図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面は模式的なものであり、寸法や縦横の比率は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具現化するための装置や方法を例示するものである。本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[実施形態1]
図1を参照して、本発明の実施形態1に係るSEMの概略構成を説明する。
(SEMの基本構成)
このSEMは、電子源(荷電粒子源)11と、加速電源14と、コンデンサレンズ15と、対物レンズ絞り16と、二段偏向コイル17と、上部対物レンズ18と、下部対物レンズ26と、検出器20とを備えた電子線装置である。加速電源14は、電子源11から放出される一次電子線(荷電粒子線)12を加速する。コンデンサレンズ15は、加速された一次電子線12を集束する。対物レンズ絞り16は、一次電子線12の不要な部分を除く。二段偏向コイル17は、一次電子線12を試料23上で二次元的に走査する。上部対物レンズ18及び下部対物レンズ26は、一次電子線12を試料23上に集束させる。検出器20は、試料23から放出された信号電子21(二次電子21a、反射電子21b)を検出する。
SEMは、上部対物レンズ18及び下部対物レンズ26からなる電磁レンズの制御部として、上部対物レンズ電源41と、下部対物レンズ電源42と、制御装置45とを備える。上部対物レンズ電源41は、上部対物レンズ18の強度を可変する。下部対物レンズ電源42は、下部対物レンズ26の強度を可変する。制御装置45は、上部対物レンズ電源41と下部対物レンズ電源42とを制御する。
制御装置45は、上部対物レンズ18の強度と下部対物レンズ26の強度とを、独立に制御できる。制御装置45は、両レンズを同時に制御できる。
電子源11としては、熱電子放出型(熱電子源型)、電界放出型(ショットキー型、または冷陰極型)を用いることができる。本実施形態1では、電子源11に、熱電子放出型のLaB6などの結晶電子源、またはタングステンフィラメントが用いられている。電子源11とアノード板14d(接地電位)との間には、例えば加速電圧−0.5kVから−30kVが印加される。ウェーネルト電極13には、電子源11の電位よりも負の電位が与えられる。これにより、電子源11から発生した一次電子線12の量がコントロールされる。そして、電子源11のすぐ前方に、一次電子線12の一度目の最小径であるクロスオーバー径が作られる。この最小径が、電子源の大きさSoと呼ばれる。
加速された一次電子線12は、コンデンサレンズ15により集束される。これにより、電子源の大きさSoが縮小する。コンデンサレンズ15により、縮小率及び試料23に照射される電流(以下、プローブ電流と呼ぶ。)が調整される。そして、対物レンズ絞り16により、不用な軌道の電子が取り除かれる。対物レンズ絞り16の穴径に応じて、試料23に入射するビームの開き角αとプローブ電流とが調整される。
対物レンズ絞り16を通過した一次電子線12は、走査用の二段偏向コイル17を通過した後、上部対物レンズ18を通過する。汎用SEMは、上部対物レンズ18を使って、一次電子線12の焦点を試料23上に合わせる。図1のSEMはこのような使い方もできる。
図1において、電子源11から上部対物レンズ18までの構成により、一次電子線12を試料23に向けて射出する上部装置71が構成される。また、電位板22と、それよりも下に配置される部材とにより下部装置72が構成される。下部装置72に試料23は保持される。上部装置71は、その内部を通った一次電子線12が最終的に放出される孔部18cを有している。本実施形態1では、孔部18cは上部対物レンズ18に存在する。検出器20は、孔部18cの下に取り付けられている。検出器20も、一次電子線12が通過する開口部を有している。検出器20は、検出器20の開口部と孔部18cとが重なるように、上部対物レンズ18の下部に取り付けられる。上部対物レンズ18の下部に複数の検出器20が取り付けられてもよい。複数の検出器20は、一次電子線12の軌道をふさがないようにしつつ、検出器20の検出部を上部装置71の孔部18c以外にはできるだけ隙間がないようにして、上部装置71と下部装置72との間に取り付けられる。
上部対物レンズ18を通過した一次電子線12は、下部対物レンズ26で縮小集束される。下部対物レンズ26は、試料23に近づくほど強い磁場分布を有する低収差レンズを実現している。また、上部対物レンズ18は、見やすい画像になるように、開き角αをコントロールすること、ならびに縮小率やレンズの形状、及び焦点深度を調整することに用いられる。すなわち、上部対物レンズ18は、これらの各制御値を最適化するのに用いられる。また、下部対物レンズ26のみで一次電子線12を集束しきれない場合には、上部対物レンズ18で一次電子線12を集束させるための補助を行うこともできる。
リターディングをしない場合には、電位板22は取り外してもよい。また、電位板22は取り外しが可能となっており、新たな電位板22に付け替えることも可能である。試料23はできるだけ下部対物レンズ26に近づくように設置するのが良い。より詳しくは、試料23は、下部対物レンズ26の上部(上面)からの距離が5mm以下になるように、下部対物レンズ26の上部に近づけて設置するのが好ましい。
一次電子線12は、加速電源14で加速されたエネルギーで試料23上を走査する。そのとき二次電子21aは、下部対物レンズ26の磁場により磁束に巻きついて螺旋運動をしながら上昇する。二次電子21aは、試料23表面から離れると、急速に磁束密度が低下することにより旋回から振りほどかれて発散し、二次電子検出器19からの引込み電界により偏向されて二次電子検出器19に捕獲される。すなわち、二次電子検出器19は、二次電子検出器19から発生する電界が、荷電粒子によって試料から放出される二次電子を引き付けるように、配置される。このようにして、二次電子検出器19に入る二次電子21aを多くすることができる。
下部対物レンズ26の、光軸上における磁束密度は、試料に近いほど強い分布をしているので、リターディングをする場合には、下部対物レンズ26は低収差レンズになる。そして、試料23に負の電位を与えると、一次電子線12は試料23に近づくほど減速する。一次電子線12は速度が遅いほど磁場の影響を受けやすくなるため、試料23に近いほど下部対物レンズ26が強いレンズになるといえる。そのため、試料23に負の電位を与えると、下部対物レンズ26はさらに低収差のレンズとなる。
また、信号電子21は、試料23のリターディング電圧による電界で加速され、エネルギー増幅して検出器20に入る。そのため、検出器20は高感度となる。このような構成にすることで、高分解能な電子線装置を実現できる。
また、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との距離は、10mmから200mmとされる。より好ましくは30mmから50mmとすることが望ましい。上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との距離が10mmより近いと、上部対物レンズ18の直下に置いた検出器20で反射電子21bが検出できる。しかし、リターディング時に二次電子21aが上部対物レンズ18の中に引きこまれやすくなる。上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との距離を10mm以上離すことで、二次電子21aは検出器20で検出されやすくなる。また、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との隙間が30mm程度ある場合には、試料23の出し入れがとても行いやすくなる。
次に、各部品の構成について詳細に説明する。まず下部対物レンズ26の形状について、図1を参照して説明する。
下部対物レンズ26を形成する磁極は、一次電子線12の理想光軸と中心軸が一致した中心磁極26aと、上部磁極26bと、筒形の側面磁極26cと、下部磁極26dとからなる。中心磁極26aは、上部ほど径が小さくなる形状である。中心磁極26aの上部は、例えば1段、多段または曲面の円錐台形状である。中心磁極26aの下部は、円柱形状である。中心磁極26aの下部の中心軸には、貫通孔がない。上部磁極26bは、中心に向かってテーパ状に中心磁極26aの重心に近い側が薄くなる、円盤形状である。上部磁極26bの中心には、開口径dの開口が空いている。中心磁極26aの先端径Dは、6mmより大きく14mmより小さい。開口径dと先端径Dとの関係は、d−D≧4mmとされる。
次に、磁極の具体的な例を示す。中心磁極26aと上部磁極26bとの両者の試料側の上面は、同じ高さとされる。中心磁極26aの下部外径は60mmである。この外径が細いと、透磁率の低下を招くので好ましくない。
中心磁極26aがD=8mmの場合、上部磁極26bの開口径dは、12mmから32mmとすることが好ましい。より好ましくは、開口径dは、14mmから24mmである。開口径dが大きいほど、光軸上における磁束密度分布は山がなだらかになって幅が広がり、一次電子線12の集束に必要なAT(アンペアターン:コイル巻数N[T]と電流I[A]との積)を小さくすることができるというメリットがある。しかし、開口径dと先端径Dとの関係がd>4Dとなると、収差係数が大きくなる。ここでは上部磁極26bの開口径dは20mm、側面磁極26cの外径は150mmである。また、中心磁極26aの軸中心に貫通穴があってもよい。
ここで、例えば厚みが5mmの試料23に対し、30kVの高加速電圧でも一次電子線12を集束させる場合には、先端径Dは6mmより大きく14mmより小さくするのがよい。Dを小さくしすぎると、磁極が飽和し、一次電子線12が集束しない。一方で、Dを大きくすると性能が悪くなる。また、dとDとの大きさの差が4mmより小さいと、磁極が近すぎて飽和しやすくなり、一次電子線12が集束しない。また、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との距離が10mm以下になると、作業性が悪くなる。この距離が200mmより長すぎると、開き角αが大きくなりすぎる。この場合、収差を最適にするために、上部対物レンズ18を使ってαを小さくする調整が必要になり、操作性が悪くなる。
