本発明に係る第1の発明の空気調和システムは、使用者の存在する空間の空調制御を行う空気調和システムであって、前記空間の室温と風向と風速とのうち少なくとも一つを調整する空気調和機と、前記空気調和機の運転制御を行う情報処理部と、前記使用者の心拍数を取得し、前記心拍数を前記情報処理部に送る心拍情報取得部と、を備え、前記情報処理部は、前記心拍数が上限値よりも大きい場合、及び前記心拍数が下限値よりも小さい場合の少なくとも一方にの場合を、前記使用者の集中度が低下したと判断するように設けられ、前記空気調和機は、前記情報処理部が前記使用者の集中度が低下したと判断した場合、前記使用者の温冷感を低下させる運転を行う集中力運転モードを有するように構成されている。
このような構成によれば、使用者の心拍数に基づいて使用者の知的作業等への集中度を推定し、使用者の集中度が低下した際は、集中度の低下を抑制するように使用者の温冷感が低下するような運転を行う。これにより、集中度の低下の抑制を適切に行うことができる。
第2の発明の空気調和システムは、使用者の存在する空間の空調制御を行う空気調和システムであって、前記空間の室温と風向と風速とのうち少なくとも一つを調整する空気調和機と、前記空気調和機の運転制御を行う情報処理部と、前記使用者の体動情報を取得し、前記体動情報を前記情報処理部に送る体動情報取得部と、を備え、前記情報処理部は、前記体動情報に基づき前記使用者の所定時間の体動変化量を算出し、前記体動変化量が所定の値よりも大きい場合、前記使用者の集中度が低下したと判断するように設けられ、前記空気調和機は、前記情報処理部が前記使用者の集中度が低下したと判断した場合、前記使用者の温冷感を低下させる運転を行う集中力運転モードを有するように構成されている。
このような構成によれば、使用者の体動の頻度に基づいて使用者の知的作業等への集中度を推定し、使用者の集中度が低下した際は、集中度の低下を抑制するように使用者の温冷感が低下するような運転を行う。これにより、集中度の低下の抑制を適切に行うことができる。
第3の発明の空気調和システムは、第1の発明において、前記使用者の体動情報を取得し、前記体動情報を前記情報処理部に送る体動情報取得部と、をさらに備え、前記情報処理部は、前記体動情報に基づき前記使用者の所定時間の体動変化量を算出し、前記体動変化量が所定の値よりも大きい場合、前記使用者の集中度が低下したと判断するように構成されている。
このような構成によれば、第1の発明と第2の発明でそれぞれ示した使用者の心拍数に基づく場合と体動に基づく場合との両方を併用することができる。これにより、使用者の心拍数及び体動の両方に基づいて集中度の低下を判断でき、その抑制を適切に行うことができる。
第4の発明の空気調和システムは、第1〜第3の発明において、前記使用者の体温を取得し、前記体温を前記情報処理部に送る体温情報取得部と、をさらに備え、前記情報処理部は、前記体温が所定の温度よりも高い場合、前記使用者の集中度が低下したと判断するように構成されている。
このような構成によれば、使用者の心拍数や体動以外にも、体温に基づいて集中度の低下を判断でき、その抑制を適切に行うことができる。
第5の発明の空気調和システムは、第1〜第4の発明において、前記使用者の位置情報を取得し、前記位置情報を前記情報処理部に送る位置情報取得部と、をさらに備え、前記情報処理部は、前記使用者のうち、前記位置情報の変化量の少ない使用者に対して、前記集中運転モードを適用するように構成されている。
このような構成によれば、空間に複数の使用者が存在する場合においても、集中度の低下の防止を行うべき対象を特定でき、集中度の低下を抑制できる。
第6の発明は、第1の発明または第3〜第5の発明において、前記上限値は、平常時の心拍数の1.2倍であるように構成されている。
第7の発明は、第1の発明または第3〜6の発明において、前記下限値は、平常時の心拍数の0.9倍であるように構成されている空気調和システムである。
第8の発明は、第2〜5の発明において、前記所定の値は、安静時の体動変化量の1.2倍であるように構成されている空気調和システムである。
第9の発明は、第1〜8の発明において、前記集中力運転モードに切り替える入力部を備える空気調和システムである。
このような構成によれば、使用者が実際に知的作業を行う際に、入力部により運転モードを切り替えて、知的作業に適した空調に調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明は、使用者の作業に対する集中度が低下すると使用者の温冷感が上昇する、すなわち暑く感じるという、発明者らの発見に基づいている。その発見のために、発明者らは実験を行っている。
