JP2023090561A - 樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材 - Google Patents

樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材を提供することにある。【解決手段】本開示は、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)を反応原料とするリン含有活性エステルと、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、を含有する、樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本開示は、樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材に関する。
プリント配線板上に電子部品を実装してはんだ付けする際に、実装部以外の部分へのはんだ付着を防止したり、配線の酸化又は腐食を半永久的に防止する被膜を形成する材料としてソルダーレジストが広く用いられている。このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術としては、特に環境面の配慮等から、微細なパターンを正確に形成できる、アルカリ現像型の液状フォトレジスト法が主流となっている。
そして、近年における電子部品の高密度化実現のために、プリント配線板は微細化(ファイン化)、多層化及びワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、ソルダーレジスト膜も、ファイン化、高Tg、高解像性、高精度、高信頼性の要求が高まっている。そしてさらには、伝送信号の高速化に伴い、高周波(ギガヘルツ帯)の利用のために、時間遅延を小さくする低誘電率及び低誘電正接を示す技術がソルダーレジスト市場にも求められている。
このようなアルカリ現像型の液状フォトレジストには、ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を付加させた反応生成物(酸ペンダント型エポキシアクリレート)が広く用いられている(特許文献1参照)。しかしながら、エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸とを反応させる際に、水酸基が生成されることに起因して、誘電率が高くなることが知られている。そのため、例えば、特許文献2には、活性エステル系硬化剤及びカルボキシル基含有ラジカル重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物を用いて、耐熱性、誘電正接、及び耐水性を改善する技術が開示されている。
特許6094271号公報 特開2004-169021号公報
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、感光性樹脂組成物から形成された硬化物の伸度、密着性については検討されていない。
そこで、本開示は、得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を含有する硬化性組成物、並びに、前記硬化性組成物を用いて得られる、樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のリン含有活性エステルと、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂とを含有する組成物を用いることにより、得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできることを見出し、本発明を完成するに至った。
本開示の樹脂組成物は、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール芳香族化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)を反応原料とするリン含有活性エステルと、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂とを含有する。
本開示によれば、優れた密着性を有し、誘電特性及び伸度に優れた硬化物を得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、本開示によれば、かかる樹脂組成物を含有する硬化性組成物及びその硬化物、並びにかかる硬化物を用いた絶縁材料及びレジスト材料を提供することができる。
合成例1で得られたイソフタル酸ジフェニル誘導体(1)のGPCチャートである。 合成例1で得られたイソフタル酸ジフェニル誘導体(1)のH-NMRチャートである。 合成例1で得られたイソフタル酸ジフェニル誘導体(1)のFD-MSスペクトルチャートである。 合成例2で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)のGPCチャートである。 合成例2で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)の13C-NMRチャートである。 合成例2で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)のFD-MSスペクトルチャートである。 合成例3で得られたリン含有活性エステル(1)のGPCチャートである。 合成例3で得られたリン含有活性エステル(1)の13C-NMRチャートである。 合成例3で得られたリン含有活性エステル(1)のFD-MSスペクトルチャートである。 合成例4で得られたリン含有多価アルコール化合物(EC-HCA-HQ)のGPCチャートである。 合成例5で得られたリン含有活性エステル(2)のGPCチャートである。 合成例6で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-NQ)のGPCチャートである。 合成例7で得られたリン含有活性エステル(3)のGPCチャートである。 合成例8で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-PPQ)のGPCチャートである。 合成例9で得られたリン含有活性エステル(4)のGPCチャートである。 比較合成例1で得られた比較中間体(1)のGPCチャートである。 比較合成例2で得られたリン原子含有化合物(1)のGPCチャートである。 比較合成例3で得られたリン原子含有エステル化合物(1)のGPCチャートである。
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[樹脂組成物]
本開示は、リン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を含有する樹脂組成物である。そして、前記リン含有活性エステルは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)と、芳香族モノアルコール(B)と、リン含有多価アルコール化合物(C)と、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)と、を必須の反応原料とする化合物である。
これにより、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させた硬化物を形成できる。
本開示の樹脂組成物において、リン含有活性エステルの含有量は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、90~10質量%の範囲が好ましい。リン含有活性エステルの含有量の上限又は下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
また、本開示の樹脂組成物において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、90~10質量%の範囲が好ましい。また、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の含有量の上限又は下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、リン含有活性エステルと、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂との固形分の質量比[(リン含有活性エステル)/(酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂)]は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、5/95~50/50の範囲が好ましい。同様の観点から、上記質量比[(リン含有活性エステル)/(酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂)]の上限又は下限は、10/90以上であることがより好ましく、20/80以上であることが更に好ましく、また、40/60以下であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、任意成分として、任意添加成分をさらに含有してもよい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、リン含有活性エステル、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び任意添加成分のみから、実質的に構成されてもよい。さらには、本実施形態の樹脂組成物は、リン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂のみから構成されてもよい。
本実施形態の樹脂組成物の総量(100質量%)におけるリン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計含有量は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
上記「リン含有活性エステル、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び任意添加成分のみからなる」とは、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、又は少なくとも90~95質量%がリン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂成分である、あるいはリン含有活性エステル、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び任意添加成分であることを意味する。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲あれば、リン含有活性エステル、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
以下、本明細書に記載される主要な用語を説明した後、本実施形態における樹脂組成物に含有される各成分である、リン含有活性エステル、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び任意添加成分について説明する。
(用語の説明)
本明細書において特段の記載が無い限り、以下の用語を適用できる。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香族環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
なお、一価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を1つ除いた基をいい、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を2つ除いた基をいい、三価~六価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を3~6つ除いた基をいう。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。なお、「アルキレン基」は、前記「アルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等が挙げられる。なお、「アルケニレン基」は、前記「アルケニル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基」は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンエーテル基」は、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシ(1-メチルメチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルメチレン)基、オキシ(1-メチルエチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルエチレン)基、オキシ(1,2-ジメチルエチレン)基、オキシブチレン基、オキシ(1-メチルプロピレン)基、オキシ(2-メチルプロピレン)基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシヘプチレン基、オキシオクチレン基、オキシノニレン基、オキシデシレン基、オキシウンデシレン基、オキシドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「一価の炭化水素基」は、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素、あるいは芳香族基を含む。例えば、「一価の炭化水素基」はアルキル基(例えば、上記アルキル基)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基からなる群から選択される1種の基であり、かつ当該基中の1以上の-CH-が、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよく、あるいは当該アルキル基中の1以上の-CH-CH-が、互いに隣接しないよう、-CH=CH-に置換されてもよい。また、前記炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、炭素原子数1~20の基が好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基でありうる。
本明細書における「二価の炭化水素基」は、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素、あるいは芳香族基を含む。例えば、アルキレン基(例えば、上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基及びアルキレンエーテル基からなる群から選択される1種の基であり、かつ当該基中の1以上の-CH-が、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよく、あるいは当該アルキレン基中の1以上の-CH-CH-が、互いに隣接しないよう、-CH=CH-に置換されてもよい。また、前記炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、炭素原子数1~20の基が好ましく、炭素原子数1~20のアルキレン基でありうる。
本明細書における「三~六価の炭化水素基」は、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素、あるいは芳香族基を含む。例えば、アルキル基(例えば、上記アルキル基)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基からなる群から選択される1種の基から二~五個の任意の位置の水素原子を取り除いた基であり、かつ当該水素原子を取り除いた基中の1以上の-CH-が、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよく、あるいは当該アルキル基中の1以上の-CH-CH-が、互いに隣接しないよう、-CH=CH-に置換されてもよい。また、前記炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、炭素原子数1~20でありうる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
本明細書における「カーボネート化合物」は、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有する脂肪族炭化水素をいい、例えば、炭素原子数1~5のアルキレンカーボネート(炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸ブチレンなど)が挙げられる。
(リン含有活性エステル)
本実施形態におけるリン含有活性エステルは、本実施形態の樹脂組成物における必須成分の一つである。また、リン含有活性エステルは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)と、芳香族モノアルコール(B)と、リン含有多価アルコール化合物(C)と、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)と、を必須の反応原料として得られるものである。
必要により、上記反応原料には、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール化合物(C)、あるいはエーテル結合含有脂肪族化合物(D)に対して反応性を示す化合物をさらに含んでもよい。
なお、原則として、反応原料により得られるリン含有活性エステルの分子中に水酸基を有さない、又はほとんど有さない。ただし、本開示の効果を阻害しない範囲において、反応生成物の副生物として水酸基を有する化合物を含んでもよい。
本明細書において、「2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)」は、以下、単に「芳香族多価カルボン酸類(A)」と略称することがある。
以下、リン含有活性エステルの反応原料である、芳香族多価カルボン酸類(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)について説明する前に、リン含有活性エステルの構造及び特性について詳説する。
<リン含有活性エステルの構造>
本実施形態のリン含有活性エステルは、化学構造の観点では、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)の残基と、芳香族モノアルコール(B)の残基と、リン含有多価アルコール化合物(C)の残基と、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)の残基と、を含む。
より詳細には、本実施形態のリン含有活性エステルは、芳香族多価カルボン酸類(A)におけるカルボン酸又はその酸ハロゲン基と芳香族モノアルコール(B)におけるフェノール性水酸基とに由来するエステル結合、及びリン含有多価アルコール化合物(C)における水酸基とエーテル結合含有脂肪族化合物(D)におけるエーテル基とに由来するエーテル結合が形成された構造を有する。
なお、本明細書において、「2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)」は、カルボニル基を含む原子団(-C(=O)-X(Xは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は一価の炭化水素基を表す。))が二以上結合した芳香族基を有する化合物である。そして、本明細書における「2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)の残基」とは、反応又は重合よりに生成されるリン含有活性エステルにおいて、当該反応又は重合により前記リン含有活性エステル分子内に残る、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)の部分構造をいい、前記反応又は重合により形成した化学結合と、前記化学結合以外である、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基とから構成される。
また、本明細書における「由来の基」は、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいう。そのため、「2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基」は、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)からカルボニル基を含む原子団(-C(=O)-X(Xは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は一価の炭化水素基を表す。)を除いた二価以上の基を示し、例えば、二価以上の芳香族基でありうる。
