JP2024521176A - 溶融塩原子炉の炉心 - Google Patents

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Abstract

溶融塩原子炉(100)用の原子炉炉心(1)、及び溶融塩原子炉を運転する方法。前記原子炉炉心は、液体減速材(11)を通過させる管状で筒形の中心減速材容器(10)と、中心減速材容器を囲む燃料塩ジャケットと、 燃料塩ジャケットを囲む筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットを備える。また前記方法は、 燃料塩ジャケット内の燃料塩を600~700℃に保つことと、 中心減速材容器内の液体減速材を10~90℃に保つことと、 減速体及び中性子反射体ジャケット(31)内の液体減速材を10~90℃に保つことを含む。【選択図】図6

Description

本願は、溶融塩原子炉の炉心及びその運転方法に関し、特に、溶融塩原子炉の炉心の構造及び設計並びにその運転方法に関する。
背景
溶融塩原子炉(Molten Salt Reactor;MSR)は、原子炉冷却材及び/又は核燃料が溶融塩、典型的にはフッ化物塩又は塩化物塩であり、融点が約500℃、運転温度が約600~700℃、沸点が融点より約1000℃高い原子炉である。このタイプの原子炉の多くの利点のひとつは、大気圧又はそれに近い圧力で運転しながら、溶融塩を非常に高温の熱媒体として使用できることである。このような原子炉から熱を取り出すには、原子炉の炉心と熱交換器の間に溶融塩をループ状に送り込む。原子炉出力は、熱交換器の温度降下と流量に正比例する。溶融フッ化物塩や塩化物塩は腐食性があるため、その運転には不活性な格納容器内雰囲気が必要であり、さらに溶融塩や溶融塩の蒸気が環境中に漏れることは許されないため、溶融塩原子炉の部品には完全な気密性が厳しく要求される。これは厳しい技術的課題を突きつける。溶融塩の温度と攻撃的な性質に高い放射線レベルが加わると、適切な材料はごくわずかしかない。従って、信頼性と耐久性に優れた炉心を実現するためには、炉心を構成する材料を慎重に選択し、組み合わせる必要がある。
溶融塩原子炉は、1950年代から1960年代にかけてオークリッジ国立研究所(ORNL)で建設・運転され、1970年代まで研究プログラムが続き、その他にも世界中で小規模なプログラムが行われた。
原子炉の炉心は、次のいずれかの事項との組み合わせで核***連鎖反応が起こるように設計された特殊な形状をしている。
1. 臨界集合体を作るのに十分な量の燃料。
2. 臨界集合体を作るのに十分な量の減速材と燃料を組み合わせる。
これらは、それぞれのタイプが示す中性子スペクトルのために、それぞれ高速炉と熱中性子炉と呼ばれる。
将来の世界のエネルギー需要を持続可能な形で満たすという目標を達成するためには、コンパクトで大量生産可能な溶融塩増殖炉が必要である。これは非常に難しい課題である。なぜなら、原子炉を小さくすればするほど、増殖を達成することが困難になるからである。というのも、中性子漏れと呼ばれる、中性子が原子炉から出ていく確率は、原子炉の体積に対する表面積の割合が大きくなるほど高くなるからである。
高速炉は一般に、臨界に達するまでに、熱中性子炉に比べてはるかに多くの核***性物質を必要とする。核***性物質の利用可能量が限られているため、高速炉は、将来のエネルギー需要を満たすために急速に規模を拡大するのには適していない。このため、コンパクトで大量生産可能な熱溶融塩増殖炉が望まれている。
熱溶融塩増殖炉の課題の一つは、中性子の減速を効果的に行いながら増殖が可能な減速材が必要なことである。これは、炭素又はベリリウム又は重水素をベースにした減速材しか使用できないことを意味する。熱スペクトル溶融塩炉で増殖が可能な実用的な減速材は、固体炭素、
固体ベリリウム、溶融濃縮リチウム7重水素化塩(7LiOD)、液体重水(D20)である。これらのうち、燃料塩との直接接触に耐えられるのは炭素だけであり、他のものは燃料塩から隔離する構造材が必要である。これらすべての減速材にはそれぞれ長所と短所があり、溶融塩炉の減速材として使用することが過去に提案され、研究されてきた。
もう一つの課題は、減速材が燃料塩から隔離されている場合に、燃料塩又は減速材を収納する容器の材料の選択である。この材料は、超高温、高放射線照射下での劣化に耐える必要がある。溶融塩を収容する容器は、溶融塩の腐食作用に対する耐性だけでなく、適切な中性子吸収特性を持たなければならない。溶融塩原子炉の構成要素に使用される材料として、過去に様々な材料が提案され、研究されてきた。しかし、これらの材料はそれぞれ、商業的な製造が可能な形状に関して実用的な制約がある。
中性子吸収の少ない溶融塩適合材料として知られているのは、炭素と炭化ケイ素をベースにした材料だけである。これらの中で最も有望なものは、炭化ケイ素と炭素のセラミック複合材料、例えば炭素繊維-炭素マトリックスC/C複合材料、炭化ケイ素繊維-炭化ケイ素マトリックス(SiC/SiC)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭素マトリックス(SiC/C)複合材料である。そして、複雑な形状の複合材料の製造は、金属からの製造よりもはるかに困難である。というのも、これら複雑な形状の複合材料は、最終的な形状で曲げたり溶接したりすることができず、むしろ形状に合わせて成形し、炉焼成などの複数の工程で処理しなければならないからである。
CN112259263Aは、適切な材料から比較的容易に製造できる直筒容器を備えた構造の原子炉炉心を開示している。しかしこの文献は、中性子漏洩を最小限に抑える効果的な原子炉設計を提供するものではない。
摘要
上記の課題を克服するか、少なくとも上記の課題を軽減する、原子炉用炉心を提供することを目的とする。
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
第1の捉え方によれば、溶融塩原子炉用の原子炉炉心がもたらされる。この原子炉炉心は、
・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
・ 複数の管状燃料塩容器であって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域をそれぞれ有し、前記減速材及び中性子反射材中心容器を取り囲む筒形の燃料塩ジャケットを形成するように組み立てられる、複数の管状燃料塩容器と;
・ 複数の管状減速材及び中性子反射材容器であって、液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域をそれぞれ有し、筒形の燃料塩ジャケットを取り囲む筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットを形成するように組み立てられている、複数の管状減速材及び中性子反射材容器と;
を備え、前記減速材及び中性子反射材中心容器は、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材入口と、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材出口との間の中央部において、最も大きな内側断面積を有する。
複数の管状容器を合体させて形成される燃料塩ジャケットを具備するように原子炉炉心を構成することにより、また、 複数の管状容器を合体させて形成される中性子反射体ジャケットを具備するように原子炉炉心を構成することにより、 液体減速材及び反射体を受け入れる筒や溶融燃料塩を受け入れる筒の間の同心空間において大きな容積を得ることができるように半径が変化する、同心筒状のデザインを有する原子炉炉心を構築することが可能になる。 それによって、臨界集合体を達成し、中性子漏れを低減することができる。すなわち、効率的な炉心形状を達成することができる。 また、溶融塩原子炉での使用に適した材料から製造することができる。構成部品は、通常、型を使って製造する必要がある材料から作られるため、これらの構成部品の設計には様々な制約が生じる。本発明による炉心構造は、これらの構成部品を、セラミックス複合材や金属合金、好ましくはジルコニウム合金などの適切な材料から製造できるように設計することを可能とする。前記第1の捉え方による原子炉炉心の構造は、組み立て方法が実用的でありながら、臨界原子炉アセンブリを得るために少量の燃料塩しか必要とせず、更に発生した熱を取り出すのに十分な燃料塩循環速度を可能にする、効率的な原子炉形状を有する最適化された炉心設計を可能とする。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記セラミック複合材料はセラミックマトリックス複合材料である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記セラミック複合材料は、炭化ケイ素と炭素のセラミック複合材料、好ましくは炭素繊維-炭素マトリックス(C/C)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭化ケイ素マトリックス(SiC/SiC)複合材料、及び/又は炭化ケイ素繊維-炭素マトリックス(SiC/C)複合材料である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記減速材及び中性子反射材中心容器の軸方向範囲の少なくとも一部において、該減速材及び中性子反射材中心容器の内側断面積は、前記液体減速材及び中性子反射材入口と前記液体減速材及び中性子反射材出口との間の中央部に向かって、徐々に増大する。好ましくは、前記内側断面積は、前記減速材及び中性子反射材中心容器の軸方向の範囲の少なくとも一部において、前記減速材及び中性子反射材入口と前記減速材及び中性子反射材出口との間で連続的に変化する。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、筒形の前記減速材及び中性子反射材中心容器、及び/又は前記液体減速材及び中性子反射材容器は、金属合金又はセラミック複合材の壁を有する。ただしここで、前記金属合金は好ましくは鉄合金、より好ましくはステンレス鋼、最も好ましくはジルコニウム合金である。