また例えば、5kV以下の加速電圧のみで使用し、試料23の厚みが薄い場合は、先端径Dは6mm以下にしてもよい。ただし、例えば加速電圧が5kVである場合において、Dを2mm、dを5mmにし、試料23の厚みを5mmにし、下部対物レンズ26のみを用いると、磁極が飽和してしまい、一次電子線12が集束しない。ただし、試料23を薄いものに制限すれば、レンズはさらに高性能化できる。
試料23に電位を与える方法として、下部対物レンズ26の磁極の一部に電気的絶縁部を挟んで一部の磁極を接地電位から浮かし、試料23と磁極の一部にリターディング電圧を与えることもできる。ただし、この場合、磁気回路中に磁性体でないものを挟むと、磁気レンズが弱いものになる。また、リターディング電圧を高くすると放電が発生する。電気的絶縁部を厚くすると、さらに磁気レンズが弱いものになるという問題がある。
図1に示されるように、上部磁極26bと中心磁極26aとの間に、非磁性体で成るシール部26f(例えば銅やアルミニウムまたはモネル)を置くことが望ましい。シール部26fは、上部磁極26bと中心磁極26aとの間を、Oリングまたはロウ付けで真空気密にする。下部対物レンズ26では、上部磁極26bと、シール部26f及び中心磁極26aとにより、真空側と大気側とが気密分離される。上部磁極26bと真空容器とは、図には示していないが、Oリングで気密になるように結合されている。このようにすることで、下部対物レンズ26は、真空側の面を除いて、大気にさらすことができるようになる。そのため、下部対物レンズ26を冷却しやすくなる。
真空容器の中に下部対物レンズ26を入れることもできるが、真空度が悪くなる。コイル部26eが真空側にあると、ガス放出源になるからである。また、このように真空側と大気側とを気密分離しないと、真空引きをしたときにガスが下部対物レンズ26と絶縁板25とが接しているところを通り、試料が動いてしまうという問題がある。
コイル部26eは、たとえば6000ATのコイル電流にすることができる。コイルが発熱して高温になると、それを原因として、巻線の被膜が融けてショートが発生することがある。下部対物レンズ26が大気にさらすことができるようになることにより、冷却効率が上がる。例えば下部対物レンズ26の下面の台をアルミニウム製にすることで、その台をヒートシンクとして利用することができる。そして、空冷ファンや水冷などで下部対物レンズ26を冷却できるようになる。このように気密分離することで、強励磁の下部対物レンズ26とすることが可能になる。
図1を参照して、リターディング部を説明する。
下部対物レンズ26の上に、絶縁板25を置く。絶縁板25は、例えば0.1mmから0.5mm程度の厚みのポリイミドフイルムやポリエステルフイルム等あるいはフッ素樹脂やセラミックス板等である。リターディング電圧を高くしたい場合は絶縁板25の厚みを0.5mmから2mm程度まで厚くしてもよい。そして、その上に、磁性のない導電性のある試料台24を置く。試料台24は、例えば底面が250μm厚のアルミニウム板で、周縁が周縁端に近づくほど絶縁板25から離れる曲面形状に加工されたものである。試料台24は、さらに曲面部と絶縁板25との間の隙間に絶縁材31が充填されたものであってもよい。このようにすると、下部対物レンズ26と試料台24との間の耐電圧が上がり、安定して使うことができる。試料台24の平面形状は円形であるが、楕円、矩形など、どのような平面形状であってもよい。
試料台24の上に試料23が載置される。試料台24は、リターディング電圧を与えるために、リターディング電源27に接続される。リターディング電源27は、例えば0Vから−30kVまで印加できる出力が可変の電源とする。試料台24は、真空外部から位置移動ができるように絶縁物でできた試料台ステージ板29に接続されている。これにより、試料23の位置は変更可能である。試料台ステージ板29は、第2XY方向ステージ調整部56cに接続されており、真空外部から動かすことができる。
試料23の上には円形の開口部のある電位板22が配置される。電位板22は、下部対物レンズ26の光軸に対し垂直に設置される。電位板22は、試料23に対して絶縁して配置される。電位板22は、電位板電源28に接続される。電位板電源28は、例えば0V及び−10kVから+10kVの出力が可変の電源である。電位板22の円形の開口部の直径は、2mmから20mm程度までであればよい。より好ましくは、開口部の直径は、4mmから12mmまでであればよい。あるいは、一次電子線12または信号電子21が通過する電位板22の部分を導電性のメッシュ状にしてもよい。メッシュの網部が電子が通過しやすいように細くされ、開口率が大きくなるようにするとよい。電位板22は、中心軸調整のために真空外部から位置を移動できるように、第1XY方向ステージ調整部56bに接続される。
試料台24の周縁は電位板22側に厚みがある。例えば電位板22が平らであると、電位板22は試料台24周縁で試料台24に近くなる。そうなると放電しやすくなる。電位板22が、試料23の近く以外の場所では導電性試料台24から離れる形状を有していることで、試料台24との耐電圧を上げることができる。
電位板22は、試料23から1mmから15mm程度の距離を離すことで、放電しないように配置されている。しかし、離しすぎないように配置されるのがよい。その目的は、下部対物レンズ26の作る磁場が強い位置に減速電界を重ねるためである。もし、電位板22が試料23から遠くに置かれた場合、あるいは電位板22が無い場合、一次電子線12が下部対物レンズ26で集束される前に減速してしまい、収差を小さくする効果が減少する。仮に電位板22の開口部が大きすぎ、試料23と電位板22との距離が近すぎる場合、等電位線が電位板22の開口部より電子銃側に大きくはみ出して分布する。この場合、一次電子が、電位板22に到着するまでに減速してしまうことがある。電位板22の開口径が小さいほど、電界のもれを減少させる効果がある。ただし、信号電子21が電位板22に吸収されないようにする必要がある。そのため、放電を起こさない範囲で試料23と電位板22との電位差を調整するとともに、試料23と電位板22との距離を調整することと、電位板22の開口径を適切に選ぶこととが大切となる。
電位板22を試料23の近くに置くことにより、一次電子の速度は、電位板22近くまではあまり変わらない。そして、一次電子は、電位板22あたりから試料23に近づくほど速度が遅くなり、磁場の影響を受けやすくなる。下部対物レンズ26の作る磁場も試料23に近いほど強くなっているので、両方の効果が合わさって、試料23に近いほどさらに強いレンズになり、収差の小さいレンズになる。
加速電圧をできるだけ大きくしながら、リターディング電圧を加速電圧に近づけることができれば、照射電子エネルギーを小さくして、電子が試料23の中に入り込む深さを浅くすることができる。これによって、試料の表面形状の高分解能観察が可能になる。さらに収差も小さくできることで、高分解能でかつ低加速のSEMが実現できる。
本実施形態1では、試料23と電位板22との耐圧を簡単に高くすることができる。上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間は10mmから200mmの距離とすることができる。そのため、例えば平坦な試料23であれば、試料23と電位板22との間隔を5mm程度あければ、試料23と電位板22とに比較的簡単に10kV程度の電位差を印加することができる。尖った部分がある試料23の場合は放電しないように、距離や開口径を適切に選ぶ必要がある。
本実施形態1における検出器20として、半導体検出器20、マイクロチャンネルプレート検出器20(MCP)、または蛍光体発光方式のロビンソン検出器20が用いられる。これらの少なくともいずれかが上部対物レンズ18の直下に配置される。二次電子検出器19は、二次電子21aを集めるように、電界が試料23の上方にかかるように配置される。
半導体検出器20、MCP検出器20またはロビンソン検出器20は、上部対物レンズ18の試料側に接し、光軸から3cm以内に配置される。より好ましくは、検出部の中心が光軸におかれ、その中心に一次電子が通過する開口部が設けられている検出器20が使用される。光軸から3cm以内に設置するのは、リターディングをした場合、信号電子は光軸近くを進むからである。
一次電子線12は、加速電源14で加速に用いられた加速電圧(Vacc)からリターディング電圧Vdecelを引いた値、すなわち−(Vacc−Vdecel)[V]に電子の電荷をかけたエネルギーで、試料23上を走査する。そのとき、試料23から信号電子21が放出される。加速電圧とリターディング電圧との値によって、電子の影響の受け方は異なる。反射電子21bは、下部対物レンズ26の磁場によって、回転する力を受けると同時に、試料23と電位板22との間の電界のために加速する。そのため、反射電子21bの放射角の広がりが狭まり、検出器20に入射しやすくなる。また、二次電子21aも下部対物レンズ26の磁場によって、回転する力を受けると同時に、試料23と電位板22との間の電界のために加速して、上部対物レンズ18の下にある検出器20に入射する。二次電子21aも反射電子21bも加速し、エネルギーが増幅されて検出器20に入射するため、信号が大きくなる。
汎用SEMでは、上部対物レンズ18のような、試料に対して電子銃側の空間に配置された対物レンズで電子を集束するのが通常である。上部対物レンズ18は、通常、試料23を上部対物レンズ18に近づけるほど高分解能になるように設計されている。しかし、半導体検出器20などには厚みがあり、その厚み分は上部対物レンズ18から試料23を離す必要がある。また、試料23を上部対物レンズ18に近づけすぎると、二次電子21aが、上部対物レンズ18の外にある二次電子検出器19に入りにくくなる。そのため汎用SEMでは、上部対物レンズ18直下の位置に配置され、一次電子が通過する開口部がある厚みの薄い半導体検出器20が用いられる。試料23は、検出器20にぶつからないように少し隙間をあけて置かれる。したがって、試料23と上部対物レンズ18とは少し離れてしまい、高性能化が難しくなる。
本実施形態1では、下部対物レンズ26を主レンズとして使う場合、試料23を下部対物レンズ26に近づけて設置することができる。そして、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間の距離を離すことができる。例えば30mm離せば、10mm程度の厚みのあるMCP検出器20を上部対物レンズ18の直下に置くことが可能になる。また、ロビンソン型の検出器20や半導体検出器20を置くことも当然にできる。反射板を置いて、信号電子21を反射板にあてて、そこから発生または反射した電子を第2の二次電子検出器で検出する方法もある。同等の作用を持つ様々な信号電子の検出器20を設置することができる。