2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)は、下記一般式(A):
Figure 2023090561000001
で表すことができるが、この場合、Qa1は、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は一価の炭化水素基を表し、na1は2以上6以下の整数を表し、破線部分が、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)の残基を表す。
本明細書における「芳香族モノアルコール(B)の残基」は、芳香族モノアルコール(B)から水素原子又は水酸基を除いた一価の基を示す。「芳香族モノアルコール(B)」は、下記一般式(b1):
Figure 2023090561000002
で表すことができるが、この場合、Arb1が、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、芳香族モノアルコール(B)から水素原子又は水酸基を除いた一価の基であり、破線部分が、芳香族モノアルコール(B)の残基を表す。
本明細書における「リン含有多価アルコール化合物(C)の残基」は、リン含有多価アルコール化合物(C)から2以上の水素原子又は水酸基を除いた二価以上の多価基を示す。「リン含有多価アルコール化合物(C)」は、下記一般式(c1):
Figure 2023090561000003
で表すことができるが、この場合、Ac1はリン含有多価アルコール化合物(C)由来の基を表し、リン含有多価アルコール化合物(C)から水素原子又は水酸基を除いたnc1価の基であり、具体的には、リン原子を含有する二価~六価の炭化水素基を表し、nc1は2以上6以下の整数を表す。nc1は、2であることが好ましい。
本明細書における「エーテル結合含有脂肪族化合物(D)の残基」は、当該エーテル結合含有脂肪族化合物(D)中に存在する1以上のエーテル結合が少なくとも1か所切断された二価以上の基をいい、より詳細には、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)中の少なくとも1つの酸素原子と当該酸素原子と結合する2つの炭素原子(又は一方が水素原子でもよい。)とを結ぶ2本の結合(=エーテル結合)の少なくとも1方が切断された二価以上の基を示す。
当該「エーテル結合含有脂肪族化合物(D)」は、下記一般式(d1):
Figure 2023090561000004
[上記一般式(d1)中、Rd1及びRd2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアルキレン基を表し、Rd1又はRd2の一方がアルキレン基の場合は他方もアルキレン基であり、かつRd1及びRd2が互いに結合して環構造を形成してもよく、前記アルキル基又はアルキレン基中の1以上の-CH-は、互いに隣接しないよう、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-S-に置換されてもよい。]で表すことができる。なお、上記一般式(d1)中の破線部は、Rd1とRd2とが互いに結合している形態及びRd1とRd2とが結合していない形態との両方を表す。
エーテル結合含有脂肪族化合物(D)としては、アルキレンオキサイド(例えばグリシジルエーテル)又はカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を含有する化合物などが挙げられる。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ基を有する化合物や炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等のカーボネート類、アルキレンポリオール類が挙げられる。
また、本明細書においては、Rd1及びRd2を合わせて、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表す。例えば、リン含有活性エステルが一般式(1)で表される場合、当該一般式(1)中の-R-はそれぞれ独立して、-Rd1-Rd2-又は-Rd2-Rd1-でありうる。同様に、一般式(1)中の-R-はそれぞれ独立して、-Rd1-Rd2-又は-Rd2-Rd1-でありうる。
エーテル結合含有脂肪族化合物(D)を上記一般式(d1)で表す場合、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基は、上記一般式(d1)で表されるエーテル結合含有脂肪族化合物(D)において酸素原子とRd1又はRd2の少なくとも一方との結合を切断した基であり、-Rd1-Rd2-又は-Rd2-Rd1-で表される。
なお、本明細書における「一価」又は「二価」等の値は、要するに、結合手の数を示すものであり、各化合物1分子が寄与したエステル結合又はエーテル結合の数に相当する。
また、上記リン含有活性エステルにおける芳香族多価カルボン酸類(A)由来の基は、二価~六価であってもよい。換言すると、上記リン含有活性エステルにおいては、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)が、直接又は間接的にエステル結合に寄与した構造を有していてもよい。
同様に、上記リン含有活性エステルにおけるリン含有多価アルコール化合物(C)由来の基は、二価~六価であってもよい。換言すると、上記リン含有活性エステルにおいてはリン含有多価アルコール化合物(C)1分子に含まれる2個~6個の水酸基が、直接又は間接的にエステル結合に寄与した構造を有していてもよい。
<<リン含有活性エステルの好ましい形態>>
本実施形態のリン含有活性エステルは、より具体的には、同一又は異なる芳香環同士がエステル結合を介して連結された、以下の一般式(i)で表される部分構造と、リン含有多価アルコール化合物(C)の残基(例えば、リン原子を有し、かつ炭素原子及び水素原子を有する二価~六価の炭化水素基(アルキレン鎖、アルキレンオキシ鎖、芳香族基)と、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)の残基と、が連結された化学構造を有しうる。
Figure 2023090561000005
(上記一般式(i)中、Arb1は芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、例えば、一価の芳香族基であり、Qa1は2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、例えば、二価の芳香族基であり、上記一般式(i)中の*は他の原子との結合手を表す。)
また、前記同一又は異なる芳香環は、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)あるいは芳香族モノアルコール(B)の分子内の芳香族環に対応する。
剛直なメソゲン骨格である芳香族環と、柔軟なセグメントであるアルキレン鎖とがリン含有活性エステルの同一分子内に一定の規則性(繰返し単位)をもって共存することにより、樹脂組成物全体として難燃性を示し、かつ伸度、密着性及び低誘電特性により優れた硬化物を形成できる。
本実施形態のリン含有活性エステルは、下記一般式(J-1)で表される部分構造と、下記一般式(J-2)で表される2価の部分構造と、下記一般式(J-3)で表される2価の部分構造と、下記一般式(J-4)で表される1価の部分構造と、下記一般式(J-5)で表される1価の部分構造と、を有することが好ましい。リン含有活性エステルのより好ましい形態は、下記一般式(J-1)で表される部分構造、下記一般式(J-2)で表される2価の部分構造及び下記一般式(J-3)で表される2価の部分構造から構成される繰返し単位と、前記繰返し単位の末端部として当該繰返し単位と化学的に結合される下記一般式(J-4)及び/又は下記一般式(J-5)で表される部分構造とを有する。
Figure 2023090561000006
(上記一般式(J-1)中、Aはリン含有多価アルコール化合物(C)由来の2価~4価の基を表し、破線はそれぞれ独立して、不在であるか又は単結合である。)
Figure 2023090561000007
(上記一般式(J-2)中、Rは、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、yは1以上の平均繰り返し数を表す。)
Figure 2023090561000008
(上記一般式(J-3)中、Rは、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Qは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、zは、1以上の平均繰り返し数であり、xは、0.1以上の平均繰り返し数を表す。)
Figure 2023090561000009
(上記一般式(J-4)中、Arは、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表す。)
Figure 2023090561000010
(上記一般式(J-5)中、Qは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Arは、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表す。)
(本明細書における*は他の原子との結合手を表す。但し、酸素原子が隣接(-O-O-)して結合することはない。)
上記一般式(J-1)で表されるように、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基であるAは、2価~4価の基であることが好ましく、2価又は3価の基であることがより好ましい。
なお、上記一般式(J-1)~(J-5)中の各由来の基は、説明の便宜上、一般式(J)中の記号と各原料成分との対応関係を表す用語であって、反応によってリン含有活性エステル内に残る各反応原料由来の構造部位を全て表すものではない。
これにより、得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をよりバランスよく向上させることができる。
上記一般式(J-1)中のAは、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基であり、炭化水素結合(二価~六価の炭化水素基)、炭酸エステル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、及びシロキサン結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合構造を含んでもよい。また、上記一般式(J-1)中の破線はそれぞれ独立して、不在であるか又は単結合でありうる。そのため、当該破線が2本とも不在である場合、Aは二価の基を表し、2本の破線のうち1本が不在である場合、Aは三価の基を表し、2本の破線の両者が単結合の場合、Aは四価の基を表す。
前記リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基の炭素原子数は、1~40であることが好ましく、炭素原子数6~30であることがより好ましく、炭素原子数6~25であることが更に好ましい。
リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基中のリンは、当該リンの原子価(-3、-1、+1、+3、+5)やリンの結合形態など特に制限されることは無いが、例えば、リン原子にオキソ基(=O)が直接結合した5価のリンの形態、すなわちオキソリン(V)基(≡P(=O))として存在することが好ましい。そのため、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基は、オキソリン(V)基(≡P(=O))を有することが好ましく、オキソリン(V)基(≡P(=O))のリン原子に3つの炭化水素基が直接又は酸素(-O-)を介して結合されていることがより好ましい。
また、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基は、リン及び二価以上の脂肪族炭化水素基又は二価以上の環式炭化水素基を含む基が挙げられ、二価以上のリンを含む芳香族基を有することが好ましく、オキソリン(V)基(≡P(=O))を有する芳香族基であることがより好ましい。より詳細には、前記リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基としては、リン又はオキソリン(V)基(≡P(=O))を含み、かつ直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンエーテル基、又は、芳香族環を有する炭化水素基(アリーレン基又はアラルキレン基)であり、かつ当該アルキレン基、アルキレンエーテル基又は芳香族環を有する炭化水素基中の-CH-は、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよく、あるいは当該アルキレン基中の1以上の-CH-CH-が、互いに隣接しないよう、-CH=CH-、炭酸エステル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合及びシロキサン結合からなる群より選択される少なくとも1種に置換されてもよい。
リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基の好ましい形態としては、オキソリン(V)基(≡P(=O))及び当該オキソリン(V)基(≡P(=O))と結合した炭化水素基を有する基であることが好ましく、オキソリン(V)基(≡P(=O))及び当該オキソリン(V)基(≡P(=O))と結合した2以上7以下の環式基(例えば、芳香環)を有する基であることがより好ましい。
なお、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基における環式基が縮合多環式炭化水素である場合、環式基の数は一つの集合体を1と数える。したがって、例えば、縮合多環式炭化水素がフェナントレン基である場合、環式基の数は1である。
また、二個以上の環系が一重又は二重結合で直結し、かつこの結合数が環系の数より一つ少ないものは環集合炭化水素と称される。リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基がこのような環集合炭化水素を有する場合は、各環系を1と数える。例えば、環集合炭化水素がターフェニル基である場合、環式基の数は3である。
上記一般式(J-1)中のAは以下の一般式(j):
Figure 2023090561000011
[上記一般式(j)中、Mは(n+1)価の芳香族基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、一価の炭化水素基又は二価の炭化水素基を表し、R又はRの一方が二価の炭化水素基である場合、他方も二価の炭化水素基であり、かつR及びRが互いに結合した環状構造を形成し、nは2~4の整数を表し、上記一般式(j)中の*は、酸素原子と結合する結合手を表す。]を表すことが好ましい。また、上記一般式(j)の破線部はR及びRが互いに結合する場合があることを示している。
上記一般式(j)中、nは好ましくは2以上4以下の整数を表し、2又は3であることがより好ましい。なお、nが例えば3である場合、Mは4価の基であり、かつ酸素原子と結合する結合手が3つであることをいう。
上記一般式(j)中、Mは(n+1)価の芳香族基であり、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環から(n+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。例えばMは、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン及びクアテルフェニルからなる群から選択される1つの芳香族基であり、かつ当該1つの芳香族基から(n+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。また、前記1つの芳香族基は、無置換であってもよく、あるいは、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
上記一般式(j)中、一価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基からなる群から選択される1種の基であり、前記選択される1種の基中の1以上の任意の-CH-が、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよいことがより好ましい。また、前記一価の炭化水素基としては、炭素原子数1~20であることが好ましい。
上記一般式(j)中、二価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基及びアルキレンエーテル基からなる群から選択される1種の基であり、前記選択される1種の基中の1以上の任意の-CH-が、互いに隣接しないよう、-O-又は-S-に置換されてもよいことがより好ましい。また、前記二価の炭化水素基としては、炭素原子数1~20であることが好ましい。
上記一般式(J-2)中のRは、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表すことが好ましい。上記一般式(J-3)中のRは、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表すことが好ましい。また、上記一般式(J-2)及び(J-3)中のR及びRはそれぞれ独立して、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表すことが好ましい。また、RとRとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。例えば、上記一般式(J-2)及び(J-3)中のR及びRの好ましい形態は、下記一般式(J)及び一般式(1)中のR及びRの好ましい形態と同様である。
上記一般式(J-3)中のQは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表すことが好ましい。上記一般式(J-5)中のQは、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表すことが好ましい。また、上記一般式(J-3)及び一般式(J-5)中のQ及びQはそれぞれ独立して、QとQとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。例えば、上記一般式(J-3)及び一般式(J-5)中のQ及びQの好ましい形態は、下記一般式(J)及び一般式(1)中のQ及びQの好ましい形態と同様である。
上記一般式(J-4)中のArは、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表すことが好ましい。上記一般式(J-5)中のArは、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表すことが好ましい。上記一般式(J-4)及び一般式(J-5)中のAr及びArはそれぞれ独立して、例えば、置換又は無置換の芳香族基が好ましく、置換又は無置換のアリール基又はアラルキル基がより好ましい。上記一般式(J-4)及び一般式(J-5)中、ArとArとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。例えば、上記一般式(J-4)及び一般式(J-5)中のAr及びArの好ましい形態は、後述の一般式(2)又は(3)であってもよく、さらには、上記一般式(J-4)及び一般式(J-5)中の好ましいAr及びArは、下記一般式(1)中のAr及びArの好ましい形態と同様である。
上記一般式(J-2)中のyは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、平均繰り返し数yは、1~5であることがより好ましい。
上記一般式(J-3)中のzは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、平均繰り返し数zは、1~5であることがより好ましい。
なお、リン含有活性エステルの平均繰り返し数x、y及びzは、後述の実施例の欄に示す通り、仕込み比又はNMRなどから算出することができる。
本実施形態のリン含有活性エステルのより好ましい形態は、上記一般式(J-1)で表される2~4価の部分構造と、前記一般式(J-1)で表される2~4価の部分構造に化学的に結合された上記一般式(J-2)で表される2価の部分構造及び上記一般式(J-3)で表される2価の部分構造から構成される繰返し単位と、前記繰返し単位の末端部として当該繰返し単位と化学結合される上記一般式(J-4)及び/又は上記一般式(J-5)で表される部分構造とを有し、前記繰返し単位の繰返し数xは、平均繰り返し数であることが好ましく、好ましくは0.1以上であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、0.5~3の平均繰り返し数であることがより好ましく、0.7~2.8の平均繰り返し数であることが更に好ましい。
