確実に発揮される。
【0048】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)図1は、本実施形態に係る非線形素
子の構成を概略的に示す斜視図である。本実施形態の非
線形素子は、第1の導電層である半導体層10と、第2
の導電層である金属層12と、半導体層10と金属層1
2との間に介設された絶縁層11とを備えている。そし
て、絶縁層11内において上記半導体層10からは一定
の距離D1を隔て、かつ金属層12には極めて小さな距
離D2と隔てて近接する厚みTの領域に不純物原子が導
入された不純物原子層11aが形成されている。
【0049】図2は、半導体基板上に形成された具体的
な非線形素子20の構造を示す断面図である。同図に示
すように、p型シリコン基板21の上面付近の領域には
n型不純物を導入してなる半導体層であるn型拡散層2
2が形成されており、n型拡散層22の上にはSiO2
からなる絶縁層23が形成され、絶縁層23の上に金属
層である第1アルミニウム電極25が形成されている。
また、絶縁層23中には、不純物原子として鉄(Fe2
+)がドーピングされた不純物原子層23aが形成され
ている。この不純物原子層23aは、絶縁層23の上面
付近につまりn型拡散層22から離れかつ第1アルミニ
ウム電極23に極めて近接した位置に設けられている。
後に詳しく説明するように、鉄の2価イオン(Fe2+)
中の3d殻内には電子で満たされていない空の軌道が存
在し、不純物原子層23aは、その空の軌道に電子を満
たすためのエネルギ準位(以下、不純物準位という)を
有している。また、絶縁層23の一部に形成されたコン
タクトホール内及びその上方に連続してアルミニウムを
堆積してなる第2アルミニウム電極26が形成されてお
り、該第2アルミニウム電極26はn型拡散層22とオ
ーミック接触している。なお、各アルミニウム電極2
5,26間にはSiO2 からなるパッシベーション膜2
4が介在していて、p型シリコン基板21の裏面にはp
型ポリシリコンからなる裏面電極27が形成され、この
裏面電極27は接地されている。
【0050】ここで、各部の寸法について説明する。第
1アルミニウム電極25の厚さは2μm、絶縁層23の
厚みは5nmである。不純物原子層23aの不純物濃度
は1017cm-3程度であり、不純物原子層23aは絶縁
層23中においてn型拡散層22から3nm程度離れて
おり厚みが1nm程度である。つまり、第1アルミニウ
ム電極25とは1nm程度しか離れておらず極めて近接
している。なお、n型拡散層22中のn型不純物濃度は
1018cm-3である。
【0051】不純物原子層23a内の不純物原子である
鉄イオン(Fe2+)はイオン注入法により絶縁膜中に注
入されている。イオン注入を用いると、注入エネルギー
の調整により注入深さの制御が可能であるし、また、不
純物の注入量も正確に制御できる。この不純物の注入量
により電子が移動可能な原子の数も決まるため、この注
入量で電流量までも制御することができる。
【0052】ただし、不純物原子層23aをイオン注入
法以外の方法例えばCVD法やスパッタリング法等によ
って形成してもよい。また、不純物原子層23aは必ず
しも絶縁層23内に周囲を囲まれるように形成されてい
る必要はなく、絶縁層23の全面に亘って形成されてい
てもよい。
【0053】次に、本実施形態に係る非線形素子の基本
的な動作原理について説明する。
【0054】ここでは、図3(a)に示すように、非線
形素子の基本的な構造において、第1の導電層である半
導体層10と第2の導電層である金属層12との間に電
圧を印加した場合の電流の変化について説明する。その
際、金属層12側の電圧を高電位側としたときを正の電
圧として、図3(b)〜(d)及び図4を参照しなが
ら、各層を貫く電流と印加電圧との関係を説明する。図
3(b)〜(d)は、各層間の電圧を変化させた場合に
おける各層のエネルギー準位の関係の変化を示すバンド
図である。また、図4は、各層間における電圧Vの変化
に対する電流Iの変化を示す特性図である。
【0055】図3(b)に示すように、各層間の電圧が
ゼロの場合つまり電圧を印加しない自然状態では、半導
体層10のフェルミ準位EF1と金属層12のフェルミ準
位EF2とは平衡した状態にあり、不純物原子層11a
は、半導体層10及び金属層12のフェルミ準位よりも
高いところに不純物準位Evaを有している。この状態で
は、半導体層10から不純物原子層11aまで電荷が移
動することはほとんどなく、各層間に実質的に電流は流
れない。
【0056】しかし、正の電圧を少しずつ大きくしてい
くと、金属層12のフェルミ準位EF2が低下して、それ
に伴い不純物原子層11aの不純物準位Evaも低下す
る。そして、半導体層10のフェルミ準位EF1と不純物
原子層11aの不純物準位Evaとが近付くと、半導体層
10と不純物原子層11aの間でトンネリングが生じる
ためトンネル電流が増加していく。そして、図3(c)
に示すように、両電極間の電圧Vが所定値V0 のときに
不純物原子層11aの不純物準位Evaが半導体層10の
フェルミ準位EF1と一致すると、半導体層10から不純
物原子層11aに多数の電子が共鳴トンネリングにより
移動する(図4に示す範囲Ra1)。不純物原子層11a
から金属層12への電子の移動は容易であるので、いっ
たん共鳴トンネリングが生じると、両電極間には電流が
急激に流れ、極大値I0 を示す。
【0057】一方、図3(d)に示すように、さらに電
圧を大きくすると、不純物原子層11aの不純物準位E
vaと半導体層10のフェルミ準位EF1との位置にずれが
生じて、非共鳴状態になる。この状態でも、不純物原子
層11aから金属層12への電子の移動は容易である。
しかし、半導体層10から不純物原子層11aへの電子
の移動量が急激に減小するので、両電極間の電流が減少
する。これによって、この非線形素子では、ある電圧範
囲で電圧が増大するにつれて電流が減小するという負性
抵抗特性が観測されることになる(図4に示す範囲Ra
2)。
【0058】その後、電圧Vをさらに大きくしていく
と、半導体層10のフェルミ準位EF1と絶縁層11のバ
リアとの差が小さくなる。つまり、絶縁層11によるバ
リアの高さが実効的に低くなって拡散電流が流れるとと
もに、FNトンネリングも生じるようになるので再び電
流Iが増加する(図4に示す範囲Ra3)。
【0059】一方、負の電圧を印加した場合、つまり半
導体層10に高電位側の電圧を印加し、金属層12に低
電位側の電圧を印加して、この電圧を少しずつ大きくし
ていくと、金属層12のフェルミ準位EF2が高くなり半
導体層10のフェルミ準位EF1が低くなるので、金属層
