以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る加工材移動装置1の一例を説明するための模式図であり、加工材移動装置1を上面視した状態を示している。図2は、吸着パッド2aを備えた積込装置6を示す側面図である。なお、図1においては、加工材移動装置1の各部位に配置された各々の加工材99について、加工された順に異なるアルファベットを付して細線によって示し、加工材99aが加工された後に、加工材99bが加工され、その後に加工材99c・・・のように加工材99が加工されている状況を例示している。
加工材移動装置1は、加工機によって切削加工された加工材99を移動するための装置であり、例えば、住宅に使用される柱や梁、羽柄材などの木材(構造部材)を加工する木材プレカット加工装置の一部として使用可能な装置である。加工材移動装置1は、材料が加工機によって加工された後の下流側に配置され、加工機によって加工された加工材99を、複数本のまとまりに集積する(積み込む)ように移動する。この集積された複数本の加工材は、出荷のための梱包作業が行われた後、フォーク式のリフトなどによってトラックに積み込まれて建築現場へ配送される。
加工材移動装置1は、図1に示すように、加工材99に接触する吸着部2と、加工材99を移送する移送装置3と、加工材99が集積される集積領域10,20にて加工材99の下側を支持する支持移動装置4,5と、吸着部2を移動させて支持移動装置4,5へ加工材99を積み込む積込装置6と、加工材移動装置1の各部分の動作を制御する制御装置9とを備えている。なお、加工材移動装置1は、加工機を含む木材加工装置の一部として構成してもよいし、制御装置9を含まないようにして構成してもよい。
吸着部2は、切削加工が行われた加工材99の一部分に接触して、加工材99を吊り上げられた状態とすることが可能に加工材99に接触する接触部を構成する部位である。吸着部2は、図2に示すように、直方体状に形成されると共に下側にスポンジ状の吸着パッド2aが設けられて構成され、接触面としての吸着パッド2aの下面に加工材99を接触させてから吸着部2の内部空間を減圧することで加工材99を吸着し、その後に、上昇することで加工材99を吊り上げられた状態とする。吸着部2には、空気圧を制御可能なパイプ(図示せず)を通じて電磁弁(図示せず)とポンプ(図示せず)とが接続され、制御装置9が電磁弁の動作を制御することで、吸着駆動の制御が行われて吸着部2が加工材99を吊り上げ可能な吸着状態と、加工材99から離間可能な非吸着状態とが切り替えられる。
なお、必ずしも1つの吸着部2によって加工材99を吊り上げる構成とする必要はなく、2以上の吸着部2によって加工材99を吊り上げる構成としてもよい。また、加工材99に接触して加工材99を吊り上げるための部位を、必ずしも吸着(吸引)によって加工材99に接触する部位により構成する必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、加工材99の長手方向に連続して水平方向側を向くように配置した両側面を外側から把持(クランプ)するようにして加工材99を吊り上げる構成とするなど、他の加工材99を吊り上げ可能な機構によって構成してもよい。
移送装置3は、加工材99(99i)を移送する移送経路の少なくとも一部を構成し、吸着部2が接触可能な吊り上げ位置3aにて加工材99の下側を支持する装置である。移送装置3は、例えば、図1に示すように、加工材99iを移送可能なコンベアによって構成され、多数の回転体によって構成される搬送台(図示せず)と、加工材99iに接触する回転体の一部を駆動する駆動装置(図示せず)とを備えて構成され、制御装置9によって動作が制御される。吊り上げ位置3aに向かって移送された加工材99iは、移送装置3の先端側(下流端側)に設けられたセンサによって位置が検出されることで吊り上げ位置3aに配置されたことが検知され、駆動装置の駆動を停止することで吊り上げ位置3aに停止する。なお、必ずしも加工材99の先端側の位置を検知することで駆動装置を停止して吊り上げ位置3aに加工材99を配置する必要はない。例えば、長さの異なる加工材99の中心位置が一定の位置となるように、制御装置9の制御によって、加工材99を吊り上げ位置3aに停止するようにしてもよく、例えば、加工材99の先端側の位置を検知した後に加工材99の長さに応じた駆動量の駆動制御を行ってから駆動装置の駆動を停止するようにしてもよい。
移送装置3(吊り上げ位置3a)から離れた位置には、2つの支持移動装置4,5と、支持台8とが設けられている。2つの支持移動装置4,5は、配置位置が異なるものの、略同一の構成とされ、以下においては、移送装置3に近い一方の支持移動装置(第1支持移動装置4)の構成(例えば、「枠体11」)について主に説明し、移送装置3から離れた支持移動装置(第2支持移動装置5)の各部の構成については、同一の名称で「10」を加えた番号を付した形(例えば、「枠体21」)として、説明の一部を省略する。
第1支持移動装置4は、加工材99が集積される集積領域10の下側に位置するようにして設けられ、集積領域10において加工材99の下側を支持する装置である。また、第1支持移動装置4は、支持された状態の複数本の加工材99をまとめて移動可能な装置である。
第1支持移動装置4は、図1に示すように、床面に固定される枠体11によって地面から離隔させて略平行に配置される2つのコンベア12,13と、2つのコンベア12,13を連動させる連動機構14と、連動機構14を駆動する駆動モータ15とを備え、駆動モータ15が制御装置9に接続されて制御装置9の制御によって動作する。2つのコンベア12,13は、チェーンやベルトなどの回転体が加工材99の移動方向に沿って掛け回されて構成され、加工材99を、吊り上げ位置3aに近い側から遠い側へと移動可能なように、吊り上げ位置3aから離間する方向(図1の上下方向)に連続するように配置されている。なお、第1支持移動装置4は、必ずしも2つのコンベア12,13によって加工材99を移動するように構成する必要はなく、幅広の1つのコンベアによって構成してもよいし、3以上のコンベアを利用して構成してもよく、2つのコンベア12,13に対して一方側(例えば、図1の下側)に更に2つのコンベアを配置して加工材99を支持した状態で移動可能な距離を長くしてもよい。
第1支持移動装置4における加工材99の移動方向は、吊り上げ位置3aに配置される加工材99の長手方向(図1の左右方向)に直交する方向(図1の下方向)に設定されている。加工材99は、上面視において、吊り上げ位置3aに停止して配置された向きのままで第1支持移動装置4の2つのコンベア12,13の上に向かって直線的に移動することで、最短の距離で第1支持移動装置4への移動を完了する。このため、加工材99の移動量を少なくすることができ、予め設定された数分の加工材99を効率良く、移送装置3から第1支持移動装置4へと移動することができる。
第1支持移動装置4は、図1に示すように、上面視において、吊り上げ位置3aから離間した位置に設けられて、その配置された範囲内に、集積された加工材99の下側を支持可能な領域(集積領域10)を形成する。集積領域10は、吊り上げ位置3aに停止する加工材99の長手方向(図1の左右方向側)に直交する方向側(図1における下側)に位置するように設けられる。この集積領域10においては、第1支持移動装置4の2つのコンベア12,13によって複数本の加工材99(図1には、加工材99a,99b,99c,99hの4本を図示)の下側が支持される。
集積領域10は、吊り上げ位置3aに近い第1領域としての積込領域10aと、積込領域10aよりも吊り上げ位置3aから離れた第2領域としての出荷待機領域10bとに区分することができる。積込領域10aは、積込装置6と吸着部2の動作によって加工材99が複数並んで積み重なった状態とされる領域である。出荷待機領域10bは、積込領域10aに複数並んで積み重なった状態とされた加工材99が、まとまった状態で移動(移送)される領域である。