図1は、複数人の被験者それぞれの集中度の平均値である平均集中度について、快適室温下の場合と不快室温下の場合とを示している。具体的にここでは、快適室温は24℃であって、不快室温は28℃である。ただし、これは、PMV(Predicted Mean Vote)に基づいており、本実験条件下におけるPMV=0であった条件が室温24℃であり、PMV=+1であった条件が室温28℃であったことを示す。すなわち、快適室温、不快室温がそれぞれ24℃、28℃と限定するものではない。
また、本実施の形態の場合、作業者の作業に対する集中度として、CTR(集中時間比率:Concentration time Ratio)(%)を調べている。CTR値は、全作業時間に対する集中継続時間の比率であり、高い値であるほど被験者が集中して作業していることを示している。図1に示すように、快適室温下での集中度(CTR値)の方が、不快室温下での集中度に比べて高い。
ここで「温冷感」に基づいて考える。温冷感とは、暑さ、温かさ、涼しさ、寒さなどの人の周囲環境の温度、風量、着衣量等の総合的な空気環境についての体感を言う。「温冷感の上昇」とは、人が暑いと感じる側に周囲環境が変化することを言い、「温冷感の低下」とは、人が寒いと感じる側に周囲環境が変化することをいう。温冷感を示す指標として用いられるものの一つとして、本発明においてはPMVを使用している。
温冷感に即して図1を再度説明する。本実験条件下の快適室温下であるPMV=0環境であるため、快適室温下の被験者は暑くも寒くも感じない「中立」な状態である。一方、本実験条件下の不快室温下であるPMV=+1環境であるため、不快室温下の被験者は「やや暖かい」と感じる状態である。したがって、図1は「中立」の周囲環境の方が、「やや暖かい」周囲環境よりも集中度(CTR)が高いことを示している。すなわち、PMV=0の環境下である方が、被験者の知的作業の集中度が高まりやすいことを示している。
図2は、図1で示した実験データについて、被験者ごとに本実験条件下の快適室温条件の場合と不快室温条件との場合で、温冷感と集中度(CTR)を示したものである。横軸の温冷感は、被験者の申告に基づいた主観温冷感であり、温冷感の低い方から「寒い」、「涼しい」、「やや涼しい」、「どちらでもない」、「やや暖かい」、「暖かい」、「暑い」の七段階の分類にしている。
図2は、快適室温条件の結果は図面上の左上に集まっており、不快室温条件の結果は図面右下に集まっている傾向を示している。つまり、図2は、温冷感が低いとき集中度が向上する傾向にあり、逆に、温冷感が高いとき集中度は低下する傾向にあることを示している。したがって、作業者の集中度を高めるために作業者の温冷感を低下させることが効果的であることがわかる。
そこで、発明者は、図1および図2に示す試験結果に基づいて、使用者の集中度の低下を抑制するために、使用者の集中度が低下すると、すなわち集中度の低下にともなって温冷感が上昇すると、その作業者の温冷感を低下させることで、使用者の集中度のさらなる低下を抑制することを考えた。そして、使用者の集中度を推定する方法について、使用者の生体情報に基づく判断方法について鋭意検証を行った。
その結果、発明者らは、使用者の集中度の低下を、心拍数や体動の変化より判定することに着目し、上述の通り、集中度の低下時に使用者の温冷感が低下するように空調を制御することで使用者の集中度の低下の抑制を考えた。以下の実施の形態において、心拍数や体動の変化に基づいて集中度の低下を判定する方法について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3は本発明の一つの実施の形態に係る空気調和システムの概略図であって、図4は空気調和システムのブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム100は、使用者Wが存在する空間R(例えば室内)の空調制御を行うシステムであって、使用者Wの心拍数あるいは体動といった生体情報を取得し、その取得された生体情報より、使用者Wの作業への集中度を推定し、その結果に基づいた空調制御を実行するように構成されている。
図3に示す空気調和システム100は、空間Rに対する空調運転を実行する空気調和機101と、空気調和機101の運転制御を行う情報処理装置102と、使用者Wの生体情報を取得する生体情報取得部103を含んでいる。ここで、生体情報取得部103として、使用者Wの心拍数を取得する心拍情報取得部を有する空気調和システム100について説明する。