12内の電子がトンネリングにより不純物原子層11a
(不純物準位Eva)を介して半導体層10へと流れ、当
初は図4の範囲Ra1とは逆の特性を示す。つまり、少し
ずつ負の電流Iが増加する(図4に示す範囲Ra4)。
【0060】さらに負の電圧を大きくしていくと、金属
層12のフェルミ準位EF2が高くなっていき、金属層1
2のフェルミ準位EF2と不純物原子層11aの不純物準
位Evaの一部とが合ってくると共鳴トンネリングが生じ
る。その際、金属層12内にはフェルミ準位EF2以下の
準位に存在する電子の量が多いため、いったん共鳴状態
になると、電子は一定量半導体層側へ流れて電流量Iは
一定となる(図4に示す範囲Ra5)。ただし、電流値は
不純物原子層11aの不純物準位Evaから半導体層10
への電子の移動確率によって規定され、不純物原子層1
1aとn型半導体層10との距離は比較的大きいので、
電流量Iはそれ程多くならない。
【0061】さらに負の電圧を大きくしていくと、金属
層12のフェルミ準位EF2に対する絶縁層11のバリア
が実質的に低くなり、かつFNトンネリングも生じるこ
とで、電流量Iは負の方向に増加していく(図4に示す
範囲Ra6)。
【0062】上述のように、本実施形態の非線形素子
は、半導体層10と金属層12との間に電圧Vが印加さ
れた場合、電圧Vが正の側では範囲Ra2において負性抵
抗特性を示し、それ以外の範囲Ra1,Ra3では電圧の増
大に応じて電流値が増加する特性を示す。一方、電圧V
が負の側では図4の範囲Ra5において電流値が一定とな
る特性を示し、それ以外の範囲Ra4,Ra6では電圧の増
大に応じて電流値が増加する特性を示す。つまり、本実
施形態に係る素子が非線形特性を有することがわかる。
【0063】次に、電圧を印加する具体的な方法につい
て説明する。図2に示すような半導体基板上に形成され
た非線形素子20については、半導体層であるn型拡散
層22と金属層である第1アルミニウム電極25との間
に電圧を印加するのであるが、実際には、第2アルミニ
ウム電極26を介してn型拡散層22に電圧を印加す
る。そして、第1アルミニウム電極25の電位が高電位
となるときの電圧を正の電圧とした場合、正の電圧を印
加すると電子はn型拡散層22から第1アルミニウム電
極25に、主として共鳴トンネリングによって流れる。
つまり、電流は第1アルミニウム電極25から第2アル
ミニウム電極26へと流れる。一方、負の電圧を印加し
た場合には、電流は第2アルミニウム電極26から第1
アルミニウム電極25へと流れることになる。
【0064】上述のように、本実施形態の非線形素子の
I−V特性(電流電圧特性)は負性抵抗を持つ半導体装
置として機能し、例えば図4に示すV−I特性におい
て、電流の極大値V0 が1ボルトのときに電流の極大値
I0 が1nAになるように設定することが可能となる。
すなわち、本実施形態における非線形素子はディスクリ
ートな量子準位に対するトンネル効果を利用したもので
あるので、従来のトンネルダイオードとは異なり、動作
電圧、動作電流も小さいので低消費電力の素子として機
能する。しかも、化合物半導体基板のような特殊な半導
体基板を使用しなくても、極めて高速動作が可能であ
り、例えばTHzオーダーのスイッチング素子としても
使用することができる。したがって、絶縁層内の不純物
原子層の不純物準位と半導体層との間で生じる共鳴トン
ネリングを利用することにより、半導体集積回路内に組
み込み可能で、高速かつ低電圧で作動する非線形素子が
低コストで得られることになる。
【0065】(第2の実施形態)次に、第2の実施形態
に係る非線形素子について説明する。本実施形態に係る
非線形素子の構造が上記第1の実施形態に係る非線形素
子と異なるのは、第1及び第2の導電層をいずれも金属
で構成した点である。
【0066】図5は、本実施形態に係る非線形素子の基
本的な構造を示す断面図である。同図に示すように、第
1金属層50と第2金属層52との間に絶縁層51が介
設されており、さらに、絶縁層51内には、不純物準位
を有する金属不純物を導入してなる不純物原子層51a
が形成されている。不純物原子層51aは、絶縁層51
内に不純物原子として鉄(Fe2+)をドーピングするこ
とにより形成されている。不純物原子層51aは、第
1,第2金属層50,52のいずれとも直接接していな
いが、第2金属層52に近接した構造としている。ただ
し、不純物原子層51aは、第1金属層52に近接して
いてもよく、あるいは両金属層の中間付近にあってもよ
い。
【0067】図6(a)は、基板上に形成された具体的
な非線形素子60の構造を示す断面図である。同図に示
すように、第1金属層であるアルミニウム基板61の上
には、SiO2 膜からなる絶縁層63が形成されてお
り、さらに絶縁層63の上に第2金属層である第1アル
ミニウム電極65が形成されている。また、アルミニウ
ム基板61の一部には第2アルミニウム電極66が接触
しており、第1アルミニウム電極65と第2アルミニウ
ム電極66との間にはパッシベーション膜64が介在し
ている。なお、アルミニウム基板61の裏面には裏面電
極67が形成されている。すなわち、本実施形態に係る
非線形素子60の構造は、上記図2に示す第1の実施形
態に係る非線形素子20の構造のうちp型シリコン基板
21をアルミニウム基板61で置き換えたものである。
【0068】また、図6(b)は、本実施形態の変形例
を示し、第2アルミニウム電極65を省略して、アルミ
ニウム基板61そのものを電極として利用するようにし
た場合の構造を示す断面図である。すなわち、本実施形
態のように基板を金属で構成した場合には、第2アルミ
ニウム電極は必ずしも必要でない。
【0069】次に、本実施形態に係る非線形素子の動作
原理について説明する。
【0070】図7(a)に示すように、第1金属層50
と第2金属層52との間に電圧を印加した場合の電流の
変化について説明する。その際、第2金属層52の電圧
を高電位側としたときを正の電圧として、図7(b)〜
(d)及び図8を参照しながら、各層を貫く電流と印加
電圧との関係を説明する。図7(b)〜(d)は、各層
間の電圧を変化させた場合における各層のエネルギー準
位の関係の変化を示すバンド図である。また、図8は、
各層間における電圧Vの変化に対する電流Iの変化を示
す特性図である。
【0071】図7(b)に示すように、各層間の電圧が
ゼロの場合つまり電圧を印加しない自然状態では、第1
金属層50のフェルミ準位EF11 と第2金属層52のフ
ェルミ準位EF12 とは平衡した状態にあり、不純物原子
層51aは、第1金属層50及び第2金属層52のフェ
ルミ準位よりも高いところに不純物準位Evaを有してい