制御装置9は、積込装置6と吸着部2の動作を制御して、移送装置3によって吊り上げ位置3aに移送された加工材99を順に積込領域10aに積み込む。そして、予め設定された数の加工材99のまとまりが積込領域10aに積み込まれると、制御装置9が第1支持移動装置4(2つのコンベア12,13)の動作を制御し、積込領域10aから出荷待機領域10bへ、加工材99のまとまりを、その状態のままでスライドするように移動する。
出荷待機領域10bへ移動した複数の加工材99(図1には、一群の加工材97として図示)は、積込装置6から離間した位置に配置される。この出荷待機領域10bにおいて、作業者は、一群の加工材97の積込状態の確認を行ったり、それらの荷崩れを防止するための締結を行ったり、また、防水シートで一群の加工材97覆う等の保護処理など、梱包のための作業を行うことができる。
ここで、集積領域10への加工材99の移動においては、上面視において、加工材99の向き(角度)が変わらないように、また、移動方向が直線的になるようにして移動する制御を行うことが好ましく、これにより、吸着部2に接触して吊り上げられた加工材99に作用する慣性力が変化することを抑制し、吸着部2から外れて落下してしまう事態を防止し易くすることができ、その分、加工材99を移動する速度を高く設定し易くして効率良く加工材99を移動することができる。
また、吊り上げ位置3aに配置された加工材99に対して、その加工材99の長手方向に直交する方向側に、積込領域10aの少なくとも一部と、出荷待機領域10bの少なくとも一部とが配置されるようにすることが好ましく、これにより、吊り上げ位置3aから積込領域10aへ加工材99を移動するための距離を短くして、効率良く積込領域10aへ加工材99を積み込むことができる。この場合において、吊り上げ位置3aに配置された加工材99に対して、その加工材99の長手方向に直交する方向側に、積込領域10aと、出荷待機領域10bのいずれもが、半分以上を占めるように位置するようにした集積領域10が設けられることが好ましく、大部分(例えば、略8割以上)が位置するようにした集積領域10が設けられることが好適である。図1には、積込領域10aと、出荷待機領域10bのいずれもが、吊り上げ位置3aに配置された加工材99に対して、その加工材99の長手方向に直交する方向側に相当する範囲を全て含むように配置される場合を例示している。
また、吊り上げ位置3aに位置し得る加工材99の配置位置と、集積領域10の配置位置として、吊り上げ位置3aに配置される加工材99の長手方向の中心部に対して、その加工材99の長手方向に直交する方向側(図1の下方側)に、集積領域10の幅方向(図1の左右方向)の中心部分が位置するようにすることが好ましく、集積領域10を構成する積込領域10aと出荷待機領域10bとについても、それらの幅方向(図1の左右方向)の中心部が位置するようにすることが好ましい。図1には、吊り上げ位置3aに配置される加工材99の長手方向の中心部に対して、その加工材99の長手方向に直交する方向側に、積込領域10a及び出荷待機領域10bの幅方向における中心部が位置する場合を例示している。
また、第1支持移動装置4における加工材99の移動方向は、吊り上げ位置3aに配置された加工材99の長手方向に直交する方向(直交方向)に必ずしもする必要はなく、その長手方向に交差する方向であって直交方向からずれた角度に移動方向を設定してもよい。また、加工材99の移動方向を必ずしも直線的に構成する必要はなく、上面視において、折れ線状に加工材99の移動方向(移動経路)を構成したり、曲線状の部分を移動経路の少なくとも一部分として含むように構成してもよい。
また、第1支持移動装置4は、吊り上げ位置3aに配置された加工材99の長手方向に交差する方向の側として、少なくとも一部の加工材99の長手方向に交差する方向の側に配置されればよく、一部の加工材99として、長手方向ではなく短手方向の両端側に「ほぞ」が形成された小屋束などの加工材99については、短手方向に交差する方向側に配置された第1支持移動装置4に向かって吊り上げ位置3aから移動する場合を含むものであってもよい。
2つのコンベア12,13に下側が支持されるように配置された加工材99の上には、積込装置6及び吸着部2によって、別の加工材99が横に並べられたり、積み重ねられたりする。この加工材99が複数並んで複数段に積み重ねられる態様としては、各加工材99の長手方向に沿った片側の端面の位置を揃えるようにして並べられたり、積み重ねられたりするようにしてもよく、長さの違う加工材99については、吊り上げ位置3aに配置される加工材99の長手方向における中心位置を異ならせて加工材99の長手方向に沿った片側の端面の位置を揃えるようにしてもよい。この場合には、加工材99の端面に各個体を識別する情報(所謂番付)を印字する装置を含めて加工材移動装置1を構成し、積み重なった状態の中から必要な情報が付された加工材99を容易に探し出すことができるようにすることが好ましく、制御装置9によって番付の位置が加工材99の一端側で揃うように積込装置6の積み込み動作が制御されるようにすることが好ましい。
積込装置6は、吸着部2を移動させることが可能であって、吊り上げ位置3aから集積領域10へ加工材99を移動して積み込む装置である。積込装置6は、加工材99を、複数並んだ状態とし、鉛直方向にも複数段に積み重なった状態とすることができる装置によって構成され、例えば、多数の可動部32(具体的には、可動部32a〜32f)を含む多関節ロボットによって構成されている。
積込装置6は、図2に示すように、床面に配置される基部31に対して回動動作可能に連結された複数の可動部32a〜32fを備え、基部31から最も離れて連結された先端側の可動部32fの一部分に接続される伝達部7を介して吸着部2が取り付けられている。複数の可動部32a〜32fは、複数の回動軸Ra〜Rfを中心に回動し、吸着部2の位置と姿勢とを多様な形で動作可能に構成されている。積込装置6は、制御装置9に接続され、モータ等の電気制御や油圧、空圧等の流体が通過する電磁弁の制御等によって動作する。この積込装置6を通じた吸着部2の動作によって、吊り上げ位置3aから、集積領域10(積込領域10a)に加工材99が移動され、加工材99が、吊り上げ位置3aに近い側から遠く離れた側に複数並ぶように、また、複数段に積み重なるようにして積み込まれる。
なお、積込装置6は、必ずしも多関節ロボットによって構成する必要はなく、工場の天井から吊り下げられて、天井に沿って配置されたレールによって移動可能なクレーン式の装置など、他の装置によって構成してもよい。
ここで、本実施形態においては、2つの支持移動装置4,5が設置される場合を例示している。上記した第1支持移動装置4は、吊り上げ位置3aに近い側に設けられ、第1支持移動装置4の集積領域10よりも、吊り上げ位置3aから遠く離れた別の位置に、別の集積領域20を形成する第2支持移動装置5が設けられている。第2支持移動装置5によって形成される集積領域20には、上記した第1支持移動装置4の集積領域10と同様に、積込領域20aと、出荷待機領域20bとが設けられている。積込領域20aは、積込装置6に近い側に配置されて、積込装置6によって加工材99が、吊り上げ位置3aに近い側から遠く離れた側に複数並ぶように、また、複数段に積み重なるようにして積み込まれてから、出荷待機領域20bへ移動される(図1には、加工材99d,99fと、一群の加工材98を図示)。
2つの支持移動装置4,5の積込領域10a,20aは、同一の方向側を加工材99が向くように設けられ、また、一方の積込領域10aに対して、他方の積込領域20aが、支持される加工材99の長手方向の近くに位置するようにして、設けられている。このため、一方の積込領域10aにおいて、加工材99の加工順とは異なる順序で、積み込みを行いたい場合に、他方の積込領域20aに、加工材99を一時的に仮置きできる場合には、その領域を一時的な仮置き領域として利用することで、短い距離の吸着部2の移動によって、積込領域10aに加工材99の積み込まれる順序を変更することができ、積み込み後の一群の加工材99の配列の自由度を高めることができる。
