以下、好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して一実施形態におけるシートフレーム1について説明する。図1に示すように、シートフレーム1は、自動車の3人掛けシートのうち左および中央のシートに使用されるフレームである。シートフレーム1は、クッションフレーム2と、クッションフレーム2の後端部に配置されるバックフレーム3と、クッションフレーム2の後端部とバックフレーム3の下端部とを連結するリクライニング装置(連結装置)4と、シートに着座した着座者の上体を拘束するシートベルト5と、を備える。
クッションフレーム2は、着座者が着座するシートクッションの鋼製のフレームである。クッションフレーム2は、略四角枠状に形成され、車体(図示せず)に取り付けられている。弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のクッションパッド(図示せず)をクッションフレーム2により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でクッションパッドを覆ってシートクッションが形成される。
バックフレーム3は、着座者の背凭れとなるシートバックのフレームである。弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のバックパッド(図示せず)をバックフレーム3により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でバックパッドを覆ってシートバックが形成される。
リクライニング装置4は、左右方向に延びる回転軸(図示せず)を中心にクッションフレーム2に対してバックフレーム3を回転可能に、クッションフレーム2とバックフレーム3とを連結する装置である。リクライニング装置4は、クッションフレーム2及びバックフレーム3の左右両側にそれぞれ配置されている。リクライニング装置4は、図示しないレバーやスイッチを着座者などが操作することで、クッションフレーム2に対するバックフレーム3の傾斜角度を調整できる。一方、リクライニング装置4は、レバーやスイッチを着座者などが操作していないとき、クッションフレーム2に対するバックフレーム3の傾斜角度をロックする。
シートベルト5は、中央のシートに着座した着座者の腰部の左右と左肩部とを拘束する3点式シートベルトである。シートベルト5は、ウェビング5aと、バックフレーム3に取り付けられるリトラクタ5bと、バックフレーム3の上部に設けられる引出部5cと、クッションフレーム2の後端部の左右方向中央に配置される固定部5dと、ウェビング5aに対して摺動可能に設けられる接続部(タング)5eと、クッションフレーム2の後端部の右側に配置される被接続部(バックル)5fと、を備えている。
ウェビング5aの一端側がリトラクタ5bに巻き付けられ、ウェビング5aの他端が固定部5dに固定されている。リトラクタ5bから引き出されたウェビング5aが引出部5cを通り、その引出部5cから引き出されたウェビング5aに接続部5eが設けられている。被接続部5fに接続部5eを接続することで、引出部5cと接続部5eとに架け渡されたウェビング5aが着座者の肩部を拘束し、接続部5eと固定部5dとに架け渡されたウェビング5aが着座者の腰部を拘束する。
リトラクタ5bは、車両衝突時など車両が急激に減速した場合にウェビング5aがそれ以上引き出されることを防止する。但し、リトラクタ5bは、ウェビング5aに所定値以上の引張荷重が入力された場合に、徐々にウェビング5aを送り出すフォースリミッタの機能を有している。
また、車両衝突時など、リトラクタ5bからのウェビング5aの引き出しがロックされて、着座者の肩部を拘束するウェビング5aが引っ張られると、引出部5cに前方へ向かって大きな引張荷重が加わる。この荷重によって、リクライニング装置4の回転軸や、その回転軸の近傍を支点としてバックフレーム3が倒れないよう、バックフレーム3やリクライニング装置4の各部の強度が設定される。