また好ましくは、前記燃料塩容器も、セラミック複合材料又は金属合金の壁を有する。ただしここで、前記金属合金は好ましくはステンレス鋼である鉄合金か、好ましくはインコネル(登録商標)又はハステロイ(登録商標)であるニッケル合金である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料塩ジャケットの各燃料塩容器は、前記燃料塩ジャケットの他の燃料塩容器と実質的に同一である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記減速体及び中性子反射体ジャケットの各減速材及び中性子反射体容器は、前記減速体及び中性子反射体ジャケットの他の減速材及び中性子反射体容器と実質的に同一である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、筒形の第1の断熱ジャケットが、前記減速材及び中性子反射材中心容器と前記燃料塩ジャケットとの間に設けられ、前記第1の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第1の断熱部材によって形成され、前記第1の断熱部材は、好ましくは前記第1の断熱ジャケットのセクター(前記第1の断熱ジャケットを径方向に分割した部品)のような形状であるか、又は前記減速材及び中性子反射材中心容器の周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第1の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる。この断熱構造により、液体減速材及び中性子反射材への熱損失が非常に小さくなり、液体減速材及び中性子反射材を燃料塩よりも常にはるかに低い温度で作動させることができる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、筒形の第2の断熱ジャケットが、前記燃料塩ジャケットと前記減速体及び中性子反射体ジャケットとの間に設けられ、前記第2の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第2の断熱部材によって形成され、前記第2の断熱部材は、好ましくは前記第2の断熱ジャケットのセクターのような形状であるか、又は前記燃料塩ジャケットの周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第2の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記原子炉炉心は、複数の管状ブランケット塩容器を備え、各管状ブランケット塩容器は、溶融ブランケット塩の通路となるための、入口から出口に亘る軸方向の領域を有し、前記複数の管状ブランケット塩容器は、前記減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲む筒形のブランケット塩ジャケットを形成するように組み立てられる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、筒形の第3の断熱ジャケットが、前記減速体及び中性子反射体ジャケットの前記減速材及び中性子反射材容器と、前記ブランケット塩ジャケットとの間に設けられ、前記第3の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第3の断熱部材によって形成され、前記第3の断熱部材は、好ましくは前記第3の断熱ジャケットのセクターのような形状であるか、又は前記減速材及び中性子反射体ジャケットの周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第3の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記第1、第2、又は第3筒形の断熱ジャケットのグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトは、シートメタル、好ましくは約0.01~0.1mmの厚さのシートメタルで被覆され、塩ウィッキングのリスクを排除するか、少なくとも低減する。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記減速材及び中性子反射材中心容器、前記燃料塩容器、前記減速材及び中性子反射材容器、及び/又は前記ブランケット塩容器は、それぞれ、中央部から半径方向に延びる対称面Mによって分離された2つの部品から製造される。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記減速材及び中性子反射材中心容器の内側半径R11及び外側半径R12は場所によって変化し、前記内側半径R11及び前記外側半径R12は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に減少する。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、燃料塩容器20は、好ましくは、場所によって大きさが変化する内側有効半径R21'及び外側有効半径R22'と、所定のセクター角度A2とを有する円筒形状のセクター(当該円筒形状を径方向に分割した部品)として形成され、内側有効半径R21'及び外側有効半径R22'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から離れるに従って徐々に小さくなる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記減速体及び中性子反射体ジャケットは、場所によって大きさが変化する内側半径R31及び外側半径R32を有する中空の筒状であり、 前記減速体及び中性子反射体ジャケットの前記減速材及び反射材容器は、好ましくは、場所によって大きさが変化する、内側半径R31及び外側半径R32、又は内側有効半径R31'及び外側有効半径R32'を有すると共に、所定のセクター角度A3を有する円筒形状のセクターとして形成され、 前記内側半径R31及び前記外側半径R32、又は前記内側有効半径R31'及び前記外側有効半径R32'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記ブランケット塩ジャケットは、場所によって大きさが変化する内側半径R41及び外側半径R42又は内側有効半径R41'及び外側有効半径R42'を有する中空の筒状であり、 前記ブランケット塩容器は、場所によって大きさが変化する、内側半径R41及び外側半径R42、又は内側有効半径R41'及び外側有効半径R42'を有すると共に、所定のセクター角度A4を有する円筒形状のセクターとして形成され、 前記内側半径R41及び前記外側半径R42、又は前記内側有効半径R41'及び前記外側有効半径R42'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料塩ジャケット、前記中性子反射体ジャケット、及び/又は前記ブランケットジャケットは、円周方向において実質的に連続したジャケットであり、好ましくは、これらのジャケットを形成する管状容器の相対する側面が、軸方向に亘って互いに接している。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記中心減速材容器は、複数の管状減速体容器によって分割形成され、各減速材容器は、減速材の通路となるために、減速材入口から減速材出口に亘る軸方向の領域を有し、前記複数の管状減速材容器は、前記中心減速材容器を形成するように組み上げられる。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記中心減速材容器は周方向外壁と周方向内壁とを有し、前記周方向内壁は好ましくは、制御棒を受け入れるための内腔を有する。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記液体減速材は重水である。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料塩は核***性成分(fissile component)を含み、好ましくは濃縮7フッ化リチウム、四フッ化トリウム、四フッ化ウラン、三フッ化ウラン及び/又は三フッ化プルトニウム(7LiF)-(ThF4)-(UF4)-(UF3)-(PuF3)塩を含む。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記ブランケット塩は、核原料成分(fertile component,熱中性子を吸収してfissile componentに転換される成分)を含む溶融塩であり、好ましくは濃縮7フッ化リチウム及び/又は四フッ化トリウム(7LiF)-(ThF4)塩を含む。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記原子炉の炉心は、ジャケットを構成する複数の容器の間、好ましくは燃料塩ジャケットを構成する容器間、及び/又は、燃料ジャケットを囲むか又は囲まれるジャケットを形成する容器間に、可動の中性子吸収制御要素を備える。前記中性子吸収制御要素は、制御棒に類似しているが、前記中性子吸収制御要素が棒状ではなく、前記ジャケットの隣接する容器に合わせて板状又はくさび状である点が異なっている。前記中性子吸収制御要素は、原子炉炉心の核反応性を制御するために、原子炉炉心内に挿入したり及び原子炉炉心から引っ込めたりすることができるように構成される。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、第2の燃料塩ジャケットが前記減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲み、第2の減速体及び中性子反射体ジャケットが前記第2の燃料塩ジャケットを取り囲む。そのような実装形態において、ブランケットジャケットが存在する場合は、前記ブランケットジャケットが第2の中性子反射体ジャケットを取り囲む。この実装形態において、前記第2の燃料塩ジャケットは、複数の管状燃料塩容器により構成され、前記複数の管状燃料塩容器は、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域をそれぞれ有し、前記減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲む、筒形の第2の燃料反射体ジャケットを形成するように組み立てられる。第2の中性子反射ジャケットは、複数の管状減速材及び中性子反射材容器によって形成される。個々の管状減速材及び中性子反射材容器は、液体の減速材・中性子反射材を通すことができるように、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する。
本発明のもう一つの目的は、上記の問題を克服するか、少なくとも軽減する、原子炉炉心の運転方法を提供することである。
第2の捉え方によれば、溶融塩原子炉用の原子炉炉心を運転する方法がもたらされる。この原子炉炉心は、