また、2つのセンサ95,96を間に挟んで、2つの支持移動装置4,5の集積領域10,20が隣り合うようにして設けられ、その2つのセンサ95,96よりも積込装置6に近い側を積込領域10a,20aとして設定し、2つのセンサ95,96よりも積込装置6から離れた側を、出荷待機領域10b,20bとしている。2つのセンサ95,96は、縦長の棒状に形成され、それらの間に作業者の身体の一部が進入した場合に、積込装置6の動作を停止させる非接触式のセンサによって構成されている。このため、2つの積込領域10a,20aに対して共通のセンサ95,96を利用し、低コストで作業者の安全性を高めることができる。
また、2つの出荷待機領域10b,20bの間部分には、作業者が入れる程度の隙間Sが設けられている。作業者は、この隙間Sに入って、2つの出荷待機領域10b,20bのいずれに対しても出荷前の梱包作業などを行うことができる。このため、2つの出荷待機領域10b,20bに対しての作業者の作業スペースを共通化し、加工材移動装置1の全体のスペースを縮小することができる。
また、2つの支持移動装置4,5の好適な制御例として、2つの支持移動装置4,5のうち、吊り上げ位置3aに近い第1支持移動装置4は、吊り上げ位置3aから遠く離れた第2支持移動装置5と比べて、吊り上げ位置3aから短い距離の移動によって一群の加工材97を形成することができる。このため、吊り上げ位置3aに近い第1支持移動装置4が優先して使用されるように、制御装置9による積込装置6の制御が行われることが好ましい。
2つの支持移動装置4,5に対して、積込装置6の基部31を中心部とした、反時計回り方向側には、仮置き領域8aを形成するための支持台8が設けられている。支持台8は、例えば、木製の平板によって上面が形成され、複数本の加工材99を床面から離間した位置に一時的に置くことが可能な形状に形成されている。制御装置9は、積込装置6の動作を制御して、吊り上げ位置3aから積込領域(例えば、積込領域10a)へ加工材99を移動する場合に、一部の加工材99を一時的に仮置き領域8aに置いておき、他の加工材99の加工を行って積込領域10aへ加工材99を積み込んだ後で、仮置き領域8aに置いておいた加工材99を積込領域10aへ移動して積み込む。これにより、吊り上げ位置3aから移動される加工材99の順序と、集積領域10へ積み込まれる加工材99の順序とを異ならせることができ、一群の加工材99として積み込みが行われた後の加工材99の配置の自由度を高めることができる。例えば、太さの異なる加工材99について、加工材99の加工順序に依存せずに、太いものが下側に位置するように優先して積み込む制御を容易に行うことができる。
制御装置9は、作業者の意図に従って加工材99が積み込まれるように加工材移動装置1の各部位を制御する装置であり、制御部90と、入力部92と、表示部91とを備えている。制御部90は、各種の演算を行う演算処理装置と、各種のプログラムや駆動制御の情報を記憶したり、プログラムの実行に必要な情報を記憶したりする記憶装置と、移送装置3、支持移動装置4,5、積込装置6、加工機などの外部機器とのデータ転送を行う入出力装置を含んで構成されている。入力部92は、作業者によって加工材99の積み込みの順番などを入力操作可能なマウスやキーボードなどの入力装置によって構成されている。表示部91は、加工材99の予定積込位置や積込状況を表示する液晶ディスプレイなどの表示装置によって構成されている。
このように、集積領域10(又は集積領域20)のうち吊り上げ位置3aに近い第1領域としての積込領域10a(又は積込領域20a)に対して、加工材99が、吊り上げ位置3aに停止して配置される長手方向に直交する第1方向に沿って複数並んだ状態で、複数段に積み重なった状態とされる。このため、複数並んで積み重なった状態とされるまでに必要な加工材99の移動距離を短くし易くして、短時間で効率良く加工材99をまとめた状態にし易くすることができる。
また、積込装置6によって複数並んで積み重なった状態とされた加工材99は、第1支持移動装置4(又は第2支持移動装置5)によって、積込領域10a(又は積込領域20a)よりも吊り上げ位置3aから離れた第2領域としての出荷待機領域10b(又は出荷待機領域20b)に、まとめて移動可能に構成されている。このため、吊り上げ位置3aに近い積込領域10a(又は積込領域20a)から出荷待機領域10b(又は出荷待機領域20b)へ加工材99を移動した後には、何も加工材が残っていない積込領域10a(又は積込領域20a)に対して、再び、加工材99を移動し、加工材99を並べたり、積み重なった状態とし始めることができる。よって、集積領域の一部である第2領域には、加工材が複数並んで積み重なった状態を維持しつつ、吊り上げ位置から集積領域への加工材の移動を開始し易くすることができる。
また、出荷待機領域10b(又は出荷待機領域20b)は、積込領域10a(又は積込領域20a)と比べて吊り上げ位置3aから離間しているので、複数並んで積み重なった状態とされた加工材99に対しての後処理は、吊り上げ位置3aと積込領域10a(又は積込領域20a)との間で吸着部2を移動させる積込装置6などから離間した位置にて実行することができる。このため、梱包のための作業スペースや、フォーク式のリフトのための移動スペースは、吊り上げ位置3aに近い位置に設定する必要を無くして作業の安全性を高め易く、出荷前の準備が容易な加工材移動装置1を提供することができる。
また、積込装置6として、集積領域10,20の中でも積込領域10a,20aにのみ加工材99を移動可能な多関節ロボットを利用し、出荷待機領域10b,20bまでは加工材99を移動できない小型の多関節ロボットを利用することができる。この場合には、積込装置6を小型に構成し易く、その分、集積領域10(又は集積領域20)を積込装置6を近付けて配置可能とするなど、より限られた領域内にて多数の加工材99を積み重なった状態に管理可能にすることができる。
また、2つの集積領域10,20は、吊り上げ位置3aに対して一方の集積領域10が設けられる第1方向(図1の上下方向)に交差する第2方向(図1の左右方向)に並ぶようにして複数設けられるので、積込手段によって吊り上げ位置に近い複数の箇所にて、加工材99が並んで積み重なった状態にまとめることができる。このため、共通の積込装置6を利用して加工材99を移動し易くして、より多くの加工材99を限られた領域内でまとめた状態に管理し易く、また、加工材99の加工の順序の自由度を上げて加工の速度を高速化し易くすることができる。
また、上面視において、吊り上げ位置3aに対して、吊り上げ位置3aに配置される加工材99の長手方向に直交する方向側に、積込領域10aと出荷待機領域10bとが位置するようにした集積領域10が設けられているので、その集積領域10への加工材99の移動は、短い距離の移動によって、短時間で済ますことができる。よって、加工材99を短時間で効率良く、複数並んで積み重なった状態にまとめることができ、且つ、限られた領域内に吊り上げ位置3aと集積領域10とを配置し易く、積込装置6の小型化もし易くすることができる。
また、吊り上げ位置3aと、積込領域10a,20a(集積領域10,20)と、仮置き領域8aとが、上面視において多関節ロボットの基部31を中心とする周方向に並んで設けられている。このため、吊り上げ位置3aと積込領域10a,20aと仮置き領域8aとの間の移動を、短い距離間の移動によって、短時間で済ますことができる。よって、加工材99を短時間で効率良く、複数並んで積み重なった状態にまとめることができ、また、必要に応じて仮置き領域8aに一時的に加工材を置いて加工の順序とは異なる順序で多数の加工材を積み重なった状態にすることができる。
次に、吊り上げ位置3aと、2つの積込領域10a,20aとの間で、吸着部2を移動するための好適な制御例について、図3を主に参照して説明する。図3は、吸着部2の移動制御を説明するための模式図であり、加工材移動装置1に設定される吊り上げ位置3aと、2つの積込領域10a,20aと、仮置き領域8aと、吸着部2が取り付けられた積込装置6とを上面視した配置位置を示すと共に、吊り上げ位置3aと、各領域8a,10a,20aに対して設定されている各領域50〜56の設定位置を示している。また、図3には、吸着部2の中心Cの位置を黒点で示し、吸着部2の中心Cが移動する経路の一例を矢印を付した線によって示している。