また、上記一般式(J-1)で表される2価の部分構造に対して、上記一般式(J-2)で表される2価の部分構造及び上記一般式(J-3)で表される2価の部分構造が化学的に結合されて繰返し単位を構成することが好ましい。さらには、上記一般式(J-1)で表される3価の部分構造に対して、上記一般式(J-2)で表される2価の部分構造が1又は2と、上記一般式(J-3)で表される2価の部分構造2又は1とが化学的に結合されて繰返し単位を構成することが好ましい。そして、上記一般式(J-1)で表される4価の部分構造に対して、上記一般式(J-2)で表される2価の部分構造が1~3個と、上記一般式(J-3)で表される2価の部分構造が3~1個とが化学的に結合されて繰返し単位を構成することが好ましい。
本実施形態のリン含有活性エステルは、下記一般式(J)で表されることが好ましい。
Figure 2023090561000012
(上記一般式(J)中、Aは、前記リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、前記エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Q及びQは、前記2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Ar及びArはそれぞれ独立して、前記芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、Mは、下記一般式(ii)又は(iii)で表される基を表し、
Figure 2023090561000013
[上記一般式(ii)又は(iii)中、Rはそれぞれ独立して、前記エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Q及びQはそれぞれ独立して、前記2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Ar及びArはそれぞれ独立して、前記芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、xは、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数である。]
は、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数であり、zは、1以上の平均繰り返し数であり、qは0又は1を表す。)で表される化合物でありうる。なお、qが0のときは、Aは2つの結合手(二価)を有し、qが1のときは、Aは3つの結合手(三価)を有する。
これにより、得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をよりバランスよく向上させることができる。
上記一般式(J)中、Aは以下の一般式(I):
Figure 2023090561000014
[上記一般式(I)中、Mは芳香族基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、一価の炭化水素基又は二価の炭化水素基を表し、R又はRの一方が二価の炭化水素基である場合、他方も二価の炭化水素基であり、かつR及びRが互いに結合した環状構造を形成し、上記一般式(I)中の*は、酸素原子と結合する結合手を表す。]を表すことが好ましい。また、上記一般式(I)の破線部はR及びRが互いに結合する場合があることを示している。
上記一般式(I)中、Mは(n+1)価の芳香族基であり、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環から(n+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。例えばMは、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン及びクアテルフェニルからなる群から選択される1つの芳香族基であり、かつ当該1つの芳香族基から(n+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。
また、上記一般式(I)の好ましい形態又は上記一般式(I)中のR及びRの好ましい形態は、上記一般式(j)と同様である。
上記一般式(J)中のAにおいて、R及びRはそれぞれ独立して、一価の炭化水素基である場合、炭素原子数3~30の芳香族基が好ましく、炭素原子数6~24の芳香族基がより好ましい。R及びRはそれぞれ独立して、一価の炭化水素基である場合、特に好ましいAの形態としては、以下の一般式(I-1)~(I-12)のいずれかの基が挙げられる。
Figure 2023090561000015
Figure 2023090561000016
(上記一般式(I-1)~(I-12)中、R及びRはそれぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、又はナフチル基を表し、Rはそれぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシ基を表し、ni1は0~3の整数を表し、ni3は0~6の整数を表し、ni2、ni4、ni5及びni6は0~5の整数を表す。)また、上記一般式(I-1)~(I-6)で表される基は、Aが二価の基である。一方上記一般式(I-7)~(I-12)で表される基は、Aが三価の基であり、3つめの結合手は芳香族環のいずれかに存在しうる。
上記一般式(1)中のAにおいて、R及びRはそれぞれ独立して、二価の炭化水素基である場合、アルキル基、アルコキシ基、アリル基又はアリール基が好ましい。
及びRはそれぞれ独立して、二価の炭化水素基である場合、特に好ましいAの形態としては、以下の一般式(I-13)~(I-20)のいずれかの基が挙げられる。
Figure 2023090561000017
Figure 2023090561000018
Figure 2023090561000019
Figure 2023090561000020
Figure 2023090561000021
Figure 2023090561000022
Figure 2023090561000023
Figure 2023090561000024
(上記一般式(I-21)~(I-28)中、R及びRはそれぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシ基を表し、niI7~niI14は0~8の整数を表し、ni8、ni10~ni12は0~5の整数を表し、ni9は0~7の整数を表し、ni7、ni13及びni14は0~3の整数を表す。なお、Rは芳香族基を表すM全体の置換基を表し、RはR及びRが互いに結合した環状構造全体の置換基を表す。)また、上記一般式(I-13)~(I-20)で表される基は、Aが二価の基である。一方、上記一般式(I-21)~(I-28)で表される基は、Aが三価の基であり、3つめの結合手は芳香族環のいずれかに存在しうる。
上記一般式(J)中のAは、環式基を有することが好ましく、芳香族基を有することがより好ましい。これにより、Aの構造は、リン原子を含有し、かつ、芳香環濃度の高い構造であることから、リン含有活性エステルに基づく難燃性を向上させる効果に寄与することができ、好ましい。分子構造中に脂肪族環状炭化水素基を有する公知の活性エステルは、得られる硬化物における誘電特性(低誘電特性)に優れる反面、燃焼し易く、耐熱性も十分ではないものであった。しかし、本実施形態のリン含有活性エステルは、分子構造中に芳香族環を複数導入することにより、伸度、密着性及び誘電特性をより高いレベルで兼備させることができる。また、一般式(I)で表される構造のように、嵩高い置換基構造を有するリン含有活性エステルは、嵩高い置換基構造を持たない活性エステルと比較して、硬化反応に関与する活性基濃度が低下することから、硬化物の耐熱性が劣る傾向にある。これにより、本開示のリン含有活性エステルは、伸度、密着性及び誘電特性のみならず、難燃性又は耐熱性にも優れる特徴を有しており、各種性能を兼備することができる。
上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中のR、R、Rii及びRiiiはそれぞれ独立して、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表すことが好ましい。また、RとRとRiiとRiiiとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。例えば、上記一般式(J-1)中のR、R、Rii及びRiiiはそれぞれ独立して、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表すことが好ましい。例えば、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基としては、直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがより好ましい。当該直鎖状又は分岐状のアルキレン基の炭素原子数としては、2~16であることがより好ましく、2~10であることが更に好ましい。炭素原子数が、前記範囲内であると、相溶性に優れたリン含有活性エステルとなり、好ましい態様となる。
上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中のQ、Q、Q及びQはそれぞれ独立して、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表すことが好ましい。また、QとQとQとQとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。例えば、上記一般式(J)中のQ、Q、Q及びQのそれぞれの好ましい形態は、例えば、芳香族多価カルボン酸類(A)由来の基としては、二価の芳香族基であることが好ましく、非置換の二価の芳香族基であることがより好ましい。上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中のQ、Q、Q及びQは、二価の芳香族基であることが好ましい。当該二価の芳香族基としては、上述の炭素原子数3~30の芳香族環の例示から2つの水素原子を除いた基が挙げられる。なかでも、Q、Q、Q及びQは、フェニレン基、ナフタレンジイル基又はアントラセンジイル基のいずれかであることがより好まし。そして、これらフェニレン基、ナフタレンジイル基又はアントラセンジイル基は、無置換であっても、あるいは、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基に置換されてもよい。中でも原料の工業的な入手の容易さ、溶解性の観点から、Q、Q、Q及びQは、無置換のフェニレン基であることが更に好ましい。
上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中のAr、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して、芳香族モノアルコール(B)由来の基を表すことが好ましい。例えば、置換又は無置換の芳香族基が好ましく、置換又は無置換のアリール基又はアラルキル基がより好ましい。上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中、ArとArとArとArとは互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。
上記一般式(J)、一般式(ii)及び一般式(iii)中のAr、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立して、例えば、芳香族モノアルコール(B)由来の基として、下記一般式(2)又は(3):
Figure 2023090561000025
[上記一般式(2)及び一般式(3)中の*は、上記一般式(1)中のAr、Arと結合する酸素原子との結合手を表し、
21及びR31はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表し、k21は、0~7の整数を表し、及びk31は、0~5の整数を表す。]で表されることが好ましい。
上記一般式(J)及び一般式(ii)中、Ar及びArはそれぞれ独立して、上記一般式(3)示される構造を有する基であることが好ましい。上記一般式(J)及びび一般式(iii)中、Ar及びArはそれぞれ独立して、上記一般式(3)で示される構造を有する基であることが好ましい。
上記一般式(2)中のR21は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基のいずれかであることが好ましく、中でも、誘電特性、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基若しくはナフチルメチル基などのアラルキル基、あるいは、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基若しくはアントリル基などのアリーレン基であることがより好ましい。
上記一般式(3)中のR31は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基のいずれかであることが好ましく、中でも、誘電特性、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基若しくはナフチルメチル基などのアラルキル基、あるいは、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基若しくはアントリル基などのアリーレン基であることがより好ましい。
上記一般式(2)中のk21は、0~7の整数であることが好ましく、0~5の整数であることがより好ましく、反応性又は得られる硬化物の柔軟性の観点から、0~4の整数であることが更に好ましい。また、上記一般式(3)中のk31は、0~5の整数であることが好ましく、反応性又は得られる硬化物の柔軟性の観点から、0~4の整数であることがより好ましい。
上記一般式(J)中のxは、0.1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、0.5~3の平均繰り返し数であることがより好ましく、0.7~2.8の平均繰り返し数であることが更に好ましい。また、上記一般式(J)中のxは、0.1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、0.5~3の平均繰り返し数であることがより好ましく、0.7~2.8の平均繰り返し数であることが更に好ましい。
上記一般式(J)中のyは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、1~5であることがより好ましい。また、上記一般式(J)中のyは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、1~5であることがより好ましい。
上記一般式(J)中のzは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、平均繰り返し数zは、1~5であることがより好ましい。
本実施形態のリン含有活性エステルは、下記一般式(1)で表される化合物でありうる。換言すると、上記一般式(J)で表されるリン含有活性エステルの好ましい形態は下記一般式(1)で表される。
Figure 2023090561000026
[上記一般式(1)中、Aは、前記リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、前記エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Q及びQは、前記2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Ar及びArはそれぞれ独立して、前記芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、xは、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数であり、zは、1以上の平均繰り返し数である。]で表される化合物でありうる。
なお、上記各由来の基は、説明の便宜上、一般式(1)中の記号と各原料成分との対応関係を表す用語であって、反応によってリン含有活性エステル内に残る各反応原料由来の構造部位を全て表すものではない。
これにより、難燃性を示し、かつ得られる硬化物において、伸度、密着性及び低誘電特性をよりバランスよく向上させることができる。
上記一般式(1)中、Aの好ましい形態は、上記一般式(J)と同様である。したがって、上記一般式(1)中のAは、環式基を有することが好ましく、芳香族基を有することがより好ましい。これにより、Aの構造は、リン原子を含有し、かつ、芳香環濃度の高い構造であることから、リン含有活性エステルに基づく難燃性を向上させる効果に寄与することができ、より好ましい。分子構造中に脂肪族環状炭化水素基を有する公知の活性エステルは、得られる硬化物における誘電特性(低誘電特性)に優れる反面、燃焼し易く、耐熱性も十分ではないものであった。しかし、本実施形態のリン含有活性エステルは、分子構造中に芳香族環を複数導入することにより、誘電特性、伸度及び密着性のみならず、難燃性を高いレベルで兼備させることができる。また、一般式(I)で表される構造のように、嵩高い置換基構造を有するリン含有活性エステルは、嵩高い置換基構造を持たない活性エステルと比較して、硬化反応に関与する活性基濃度が低下することから、硬化物の耐熱性が劣る傾向にある。これにより、本開示のリン含有活性エステルは、誘電特性、伸度及び密着性のみならず、難燃性又は耐熱性にも優れる特徴を有しており、各種性能を兼備することができる。
上記一般式(1)中のR又はRのそれぞれの好ましい形態は、上記一般式(1)中のR又はRの好ましい形態と同様である。上記一般式(1)中のR及びRは、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがより好ましい。当該直鎖状又は分岐状のアルキレン基の炭素原子数としては、2~16であることがより好ましく、2~10であることが更に好ましい。炭素原子数が、前記範囲内であると、相溶性に優れたリン含有活性エステルとなり、好ましい態様となる。
上記一般式(1)中のQ又はQは、上記一般式(J)中のQ又はQの好ましい形態と同様である。また、QとQとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。
上記一般式(1)中のAr及びArは、下記一般式(2)又は(3):
Figure 2023090561000027
[上記一般式(2)及び一般式(3)中の*は、上記一般式(1)中のAr又はArと結合する酸素原子との結合手を表し、
21及びR31はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表し、k21は、0~7の整数を表し、及びk31は、0~5の整数を表す。]で表されることが好ましい。
上記一般式(1)中、ArとArとは、互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。
上記一般式(1)中、Arは上記一般式(3)示される構造を有する基であることが好ましい。上記一般式(1)中、Arは上記一般式(3)で示される構造を有する基であることが好ましい。
上記一般式(1)中のAr及びArの好ましい形態は、上記一般式(2)又は(3)であってもよく、さらには、上記一般式(J)中のAr又はArの好ましい形態と同様であってもよい。
上記一般式(1)中のxは、0.1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、0.5~3の平均繰り返し数であることがより好ましく、0.7~2.8の平均繰り返し数であることが更に好ましい。
なお、リン含有活性エステルの平均繰り返し数xは、仕込み比又はNMRなどから算出することができる。例えば、仕込み比から算出する場合、以下の数式(1)により算出している。
数式(1):(得られたリン含有活性エステル中の平均繰り返し数x)=(リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有脂肪族化合物(D)との反応物(E)中の水酸基のモル数)/[(反応原料から生成した活性エステル基含有の中間生成物(a’)中の活性エステル基のモル数)―(リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有脂肪族化合物(D)との反応物(E)中の水酸基のモル数)]
なお、上記活性エステル基含有の中間生成物(a’)は、芳香族多価カルボン酸、その酸ハロゲン化物及び/又はそのエステル化物(A)と、芳香族モノアルコール(B)とを反応原料とする反応生成物である。
上記一般式(1)中のyは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、平均繰り返し数yは、1~5であることがより好ましい。
上記一般式(1)中のzは、1以上の平均繰り返し数であることが好ましく、中でも、作業性や得られる硬化物の柔軟性の観点から、平均繰り返し数zは、1~5であることがより好ましい。
なお、リン含有活性エステルの平均繰り返し数y及びzは、後述の実施例の欄に示す通り、仕込み比又はNMRなどから算出することができる。
<リン含有活性エステルの反応原料>