なお、図3および図4には、生体情報として心拍数を取得するものを開示するが、後述するように、使用者Wの体動情報に基づいてもよい。
空気調和機101は、空間Rを設定温度で維持するために、高温または低温の空気を空間Rに向かって送風するように、すなわち暖房運転および冷房運転を選択的に実行可能に構成されている。また、空気調和機101は、その風向や風量を調節可能に構成されている。温度、風向、風量などの空気調和機101の運転条件は、空気調和機101のコントローラ(図示せず)を介して使用者Wに設定される。なお、空気調和機101は、後述する制御において、使用者Wの温冷感を低下させる運転を行えればよい。すなわち、空間Rにおける室温、風向、風速のうち、少なくとも一つを調整できればよい。
情報処理部102は、演算部と記憶部とを備える装置であり、例えば、CPUとハードディスクメモリとを備えるコンピュータである。なお、情報処理装置102は、図3に示すように空気調和機101とは別に設け、適切な通信手段で接続されるものでもよいし、空気調和機101の内部に設けてもよい。また、空気調和機101に設けられたコンピュータに組み込んでもよい。
情報処理部102は、情報処理部102の記憶部に記憶されているプログラムにしたがって演算部を駆動することにより、以下で説明する動作を実行する。
また、情報処理部102は、空気調和機101と無線または有線で通信可能に構成されている。例えば、情報処理部102は、LANを介して空気調和機101と通信を行う。
生体情報取得部103は、ここでは使用者Wの生体情報として心拍数を取得する心拍情報取得部である。生体情報取得部103は、例えば、ミリ波を使用者Wに向かって出射し、使用者Wから反射されたミリ波を受信し、その受信したミリ波に基づいて使用者Wの心拍を測定するように構成されている非接触式心拍測定デバイスである。心拍を検出することで、集中度が低下すると心拍数が増加するという心拍と集中度との相関傾向より、集中度を推定する。なお、心拍を検出する方法は、ミリ波を利用する方法に限らず、他の方法であってもよい。例えば、図1及び図2に係る実験時に用いた一般的に用いられる医療用の心電計測用の器具でもよい。
なお、生体情報取得部103として使用者Wの体動(周期的な体の動き)を検出するデバイス、すなわち体動情報取得部を設けてもよい。体動情報取得部は例えば、連続的に撮影可能なカメラであって、カメラの複数の撮影画像に写る使用者Wの像の変化に基づいて使用者Wの体動が検出される。体動を検出する理由は、体動と集中度との間に相関があって、集中度が低下すると体動が発生する傾向があるためである。なお、体動を検出できるのであれば、体動情報検出部は、カメラに限らない。すなわち、赤外線センサでもよいし、加速度センサでもよい。
また、体動情報の取得の方法は特に限定しない。すなわち、体動に関する変化が取得できればよい。例えば、体動の大きさ、頻度、周期的な動きの周期や、これらの組み合わせでもよい。
図3に戻り、生体情報取得部103は、情報処理部102に接続されている。生体情報取得部103は使用者Wの生体情報を取得し、情報処理部102は生体情報取得部103で得られた生体情報を取得する。なお、図3には情報処理部102に接続された状態の生体情報取得部103を示したが、この形態に限定されない。すなわち、生体情報取得部103は空気調和機101に設けられていてもよいし、別体で設け、各種無線通信手段で生体情報を生体情報取得部103と通信する形態でもよい。加えて、各種無線手段で通信する場合、使用者Wに直接接触するようなウェアラブル端末で生体情報を取得してもよい。また、使用者Wに直接接触する形態でもよいし、使用者Wの使用する机や椅子などに設けてもよい。
生体情報取得部103の具体的な例として、上述の通り、心拍情報取得部や体動情報取得部が挙げられる。これらの具体例では、生体情報としてそれぞれ、心拍数、体動の継続時間、それらに相当する情報の信号を、情報処理部102に送る。
入力部107は、情報処理装置102を使用者Wが操作するためのデバイスであって、例えば、図5に示すタッチスクリーンを備えたリモートコントローラに設けられる。本実施の形態の場合、入力部107は、「集中モード」を設定するか否かを使用者Wに選択させるためのボタンとしてリモートコントローラに設けられている。このボタンを押下することで、後述の、使用者Wの生体情報に基づき、集中度の低下時に使用者Wの温冷感を低下させる運転を行う空気調和を行う運転に移行する。なお、入力部107は、上述のような物理的なボタンに限らない。すなわち、タッチパネルによる入力や音声認識でもよい。