吸着部2は、積込装置6の可動部32が制御装置9によって制御されることで、移動経路が決定される部位であり、制御装置9には、吸着部2の移動制御として、吸着部2が上昇と下降の動作をする上下動作領域が予め設定され、その上下動作領域の範囲内で、吸着部2が上昇と下降の動作をする。
具体的には、制御装置9には、上下動作領域として、図3に示すように、吊り上げ位置3aに対応する吊り上げ動作領域50と、第1の集積領域10(第1の積込領域10a)に対応する第1積込動作領域51と、第2の集積領域20(第2の積込領域20a)に対応する第2積込動作領域52と、仮置き領域8aに対応する仮置き動作領域53とが設定(記憶)されている。上面視における各動作領域50〜53の範囲内に、吸着部2の中心Cが位置するように吸着部2が水平移動をした後、吸着部2は上昇と下降の動作をする。
ここで、吊り上げ動作領域50は、吊り上げ位置3aの長手方向(加工材99の長手方向)に沿って長く設定され、長さの短い加工材99を、長手方向に沿った異なる位置(例えば、図3において、吊り上げ位置3aの左側に寄った位置や、中心部、右端によった位置など)に停止可能としている。この吊り上げ位置3aにおける加工材99の停止位置は、積込領域10a,20aや仮置き領域8aに移動する距離が近い位置に制御装置9によって制御することが好ましく、これにより、積込領域10a,20aや仮置き領域8aに短時間で加工材99を移動することができる。また、積込領域10a,20a及び仮置き領域8aに対して設定される動作領域51〜53についても、加工材99の長手方向(図3の左右方向)において吸着部2の中心Cが異なる位置で上下に移動可能に設定され、これにより、長さの短い加工材99を加工材99の長手方向に沿って複数並べて積み込むことができる。
各動作領域50〜53は、上面視において、積込装置6を構成する多関節ロボットの基部31の周りにおいて、4箇所の離間した領域として設けられている。制御装置9は、それらの動作領域50〜53の間を往来するように、積込装置6を通じて吸着部2の位置を制御し、吸着部2を通じて加工材99を吊り上げるように上方向に移動した後に、加工材99を水平移動し、その後に、下方向に移動して加工材99を各領域8a,10a,20aに置くことが可能な位置に移動する制御を行う。
動作領域50〜53の各々の間には、多関節ロボットの基部31の周りにおいて、隣に位置する動作領域との間を接続する領域としての水平移動領域54〜56が設けられている。水平移動領域54〜56は、上面視において、1の動作領域から他の動作領域へ吸着部2が通過可能に制御装置9に予め設定された領域である。本実施形態においては、水平移動領域54〜56によって接続される隣り合う2つの動作領域によって、水平移動領域54〜56の範囲が設定され、例えば、隣り合う2つの動作領域の長さと幅とに一致する領域として制御装置9に設定(記憶)されている。制御装置9は、上面視において水平移動領域54〜56を経由するように、積込装置6を通じて吸着部2の位置を制御し、吸着部2を通じて加工材99を水平方向側に移動する制御を行う。
動作領域50〜53と、水平移動領域54〜56とで囲われる領域に対して、多関節ロボットの基部31に近い領域は、吸着部2が進入しない進入不能領域として制御装置9に予め設定(記憶)されている。ただし、第1積込動作領域51と第2積込動作領域52とにおける多関節ロボットの基部31に近い一部分の領域は、吸着部2が特別に進入してもよい特別進入可能領域として設定されている。
具体的には、第1積込動作領域51と第2積込動作領域52とにおける多関節ロボットの基部31に最も近い角部51a,52aに対して一定距離(例えば、50cmの半径で示した限界線51b、52b)の範囲内は、上面視において、吸着部2が特別に進入可能な特別進入可能領域として設定されている。吸着部2が多関節ロボットの基部31に近い位置を通過可能とすることで、1の動作領域から他の動作領域へ移動する場合の吸着部2の移動距離を短くできる場合があり、これにより、加工材99を積込領域10a,20aのいずれかに積み込む時間を短縮することができる。なお、特別進入可能領域は必ずしも設定する必要はなく、上面視において、動作領域50〜53と水平移動領域54〜56とで囲われる範囲内のみを吸着部2が移動するようにしてもよい。また、特別進入可能領域は、加工材99を吊り上げて移動中であるか否かによって進入可否を異ならせるように制御装置9によって制御してもよく、加工材99を移動していない状況に限って特別進入可能領域に吸着部2が進入可能に制御してもよい。
1の動作領域から他の動作領域へ吸着部2が移動する場合に、上面視において、多関節ロボットの基部31の周りに別の動作領域が介在する場合がある。例えば、図3に示すように、吊り上げ動作領域50から仮置き動作領域53へ吸着部2が移動する場合には、上面視で、多関節ロボットの基部31の周りに、第1積込動作領域51と、第2積込動作領域52とが介在する。このような場合には、制御装置9は、第1積込動作領域51と、第2積込動作領域52とを通過するか、又は、第1積込動作領域51及び第2積込動作領域52と、多関節ロボットの基部31との間に予め設定された特別進入可能領域を経由して吸着部2が移動する制御を行う。
具体的には、図3に示すように、吊り上げ動作領域50において加工材99を吊り上げてから、吊り上げ動作領域50から水平移動領域54を経由して第1積込動作領域51へと吸着部2を移動する。その後、第1積込動作領域51から水平移動領域55を経由して第2積込動作領域52へ吸着部2を移動し、更に、水平移動領域56を経由して仮置き動作領域53へ吸着部2を移動する。
また、仮置き動作領域53において、加工材99を仮置き領域8aに置いた後には、吊り上げ動作領域50に戻るように、吸着部2が移動する。この場合には、仮置き動作領域53から水平移動領域56を経由し、第2積込動作領域52に対応して設定した特別進入可能領域(限界線52bよりも第2積込動作領域52に近い側の領域)を通過するように吸着部2を移動する。その後、水平移動領域55を経由して、第1積込動作領域51に対応して設定した特別進入可能領域(限界線51bよりも第1積込動作領域51に近い側の領域)を通過するように吸着部2を移動し、水平移動領域54を経由して、吊り上げ動作領域50へと戻るように制御する。
このように、制御装置9による吸着部2の移動制御として、1の上下動作領域(例えば、吊り上げ動作領域50)から他の上下動作領域(例えば、仮置き動作領域53)へ吸着部2が移動する場合において、上面視で所定の中心部としての多関節ロボットの基部31の周りに別の上下動作領域(例えば、第1積込動作領域51と第2積込動作領域52)が介在する場合に、その別の上下動作領域を通過するか、又は、その別の上下動作領域と所定の中心部との間に予め設定された通過可能領域(特別進入可能領域)を経由して吸着部2を移動する。このため、1の上下動作領域から別の上下動作領域への移動と、別の上下動作領域から他の上下動作領域への移動制御の設定を利用して、1の上下動作領域から他の上下動作領域へと吸着部2を移動させることができる。
すなわち、吊り上げ動作領域50から仮置き領域8aへ直接的に移動するための経路は、制御装置9に予め設定しなくてもよいので、その分、吸着部2の移動制御に必要な設定の種類を少なく簡略化することができる。このため、短期間で吸着部2の移動制御を設定することができるし、上下動作領域の位置変更や設定数の増減に対応した移動制御の変更についても対応し易くすることができる。例えば、上下動作領域が増加した場合には、その追加した上下動作領域の隣りに位置する上下動作領域に接続するための水平移動領域のみの設定を行えばよい。