芳香族多価カルボン酸類(A)(上記一般式(1)のQ及び/又はQで表される部分構造を有する化合物)と、芳香族モノアルコール(B))(上記一般式(1)のAr及び/又はArで表される部分構造を有する化合物)と、リン含有多価アルコール化合物(C)(上記一般式(1)のAで表される部分構造を有する化合物)と、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)(上記一般式(1)のR及び/又はRで表される部分構造を有する化合物)を反応原料にすることにより、リン含有活性エステルが得られる。
そして、リン含有活性エステルの構造中において、リン含有多価アルコール化合物(C)由来の難燃性を示す構造部位(例えば、上記一般式(1)のA)と、末端に高い硬化性を有する芳香族環(例えば、上記一般式(1)のQ及び/又はQとAr及び/又はAr)を有するエステル基(具体的には、ポリアリールオキシカルボニル構造)と、柔軟なセグメントであるアルキレンエーテル基(例えば、上記一般式(1)の(RO)又は(RO))と、を含有するエステル化合物を形成することができるため、高い反応活性を有する。
以下、リン含有活性エステルの反応原料について説明する。
-2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)-
本実施形態において、2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)(上記一般式(1)のQ及び/又はQで表される部分構造を有する化合物)は、2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸、又はその誘導体であり、具体的には、カルボン酸化物、酸ハロゲン化物又はエステル化物である。
芳香族多価カルボン酸類(A)は、典型的には、置換又は非置換の芳香族環に少なくとも2個のカルボキシル基等が結合した化合物である。但し、上記カルボキシル基等の部分は、カルボキシル基以外に、フッ化アシル基、塩化アシル基、臭化アシル基等のハロゲン化アシル基;メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;であってもよい。つまり、上記カルボキシル基等の部分がハロゲン化アシル基である場合、芳香族多価カルボン酸類(A)は酸ハロゲン化物である。同様に、上記カルボキシル基等の部分が、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基である場合、芳香族多価カルボン酸類(A)はエステル化物である。そして、芳香族多価カルボン酸類(A)は、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基、アリールオキシカルボニル基を有することが好ましく、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基を有することがより好ましく、カルボキシル基、塩化アシル基、臭化アシル基を有することが一層好ましい。
また、前記芳香族環としては、特に制限されないが、単環芳香族環、縮環芳香族環、環集合芳香族環、アルキレン鎖により連結される芳香族環等が挙げられる。上記芳香族環としては、得られる硬化物の柔軟性、原料の工業的な入手の容易さや作業性の観点から、単環芳香族環、縮環芳香族環であることが好ましい。
芳香族多価カルボン酸類(A)におけるカルボキシル基の価数(個数)としては、二価~四価であることが好ましく、二価であることがより好ましい。
芳香族多価カルボン酸類(A)として、具体的には、イソフタル酸、テレフタル酸、5-アリルイソフタル酸、2-アリルテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸、5-アリルトリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸;ナフタレン-1,4―ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、3-アリルナフタレン-1,4-ジカルボン酸、3,7-ジアリルナフタレン-1,4-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;2,4,5-ピリジントリカルボン酸等のピリジントリカルボン酸;1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリカルボン酸等のトリアジンカルボン酸;これらの酸ハロゲン化物、エステル化物等が挙げられる。
上述の例示のうち、芳香族多価カルボン酸類(A)としては、得られる硬化物の柔軟性、原料の工業的な入手の容易さや作業性の観点から、ベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物であることが好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸これらの酸ハロゲン化物であることがより好ましく、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリドであることが更に好ましい。
芳香族多価カルボン酸類(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
-芳香族モノアルコール(B)-
芳香族モノアルコール(B)は、芳香族環と1個のフェノール性水酸基とを有する芳香族化合物である。芳香族モノアルコール(B)として、具体的には、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、ターシャリーブチルフェノール等のアルキルフェノール;o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、2-ベンジルフェノール、4-ベンジルフェノール、スチレン化フェノール、4-(α-クミル)フェノール等のアラルキルフェノール;1-ナフトール、2-ナフトール等のナフトール化合物が挙げられる。これらの中でも、芳香族モノアルコール(B)としては、誘電特性により優れる観点から、o-クレゾール、ナフトールであることが好ましい。
芳香族モノアルコール(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
-リン含有多価アルコール化合物(C)-
本実施形態において、リン含有多価アルコール化合物(C)は、リン原子を含有し、かつ水酸基を少なくとも2個有する化合物であることが好ましい。したがって、リン含有多価アルコール化合物(C)には、リン酸、亜リン及びリン酸エステルも包含される。また、リン含有多価アルコール化合物(C)中のリンは、難燃性を示す形態であればリンの原子価(-3、-1、+1、+3、+5)やリンの結合形態など特に制限されることは無いが、例えば、リン原子にオキソ基(=O)が直接結合した5価のリンの形態、すなわちオキソリン(V)基(≡P(=O)として存在することが好ましい。
また、本実施形態におけるリン含有多価アルコール化合物(C)の水酸基当量が1000g/eq未満であることを要する。前記水酸基当量としては、好ましくは、50g/eq以上800g/eq未満であり、より好ましくは、100g/eq以上500g/eq未満である。前記水酸価当量が500g/eq未満であると硬化物の耐熱性の観点から優れる。なお、上記水酸基当量は、JIS K 0070に準拠して測定される値である。
リン含有多価アルコール化合物(C)における水酸基の価数(個数)としては、二~六価であることが好ましく、二価であることがより好ましい。
リン含有多価アルコール化合物(C)は、芳香族環を含んでも、あるいは含んでいなくてもよく、芳香族環を含むことが好ましい。また、リン含有多価アルコール化合物(C)としては、リン原子及び2個以上の水酸基を有し、かつ、直鎖又は分岐鎖のアルキレン鎖(二価の脂肪族炭化水素基)、直鎖又は分岐鎖のアルキレンエーテル鎖(アルキレンオキシ基)、又は芳香族環を有する炭化水素基を有する化合物であることが好ましい。
具体的には、リン含有多価アルコール化合物(C)は、以下の一般式(II):
Figure 2023090561000028
[上記一般式(II)中、M1IIは一価~六価の炭化水素基を表し、R3II及びR4IIはそれぞれ独立して、一価~二価の炭化水素基を表し、R3II又はR4IIが互いに結合した環状構造を形成してもよく、nc1は2~5の整数を表す。]を表すことが好ましい。なお、上記一般式(II)は、上記一般式(c1)に対応する。そのため、上記一般式(II)中のR3II-(R4II)P(=O)-M1II-の部分構造が、Ac1でありうる。
リン含有多価アルコール化合物(C)は、市販されているものを用いてもよい。市販品は、例えば、三光株式会社製のHCA-HQ(10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)や、HCA=NQ(10-[2-(ジヒドロキシナフチル)]-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)、日本化学工業株式会社製CPHO-HQ(1,4-シクロオクチレンホスホニル-1,4-ハイドロキノン及び1,5-シクロオクチレンホスホニル-1,4-ハイドロキノンの混合物)、HCA-マレイン酸付加物・HCA-シトラコン酸付加物・HCA-イタコン酸付加物(商品名M-ACID、三光(株)製)などのリン含有ジカルボン酸モノマー等が挙げられる。
また、リン含有多価アルコール化合物(C)におけるリン含有量は、3質量%以上であることが好ましく、4~25質量%の範囲であることがより好ましい。
リン含有量が上記範囲であると、生成物であるリン含有活性エステルの難燃性効果を期待することができる。また、リン含有量の測定方法は、実施例の欄に記載の方法を用いて算出している。
-エーテル結合含有脂肪族化合物(D)-
本実施形態において、エーテル結合含有脂肪族化合物(D)(上記一般式(1)のR及び/又はRで表される部分構造を有する化合物)は、1個以上のエーテル結合を有する脂肪族化合物であり、直鎖状若しくは分岐状エーテル、環状エーテル(アルキレンオキシド)、カーボネート化合物、又はアルキレンポリオールが挙げられ、環状エーテル(アルキレンオキシド)、カーボネート化合物、又はアルキレンポリオールが好ましい。
環状エーテル(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
カーボネート化合物としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸ブチレン等が挙げられる。
アルキレンポリオールとしては、脂肪族ポリオールが好ましく、例えば、エチレングリコール(数平均分子量:62)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖の脂肪族ジオール化合物;プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチルブタン-14-ブタンジオール、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチルペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-プロピルペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジエチル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジエチル-1,6-ヘキサンジオール等の分岐鎖を有する脂肪族ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。これら脂肪族ポリオール化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、反応原料として、芳香族多価カルボン酸、その酸ハロゲン化物及び/又はそのエステル化物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール芳香族化合物(C)又はエーテル結合含有脂肪族化合物(D)に対して反応性を示す化合物(F)を必要によりさらに含んでもよい。
当該化合物(F)としては、m-ジヒドロキシベンゼン、2,4-トルエンジオール、3,5-トルエンジオール、p-キシレン-2,6-ジオール、m-キシレン-4,6-ジオール、p-ジヒドロキシベンゼン、2,5-トルエンジオール、p-キシレン-2,5-ジオール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン等多芳香族などが挙げられる。
なお、上記化合物(F)又は化合物(F)の由来の基の含有量は、例えば、リン含有活性エステルの総量(100質量%)に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
本開示におけるリン含有活性エステルは、上記の通り、以上のカルボン酸ハロゲン基を有する芳香族化合物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール芳香族化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)を反応原料とする化合物である。一方、本開示におけるリン含有活性エステルを、反応原料とは独立した別の表現で特定する場合、本実施形態のリン含有活性エステルは、下記一般式(1’):
Figure 2023090561000029
[上記一般式(1’)中、Aはそれぞれ独立して、二価の炭化水素基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
11及びQ12はそれぞれ独立して、二価の芳香族基を表し、
Ar11及びAr12はそれぞれ独立して、下記一般式(2)又は(3):
Figure 2023090561000030
[上記一般式(2)及び一般式(3)中の*は、上記一般式(1)中のAr11又はAr12と結合する酸素原子との結合手を表し、
21及びR31はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基(アリル基等)、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表し、k21は、0~7の整数を表し、k31は、0~5の整数を表す。]で示される構造を表し、
は、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数であり、zは、1以上の平均繰り返し数である。]で表される化合物である。
上記一般式(1’)で表されるリン含有活性エステルは、複数のエステル結合を有し、かつ極性が比較的に低い、鎖状のアルキレン基又はアルキレンエーテル基を含むため、柔軟セグメントとして機能しやすくなり、密着性又は低誘電特性に優れた硬化物を得ることができ、有用である。
本実施形態のリン含有活性エステルのより好ましい形態の一例は、上記一般式(1’)で表され、上記一般式(1’)中、Aはそれぞれ独立して、芳香族基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Q11及びQ12はそれぞれ独立して、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基を表し、xは0.01以上10以下の平均繰り返し数を表し、yは、1以上の平均繰り返し数であり、zは、1以上の平均繰り返し数であり、
Ar11及びAr12はそれぞれ独立して、上記一般式(2)又は(3)で示される構造を表し、上記一般式(2)及び一般式(3)中の*は、上記一般式(1)中のAr11又はAr12と結合する酸素原子との結合手を表し、
21及びR31はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基のいずれかを表し、k21は、0~7の整数を表し、k31は、0~5の整数を表す。]で表されることが好ましい。
<リン含有活性エステルの好ましい別の形態>
本実施形態のリン含有活性エステルの好ましい別の形態としては、エステル化合物(a’)(中間生成物(a’)とも称する。)と、リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有化合物との反応生成物である中間生成物(b’)と、を反応原料(I)とする反応生成物である。そして、前記中間生成物(a’)は、芳香族多価カルボン酸、その酸ハロゲン化物及び/又はそのエステル化物(A)と、芳香族モノアルコール(B)と、を反応原料(II)とする反応生成物でもありうる。さらに、中間生成物(b’)は、リン含有多価アルコール化合物(C)と、エーテル結合含有化合物(D)と、を反応原料(III)とする反応生成物でもありうる。
芳香族多価カルボン酸類(A)と芳香族モノアルコール(B)とを反応させることにより、エステル結合を形成したエステル化合物(a’)が得られる。そして、リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有化合物とを反応させることにより、エーテル結合を形成した水酸基を2以上有する中間生成物(b’)が得られる。
一方、前記エステル化合物(a’)と中間生成物(b’)とを反応させることにより、エステル交換反応が生じ、末端に芳香族環を含む基(例えば、アリールオキシカルボニル基)を含有するリン含有活性エステルを得ることができる。
本実施形態において、リン含有活性エステルを用いることにより、低誘電正接であり、かつ、より難燃性、耐熱性、耐湿熱性、及び、密着性に優れる硬化物が得られ好ましい態様となる。その理由は、必ずしも明らかではないが、得られるリン含有活性エステルは、アリールオキシカルボニル基(活性エステル基)を末端に含有するため、後述するエポキシ樹脂が有するエポキシ基と高い反応性を示し、この高い反応性により、エポキシ基の開環により生じる水酸基の発生を防止または抑制することができ、好ましい態様となる。また、前記リン含有活性エステルは、分子中に水酸基を有さない、または、ほとんど有さないため、前記リン含有活性エステルが反応して得られる硬化物中についても、リン含有活性エステル由来の水酸基を有さない、または、ほとんど有さない。このような活性エステルによれば、硬化時における水酸基の発生を防止または抑制することができる。一般に、極性が高い水酸基は、誘電正接を上昇させることが知られているが、前記リン含有活性エステルを用いることで、硬化物における低誘電正接を実現することができ、特に有用である。
また、前記リン含有活性エステルは、後述するエポキシ樹脂のエポキシ基と反応活性を有するエステル結合を2個以上有するため、硬化物の架橋密度が高くなり、耐熱性が向上しうる。
本実施形態のリン含有活性エステルは、アルキレン基やアルキレンオキシ基(アルキレンエーテル鎖)などの柔軟セグメントを有し、水酸基を有さない、または、ほとんど有さないため、極性の低い構造を有しており、得られる硬化物において優れた難燃性、柔軟性、耐吸湿性、柔軟性に起因する銅箔などへの密着性、及び、低誘電特性を発現させることのできる硬化性組成物(例えば、エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物)、さらには、上記硬化性組成物用いて得られる、硬化物、絶縁材料及びレジスト材料などを提供でき、好ましい態様となる。
<リン含有活性エステルの特性>
本実施形態のリン含有活性エステルの官能基当量は、リン含有活性エステル構造中に有する芳香族エステル基の合計をリン含有活性エステルの官能基数とした場合、硬化性に優れ、低い誘電率及び誘電正接(低誘電特性)の硬化物が得られることから、160~1500g/eqの範囲であることが好ましく、180~1200g/eqの範囲であることがより好ましく、200~1000g/eqの範囲であることが更により好ましい。
本実施形態のリン含有活性エステルにおけるリン含有量は、得られる硬化物等の難燃性と低誘電正接の観点から1.8質量%以上であることが好ましく、1.8~25質量%であることがより好ましく、1.9~24質量%であることが更に好ましい。
本開示のリン含有活性エステルの数平均分子量(Mn)は、320~3000であることが好ましく、360~2400であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)が320以上であると、誘電正接に優れることから好ましい。一方、数平均分子量(Mn)が3000以下であると、成形性に優れることから好ましい。
なお、リン含有活性エステルの官能基当量、リン含有量及び数平均分子量(Mn)の測定方法は、実施例の欄に記載の方法を用いて算出している。
本実施形態のリン含有活性エステルとしては、後述する硬化性組成物として調製する際のハンドリング性や、その硬化物の優れた伸度、誘電特性とのバランスがより優れる観点から、前記リン含有活性エステルの軟化点が200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。また、本実施形態のリン含有活性エステルの軟化点の測定は、JIS K7234に準拠して、測定している。
本実施形態のリン含有活性エステルは、エステル結合で連結された芳香環を有する剛直なメソゲンと、アルキレン鎖又はアルキレンエーテル鎖などの柔軟セグメントと、