・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有する、燃料塩ジャケットと;
・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、 液体の減速材・中性子反射材の通路となるための、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する減速体及び中性子反射体ジャケットと;
を備え、
そして前記方法は、
・ 前記燃料塩ジャケット内の燃料塩の温度を約600~700℃に保つように制御することと;
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の液体減速材及び中性子反射材の温度を、約10~90℃に保つように制御することと;
・ 好ましくは、前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の液体減速材及び中性子反射材の温度も、約10~90℃に保つように制御することと;
を含む。
減速材の温度を約10~90℃の間で制御することにより、減速材と中性子反射体(典型的には重水)について、沸騰しないように加圧する必要がなくなる。このため、減速材及び中性子反射材を収納する容器は圧力容器として機能する必要がなくなり、その結果、軽量で剛性も低い手法で構成することができる。これは大きな利点である。というのも、必要な特性を持つ適切な材料は、圧力に耐える必要がある構造(圧力容器)には使用しにくいためである。従って、炉心の建設は大幅に容易になる。
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、この方法は、
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の液体減速材・中性子反射材の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の液体減速材・中性子反射材の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ 前記ブランケット塩ジャケット内の溶融ブランケット塩の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ 前記燃料ジャケットを通る燃料塩の温度を調整すること、及び/又は、
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の液体減速材・中性子反射材の温度を調整すること、及び/又は、
・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の液体減速材・中性子反射材の温度を調整すること、及び/又は、
・ 液体減速材・中性子反射材の化学組成を調整すること、及び/又は、
・ 燃料塩の化学組成を調整すること、及び/又は、
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の液体減速材・中性子反射材の流量を調整すること、及び/又は、
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器の内腔に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
・ 隣接する2つの燃料塩容器の間に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
・ 隣接する減速材及び中性子吸収材容器の間に少なくとも部分的に挿入された制御棒の位置を調整すること、
を含む。
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記制御棒は、ボロンやハフニウムなどの中性子吸収材料である。
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記液体減速材は重水である。
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料塩は核***性成分(fissile component)を含み、好ましくは濃縮7フッ化リチウム、四フッ化トリウム、四フッ化ウラン、三フッ化ウラン及び/又は三フッ化プルトニウム(7LiF)-(ThF4)-(UF4)-(UF3)-(PuF3)塩を含む。
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記ブランケット塩は、核原料成分(fertile component,熱中性子を吸収してfissile componentに転換される成分)を含む溶融塩であり、好ましくは濃縮7フッ化リチウム及び/又は四フッ化トリウム(7LiF)-(ThF4)塩を含む。
第3の捉え方によれば、第2の捉え方による方法又は第2の捉え方の任意の可能な実装形態による方法を実行するように構成された制御装置を備える溶融塩原子炉がもたらされる。
本発明のもう一つの目的は、上記の問題を克服するか、少なくとも軽減する、原子炉炉心を提供することである。
第4の捉え方によれば、溶融塩原子炉用の原子炉炉心がもたらされる。この原子炉炉心は、
・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有し、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有する減速材及び中性子反射材中心容器と;
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有し、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有する燃料塩ジャケットと;
・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、 液体の減速材・中性子反射材の通路となるための、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有し、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有する減速体及び中性子反射体ジャケットと;
を備える。
容器の材料の選択と前記第4の捉え方は、溶融塩と減速材液体に対する良好な耐性を提供しながら、容器による中性子吸収を比較的低く抑えることを保証する。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記原子炉炉心は、前記中心減速材容器と前記燃料塩ジャケットの間に筒形の第1の断熱ジャケットを備え、前記第1の断熱ジャケットは、黒鉛フェルトや断熱エアロゲル含浸黒鉛フェルト、又はセラミック繊維断熱材などの高温断熱材からなる。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記原子炉炉心は、前記燃料塩ジャケットと前記減速材及び中性子反射体ジャケットの間に筒形の第2の断熱ジャケットを備え、前記第2の断熱ジャケットは、黒鉛フェルト又は断熱エアロゲル含浸黒鉛フェルトからなる。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記液体減速材及び中性子反射材は、重水又は溶融水酸化物であり、好ましくは溶融濃縮リチウム7重水素化塩(7LiOD)である。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記制御棒は、中性子吸収材料、好ましくはボロン又はハフニウムを含む。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料塩は核***性成分(fissile component)を含み、好ましくは濃縮7フッ化リチウム、四フッ化トリウム、四フッ化ウラン、三フッ化ウラン及び/又は三フッ化プルトニウム7LiF-ThF4-UF4-UF3-PuF3塩を含む。
前記第4の捉え方の実装形態の一例において、前記ブランケット塩は、核原料成分(fertile component,熱中性子を吸収してfissile componentに転換される成分)を含む溶融塩であり、好ましくは濃縮7フッ化リチウム及び/又は四フッ化トリウム(7LiF-ThF4)塩を含む。
第5の捉え方によれば、第4の捉え方又は第4の捉え方の任意の可能な実施態様による原子炉炉心を備える溶融塩原子炉が提供される。
第6の捉え方によれば、溶融塩原子炉用の原子炉炉心を運転する方法がもたらされる。この原子炉炉心は、
・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、第1の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有する、燃料塩ジャケットと;
・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、 第2の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速体及び中性子反射体ジャケットと;
を備え、前記第1の液体減速材及び中性子反射材及び前記第2の液体減速材及び中性子反射材は水酸化物減速材であり、
前記方法は、
・ 前記燃料塩ジャケット内の燃料塩の温度を約600~700℃に保つように制御することと;
・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の前記第1の液体減速材及び中性子反射材の温度を、約200~700℃に保つように制御することと;
・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の前記第2の液体減速材及び中性子反射材の温度も、約200~700℃に保つように制御することと;
を含む。
この目的や他の目的が、本願の開示事項の特徴により達成される。可能な様々な実装形態が、明細書及び図面から明らかになるだろう。
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な捉え方や実施形態、実装例を詳細に説明する。
ある実施形態による原子炉炉心を有する溶融塩炉の概略図である。 実施形態による原子炉炉心の斜視図である。 図2の原子炉炉心の拡大詳細を含む断面図である。 図2の原子炉炉心の拡大詳細を含む断面図である。 図2の原子炉炉心の一部の斜視図及び分解図である。 図2の原子炉炉心の一部を、原子炉炉心の残りの分解されていない部分とともに示す斜視図及び分解図である。 別の実施形態による原子炉炉心の斜視図である。 図7の原子炉炉心の断面図である。 図2の原子炉炉心の断面図である。 図2の原子炉炉心の燃料塩ジャケットを取り出して描いた斜視図である。 図10の燃料塩ジャケットの容器を取り出して描いた斜視図である。 原子炉炉心の別の実施形態を示す切開斜視図である。