また、入力部107を設けることで、使用者Wが集中度を有する作業に従事する際等、集中度の低下を抑制する空調環境を使用者Wが所望する場合に、入力部107で選択して通常の空調環境から切り替えることができる。入力部107を設けなくともよい。例えば、オフィス等、常に集中度の低下を抑制する空調環境が求められる場合、集中度の低下を抑制する空調制御を行うようにすることができる。
続いて、図4のブロック図を用いて各構成要素との関係を示す。情報処理部102は、心拍情報取得部から、信号を定期的に受け取ることにより、使用者Wの心拍数の情報を定期的に取得する。その取得した心拍数に基づいて、使用者Wの集中度を情報処理部102で推定する。具体的には情報処理部102の記憶部に記憶された演算式に基づいて、取得された使用者Wの心拍数から集中度を推定する。以下、集中度の推定方法について、図6のフローチャートに沿いながら説明する。
図6を用いて、本発明に係る空気調和システム100の制御について説明する。なお、図6には説明のため心拍情報に基づく場合について説明する。
まず、入力部107による指示で、使用者Wの集中度の低下を抑制する空気調和を行う運転制御が開始される。このとき、「平常時の心拍数」として集中力運転モードに移行する直後に相当する使用者Wの心拍数を取得することが好ましい。例えば、集中運転モードに移行した後の10分間の心拍数を生体情報取得部103が取得し、取得した10分間の心拍数の1分間あたりの平均を情報処理部102で求めればよい。
なお、「平常時の心拍数」は、知的作業に従事していないと推定される心拍数であればよい。すなわち、通常モードでの運転時にあらかじめ取得すればよい。通常モードでの運転時にあらかじめ取得しておく場合は、定期的に使用者Wの心拍数を生体情報取得部103で取得し、1分間あたりの心拍数を算出する。この1分間あたりの心拍数のうち、最も低い値を「平常時の心拍数」とすることが好ましい。例えば、1時間おきに5分間の心拍数を取得する場合、まずはその5分間における1分間の心拍数を最低値として、「平常時の心拍数」として記録すればよい。そして、その後の1時間おきの5分間の心拍数の測定で取得された1分間の心拍数が、記録されている「平常時の心拍数」よりも小さい場合に、その小さい値で「平常時の心拍数」を更新すればよい。
また、使用者Wの通常時の心拍数を手動で入力する設計としてもよい。手動で入力する設計を上記とも組み合わせることにより、使用者Wが平常時の心拍数を知った場合に入力することもできる。
続いて、S101で、生体情報取得部103である心拍情報取得デバイスにより、使用者Wの心拍数を取得する。具体的には5分ごとで心拍数を取得し、1分あたりの心拍数として算出することが好ましい。なお、心拍数の算出方法をこれに限定するものではないことは言うまでもない。
S102で、S101で取得した心拍数に基づいて集中度を推定する。具体的な推定方法は後述する。
S103では、使用者Wの心拍数に基づいて集中度の低下があったか否かの判断を行う。心拍数が上限値を超える場合、あるいは下限値を下回る場合を「集中度の低下」と推定する方法を用いている。具体的には、上限値は「平常時の心拍数」の1.2倍の値とし、下限値は「平常時の心拍数」の0.9倍の値とする。
使用者Wが知的作業に従事し集中すると、使用者Wは若干の緊張状態となる。そのため「平常時の心拍数」よりも心拍数が少し高い状態となるため、この心拍数が少し高い状態が基準となるため、所定の下限値と「平常時の心拍数」との差が、所定の上限値と「平常時の心拍数」との差よりも小さい方が好ましい。
心拍数が少し高い状態とは、具体的には「平常時の心拍数」の1.1倍程度である。この基準に対して心拍数が高まる傾向にあるときは、より緊張が高まっている状態に向かっていることになる。この傾向にある時は不要に緊張が高まっている状態であり、「集中度の低下あり」と推定される。一方、この基準に対して、心拍数が低下する傾向にあるときは、緊張状態が解かれリラックスした状態に向かっていることになる。この傾向にある時は、知的作業に集中しておらずリラックスしている状態であり、「集中度の低下あり」と推定される。このような本発明者らの知見に基づき、本発明の実施例では所定の上限値と所定の下限値とを設けている。
なお、本実施例においては、所定の上限値及び所定の下限値を両方設けた形態を開示しているが、上限値のみでもよいし、下限値のみでもよい。