次に、本実施形態1における装置の様々な使い方の具体例を示す。
例えば、加速電圧Vaccを−4kV、試料23を−3.9kVにして、照射電圧Vi=100Vとすることもできる。加速電圧とリターディング電圧の比が1に近いほど、収差係数を小さくすることができる。また、上記では下部対物レンズ26の磁極について、D=8mm、d=20mmとした場合を示したが、D=2mm、d=6mm等にすれば、試料高さや加速電圧の制限はあるが、より性能をよくすることができる。
また、加速電圧を−10kVとしてリターディング無しの場合、二次電子検出器19で二次電子21aを検出できるが、半導体検出器20では検出できない。しかし、加速電圧を−20kVとし、リターディング電圧を−10kVとすれば約10keVのエネルギーで二次電子21aが半導体検出器20に入り、検出可能である。
また、加速電圧を−10.5kVとし、リターディング電圧を−0.5kVとしたとき、二次電子21aは半導体検出器20では感度よく検出できない。しかしこのとき、二次電子検出器19で二次電子21aを検出することができる。すなわち、二次電子21aはリターディング電圧が低いときは二次電子検出器19で捕らえることができ、リターディング電圧を徐々に上げていくと半導体検出器20側で検出できる量が増えていく。このように、二次電子検出器19は、焦点を合わせながらリターディング電圧を上げていく調整時にも役立つ。
下部対物レンズ26は、Z=−4.5mmで30keVの一次電子を集束できるように設計してある。試料位置が下部対物レンズ26に近づけば、例えばZ=−0.5mmの位置では、100keVの一次電子も集束させることができる。リターディングをしない場合は、絶縁板25(絶縁フイルム)を下部対物レンズ26の上に置かなくてもよい。そのため、この場合には、下部対物レンズ26は、加速電圧が−100kVの一次電子線12を十分に集束できる。好ましくは、下部対物レンズ26は、加速電源を−30kVから−10kVのいずれかにして加速された荷電粒子線を、下部対物レンズ26の磁極の試料に最も近いところから見て、0mmから4.5mmのいずれかの高さの位置に集束可能であるように設計される。
加速電圧は−15kVとし、試料23は−5kVとし、電位板22に−6kVをかけた場合について説明する。一次電子は、試料23に当たるときには、10keVになる。試料23から放出される二次電子21aのエネルギーは、100eV以下である。電位板22の電位は試料23の電位よりも1kV低いため、二次電子21aは電位板22を超えることができない。そのため、二次電子21aは検出できない。試料23から放出された1keV以上のエネルギーを持っている反射電子21bは、電位板22を通過することができる。さらに電位板22と上部対物レンズ18下の検出器20との間に6kVの電位差があり、反射電子21bは加速され検出器20に入る。このように電位板22の電圧を調整できるようにすることによって、電位板22をエネルギーフィルタとして使うこともでき、さらに信号電子21を加速させることで感度を上げることも可能になる。
次に、試料の高さが例えば7mmある場合について説明する。
このとき、リターディングをする場合でも、上部磁極26bから絶縁板25と試料台24の厚みを含めて、例えばZ=−7.75mm程度の位置において測定が行われる。この場合、下部対物レンズ26のみでは30keVの一次電子線12を集束させることはできない。しかし、加速電圧を下げなくても上部対物レンズ18の助けを借りれば、一次電子線12を集束可能である。
また、試料23の高さによっては、上部対物レンズ18のみで集束させた方が性能良く観察できる場合もある。このように、試料23によって最適な使い方を選ぶことができる。
上記では、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間隔を40mmとする場合について述べたが、この距離は固定式でも可動式にしてもよい。上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との距離を離すほど、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26とが作るレンズの縮小率は小さい値になる。そして開き角αは大きくできる。この方法でαを調整することができる。
また、リターディング電圧が高いと信号電子21は光軸の近くを通って、検出器20の一次電子が通るための開口部に入りやすくなる。そのため検出器20の開口部は小さい程よい。検出器20の開口部はΦ1からΦ2mm程度にしておくと、感度がよい。電位板22の開口径や高さを調整し、電位板22の位置を光軸から少しずらすことで、信号電子21が検出器20に当たるように信号電子21の軌道を調整して感度をよくする方法がある。また、上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間に電場と磁場を直行させて印加するイークロスビー(ExB)を入れ、信号電子21を少し曲げるのもよい。一次電子の進行方向と信号電子21の進行方向とは逆なので、少し信号電子21を曲げるのに、弱い電場と磁場とを設けてもよい。少し曲がれば検出器20中心の開口部に入らず、検出できるようになる。また、単に上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間に電界を光軸に対して横からかけてもよい。このようにしても、一次電子は影響を受けにくいし、横ずれだけであれば画像への影響は少ない。例えば二次電子検出器19のコレクタ電極などによる電界を使って、信号電子21の軌道をコントロールすることも可能である。
本実施形態1では、下部対物レンズ26を主レンズとして使っている。試料台24が接地電位の場合、二次電子21aは二次電子検出器19で検出される。反射電子21bは半導体検出器20またはロビンソン検出器20などで検出される。試料23と検出器20とが10mmから20mm程度離れているときは、感度よく検出できる。しかし、40mm程度離れると、検出器20に入らない反射電子21bが増え、反射電子21bの検出量が少なくなる。このときに試料23にリターディング電圧を与えると、二次電子21aは半導体検出器20またはロビンソン検出器20などで検出されるようになる。また、リターディング電圧を与えることで、反射電子21bの広がりは抑えられ、半導体検出器20またはロビンソン検出器20などにおいて高感度で検出できるようになる。このように電位板22がない場合もリターディングは使用可能である。
本実施形態1では、試料23が分厚い場合、対物レンズとして上部対物レンズ18を使ってもよい。電位板22を動かす電位板ステージ61及び第1XY方向ステージ調整部56bを活用して、試料ステージとして使用することができる。第1XY方向ステージ調整部56bは、上部対物レンズ18に近づける方向にも移動できる(Z方向ステージ調整部56a)。これにより、汎用SEMのように装置が使用される。反射電子21bは半導体検出器20またはロビンソン検出器20などで検出され、二次電子21aは二次電子検出器19で検出される。通常、試料23は接地電位であるが、簡易的にリターディングもできる(電位板22なしでリターディングを行うことができる)。
下部対物レンズ電源42のみを使うときには、上部対物レンズ18と試料測定面との距離よりも、下部対物レンズ26と試料測定面との距離の方が近くなるように装置が構成され、上部対物レンズ電源41のみを使うときには、下部対物レンズ26と試料測定面との距離よりも、上部対物レンズ18と試料測定面との距離の方が近くなるように装置が構成される。なお、高い測定性能が要求されず、比較的低性能の測定の場合であれば、上部対物レンズ電源41のみを使うときであっても、下部対物レンズ26と試料測定面との距離よりも、上部対物レンズ18と試料測定面との距離の方が近くなるようにする必要はない。上部対物レンズ18と試料測定面との距離よりも、下部対物レンズ26と試料測定面との距離の方が近くなるようにしてもよい。つまり、試料23が上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との間に配置されていればよい。例えば低倍率の測定の場合であれば、下部対物レンズ26の近くに試料23を配置し、上部対物レンズ電源41を用いて上部対物レンズ18のみを使えばよい。
図1でリターディングをした場合、試料23の電位が負になる。試料23をGNDレベルにしたまま電位板22に正の電圧を印加することも可能である(この手法を、ブースティング法と呼ぶ)。試料23に負の電圧を印加して、電位板22に正の電位をかけて、低加速SEMとしてさらに性能をよくすることも可能である。例として、上部対物レンズ18は接地電位とし、電位板22に+10kVを印加し、試料23は接地電位にする場合を説明する。加速電圧は−30kVとする。一次電子は上部対物レンズ18を通過するときは30keVであり、上部対物レンズ18から電位板22にむけて加速され、電位板22あたりから試料23にむけて減速する。
信号電子21は、試料23と電位板22との間では加速されるが、電位板22と検出器20との間では減速される。検出器20が半導体検出器20である場合に反射電子21bを検出できるが、半導体検出器20は接地電位であるため、二次電子21aは減速し、検出できない。二次電子21aは二次電子検出器19で検出できる。リターディング電圧を試料23に印加すれば、半導体検出器20で二次電子21aも検出可能になる。
次に、二段偏向コイル17の調整によって偏向軌道の交点を移動させることについて説明する。二段偏向コイル17で試料23上を二次元的に走査する。二段偏向コイル17の電子源側を上段偏向コイル17a、試料側を下段偏向コイル17bと呼ぶ。
図1に示されるように、二段偏向コイル17は、上段偏向コイル17aの強度を可変する上段偏向電源43と、下段偏向コイル17bの強度を可変する下段偏向電源44と、上段偏向電源43と下段偏向電源44とを制御する制御装置45とにより制御される。
上段偏向コイル17aと下段偏向コイル17bは、上部対物レンズ18の内部から見て一次電子線12が飛来してくる側の空間に設置される(上部対物レンズ18のレンズ主面より上流に設置、またはレンズ主面の位置に下段の偏向部材を置く場合には外側磁極18b)より上流に設置される)。上段偏向電源43と下段偏向電源44との使用電流比は、制御装置45によって可変となっている。