詳細説明
図1は、原子炉炉心1の一実施形態を用いた溶融塩型原子炉100の一実施形態を示す図である。溶融塩型原子炉100は、溶融燃料塩を循環させるための複数のフローマシン2(ポンプ)を用いている。各フローマシン2は、炉心1と熱交換するための燃料塩ループ4、原子炉冷却材ループ5及び二次冷却材ループ6を介して熱交換器3に接続されている。燃料塩ループ4は、核反応を駆動・制御するための燃料塩を供給する。熱交換器3は、燃料塩ループ4及び原子炉冷却材ループ5、二次冷却材ループ6を介して原子炉冷却材及び二次冷却材を供給する。溶融塩の流れを循環させ推進するために、フローマシン1(ポンプ)が使用される。
図2~図6を参照すると、原子炉炉心1の実施形態が示されている。炉心1は、上端に入口及び/又は出口領域7、下端に入口及び/又は出口領域8を有する。
原子炉炉心1は軸Xを有し、入口及び/又は出口入口領域7と入口及び/又は出口領域8との間に、軸Xに沿った領域を有する。
図示の実施形態では、原子炉炉心1は筒状であり、その一部はほぼ球形である。原子炉炉心1の断面は同心円状の構造を有する。管状の減速材及び中性子反射材中心容器10は、軸線Xに沿った領域を有する。本実施形態では、管状の減速材及び中性子反射材中心容器10は、全体的に筒状である管状の減速材及び中性子反射材中心容器10は、液体減速材及び中性子反射材11の通路であって、液体減速材及び中性子反射材入口12と液体減速材及び中性子反射材出口13との間の通路を提供する。液体減速材及び中性子反射材は、重水又は溶融水酸化物、例えば溶融濃縮リチウム7重水素化塩(7LiOD)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はそれらの混合物とすることができる。
減速材及び中性子反射材中心容器10は、液体減速材及び中性子反射材入口12と液体減速材及び中性子反射材出口13との間の中間部で最大の内側断面積を有する。減速材及び中性子反射材中心容器10の内側断面積は、好ましくは、液体減速材及び中性子反射材入口12と液体減速材及び中性子反射材出口13との間において、中央部に向かって徐々に増大する。減速材及び中性子反射材中心容器10の内側断面積は、好ましくは、減速材及び中性子反射材入口12と減速材及び中性子反射材出口13との間で連続的に変化する。従って、筒形の実施形態の場合、減速材及び中性子反射材中心容器10は、変化する内側半径を有する。内側半径は、筒形の減速材及び中性子反射材中心容器10が半球形状を達成するような形で変化させられる。減速材及び中性子反射材中心容器10の内側半径R11及び外側半径R12は場所によって変化し、内側半径R11及び外側半径R12は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に減少する。原子炉炉心1の運転中、中央の減速材及び中性子反射材容器10は、液体の減速材及び中性子反射材11で少なくとも部分的に充填されるか又は完全に充填される。液体減速材及び中性子反射材11は、減速材及び中性子反射材中心容器10を通る流れによって制御された速度で交換される。
減速材及び中性子吸収材が重水の場合、実施形態によっては、筒形の減速材及び中性子反射材中心容器10の壁は、金属合金で作られ、好ましくは鉄合金、好ましくはステンレス鋼、最も好ましくはジルコニウム合金製である。セラミック複合材料製であることも非常に好ましい。セラミック複合材料は、実施形態によってはセラミックマトリックス複合材料である。セラミックマトリックス複合材料は、セラミックマトリックスに埋め込まれたセラミック繊維を有する。繊維及びマトリックスはいずれも任意のセラミック材料からなることができ、炭素及び炭素繊維もセラミック材料とみなすことができる。実施形態によっては、セラミック複合材料は、炭化ケイ素と炭素の複合材料であり、例えば、炭素繊維-炭素マトリックス(C/C)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭化ケイ素マトリックス(SiC/SiC)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭素マトリックス(SiC/C)複合材料である。
筒状の燃料塩ジャケットは、入口領域7と出口領域8の間で軸線Xに沿った領域を有し、減速材及び中性子反射材中心容器10を囲んでいる。燃料塩ジャケットは、複数の管状燃料塩容器20を組み立てることによって形成される。各管状燃料塩容器20は、溶融燃料塩21を通すことができるように、燃料塩入口22から燃料塩出口23に亘る軸方向の領域を有する。燃料塩ジャケット内の各燃料塩容器20は、燃料塩ジャケット内の他の燃料塩容器20と実質的に同一である。原子炉炉心1の運転中、燃料塩ジャケット20は少なくとも部分的に又は完全に燃料塩21で満たされる。燃料塩21は、燃料塩容器20を通る流れによって制御された速度で交換される。
中心減速材容器10と燃料塩ジャケットとの間には、筒状の第1断熱ジャケットが設けられている。第1の断熱ジャケットは、1つ又は複数の第1の断熱部材15によって形成される。図示されるように、第1の断熱部材15は、第1の筒状断熱ジャケットのセクター(径方向の区域をなす部品)のような形状とすることができる。あるいは、第1の断熱部材15は、中心減速材容器10の周囲に螺旋状に巻かれる帯状の形状とすることもできる。実施形態によっては、第1の断熱部材15は、グラファイトフェルトで作られるか、断熱エアロゲルを含浸させたグラファイトフェルトで作られる。第1の断熱ジャケット15は、液体減速材及び中性子反射体11への熱損失を大幅に小さくし、液体減速材及び中性子反射体11を燃料塩よりも常にはるかに低い温度で作動させることを可能にする。
筒形の燃料塩ジャケットは、筒形の減速材及び中性子反射材中心容器10(間に第1の断熱ジャケットを有する)の形状に一致するような形状を有する。すなわちそれに補完的な形状を有する。従って、燃料塩ジャケットの内側半径は、筒形の減速材及び中性子反射材中心容器10の外側半径と同様に変化し、第1の断熱ジャケット15がその間に収まるようになっている。
燃料塩ジャケットは中空で中央が膨らんだ筒の形を有し、その内側半径R21及び外側半径R22は場所によって大きさが変化する。燃料塩容器20は、好ましくは、場所によって大きさが変化する内側半径R21及び外側半径R22と、所定のセクター角度A2とを有する筒状部品のセクターとして形成され、内側半径R21及び外側半径R22は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる。本実施形態では、セクター角は、原子炉炉心1の全ての要素について同じであり、従って、セクター角は、図4において「An」として示されている。しかし、セクター角「An」は、様々なジャケットについて同じである必要はなく、単一のジャケットを構成する様々な容器について同じである必要もないことを理解されたい。
燃料塩ジャケットは円周方向に実質的に連続したジャケットであり、管状の燃料塩容器20の相対する側面が、軸方向に亘って互いに接している。
筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットは、筒形の燃料塩ジャケットを取り囲んでいる。筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットは、複数の管状の減速材及び中性子反射材容器30を組み立てることによって形成される。個々の管状減速材及び中性子反射材容器30は、液体の減速材・中性子反射材31を通すことができるように、液体減速材・中性子反射材入口32から液体減速材・中性子反射材出口33に亘る軸方向の領域を有する。管状の減速材及び中性子反射材容器30を構成する要素は、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有する。セラミック複合材料は、実施形態によってはセラミックマトリックス複合材料である。セラミックマトリックス複合材料は、セラミックマトリックスに埋め込まれたセラミック繊維を有する。繊維及びマトリックスはいずれも任意のセラミック材料からなることができ、炭素及び炭素繊維もセラミック材料とみなすことができる。実施形態によっては、セラミック複合材料は、炭化ケイ素と炭素の複合材料であり、例えば、炭素繊維-炭素マトリックス(C/C)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭化ケイ素マトリックス(SiC/SiC)複合材料、炭化ケイ素繊維-炭素マトリックス(SiC/C)複合材料である。実施形態によっては、減速体及び中性子反射体ジャケットの各減速材及び中性子反射材容器30は、減速体及び中性子反射体ジャケットの他の減速材及び中性子反射材容器30と実質的に同一である。
減速体及び中性子反射体ジャケットは、場所によって大きさが変化する内側半径R31及び外側半径R32を有する中空の筒状である。減速材及び中性子反射材容器30は、場所によって大きさが変化する内側及び外側半径R31及びR32を有し、筒状ジャケットのセクター(径方向の区域をなす部品)をなす。減速材及び中性子反射材容器30は、所定のセクター角度A3を有する。内側半径R31及び外側半径R32は、中央部又はその近傍で最も大きく、中央部から徐々に小さくなる。
原子炉炉心1の運転中、減速体及び中性子反射体ジャケットは、液体減速材及び中性子反射材31で少なくとも部分的に又は完全に満たされる。液体減速材及び中性子反射材31は、減速材及び中性子反射材中心容器30を通る流れによって、制御された速度で交換される。
燃料塩ジャケットと減速体及び中性子吸収ジャケットの間には、筒状の第2断熱ジャケットが設けられている。第2の断熱ジャケットは、1つ以上の第2の断熱部材25によって形成される。第2の断熱部材25は、図示のように、第2の筒状断熱ジャケットのセクターのような形状とすることができる。あるいは、第2断熱部材25は、燃料塩ジャケットの周囲に螺旋状に巻かれるストリップの形状とすることもできる。実施形態によっては、第2の断熱部材25は、グラファイトフェルトで作られるか、断熱エアロゲルを含浸させたグラファイトフェルトで作られる。第2の断熱ジャケットにより、減速材及び中性子反射材液体31への熱損失が大幅に低減され、液体減速材及び中性子反射材31を、燃料塩21よりも常にはるかに低い温度で作動させることができる。