る。この状態では、第1金属層50から不純物原子層5
1aまで電荷が移動することはほとんどなく、各層間に
実質的に電流は流れない。
【0072】しかし、第2金属層52に高電位側の電圧
を印加しその電圧を少しずつ大きくしていくと、第2金
属層52のフェルミ準位EF12 が低下して、それに伴い
不純物原子層51aの不純物準位Evaも低下する。した
がって、第1金属層50のフェルミ準位EF11 と不純物
原子層51aの不純物準位Evaとが近づき、第1金属層
50と不純物原子層51aの間の絶縁層51中をトンネ
ル効果で抜けるためトンネル電流が増加していく。そし
て、図7(c)に示すように、両電極間の電圧Vが所定
値V0 のときに不純物原子層51aの不純物準位Evaが
第1金属層50のフェルミ準位EF11 に合ってくると、
第1金属層50から不純物原子層51aに電子が共鳴ト
ンネリングにより移動して、両電極間には電流が急激に
流れる(図8に示す範囲Ra11 )。
【0073】さらに電圧を大きくすると、図7(d)に
示すように、不純物原子層51aの不純物準位Evaと第
1金属層50のフェルミ準位EF11 とが合わなくなる。
しかし、第1金属層50内にはフェルミ準位EF11 より
もエネルギ準位の低い電子が多く存在するので、共鳴状
態は長く持続され、電流値Iはほぼ一定となる(図8に
示す範囲Ra12 参照)。
【0074】その後、電圧をさらに大きくしていくと、
第1金属層50のフェルミ準位EF1と絶縁層51のバリ
アとの差が小さくなる。つまり、絶縁層51によるバリ
アの高さが実効的に低くなって拡散電流が流れるととも
に、FNトンネリングも生じるようになるので電流Iが
増加する(図8に示す範囲Ra13 参照)。
【0075】なお、図示しないが、本実施形態では、負
の電圧を印加した場合、つまり第1金属層50にプラス
側電圧を印加し、第2金属層52にマイナス側の電圧を
印加した場合には、基本的に図8に示す電圧が正の側に
おける特性を反転した形状を有する特性が得られる。
【0076】本実施形態に係る非線形素子は、上記第1
の実施形態に係る非線形素子と同様に、電圧がV0 のと
ころで急激に電流が増加する特性を有する、しかし、V
0 以上に電圧を印加していっても負性抵抗を示さず、電
圧の増大につれて電流が少しずつ増加する傾向を示す。
すなわち、本実施形態に係る非線形素子は、負性抵抗特
性は有しないものの、途中で電流値がほぼ一定になると
いう非線形特性を有する。
【0077】ここで、本実施形態に係る非線形素子の構
造は、MIM構造中の絶縁層に不純物層を形成したもの
であり、このような構造は、2層ポリシリコンプロセス
によって形成されるMOSトランジスタを搭載した半導
体集積回路内に容易に組み込める。また、1層ポリシリ
コン膜の上にアルミニウム配線等の金属配線を形成する
ことによっても容易に実現できる。
【0078】(第3の実施形態)次に、第3の実施形態
に係る非線形素子について説明する。本実施形態に係る
非線形素子の構造が上記第1,第2の実施形態に係る非
線形素子の構造と異なるのは、第1,第2の導電層が共
に半導体で構成されている点である。
【0079】図9に示すように、本実施形態の非線形素
子は、n型の第1半導体層80と、n型の第2半導体層
82と、各半導体層80,82間に介設された絶縁層8
1とにより構成されている。そして、絶縁層81中に
は、不純物準位を有する金属が導入された不純物原子層
81aが形成されている。なお、図9に示す構造では、
不純物原子層81aは第2半導体層82に近接した位置
に形成されているが、本実施形態の場合、不純物原子層
81aの位置は絶縁層81内のいずれにあってもよい。
【0080】図10は、半導体基板上に形成された具体
的な非線形素子90の構造を示す断面図である。p型シ
リコン基板91の上面付近の領域にはn型不純物を導入
してなる第1半導体層であるn型拡散層92が形成され
ており、n型拡散層92の上にはSiO2 からなる絶縁
層93が形成され、絶縁層93の上に第2半導体層であ
るシリコン電極95(n型不純物が導入されている)が
形成されている。また、絶縁層93中には、不純物原子
として鉄(Fe2+)がドーピングされた不純物原子層9
3aが形成されている。また、絶縁層93の一部にオー
ミック接触する第2アルミニウム電極96と、SiO2
からなるパッシベーション膜94と、p型ポリシリコン
からなる裏面電極97とを有する点は、上記第1の実施
形態と同様である。すなわち、本実施形態に係る非線形
素子の構造は、第2の導電層としてアルミニウム電極の
代わりにシリコン電極を設けた点が第1の実施形態と基
本的に異なる点である。
【0081】次に、本実施形態に係る非線形素子の基本
的な動作原理について説明する。
【0082】ここで、図11(a)に示すように、非線
形素子の基本的な構造において、第1の導電層である第
1半導体層80と第2の導電層である第2半導体層82
との間に電圧を印加するが、第2半導体層82側の電圧
を高電位側としたときを正の電圧として、図11(b)
〜(d)及び図12(a)を参照しながら、各層を貫く
電流と印加電圧との関係を説明する。ただし、不純物原
子層81aは絶縁層81内において第2半導体層82に
近い側に形成されているものとする。図11(b)〜
(d)は、各層間の電圧を変化させた場合における各層
のエネルギー準位の関係の変化を示すバンド図である。
また、図12(a)は、各層間における電圧Vの正方向
の変化に対する電流Iの変化を示す特性図である。
【0083】図11(b)に示すように、各層間の電圧
がゼロの場合つまり電圧を印加しない自然状態では、第
1半導体層80のフェルミ準位EF21 と第2半導体層8
2のフェルミ準位EF22 とは平衡した状態にあり、不純
物原子層81aは、第1半導体層80及び第2半導体層
82のフェルミ準位よりも高いところに不純物準位Eva
を有している。この状態では、第1半導体層80から不
純物原子層81aまで電子が移動することはほとんどな
く、各層間に実質的に電流は流れない。
【0084】しかし、第2半導体層82に高電位側の電
圧を印加しその電圧を少しずつ大きくしていくと、第2
半導体層82のフェルミ準位EF22 が低下して、それに
伴い不純物原子層81aの不純物準位Evaも低下する。
したがって、第1半導体層80のフェルミ準位EF21 と
不純物原子層81aの不純物準位Evaとが近づき、第1
半導体層80と不純物原子層81aの間の絶縁層81中
をトンネル効果で抜けるためトンネル電流が増加してい
く。そして、図11(c)に示すように、両電極間の電
圧Vが所定値V0 のときに不純物原子層81aの不純物
準位Evaが第1半導体層80のフェルミ準位EF21 と合