難燃性を示すリンを含む基(好ましくは、オキソリン(V)基(≡P(=O)を有するメソゲン)と、を有し、水酸基を有さない、又は、実質的に有さないため、極性の低い構造を有しており、得られる硬化物において優れた伸度、柔軟性に起因する銅箔などへの密着性、及び、低誘電特性を発現させることのできる硬化性組成物(例えば、エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物)、さらには、上記硬化性組成物を用いた半導体封止材料、半導体装置、プレプリグ、回路基板、及び、ビルドアップフィルムなどを提供することができる。
<リン含有活性エステルの合成方法>
上述したリン含有活性エステルの合成方法としては、上述した芳香族多価カルボン酸類(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)を原料として用いて反応させること以外、特に制限されない。但し、上述したリン含有活性エステルの合成においては、
(1)芳香族多価カルボン酸類(A)と芳香族モノアルコール(B)とを反応させ、中間生成物(a’)を得る第1反応工程、及び、
(2)リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有脂肪族化合物(D)とを反応させ、中間生成物(b’)を得る第2反応工程、
(3)上記中間生成物(a’)と中間生成物(b’)とを反応させ、その反応物としてのリン含有活性エステルを得る第3反応工程、
を含む方法を用いることが好ましい。比較的容易にリン含有活性エステルを得ることができるからである。
この場合、第1反応工程では、エステル結合が形成されたエステル化合物が中間生成物(a’)として得られ、第2反応工程では、リン含有多価アルコール化合物(C)の水酸基にエーテル結合含有脂肪族化合物(D)の-O-炭化水素基-(例えば、オキシ-アルキレン)が付加/縮合された末端水酸基を有するエーテル化合物が中間生成物(b’)として得られ、その後の第3反応工程では、エステル交換反応が生じて、末端にアリールオキシカルボニル基構造を含有するリン含有活性エステルを得ることができる。
第1反応工程の条件としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ触媒の存在下、60℃以下の温度で、1~24時間の反応時間で行うことができる。上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらアルカリ触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アルカリ触媒としては、反応効率が高いことから、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。なお、上記アルカリ触媒は、3~30%の水溶液として用いてもよい。また、この際、反応効率を高めるため、層間移動触媒を用いてもよい。層間移動触媒としては、例えば、アルキルアンモニウム塩、クラウンエーテル等が挙げられる。これら層間移動触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1反応工程は、反応制御が容易となることから、有機溶剤中で行うことが好ましい。上記有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族多価カルボン酸類(A)及び芳香族モノアルコール(B)の反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜変更することができる。但し、未反応の末端を削減しつつ、余剰の反応原料を削減する観点から、前記芳香族多価カルボン酸類(A)1モルに対し、前記芳香族モノアルコール(B)が1.1~5.0モルの範囲が好ましく、1.5~4.0モルがより好ましく、2.0~3.0モルが更に好ましい。
第1反応工程終了後は、アルカリ触媒の存在下で水溶液を用いる場合には、反応液を静置分液して水層を取り除き、残った有機層を水で洗浄し、水層がほぼ中性(pH7程度)になるまで水洗を繰り返すことにより、絶縁性に悪影響のある無機塩含有量が低減された前記芳香族多価カルボン酸類(A)、及び、前記芳香族モノアルコール(B)との反応生成物である中間生成物(a’)を得ることができる。これにより、得られる中間生成物(a’)における、絶縁性に悪影響のある無機塩含有量を低減することができる。
次いで、第2反応工程では、リン含有多価アルコール化合物(C)とエーテル結合含有脂肪族化合物(D)とを塩基触媒下で加熱撹拌することにより中間生成物(b’)が得られる。例えば、上記一般式(II)で表されるリン含有多価アルコール化合物(C)と環状エーテル又はカーボネート化合物との縮合反応、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスファンオキシド、亜リン酸、亜ホスホン酸及び亜ホスフィン酸からなる群から選択される少なくとも1種のリン酸類とアルキレンポリオールとの縮合反応、あるいはHCA-マレイン酸付加物・HCA-シトラコン酸付加物・HCA-イタコン酸付加物(商品名M-ACID、三光(株)製)などのリン含有多価アルコール化合物(C)とアルキレンポリオールを縮合反応のいずれかにより中間生成物(b’)が得られる。また、中間生成物(b’)は、市販品(水酸基末端を有するリン含有ポリエステルポリオール縮合物(商品名M-ESTER、ME-P8三光(株)製))を使用してもよい。
第2反応工程で使用する塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これら塩基触媒はそれぞれ単独で用いても、2種類以上を併用してもよく、反応効率が高いことから、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
上記第2反応工程では、特に制限はないが、無溶媒(有機溶剤を使用しない)、あるいは有機溶媒中で行ってもよい。当該有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。これら有機溶媒はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上の混合溶媒としてもよい。
また、第2反応工程の条件としては、特に限定されないが、例えば、50~250℃の温度条件下で、1~24時間の撹拌・反応させることにより、中間生成物(b’)を得ることができる。
なお、中間生成物(b’)は、リン含有多価アルコール化合物(C)の水酸基の水素原子が、アルキレンポリオールなどのアルキレンオキサイドに置換された構造でありうる。
第3反応工程では、第1反応工程で得られた中間生成物(a’)と第2反応工程で得られた中間生成物(b’)とを反応させる。これにより、エステル交換反応が生じ、本開示のリン含有活性エステルを得ることができる。第3反応工程の条件としては、特に限定されないが、例えば、50~250℃の温度で、1~24時間の撹拌・反応を行うことができる。また、第2反応工程では、アルカリ触媒、中でもアミン系触媒(トリエチルアミン等のアルキルアミン、トリフェニルアミン等とアリールアミン、DBU、DBN等の縮環型アミン、イミダゾール、ピリジン等の複素環アミン)を添加することで、反応の促進を図ることができる。
第3反応工程における反応の際には、微量の酸素の混入による劣化を防止するため、酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の具体例としては、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、「4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-1,6-ジ-tert-ブチルフェノール等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N'’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N'’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N'’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4'’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4'’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」等が挙げられる。
第3反応工程では、第1反応工程で用いた溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
中間生成物(a’)及び中間生成物(b’)の反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜変更することができる。但し、優れた密着性、優れた伸度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、中間生成物(a’)の活性エステル基1当量に対する、前記中間生成物(b’)の水酸基当量が、0.1~0.9モルの範囲であることが好ましく、0.2~0.8モルの範囲であることがより好ましく、0.3~0.8モルの範囲であることが更に好ましい。
第2反応工程における反応終了後は、余剰の芳香族モノアルコール(B)を除去するため、常圧蒸留、又は減圧蒸留(例えば、0.9~0.01気圧)を行うことが好ましい。これにより、得られるリン含有活性エステルの純度を高めることができる。
(酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を必須成分として含有する。本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂としては、例えば、以下の〔1〕~〔6〕:
〔1〕酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)、
〔2〕酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)
〔3〕酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)、
〔4〕酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)、
〔5〕酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)、
〔6〕酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)、
の樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂(B1)から上記ウレタン樹脂(B6)について以下順に説明する。
<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とする酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とする酸基及びウレタン結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂(b1-1)としては、樹脂中に複数のエポキシ基を有しているものであれば、その具体構造は特に限定されない。前記エポキシ樹脂(b1-1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂(b1-1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
不飽和一塩基酸(b1-2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸の酸ハロゲン化物、エステル化物も用いることができる。さらに、下記一般式(4)で表される化合物等も用いることができる。
Figure 2023090561000031
[上記一般式(4)中、X41は、炭素数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、X41の構造中の水素原子がハロゲン原子又はアルコキシ基に置換されてもよく、Y41は、水素原子又はメチル基である。]
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
上記(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(5)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
Figure 2023090561000032
[上記一般式(5)中、R51及びR52は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、nは1~5の整数を表す。]
上記芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖又はビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
上記(ポリ)カーボネート鎖としては、例えば、下記一般式(6)で表される(ポリ)カーボネート鎖が挙げられる。
Figure 2023090561000033
[上記一般式(6)中、R61は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n61は1~5の整数を表す。]
一般式(4)で表される化合物の分子量は、100~500の範囲が好ましく、150~400の範囲がより好ましい。
不飽和一塩基酸(b1-2)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
多塩基酸無水物(b1-3)としては、例えば、脂肪族多塩基酸無水物、脂環式多塩基酸無水物、芳香族多塩基酸無水物、脂肪族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、脂環式多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、芳香族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族多塩基酸無水物としては、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
上記脂環式多塩基酸無水物としては、本開示では、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを脂環式多塩基酸無水物とし、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わないものとする。前記脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
上記芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
多塩基酸無水物(b1-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(7)で表される繰返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(b1-4)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
Figure 2023090561000034
[上記一般式(7)中、R13及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の一価の炭化水素基のいずれかを表し、R15はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、i7は0又は1~3の整数であり、mは1以上の整数である。]
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。
これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、分子量が1,000以下のものが好ましい。また、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-4)が、オキシアルキレン変性体又はラクトン変性体である場合には、重量平均分子量(Mw)が1,000以下であることが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-4)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法は、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とするか、あるいは、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とするものであれば特に限定されることはない。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法により前記エポキシ樹脂(B1)を製造してもよいし、あるいは反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にエポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを反応させ、次いで、多塩基酸無水物(b1-3)を反応させる方法が好ましい。該反応は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを塩基性触媒の存在下、100~150℃の温度範囲で反応させた後、反応系中に多塩基酸無水物(b1-3)を加え、80~120℃の温度範囲で反応させる方法等により行うことができる。
本実施形態において、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)との反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、不飽和一塩基酸(b1-2)を0.9~1.1モルの範囲で用いることが好ましい。また、多塩基酸無水物(b1-3)の反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、0.2~1.0モルの範囲で用いることが好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、上記有機溶剤としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学株式会社製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。
上記有機溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、本実施形態において、有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
上記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物類;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。
上記塩基性触媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、前記塩基性触媒の添加量は、反応原料の合計100質量部に対して0.001~5質量部の範囲が好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、の伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、JIS 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)、カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)、及び必要に応じて多塩基酸無水物(b1-3)、カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)とを反応させて得られた樹脂;ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、及びカルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)と、を反応させて得られた樹脂;あるいはエポキシ樹脂(b1-1)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)とを反応させて得られた樹脂等が挙げられる。
カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
上記記有機溶剤としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、上記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
<酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)としては、酸基及び(メタ)アクリレート基を有していればよく、カルボン酸の水素原子がアルキル基に置換された(メタ)アクリレートエステルを含み、例えば、水酸基又はカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物、あるいは前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物(b1-3)を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂中間体は、(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。当該その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
その他の重合性不飽和基含有化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
上記(メタ)アクリレート化合物(β)は、上記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)の酸価は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート樹脂(B3)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)>
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。
酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有しても、あるいは両方を有してもよい。当該アミドイミド樹脂(b4-1)は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(1-5)又は(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂(b4-1)の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
また、アミドイミド樹脂(b4-1)は、必要に応じて、ポリイソシアネート化合物(b1-4)及び多塩基酸無水物(b1-3)以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
上記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。
上記多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有するものであれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、ヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)の具体構造又は製造方法は特に限定されず、一般的なアミドイミド樹脂等を広く用いることができる。本実施形態のアミドイミド樹脂(b4-1)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応原料として得られるものが好ましい。
また、本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、高い溶剤溶解性を有する酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂組成物が得られることから、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体が好ましく、脂環式ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体、脂肪族ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)の総質量中における、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体の合計質量の割合が、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。
また、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体とを併用する場合には、両者の質量比(脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体/脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体)が30/70~70/30の範囲であることが好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記有機溶剤としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)は、所望の樹脂性能等に応じて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)の反応原料以外に、他の反応原料を併用することもできる。この場合、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B4)の反応原料の総質量中の前記(b4-1)~(b4-2)成分の合計質量の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)を含む反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。また、例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)との反応は、適当な塩基性触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒又は酸性触媒を用いてもよい。
上記塩基性触媒は、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の酸性触媒及び塩基性触媒と同様のものを用いることができ、それらは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。また、スルホニル基等の強酸を有する固体酸触媒等も用いることができる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)と、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、必要に応じて不飽和一塩基酸(b1-2)と反応原料とし、当該反応原料を反応させて得られた樹脂が挙げられる。
本実施形態において、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)とは、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)としては、例えば、下記一般式(8.1)~(8.5)のいずれかで表される化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)と下記一般式(9.1)~(9.5)のいずれかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物、あるいは芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)又はその他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
Figure 2023090561000035
(上記一般式(8.1)~(8.5)中、R81~R84及びR87はそれぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R85及びR86はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j81~j84及びj87はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k81~k84及びk87はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(8.1)~(8.5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(8.2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換していてもよく、一般式(8.3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換していてもよく、一般式(8.4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよく、一般式(8.5)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj81~j84及びk81~k84であることを示している。
Figure 2023090561000036
(上記一般式(9.1)~(9.5)中、h91は、0又は1を表し、R91~R96はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k91~k96はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z91~Z96はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y91は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n91は1~4の整数を表す。)
上記一般式(9.1)~(9.5)で表される化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ビフェノール、テトラヒドロキシビフェニル、ビスフェノール等の他、これらの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有する化合物などが挙げられる。また、前記芳香核上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の一価の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリールオキシ基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアラルキル基などが挙げられる。これらの芳香族ポリヒドロキシ化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、高い絶縁信頼性を有する酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂が得られることから、ハロゲンを含有しない化合物が好ましい。
上記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の1種又は2種以上と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で反応させて得られる樹脂が挙げられる。
上記その他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)としては、芳香核上に水酸基を1つ有する芳香族化合物であれば何れの化合物でもよく、例えば、フェノール或いはフェノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するフェノール化合物、ナフトール或いはナフトールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するナフトール化合物、アントラセノール或いはアントラセノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するアントラセノール化合物等が挙げられる。また、芳香核上の置換基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、それぞれの具体例は前述の通りである。これらのフェノール性水酸基を1つ有する化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、へキシルアルデヒド等のアルキルアルデヒド;サリチルアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド等のヒドロキシベンズアルデヒド;2-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド等のヒドロキシ基とアルコキシ基の両方を有するベンズアルデヒド;メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド等のアルコキシベンズアルデヒド;1-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、6-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド等のヒドロキシナフトアルデヒド;ブロムベンズアルデヒド等のハロゲン化ベンズアルデヒド等が挙げられる。
アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化性組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化性組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる樹脂組成物が得られることから、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態において、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)を酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の反応原料に用いる場合、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と多塩基酸無水物(b1-3)との当量比[(b5-3)/(b1-3)]は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、0.2~7の範囲が好ましく、0.25~6.7の範囲がより好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にフェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)とを反応させて(例えば、塩基性触媒の存在下、100~200℃の温度範囲での反応)、次いで、不飽和一塩基酸(b1-2)及び/又はN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b2-3b)を反応(例えば、酸性触媒の存在下、80~140℃の温度範囲での反応)させた後、多塩基酸無水物(b1-3)を反応(例えば、80~140℃の温度範囲で反応)させる方法が好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)は、上記の反応原料から得られる樹脂である。例えば、当該アクリルアミド樹脂(B5)としては、下記一般式(10.1)で表される構造部位(I)と下記一般式(10.2)で表される構造部位(II)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂、あるいは下記式(10.3)で表される構造部位(III)と下記式(10.4)で表される構造部位(IV)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂が挙げられる。
Figure 2023090561000037
[上記式(10.1)又は(10.2)中、Rb2及びRb8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の一価の炭化水素基を表し、Rb3及びRb9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n及びnはそれぞれ独立して、1又は2を表し、Rb4及びRb10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記一般式(11.1)~(11.5)のいずれかで表される構造部位を表し、Rb5及びRb6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、Rb5とRb6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、Rb11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、Rb12は、水素原子又はメチル基を表し、Rb1及びRb7はそれぞれ独立して、前記Rb3及び前記Rb9で表される基、或いは、式(10.1)で表される構造部位(I)又は式(10.2)で表される構造部位(II)が、*印が付されたRb4又はRb10を介して連結する結合点である。]
Figure 2023090561000038
[上記一般式(10.3)又は(10.4)中、Rb2及びRb8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、Rb3及びRb9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n及びnはそれぞれ独立して、1又は2を表し、Rb4及びRb10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記式(11.1)~(11.5)のいずれかで表される構造部位を表し、Rb5及びRb6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、Rb5とRb6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、Rb11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、Rb12は、水素原子又はメチル基を表し、Rb1及びRb7はそれぞれ独立して、前記Rb3及び前記Rb9で表される基、或いは、一般式(10.3)で表される構造部位(III)又は一般式(10.4)で表される構造部位(IV)が、*印が付されたRb4又はRb10を介して連結する結合点である。]
Figure 2023090561000039
[上記一般式(11.1)~(11.5)中、h91は、0又は1を表し、R91~R96はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基又はアラルキル基のいずれかを表し、n91~n96はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Y91は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n91は1~4の整数を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Wは、下記式(12.1)又は(12.2)を表す。]
Figure 2023090561000040
[上記式(12.1)又は(12.2)中、R121及びR124はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、R122及びR123はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、R122とR123とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、R125は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、R126は、水素原子又はメチル基を表す。]
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンオキサイド(b5-2b)又はアルキレンカーボネート(b5-2a)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応させて得られた樹脂が挙げられる。
アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、上述のアルキレンオキサイド(b5-2b)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。
アルキレンオキサイド(b5-2b)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、上述のアルキレンカーボネート(b5-2a)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。
アルキレンカーボネート(b5-2a)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
上記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記酸性触媒としては、上述の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