オプションのブランケット塩ジャケットが減速体及び中性子吸収ジャケットを取り囲み、好ましくはその間に第3の断熱ジャケットがある。ブランケット塩ジャケットは、複数の管状ブランケット塩容器40を有する。各管状ブランケット塩容器40は、溶融ブランケット塩41を通過させるために、入口42から出口43へと軸方向に亘る領域を有する。実施形態によっては、ブランケット塩ジャケットは、溶融ブランケット塩41を流れない状態で保持するために、ブランケット塩入口及び出口を有さない。複数の管状ブランケット塩容器40は、減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲む筒形ブランケット塩ジャケットを形成するように組み立てられる。
ブランケット塩ジャケットは中空で中央が膨らんだ筒の形を有し、その内側半径R41及び外側半径R42は場所によって大きさが変化する。ブランケット塩容器40は、場所によって大きさが変化する内側及び外側半径R41及びR42を有し、筒状ジャケットのセクターをなし、所定のセクター角度A4を有する。内側半径R41及び外側半径R42は、中央部又はその近傍で最も大きく、中央部から徐々に小さくなる。ブランケット塩ジャケットは、ブランケット塩の流入口と流出口がない構造も可能であり、その場合、ブランケット塩41は連続的に交換されず、ブランケット塩の放射線分解を防ぐために、融点付近で溶融状態に維持されるか、凍結される。
第3の筒形断熱ジャケットは、中性子反射容器とブランケット塩ジャケットとの間に設けられる。第3の断熱ジャケットは、好ましくは1つ以上の第3の断熱部材35によって形成される。第3の断熱部材35は、第3の筒状断熱ジャケットのセクターのような形状とすることもできるし、減速体及び中性子反射体ジャケットの周囲に螺旋状に巻かれるストリップのような形状にすることもできる。第3の断熱部材35は、好ましくはグラファイトフェルトで作られるか、断熱エアロゲルを含浸させたグラファイトフェルトで作られる。
図示していない実施形態によっては、断熱シートは、例えば0.01~0.1mmのシートメタルで被覆され、容器が破損した場合に塩が毛細管現象で断熱材に浸入する(塩ウィッキング)危険性を排除するか、少なくとも低減する。断熱シートでは、崩壊熱の放出が困難になり、その結果、塩の沸騰や圧力上昇を引き起こす可能性がある。
燃料塩容器20、減速材及び中性子反射材中心容器30、及び/又はブランケット塩容器40は、実施形態によっては、それぞれ、中央部から半径方向(軸Aに対して半径方向)に延びる対称面Mによって分離された2つの部分から組み立てられる。これらの容器20、30、及び40の入口部及び出口部は、図示のように、半径方向外側に湾曲し、配管に接続するためのフランジなどを備えることができる。しかし、容器20、30、40を配管に接続するための他の解決策は当技術分野で知られており、例えば入口部及び出口部が軸方向に延びる構造も可能であり、配管に接続するためのフランジも必ずしも設ける必要はない。減速材及び中性子反射材中心容器10の入口及び出口12,13は、実施形態によっては、ポンプに接続するためのフランジを備えるが、実施形態によっては、入口及び出口12,13はフランジなしで形成してもよく、別の形式のアセンブリによって配管に接続されてもよい。
容器20、30、40及び場合によってはそれらの入口部及び出口部は、簡略化の理由から図示しない構造体によって、一体に保持される。このような支持構造は、当該技術分野においてよく知られている。
原子炉炉心1のデザインは、できる限り球形でありながら、原子炉炉心1内の過酷な条件に耐え得る材料から構成可能であり、かつ生成された熱を取り出すのに十分な燃料塩循環速度を可能にする原子炉炉心を得る試みである。その結果、筒形と球形の両方の構造を有すると共に、層状とセグメント構成の両方の構造を有するデザインとなった。すなわち、タマネギのような層状構造及び形状と、柑橘類の分割構造及び形状の、ハイブリッドのようなデザインとなった。
従来のセラミックは比較的脆く、熱ショック耐性も比較的低く、破壊靭性も比較的低い。セラミック複合材料又はセラミックマトリックス複合材料は、短い、連続した、又は編み込まれたセラミック繊維材料から作られている。セラミック繊維材料は、通常、セラミックマトリックスに埋め込まれ、セラミックマトリックスの補強を提供する。セラミック複合材料は、従来のセラミックの欠点を克服するか、少なくともその欠点を軽減する。
繊維とマトリックスは様々なセラミック材料から作られ、それぞれ異なる様々な工程で作られるため、強度や気孔率などの機械的特性や不純物含有量に違いが生じる。最も一般的な市販のセラミック複合材料は、炭素及び/又は炭化ケイ素繊維と炭素又は炭化ケイ素マトリックスから作られ、それぞれ(C/C)、(C/SiC)、(SiC/C)、(SiC/SiC)と略される。天然に存在する炭素は主に炭素12同位体を含み、ケイ素は主にケイ素28同位体を含み、いずれも熱中性子エネルギースペクトルにおいて、中性子捕獲確率は低い。さらに、炭素も炭化ケイ素も、溶融塩炉で使用される溶融塩に対して良好な耐食性、すなわち溶融塩に対する耐食性を有し、熱スペクトルにおける中性子吸収率も低い。しかし、溶融塩炉心の容器やジャケットの構造材料として使用するには、どちらも脆すぎる。しかし、これらのセラミック複合材料は、比較的高い破壊靭性と高い熱ショック耐性を有し、熱スペクトルにおける中性子吸収率も低く、放射線損傷に対する優れた耐性を併せ持つ。溶融塩原子炉の建設材料として興味深い候補となる。
減速材及び中性子反射材容器10、及び/又は減速材及び中性子反射材容器30、及び/又は燃料塩容器20、及び/又はブランケット塩容器40のような容器をセラミック複合材から製造することは、レイアップと固定を含む。すなわち、セラミック繊維又は樹脂含浸セラミック繊維を型/コア内又はその周囲に巻いたり配置したりすることにより、最終的なセラミック複合材部品の形状を与え、次にポリマーを繊維に浸透させ、そして部品を硬化させることを含む。硬化後、部品は脱型され(型/コアから取り出され)、ポリマーが不活性雰囲気中で、通常800℃を超える高温の炉で熱分解され、マトリックス複合材料が形成される。実施形態によっては、型/コアは、最初の使用後に燃焼、溶融、粉砕又は破壊される、単回使用の型/コアである。これにより部品は多孔質となる。部品は再浸透(樹脂含浸)され、所望の多孔度に達するまで熱分解ステップが繰り返される。
上記のプロセスのいくつかのマイナーな変形を使用することができるが、これらのプロセスはすべて、型内及び/又はコア上で繊維及びポリマーを成形する最初のステップに依存する。このため、製造可能なジャケット、容器、及びその他の部品の形状が制限される。なぜなら、原子炉炉心1のジャケット、容器、及びその他の部品は、容器を最終形状にした状態で型又は固定具(コア)から脱離させることができなければならず、公差に応じた中間加工及び最終加工がある程度可能でなければならないからである。このプロセスでは、鋳造、成形(例えば、鍛造、圧延、押し出し、型成形、圧痕付け、延伸、深絞り、スタンピング、曲げ)、機械加工(例えば、旋削、穴あけ、ボーリング、フライス削り、切削)などの従来の金属加工と比較して複雑な形状を作成することはできないのであるが、それでもなお、金属部品の既存の機械加工と比較して、技術的に困難である。しかし、開示された本発明の原子炉炉心の構造及び形状により、各容器及びジャケットは、複合セラミック材料の部品を製造するための商業的に利用可能なプロセスによって製造することができる。
図示していないある実施形態では、中心減速材容器10は、複数の管状減速体容器によって分割形成される。各減速材容器は、減速材を通過させるために、減速材入口から減速材出口に亘る軸方向の領域を有し、複数の管状減速材容器が、中心減速材容器10を形成するように組み立てられる。この実施形態の変形例では、中心減速材容器10は、周方向外壁と周方向内壁とを有し、周方向内壁は、制御棒を受け入れるための内腔を形成する。制御棒は、ボロンやハフニウムなどの中性子吸収材料である。
図示していないある実施形態では、第2の燃料塩ジャケットが減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲み、第2の減速体及び中性子反射体ジャケットが第2の燃料塩ジャケットを取り囲む。そのような実施形態において、ブランケットジャケットが存在する場合は、ブランケットジャケットが第2中性子反射ジャケットを取り囲む。そのような実施形態では、第2の燃料塩ジャケットは、複数の管状燃料塩容器によって形成され、各管状燃料塩容器は、溶融燃料塩21を通過させるために、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の広がりを有する。
そして複数の管状容器が組み立てられ、減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲む第2の筒形燃料塩ジャケットを形成する。第2の中性子反射ジャケットは、複数の管状減速材及び中性子反射材容器によって形成される。個々の管状減速材及び中性子反射材容器は、液体の減速材・中性子反射材を通すことができるように、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する。
図示していないある実施形態では、原子炉炉心1は、ジャケットの容器間、好ましくは燃料塩ジャケットを構成する容器間及び/又は燃料ジャケットを取り囲むか又は燃料ジャケットに取り囲まれるジャケットを形成する容器間に、可動の中性子吸収制御要素を備える。中性子吸収制御要素は、制御棒に類似しているが、中性子吸収制御要素が棒状ではなく、当該ジャケットの隣接する容器に合わせて板状又はくさび状である点が異なっている。中性子吸収制御要素は、原子炉炉心の核反応性を制御するために、原子炉炉心1内に挿入したり及び原子炉炉心1から引っ込めたりすることができるように構成される。
実施形態によっては、炉心1の核連鎖反応の反応度は、燃料塩ジャケット内の燃料塩温度を約600~700℃の間の温度に維持するように制御することと、中央の減速材及び中性子反射材容器10内の減速材及び中性子反射材液を約10~90℃の間の温度に維持するように制御することとによって、制御される。
好ましくはまた、減速体及び中性子反射体ジャケット20内の液体減速材及び中性子反射材21の温度は、約10~90℃の間の温度に維持されるように制御される。
核連鎖反応の反応度及び原子炉炉心1の温度を制御する方法は、さらに以下を含むことができる。
・ 減速材及び中性子反射材中心容器10内の液体減速材・中性子反射材11の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ 減速体及び中性子反射体ジャケット30内の液体減速材・中性子反射材31の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ ブランケット塩ジャケット40内の溶融ブランケット塩41の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
