JP2628540B2 - 焼結含油軸受 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、焼結含油軸受に係わ
り、特に、摩擦特性の優れた焼結含油軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】多孔質状の焼結合金により形成され、潤
滑油を含浸させて使用される焼結含油軸受は、無給油で
長時間使用できることから、各種機器の回転軸の軸受と
して広く用いられている。

【０００３】この種の焼結含油軸受は、図１に示すよう
に、多孔質状の焼結合金により形成された軸受本体１に
形成された軸受孔２に、該軸受孔２より小径の回転軸３
を挿通し、回転軸３の回転に伴うポンプ作用によって軸
受本体１の多数の細かい含油孔（空孔）より吸出された
潤滑油と、摩擦熱にもとづく膨張のために滲み出た潤滑
油とが軸受孔２の摺動面４に油膜を形成し、この油膜に
より回転軸３を回転自在に支持するようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記焼結含
油軸受においては、回転軸３が摺動する軸受孔２の摺動
面４に潤滑油を含浸させる空孔が多数形成されているの
で、油膜が生じていても、上記空孔から潤滑油の一部が
漏れて油圧が低下し、その結果回転軸３と摺動面４との
局部的な接触が行われる。このように、局部的な接触が
行われると、含油軸受の摩擦係数が大きくなるという欠
点があった。

【０００５】一方、このような不具合いを解消するため
に、例えば、実開昭５０ー１０１７３５号公報に示され
る技術が提案されている。

【０００６】この技術は、上記軸受本体の内周面のう
ち、負荷がかかる略半周部分を目つぶしし、回転軸との
摺動面からの潤滑油の漏れを抑制して、上記油膜の減少
を防止するようにしたものである。

【０００７】しかしながら、このような技術において
も、なお、つぎのような問題点が残されている。

【０００８】すなわち、一般に上記回転軸３に加わる荷
重は、回転軸３の一端部に作用するもので、このような
荷重が作用すると、上記回転軸３は、軸受孔２の中心線
に対して傾斜した状態となされる。そして、このように
回転軸３が傾斜させられると、この回転軸３の一部が上
記摺動面４から離間してしまい、荷重の大きさによって
は、この離間した部分が目つぶしされていない軸受孔２
の内周面に摺接させられてしまう現象が生じることであ
る。このような現象が生じると、目つぶしされていない
部分との摺接箇所において、油膜の減少が生じて摩擦抵
抗が増加してしまうという不具合いを発生させてしま
う。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上述した従来
の技術において残されている問題点を有効に解消し得る
焼結含油軸受を提供せんとするもので、特に、多孔質状
の焼結合金により形成された軸受本体に、回転軸が挿通
される軸受孔が形成された焼結含油軸受において、上記
軸受孔の両開口端部のみの内周面で、少なくとも上記軸
受孔の中心線の長さ方向の中間点を中心として点対称と
なる位置に、その内周面の空孔を潰して摺動面を形成し
てなることを特徴とするものである。

【００１０】

【作用】この発明の焼結含油軸受にあっては、回転軸が
焼結含油軸受の軸受孔の中心線に対して傾斜させられた
際においても、主な摺動面と点対称に設けられている他
の摺動面によって上記回転軸を支持することにより、軸
受孔との摺接部分における油膜の減少を抑制して、摩擦
抵抗の増加を抑制する。

【００１１】

【実施例】以下、この発明の焼結含油軸受の一実施例を
図２を参照して説明する。図２（ａ）および（ｂ）に示
す焼結含油軸受１０は、多孔質状の焼結合金により形成
された軸受本体１１に、回転軸１２が挿通される軸受孔
１３が形成された構成になっており、軸受孔１３の両開
口端部のみの内周面で、少なくとも上記軸受孔１３の中
心線の長さ方向の中間点Ｏを中心として点対称となる位
置に、その内周面の空孔を潰して、本実施例では２組の
摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4を形成し、これらの摺動面Ｓ
1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4から潤滑油が漏れないようになってい
る。

【００１２】次に、上記焼結含油軸受１０は、通常の粉
末成形の際に使用するコアロッドの表面の所定位置に、
表面粗度の大きな荒らし部を形成しておき、圧粉成形後
において圧粉成形体を離型する際に、上記コアロッドに
よって軸受本体１１の所定位置を塑性変形させることに
よって、その内面に上記の摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4が
形成される。

【００１３】このように、圧粉成形時において上記摺動
面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4を形成するのは、圧粉成形時に潰
しを行うと、上記摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4の塑性変形
が円滑に行われて、その空孔の潰しが確実に行われると
ともに、摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4の空孔を潰す工程を
新たに設ける必要がなく、従来と全く同様の工程で焼結
含油軸受を製造することができるという利点があるから
である。

【００１４】そして、コアロッドの各荒し部の周方向の
幅は、製造されるべき焼結含油軸受の軸受孔１３の各摺
動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4の幅に対応する大きさに設定さ
れ、具体的には成形されるべき圧粉体の焼結による収縮
を見込んだ幅に設定されている。

【００１５】その後、このようにして成形された圧粉体
をダイから取り出して所定の温度で焼結して焼結体を得
る。この焼結体は圧粉体のときに各摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ
3・Ｓ4に対応する面の空孔が潰されているので、焼結体
における各摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4の空孔は潰され、
各摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4以外の軸受孔１３の空孔は
残されている。

【００１６】そして、この焼結体を上記と同様のダイセ
ット（図示せず）に組み込み、圧縮してサイジング加工
を行って焼結体の各部を矯正することにより、焼結含油
軸受を製造する。このサイジング加工の際に、上記各摺
動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4がダイセットのコアロッドに押
圧されて、軸受孔１３の内周面と面一になり、かつ、上
記摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4が平滑化される。