また、本実施例では「平常時の心拍数」に係数をかけた数値を上限値、下限値としているが、定数を加算した数値、減算した数値をそれぞれ上限値、下限値としてもよい。ただし、上述の通り、知的作業に集中している際、使用者Wの心拍数は「平常時の心拍数」よりも少し大きくなる。そのため、上限値と「平常時の心拍数」との差の方が「平常時の心拍数」と下限値との差より大きくなるように設定することが好ましい。
上述のとおり、S103で集中度の低下があったか否かを判定する。S103で集中度の低下ありと判定されない場合は、後述のS109に移行する。一方、S103で集中度の低下ありと判定された場合は、後述のS104に移行する。
S104では、使用者Wの温冷感を低下させる空調制御を空気調和機101により実行する。具体的には、空間Rにおける室温を低下させる運転を空気調和機101で実行する。なお、使用者Wの温冷感を低下させる空調制御は、室温を下げることに限定しない。例えば、冷房運転時には空気調和機101で風量を増やす制御により、使用者Wに冷たい風を送ることで温冷感を下げる方法でもよいし、暖房運転時には空気調和機101で風量を減らす制御により、使用者Wに暖かい風が送られないようにすることで温冷感を下げる方法でもよい。
S105及びS106は、S101及びS102と同様に、使用者Wの心拍数を取得し、使用者Wの集中度を推定する。
そして、S107で、使用者Wの集中度の低下状態が解除されたか否かの判断を行う。簡単に説明すると、S103における判定の逆であるが、使用者Wの1分あたりの心拍数が上限値と下限値の範囲内に戻った場合を集中度の低下が停止したと判断する。具体的には、所上限値は「平常時の心拍数」の1.2倍の値とし、下限値は「平常時の心拍数」の0.9倍の値とする。
S107で、集中度の低下の停止が判断されない場合は、S105の前に戻る。これにより、使用者Wの集中度が回復するまで、使用者に対して温冷感が低下する運転を行うことができる。
S107で、集中度の低下の停止が判断されると、S104で開始した使用者Wの温冷感を低下させる運転を停止する。
そしてS109で集中モードの停止の指示があるか否かの判断を行う。集中モードの停止の指示とは、リモートコントローラに設けられた入力部107の押下による集中運転モードの停止の指示や、使用者Wのリモートコントローラの操作による空気調和機101の運転停止の指示が該当する。
S109で、集中力運転モードの停止の指示があった場合は、集中力運転モードを停止する。一方、停止の指示がない場合は、S101のステップに戻る。
また、上記の実施例は、生体情報取得部103が心拍情報取得部である場合を示しているが、体動情報取得部でもよい。その場合の変形例を以下に示す。
生体情報取得部103に体動情報取得部を用いる場合は、体動の頻度が所定の上限を超えた場合を、集中度の低下ありと判断する。具体的には、「安静時の体動」と比較して1.2倍相当の体動が検出される場合を集中度の低下ありと判断する。
ここで、「安静時の体動」とは、上述の心拍数と同様に、知的作業に従事していないと推定される体動情報であればよい。例えば、通常モードでの運転時にあらかじめ取得しておく場合は、定期的に使用者Wの体動情報を生体情報取得部103で取得し、最も低い値を「安静時の心拍数」とすることが好ましい。例えば、1時間おきに5分間の体動情報を取得する場合、まずはその5分間における1分間の体動情報を最低値として、「安静時の体動」として記録すればよい。そして、その後の1時間おきの5分間の体動情報として取得された1分間の体動が、記録されている「安静時の体動」よりも小さい場合に、その小さい値で「安静時の体動」を更新すればよい。
また、集中モード移行に移行した直後の体動情報に基づいて「安静時の体動」を定めてもよい。なお、この場合は、生体情報取得部103で、集中モード移行に移行した直後、5分間や10分間など、継続的に体動情報を取得し、情報処理部102で、取得した体動情報を1分間おきに計算する。そして、1分間の体動のうち最も低い値の時間の体動情報を「安静時の体動」とすることが好ましい。
また、体動情報の変化について集中モード移行後の変化量に基づくものでもよい。具体的には、生体情報取得部103である体動情報取得部で、5分間における体動を取得し、情報処理部102で、5分間における体動の継続時間を算出する。直前の5分間における体動の継続時間に比べて1.2倍の継続時間の体動が算出された場合に、集中度が低下したと推定する。
なお、上記において、使用者Wの部位ごとによって体動の継続時間の計算を変化させてもよい。例えば、手、足、頭などに区別して、その部位ごとに所定の上限を設けてもよい。手は知的作業中に、文字を書く、電子計算機を入力する等の動きがあるため、上限値を通常よりも大きく設けてもよい。なお、これらの計算には、動きの大きさを見ればよい。例えば、体動情報取得デバイスとして撮像装置を用いる場合は、対象の部位が動いた範囲をピクセル数で計算するものでもよい。さらに、部位の分類は上述に限られず、体幹に相当する部位についても測定してもよい。