・ 燃料ジャケット20を通る燃料塩21の温度を調整すること、及び/又は、
・ 減速材及び中性子反射材中心容器10内の液体減速材・中性子反射材11の温度を調整すること、及び/又は、
・ 中心減速体及び中性子反射体ジャケット30内の液体減速材及び中性子反射材31の温度を調整すること、及び/又は、
・ 燃料塩21の化学組成を調整すること、及び/又は、
・ 液体の減速材・中性子反射材11、31の化学組成を調整すること、及び/又は、
・ 減速材及び中性子反射材中心容器10の内腔に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
・ 隣接する2つの燃料塩容器20の間に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
・ 隣接する減速材及び中性子吸収材容器30の間に少なくとも部分的に挿入された制御棒の位置を調整すること。
減速材及び中性子反射材中心容器10内の液体減速材及び中性子反射材の液面高さ又は質量を増加させると、より多くの減速及び反射を提供することになり、核連鎖反応の反応度が大きくなる。逆にすれば反応度は小さくなる。
減速体及び中性子反射体ジャケット30内の液体減速材及び中性子反射材の液面高さ又は質量を増加させると、より多くの減速及び反射を提供することになり、中性子漏洩も少なくなり、核連鎖反応の反応度が大きくなる。逆にすれば反応度は小さくなる。
ブランケット塩ジャケット40が存在する場合、この中の溶融ブランケット塩41の液面高さ又は質量を増加させることは、中性子の反射が増え、中性子の漏れが少なくなるので、核連鎖反応の反応度が大きくなる。逆にすれば反応度は小さくなる。
液面は、当該容器内の液体量の決定に理想的な平坦な液面を有するとは限らない。これは、流量がかなり高いため、液面には波や気泡が生じたり、泡立ち/泡立ちが生じたりすることがあるためである。さらに、液体減速材が当該容器に流入又は噴霧される場合、液体減速材の流れ又は液滴が減速に寄与する。このため実施形態によっては、調整されるのは容器内の液体の質量である。
燃料塩ジャケット20内の燃料塩の温度を上昇させると、原子炉炉心の平均密度が低くなるため、核***性燃料が少なくなり、核連鎖反応の反応度が低下する。逆にすれば反応度は大きくなる。
中心減速体・中性子反射容器10内の液体減速材・中性子反射材の温度を上昇させると、原子炉炉心の平均密度が低くなるため、減速や反射が多くなり、核連鎖反応の反応度が低下する。逆にすれば反応度は大きくなる。
減速体及び中性子反射体ジャケット内の液体減速材及び中性子反射材の温度を上昇させると、原子炉炉心内の平均密度が低くなるため、減速及び反射が多くなり、中性子漏れも多くなることによって、連鎖反応の反応度が低下する。逆にすれば反応度は大きくなる。
燃料塩21に核***性物質を加えると、核連鎖反応の反応度が高まる。逆もまた同様である。
燃料塩21にトリウムなどの核原料物質や、中性子を吸収する物質を加えると、核連鎖反応の反応度が低下する。逆もまた同様である。
液体減速・反射剤11、31にトリウムなどの核原料物質や中性子を吸収する物質を加えると、核連鎖反応の反応度が低下する。逆もまた同様である。
液体減速材11,31又は燃料塩21の温度は、例えば次の方法で変更される。
・ 流量を増加させる。これは、原子炉炉心1をまたぐ小さな温度降下を生じ、従って密度が高くなるか低くなる。及び/又は、
・ 炉心1の外部において、液体減速材11,31又は燃料塩21の冷却速度を調整する。それによって炉心1全体の平均温度が変化し、その結果、密度が高くなったり低くなったりする。
液体減速材11,31又は燃料塩21又は溶融ブランケット塩41の液面高さ又は質量は、例えば、それぞれの容器又はジャケット内に液体が上部から圧送される速度及び液体が下部から受動的に排出される速度を調整することによって、変更される。
図示されていないある実施形態では、制御装置、例えば電子制御ユニットが、溶融塩原子炉100の要素に結合され、上述した対策に従って、炉心1の反応度を制御するように構成される。
上記の実施形態は、減速材及び中性子反射材中心容器10、燃料塩ジャケット、中性子反射ジャケット、及び存在する場合にはブランケット塩ジャケット41の断面外形が、真円に近い断面外形を有する原子炉炉心を参照して説明された。
図7~図11は、原子炉炉心1の別の実施形態を示す。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。この実施形態において、減速材及び中性子反射材中心容器、燃料塩ジャケット、中性子反射ジャケット、及び存在する場合にはブランケット塩ジャケットは、多角形の断面外形を有する。多角形断面の外形は、外形が円形に近づくように、好ましくは少なくとも3つの辺を有する。すなわち、容器及びジャケットは、外形が円形に近づき、筒状を呈し、対応する有効半径を有する。図示の実施形態では、八角形に類似するように8つの辺を有するが、4以上の任意の数の辺を採用できる。この実施形態では、第1、第2及び第3の断熱ジャケット15,25,35は図面に示されていないが、これらの断熱ジャケット15,25,35がこの実施形態に含まれてもよいことを理解されたい。
減速材及び中性子反射材中心容器10は、場所によって大きさが変化する内側有効半径R11'及び外側有効半径及びR12'を有する。内側有効半径R11'及び外側有効半径及びR12'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最も大きく、中央部から離れるに従って徐々に小さくなる。この実施形態では、有効半径は、当該要素の断面多角形の外形に最も近似する円の半径である。
燃料塩ジャケットは、場所によって大きさが変化する有効内側半径R21'及び有効外側半径R22'を有する中空の丸い筒状要素として形成される。燃料塩容器20は、好ましくは、場所によって大きさが変化する内側有効半径R21'及び外側有効半径R22'と、所定のセクター角度A2とを有する筒状部品のセクターとして形成され、内側有効半径R21'及び外側有効半径R22'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から離れるに従って徐々に小さくなる。
減速体及び中性子反射体ジャケットは、場所によって大きさが変化する有効内側半径R31'及び外側有効半径R32'を有する中空の丸い筒状要素として形成される。減速材及び中性子反射材容器30は、場所によって大きさが変化する内側有効半径R31'及び有効外側半径R32'と所定のセクター角度A3とを有する円形筒形セクターの形状をしている。有効内側半径R31'及び有効外側半径R32'は、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から離れるにつれて徐々に小さくなる。
ブランケット塩ジャケットは、場所によって大きさが変化する有効内側半径R41'及び有効外側半径R42'を有する中空の丸い筒状要素として形作られる。ブランケット塩容器40は、場所によって大きさが変化する内側及び外側有効半径R41及びR42を有するセクターとして形成され、所定のセクター角度A4を有する。有効内側半径R41'及び有効外側半径R42'は、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から遠ざかるにつれて徐々に小さくなる。
多角形の断面外形を有する容器及びブランケットを使用することにより、これらの要素の表面を形成するシート材料は、複曲面である必要はない。すなわち、単曲面であることができる。これは、シートメタルで作られた要素にとって有利である。なぜなら、複曲面のシートメタルを製造するために二方向に曲げることに比べて、シートメタルを一方向にのみ曲げることは、はるかに容易かつ効率的であるからである。単曲面のシートメタルは、例えばロール曲げ技術を使用して非常に簡単に製造することができるが、復曲面のシートメタルは、通常、専用の金型が必要であり、それにより製造コストが大幅に増大する。シートメタル製のエレメントは、湾曲した複数のシートメタル品を継ぎ目に沿って溶接することによって組み立てることによって製造される。好ましくは、このようなシートメタルは比較的薄く、例えば1~2mmである。
図9は、複数の管状燃料塩容器20から組み立てられた燃料塩ジャケットを示す。各管状燃料塩容器20(図10に詳細を示す)は、溶接51によって接合される複数の湾曲シートメタル品によって形成される。入口/出口領域7では、好ましくは実質的に直角の出口要素24が燃料塩ジャケットに溶接されている。出口要素24は燃料塩出口23を有し、燃料塩ジャケットの管状燃料塩容器20に接続する。出口要素24は、管状燃料塩容器20に使用される材料と同じ材料、好ましくはシート材料から構成されることができる。入口/出口領域8において、燃料塩ジャケットは、実質的に直角の入口要素26と接続される。実質的に直角の入口要素26は燃料塩ジャケットに溶接される。入口要素26は燃料塩入口22を有し、燃料塩ジャケットの管状燃料塩容器20に接続する。入口要素26は、管状燃料塩容器20に使用される材料と同じ材料、好ましくはシート材料から構成されることができる。
図8に戻ると、管状の筒形の減速材及び中性子反射材中心容器10は、液体減速材及び中性子反射材入口12を有する実質的に直角の入口要素17を入口/出口領域7に備え、液体減速材及び中性子反射材出口13を有する実質的に直角の出口要素18を入口/出口領域8に備える。
減速体及び中性子反射体ジャケットは、液体減速材及び中性子反射材入口32を有する実質的に直角の入口要素を入口/出口領域7に備え、液体減速材及び中性子反射材出口33を有する実質的に直角の入口要素を入口/出口領域8に備える。
ブランケットジャケットは、ブランケット塩出口43を有する実質的に直角の出口要素を入口/出口領域7に備え、ブランケット塩入口42を有する実質的に直角の入口要素を入口/出口領域8に備える。
図12は、原子炉炉心の別の実施形態を示す切開斜視図である。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。図12の実施形態は、容器及びジャケットが、それらの軸方向範囲の全体に亘って直径/断面積が変化しないことを除いて、図7~図11の実施形態と本質的に同一である。その代わりに、軸方向において入口/出口領域7及び8に近い部分は、一定の断面積を有する。
図示していないある実施形態では、複合材又は金属から製造された容器は、機械的特性を高めるために補強が加えられている。補強は、内部支柱又はリブ、内部又は外部の「アイソグリッド」又は「オルソグリッド」のような構造によって形成することができる。実施形態によっては、ジャケットの容器は、溶接、ラッチ、又はバンドによってつなぎ合わされる。例えば、樽に巻かれるリング状のバンドによって樽板を繋ぎ合わせて樽を作り上げるのと同様の方法で、ジャケットの容器が繋ぎ合わされる。