ってくると、第1半導体層80から不純物原子層81a
に電子が共鳴トンネリングにより移動して、両電極間に
は電流が急激に流れ、極大値I0 を示す(図12(a)
に示す範囲Ra31 )。
【0085】一方、図3(d)に示すように、さらに電
圧を大きくすると、不純物原子層81aの不純物準位E
vaと第1半導体層80のフェルミ準位EF21 との位置に
ずれが生じて、非共鳴状態になり両者間の電流が減少す
る(図12(a)に示す範囲Ra32 参照)。これによっ
てこの非線形素子では負性抵抗が観測されることにな
る。
【0086】その後、電圧Vをさらに大きくしていく
と、第1半導体層80のフェルミ準位EF21 と絶縁層8
1のバリアとの差が小さくなる。つまり、絶縁層81に
よるバリアの高さが実効的に低くなって拡散電流が流れ
るとともに、FNトンネリングも生じるようになるので
再び電流Iが増加する(図12(a)に示す範囲Ra33
参照)。
【0087】図12(a)に示すように、本実施形態に
係る非線形素子の正方向の電圧に対するV−I特性は、
上記第1の実施形態に係る非線形素子の特性と基本的に
は同じである。しかし、負の方向の電圧に対しては、後
述のように、本実施形態に係る非線形素子は上記第1の
実施形態とは異なるV−I特性を示す。
【0088】本実施形態では、絶縁層を挟む第1,第2
導電層はいずれもn型半導体で構成されているので、不
純物原子層81aを絶縁層81の中央部に配置した場合
には、図12(b)に示すように、負方向の電圧に対す
る各範囲Ra34 ,Ra35 ,Ra36 において、正方向の電
圧に対する各範囲Ra31 ,Ra32 ,Ra33 におけるI−
V特性と原点に関して基本的形状が対称となるI−V特
性を示す。ただし、不純物原子層81aの位置をどちか
らの半導体層80又は82側に近付けると、I−V特性
におけるピーク値が小さくなる。
【0089】図12(c)は、不純物原子層81aが第
2半導体層82に接して形成されている場合の正方向及
び負方向のI−V特性を示す。電圧Vを正にしたときに
は、図12(a),(b)に示すI−V特性と基本的に
同じ特性を示すが、Vを負側にふったときには、範囲R
a35 ′において負性抵抗特性の代わりに電流値がほぼ一
定になる特性を示す。その他の範囲Ra34 ′,Ra36 ′
における特性は、図12(b)に示す範囲Ra34 ,Ra3
6 における特性と基本的に同じである。
【0090】上記第1〜第3の実施形態では、非線形素
子の構成について説明した。この素子は共鳴トンネル効
果を利用したトンネルダイオードであり、かつ、絶縁層
中に不純物準位を有する不純物原子層を備えている点が
特徴となっている。
【0091】ここで、不純物原子層を構成する不純物イ
オンとしては好ましいのは遷移金属のイオンである。そ
の理由を以下に説明する。
【0092】遷移元素は、不完全に満たされたd 殻(又
はf 殻)を有する原子又はそのような陽イオンを生じる
元素と定義され(3A〜7A族,8族及び1B族元
素)、一般に多種の原子価を示す。そのため原子内での
電子の相関があまり強くなく、電子の受け渡しが行われ
易い。図13(a)に示すように、たとえば鉄FeはM
殻のd軌道に6個、N殻の4s軌道に2個電子を持って
いる。
【0093】鉄の酸化物にはFe2 O3 とFe3 O4 が
あり、それぞれ2価イオンのFeと3価イオンのFeに
よって構成されるものである。図13(b)は、Feの
中性原子、2価イオン及び3価イオンの3d軌道及び4
s軌道における電子配置状態を示す。図13(b)中の
電子配置を参照するとわかるように、2価イオンの場合
と3価イオンの場合のエネルギーの差は、フントの法則
よりあまり大きくない。すなわち、スピンの揃った軌道
が優先的に満たされ、かつ他の軌道とはスピンの向きが
異なる軌道に電子が満たされてもすぐに排斥されるから
である。従って、3価イオンの場合の仮想的な準位(そ
こに電子が入れば2価イオンになる)を不純物準位(不
純物準位)に用いると、極めて小さな電圧を印加して共
鳴トンネリングを生ぜしめ得る構造を実現することがで
きるのである。
【0094】特に遷移金属の中でも、Mn,Fe,C
r,Ni,Cu,Sm,Eu,Gd,Yb,Lu,Ce
が特に好ましい。その理由は、これらの元素は2価と3
価、または1価と2価のように2つの価数をとることが
できるからである。
【0095】それにより、図14(a)で示すように、
たとえば鉄の場合、3価イオンで存在しているFeに電
子をもう1つ入れて2価イオンにしても、両者間で電子
のエネルギ準位はあまりずれない。したがって、外部か
ら印可する電圧V0 が小さくても、共鳴トンネリングを
生ぜしめることができ、共鳴トンネリング特性を有する
非線形素子として実用に供することができる。
【0096】しかし、不純物原子層の不純物準位に電子
を1つ満たすことにより、電子のエネルギ準位が大きく
ずれてしまう場合は、素子として実用的に多少劣ったも
のとなる。例えば図14(b)に示すように、電子を1
つ入れることで、この素子に印加する電圧を30ボルト
にまであげないと、共鳴トンネリングを生じない場合が
ある。ところが、30ボルトを印加すると、絶縁層のバ
リアが実質的に極めて低くなるので、電子が絶縁膜を乗
り越える確率やFNトンネリングを生じる確率が上昇す
るので、図14(b)に示すように、負性抵抗を示す範
囲が極めて僅かになる。よって、電子のエネルギ準位の
ずれが高々数ボルトに押さえる必要がある。その点、遷
移金属は不純物準位に電子を満たしてもエネルギ準位が
それ程大きくずれないので、本発明の非線形素子の不純
物原子層を構成するのに極めて適した元素である。
【0097】次に、不純物原子の空の軌道に電子がはい
らなければならない理由について説明する。例えば図3
(c)に示す状態では、電子は半導体層10から絶縁層
11中の不純物原子層11aの不純物準位に共鳴トンネ
リングによって移動し、さらに絶縁層11をトンネル効
果で抜けてから金属層12へと移動する。この過程で、
もし、不純物原子層11aの空の軌道に電子が入らない
となると、半導体層10のフェルミ準位EF1から不純物
準位Evaへと電子は移動できないことになる。したがっ
て、不純物原子の不純物準位には電子が入ることがトン
ネル電流を流すための条件となる。
【0098】特に不純物原子として遷移金属を用いる
と、遷移金属のイオン化傾向は絶縁層11のイオン化傾
向よりも大きいので、絶縁層11を抜けて電子が容易に
不純物準位Evaに入ることができ、低電圧範囲で負性抵
抗特性を有する共鳴トンネルダイオードとして機能させ
るのには最適である。
【0099】ここで、絶縁層を構成する材料が酸化物,