二段の偏向コイル17によって、電子は光軸と上部対物レンズ18の主面の交点近くを通過する軌道になっている。上部対物レンズ18を主レンズとして使う場合には、このように設定される。下部対物レンズ26を主レンズとして使う場合には、上段偏向コイル17aと下段偏向コイル17bの強度比が、電子が下部対物レンズ26の主面と光軸との交点近くを通過する軌道になるように調整される。調整は、上段偏向電源43と下段偏向電源44の使用電流比を調整する制御装置45によって行われる。このようにすることで、画像の歪は減少する。なお、使用電流比を調整することで偏向軌道の交点(クロス点)をずらすのではなく、巻き数の異なるコイルをリレーなどで切り替える方式(巻数の異なるコイルを複数設け、用いるコイルを制御装置で選ぶ方式)や、静電レンズの場合は電圧を切り替える方式(使用電圧比を可変する方式)を採用してもよい。
偏向コイル17は、上部対物レンズ18内の隙間に配置してもよい。偏向コイル17は、上部対物レンズ18内にあってもよいし、図1のようにそれよりもさらに荷電粒子線の上流側に位置してもよい。静電偏向を採用する場合には、偏向コイルに代えて偏向電極が採用される。
(シールド電極)
本実施形態1に係るSEMにおいては、図1に示すように、電位板22と試料台24との間に、より具体的には、電位板22と試料台24に載置された試料23との間に、シールド電極51が配置される。試料台24側から見れば、シールド電極51及び電位板22は、この順で配置される。
シールド電極51は、絶縁碍子52を挟むようにして、電位板22と接続される。シールド電極51は、絶縁碍子52を介した電位板22との接続により、試料23の上方に固定される。また、絶縁碍子52は絶縁体であるので、シールド電極51は電位板22と電気的に絶縁される。図1では、電位板22の、試料23の近くの場所に絶縁碍子52を設けているが、電位板22は、試料23の近く以外の場所では試料台24から離れる形状を有しているので、電位板22の、試料23の近く以外の場所、すなわち、後述する図2に示すように、試料台24から、より離れた場所に絶縁碍子52を設けてももちろん構わない。
また、シールド電極51は、開口部を有する。シールド電極51及び電位板22の各開口部の中心軸同士は、実質的に一致しており、それら2つの開口部を、一次電子線12及び信号電子21(二次電子21a、反射電子21b)が通過する。要は、一次電子線12及び信号電子21の通過が妨げられないように、シールド電極51及び電位板22の各開口部の中心軸同士が一致していればよい。
ここで注目すべきは、シールド電極51は、配線53を介して、試料台24に電気的に接続される、つまり、シールド電極51は、試料台24と同電位となる点である。以下、試料台24と同電位となるシールド電極51を配置することによる効果について説明する。
まず、リターディングするとき、試料23に強い電界をかけたくない場合に有効である。従来であれば、電位板22と試料台24との間に電位差が与えられた結果、試料23の表面に強電界が生じると、試料23の表面と電位板22との間で放電してしまう。この放電は、試料23の特性劣化を招いたり、試料23にダメージを与えたりするおそれがある。一方、シールド電極51の配置により、電位板22と試料台24との間に与えた電位差を電位板22とシールド電極51との間に与えることができる。つまり、電位板22とシールド電極51との間に電界を生じさせ、試料23の表面に生じる電界を緩和することが可能となる。このことは、試料23が半導体素子等、微細な構造を有するが故に電界発生を嫌う試料に特に有効である。
また、試料23が絶縁体である場合、リターディング電圧の電位を試料23の表面に印加することができない。一方、シールド電極51の配置により、試料23の表面近傍を試料台24と同電位とすることができる。このことにより、試料23が絶縁体であっても、試料23の表面を試料台24に与えた電位とすることが可能となる。
さらに、電位板22と試料台24との間に与えられた電位差により静電レンズが形成される。試料23の表面に尖りや凹凸がある場合や、試料23の表面に傾斜を持つ形状である場合、あるいは、試料23が円柱形状であり、円柱の端のあたりを観察したい場合等では、試料23の表面に電界が生じるため、静電レンズになる等電位線が光軸に対して回転対称とはならず、静電レンズが大きな収差を持つ。一方、シールド電極51の配置により、試料23の表面に生じる電界が緩和され、静電レンズを光軸に対して回転対称とすることが可能となる。
さらに、照射電圧を1keV程度以下にすれば、絶縁体でも帯電しにくくなることが知られている。リターディングをして照射電圧を1keV程度にする場合に、シールド電極51を配置し、試料台24とシールド電極51とを同電位にすることにより、帯電しにくい状態で絶縁体を観察することができる。
ここで、下部対物レンズ26の、光軸上における磁束密度は、試料23に近いほど強い分布をしているので、下部対物レンズ26は低収差レンズになる。試料23に負の電位を与えると、試料23に近いほど強いレンズになり、下部対物レンズ26はさらに低収差レンズになる。試料23のリターディング電圧による電界で、信号電子21は加速され、エネルギー増幅して検出器20に入るため、検出器20は高感度となる。
さらに、シールド電極51に負の電位を与えると一次電子線12はシールド電極51に近づくほど速度は減速するので、下部対物レンズ26によって曲がりやすくなり、シールド電極51に近づくほど、下部対物レンズ26は強いレンズになる。また、シールド電極51近くでは一次電子線12がほとんど減速し終わり、試料23との間では、ほんの少しの減速が起こるようになる(試料台24とシールド電極51とが同電位である場合)。
下部対物レンズ26の、光軸上における磁束密度は、試料23に近いほど強い分布をしている。シールド電極51と試料23との間は試料23に近いほど強いレンズを構成し、シールド電極51のない場合よりも、シールド電極51と試料23との間の強いレンズになる幅の分が多くなり、狭い幅で強いレンズにすることが可能である。
なお、シールド電極51の電位は、別電源により試料台24とは異なる別電位をあたえてもよい。二次電子21aがシールド電極51を通過しない電位、例えば試料23の電位より200V低い電位をシールド電極51にあたえればシールド電極51を通過する信号電子21は反射電子21bのみにすることができ、反射電子21bのみによる像が得られる。また、電位板22としては、シールド電極51と一体化されたもの、シールド電極51とは別体の、電位板22単体のもの、あるいは、第1の検出器720または第2の検出器820が取り付けられたものなどがある。さらに、各種の電位板22を付け替えることができるようになっている。
(軸合わせ)
本実施形態1に係るSEMにおいては、図1に示すように、補正器54a、補正器54b、補正器54c、補正器54d、補正器54e及び補正器54fが設けられる。補正器54a〜補正器54fは、表示装置57に表示された収差のある画像を調整するための補正器である。補正器54a〜補正器54dは、補正器電源55に接続されており、制御装置45が補正器電源55を制御する。補正器54a〜補正器54dは、例えば、補正器54b及び補正器54dをアライメント偏向器とし、補正器54a及び補正器54cを非点補正器とすればよい。あるいは、補正器54aに非点補正器とアライメント偏向器を配置し、補正器54cをアライメント偏向器としてもよい。補正器54e及び補正器54fは、上部装置71の光軸と下部対物レンズ26の光軸とを合わせるのに用い、例えばネジを用いて移動させることができる。
さらに、一次電子線12の軌道を上部装置71の光軸から下部対物レンズ26の光軸に移動させて正確に合わせるには、例えばアライメント偏向器として、補正器54cを用いるとよい。表示装置57は、検出器20から出る電気信号を走査信号と同期して二次元的に表示させる。表示装置57の画像を見ながら、アライメント偏向器54cで一次電子線12の軌道を偏向させ、下部対物レンズ26の光軸に合わせることで収差の少ない画像になるように調整される。アライメント偏向器はこのように1段でも可能であるが、さらに軸を調整するために、2段のアライメント偏向器を用いてもよい。例えば、補正器54b及び補正器54dをアライメント偏向器とすることで軌道を平行移動、傾斜、またはその組み合わせができるようになる。
軸調整方法としてウォブラ法を用いてもよい。ウォブラ法は焦点距離を周期的に変動させる機能で軸合わせを容易にするために用いられる。ウォブラ法は画像の動きを見て等方的な動きになるように対物レンズ絞り16や偏向器54で調整する方法である。ウォブラ法は走査速度を速くする必要があり、高倍率で調整しようとする場合には、信号量が少なくなり、像が見えにくくなるため、調整が難しいことがある。下部対物レンズ26の光軸を探す目的と非点補正を容易にするために、下部対物レンズ26のレンズ状態を画像化させて調整するとよい。
試料23の画像が見えるように下部対物レンズ26の強度を調整する。その後、下部対物レンズ26に対して二次元的に走査し、収差を発生させる偏向器17(54)に制御装置45で切り替え、用いる。例えば、上段偏向コイル17aのみで下部対物レンズ26に対して二次元的に走査させる。すなわち、偏向支点を下部対物レンズ26の主面近くではなく、下部対物レンズ26の物点から下部対物レンズ26の主面の手前までの間になるようにする。この場合は上段偏向コイル17aの位置が偏向支点となる。
表示装置57は、検出器20から出る電気信号を走査信号と同期して二次元的に表示させる。表示装置57には歪収差のある画像が現れる。表示装置57に表示された収差のある画像を中心対称な歪の画像になるように補正器54a〜補正器54fを用いて軸合わせ及び非点補正を行う。例えば、補正器54e及び補正器54fを用いて粗い調整を行い、補正器54a〜補正器54dを用いて細かい調整を行えばよい。
具体的な例を示す。補正器54b及び補正器54dをアライメント偏向器として用いた場合、偏向強度を調整することで歪の中心を表示画面の中央に移動させるとよい。歪が中央に対して回転対象でなくひずんでいる場合は、非点補正器として例えば補正器54cを用い、非点補正をすると中心対称な歪にできる。また、電位板22やシールド電極51を移動させることで軸を調整してもよい。そして、通常の画像を見る状態(すなわち偏向支点が下部対物レンズ26の主面近くにある)にすると収差が補正できた画像が得られる。