以上が、本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂とリン含有活性エステルとを有する樹脂組成物に含有される必須成分の内容である。
(任意添加成分)
また、本実施形態における樹脂組成物には、上述した化合物又は樹脂等以外、紫外線安定剤、保存安定化剤等の公知の各種添加剤を含有することもできる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
[硬化性組成物]
本実施形態における硬化性組成物は、上述した樹脂組成物と、光重合開始剤とを含有することが好ましい。より詳細には、本実施形態の好適な硬化性組成物は、上述した樹脂組成物(リン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を必須に含む。)と、光重合開始剤と、必要により添加される、硬化剤と、溶媒と、他の樹脂と、添加剤と、を含有する。
上記硬化剤としては、エポキシ樹脂及び当該エポキシ樹脂以外の他の硬化剤(以下、他の硬化剤と称する。)が挙げられる。また、前記他の樹脂としては、リン含有活性エステル及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外の樹脂が挙げられる。さらには、前記添加剤としては、充填剤、難燃剤、硬化促進剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤などが挙げられる。
本実施形態における硬化性組成物において、リン含有活性エステル化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の含有量は、硬化性組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、上述した樹脂組成物の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、硬化剤の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、0~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、添加剤の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、0~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
以下、本実施形態における硬化性組成物に含有されうる各成分である、光重合開始剤、硬化剤、溶媒、他の樹脂及び添加剤について詳説する。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いることができる。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。また、光重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。
さらに、光重合開始剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等も挙げられる。
また、本実施形態に使用可能な光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
本実施形態の硬化性組成物における光重合開始剤の含有量は、リン含有活性エステル化合物及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
(その他の各種添加剤)
本実施形態の硬化性組成物は、目的を逸脱しない範囲において、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、他の樹脂、有機溶剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤等の各種添加剤を適量含有することもできる。
(硬化剤)
本実施形態の硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂及び他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等)が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。
<エポキシ樹脂>
本実施形態の好適な硬化剤であるエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を含み、前記エポキシ基で架橋ネットワークを形成することにより硬化できる硬化性樹脂であることが好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格及びジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂;
ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂のうち、フェノール化合物をエポキシ化して得られる、いわゆるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、その中でもノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが、誘電特性の観点からより好ましい。なお、上述のエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、120~400g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがより好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が120g/eq以上であると、得られる硬化物の誘電特性により優れることから好ましく、一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が400g/eq以下であると、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスに優れることから好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂の軟化点は、伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20~200℃であることが好ましく、40~150℃であることがより好ましい。
本実施形態において、エポキシ樹脂の使用量に関し、リン含有活性エステル中のエステル基、並びに、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、エポキシ樹脂の使用量の官能基当量比((リン含有活性エステル+酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/エポキシ樹脂)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物の伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできる硬化物を形成可能な硬化性組成物となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
(他の硬化剤)
本実施形態の硬化性組成物は、エポキシ樹脂と共に、あるいはエポキシ樹脂の代わりに他の硬化剤を含有してもよい。前記他の硬化剤としては、特に制限されないが、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に制限されないが、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N,-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。
上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
上記フェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
上述の他の硬化剤はいずれも、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤)の使用量に関し、リン含有活性エステル中のエステル基、並びに、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、当該他の硬化剤の使用量の官能基当量比((リン含有活性エステル+酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/他の硬化剤)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物の伸度、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させることのできることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
<硬化促進剤>
硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
上記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
上記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
上記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
上述の硬化促進剤のうち、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)を用いることが好ましい。
本実施形態の硬化性組成物における硬化促進剤の含有量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の含有量が5質量部以下であると、絶縁信頼性に優れることから好ましい。同様の観点から、硬化促進剤の含有量は、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることがより好ましく、また、3質量部以下であることがより好ましい。
(他の樹脂)
本実施形態の硬化性組成物は、前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に加えて、あるいは前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に代えて他の樹脂を含んでいてもよい。
前記他の樹脂の具体例としては、特に制限されないが、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性組成物における他の樹脂の含有量は、全体の50質量%以下であることが好ましい。
(溶媒)
本実施形態の硬化性組成物は、無溶媒で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、硬化性組成物の粘度を調整する機能等を有する。
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性組成物における溶媒の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)中、0~90質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることがさらに好ましい。前記溶媒の含有量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の含有量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
(添加剤)
本実施形態の硬化性組成物は、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、上記硬化促進剤、難燃剤、充填剤等が挙げられる。
<難燃剤>
本実施形態の難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
上記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
上記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。上述の難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の難燃剤の含有量は、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。難燃剤の含有量が0.1質量部以上であると、難燃性を付与できることから好ましい。一方、難燃剤の含有量が50質量部以下であると、誘電特性を維持しながら難燃性を付与できることから好ましい。同様の観点から、難燃剤の含有量は、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、1質量部以上であることがより好ましく、また、30質量部以下であることがより好ましい。
(充填剤)
本実施形態の充填剤としては、有機充填剤、無機充填剤が挙げられる。有機充填剤は、伸びを向上させる機能、機械的強度を向上させる機能等を有する。無機充填剤は、熱膨張率の低減や難燃性の付与といった機能を有する。
前記有機充填剤としては、特に制限されないが、ポリアミド粒子等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。
また、上記充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。なお、上述の充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の充填剤の含有量は、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であると、充填剤の効果を十分に付与できることから好ましい。一方、配合物の粘度が高くなり成形性を損なわないように、充填剤の含有量が95質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、充填剤の含有量は、上記リン含有活性エステル及び上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、また、80質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
[硬化物]
本実施形態における硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化してなる。当該硬化性組成物に含有されるリン含有活性エステル自体が、誘電正接が低いことから、前記硬化性組成物から得られる硬化物も誘電正接が低くなり、また、得られる硬化物は柔軟性、柔軟性に起因する銅箔等の金属への密着性、及び、低誘電特性を発現させることのでき、好ましい態様となる。
本実施形態の硬化物は、前記硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
本実施形態において、紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上の複数回に分けて行ってもよい。
また、本実施形態において、前記硬化性組成物を硬化反応させてなる硬化物を得る他の方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、100~300℃であり、加熱時間としては、1~24時間であることが好ましい。
本実施形態における硬化性組成物又は硬化物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、レジスト材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。さらに、上記の中でも、硬化物が優れた柔軟性、密着性、低誘電特性、及び、耐熱性等を有するといった特性を生かし、本開示の硬化性組成物は、半導体封止材料、レジスト材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。
[絶縁材料]
本実施形態における絶縁材料は、上述した硬化性組成物からなる。好適に、本実施形態の絶縁材料は、上述した硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射して硬化させることで得られるものである。かかる本実施形態の絶縁材料は、伸度、密着性、及び低誘電特性に優れる。当該絶縁材料としては、上述のビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、回路基板用絶縁材料及び電子部品内蔵用基板用の絶縁材料などが挙げられる。例えば、上記硬化性組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記硬化性組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程であり、第2の工程は、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程であり、第3の工程は、このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程である。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましい。第一の工程は、上述の溶液塗布によるもの以外にも、あらかじめ所望の厚みに塗工して乾燥したビルドアップフィルムのラミネートによる方法でも行うことができる。また、本開示のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を製造することも可能である。
[レジスト部材]
本実施形態におけるレジスト部材は、上述した硬化性組成物からなる。当該レジスト部材は、例えば、前記硬化性組成物を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶剤を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~180℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。かかる本実施形態のレジスト部材は、低誘電特性及び伸度に優れる。
以下に、実施例を挙げて本開示をさらに詳しく説明するが、本開示は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、GPC測定、H-NMR測定、13C-NMR測定、FD-MSスペクトル測定に関しては、以下の条件等にて測定した。
(評価方法)
<GPC測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成例・実施例等で得られたイソフタル酸ジフェニル誘導体、フェノール性水酸基含有樹脂、及び、活性エステルのGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、原料ピークの減少及び消失から、目的生成物(イソフタル酸ジフェニル誘導体(a’)、リン含有活性エステル、及び、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))が生成していることを確認した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:以下に示す合成例・実施例等で得られた、イソフタル酸ジフェニル誘導体(a’)、及び、リン含有活性エステルの固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)を使用した。
<FD-MSスペクトル測定>
FD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。この結果より、目的生成物(活性エステル)の繰り返し数p11=1の化合物に相当する質量ピークを確認した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
H-NMR測定>
H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記H―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
13C-NMR測定>
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記13C―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
<理論リン含有率>
理論リン含有率(%)=100×[リン含有原料の仕込み量(質量部)×(リン含有原料のリン含有率(質量%)/100)]/(リン含有原料を用いて合成されるリン含有化合物の理論収量)
なお、前記リン含有原料のリン含有率は、商品を使用する場合は、商品カタログ値を使用した。
前記リン含有化合物とは、実施例及び比較例で使用するリン含有多価アルコール化合物(C)、リン含有活性エステル、及び、リン含有中間体生成物(b’)を指す。
[伸度の測定方法]