次に図1に加えて図2から図5を参照し、バックフレーム3についてさらに説明する。なお、図2ではシートベルト5の各部の図示を省略し、図3では第1フレーム11よりも奥側に見えるバックフレーム3の各部の図示を省略している。また、各図面に示す矢印U−D方向、矢印F−B方向、矢印L−R方向は、それぞれバックフレーム3の上下方向、前後方向、左右方向である。
図1及び図2に示すように、バックフレーム3は、左右方向に互いに離れて上下方向に延びる第1フレーム11及び第2フレーム12と、第1フレーム11及び第2フレーム12の上部間を連結して左右方向に延びるアッパーフレーム13と、第1フレーム11及び第2フレーム12の下部間を連結して左右方向に延びるロアフレーム14と、ロアフレーム14の左右両側にそれぞれ配置されて左右両側のリクライニング装置4にそれぞれ連結される第1被連結部15及び第2被連結部16と、を主に備えている。
なお、本明細書では、左右方向視において、第1フレーム11の後面や、後述する第2フレーム12の筒部12aの中心軸に平行な方向をバックフレーム3(シートフレーム1)の上下方向とし、その上下方向と直交する方向をバックフレーム3の前後方向とする。これらのバックフレーム3の上下方向および前後方向は、クッションフレーム2に対するバックフレーム3の角度が変わっても変化しない。
第1フレーム11は、バックフレーム3の左右方向の中央に配置される部材であり、中央のシートと左のシートとの境界部分に設けられる。第1フレーム11は、高張力鋼(ハイテン)製である。なお、本明細書における高張力鋼とは、合金成分や熱処理の有無に関わらず、引張強さが490MPa以上の鋼である。本実施形態における第1フレーム11は、焼入れ及び焼戻しの熱処理が施された、引張強さが約980MPaの調質高張力鋼製であり、全長に亘って略一様の材料により形成されている。調質高張力鋼は、焼入れ及び焼戻しの熱処理が施されていない非調質高張力鋼と比べて、降伏比が高く、塑性変形し難い。
第1フレーム11は、鋼板を角筒状に折り曲げ、後面側で突き合わせた鋼板の縁同士を溶接して形成されている。なお、本明細書における溶接とは、金属を溶融や軟化させて接合するものであり、抵抗溶接やレーザ溶接、アーク溶接、摩擦攪拌接合などが例示される。角筒状の第1フレーム11の断面形状は、前後方向に長い長方形状である。これにより、第1フレーム11は、前後方向の曲げ荷重に対する剛性が高くなっている。
第2フレーム12は、バックフレーム3の左側に配置される部材であり、引張強さが約490MPa未満の鋼製である。ロアフレーム14が連結される第2フレーム12の下部には、リクライニング装置4に連結される第2被連結部16が設けられている。第2フレーム12は、鋼管である筒部12aと、筒部12aに溶接により接合される板部12bと、を主に備えている。筒部12aは、上端がアッパーフレーム13に溶接され、下端がロアフレーム14に溶接されている。
板部12bは、鋼板を曲げ加工などにより形成した部位であり、前端縁および後端縁から左右方向内側(第1フレーム11)側へフランジが張り出している。板部12bの上端は、筒部12aの上端から離れた位置にあり、筒部12aの外周面を略半周に亘って覆っている。板部12bは、下端に向かうにつれて筒部12aから前端縁までの距離が広がっている。このような板部12bが筒部12aに溶接されて第2フレーム12が形成されているので、前後方向の曲げ荷重に対する第2フレーム12の剛性を高くできる。
アッパーフレーム13は、引張強さが約490MPa未満の鋼管である。アッパーフレーム13の左右方向中央には、ヘッドレスト(図示せず)を固定するための固定具17が取り付けられている。この固定具17よりも第1フレーム11側のアッパーフレーム13に引出部5cが設けられている。引出部5cは、リトラクタ5bから上方へ引き出されたウェビング5aを折り返して下方および前方へ導くアッパーフレーム13の一部と、そのアッパーフレーム13の一部の左右両端から上方へ突出してウェビング5aの左右移動を規制する部位と、その突出した部位の上端同士を連結する部位と、によって形成されている。