下部対物レンズ26に対して二次元的に走査する収差を発生させる偏向器として、例えば上段偏向コイル17aと下段偏向コイル17bを用いて、強度比を変化させて偏向支点を調整して下部対物レンズ26に対して二次元的に走査させてもよい。このことにより、倍率にあった歪像を見ることができる。例えば偏向支点を下部対物レンズ26の物点(コンデンサレンズ15bのクロスオーバー点)に近づけると高倍率時に歪画像が見やすくできる。以上の方法は上部対物レンズ18を主レンズとする場合にも利用できる。
また、下部対物レンズ26を主に使う場合、及びリターディング時の収差を調整する場合には、特に有効である。歪像から軸合わせ及び非点補正をプログラムで自動修正できるようにしてもよい。表示装置57に表示された歪の画像の中心が表示画面の中央にくるように二段偏向コイル17及び対物レンズ絞り16を用いて調整し、その後、補正器54a〜補正器54fを用いて歪像が点対称に近づくようにするとよい。
さらに、本実施形態1に係るSEMにおいては、ウォブラ法も利用できるようにしてもよい。ウォブラ法では下部対物レンズ26の電流量を変化させてもよいし、加速電圧やリターディング電圧及び電位板電圧を変化させてもよい。ウォブラ法を用いて二段偏向コイル17を用いて軸調整をしてもよい。
(移動機構)
本実施形態1に係るSEMにおいては、図1に示すように、電位板22及び試料台24をXYZ方向に移動させる移動機構を備える。SEMの下部装置72の上面側の空間は、真空壁60で囲まれている。これにより、上部対物レンズ18や、二次電子検出器19、検出器20や、試料23等は、真空環境におかれる。移動機構は、具体的には、Z方向ステージ調整部56a、第1XY方向ステージ調整部56b、第2XY方向ステージ調整部56c、電位板ステージ61及び試料台ステージ板29から構成される。Z方向ステージ調整部56a、第1XY方向ステージ調整部56b及び第2XY方向ステージ調整部56cは、真空外部に配置されており、ユーザにより操作される。電位板ステージ61は、Z方向ステージ調整部56a及び第1XY方向ステージ調整部56bを用いたユーザによる操作により、XYZ方向に移動する。電位板ステージ61の移動に伴い、電位板22のXYZ方向の移動が実現される。同様に、試料台ステージ板29は、第2XY方向ステージ調整部56cを用いたユーザによる操作により、XY方向に移動する。XYステージの移動に伴い、試料台ステージ板29の移動に伴い、試料台24のXY方向の移動が実現される。
シールド電極51は、電位板22に接続されているため、ユーザは、Z方向ステージ調整部56a及び第1XY方向ステージ調整部56bを用いて、電位板22及びシールド電極51をXYZ方向に移動させることができるので、電位板22及びシールド電極51の各開口部を位置調整することができる。
また、移動機構を、上述した補正器の1つとして用いることにより、電位板22及びシールド電極51を移動させて静電レンズの軸を調整することもできる。この調整の際、上部対物レンズ18を用いて一次電子線12の焦点を調整し、シールド電極51の開口部を観察しながら位置調整してもよい。
リターディングをしている場合は、リターディングによる静電レンズの歪により収差が大きくなる、さらに、静電レンズと磁気レンズとの軸ずれも起こる。静電レンズと磁気レンズとの軸ずれに関しては、電位板ステージ61による軸ずれ調整をするとよい。電位板ステージ61は、上述した通り、試料23の高さによって高さ(Z方向)を調整し、左右前後方向(XY方向)に移動させることができる。
静電レンズの歪により収差が大きくなることに関しては、シールド電極51により静電レンズを軸対称にできるものの、たとえば試料23の傾きなどにより、少し磁気レンズとずれることがある。電位板ステージ61により微調整することで収差を調整できる。
シールド電極51の開口部の中心を光軸に合わせる方法として、下部対物レンズ26をOFFし、上部対物レンズ18を用いてシールド電極51に焦点を合わせて、シールド電極51の開口部の中心が表示装置57の表示画面の中央にくるように第1XY方向ステージ調整部56bを操作して調整すればよい。これにより、静電レンズと下部対物レンズ26の軸合わせを行うことができる。試料23についても、同様に、第2XY方向ステージ調整部56cを操作して調整すればよい。
(ガス導入機構)
本実施形態1に係るSEMにおいては、図1に示すように、ガス導入機構58を備える。電位板22から試料23側の空間(以下、「下部空間」と称す。)と、電位板22から上部対物レンズ18側の空間(以下、「上部空間」と称す。)とは、電位板ステージ61及びスライド板62を用いて、真空的に分離される。ガス導入機構58は、下部空間に各種ガスを導入し、下部空間内を低真空にしたり、試料23の表面近傍にガスを滞留させたりする。
例えば、試料23が絶縁物である場合、導電性物質でコーティングするのが通常であるものの、導電性物質のコーティングなしで観察を行う場合もある。このような場合に用いられる方法として、試料が帯電しないように試料室を低真空にする方法が知られている。
そこで、図1のSEMにおいては、ガス導入機構58を用いて、下部空間にガスを導入することにより、下部空間内を低真空にする。また、ガス導入機構58を用いて導入される微少量のガスまたはイオンを試料23に吹きかけることにより、試料23を除電してもよい。
一方、上部空間内は高真空に保つことにより、一次電子線12の散乱率を減らすことができるので、高真空時に近い性能を発揮することができる。
なお、低真空にすると、シールド電極51と電位板22との間の耐電圧不良が発生しやすくなる。このため、後述する図2に示すように、試料台24から、より離れた場所に絶縁碍子52を設けることにより、絶縁碍子52の沿面距離を長くし、絶縁碍子52の耐電圧を大きくなるようにしてもよい。
なお、ガス導入機構58に代えて、下部空間内を排気する排気口を狭めることにより、下部空間内を低真空にすることも可能である。
[実施形態2]
図2を参照して、本発明の実施形態2に係るSEMの概略構成を説明する。以下、本発明の実施形態1と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態2のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、電位板22の下面に、反射電子21bを検出する第1の検出器720及び特性X線121を検出する第2の検出器(電磁波の検出器)820を設けた点である。また、上述したように、絶縁碍子52を、試料台24から、より離れた場所に設けた点である。
第1の検出器720としては、例えば、マイクロチャンネルプレートや、ロビンソン検出器や、半導体検出器等が用いられる。第1の検出器720及び第2の検出器820は、互いに組み合わされて構成された検出ユニットとして構成されている。検出ユニットは、例えば、下部対物レンズ26側から見た一部の領域に第1の検出器720が配置され、他の領域に第2の検出器820が配置されたものである。検出ユニットには、一次電子線12や二次電子21aが通過する孔部が設けられている。なお、第1の検出器720と第2の検出器820とは、別々に、または一方のみ電位板22の下面に取り付けられていてもよい。
第1の検出器720及び第2の検出器820は、比較的試料23に近い位置に配置される。すなわち、第1の検出器720に信号電子21が入射する位置と、第2の検出器820に特性X線121が入射する位置とは、一次電子線12が試料23に入射する入射位置から同じ程度離れている。そのため、第1の検出器720及び第2の検出器820に入射する反射電子21bや特性X線121の立体角が大きくなる。したがって、第1の検出器720では、反射電子21bの検出感度が向上するので、より高い感度で試料23の観察を行うことができる。また、高い分解能で試料23の観察を行えるようにしつつ、第2の検出器820によってEDX分析を効率的に行うことができる。第2の検出器820は、第1の検出器720による反射電子21bの検出を妨げないように配置されており、反射電子21bを検出することによる試料23の観察と、EDX分析とは、同時に行うことができる。
なお、第2の検出器820として、他の種の検出器が設けられていてもよい。また、電位板22の上方に、検出器20が配置されていてもよい。第1の検出器720または第2の検出器820の孔部の寸法は、一次電子線12が通過する程度に小さくてもよい。例えば、孔部は、円形の貫通孔であって、その直径がたとえば1ミリメートルから2ミリメートル程度が好ましい。このように孔部を小さくすることにより、反射電子21bのほとんどは電位板22より上方に通過することができなくなる。したがって、二次電子検出器19または検出器20に入射する信号電子21のほとんどが二次電子21aとなるため、反射電子像との混合でない、鮮明な二次電子像を得ることができる。
[実施形態3]
図3は、本発明の実施形態3に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1及び2と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態3のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、試料23から放出された特性X線121を検出する第2の検出器(電磁波の検出器)110を備えた点である。
図3に示されるように、SEMの下部装置の上面側の空間は、真空壁60で囲まれている。これにより、上部対物レンズ18や、第1の検出器19、20や、試料23等は、真空環境におかれる。試料23は、絶縁板25を介して下部対物レンズ26の上面に配置された試料台24に配置されている。信号電子21を検出する検出器20は、上部対物レンズ18の下端部に配置されている。二次電子21aを検出する二次電子検出器19は、上部対物レンズ18の側部に配置されている。
ここで、図3に示されるSEMには、試料23から放出された特性X線121を検出する第2の検出器110が配置される。第2の検出器110は、エネルギー分散型X線(EDX(EDSということもある))分析装置である。第2の検出器110は、SEMに付帯する装置として取り付けられている。このSEMでは、信号電子21を検出することによる試料23の観察に伴って、試料23のEDX分析を行うことができる。第2の検出器110は、第1の検出器19、20による信号電子21の検出を妨げないように配置されており、信号電子21の検出と、特性X線121の検出とは、同時に(並行して)行うことができるが、これに限られるものではない。
第2の検出器110は、腕部113が、真空壁60の外側に配置された本体部から、真空壁60の内側に、略直線状に伸びるような構造を有している。腕部113は、真空壁60で囲まれた真空部に差し込まれている。腕部113の先端部には、板状に形成された板状部114が設けられている。腕部113及び板状部114は、金属製であって、導電性を有している。