また、本実施形態のように、仮置き領域8aを設けていると、その分、上下動作領域としての仮置き動作領域53が増えて、上下動作領域の間を移動するパターンも増大する。しかしながら、仮置き領域8aの設定のために必要な水平移動制御についても、第2の集積領域20aに対応した第2積込動作領域52に対しての水平移動制御のみを設定すればよい。このため、上下動作領域の一部として仮置き領域8aを追加した場合における移動制御を短期間で設定し易くすることができる。
次に、吸着部2を利用して加工材を吊り上げて移動する状況において加工材99の揺れを好適に抑制するための構造及び制御について説明する。図4(A)は、吸着部2と伝達部7を示す正面図、図4(B)は、吸着部2と伝達部7を示す側面図、図4(C)及び図4(D)は、図4(A)のA−A線における断面視における吸着部2と伝達部7の状態を示した模式図であり、図4(C)は、変形部としての変形連結部74が変形容易状態である場合を示す模式図、図4(D)は、変形連結部74が変形困難状態である場合を示す模式図である。なお、図4(C)及び図4(D)においては、加工材99を一点鎖線で示し、吸着部2は断面視しない状態で図示している。
吸着部2は、積込装置6の先端部分に取り付けられる装置(吸着装置)の一部であり(図2参照)、伝達部7を介して積込装置6の先端側の可動部32fに取り付けられている。伝達部7の下側には、吸着部2の上面部分が固定され、伝達部7の上側には、積込装置6の可動部32fが固定されている。
伝達部7は、吸着部2に対して上方側に連続する部位を構成し、吸着部2を通じて加工材99を吊り上げる動力を伝達可能な強度を持つように、材料や太さなどを選定して構成されている。
伝達部7には、積込装置6の可動部32fに取り付けられる基部71と、基部71から下側に連続して吸着部2の上面まで連続する連結部72〜74とを備えている。連結部72〜74は、吸着部2に近い一部分を構成する下側連結部73と、吸着部2から離れた部分を構成する上側連結部72と、その上側連結部72と下側連結部73との間部分を構成する変形部としての変形連結部74とによって構成されている。
変形連結部74は、エラストマー等の弾性体によって変形可能に構成される一方、上側連結部72と下側連結部73は、金属製の丸棒状の部材によって変形不能な材料によって構成されている。上側連結部72に対して下側連結部73は、間に介在した変形連結部74により、変形連結部74を中心にして一定量の揺動が可能に構成され、また、変形連結部74の下側で水平方向側にも上下方向側にも一定範囲内で相対的に移動可能(スライド可能)に構成されている。これにより、積込装置6の可動部32fに対して、吸着部2が一定範囲内で相対角度を変化させたり、相対位置を移動させたりすることができる。
ここで、加工材99においては、許容範囲内での形状や大きさのバラツキが生じるものであり、断面形状においてのバラツキや、長手方向における加工材99の反りやねじりなどが生じる場合がある。この場合において、制御装置9の制御によって積込装置6を通じて吸着部2の位置と角度を制御しても、加工材99の表面との角度や位置に対して僅かなバラツキが生じる可能性があり、加工材99の表面に沿って吸着部2がぴたりと密着しない場合が生じてしまうと加工材99をしっかりと吸着できずに加工材99を落下させてしまう可能性がある。
これに対して、吸着部2と積込装置6の可動部32fとの間には、変形連結部74が設けられており、吸着部2が加工材99の上面に接触するように、積込装置6の可動部32fが下降して、吸着部2が加工材99の上面に接触し、その後、更に積込装置6の可動部32fが下降すると、可動部32fの下降する力と加工材99の上面から吸着部2が受ける反力とによって変形連結部74が変形し、吸着部2の角度や位置が加工材99の上面に沿った形に近づく。このため、吸着部2を通じて加工材99を吊り上げるための吸引パッドの吸引力を加工材99の上面に伝達し易くすることができ、吸着部2を通じて加工材99を吊り上げられた状態にし易く、落下する可能性などの問題の発生を抑制することができる。
なお、積込装置6の可動部32fと吸着部2とは、必ずしも変形連結部74(変形部)を中心とした上側(上側連結部72)と下側(下側連結部73)の相対角度と、変形部を基準として水平方向側と上下方向側における相対位置を異ならせるように変形部を変形可能にする必要はなく、それら相対角度並びに水平方向側及び上下方向側の相対位置のうち少なくともいずれか1つを異ならせるようにして構成するようにしてもよく、吸引パッドによって加工材99を吊り上げる場合には、少なくとも相対角度を異ならせることが可能な変形部を設けることが好ましい。この変形部としては、弾性体を利用した変形部としてもよいし、ボール形状とカップ形状とを組み合わせたボールジョイントや、軸と軸穴とを組み合わせたジョイントなど、他の構造によって変形部を構成してもよい。
連結部72〜74は、図4(A)及び図4(B)に示すように、吸着部2の長手方向に沿って離間した位置に、それぞれ設けられている。吸着部2は、加工材99に対応した大きさに設定され、例えば、住宅に用いられる柱材や横架材を吊り上げる吸着部2としては、長手方向の長さが略500mm、短手方向の幅が略100mmの大きさの吸着部2が設定されている。吸着部2の大きさは、加工材99として移送が必要な多数の加工材99における吸着部2が接触する面の大きさよりも長さも幅も小型に設定されることが好ましく、これにより、積込領域10a,20aへの積み込みをし易くすることができる。
すなわち、制御装置9は、吸着部2の長手方向が加工材99の長手方向に沿うようにして加工材99の上面に接触するように吸着部2の位置を制御して加工材99を吊り上げ、他の加工材99に並ぶように積込領域10a,20aの決められた位置に移動することがある。この場合に、吸着部2が、加工材99の上面より小さく構成されることで、移動中の加工材99の隣や近くに位置する加工材99に吸着部2が接触しないようにすることができる。このため、加工材99を隙間無く複数並んで積み重なった状態とすることができて好ましい。なお、吸着部2の上側に位置する伝達部7についても、積み込み時に他の加工材99と接触しないように、吸着部2の上方側において吸着部2の大きさの範囲内に収まるように構成することが好ましい。
ここで、加工材99の一例として、住宅の柱材では、正方形状の断面形状で一辺の長さが105mm又は120mm、長手方向の全長が2000mmから3000mm程度の大きさのものが用いられる。このため、吸着部2を支持する連結部72〜74としては、加工材99の長手方向に離間するように複数設けることが好ましく、これにより、加工材99を移動する場合において、加工材99の長手方向の中心部を中心にして両端部分が上下に移動するような揺れ(図4(A)の方向視における吸着部2の時計回り方向及び反時計回り方向の揺れ)の発生を効率よく抑制することができる。
一方、加工材99の短手方向の幅として、105mm又は120mmと短く設定されるような加工材99を主に積み込む場合、連結部72〜74として、加工材99の短手方向に離間するように複数設けたとしても、その距離が短い分、加工材99の揺れを抑制することが難しい。また、吸着部2の大きさの範囲を超えて連結部72〜74を離間して設けてしまうと、積み込みの自由度が制限されてしまうという問題も生じてしまう。このため、本実施形態において、連結部72〜74は、加工材99の長手方向から視認した場合(図4(B)の方向視)において、1つのみが位置するように設けられている。従って、加工材99を移動する場合において、加工材99の上側に位置する変形連結部74を中心にして加工材99が左右に揺動したり、左右に移動したりするような揺れ(図4(B)の方向視における吸着部2の左右方向へ移動する揺れ)が発生し得る構成となっている。
この変形連結部74を中心にした加工材99の揺動および移動を抑制するための機構として、吸着部2と、伝達部7の基部71との間には、変形連結部74を変形可能とする変形容易状態と、変形不能とする変形困難状態とを切り替えるための変形状態切替機構が設けられている。具体的には、図4(A)及び図4(B)に示すように、吸着部2の上面には、板状の被接触部76を構成する金属部品が取り付けられ、また、伝達部7の基部71の下面には、取付部材75を介して被接触部76に接触可能な可動片78が設けられたロック装置77が取り付けられている。