図3に示す左右方向視において、第1フレーム11には、第1フレーム11の上端と後面との角をアッパーフレーム13の外周面の形状に沿って切り欠いて上切欠部11aが形成されている。この上切欠部11aにアッパーフレーム13を嵌めた状態で、その上切欠部11aに沿って第1フレーム11にアッパーフレーム13の外周面が溶接されている。このようにアッパーフレーム13の前方に第1フレーム11の上部が位置するので、引出部5cを介してアッパーフレーム13に前方への荷重が加わったとき、アッパーフレーム13から第1フレーム11の上部へ荷重を伝達し易くできる。
図2及び図3に示すように、この第1フレーム11とアッパーフレーム13との溶接部分の後側にはL字状の第1上補強部材18が重ねられている。第1上補強部材18は、引張強さが約490MPa未満の鋼板を折り曲げ形成したものである。第1上補強部材18は、上下方向に沿って第1フレーム11の左右側面に溶接されると共に、左右方向に沿ってアッパーフレーム13の外周面の上下両側に溶接されている。これにより、第1フレーム11とアッパーフレーム13との溶接部分に応力が生じるとき、その応力を、第1上補強部材18に生じる応力によって小さくできる。その結果、第1フレーム11とアッパーフレーム13との溶接部分(連結部分)を高強度化できる。
図1及び図2に示すように、アッパーフレーム13は、第2フレーム12の上端に外周面が溶接されている。この溶接部分の後側にはT字状の第2上補強部材19が重ねられている。第2上補強部材19は、引張強さが約490MPa未満の鋼板を折り曲げ形成したものである。第2上補強部材19は、上下方向に沿って筒部12aの外周面の左右両側に溶接されると共に、左右方向に沿ってアッパーフレーム13の外周面の上下両側に溶接されている。これにより、第2フレーム12とアッパーフレーム13との溶接部分に応力が生じるとき、その応力を、第2上補強部材19に生じる応力によって小さくできる。その結果、第2フレーム12とアッパーフレーム13との溶接部分(連結部分)を高強度化できる。
ロアフレーム14は、高張力鋼製の鋼管である。本実施形態におけるロアフレーム14は、焼入れ及び焼戻しの熱処理が施された、引張強さが約1470MPaの調質高張力鋼製であり、全長に亘って略一様の材料により形成されている。即ち、ロアフレーム14は、全長に亘って、第1フレーム11の材料よりも引張強さが大きい。また、ロアフレーム14の外径は、アッパーフレーム13や第2フレーム12の筒部12aの外径よりも大きく形成されている。これにより、ロアフレーム14が高剛性化されている。
ロアフレーム14は、第1フレーム11から第2フレーム12とは反対側へ延びて第1被連結部15に固定される第1ロア部14aと、第1フレーム11から第1ロア部14aとは反対側へ延びて第2フレーム12の第2被連結部16に固定される第2ロア部14bと、を備えている。第1ロア部14aは第1接続部材21を介して第1被連結部15に固定され、第2ロア部14bは第2接続部材22を介して第2被連結部16に固定される。
図3に示す左右方向視において、第1フレーム11には、第1フレーム11の下部を後面から前方へ向かって、ロアフレーム14の外周面の形状に沿って切り欠いて下切欠部11bが形成されている。この下切欠部11bにロアフレーム14を嵌めた状態で、その下切欠部11bに沿って第1フレーム11に、ロアフレーム14の外周面のうち前側の略半周が溶接されている。このように、ロアフレーム14の外周面の略半周を第1フレーム11に溶接して溶接部分の長さを確保することで、その溶接部分の強度を確保できる。
図2及び図3に示すように、第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分の後側にはT字状の下補強部材20が重ねられている。下補強部材20は、引張強さが約490MPa未満の鋼板を折り曲げ形成したものである。下補強部材20は、第1フレーム11に重ねられる第1部20aと、ロアフレーム14に重ねられる第2部20bとを備えている。第1部20aは、第1フレーム11の後面に重なるウェブと、そのウェブの左右両側に設けられて第1フレーム11の左右両側面に重なる左右一対のフランジとによって溝形鋼状(角U字状)に形成されている。この第1部20aのフランジの前縁が上下方向に沿って第1フレーム11の左右両側面にそれぞれ溶接されている。