窒化物または弗化物の場合には、不純物原子層を構成す
る不純物原子として酸素,窒素または弗素原子よりもイ
オン化傾向の大きい原子が好ましい。それは、これらの
元素よりもイオン化傾向の小さい不純物元素では、すぐ
に酸素,窒素,弗素等に電子を奪われてしまい、本発明
の非線形特性を発揮できない虞れがあるからである。遷
移金属は、酸化物,窒化物,弗化物よりもイオン化傾向
が大きいので、その点でも不純物原子層を構成する元素
として適している。
【0100】(第4の実施形態)次に、第4の実施形態
に係る双安定メモリ装置について説明する。
【0101】図15(a)に示すように、本実施形態に
係る双安定メモリ装置は、上記第1の実施形態に係る構
造を有する第1,第2非線形素子20A,20Bを集積
して形成されている。すなわち、各非線形素子20A,
20Bは、第1の導電層であるn型不純物拡散層22
a,22bと、n各型不純物拡散層22a,22bの上
に形成されたSiO2 膜からなる絶縁層23と、該絶縁
層23中の不純物原子層23a,23bと、絶縁層23
の上に形成された第2の導電層である共通の第1アルミ
ニウム電極25と、各n型拡散層22a,22bにそれ
ぞれオーミック接触する第2アルミニウム電極26a,
26bとにより構成されている。そして、各非線形素子
20A,20Bの各部材間は、素子分離28によって分
離され、p型シリコン基板21の裏面にはポリシリコン
からなる裏面電極27が形成されている。なお、同図に
は示されていないが、このメモリ装置の上面は、パッシ
ベーション膜で覆われている。
【0102】図15(b)は、このメモリ装置の電気回
路図である。同図に示すように、第1非線形素子20A
及び第2非線形素子20Bの第2導電層となる共通の第
1アルミニウム電極25を設けることにより、本実施形
態の双安定メモリ装置は、2つの非線形素子を直列にか
つV−I特性が対称的になるように接続した構造となっ
ている。以下、この双安定メモリ装置の電気的特性につ
いて説明する。
【0103】図15(b)の回路図に示す状態で、第1
非線形素子20Aの第2アルミニウム電極26aに正の
電圧VDDを印加し、第2非線形素子20Bの第2アルミ
ニウム電極26aを接地に接続する。このとき、第1非
線形素子20Aでは、図3(a)に示す半導体層に正の
電圧が印加されたことで図4に示す電圧Vが負側のV−
I特性に応じた電流が流れる。一方、第2非線形素子2
0Bでは、図3(a)に示す金属層に正の電圧が印加さ
れたことで図4に示す正側のV−I特性に応じた電流が
流れる。
【0104】その結果、本実施形態に係る双安定メモリ
装置は、図15(c)に示す特性曲線VIA及びVIBにし
たがって動作する。すなわち、第2非線形素子20B
は、第1アルミニウム電極25における電圧Vに対して
図3(a)に示す正側のV−I特性曲線と同じ特性曲線
VIAに応じて動作する。一方、第1非線形素子20Aは
負荷となり、電圧VがVDDとなる点が図3(a)に示す
電圧0の点(原点)に相当する。すなわち、この双安定
メモリ装置の回路においては、図3(a)に示す負側の
V−I特性曲線を点VDDを基準として反転した曲線VIA
が負荷曲線となる。図15(c)に示すように、両素子
20A,20Bを流れる電流が同じであるという条件を
満たす点つまり両曲線VIA,VIBの交点は3箇所ある
が、安定に存在する点は両側の2箇所(VL,VH )のみ
である。真ん中の交点は不安定点であり、それより少し
でも小さいと左側のVL に変化し、大きいとVH にな
る。このように接続部の電位Vは双安定になり外乱に対
しても安定なメモリ効果がある。この点については、後
に詳細にその理由を説明する。
【0105】図16は、本実施形態の双安定メモリ装置
をメモリセルとして、メモリの書き込み,読出しを行な
うための回路の例を示す図である。書き込み回路から電
圧VDDとしてメモリ0に相当する信号(例えば低電圧信
号)又はメモリ1に相当する信号(例えば高電圧信号)
をメモリセルに供給することで、上述のように中間節点
の電位Vが低電位VL で安定している状態をデータ0と
し、中間ノードの電位Vが高電位VH で安定している状
態をデータ1として、メモリセルにデータを容易に書き
込むことができる。そして、読出し回路に例えばVH と
VL との間のしきい値を有するトランジスタTRのゲー
トにこの電位Vを供給し、電流検知回路を介してトラン
ジスタTRのオン・オフを検知することで、データの読
出しを容易に行なうことができる。ただし、書き込み,
読出しを行なうための構成は、図16に示す例に限定さ
れるものではない。
【0106】本実施形態の双安定メモリ装置は、基本的
にプレーナ構造を有する2つの非線形素子によってSR
AMに相当する機能を発揮することができ、現在のSR
AMが4素子によって構成されているのと比べ、集積度
を大幅に向上させることができる。しかも、各非線形素
子の構造はMIS構造でMISFETと同じ製造工程で
形成可能な構造を有している。そして、各非線形素子の
構造自体も極めて簡素であり、かつ化合物半導体を使用
する必要もない。よって、低コストで集積度の高いSR
AM相当の機能を有する双安定メモリ装置を得ることが
できる。
【0107】(第5の実施形態)次に、第5の実施形態
について説明する。
【0108】図17(a)は、第5の実施形態に係る双
安定メモリ装置の構成を示す断面図である。同図に示す
ように、本実施形態に係る双安定装置は、上記第1の実
施形態に係る構造を有する第1,第2非線形素子20
A,20Bを集積して形成されている。すなわち、各非
線形素子20A,20Bは、第1の導電層であるn型不
純物拡散層22a,22bと、n各型不純物拡散層22
a,22bの上に形成されたSiO2 膜からなる絶縁層
23と、該絶縁層23中の不純物原子層23a,23b
と、絶縁層23a,23bの上に形成された第2の導電
層である第1アルミニウム電極25a,25bと、各n
型拡散層22a,22bにそれぞれオーミック接触する
第2アルミニウム電極26a,26bとにより構成され
ている。そして、各非線形素子20A,20Bの各部材
間は、素子分離28によって分離されている。なお、同
図には示されていないが、このメモリ装置の上面は、パ
ッシベーション膜で覆われている。
【0109】そして、第2非線形素子20Bの第1アル
ミニウム電極25bと第1非線形素子20Aの第2アル
ミニウム電極26aとが互いに接続され、第2非線形素
子20Bの第2アルミニウム電極26bは接地に接続さ
れ、第1非線形素子20Aの第1アルミニウム電極25
aには正の電圧VDDが印加される。
【0110】図17(b)に示すように、本実施形態の