ロック装置77は、制御装置9の制御によって可動片78を被接触部76に押し付けた状態と、被接触部76から可動片78が離間した状態とを切り替え可能な装置であり、電気式のソレノイドや空圧や油圧シリンダによって構成されている。図4(C)に示すように、ロック装置77の動作によって可動片78が被接触部76に接触していない状態(変形容易状態)では、伝達部7の基部71と、吸着部2との相対位置関係は固定されてなく、これにより、変形連結部74の変形が許容される。
一方、図4(D)に示すように、可動片78が被接触部76に接触して被接触部76の移動を制限した状態(変形困難状態)とすると、可動片78が取り付けられる伝達部7の基部71と、被接触部76が取り付けられる吸着部2との相対位置関係が固定され、変形連結部74の変形が不能となる。
加工材99の移動中又は移動途中における停止中において、制御装置9がロック装置77を制御して可動片78が被接触部76に接触した変形困難状態にする。これにより、変形連結部74が変形して生じる加工材99の揺れが抑えられる。このため、加工材99の揺れが抑えられた状態で加工材99を移動することができるので、加工材99が吸着部2から外れて移動途中で落下してしまう事態を回避し易くするなど加工材99を好適に移動することができる。
また、被接触部76は、図4(A)及び図4(D)に示すように、吸着部2の長手方向の中心部分であって幅方向における両端側の端部から上方側に突出する位置にて可動片78と接触する位置に設けられている。このため、2つの連結部72〜74が設けられた間部分において、加工材99の長手方向に交差する短手方向に移動したり、加工材99の長手方向に沿った方向を軸にして回動するような加工材99の揺れを抑制することができ、加工材99の移動や揺れをバランスよく抑えることができる。
また、被接触部76は、変形連結部74よりも上方側にて可動片78に接触可能に設けられている。このため、伝達部7の大きさを小型にしつつ、変形連結部74を中心にして生じる揺れを、変形連結部74から離れた位置を基準にして効率良く抑制することができる。また、変形連結部74は、被接触部76における可動片78との接触部分と比べて加工材99に近い下方に配置されることとなり、変形連結部74の変形に起因して生じる加工材99の揺れ幅についても、加工材99の近くに変形連結部74が配置される分、小さく抑え易くすることができる。
また、図4(C)には、吸着部2の幅方向における中心Cに対して、加工材99の中心Cが左側にずれた状態を例示している。この場合には、吸着部2が上昇すると、図4(D)に示すように、加工材99の自重によって変形連結部74が変形し、伝達部7における中心部に対して、鉛直下方側に、加工材99の重心が位置するように吸着部2が斜めに傾斜し、その傾斜した状態となってから可動片78が被接触部76に接触した変形困難状態とすることができる。これにより、吸着部2が水平方向側に移動して加工材99を水平方向側に移動する場合において、加工材99の重心位置を、伝達部7における中心部に対して鉛直下側に近付くように位置させて安定した状態にすることができ、加工材99の揺れをバランスよく抑えることができる。
ここで、図5を参照して、移送装置3の吊り上げ位置3aから第1支持移動装置4の積込領域10aへ、加工材99の一例としての移動加工材99iを移動する場合についての好適な制御例について説明する。図5(A)は、移動加工材99iの積み込み制御を説明するための模式図、図5(B)は、移動加工材99iの積み込み制御を示すタイミングチャートである。なお、図5(A)には、吸着部2が移動する過程における吸着部2の下面と移動加工材99iとが接触する中心Cの位置(図4参照)を黒点で示している。
まず、図5(A)に示すように、吊り上げ位置3aに配置された移動加工材99iの上面の高さ位置HSに向かって、吸着部2(吸着パッド2a)が接触可能な位置まで移動するように、制御装置9が積込装置6を制御する。この吸着部2の移動の際には、移動の対象となっている移動加工材99iの設計値を利用して、吸着部2の位置を制御してもよいが、移動加工材99iの実際の寸法(実寸法)に基づいて、吸着部2の移動する位置を制御装置9によって決定することが、より好ましい。移動加工材99iの実寸法は、切削加工が行われる加工機や移送装置3に、移動加工材99iの実寸法をレーザー光等により測定可能な測定器を設けて測定する構成とし、その測定データを制御装置9に入力して吸着部2の位置の制御に利用するようにしてもよい。移動加工材99iの長手方向の長さや短手方向の幅として、実寸法を基準にして、吸着部2が移動加工材99iに接触する位置を決定することで、より重心に近い位置が吸着部2の中心Cの真下に位置し易くして安定した状態で吊り上げて移動することができ、また、積込領域10aに先に移動が完了している別の加工材99hに対して、移動加工材99iを隙間無く近付けて整列した状態とすることができる。
吊り上げ位置3aに配置された移動加工材99iの上面に吸着部2が接触する前から接触するときまで、吸着部2の吸着駆動は停止されて非吸着状態に設定され、ロック装置77は停止されて変形容易状態となっている。図5(B)のタイミングチャートの左端の開始の状態は、吊り上げ位置3aに配置された移動加工材99iの上面に吸着部2が接触し、吸着パッド2aが圧縮された状態(吸着開始状態)を示している。
吸着開始状態となると、図5(B)に示すように、吸着部2に対して吸着駆動の制御が行われる(時間ta)。この吸着駆動の制御によって吸着部2に移動加工材99iの上面が吸着されて、移動加工材99iを吊り上げ可能な状態(吊り上げ可能状態)となる。
吊り上げ可能状態となった後には、吸着部2が上昇を開始するように、制御装置9が積込装置6を制御して上昇駆動を開始する(時間tb)。この制御装置9による吸着部2の上昇の制御(上移動制御)は、移動加工材99iの上面が、水平移動動作が行われるように予め設定した高さ位置HMに到達するタイミング(時間td)まで行われる。
この吸着部2が上昇する過程においては、ロック装置77が停止した変形容易状態となっており、移動加工材99iの自重によって伝達部7の中心部の下側に移動加工材99iの重心が位置するように変形連結部74(図4参照)が変形する。上移動制御による上昇移動の停止位置に近い終端部(例えば、停止位置の下側50mmの位置)の高さ位置HLに吸着部2が到達すると(時間tc)、ロック装置77が作動して変形連結部74を変形不能にした変形困難状態となる。
ここで、上移動制御による上昇移動の開始時点や上昇開始の直後に変形容易状態から変形困難状態へ切り替えてもよいが、この場合には、移動加工材99iの重心に対して伝達部7の中心部の下側に移動加工材99iの重心が位置する前の不安定な状態であったり、揺れの大きい状態である可能性が高いため、上昇移動の少なくとも後半において切り替えの設定が行われることが好ましく、停止位置に近い終了間際とすることが好適である。また、上移動制御による上昇移動の終了時点には、減速や停止の切り替わりによって移動加工材99iが不安定になって揺れが発生する可能性があるため、上昇移動の終了よりも前に変形困難状態への切り替えが行われることが好ましい。また、上移動制御において、高速の状態から低速にして上昇させる制御をしてもよく、この場合に高速の状態よりも低速となってから変形困難状態への切り替えが行われることが好ましい。
また、上移動制御による上昇移動は、必ずしも鉛直上方への移動とする必要はなく、斜め上方向に移動するようにしてもよいが、移動加工材99iの自重を利用して揺れの少ない安定した状態にしてから変形困難状態へ切り替えるためには、鉛直上方へ移動させることが好ましい。このように、移動加工材99iを自重によって安定した状態にしてから変形困難状態と切り替えることで、その切り替え後における移動加工材99iの落下等の問題を生じ難くすることができ、移動加工材99iの移動速度を高めに設定して多数の加工材99を短時間で積込領域10aへ移動可能とすることができる。