第2部20bは第1部20aと一体成形されている。第2部20bは、ロアフレーム14の後側の略半周に重ねられる半円筒状に形成されている。この第2部20bの上下の縁が左右方向に沿ってロアフレーム14の外周面にそれぞれ溶接されている。第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分に応力が生じるとき、その応力を、下補強部材20に生じる応力によって小さくできる。その結果、第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分(連結部分)を高強度化できる。
図4に示すように、第1被連結部15は、バックフレーム3の右側に配置されるリクライニング装置4に連結される部位である。第1被連結部15は、リクライニング装置4に対する後方側から上方へ延びて形成されている。第1被連結部15の上下寸法は、第1フレーム11の上下寸法の1/3程度である。この第1被連結部15の上端部と、第1フレーム11の上下中央よりも下部側とに、左右方向に延びる略円筒状の補強フレーム23の両端がそれぞれ溶接やねじ止めにより接合されている(図1参照)。
第1被連結部15は、リクライニング装置4側の右側面を形成する外板部15aと、外板部15aの前縁から左右方向内側(第1フレーム11側)へ張り出す外前フランジ15bと、外板部15aの後縁から左右方向内側へ張り出す外後フランジ15cと、外板部15aの左右方向内側に配置される内板部15dと、内板部15dの前縁から左右方向外側(リクライニング装置4側)へ張り出す内前フランジ15eと、内板部15dの後縁から左右方向外側へ張り出す内後フランジ15fと、を備えている。
左右方向視において、外板部15aのうち補強フレーム23よりも下方であってロアフレーム14よりも上方および前方の一部が、内板部15dと重なり、その重なった部分の形状が略同様に形成されている。外前フランジ15bの後側に内前フランジ15eが殆ど隙間なく重なり、外後フランジ15cの後側に内後フランジ15fが殆ど隙間なく重なっている。そして、外前フランジ15bと内前フランジ15eとが溶接され、外後フランジ15cと内後フランジ15fとが溶接される。
これにより、外板部15aと内板部15dとの間に隙間が設けられ、ロアフレーム14から補強フレーム23へ向かって第1被連結部15が閉断面となる。その結果、ロアフレーム14と補強フレーム23との間の第1被連結部15の強度および剛性を向上できる。
第1接続部材21は、引張強さが約490MPa未満の鋼板を折り曲げ形成したものである。第1接続部材21は、第1ロア部14aの外周面のうち前側および上側の略半周に重ねられる略半円筒状の第1筒部21aと、第1被連結部15の内板部15dに溶接される第1延長部21bとを備え、各部が一体成形されている。第1筒部21aは、周方向の両縁が左右方向に沿って第1ロア部14aの外周面に溶接されている。
第1延長部21bは、ウェブの両側縁からフランジが張り出した溝形鋼状(角U字状)に形成されている。その第1延長部21bの2つのフランジは、左右方向視において、第1筒部21a(第1ロア部14a)から遠ざかる方向へ第1筒部21aの周方向の両縁からそれぞれ直線状に延び、互いに平行に設けられている。また、第1延長部21bのウェブは、2つのフランジと略垂直に設けられている。これにより、第1延長部21bの強度および剛性を向上できる。
第1延長部21bのうち第1筒部21aから離れた端部を内板部15dに当接させ、その第1延長部21bと内板部15dとの隅が溶接されている。即ち、第1ロア部14aの外周面から上下方向および前後方向に離れた位置で第1被連結部15に第1接続部材21が溶接されている。
図5に示すように、第2被連結部16は、バックフレーム3の左側に配置されるリクライニング装置4に連結される部位である。第2フレーム12の板部12bの下部の左右内側(第1フレーム11側)に補強板16aが重ねられ、その補強板16aの左右内側に内板部16bが配置されている。この補強板16aの上縁よりも下方部分が、第2フレーム12に設けられた第2被連結部16である。