(実施の形態2)
続いて、本発明の別の態様について、図7〜9を用いて説明する。なお、実施の形態2においては、実施の形態1で説明し、同様の内容の部分は、同じ番号を付して説明は割愛する。
図7は、実施の形態2に係る空気調和システム200の概略図である。そして、図8は、実施の形態2に係る空気調和システム200のブロック図である。
図7及び図8において、生体情報取得部203は、使用者Wの生体情報として、心拍数と体動と体温との3種を取得する。そのため、それぞれの生体情報を取得するための手段として、心拍情報取得部204、体動情報取得部205、体温情報取得部206の3つを生体情報取得部203に備える。
なお、生体情報取得部203に、心拍情報取得部204、体動情報取得部205、体温情報取得部206の3つの取得部を備えることに限定しない。すなわち、心拍情報取得部204、体動情報取得部205、体温情報取得部206の3つの取得部は別々に設けられていてもよい。例えば、心拍情報取得部204と体動情報取得部205は使用者Wの手首に設けられるウェアラブル端末に設けてあり、体温情報取得部206は空気調和機101に設けられていてもよい。
図8に示すように、生体情報取得部203に含まれる心拍情報取得部204、体動情報取得部205、体温情報取得部206はそれぞれの取得した生体情報を情報処理部202に信号を伝達している。情報処理部202は、生体情報取得部203から送られた生体情報に基づいて集中度を推定する。具体的な推定方法は、図9のフローチャートを用いて後述する。
空気調和システム100と同様に空気調和システム200は入力部107及び空気調和機101を備える。
続いて図9を用いて、空気調和システム200の動作について説明する。図9は空気調和システム200のフローチャートである。
空気調和システム200の動作については図6を用いて説明した空気調和システム100とほぼ同じである。S203及びS207における集中度の推定方法が相違するため、同様の部分の説明は割愛し、相違する点のみ詳細に説明する。
空気調和システム200では、S203において、生体情報に基づいて集中度の低下があったか否かの判断を行う。心拍情報取得部204から得られた心拍情報、体動情報取得部205から得られた体動情報、体温情報取得部206から得られた体温情報のそれぞれを用いて、集中度の低下があったか否かの判断を行う。
心拍情報取得部204から得られた心拍情報及び体動情報取得部205から得られた体動情報を用いて判断する制御については、実施の形態1で説明した空気調和システム100と同様である。
一方、体温情報に基づいた方法としては、体温が所定の温度を超えた場合を、集中度の低下ありと判断する。具体的には、体温情報取得部206で、5分間における体温を取得し、情報処理部202で、5分間における体温の変化量を算出する。5分間における体温の変化が、0.2℃以上の上昇の場合、集中度が低下したと推定する。ただし、集中度の低下の判断方法はこれに限らず、使用者Wの体温の絶対値を用いてもよい。すなわち、例えば、体温情報取得部206で使用者Wの胸部皮膚温度を取得する場合、36.5℃を越えた時を集中度の低下ありと判定すると設定する。なお、体温情報取得部206で取得する体温や所定の温度を限定するものではない。つまり、体温情報取得部206で取得する使用者Wの部位によって所定の温度を変更してもよいし、使用者Wの平熱に応じて所定の温度を補正してもよい。
S203において、情報処理部202は、使用者Wの心拍情報、体動情報、体温情報、それぞれで集中度の低下があるか否かの推定が行われる。本実施例の空気調和システム200においてはこれらの3つの判定において、いずれかが集中度の低下ありと判定した場合、S203において集中度の低下ありと判断するように設計している。
なお、複数の集中度の判定について、その取扱いについては限定しない。すなわち、これら複数の判定結果について、優先順位を設けてもよいし、複数の判定結果が得られるタイミングをずらし、複数の判定結果を独立して扱ってもよい。
また、情報処理部202と生体情報取得部203が空気調和機に設けられてもよい。これにより、空気調和システム全体が空気調和機に組み込まれ、空気調和システム200がコンパクト化される。また、空気調和機101は天井近くの高所に設けられるため、その空気調和機101に生体情報取得部203を設けると、空間における他の位置(低所)に設ける場合に比べて、生体情報取得部203は、使用者Wの生体情報をより確実に取得することができる。