双安定メモリ装置では、第1非線形素子20A,第2非
線形素子20Bのいずれにおいても、図3(a)に示す
金属層に正の電圧が印加されることになり、図4に示す
正側のV−I特性に応じた電流が流れる。
【0111】本実施形態に係る双安定メモリ装置は、図
17(c)に示す特性曲線VIA及びVIBにしたがって動
作する。すなわち、本実施形態に係る双安定メモリ装置
の回路においては、第2非線形素子20Bの動作は第4
の実施形態と同じであるが、第1非線形素子20Aによ
る負荷曲線は、図3(a)に示す正側のV−I特性曲線
を電流軸に関して対称に移動させ、さらに原点を点VDD
に移動させた曲線VIAとなる。本実施形態においても、
図17(c)に示すように、全体として条件を満たす電
流Iは交点の3箇所あるが、両側の2箇所(VL,VH )
のみが安定点である。すなわち、上述の第4の実施形態
の双安定メモリ装置と同様に、中間ノードの電位Vは双
安定になり外乱に対しても安定なメモリ効果がある。
【0112】したがって、本実施形態おいても、図16
に示すように、双安定メモリ装置をメモリセルとして書
き込み回路や読出し回路を付加することにより、SRA
M相当の機能を発揮することができる。すなわち、低コ
ストで集積度の高いSRAM相当の機能を有する双安定
メモリ装置を得ることができる。
【0113】(第6の実施形態)次に、第6の実施形態
について説明する。
【0114】図18(a)に示すように、本実施形態に
係る双安定メモリ装置は、図2に示す構造を有する非線
形素子20と抵抗素子Reとにより構成されている。す
なわち、上記第1の実施形態と同様に、p型シリコン基
板21と、第1の導電層であるn型拡散層22と、絶縁
層23と、第2の導電層である第1アルミニウム電極2
5と、不純物原子層23aと、n型拡散層22に接触す
る第2アルミニウム電極26と、パッシベーション膜2
4と、裏面電極27とが形成されており、これらの部材
によって非線形素子20が形成されている。
【0115】さらに、本実施形態の特徴として、第2ア
ルミニウム電極26の上にn型不純物が導入されたポリ
シリコン膜からなる抵抗素子Reが形成されている。そ
して、抵抗素子Reに正の電圧VDDが印加され、非線形
素子20の第1アルミニウム電極25が接地に接続され
ている。
【0116】図18(b)は、本実施形態の双安定メモ
リ装置の電気回路図である。ここで、本実施形態の双安
定メモリ装置においても、非線形素子20と抵抗素子R
eとの間の中間ノードである第2アルミニウム電極26
の電位Vを利用してデータを記憶する。
【0117】図18(c)に示すように、非線形素子2
0は図4に示す正側のV−I特性と同じ特性曲線VIMを
示し、負荷曲線は一般的な抵抗素子の負荷特性と同じ特
性曲線VIRとなる。
【0118】本実施形態においても、ポリシリコンの抵
抗負荷であるため、負荷曲線の交点は3点あるが、VL
とVH の2点で安定となる。本実施形態の装置も双安定
のメモリとして機能する。
【0119】ポリシリコンの抵抗値は、大きいほど負荷
直線の傾きが小さくなり、安定点のVL とVH との差を
大きくとることができる。
【0120】ここで、本実施形態のメモリ装置において
双安定メモリ機能が得られる理由について、以下に説明
する。
【0121】図18(b)に示す回路において、半導体
基板にメモリ装置を形成した状態では、抵抗素子Reと
非線形素子20の間の中間ノードと接地との間には、非
線形素子20と並列に容量Cが存在する。回路に流れる
電流iをf(V)で現すと、下記式 (VDD−V)/R=f(v) (1) が成立する。そして、図18(c)に示すように、この
式はVL ,VX ,VH の3つの解を有する。そして、中
間ノードと接地との間に非線形素子と並列に容量Cが存
在することから、下記式 (VDD−V)/R=C(dV/dt)+f(v) が成立する。
【0122】ここで、V=Vi+ΔVとおくと(|ΔV
|<<Vi(i=L,X,H))、上式は下記式のよう
に変形できる。
【0123】(VDD−Vi)/R−(ΔV/R)=C
(dΔV/dt)+f(Vi+ΔV)=〜C(dΔV/
dt)+f(Vi)+(αf/αV)V=Vi・ΔV (ただし、=〜は近似的に等しいことを意味し、αは偏
微分を意味する) Viは式(1) の解であるから、 −(ΔV/R)=C(dΔV/dt)+(αf/αV)
V=Vi・ΔV この微分方程式の解をΔVについて解くと、 ΔV=Aexp [−(1/C){(I/R)+(αf/αV)}t] (2) となる(ただし、A=ΔV(0)(初期値))。
【0124】ここで、V=VL ,VH においては、(α
f/αV)>0であるので、(1/R)+(αf/α
V)>0となり、式(2) から、tが大きくなると、つま
り時間が経過するとΔVは「0」に近付く。
【0125】一方、V=VX においては、(αf/α
V)<0、|αf/αV|>1/Rであるので、(1/
R)+(αf/αV)<0となる。したがって、式(2)
から、tが大きくなると、ΔVは初期値Aの符号に応じ
て正負いずれかに変化して、VL またはVH に対応する
点に移行する。すなわち、VX に対応する点は不安定点
であることがわかる。
【0126】なお、計算を簡略にするために、本実施形
態に係る双安定メモリ装置における2つの交点VL ,V
H の安定性について説明したが、上述の第4,第5実施
形態における双安定メモリ装置においても、VL ,VH
が安定点であることが同様に説明できる。
【0127】(第7の実施形態)次に、第7の実施形態
について説明する。
【0128】図19は、第7の実施形態に係る非線形素
子20xの構造を示す断面図である。同図に示すよう
に、本実施形態に係る非線形素子20xは、p型シリコ
ン基板21,n型拡散層22,絶縁層23,パッシベー
ション膜24,第1アルミニウム電極25,第2アルミ
ニウム電極26及び裏面電極27を備えている点で、上
記第1の実施形態に係る非線形素子20(図2参照)の
構造と基本的に同じである。
【0129】ここで、本実施形態に係る非線形素子20
xの特徴は、絶縁層23の全面に亘って不純物準位を有
する金属を導入してなる不純物原子層23xが形成され
ている点である。そして、絶縁層23及びパッシベーシ
ョン膜24に開口されたコンタクトホールには絶縁膜か
らなるサイドウォール29が形成されていて、このサイ
ドウォール29により第2アルミニウム電極26の埋め
込み部と不純物原子層23xとを絶縁するように構成さ
れている。
【0130】本実施形態によっても、上記第1の実施形
態に係る非線形素子と同様の機能を発揮することがで
き、かつ同様の双安定メモリ装置を構成することができ
る。
【0131】(その他の実施形態)上記各実施形態にお