補強板16aは、第2フレーム12の上部側に対して第2被連結部16の強度および剛性を向上させるための部材であり、板部12bに溶接やねじ止め等によって接合されている。内板部16bは、補強板16aと間隔を隔てて補強板16aと略平行に配置される。内板部16bは、板部12bのフランジの前面に重ねて溶接される第1接合部16cと、筒部12aの外周面に溶接される第2接合部16dと、補強板16aに溶接される第3接合部16eと、を備えている。これにより、第2被連結部16を構成する各部材を一体化でき、第2被連結部16の強度および剛性を向上できる。
第2接続部材22は、引張強さが約490MPa未満の鋼板を折り曲げ形成したものである。第2接続部材22は、第2ロア部14bの外周面のうち前側の略半周に重ねられる略半円筒状の第2筒部22aと、第2被連結部16の内板部16bに溶接される第2延長部22bとを備え、各部が一体成形されている。第2筒部22aは、周方向の両縁が左右方向に沿って第2ロア部14bの外周面に溶接されている。
第2延長部22bは、ウェブの両側縁からフランジが張り出した溝形鋼状(角U字状)に形成されている。その第2延長部22bの2つのフランジは、左右方向視において、第2筒部22a(第2ロア部14b)から遠ざかる方向へ第2筒部22aの周方向の両縁からそれぞれ直線状に延び、互いに平行に設けられている。また、第2延長部22bのウェブは、2つのフランジと略垂直に設けられている。これにより、第2延長部22bの強度および剛性を向上できる。
第2延長部22bのうち第2筒部22aから離れた端部を内板部16bに当接させ、その第2延長部22bと内板部16bとの隅が溶接されている。即ち、第2ロア部14bの外周面から前後方向に離れた位置で第2被連結部16に第2接続部材22が溶接されている。
以上のようなシートフレーム1によれば、アッパーフレーム13の左右方向中央(固定具17)よりも第1フレーム11側に引出部5cが設けられ、被接続部5fに接続された接続部5eと引出部5cとに架け渡されるウェビング5aが着座者の肩部を拘束する。このようなシートフレーム1が搭載された車両の衝突時(特に正面衝突時)、ウェビング5aを介して引出部5cに前方への荷重が加わると、第1フレーム11には、ロアフレーム14との溶接部分を固定端とするような曲げ荷重が主に加わる。また、第1被連結部15や第2被連結部16が左右両側に固定されるロアフレーム14には主にねじり荷重やせん断荷重が加わり、第1フレーム11の上部にアッパーフレーム13を介して連結される第2フレーム12には主に曲げ荷重およびねじり荷重が加わる。
鋼材では一般的に、引張強さに応じて曲げ強さやねじり強さ、せん断強さが決まり、鋼材の引張強さがどのような値でも、その鋼材の曲げ強さよりもねじり強さやせん断強さが小さくなる。そのため、主に曲げ荷重およびねじり荷重が加わる第2フレーム12を高強度化するよりも、ねじり荷重やせん断荷重が殆ど加わらずに主に曲げ荷重が加わる第1フレーム11を高強度化する方が、アッパーフレーム13により連結された第1フレーム11及び第2フレーム12の両方の変形や破壊を防止するための必要強度を低くできる。そして、第1フレーム11の材料の引張強さが第2フレーム12の材料の引張強さより大きい。これらのため、第1フレーム11を十分に高強度化しつつ、材料の引張強さが大きい分だけ第1フレーム11を薄くする等して第1フレーム11を軽量化できると共に、変形や破壊防止のための必要強度が低い分だけ更に第1フレーム11を軽量化できる。
また、ロアフレーム14の材料の引張強さが全長に亘って、第1フレーム11の材料の引張強さより大きい。そのため、引出部5cに前方への荷重が加わったときの第1フレーム11の曲げ強さに対して、ロアフレーム14のねじり強さやせん断強さを全長に亘って十分に確保しながら、ロアフレーム14を軽量化できる。