また、空気調和システム200が空気調和機101に接続されたサーバを有し、そのサーバが情報処理部202の機能を果たしてもよい。集中度の推定を高精度に行う場合または運転条件を細密に算出する場合、情報処理部202は高度な演算処理が必要になる。その場合に、演算処理能力に優れたサーバが、情報処理部202として機能するのが好ましい。この場合、生体情報取得部203は使用者Wが存在する空間内または空気調和機101に設けられ、サーバが空間外部に設けられる。そして、サーバは、空気調和機と生体情報取得部203に通信可能に接続される。なお、生体情報取得部203が取得した生体情報をまとめてサーバに設けられた情報処理部202に送信する制御部を設けてもよい。すなわち、生体情報取得部203で得られた生体情報を集約し、サーバに送信する機能と、サーバで演算された運転条件を実行する機能とを有する制御装置を設ければよい。これは、空気調和機101に通信装置を設けることで備えてもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明の別の態様について、図10〜12を用いて説明する。なお、実施の形態3においては、実施の形態1や実施の形態2で説明した同様の内容の部分は、同じ番号を付して割愛する。
図10は、実施の形態3に係る空気調和システム300の概略図である。そして、図11は、実施の形態3に係る空気調和システム300のブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム300は、使用者Wと使用者Xとが存在するような複数人いる空間L(例えばリビングルーム)の空調制御を行うシステムであって、使用者Wと使用者Xとのそれぞれの位置情報を取得する位置情報取得部308と、使用者Wと使用者Xの心拍数を取得する心拍情報取得部204と、体動を取得する体動情報取得部205と、体温を取得する体温情報取得部206と、を備える。情報処理部302は、体動の頻度や大きさ、あるいはその両方に基づいて、使用者W及び使用者Xがそれぞれ知的作業に従事しているか否かの判断を行う。すなわち、集中度を要する知的作業を行う使用者Wと集中度を要しない作業を行う使用者Xとを判別する。さらに、情報処理部302は、心拍情報取得部204と、体動情報取得部205と、体温情報取得部206とから得られた使用者Wの心拍数、体動、体温の生体情報に基づいて使用者Wの集中度を推定し、その推定結果に基づいた空調制御を実行するように構成されている。
図10に示すように、空気調和システム300は、空間Lに対する空調運転を実行する空気調和機101と、使用者Wの生体情報に基づいて使用者Wの集中度の低下を抑制するための空気調和機101の運転条件を算出する情報処理部302とを含んでいる。
本実施の形態の場合、空気調和機101は、空間Lを設定温度で維持するために、高温または低温の空気を空間Lに向かって送風するように、すなわち暖房運転および冷房運転を選択的に実行可能に構成されている。また、空気調和機101は、その風向や風量を調節可能に構成されている。温度、風向、風量などの空気調和機101の運転条件は、空気調和機101のコントローラ(図示せず)を介して使用者W或いは使用者Xに設定される。
情報処理部302は、本実施の形態の場合も同様に、図11に示すように、使用者Wもしくは使用者Xの生体情報を取得するための生体情報取得部203として、心拍情報取得部204、体動情報取得部205、体温情報取得部206を備える。また、情報処理部302は、空間Lにおける使用者Wおよび使用者Xの位置を検出する位置情報取得部308と、を備える。
また、位置情報取得部308は使用者Wおよび使用者Xの微小動作を検出することができ、使用者Wあるいは使用者Xが家事などの身体を使った動作をしているか、もしくは、机上で手や指など使った比較的小さな動作を行っているかを判別することができる。具体的には位置情報取得部308が取得した位置情報の値が閾値未満であれば、作業者の動作状態が微小動作と判定でき、対象者が知的作業を行っていると判断することになる。一方、取得した位置情報の値が閾値以上であれば、対象者が知的作業を行っていないことを判断することになる。これらの判定は位置情報取得部308で行ってもよいし、位置情報取得部308から位置情報を取得した情報処理部302が行ってもよい。