ける金属層の代わりに不純物をドープしたポリシリコン
層を設けてもよい。特に、MOSトランジスタでは、ゲ
ート電極にポリシリコン膜が使用されるので、同じ工程
で形成することが容易となる。
【0132】また、第3の実施形態におけるシリコン電
極95の代わりにポリシリコン電極を設けてもよい。ポ
リシリコン膜は、結晶粒の大きさや不純物濃度の調整に
よって単結晶のシリコンに近い性質を持たせることが可
能であるので、第3の実施形態と同じ効果を得ることが
できる。
【0133】また、各実施形態において、絶縁層内に複
数の不純物層を設け、複数箇所に負性抵抗特性を有する
部分を形成することにより、H,L(0,1)の2値だ
けでなく、3値以上のデータを保持する機能を持たせる
ことも可能である。
【0134】上記実施形態では、絶縁層をシリコン酸化
膜によって構成したが、シリコン窒化膜や弗化カルシウ
ム膜等によって構成してもよい。絶縁層を構成する材料
は、不純物原子層を構成する不純物の種類や製造方法に
応じて任意に選択できる。
【0135】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1〜10の
非線形素子によれば、2つの導電層の間に絶縁層を介在
させ、この絶縁層内に少なくとも1つの殻内に電子で満
たされていない空の軌道を有する不純物を導入してなる
不純物層を設け、各導電層間に所定電圧を印加したとき
に不純物層と導電層との間で生じる共鳴トンネリングを
利用して、電圧に対する電流一定特性や負性抵抗特性を
有する非線形素子を構成することができ、よって、集積
回路内に組み込むのに適した消費電力の小さい,低電圧
かつ高速で動作する非線形素子の提供を図ることができ
る。
【0136】請求項11〜19の双安定メモリ装置によ
れば、負性抵抗特性を有する非線形素子を駆動素子と
し、負荷素子と駆動素子との中間点の電位が双安定とな
る効果を利用して、双安定メモリ装置を構成したので、
SRAMに相当する機能を有するメモリ装置を少ない素
子数で実現でき、よって、低消費電力、かつ集積度の高
い双安定メモリ装置の提供を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る非線形素子の基本構成を
示す斜視図である。
【図2】基板上に形成された第1の実施形態に係る非線
形素子の具体的構成を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る非線形素子の動作原理を
説明するための基本構成図及びバンド図である。
【図4】第1の実施形態に係る非線形素子のV−I特性
を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る非線形素子の基本構成を
示す斜視図である。
【図6】基板上に形成された第2の実施形態に係る非線
形素子の具体的構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る非線形素子の動作原理を
説明するための基本構成図及びバンド図である。
【図8】第2の実施形態に係る非線形素子のV−I特性
を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る非線形素子の基本構成を
示す斜視図である。
【図10】基板上に形成された第3の実施形態に係る非
線形素子の具体的構成を示す断面図である。
【図11】第3の実施形態に係る非線形素子の動作原理
を説明するための基本構成図及びバンド図である。
【図12】第3の実施形態に係る非線形素子のV−I特
性を示す図である。
【図13】鉄元素の原子模型図及び電子配置図である。
【図14】不純物原子層の不純物準位のを満たすに必要
なエネルギーとV−I特性との関係を示す図である。
【図15】第4の実施形態に係る双安定メモリ装置の斜
視図、電気回路図及びV−I特性図である。
【図16】第4の実施形態に係る双安定メモリ装置に対
するデータの書き込み,読出しを行なうための電気回路
の例を示す図である。
【図17】第5の実施形態に係る双安定メモリ装置の斜
視図、電気回路図及びV−I特性図である。
【図18】第6の実施形態に係る双安定メモリ装置の斜
視図、電気回路図及びV−I特性図である。
【図19】第7の実施形態に係る非線形素子の断面図で
ある。
【符号の説明】
10 半導体層 11 絶縁層 12 金属層 20 非線形素子 21 p型シリコン基板 22 n型拡散層 23 絶縁層 23a 不純物原子層 24 パッシベーション膜 25 第1アルミニウム電極 26 第2アルミニウム電極 27 裏面電極 50 第1金属層 51 絶縁層 52 第2金属層 60 非線形素子 61 アルミニウム基板 62 n型拡散層 63 絶縁層 63a 不純物原子層 64 パッシベーション膜 65 第1アルミニウム電極 66 第2アルミニウム電極 67 裏面電極 80 第1半導体層 81 絶縁層 82 第2半導体層 90 非線形素子 91 アルミニウム基板 92 n型拡散層 93 絶縁層 93a 不純物原子層 94 パッシベーション膜 95 ポリシリコン電極 96 アルミニウム電極 97 裏面電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 29/88 H01L 29/06 H01L 29/66 H01L 49/02

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1のフェルミ準位を有する第1の導電
    層と、 電圧を印加しない状態では上記第1のフェルミ準位と同
    じエネルギ準位に第2のフェルミ準位を有する第2の導
    電層と、 上記第1の導電層と第2の導電層との間に介設され、少
    なくとも電圧が印加されていない状態で上記各導電層の
    フェルミ準位よりも高いエネルギ準位にバリアレベルを
    有する絶縁層と、 上記絶縁層内に形成され、電子で満たされていない空の
    軌道をいずれかの殻内に有する不純物元素を有し、上記
    空の軌道を満たすためのエネルギ準位である不純物準位
    が上記第1のフェルミ準位よりも高くかつ上記バリアレ
    ベルよりも低い不純物層とを備え、 上記第1の導電層と上記第2の導電層との間に所定の電
    圧を印加したときに、上記第1及び第2の導電層のうち
    低電位側の導電層と上記不純物層との間に共鳴トンネリ
    ングによる電子の移動が生じるように構成されているこ
    とを特徴とする非線形素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の非線形素子において、 上記第1及び第2の導電層のうちいずれか一方が半導体