さらに、引出部5cに加わる前方への荷重を、十分に高強度化された第1フレーム11及びロアフレーム14により分散して受け止めることができるので、第1フレーム11及びロアフレーム14の必要強度が低下し、第1フレーム11やロアフレーム14を薄くする等して軽量化できる。以上の結果、バックフレーム3を軽量化しつつ高強度化できる。
特に、本実施形態では、ロアフレーム14の第1ロア部14aが高強度の第1フレーム11と第1被連結部15とを繋ぎ、ロアフレーム14の第2ロア部14bが高強度の第1フレーム11と第2被連結部16とを繋いでいる。そのため、第1ロア部14aがなくて第1被連結部15が第1フレーム11の下部に設けられている場合と比べ、より大きなねじり荷重やせん断荷重がロアフレーム14(第1ロア部14a及び第2ロア部14b)に加わる。このようなロアフレーム14の材料の引張強さが全長に亘って、第1フレーム11の材料の引張強さよりも大きいので、第1ロア部14aを有していてもバックフレーム3を十分に高強度化しつつ軽量化できる。
さらに、2人が着座可能なシートに設けられるバックフレーム3の左右方向の略全長に亘ってロアフレーム14が設けられている。このロアフレーム14は、1人のみが着座可能なシートの左右方向の略全長に亘って設けられるロアフレームよりも長く形成されている。このようなロアフレーム14の材料の引張強さを大きくすることで、ロアフレーム14が長くてもロアフレーム14を十分に高強度化できる。
第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分には下補強部材20が設けられているので、引出部5cに前方への荷重が加わって溶接部分に生じる応力を、下補強部材20に生じる応力によって小さくできる。そして、引出部5cに前方への荷重が加わるとき、下補強部材20の第2部20bとロアフレーム14との溶接部分には、ロアフレーム14の周方向に沿ったせん断荷重が加わる。第2部20bが左右方向に沿ってロアフレーム14に溶接されているので、第2部20bとロアフレーム14との溶接部分に生じるせん断応力を左右方向に分散でき、この溶接部分を高強度化できる。
さらに、引出部5cに前方への荷重が加わるとき、下補強部材20の第1部20aと第1フレーム11との溶接部分には、前後方向に沿ってせん断荷重が加わる。第1部20aが上下方向に沿って第1フレーム11に溶接されているので、第1部20aと第1フレーム11との溶接部分に生じるせん断応力を上下方向に分散でき、この溶接部分を高強度化できる。これらの結果、第1フレーム11やロアフレーム14と下補強部材20との溶接部分が破壊されて第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分が破壊され易くなることを防止でき、第1フレーム11とロアフレーム14との溶接部分をより高強度化できる。
第1ロア部14aの外周面に第1接続部材21が溶接され、第1接続部材21が第1被連結部15に溶接されている。そのため、引出部5cに加わる前方への荷重に伴って第1ロア部14a(ロアフレーム14)に生じるトルクを第1接続部材21へ伝達でき、そのトルクに応じた荷重を第1接続部材21から第1被連結部15へ伝達できる。さらに、第1ロア部14aの外周面から上下方向および前後方向に離れた位置で第1被連結部15に第1接続部材21が溶接されているので、第1ロア部14aのトルクに応じて第1接続部材21から第1被連結部15へ伝達される荷重を小さくできる。その結果、第1ロア部14aから第1被連結部15までの荷重の伝達経路を高強度化できる。
同様に、第2ロア部14bの外周面に第2接続部材22が溶接され、第2ロア部14bの外周面から前後方向に離れた位置で第2被連結部16に第2接続部材22が溶接されているので、第2ロア部14bから第2被連結部16までの荷重の伝達経路を高強度化できる。また、以下、第1接続部材21と第1被連結部15や第1ロア部14aとの溶接部分について説明するが、第2接続部材22と第2被連結部16や第2ロア部14bとの溶接部分についても同様のことが言えるため、一部の説明を省略する。