伸度の測定は、引張試験に基づいて行った。具体的に、下記の[密着性の評価方法]の欄に記載と同様の試験片1(硬化物)を10mm×80mmの大きさに切り出し、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフ「AG-IS」を用いて、下記の測定条件で試験片1の引張試験を行った。試験片が破断するまでの伸度(%)を測定した。
測定条件:温度23℃、湿度50%、標線間距離20mm、支点間距離20mm、引張速度10mm/分
[誘電率の測定方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。次いで、温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片とし、アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率を測定した。
[誘電正接の測定方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。次いで、温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片とし、アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電正接を測定した。
[密着性の評価方法]
密着性の評価は、ピール強度の測定により行った。具体的に、銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱した。銅箔から硬化物を剥離し、試験片1(硬化物)を得た。この試験片1を幅1cm、長さ12cmの大きさに切り出し、剥離試験機(株式会社A&D製「A&Dテンシロン」、剥離速度50mm/分)を用いて90°ピール強度(N/cm)を測定した。値が大きいほど、密着性に優れることを示す。
(合成例1):イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び攪拌器を取り付けたフラスコに、o-クレゾール864.0質量部(8.0モル)とトルエン4140.0質量部とを仕込み、系内を減圧窒素置換し、溶解させた。次いで、イソフタル酸クロリド808質量部(酸クロリド基のモル数:4.0モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド2.07質量部を溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20質量%水酸化ナトリウム水溶液1648.0質量部を3時間かけて滴下した。次いで、前記条件下で1.0時間攪拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して約15分間攪拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)を得た。当該イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)のGPCチャート、H-NMRチャート及びFD-MSスペクトルチャートをそれぞれ図1~図3に示す。
(合成例2):リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び攪拌器を取り付けたフラスコに10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、商品名:HCA-HQ)200.0質量部、炭酸プロピレン156.4質量部とトリフェニルホスフィン(以下TPP)1.07質量部を仕込み、190℃まで昇温し、反応が終了するまで反応させて、リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)を得た。また、リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)の水酸基当量が253g/eqであることを確認した。当該リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)のGPCチャート、13C-NMRチャート及びFD-MSスペクトルチャートをそれぞれ図3~6に示す。
(合成例3):リン含有活性エステル(1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び攪拌器を取り付けたフラスコに、上記合成例1で得られたイソフタル酸ジフェニル誘導体(1)137.0gと、上記合成例2で得られたリン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-HQ)100.0gと、触媒としてジアザビシクロウンデセン(以下、「DBU」と略記する。)0.24質量部と、を仕込み、190℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、減圧蒸留にてo―クレゾールを除去しながら更に反応させることで、リン含有活性エステル(1)を得た。得られたリン含有活性エステル(1)の官能基当量は、仕込み比より486g/eqであった。当該リン含有活性エステル(1)のGPCチャート、13C-NMRチャート及びFD-MSスペクトルチャートをそれぞれ図7~9に示す。
(合成例4):リン含有多価アルコール化合物(EC-HCA-HQ)の合成
撹拌器をつけたナスフラスコに10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、商品名:HCA-HQ)200質量部と、炭酸エチレン199.5質量部と、TPP0.96質量部と、を仕込み、180℃にて反応終了まで撹拌させることにより、リン含有多価アルコール化合物(EC-HCA-HQ)を調製した。また、リン含有多価アルコール化合物(EC-HCA-HQ)の水酸基当量が227g/eqであることを確認した。当該リン含有多価アルコール化合物(EC-HCA-HQ)のGPCチャートを図10に示す。
(合成例5):リン含有活性エステル(2)の合成
上記合成例3にて調製したPC-HCA-HQの替わりに使用した上記合成例4にて調製したEC-HCA-HQ60.0質量部と、イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)91.7質量部と、DBU0.15質量部とに変更した以外、合成例3と同様な操作を行うことにより、リン含有活性エステル(2)を合成した。得られた活性エステル(2)の官能基当量は、仕込み比より、465g/eqであった。当該リン含有活性エステル(2)のGPCチャートを図11に示す。
(合成例6):リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-NQ)の合成
上記合成例4で使用したHCA-HQの替わりに使用した10-[2-(ジヒドロキシナフチル)]-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、商品名:HCA=NQ)と、炭酸エチレン68.2質量部と、DBU0.50質量部とに変更した以外、合成例4と同様な操作を行い、リン含有多価アルコール化合物(PC-HCA-NQ)を合成した。また、PC-HCA-NQの水酸基当量は仕込み比から245g/eqであった。当該含有多価アルコール化合物(PC-HCA-NQ)のGPCチャートを図12に示す。
(合成例7):リン含有活性エステル(3)の合成
上記合成例3で合成したPC-HCA-HQの替わりに使用した上記合成例6で合成したPC-HCA-NQ71.5質量部と、イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)100.9質量部と、DBU0.34質量部とに変更し、かつ4-ジメチルアミノピリジン(以下DMAP)0.17質量部を加えた以外、合成例3と同様な操作を行い、リン含有活性エステル(3)を合成した。得られたリン含有活性エステル(3)の官能基当量は、仕込み比より、484g/eqであった。当該リン含有活性エステル(3)のGPCチャートを図13に示す。
(合成例8):リン含有多価アルコール化合物(PC-PPQ)の合成
上記合成例2で使用したHCA-HQの替わりに使用したジフェニルホスフィニルハイドロキノン(北興産業株式会社製、商品名:PPQ(登録商標))100.0質量部と、炭酸プロピレン72.4質量部と、TPP0.52質量部とに変更した以外、合成例2と同様な操作を行い、リン含有多価アルコール化合物(PC-PPQ)を合成した。また、PC-PPQの水酸基当量が208g/eqであることを確認した。当該リン含有多価アルコール化合物(PC-PPQ)のGPCチャートを図14に示す。
(合成例9):リン含有活性エステル(4)の合成
合成例3においてPC-HCA-HQの替わりに使用した上記合成例8で合成したPC-PPQ70.0質量部と、イソフタル酸ジフェニル誘導体(1)116.5質量部と、DBU1.86質量部とに変更した以外、合成例3と同様な操作を行い、リン含有活性エステル(4)を合成した。得られたリン含有活性エステル(4)の官能基当量は、仕込み比より、447g/eqであった。当該リン含有活性エステル(4)のGPCチャートを図15に示す。
(合成例10):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-680」(DIC株式会社製、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq、)214質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、メトキノン0.2質量部加えた後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン1.4質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72質量部、テトラヒドロ無水フタル酸76質量部を加え110℃で3時間反応し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであった。なお、酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定した値である。
(合成例11):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(2)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート499.7質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、NCO%=17.2%)244.3質量部及び無水トリメリット酸192.0質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.0質量部を添加した。窒素雰囲気下で160℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認した。次いで、熱重合禁止剤としてメトキノン0.4質量部加えた後、ペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(東亜合成株式会社製「アロニックス M-306」、水酸基価:159.7mgKOH/g)147.6質量部及びトリフェニルホスフィン3.5質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で5時間反応を行なった。その後、グリシジルメタクリレート165.0質量部を添加し、110℃で6時間反応させた。次に、無水コハク酸110.4質量部を加え110℃で5時間反応させて、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(2)を得た。当該樹脂(2)の固形分酸価は、80mgKOH/gであった。
(比較合成例1)比較中間体(1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにジシクロペンタジエンとフェノールの重付加反応樹脂(水酸基当量:165g/当量、軟化点85℃)330質量部とトルエン1184質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、イソフタル酸クロライド101質量部を仕込みその後、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下TBAB)を0.59質量部仕込み、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液206質量部を3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でトルエンを除去し、比較中間体(1)を合成した。当該較中間体(1)のGPCチャートを図16に示す。
(比較合成例2)リン原子含有化合物(1)の合成
温度計、冷却管、分留管、及び撹拌器を取り付けたフラスコに、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド77.0質量部と、p-アニスアルデヒド48.5質量部と、上記比較中間体(1)197.5質量部とを仕込み、90℃に昇温して窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、180℃にまで昇温し5時間攪拌した後、更に190℃まで昇温して9時間撹拌した。反応混合物から水を加熱減圧下で除去し、リン原子含有化合物(1)を合成した。当該リン原子含有化合物(1)のGPCチャートを図17に示す。
(比較合成例3)リン原子含有エステル化合物(1)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び撹拌器を取り付けたフラスコに、リン原子含有化合物(1)193.8質量部と、メチルイソブチルケトン678.0質量部とを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、安息香酸クロライド42.2質量部を仕込んだ後、TBAP0.56質量部を仕込み、窒素ガスパージを施しながら系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液78質量部を3時間かけて滴下した。次いで、前記条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液して水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン層に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、リン原子含有エステル化合物(1)を合成した。当該リン原子含有エステル化合物(1)のGPCチャートを図18に示す。
(実施例1:樹脂組成物(1)及び硬化性組成物(1)の調製)
合成例3で得たリン含有活性エステル(1)15質量部と、合成例11で得た酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)62質量部と、を混合して樹脂組成物(1)を調製した。
また、合成例3で得たリン含有活性エステル(1)15質量部と、合成例11で得た酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)62質量部と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)19.9質量部と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)3.9質量部と、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.4質量部と、4-ジメチルアミノピリジン0.3質量部と、を混合し、硬化性組成物(1)を得た。
(実施例2~9:樹脂組成物及び硬化性組成物の調製)
上記合成例で得られたリン含有活性エステル(1)~(4)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)~(2)とを、表1に示す組成比で混合して、各樹脂組成物(1)~(4)を調製した。
上記実施例で得られた樹脂組成物(1)~(4)と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)と、2-エチル-4-メチルイミダゾールと、4-ジメチルアミノピリジンと、表1に示す組成比で混合し、硬化性組成物(1)~(9)を得た。そして、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該硬化性組成物(1)~(9)について、各種評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
(比較例1~2:組成物の調製)
実施例1~9と同様に、表1に示す組成比で各成分を混合し、比較例1~2の組成物(C1)~(C2)及び硬化性組成物(C1)~(C2)を調製した。そして、比較例1~2の硬化性組成物(C1)~(C2)について、各種評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2023090561000041
表1の結果から、実施例の樹脂組成物を使用した場合、比較例に比べ、優れた伸度、密着性、及び誘電特性に優れた硬化物が得られたことが確認できる。
本開示によれば、得られる硬化物において、伸度、密着性、及び誘電特性に優れた樹脂組成物、及び当該組成物を含有する硬化性組成物、並びに、前記硬化性組成物を用いて得られる、樹脂組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材を提供することができる。

Claims (8)

  1. 2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)、芳香族モノアルコール(B)、リン含有多価アルコール化合物(C)及びエーテル結合含有脂肪族化合物(D)を反応原料とするリン含有活性エステルと、
    酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、を含有する樹脂組成物。
  2. 前記リン含有活性エステルは、以下の一般式(J):
    Figure 2023090561000042
    (上記一般式(J)中、Aは、前記リン含有多価アルコール化合物(C)由来の基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、前記エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Q及びQは、前記2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Ar及びArはそれぞれ独立して、前記芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、Mは、下記一般式(ii)又は(iii)で表される基を表し、
    Figure 2023090561000043
    [上記一般式(ii)又は(iii)中、Rはそれぞれ独立して、前記エーテル結合含有脂肪族化合物(D)由来の基を表し、Qはそれぞれ独立して、前記2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物及び/又はその酸ハロゲン化物若しくはエステル化物(A)由来の基を表し、Arはそれぞれ独立して、前記芳香族モノアルコール(B)由来の基を表し、xは、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数である。]
    は、0.1以上の平均繰り返し数であり、yは、1以上の平均繰り返し数であり、zは、1以上の平均繰り返し数であり、qは0又は1を表す。)で表される、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記一般式(1)中、Aは以下の一般式(I):
    Figure 2023090561000044
    [上記一般式(I)中、Mは芳香族基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、一価の炭化水素基又は二価の炭化水素基を表し、R又はRの一方が二価の炭化水素基である場合、他方も二価の炭化水素基であり、かつR及びRが互いに結合した環状構造を形成し、上記一般式(I)中の*は、酸素原子と結合する結合手を表す。]を表し、
    及びRはそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、
    及びQは、二価の芳香族基を表し、
    Ar及びArはそれぞれ独立して、一価の芳香族基を表す、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. リンの含有量が、樹脂組成物の総量に対して1.8質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物及び硬化剤を含有する、硬化性組成物。
  6. 請求項5に記載の硬化性組成物が硬化した、硬化物。
  7. 請求項6記載の硬化性組成物からなることを特徴とする絶縁材料。
  8. 請求項6記載の硬化性組成物からなることを特徴とするレジスト部材。
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