マウント部65は、Oリング等を用いて、真空壁60に、気密を維持するようにして取り付けられている。第2の検出器110は、マウント部65に、複数個の調整ボルト67及びナット等を用いて固定されている。調整ボルト67及びナット等を調整することによりマウント部65や調整ボルト67の固定位置等が調整される。これにより、第2の検出器110の試料23に対する位置を微調整することができる。第2の検出器110の大きな移動方向は、上下方向(図の矢印Z方向;一次電子線12の入射方向)や、腕部113の長手方向(図の矢印Y方向)である。このように第2の検出器110の位置を調整することにより、腕部113の先端の位置、すなわち板状部114の位置を変更することができる。試料23に対する板状部114の位置、すなわち一次電子線12が通過する位置に対する板状部114の位置を、変更することができる。このことにより、上部対物レンズ18を用いて一次電子線12を集束させる場合にも高さ調整及び前後左右の調整が可能になる。第2の検出器110、板状部114は、使用しないときは、腕部113の長手方向(図の矢印Y方向)に大きく移動させて保管することができる。
板状部114は、一次電子線12の出射方向(以下、光軸ということがある。)に対して略垂直になるように配置される。板状部114には、孔部114aが設けられている。板状部114の位置は、孔部114aを一次電子線12が通過するように調整される。板状部114の試料23側の面(図において下面)には、X線検知部120が配置されている。X線検知部120は、例えばシリコンドリフト検出器(SDD)や超伝導遷移端センサ(TES)である。X線検知部120には、一次電子線12の入射に伴い試料23から放出された特性X線121が入射する。第2の検出器110は、X線検知部120に特性X線121が入射されたとき、入射した特性X線121を検知する。
なお、X線検知部120は、特性X線121を検知可能な部位と、他の信号電子や電磁波等を検知可能な部位とに分割されていてもよい。X線検知部120の試料側の面には、有機薄膜やベリリウム薄膜等が配置されていてもよい。これにより、試料23から放出される二次電子21aや反射電子21bがX線検知部120に入射せずに止まるようにし、X線検知部120がそれらの信号電子21等の影響を受けないようにすることができる。
第2の検出器110の板状部114は、リターディングを行う場合の電位板としても機能する。すなわち、リターディング電源27は、試料台24に接続されており、板状部114は、腕部113を介して、例えば接地電位に接続される。板状部114は、上述の実施の形態における電位板22と同様に機能する。そのため、電位板22を別途設けることなく、電位板22を設けている場合と同様の効果を得ることができる。なお、板状部114には、接地電位に限られず、正の電位、又は負の電位が与えられるようにしてもよい。
板状部114の位置は、上述のように適宜変更可能である。上部対物レンズ18と下部対物レンズ26との制御や、リターディング電圧の制御が行われることで、上述の実施の形態と同様に、試料23を高分解能で観察できるようになる。また、それに合わせて、試料23のEDX分析を行うことができ、多様な分析及び観察を行うことができる。
第2の検出器110は、リターディングが行われるときに電位板22として機能するものに限られない。第2の検出器110は、単に、特性X線121等を検出するX線検知部を備えているものであればよい。
[実施形態4]
図4は、本発明の実施形態4に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1、2及び3と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態4のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、EDX分析用の第2の検出器210とともに、WDX分析用の第2の検出器610が設けられた点である。
WDX分析用の第2の検出器610は、ポリキャピラリ617を用いたものであり、WDXによる分析をより高感度で行うことができる。
EDX分析用の第2の検出器210の先端部には、リターディングに用いられる電位板422が設けられている。電位板422は、第2の検出器210の筐体に取り付けられた電位板固定部218を介して、試料23の近傍に位置するように配置されている。
電位板422は、一次電子線12や信号電子21等が通過する孔部を有しており、試料23の近傍に位置するように配置されている。孔部は、試料23から出射される特性X線121が第2の検出器210のコリメータ214及びX線透過窓220aに入射するような位置に配置されている。また、下部対物レンズ26の上部には、絶縁板25、試料台24、絶縁材31等が配置されている。試料台24はリターディング電源27に接続されており、電位板422は、電位板電源28に接続されている。このような構成を有していることにより、このSEMでは、上述の第1の実施の形態と同様に、リターディングが行われる。
このように、図4に示される装置では、各第2の検出器210、610を試料23に近づけることができるため、EDX分析及びWDX分析の検出効率を高くしつつ、高い解像度で試料23を観察することができる。また、リターディングが行われることによる効果が得られ、照射電子エネルギーを小さくして、一次電子線12の電子が試料23の中に入り込む深さを浅くすることができる。これによって、試料の表面形状の高分解能観察が可能になる。さらに、電位板422を試料23に近づけることで収差を小さくできるので、高分解能でかつ低加速のSEMが実現できる。
図4に示されるSEMにおいて、EDX分析用の第2の検出器210やWDX分析用の第2の検出器610を構成する部材等の位置は、微調整可能である。電位板422は、EDX分析用の第2の検出器210とは接続されずに独立に動かせるようにしてもよい。
なお、電位板422は、WDX分析用の第2の検出器610側に取り付けられていてもよい。例えば、ポリキャピラリ617の先端部近傍に、電位板422が取り付けられていてもよい。また、電位板422は、ポリキャピラリ617とは接続されずに、独立に動かせるようにしてもよい。
ここで、電位板422に電子やX線が当たると、蛍光X線が出射される。そうすると、EDX分析やWDX分析を行う際、試料23から出射されたX線と電位板422から出射されたX線とが合わせて分析される。この電位板422から出射されるX線が分析結果に及ぼす影響を軽減するため、電位板422は、軽元素の薄膜(例えば、ベリリウム薄膜、有機薄膜、シリコンナイトライド薄膜などであるが、これに限られない)であることが好ましい。電位板422が軽元素の薄膜で構成される場合には、X線が、電位板422を通過しやすくなる。なお、電位板422が軽元素の薄膜で構成される場合には、電位板422の孔部が小さい場合であっても、X線が電位板422を通過し、検出器に入射しやすくなる。
また、電位板422から出射されるX線が分析結果に及ぼす影響を軽減するため、電位板422の材料として、例えば分析対象の試料23とは検出ピークが異なる組成の材料が用いられるようにしてもよい。これにより、分析結果において電位板422の影響を除去しやすくなる。
[実施形態5]
図5は、本発明の実施形態5に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1、2、3及び4と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態5のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、カソードルミネッセンス(CL)321を検出する第2の検出器410が設けられた点である。
第2の検出器410は、放物面鏡(光学素子の一例)420と、検出器本体310aと、光学レンズ411とを有している。放物面鏡420の鏡面420bは、試料23からCL321が放出される点を焦点とする曲面形状を有している。鏡面420bに入射したCL321は、平行光となって光学レンズ411に入射する。CL321は光学レンズ411で屈折して集光され、検出器本体310aに入射する。これにより、検出器本体310aで、CL321が効率的に検出される。
放物面鏡420の下部には、導電性板である電位板422が取り付けられている。電位板422は、一次電子線12や信号電子21等が通過する孔部を有しており、試料23の近傍に位置するように配置されている。また、下部対物レンズ26の上部には、絶縁板25、試料台24、絶縁材31等が配置されている。試料台24はリターディング電源27に接続されており、電位板422は、電位板電源28に接続されている。このような構成を有していることにより、このSEMでは、上述の第1の実施の形態と同様に、リターディングが行われる。
なお、放物面鏡420に設けられている一次電子線12等が通過する孔部の大きさは、適宜設定される。すなわち、孔部が比較的小さければ、反射電子21bの通過量は少なくなるが、CL321の光量は増加する。他方、孔部が比較的大きければ、CL321の光量は少なくなるが、反射電子21bの通過量は多くなる。なお、放物面鏡420を楕円鏡にしてCL321を検出してもよい。また、放物面鏡420の代わりに反射ミラーを配置し、光学レンズ411、検出器本体310aの位置に光学顕微鏡、蛍光顕微鏡を取り付けて観察できるようにしてもよい。二次電子検出器19、半導体検出器20による画像と第2の検出器410による画像を同時に観察するようにしてもよい。さらに、信号電子21による画像と第2の検出器410による画像を重ねて表示するようにしてもよい。
[実施形態6]
図6は、本発明の実施形態6に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1〜5と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態6のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、シールド電極51、絶縁碍子52及び配線53に代えて、開放型ケース700を備えた点である。
開放型ケース700は、試料23を覆うようにして、試料台24上に配置される。開放型ケース700は、その上面部701がシールド電極51と同一の機能を担うものであり、その側面部702が配線53と同一の機能を担うものである。具体的には、上面部701は、側面部702を介して、試料台24に電気的に接続される。これにより、上面部701は、試料台24と同電位となる。