第1ロア部14aから第1接続部材21へのトルク伝達時、第1ロア部14aと第1接続部材21との溶接部分には、第1ロア部14aの周方向に沿ったせん断荷重が加わる。第1接続部材21の第1筒部21aが左右方向に沿って第1ロア部14aに溶接されているので、第1筒部21aと第1ロア部14aとの溶接部分に生じるせん断応力を上下方向に分散でき、この溶接部分を高強度化できる。
第1ロア部14aに生じるトルクに応じた第1接続部材21から第1被連結部15への荷重伝達時、第1接続部材21の第1延長部21bと第1被連結部15との溶接部分には、第1ロア部14aの周方向に沿ったせん断荷重が加わる。ここで、第1被連結部15に内板部15dを設けず、外前フランジ15bや外後フランジ15cの内側に接するように第1延長部21bを形成し、外前フランジ15bや外後フランジ15cに第1延長部21bを溶接しても良い。但し、この場合、第1延長部21bと第1被連結部15との溶接部分が、第1ロア部14aの周方向に沿って形成され易くなり、溶接部分の端部や角部などにせん断応力が集中し易くなるおそれがある。
これに対して本実施形態では、溝形鋼状の第1延長部21bのフランジが、第1筒部21aから遠ざかる方向へ第1筒部21aの周方向の両縁からそれぞれ直線状に延びている。そのため、第1延長部21bと第1被連結部15との溶接部分に生じるせん断応力を、第1延長部21bのフランジに沿って分散し易くでき、この溶接部分を高強度化できる。
また、第1被連結部15に内板部15dを設けず、溝形鋼状の第1延長部21bを外板部15aに直接溶接しても良い。但し、外板部15aの左右方向内側(第1フレーム11側)にはリクライニング装置4の一部が設けられ、外板部15aへの第1延長部21bの溶接位置が限られることがある。これに対して本実施形態では、内板部15dに第1延長部21bを溶接しているので、第1被連結部15への第1延長部21bの溶接位置の自由度を向上でき、第1被連結部15に溶接される第1延長部21bの形状の自由度を向上できる。
第1被連結部15の上端部と第1フレーム11とが補強フレーム23により連結されているので、補強フレーム23との連結部分よりも下方における、第1フレーム11から第1被連結部15までの荷重の伝達経路の各部の必要強度を低くできる。また、第1被連結部15が下部に設けられる第2フレーム12の上部と第1フレーム11の上部とがアッパーフレーム13に連結されているので、第1フレーム11から第2被連結部16までの荷重の伝達経路の各部の必要強度を低くできる。これらのバックフレーム3の各部を薄くする等によってバックフレーム3を軽量化できる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。シートフレーム1は、自動車に搭載されるものに限らず、産業車両や鉄道車両、船舶、航空機などの乗物に搭載しても良い。また、クッションフレーム2やバックフレーム3の各部の形状を適宜変更しても良い。第1フレーム11やロアフレーム14の材料の引張強さを適宜変更しても良い。
上記形態では、第1フレーム11が全長に亘って高張力鋼製である場合、即ち、第1フレーム11の材料の引張強さが、全長に亘って、第2フレーム12の材料の引張強さよりも大きい場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。高周波焼入れや液体浸炭、ガス浸炭などによる部分熱処理を第1フレーム11に施すことで、第1フレーム11のうち少なくとも上下方向中央よりも下部側の材料の引張強さを、第2フレーム12の材料の引張強さより大きくしても良い。ここで、ロアフレーム14を固定端として第1フレーム11に生じる曲げ応力は、その固定端に近い程大きくなり、第1フレーム11の必要強度は固定端に近い程高くなる。少なくとも必要強度が高い部位の引張強さが大きければ、第1フレーム11を十分に高強度化しつつ軽量化できる。なお、ロアフレーム14には略一様にねじり応力が生じるので、ロアフレーム14の材料の引張強さを全長に亘って略一様にすることが好ましい。
上記形態では、アッパーフレーム13に引出部5cが設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1フレーム11の上部に引出部5cを設けても良い。