【００１７】一方、上記各摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4の
幅（図２ｂに角度αで示す）は、軸受孔１３内に挿通さ
れる回転軸１２の外径や使用される定常状態における回
転数等に基づいて設定されるもので、例えば、回転軸１
２の外径ｄ＝０．８ｃｍ、回転数Ｒ＝４０００ｒｐｍで
ある場合、αは約６０°である。

【００１８】しかして、上記焼結含油軸受１０によれ
ば、軸受孔１３の内周面のうち軸受孔１３の中心線の長
さ方向の中間点を中心として点対称となる位置に、その
内周面の空孔が潰されて２組の摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・
Ｓ4の空孔が形成されていることから、これらの各摺動
面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4からの潤滑油の漏れが防止され
る。したがって、これらの摺動面Ｓ1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4に
は強固な油膜が形成され、かつ、これらの摺動面Ｓ1・
Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4にはその周りの空孔から潤滑油が十分に
供給されることにより、回転軸１２の回転や摺動時にお
ける摩擦抵抗の増加が確実に抑制される。

【００１９】さらに、上記したように、上記各摺動面Ｓ
1・Ｓ2、Ｓ3・Ｓ4が、軸受孔１３の中心線の長さ方向の
中間点を中心として点対称となる位置に形成されている
ことから、回転軸１２が図２（ａ）に鎖線で示すように
傾斜させられた場合においても、点対称位置にある１組
の摺動面Ｓ1・Ｓ2（Ｓ3・Ｓ4）が回転軸１２に対向させ
られることにより、軸受孔１３と回転軸１２との間の油
膜が保持される。

【００２０】また、本実施例においては、他の組の摺動
面Ｓ1・Ｓ4（Ｓ3・Ｓ2）が、図２（ａ）に示すように、
軸受孔１３の中心線と平行に位置させられていることか
ら、上記回転軸１２が平行に移動させられた状態におい
ても、これらの摺動面Ｓ1・Ｓ4（Ｓ3・Ｓ2）が回転軸１
２の長さ方向の２位置において対向させられて、この２
位置において油膜が形成されることにより、回転軸１２
の摩擦抵抗が抑制される。

【００２１】なお、上記実施例では、摺動面を２組４箇
所に形成した例について説明したが、回転軸１２の傾斜
方向が一定であれば、１組・２箇所であってもよい。

【００２２】さらに、図３に示すように、軸受孔１３の
両開口端部のみの内周面の全周に亙って摺動面Ｓ5を形
成するようにしてもよいものである。

【００２３】このようにすることにより、回転軸１２の
傾斜方向が、予測される方向と異なった場合においても
十分に対応できるばかりでなく、軸受本体１１の回転軸
１２に対する位置合わせの自由度が大きくなる。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の焼結含
油軸受によれば、多孔質状の焼結合金により形成された
軸受本体に、回転軸が挿通された軸受孔が形成された焼
結含油軸受において、上記軸受孔の両開口端部のみの内
周面で、少なくとも上記軸受孔の中心線の長さ方向の中
間点を中心として点対称となる位置に、その内周面の空
孔を潰して摺動面を形成してなることを特徴とするもの
で、つぎのような優れた効果を奏する。

【００２５】各摺動面が、軸受孔の中心線の長さ方向の
中間点を中心として点対称となる位置に形成されている
ことから、回転軸が傾斜させられた場合においても、点
対称位置にある１組の摺動面が回転軸に対向させられる
ことにより、軸受孔と回転軸との摺動部分における潤滑
油の漏れを防止するとともに、両者間に強固な油膜を形
成して、回転軸の軸受本体に体する摩擦係数を確実に軽
減させることができる。また、軸受孔の両開口端部のみ
の内周面の全周に亙って摺動面を形成することにより、
回転軸の傾斜方向が、予測される方向と異なった場合に
おいても十分に対応できるばかりでなく、軸受本体の回
転軸に対する位置合わせの自由度が大きくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の焼結含油軸受の一例を示す縱断面図であ
る。

【図２】（ａ）は、本発明の一実施例の焼結含油軸受の
縱断面側面図であり、（ｂ）は正面図である。

【図３】本発明の他の実施例の焼結含油軸受の縱断面図
である。

【符号の説明】

１０ 焼結含油軸受 １１ 軸受本体 １２ 回転軸 １３ 軸受孔 Ｓ1・Ｓ2・Ｓ3・Ｓ4・Ｓ5 摺動面

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 敏 新潟県新潟市小金町三番地１ 三菱マテ リアル株式会社新潟製作所内 (72)発明者 田中 猛 静岡県湖西市梅田390番地 アスモ株式 会社内 (72)発明者 大場 大祐 静岡県湖西市梅田390番地 アスモ株式 会社内 (56)参考文献 特開 平５−10331（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多孔質状の焼結合金により形成された軸
   受本体に、回転軸が挿通される軸受孔が形成された焼結
   含油軸受において、上記軸受孔の両開口端部のみの内周
   面で、少なくとも上記軸受孔の中心線の長さ方向の中間
   点を中心として点対称となる位置に、その内周面の空孔
   を潰して摺動面を形成してなることを特徴とする焼結含
   油軸受。
2. 【請求項２】 上記摺動面が、上記軸受孔の両開口端部
   のみの内周面に全周に亙って形成されていることを特徴
   とする請求項１記載の焼結含油軸受。