開放型ケース700は、留め具等を用いて試料台24に固定されてもよい。また、上部と下部とに分離可能とし、SEMの外部で高さ調整を簡単に行えるようにしてもよい。調整後、試料台24上に配置するようにすれば、試料23と上面部701との距離を容易に調整可能となる。
例えば、上面部701は、非磁性体であり、導電性を有する。試料台24に接する側面部702の端部は止めねじの先になっている。止めねじを回すことで高さが調整できる。試料台24に導電性の止めねじが接しているので、上面部701は試料台24と同電位になる。
上面部701は、試料23を覆うように配置され、一次電子線12が走査する部分に開口がある。試料台24にリターディング電圧がかけられると、電位板22との間に電位差が発生する。尖りのある試料23の場合、上面部701がない場合、電位板22との間で放電が発生しやすい。上面部701が試料23の尖りを覆うことで放電を防止できる。
試料23に凹凸があると上面部701がない場合、凹凸により静電レンズが乱れ、高解像にできない場合がある。上面部701を取り付けることで、電位が安定し、静電レンズが乱れないようにできる。
なお、本発明の実施形態6のSEMでは、本発明の実施形態1のSEMとは異なり、絶縁板25と絶縁材31とが一体化された絶縁部710を備えている点についても留意すべきである。
[実施形態7]
図7は、本発明の実施形態7に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1〜6と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態7のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、シールド電極51、絶縁碍子52及び配線53に代えて、密閉型ケース800を備えた点である。
密閉型ケース800は、開放型ケース700とは異なり、試料23を収納するものである。また、密閉型ケース800は、その内部が密閉空間となっている。密閉型ケース800は、その上面部801がシールド電極51と同一の機能を担うものであり、その側面部802が配線53と同一の機能を担うものである。具体的には、上面部801は、側面部802を介して、試料台24に電気的に接続される。これにより、上面部801は、試料台24と同電位となる。
上面部801に開口部を設け、導電薄膜803を用いて開口部を塞ぐことにより、密閉型ケース800の内部に密閉空間を実現する。導電薄膜803を種々選択することにより、一次電子、反射電子、電磁波等を、導電薄膜803を介して、透過させる。また、開口部は平坦となるので、試料台24を移動させても、電位板22及び試料台24から構成される静電レンズの形状は変わらず、その結果、電位板22と上面部801との間の軸合わせは不要となる。
密閉型ケース800の内部には、その密閉性により、ガスまたは液体を導入することができる。このため、試料23としては、液体、生物、細胞等、高真空では観察不可能であったものも、取り扱うことが可能となる。
密閉型ケース800も、開放型ケース700と同様、留め具等を用いて試料台24に固定されてもよい。また、上部と下部とに分離可能とし、SEMの外部で高さ調整を簡単に行えるようにしてもよい。調整後、試料台24上に配置するようにすれば、試料23と上面部801との距離を容易に調整可能となる。
導電薄膜803と上面部801とはできるだけ同一面にするのが好ましい。このことによって、試料台24を動かした場合にも、電位板との間の電界を乱れないようにできる。導電薄膜803は30nmから1μm程度のもので、有機薄膜、カーボン薄膜、金属薄膜、SiN、SiC、ポリイミド、グラフェン、酸化シリコンなどを用いることができる。導電薄膜803は薄いので、光やX線などの電磁波を通過させることができる。従って、図3、図4、図5のように第1の検出器19、20と第2の検出器110、210、610、410を同様に配置して信号電子21と電磁波121、321及び光を同時に検出することができる。
密閉型ケース800には、真空にすると蒸発して形が変形してしまうような試料を収納することができる。例えば、生物や液体中にある試料などに適している。密閉型ケース800内に高さ調整用の台を置き、液中の試料を導電薄膜803に接するようにしてもよい。導電薄膜803と試料23との間にガスがあるように設置してもよい。ガスは大気、ヘリウム、水素、窒素、アルゴンなどでもよい。圧力は大気圧でも減圧してもよい。密閉型ケース800はOリングなどでガスが漏れないようにする。
密閉型ケース800に排気口を設けてもよいし、蓋をするときに外気を減圧して密閉してもよい。ガスを封入するようにして密閉してもよい。
なお、本発明の実施形態7のSEMでも、本発明の実施形態1のSEMとは異なり、絶縁板25と絶縁材31とが一体化された絶縁部810を備えている点についても留意すべきである。ただし、本発明の実施形態6のSEMとは異なり、絶縁板25に相当する部分が、本発明の実施形態1と同様、装置外部に向けて延在する点に留意すべきである。これにより、試料台24の絶縁耐圧の向上が図られている。
[実施形態8]
図8は、本発明の実施形態8に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1〜7と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態8のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、試料23を、試料台24上に載置することに代えて、電位板22上に載置した点である。つまり、本発明の実施形態8のSEMは、試料23を載置する試料台として、電位板22を用いたものである。
図8に示すように、試料23は、電位板22上に配置された試料台座904上に載置されている。上部対物レンズ18の磁極(例えば接地電位、または電位を与える)18dは、電位板22と同一の機能を担うものである。シールド電極900は、配線903を介して、試料台としての電位板22と電気的に接続される。この接続により、シールド電極900と電位板22とが同電位となる。
試料台座904は、試料23とシールド電極900との距離を調整するためのものである。試料台座904の高さを調整することにより、試料23とシールド電極900との距離を調整することができる。
シールド電極900は、シールド電極900をXYZ方向に移動させるシールド電極移動機構901に接続されている。シールド電極移動機構901は上述の実施形態1の移動機構と同様の機能も備えるものであることから、ここでは、説明を省略する。
なお、図8のSEMでは、上部対物レンズ18としてシュノーケルレンズを用いる。信号電子21は、上部対物レンズ18の中を進んでいき、上部対物レンズ18の中や上部に配置された検出器に検出される。
本発明は、荷電粒子線装置であるEPMA、電子ビーム溶接機、電子線描画装置、及びイオンビーム顕微鏡などに容易に適用できることが理解できる。たとえば、荷電粒子線装置の一種であるミラー電子顕微鏡の対物レンズに下部対物レンズ26を用いることができる。試料23に一次電子線12の加速電圧よりもわずかに大きい負の電位を与え、一次電子線12を試料23に当てず、反射させる。この場合、信号電子21は一次電子線12が反射されたものとなる。試料表面の微小な凹凸や電位分布の情報を得ることができる。また、移動機構を備えたシールド電極51を配置し、位置を調整できるようにしてもよい。シールド電極51に電位を与え、試料23との電位差を調整できるようにしてもよい。
[実施形態9]
図9は、本発明の実施形態9に係るSEMの装置構成の概要例を示す断面図である。以下、本発明の実施形態1〜7と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本発明の実施形態9のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、EDX分析用の第2の検出器210及びWDX分析用の第2の検出器610が設けられた点である。EDX分析用の第2の検出器210及びWDX分析用の第2の検出器610については、本発明の実施形態4と同様の部分であるので、ここでは説明を行わない。
なお、図9には、図1等に記載された電位板22及びシールド電極51が記載されてはいない。しかしながら、図9に示したSEMに図1等に記載された電位板22及びシールド電極51が設けられても良いことは言うまでもない。
また、本発明の実施形態9のSEMと本発明の実施形態1のSEMとで異なる点は、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、以下、「SPM」と称する。)500及びマニピュレータ504が設けられた点である。
まず、SPM500の構成及びその機能について説明する。
SPM500は、上部装置71と下部対物レンズ26との間に配置される。また、SPM500は、図1に示した電位板ステージ61上に配置されても良い。さらに、SPM500は、下部対物レンズ26の上部に配置されても良い。
SPM500は、カンチレバー(板バネ)501と、SPM用検出器502と、SPM用レーザ503を有する。カンチレバー501の先端には探針(SPM探針)501aが設けられている。SPM500は、探針501aと試料23との間に加わる力の変化をカンチレバー501のたわみや振動の変化量として検知する。この変化量の検知は、SPM用検出器502がSPM用レーザ503から出射されるレーザ光を検知することにより行われる。SPM500、試料23又は試料台24には、XYZの各方向に伸縮可能な圧電素子が設けられている。圧電素子によって、SPM500、試料23又は試料台24は、XYZ方向に移動可能である。
また、焦点深度の合成(自動的に焦点位置を移動しながら複数枚の撮影をして、画像を合成することで被写界深度の深い画像を得る手法)の方法を利用した3次元画像を得ながら、カンチレバー501の探針501aを操作しても良い。
SPM500の移動範囲は狭い。このため、SPM500を用いた観察だけでは、試料23上においては、広範囲にわたり、目的の測定位置を探すことにはかなりの時間を要することが予想される。本実施形態のSEMでは、試料23のSEM像を、リアルタイムに、且つ、広範囲に、観察することができるので、SPM500の測定位置を素早く探し出すことができる。そして、カンチレバー501の先端にある探針501aを、第2XY方向ステージ調整部56c又は圧電素子によって、目的の測定位置に確実に設置することができる。