例えば、位置情報取得部308として、画像センサ、超音波センサ、赤外線センサなどが挙げられ、さらには微小な動作を高感度に検知できるように、例えば赤外線などを集光する光学系などが備えられている。また、生体情報取得部203の体動情報取得部205から取得できる周期的な体の動きから、微小動作を検知してもよく、本発明の実施の形態は、これに限らない。
本実施例における使用者Wの集中度の低下を抑制するための空気調和システム300の動作の流れの一例について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図6及び図9に示すフローチャートと同一または相当部分についてはその旨の記載をし、説明を省略する。
図12のフローチャートに示す空気調和機101の動作は、使用者Wもしくは使用者Xが、リモートコントローラを介して、集中度の低下を抑制するための温冷感低下運転を空気調和機101が実行する「集中モード」を設定すると開始される。
まず、ステップS301において、空気調和システム300は、空間Lに滞在する者の位置情報とその人数を取得する。本実施形態の場合は、位置情報取得部308を介して、使用者W及び使用者Xの位置および人数を検出する。
次に、ステップS302において、空気調和システム300は、ステップS301で取得した位置情報に基づいて、使用者Wおよび使用者Xの微小動作を継続して行っているかどうかを検知する。本実施例の場合は、生体情報取得部203に含まれる体動情報取得部205を用いて取得する。
続いて、ステップS303において、空気調和システム300(情報処理部302)は、S302の微小動作検知情報に基づいて、使用者Wおよび使用者Xが知的作業を行っているか否かを判定する。知的作業を行っていると判定された使用者Wは、ステップS304に進み、知的作業者であることを情報処理部302に登録される。一方、知的作業を行っていないと判定された使用者Xは、ステップS304に進み、知的作業者ではないため、非知的作業者として情報処理部302に登録される。なお、S303〜S305のステップは、空間Lに存在する人物について集中度を要する作業を行っているか否かの判断が行えればよい。すなわちS305のステップを省略することもできる。
以下、知的作業者として登録された使用者Wが空間Lに滞在する場合は、本実施例の空気調和システム300は、図9で説明したフローチャートに示すステップと同様のステップを実行する(S306〜S3014)。一方、非知的作業者として登録された使用者Xに対しては、上記空調制御を実行しないとする。
なお、S309における使用者Wの温冷感を低下させる運転は、使用者Wの位置情報に基づいて空気調和機101の風向制御により実行してもよい。例えば、冷房運転であれば、知的作業を行っている使用者Wに向けて冷たい風を送ることで温冷感を低下させる運転を行えばよい。また、暖房運転であれば、知的作業を行っている使用者Wを避けて暖かい風を送ることで温冷感を低下させる運転を行えばよい。なお、使用者Xの位置を考慮して、使用者Xの温冷感を変化させないあるいは快適な状態を維持するように運転すると好ましい。
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されない。
例えば、上述の実施の形態の場合、使用者Xは知的作業を行っていないと判定されているが、知的作業を行っていると判定された場合は、使用者Wと同様に使用者Xの生体情報も取得し、生体情報に基づいて集中度を推定し、それぞれの使用者にあった温冷感低下運転条件を算出し、温度、気流、湿度を制御し、空調制御を行うことができる。
さらに、上述の実施の形態の場合、空間Lにおいて、使用者Wおよび使用者Xの2人が存在していたが、3人以上の複数人でもよく、それぞれの使用者の位置情報を情報処理部302に登録することができ、それぞれ空間Lに存在する者が知的作業を行っているか否かを判定し、知的作業を行っている者に合わせて、集中度の低下を抑制するように、空間の空気環境を制御することができる。
以上より、本発明の実施の形態に係る空気調和システムは、広義には、使用者の存在する空間の空調制御を行う空気調和システムであって、前記空間の室温と風向と風速とのうち少なくとも一つを調整する空気調和機と、前記空気調和機の運転制御を行う情報処理部と、前記使用者の生体情報を取得し、前記生体情報を前記情報処理部に送る生体情報取得部と、を備え、前記情報処理部は、前記生体情報に基づいて、前記使用者の集中度の低下の有無を判断するように設けられ、前記空気調和機は、前記情報処理部が前記使用者の集中度が低下したと判断した時、前記使用者の温冷感を低下させる運転を行う集中力運転モードを有するように構成されている。