上移動制御の後には、吸着部2が水平移動を開始するように、制御装置9が積込装置6を制御して水平駆動を開始する(時間te)。この制御装置9による吸着部2の水平移動の制御(水平移動制御)は、移動加工材99iの移動方向先端側の端面が、移動後に隣りに位置することとなる別の加工材99hよりも一定距離(例えば、50mm)離れた手前に設定された下降位置に到達するタイミング(時間tf)となるまで行われる(図5(A)参照)。
移動加工材99iが下降位置に到達すると、吸着部2が下降を開始するように、制御装置9が積込装置6を制御して下降駆動を開始する(時間tg)。この制御装置9による吸着部2の下降の制御(下移動制御)は、移動加工材99iの上面が、積込領域10aに予定されている高さ位置HEよりも一定距離高く設定された高さ位置HUに到達するタイミング(時間th)まで行われる。下移動制御が終了した時点では、ロック装置77は駆動した変形困難状態となっており、その移動終了後には、別の加工材99hの隣りに、移動加工材99iを近付けて載置する並置制御が制御装置9によって行われる。
並置制御は、まず、移動加工材99iが別の加工材99hに近付くように水平方向側への移動を開始し(時間ti)、その移動開始の後にロック装置77を停止して変形容易状態とする(時間tj)。そして、変形容易状態とした後にも水平方向側への移動を継続し、別の加工材99hの隣りに近接する位置まで移動加工材99iを移動してから水平方向側への移動を停止する(時間tk)。
並置制御による移動加工材99iの水平方向への移動後、移動加工材99iを高さ位置HEまで下降し(時間tl〜時間tm)、吸着駆動を停止する(時間tn)。この吸着駆動の停止によって並置制御が終了する。この並置制御の終了により、移動加工材99iは、積込領域10aに予定された積込位置(予定積込位置)に載置されて積み込まれた状態となり、1つの加工材99の積み込みが完了する。
ここで、並置制御においては、移動加工材99iと、既に移動を終えた別の加工材99hとの高さが上下方向において一定の高さ範囲HDで重なるように制御が行われる。そして、この並置制御において、移動加工材99iと、別の加工材99hとが近づいたタイミングでは、ロック装置77を停止して変形容易状態へ切り替わっているように設定し、これにより、移動加工材99iが、別の加工材99hに接触する状況が生じても、変形連結部74の変形によって移動加工材99iが別の加工材99hを押して動かしてしまう状況の発生を抑制している。従って、制御装置9の制御において、移動加工材99iと、別の加工材99hとを、近付けた位置に配置する設定にしても、それにより問題が生じる可能性を低減し、加工材99が複数並んで積み重なった状態とするまでの時間を短縮しつつ、隙間が少なく整列した状態とし易くすることができる。
なお、下移動制御の後に必ずしもロック装置77を停止して変形容易状態へ切り替わるようにする必要はなく、下移動制御による鉛直下方への移動の過程においてロック装置77を停止して変形容易状態へ切り替わるようにしてもよい。また、下移動制御の後に必ずしも並置制御を行う必要はなく、下移動制御による鉛直下方への移動の過程において変形困難状態から変形容易状態への切り替えの設定を行い、その設定後に、更に鉛直下方への移動を行って移動加工材99iを予定積込位置に載置するようにしてもよい。また、下移動制御においても、上移動制御と同様、下降移動の前や下降移動の開始直後に変形困難状態から変形容易状態への切り替えの設定を行ってもよいが、下降移動の少なくとも後半において変形容易状態への切り替えの設定が行われることが好ましく、下降停止位置に近い終了間際で変形容易状態へ切り替えることが好適である。また、下移動制御において、高速の状態から低速にして下降させる制御をしてもよく、この場合に高速の状態よりも低速となってから変形容易状態への切り替えが行われることが好ましく、また、必ずしも鉛直下方への移動とする必要はなく斜め下方向に移動するようにしてもよいが、鉛直下方へ移動することが好ましい。
このように、加工材99を移動する場合には、変形状態切替手段を構成するロック装置77を停止した状態とし、変形部としての変形連結部74が変形可能な変形容易状態にして吸着部2を加工材99に接触させる。このため、加工材99の形状や大きさにばらつきが生じた状況であっても、変形連結部74の変形によって吸着部2と加工材99の接触部分との相対的な位置関係を適正な形に近付けて、吸着部2を通じて加工材を吊り上げられた状態にし易くすることができる。
また、加工材99の移動中においては、ロック装置77を作動させて変形困難状態とすることで、変形連結部74が変形して生じる加工材99の揺れが抑えられる。このため、加工材99の揺れが抑えられた状態で加工材99を移動することができるので、加工材99が移動途中で落下してしまう事態を回避し易くするなど加工材99を好適に移動することができる。
また、変形切替接触部としての被接触部76が、変形連結部74よりも上方側にてロック装置77の可動片78に接触可能に設けられているので、伝達部7の大きさを小型にしつつ、変形連結部74を中心にして生じる揺れを変形連結部74から離れた位置を基準にして効率良く抑制することができる。また、変形連結部74は、被接触部76とロック装置77の可動片78とが接触する部分と比べて加工材99に近い下方に配置されることとなり、変形連結部74の変形に起因して生じる加工材99の揺れ幅についても、加工材99の近くに変形連結部74が配置される分、小さく抑え易くすることができる。
また、加工材99を吊り上げるように、上方移動制御手段としての制御装置9の上移動制御によって吸着部2が上方側へ移動する過程において、ロック装置77を作動させて変形容易状態から変形困難状態へ切り替えられる。このため、加工材99の自重によって変形連結部74が下側に引っ張られて加工材99の揺れが少なく抑えられる期間を設定し易くして、加工材99の揺れが少ない状況で変形困難状態に切り替え易くすることができる。
また、吸着部2の上方側への移動後において変形困難状態を維持し、変形困難状態のままで上方水平移動制御手段としての制御装置9の水平移動制御によって吸着部2が水平方向側へ移動するように、第1切替制御手段としての制御装置9によるロック装置77の制御(図5の時間tc〜tjの制御)が行われる。このため、上方側から水平方向側への移動方向の切り替わりの際には、既に変形困難状態が維持されたままとなるので、移動方向の変更時にも加工材99が揺れ難く、その分、加工材99の移動を高速に設定し易くするなど、加工材99を好適に移動可能とすることができる。
次に、2つの積込領域10a,20aに積み込まれた後の一群の加工材99の態様に相当する各加工材99の予定積込位置を設定するための好適な制御例について、図6を参照して説明する。図6(A)は、表示部91における積込モード選択の表示例を示す模式図、図6(B)は、表示部91における予定積込位置の表示例を示す模式図、図6(C)は、表示部91における積込状況の表示例を示す模式図である。
加工材移動装置1によって、積込領域10a,20aに積み込まれた後の一群の加工材99の態様は、作業者によって容易に設定できることが好ましく、制御装置9には、CADのデータから取得する各加工材99の情報に基づいて、積込領域10a,20aに積み込まれた後の一群の加工材99の態様の候補を表示し、いずれかの態様を作業者が選択して、その選択された態様で加工材99を積込領域10a,20aに積み込むプログラムが記憶されている。
この制御装置9による制御の例として、図6(A)に示すように、積込領域10a,20aに積み込みが開始される前において、積込モードを選択する画面を表示部91に表示し、作業者が入力部92(図2参照)を通じていずれかのモードを選択可能とする。制御装置9に対しては、加工機やCADのデータから加工材99の情報を入力することで、加工材99の太さや長さ、加工順序、現場での組立順に基づいて、積込領域10a,20aに積み込まれた後の一群の加工材99の態様を複数種類に分けて、作業者が選択可能に表示部91に表示する。