図示されていないある実施形態では、容器は金属から製造され、金属容器に機械的支持と安定性を提供するために製造された複合ケージで囲まれる。そのような実施形態では、機械的完全性の一部又は大部分を低中性子吸収複合材料で提供することにより、金属からの中性子吸収を低減することができる。
水又は重水が液体減速材として使用される或る実施形態では、固体燃料及び重水減速材を用いる多くの原子炉で一般的であるように、pH制御のために7LiOD、又は他の水酸化物又は重水素が少量添加される。
水又は重水が液体減速材として使用される或る実施形態では、7LiOD、又は他の水酸化物、重水素化物、又は他の塩を大量に添加して、液体減速材の融点を抑制し、低温運転を可能とし、又は固化までのマージンを大きくする。融点を下げることは、液体減速材の密度を上げ、減速能力を高めるが、同時に原子炉の中性子スペクトルを低エネルギー側にシフトさせる。
水又は重水が液体減速材として使用される或る実施形態では、能動的又は受動的な再結合器が、液体減速材の放射線分解により発生したガスを再結合するために使用される。
発明の様々な捉え方や実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。
特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。特に言及されない限り、図面は明細書と共に読まれることが意図されており、本願による開示の全体の一部である。明細書中で、「水平」「縦」「左」「右」「上」「下」との用語や、これらの形容詞形や副詞形(例えば「水平に」「右方向に」「上方向に」等)の用語は、単に、読者が見る方向に図示された構造の向きを表すに過ぎない。同様に、「内側方向に」や「外側方向に」との用語は、状況によって長手方向軸や回転軸に対する面の方向を一般的に表す。

Claims (33)

  1. 溶融塩原子炉用の原子炉炉心であって、
    ・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
    ・ 溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域をそれぞれ有する複数の管状の燃料塩容器と;
    ・ 液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域をそれぞれ有する、複数の管状減速材及び中性子反射材容器と;
    を備え、
    前記複数の燃料塩容器は、前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットを形成するように組み立てられ、
    前記複数の管状減速材及び中性子反射材容器は、前記燃料塩ジャケットを囲む筒状の減速体及び中性子反射体ジャケットを形成するように組み立てられ、
    前記減速材及び中性子反射材中心容器は、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材入口と、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材出口との間の中央部において、最も大きな内側断面積を有する、
    原子炉炉心。
  2. 前記減速材及び中性子反射材中心容器の軸方向範囲の少なくとも一部において、該減速材及び中性子反射材中心容器の内側断面積は、前記液体減速材及び中性子反射材入口と前記液体減速材及び中性子反射材出口との間の中央部に向かって、徐々に増大し、
    好ましくは、前記内側断面積は、前記減速材及び中性子反射材中心容器の軸方向の範囲の少なくとも一部において、前記減速材及び中性子反射材入口と前記減速材及び中性子反射材出口との間で連続的に変化する、
    請求項1に記載の原子炉炉心。
  3. であって、
    前記減速材及び中性子反射材中心容器及び/又は前記管状減速材及び中性子反射材容器は金属合金又はセラミック複合材の壁を有し、ただし前記金属合金は好ましくは鉄の合金又はニッケル合金であり、前記鉄の合金はより好ましくはステンレス鋼であり、
    好ましくは、前記管状燃料塩容器は、
    ・ セラミック複合材、
    ・ 好ましくはステンレス鋼である鉄の合金、
    ・ 好ましくはインコネル又はハステロイであるニッケル合金、
    のいずれかの壁を有する、
    請求項1又は2に記載の原子炉炉心。
  4. 前記燃料塩ジャケットの各燃料塩容器は、該燃料塩ジャケットの他の燃料塩容器と実質的に同一である、請求項1から3のいずれかに記載の原子炉炉心。
  5. 前記減速材及び中性子反射材中心容器と前記燃料塩ジャケットとの間に筒形の第1の断熱ジャケットが設けられ、前記第1の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第1の断熱部材によって形成され、前記第1の断熱部材は、好ましくは前記第1の断熱ジャケットのセクターのような形状であるか、又は前記減速材及び中性子反射材中心容器の周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第1の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる、請求項1から4のいずれかに記載の原子炉炉心。
  6. 前記燃料塩ジャケットと前記減速体及び中性子反射体ジャケットとの間に筒形の第2の断熱ジャケットが設けられ、前記第2の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第2の断熱部材によって形成され、前記第2の断熱部材は、好ましくは前記第2の断熱ジャケットのセクターのような形状であるか、又は前記燃料塩ジャケットの周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第2の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる、請求項1から5のいずれかに記載の原子炉炉心。
  7. 複数の管状ブランケット塩容器を備え、各管状ブランケット塩容器は、溶融ブランケット塩の通路となるための、入口から出口に亘る軸方向の領域を有し、前記複数の管状ブランケット塩容器は、前記減速体及び中性子反射体ジャケットを取り囲む筒形のブランケット塩ジャケットを形成するように組み立てられる、請求項1から6のいずれかに記載の原子炉炉心。
  8. 前記減速体及び中性子反射体ジャケットと前記ブランケット塩ジャケットとの間に筒形の第3の断熱ジャケットが設けられ、前記第3の断熱ジャケットは、好ましくは1つ又は複数の第3の断熱部材によって形成され、前記第3の断熱部材は、好ましくは前記第3の断熱ジャケットのセクターのような形状であるか、又は前記減速材及び中性子反射体ジャケットの周りに螺旋状に巻かれるストリップの形状であり、前記第3の断熱部材は、好ましくはグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトで作られる、請求項7に記載の原子炉炉心。
  9. 前記第1の断熱ジャケット、前記第2の断熱ジャケット、又は前記第3の断熱ジャケットのグラファイトフェルト又は断熱エアロゲル含浸グラファイトフェルトは、塩ウィッキングのリスクを低減するためにシートメタルで被覆され、好ましくは約0.3~0.1mmの厚さのシートメタルで被覆される、請求項5から8のいずれかに記載の原子炉炉心。
  10. 前記減速材及び中性子反射材中心容器、前記燃料塩容器、前記減速材及び中性子反射材容器、及び/又は前記ブランケット塩容器は、それぞれ、中央部から半径方向に延びる対称面によって分離された2つの部品から製造され、好ましくは前記ブランケット塩容器は、
    ・ セラミック複合材、
    ・ 好ましくはステンレス鋼である鉄の合金、
    ・ 好ましくはインコネル又はハステロイであるニッケル合金、
    のいずれかの壁を有する、請求項1から9のいずれかに記載の原子炉炉心。
  11. 前記減速材及び中性子反射材中心容器の内側半径R11及び外側半径R12は場所によって変化し、前記内側半径R11及び前記外側半径R12は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に減少する、請求項1から10のいずれかに記載の原子炉炉心。
  12. 前記燃料塩ジャケットは中空で中央が膨らんだ円筒状の形を有し、その内側半径R21及び外側半径R22は場所によって大きさが変化し、
    前記燃料塩容器は、好ましくは、場所によって大きさが変化する、内側半径R21及び外側半径R22、又は内側有効半径R21'及び外側有効半径R22'を有すると共に、所定のセクター角度A2を有する円筒形状のセクターとして形成され、前記内側半径R21及び前記外側半径R22、又は前記内側有効半径R21'及び前記外側有効半径R22'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる、
    請求項1から11のいずれかに記載の原子炉炉心。
  13. 前記減速体及び中性子反射体ジャケットは、中空で中央が膨らんだ円筒形状を有し、場所によって大きさが変化する内側半径R31及び外側半径R32、又は有効内側半径R31'及び外側有効半径R32'を有し、
    前記減速材及び反射材容器は、好ましくは、場所によって大きさが変化する、内側半径R31及び外側半径R32、又は内側有効半径R31'及び外側有効半径R32'を有すると共に、所定のセクター角度A3を有する円筒形状のセクターとして形成され、 前記内側半径R31及び前記外側半径R32、又は前記内側有効半径R31'及び前記外側有効半径R32'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる、
    請求項1から12のいずれかに記載の原子炉炉心。
  14. 前記ブランケット塩ジャケットは、場所によって大きさが変化する内側半径R41及び外側半径R42又は内側有効半径R41'及び外側有効半径R42'を有する円筒形状であり、
    前記ブランケット塩容器は、好ましくは、場所によって大きさが変化する、内側半径R41及び外側半径R42、又は内側有効半径R41'及び外側有効半径R42'を有すると共に、所定のセクター角度A4を有する円筒形状のセクターとして形成され、 前記内側半径R41及び前記外側半径R42、又は前記内側有効半径R41'及び前記外側有効半径R42'は、好ましくは、中央部又はその近傍で最大であり、中央部から徐々に小さくなる、