また、上部対物レンズ18のみを使用し、試料23を観察する場合、上部対物レンズ18と試料23とを近づける必要がある。そのため、カンチレバー501のたわみや振動の変化量を検知する光学系(ここでは、SPM用検出器502及びSPM用レーザ503)を、上部対物レンズ18の直下に配置することが困難になることが予想される。
また、歪抵抗を有する自己検知型カンチレバーを用いれば、上述の光学系は不要とはなるものの、そもそも、カンチレバー501を操作させるためには、上部対物レンズ18と試料23との間にカンチレバー部を入れる必要がある。
このように、上部対物レンズ18のみを使用する場合、試料23を上部対物レンズ18から離間させて(ワーキングディスタンスを大きくして)、試料23の観察を行う必要がある。ワーキングディスタンスの拡大は、SEMの分解能を低下させるものである。本実施形態のSEMでは、上部対物レンズ18に加え、下部対物レンズ26も使用することにより、試料23の厚みがおよそ5mm以下のものであれば、試料23を高分解能で観察しつつ、SPM500を使用して試料23を測定したり、操ったりすることが可能となる。
さらに、試料23を低倍率で観察する場合には、上部対物レンズ18を使用して一次電子線12を集束すれば良い。また、上部対物レンズ18及び下部対物レンズ26を使用して一次電子線12の開き角αの最適化を行うことも可能である。当然のことながら、ワーキングディスタンスを大きくしても、SEMの分解能の低下を回避することができるので、上述の光学系を上部対物レンズ18の直下に配置することが容易となる。
次に、マニピュレータ504を用いた、試料23の測定及び試料23の操作について説明する。
まず、試料23の測定について説明する。
図9には、1つのマニピュレータ504のみが示されているが、本実施形態のSEMは、複数のマニピュレータ504を備えていても良い。
マニピュレータ504の探針504aを試料23に接触させることにより、試料23の電気特性を計測することができる。計測可能な電気特性としては、例えば、試料23の抵抗値、試料23の導電率、試料23に流れる電流値、試料23に印加される印加電圧、試料23の絶縁性、試料23のシート抵抗が挙げられる。
また、マニピュレータ504を用いて、試料23に電子ビームを照射したときに流れる電流、すなわち電子線励起電流(EBIC)を測定することができる。本実施形態のSEMでは、測定された電子線励起電流を基に試料23の内部構造を画像化することも可能である。これにより、試料23の内部に形成されたp−n接合の可視化や、試料23の結晶欠陥の観察が可能となる。
さらに、電子ビームとマニピュレータ504の探針504aとの間を流れる吸収電流(電子線吸収電流(EBAC))を測定して試料23の局部抵抗を測定することも可能である。
次に、試料23の操作について説明する。
マニピュレータ504の探針504aを試料23に接触させることにより、試料23を操作することができる。様々な形状の探針504aを用意し、試料23の一部を操作、加工(切断、剥離、穿孔、移動、接合)することができる。例えば、探針504aを用いて、試料23の一部をつかみ、移動させ、試料23の別の位置に接合させることができる。また、試料23の引張り測定、応力測定も可能になる。
マニピュレータ504にガス又は液体を供給する機構を設けても良い。その機構から供給されるガス又は液体を探針504aから試料23に供給することにより、試料23の表面に薄膜を堆積する、試料23の表面にマーキングする、試料23の表面をエッチングする、試料23の表面で化学反応を起こす、といったことが可能となる。
さらに、探針504aに、加熱機構や、高周波振動可能なカッターを設けることにより、試料23を用いて行う実験のバリエーションを増やすことができる。
なお、リターディングする場合には、探針504aをマニピュレータ504から絶縁することが好ましい。
本実施形態のSEMには、図9に示したとおり、加熱用レーザ601、集束イオンビーム(FIB)602、物理蒸着装置(PVD)603及び光学カメラ604がさらに設けられている。
加熱用レーザ601は、試料23にレーザ光を照射することにより、試料23を加熱したり、試料23の一部を昇華・蒸発させたりするものである。本実施形態のSEMでは、レーザ光照射による試料23の状態変化を、リアルタイムで、且つ、高分解能で、観察することができる。加熱用レーザ601は、図4に示された、ポリキャピラリ617の位置に配置してもよい。また、加熱用レーザ601は、リターディングした状態で使用することも可能である。さらに、加熱用レーザ601の放出口は、上部装置71と下部対物レンズ26との間に配置することが好ましい。
集束イオンビーム602は、試料23に細く絞ったイオンを照射することにより、試料23を切削・加工するものである。本実施形態のSEMでは、集束イオンビーム602を用いて、試料23を切削・加工することができる。下部対物レンズ26を使用する場合であれば、集束イオンビーム602の鏡筒を上部対物レンズ18と干渉させることなく、試料23の近傍に配置することができる。
物理蒸着装置603は、試料23の表面に金属等の薄膜を蒸着するものである。本実施形態のSEMでは、薄膜蒸着による試料23の状態変化を、リアルタイムで、且つ、高分解能で、観察することができる。
本実施形態のSEMでは、光学カメラ604を用いて、カンチレバー501及びマニピュレータ504の各位置を確認することも可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、SEMから電位板22を取り外してもよい。電位板22又はシールド電極51は必要に応じてSEMに取り付けられる。電位板22又はシールド電極51は、SEMへの取り付け及びSEMからの取り外しが可能である。リターディングをする場合であっても、電位板22及びシールド電極51を取り外してもよい。また、それらを取り付ける場合であれば、電位板22及びシールド電極51の各孔部が、マニピュレータ504の探針504a又はカンチレバー501より上方に位置するように配置すれば良い。
電位板22及びシールド電極51の形状は、一次電子線12の光軸に対して回転対称であればよく、板状に限られるものではない。例えばリング形状でもよいし、下に凸の円錐形状で先端に孔を有するものでもよい。試料23に対する処理を行うための空間が確保されるように、上記試料の上部における、電位板22及びシールド電極51の配置構成が決定される。
また、試料23は、上部装置71から20mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上離すことが好ましい。
また、試料23を低倍率で観察する場合には、上部対物レンズ18を用いて一次電子線12を集束させることが好ましい。一方、試料23を高倍率、高分解能で観察する場合には、下部対物レンズ26を使用することが好ましい。また、上部対物レンズ18及び下部対物レンズ26を同時に使用し、SEMの開き角αを最適化することが好ましい。
本発明の一態様に係る荷電粒子線装置は、荷電粒子線を放出する荷電粒子源と、上記荷電粒子源から放出される荷電粒子線を試料に集束させる対物レンズと、上記試料を載置する試料台と、上記荷電粒子線を通過させるシールド電極及び電位板とを備え、上記試料台側から、上記シールド電極及び電位板は、この順で配置されており、上記試料台と上記電位板との間には電位差が与えられ、上記シールド電極には、上記電位差により上記試料に生じる電界を緩和する電位が印加される。
上記シールド電極及び電位板を移動させる移動機構を備えることが好ましい。
上記対物レンズは、上記試料に対して上記荷電粒子線が入射する側の反対側に配置された下部対物レンズを含むことが好ましい。
上記対物レンズは、上記試料に対して上記荷電粒子線が入射する側に配置された上部対物レンズを含み、上記上部対物レンズの強度を可変する上部対物レンズ電源と、上記下部対物レンズの強度を可変する下部対物レンズ電源とを備え、上記上部対物レンズ電源のみを用いるとき、上記試料は、上記上部対物レンズと上記下部対物レンズとの間に配置され、上記下部対物レンズ電源のみを用いるとき、上記下部対物レンズと測定試料面との距離が上記上部対物レンズと測定試料面との距離よりも近くされることが好ましい。
上記シールド電極は、絶縁体を挟むようにして、上記電位板に接続され、上記シールド電極及び電位板は、それぞれ、上記荷電粒子線を通過させる開口部を有し、各開口部の中心軸同士は実質的に一致することが好ましい。
上記電位板及び試料台を含む空間内にガスを導入することにより、上記試料の近傍に当該ガスを滞留させるガス導入機構を備えることが好ましい。
上記電位板の、上記シールド電極との対向面に、上記電位板の開口部を塞がないように配置され、上記試料から放出される信号電子または電磁波を検出する検出器を備えることが好ましい。
上記シールド電極は、導電体を挟むようにして、上記試料台に接続され、且つ、上記導電体を介して、上記試料台と同電位となることが好ましい。
上記シールド電極及び上記導電体は、上記試料を覆うようにして上記試料台に載置される試料ケースを構成することが好ましい。
上記試料ケースは、密閉容器であり、上記シールド電極の開口部を塞ぐように薄膜部材が設けられており、上記薄膜部材は、上記荷電粒子線及び上記試料から放出される信号電子または電磁波を通過させる材料から構成されることが好ましい。
上記電位板は、上記上部対物レンズの、上記シールド電極と対向する磁極であることが好ましい。
本発明の一態様に係る荷電粒子線装置は、荷電粒子線を放出する荷電粒子源と、試料に対して上記荷電粒子線が入射する側の反対側に配置され、上記荷電粒子源から放出される荷電粒子線を上記試料に集束させる下部対物レンズと、上記試料を載置する試料台と、上記荷電粒子線を通過させるシールド電極及び電位板と、上記シールド電極及び電位板を移動させる移動機構と、上記電位板及び試料台を含む空間内にガスを導入することにより、上記試料の近傍に当該ガスを滞留させるガス導入機構とを備え、上記試料台側から、上記シールド電極及び電位板は、この順で配置されている。
上記下部対物レンズの上部に、上記試料に対する操作、加工又は測定のいずれか一つを少なくとも含む、上記試料に対する処理を行うための空間が確保されるように、上記試料の上部の配置構成が決定されることが好ましい。
本発明の一態様に係る走査電子顕微鏡は、上記荷電粒子線装置を備える。