上記形態では、シートフレーム1が、自動車の3人掛けシートのうち左および中央のシートに使用されるフレームである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。シートフレーム1を左右反転して、自動車の3人掛けシートのうち右および中央のシートに使用されるフレームとしても良い。また、2人が着座可能なシートに設けられるシートフレーム1に限らず、第1ロア部14aを省略し、第1フレーム11の下部に第1被連結部15を設けて、1人のみが着座可能なシートに設けられるシートフレームとしても良い。さらに、第1ロア部14aを省略したシートフレームの左右片側に、中央のシートに使用されるフレームの一部を連結させても良い。
また、中央のシートに着座した着座者を拘束するシートベルト5がシートフレーム1に設けられている場合について説明したが、被接続部5fを第2フレーム12側に設け、左または右のシートに着座した着座者を拘束するためのシートベルトをシートフレームに設けても良い。また、左および中央のシートに使用されるシートフレーム1の第2フレーム12を第1フレームとし、第1フレーム11を第2フレームとし、第1被連結部15を第2被連結部とする等して、その第1フレーム側に引出部5cを設けても良い。また、被接続部5fをクッションフレーム2に取り付ける場合に限らず、被接続部5fをリクライニング装置4のブラケットや車体に取り付けても良い。リトラクタ5bや固定部5dを車体に取り付けても良い。
上記形態では、ロアフレーム14の左右両端がそれぞれ第1被連結部15及び第2被連結部16に固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ロアフレーム14の左右両端よりも内側に第1被連結部15や第2被連結部16を固定しても良い。
上記形態では、第1フレーム11とロアフレーム14とが溶接される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1フレーム11とロアフレーム14とを一体成形し、熱処理によって第1フレーム11の材料の引張強さとロアフレーム14の材料の引張強さとを異ならせても良い。この場合にも、第1フレーム11とロアフレーム14との連結部分に応力が集中し易いため、下補強部材20を設けて応力を分散することが好ましい。また、第1フレーム11とアッパーフレーム13とを、アッパーフレーム13と第2フレーム12とを、第2フレーム12とロアフレーム14とをそれぞれ一体成形しても良い。
上記形態では、下補強部材20が第1フレーム11やロアフレーム14に溶接される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1フレーム11やロアフレーム14に下補強部材20をボルトやリベットにより接合しても良い。同様に、第1被連結部15やロアフレーム14に第1接続部材21をボルトやリベットにより接合したり、第2被連結部16やロアフレーム14に第2接続部材22をボルトやリベットにより接合したりしても良い。
また、ロアフレーム14の外周面に第1フレーム11が溶接される場合に限らず、ロアフレーム14を第1ロア部14aと第2ロア部14bとに分割して、第1フレーム11の左右両側に第1ロア部14a及び第2ロア部14bをそれぞれ溶接しても良い。なお、第1ロア部14aと第2ロア部14bとを一体成形したロアフレーム14を第1フレーム11に溶接する方が、バックフレーム3の製造工程を簡略化できる。
上記形態では、クッションフレーム2に対するバックフレーム3の傾斜角度を調整可能なリクライニング装置4によって、クッションフレーム2の後端部とバックフレーム3の下端部とが連結される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。クッションフレーム2に対するバックフレーム3の傾斜角度を調整不可能な連結装置によってクッションフレーム2の後端部とバックフレーム3の下端部とを連結しても良い。