    請求項8から13のいずれかに記載の原子炉炉心。
  15. 前記燃料塩ジャケット、前記減速体及び中性子反射体ジャケット、及び/又は前記ブランケットジャケットは、円周方向において実質的に連続したジャケットであり、好ましくは、これらのジャケットを形成する管状容器の相対する側面が、軸方向に亘って互いに接している、請求項1から14のいずれかに記載の原子炉炉心。
  16. 前記減速材及び中性子反射材中心容器は、複数の管状減速体容器によって分割形成され、各減速材容器は、減速材の通路となるために、減速材入口から減速材出口に亘る軸方向の領域を有し、前記複数の管状減速材容器は、前記減速材及び中性子反射材中心容器を形成するように組み上げられる、請求項1から15のいずれかに記載の原子炉炉心。
  17. 前記減速材及び中性子反射材中心容器は周方向外壁と周方向内壁とを有し、前記周方向内壁は好ましくは、制御棒を受け入れるための内腔を有する、請求項16に記載の原子炉炉心。
  18. 請求項1から17のいずれかに記載の原子炉炉心を備える溶融塩原子炉。
  19. 溶融塩原子炉用の原子炉炉心を動作させる方法であって、前記原子炉炉心は、
    ・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、第1の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有する、燃料塩ジャケットと;
    ・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、 第2の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速体及び中性子反射体ジャケットと;
    を備え、
    前記方法は、
    ・ 前記燃料塩ジャケット内の燃料塩の温度を約600~700℃に保つように制御することと;
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の前記第1の液体減速材及び中性子反射材の温度を、約10~90℃に保つように制御することと;
    ・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の前記第2の液体減速材及び中性子反射材の温度も、約10~90℃に保つように制御することと;
    を含む、方法。
  20. ・ 前記原子炉炉心のブランケット塩ジャケット内の溶融ブランケット塩の液面高又は質量を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記燃料ジャケットを通る燃料塩の温度を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の前記第1の液体減速材及び中性子反射材の温度を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の液体減速材・中性子反射材の温度を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記第1の液体減速材及び中性子反射材及び/又は前記第2の液体減速材及び中性子反射材
    の化学組成を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記燃料塩の化学組成を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の前記第1の液体減速材及び中性子反射材の流量を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の前記第2の液体減速材及び中性子反射材の流量を調整すること、及び/又は、
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器の内腔に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
    ・ 隣接する2つの燃料塩容器の間に少なくとも部分的に挿入されている制御棒の位置を調整すること、及び/又は、
    ・ 隣接する減速材及び中性子吸収材容器の間に少なくとも部分的に挿入された制御棒の位置を調整すること、
    によって前記原子炉炉心の核連鎖反応の反応度を制御することを含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記第1の液体減速材及び中性子反射材及び/又は前記第2の液体減速材及び中性子反射材は、重水又は溶融水酸化物であり、好ましくは溶融濃縮リチウム7重水素化塩(7LiOD)である、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 前記制御棒は、少なくとも部分的に前記燃料塩容器の間に挿入され、
    また前記制御棒は、中性子吸収材料、好ましくはホウ素又はハフニウムを含む、
    請求項20、又は、請求項20を引用する請求項21に記載の方法。
  23. 前記燃料塩は核***性成分を含み、好ましくは濃縮7フッ化リチウム、四フッ化トリウム、四フッ化ウラン、三フッ化ウラン及び/又は三フッ化プルトニウム7LiF-ThF4-UF4-UF3-PuF3塩を含む、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
  24. 前記ブランケット塩は、核原料成分を含む溶融塩であり、好ましくは濃縮7フッ化リチウム及び/又は四フッ化トリウム(7LiF-ThF4)塩を含む、請求項20、又は、請求項20を引用する請求項21から23のいずれかに記載の方法。
  25. 請求項19から24のいずれかに記載の方法を遂行するように構成された制御手段を備える、溶融塩原子炉。
  26. 溶融塩原子炉の原子炉炉心であって、
    ・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、第1の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有し、セラミック複合材料又は金属合金、好ましくはジルコニウム合金の壁を有する燃料塩ジャケットと;
    ・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、第2の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有し、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有する減速体及び中性子反射体ジャケットと;
    を備え、
    前記減速材及び中性子反射材中心容器は、好ましくはジルコニウム合金である金属合金製かセラミック複合材製の壁を有し、
    前記減速材及び中性子反射材中心容器は、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材入口と、該減速材及び中性子反射材中心容器の前記液体減速材及び中性子反射材出口との間の中央部において、最も大きな内側断面積を有し、
    前記原子炉炉心は、前記減速材及び中性子反射材中心容器と前記燃料塩ジャケットの間に配される筒形の第1の断熱ジャケットを備え、前記第1の断熱ジャケットは、黒鉛フェルトや断熱エアロゲル含浸黒鉛フェルトを含む、
    原子炉炉心。
  27. 前記燃料塩ジャケットと前記減速材及び中性子反射体ジャケットの間に筒形の第2の断熱ジャケットを備え、前記第2の断熱ジャケットは、黒鉛フェルト又は断熱エアロゲル含浸黒鉛フェルトを含む、請求項26に記載の原子炉炉心。
  28. 前記第1の液体減速材及び中性子反射材及び/又は前記第2の液体減速材及び中性子反射材は、重水又は溶融水酸化物であり、好ましくは溶融濃縮リチウム7重水素化塩(7LiOD)である、請求項26又は27に記載の原子炉炉心。
  29. 中性子吸収材料、好ましくはホウ素又はハフニウムを含む制御棒を備える、請求項26から28のいずれかに記載の原子炉炉心。
  30. 前記燃料塩は核***性成分を含み、好ましくは濃縮7フッ化リチウム、四フッ化トリウム、四フッ化ウラン、三フッ化ウラン及び/又は三フッ化プルトニウム7LiF-ThF4-UF4-UF3-PuF3塩を含む、請求項26から29のいずれかに記載の原子炉炉心。
  31. 前記減速材及び中性子反射体ジャケットを囲むブランケット塩ジャケットを備え、
    前記ブランケット塩ジャケットはブランケット塩を含み、
    前記ブランケット塩は、核原料成分を含む溶融塩であり、好ましくは濃縮7フッ化リチウム及び/又は四フッ化トリウム(7LiF-ThF4)塩を含む、請求項26から30のいずれかに記載の原子炉炉心。
  32. 請求項26から31のいずれかに記載の原子炉炉心を備える溶融塩原子炉。
  33. 溶融塩原子炉用の原子炉炉心を動作させる方法であって、前記原子炉炉心は、
    ・ 管状で筒形の減速材及び中性子反射材中心容器であって、第1の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材及び中性子反射材入口から前記液体減速材及び中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速材及び中性子反射材中心容器と;
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器を囲む筒状の燃料塩ジャケットであって、溶融燃料塩の通路となるための、燃料塩入口から燃料塩出口に亘る軸方向の領域を有する、燃料塩ジャケットと;
    ・ 前記燃料塩ジャケットを囲む、筒形の減速体及び中性子反射体ジャケットであって、 第2の液体減速材及び中性子反射材の通路となるための、液体減速材・中性子反射材入口から液体減速材・中性子反射材出口に亘る軸方向の領域を有する、減速体及び中性子反射体ジャケットと;
    を備え、
    前記第1の液体減速材及び中性子反射材及び前記第2の液体減速材及び中性子反射材は水酸化物減速材であり、
    前記方法は、
    ・ 前記燃料塩ジャケット内の燃料塩の温度を約600~700℃に保つように制御することと;
    ・ 前記減速材及び中性子反射材中心容器内の前記第1の液体減速材及び中性子反射材の温度を、約200~700℃に保つように制御することと;
    ・ 前記減速体及び中性子反射体ジャケット内の前記第2の液体減速材及び中性子反射材の温度も、約200~700℃に保つように制御することと;
    を含む、方法。
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