    で構成され、他方が金属で構成されていることを特徴と
    する非線形素子。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の非線形素子において、 上記不純物層は、上記金属で構成されている導電層に近
    接して形成されていることを特徴とする非線形素子。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の非線形素子において、 上記第1及び第2の導電層がいずれも金属で構成されて
    いることを特徴とする非線形素子。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の非線形素子において、 上記第1及び第2の導電層がいずれも半導体で構成され
    ていることを特徴とする非線形素子。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の非線形素子において、 上記不純物元素のイオン化傾向は、上記絶縁層を構成す
    る材料のイオン化傾向よりも大きいことを特徴とする非
    線形素子。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の非線形素子において、 上記絶縁層が、酸化物,窒化物及び弗化物のうち少なく
    ともいずれか1つによって構成されていることを特徴と
    する非線形素子。
  8. 【請求項8】 請求項1,6又は7記載の非線形素子に
    おいて、 上記不純物元素は遷移金属であることを特徴とする非線
    形素子。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の非線形素子において、 上記不純物層は、上記絶縁層内に不純物元素のイオンを
    注入することにより形成されており、 上記絶縁層内における上記不純物層の位置及び厚みと不
    純物元素の濃度とは、イオン注入時の条件によって調整
    されていることを特徴とする非線形素子。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の非線形素子において、 上記絶縁層及び不純物層は共にCVDにより形成されて
    おり、 上記絶縁層内における上記不純物層の位置及び厚みと不
    純物元素の濃度とは、CVD時の条件によって調整され
    ていることを特徴とする非線形素子。
  11. 【請求項11】 高電位側の第1の電源と低電位側の第
    2の電源との間に、負荷素子と駆動素子とを上記第1電
    源側から順次直列に介設してなる双安定メモリ装置であ
    って、 上記駆動素子は、 第1のフェルミ準位を有する第1の導電層と、 電圧を印加しない状態では上記第1のフェルミ準位と同
    じエネルギ準位に第2のフェルミ準位を有し、上記負荷
    素子に接続される第2の導電層と、 上記第1の導電層と第2の導電層との間に介設され、少
    なくとも電圧が印加されていない状態で上記各導電層の
    フェルミ準位よりも高いエネルギ準位にバリアレベルを
    有する絶縁層と、 上記絶縁層内に形成され、電子で満たされていない空の
    軌道をいずれかの殻内に有する不純物元素を有し、上記
    空の軌道を満たすためのエネルギ準位である不純物準位
    が上記第1のフェルミ準位よりも高くかつ上記バリアレ
    ベルよりも低い不純物層とを備え、かつ上記第1の導電
    層と上記第2の導電層との間に上記第2の導電層の電位
    が高くなる電圧を印加しながらその電圧を増大していっ
    たときに、ある電圧範囲で上記第1の導電層と上記不純
    物層との間における共鳴状態から非共鳴状態への移行に
    伴う負性抵抗特性を生じるように構成されていて、 上記駆動素子と負荷素子との間の中間点の電位は、上記
    駆動素子及び負荷素子の各電圧−電流特性曲線の交点に
    一致する少なくとも2つの安定点の電位のうちいずれか
    一方であることを特徴とする双安定メモリ装置。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記駆動素子の上記第1の導電層は半導体で構成され、 上記駆動素子の上記第2の導電層は金属で構成されてい
    ることを特徴とする双安定メモリ装置。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記駆動素子の上記不純物層は、上記第1の導電層より
    も上記第2の導電層に近い側に形成されていることを特
    徴とする双安定メモリ装置。
  14. 【請求項14】 請求項12又は13記載の双安定メモ
    リ装置において、 上記負荷素子は、上記駆動素子と同じ構造からなる第1
    の導電層,第2の導電層,絶縁層及び不純物層を有して
    いることを特徴とする双安定メモリ装置。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記負荷素子の上記第1の導電層が上記第1電源に接続
    され、上記負荷素子の第2の導電層が上記駆動素子の第
    2の導電層に接続されていることを特徴とする双安定メ
    モリ装置。
  16. 【請求項16】 請求項14記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記負荷素子の上記第2の導電層が上記第1電源に接続
    され、上記負荷素子の第1の導電層が上記駆動素子の第
    2の導電層に接続されていることを特徴とする双安定メ
    モリ装置。
  17. 【請求項17】 請求項11記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記駆動素子の上記第1及び第2の導電層は半導体で構
    成されていることを特徴とする双安定メモリ装置。
  18. 【請求項18】 請求項17記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記負荷素子は、上記駆動素子と同じ構造からなる第1
    の導電層,第2の導電層,絶縁層及び不純物層を有して
    いることを特徴とする双安定メモリ装置。
  19. 【請求項19】 請求項11記載の双安定メモリ装置に
    おいて、 上記負荷素子は、抵抗体により構成されていることを特
    徴とする双安定メモリ装置。
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