表示部91には、図6(A)に示すように、積込後の一群の加工材99の複数種類の態様に対応した4つのモード選択タブT11〜T14が表示されている。各モード選択タブT11〜T14には、一群の加工材99の態様として、並びの基準として優先した内容を表示することが好ましく、例えば、「細材優先モード」、「太材優先モード」、「加工順優先モード」、「組立順優先モード」と文字で表示をし、また、模式図で表示をして、太さを優先して積み込みが行われるか、加工順を優先するか、組立順を優先するかなどを、作業者に容易に認識可能なように表示される。
ここで、表示部91に表示される、一群の加工材99の態様としての、並びの基準として優先した内容(モード)は、少なくとも1つ以上設定されていればよく、上記した4つのモードとは別のモードが追加されていてもよい。例えば、並びの基準として、積込領域10a,20aに積み込まれる加工材99を予め設定した別の基準(例えば、用途としての柱材や羽柄材などの種類基準)に基づいて予定積込位置が設定されるモードを設けてもよい。また、積込領域10a,20aに積み込まれる一群の加工材99を予め設定した基準によって分類した場合の数に基づいて予定積込位置が設定されるモードを設けてもよく、例えば、太さの基準によって分類した場合に数の多少がある場合に、数の多い方を下側に位置するように積み込むモードを設けてもよい。また、必ずしも積込領域10a,20aに対して毎回モードを選択するように構成する必要はなく、作業者が選択したいずれかのモードが、予め定めたモード変更時期(例えば、作業者による変更操作が実行されるタイミングや、1つの現場での積み込みが完了するタイミングなど)まで継続されるように制御してもよい。また、作業者がモードの選択を不要とする設定を設けてもよく、そのモードの選択を不要とする入力操作が作業者によって行われる場合には、制御装置9に記憶された複数のモードのうちで予め優先するように設定されたいずれかのモードが作業者の選択操作なしで選択されるようにしてもよい。
また、表示部91には、複数の積込領域10a,20aのうち、いずれの積込領域に対して、いずれの優先モードを選択するかが操作可能に、3つの領域選択タブT1〜T3が表示される。作業者には、第1の積込領域10aを選択する領域選択タブT1と、第2の積込領域20aを選択する領域選択タブT2とをそれぞれ操作した後に優先モードを選択操作することで、複数の積込領域10a,20aに対して別々の優先モードを選択可能とする。また、同一の優先モードを複数の積込領域10a,20aに一括設定可能な共通領域選択タブT3を操作した後に優先モードを選択操作することで、複数の積込領域10a,20aに対して別々の優先モードを選択可能とする。
作業者が入力部92を操作し、積込後の一群の加工材99の態様についての優先モードが選択された後には、図6(B)に示すように、優先モードとして選択された加工材99の配列としての予定積込位置が、作業者に示される。また、予定積込位置を表示している状況において、作業者によって配置変更を可能とするための配置変更タブT21が表示され、作業者の意図する細かな配列と合致するように、一部の加工材99の位置を変更可能としたり、前の優先モード選択の画面に戻ることが可能に、制御装置9による制御が行われる。作業者の意図する加工材99の配列となった場合には、積込開始タブT22を作業者が選択することで、加工材移動装置1による積込領域10a,20aへの加工材99の積み込みが開始される。なお、図6(B)及び図6(C)には、加工材99の配列を、アルファベットと文字の組合せで表示し、具体的には、加工材99の太さに応じて「A」と、「B」の異なるアルファベットを先頭に付し、一方の第1の積込領域10aにおける下側の、吊り上げ位置3aから遠い位置に積み込まれる側で下側から順に数字を付し、その後に、第2の積込領域20aにおける下側の、吊り上げ位置3aから遠い位置に積み込まれる側から順に数字を付しているが、これに限らず、他の文字や数字を付すようにしてもよい。
積込領域10a,20aへの加工材99の積み込みが開始された後には、図6(C)に示すように、積込状況として、現在進行している加工材99が積込領域10a,20aに移動された状況が、積込後の一群の加工材99の態様の中での一部分に分かり易く、例えば、色を変えたり、枠線の太さを変えて表示される。また、加工材99は、必ずしも積込領域10aの下側に積み込まれるものから順に加工されるものでなく、図6(C)の状態では、「B14」に積み込まれる加工材99が早い段階で加工されて仮置き領域8aに一時的に置かれている状態を示している。このような状態において、加工材99のうち、積込領域10a,20aとは別の仮置き領域8aに一時的に置かれている加工材99も表示部91に表示され、作業者は、表示部91を視認して複数の積込領域10a,20aと仮置き領域8aとに加工材99が置かれている状況を認識することができる。
このように、制御装置9に対して、積込領域10a,20aに積み込まれた後の一群の加工材99の態様に相当する各加工材99の予定積込位置を設定可能に構成するプログラムを設けることにより、作業者は、わざわざ積込後の一群の加工材99の態様を設定する必要がなくなり、または、そのモード選択の後において一部の加工材99の位置変更をするだけで態様の設定をすることができ、作業の簡略化を図ることができる。また、その設定された一群の加工材99の態様と、進捗状況とを表示部91に表示することで、作業者が、表示部91を視認するだけで、複数の積込領域10a,20aや、仮置き領域8aに置かれている加工材99の状況を一目で容易に認識することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよく、この場合に、以下に記載する各構成を上記実施形態に対して適用してもよく、以下に記載する複数の構成を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
上記実施形態においては、加工材移動装置1において、集積領域10,20に積込領域10a,20aと出荷待機領域10b,20bとが設けられる構成について説明したが、集積領域10,20の全体を積込領域10a,20aとしてもよく、この場合には、支持移動装置4,5に代えて、単に、加工材99を移動不能に支持可能な支持台によって集積領域(積込領域)を構成してもよい。
また、上記実施形態においては、1つの吊り上げ位置3aと、1つの仮置き領域8aと、2つの集積領域10,20とが設けられる構成について説明したが、これに限らず、吊り上げ位置を2箇所以上に設けてもよく、また、仮置き領域を2箇所以上に設けてもいいし又は省略してもよく、集積領域を1つにしてもよいし又は3箇所以上に設けるようにしてもよい。なお、吊り上げ位置、仮置き領域、集積領域のいずれかを増やす場合には、積込装置6の一部である所定の中心部の周りに配置するようにすることが好ましい。
また、上記実施形態においては、2つの集積領域10,20と、仮置き領域8aとのそれぞれが離れて設けられる構成について説明したが、2つの集積領域が隣り合って連続して設けられたり、集積領域と仮置き領域とを隣り合わせで設けるようにするなど、必ずしも各領域を離間させて設ける必要はない。
また、上記実施形態においては、集積領域10,20は、吊り上げ位置3aに配置された加工材99の長手方向に交差する方向に位置するように配置する場合について説明したが、長手方向に沿った側に集積領域を設けるなど、他の位置に集積領域を設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、吊り上げ位置3aから、積込領域10a,20aへの加工材99の移動の際に、制御装置9によって、上面視で加工材99の向きを変えずに移動制御する場合について説明したが、移動の際に、上面視で加工材99が向きを変えるように、例えば、加工材99を上昇させた後に一定角度回動させてから集積領域10,20へ向かうように移動制御をしてもよい。すなわち、吊り上げ位置3aにおける加工材99の向きと、積込領域10a,20aに積み込まれた加工材99の向きとが異なるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、所定の中心部の周りに別の上下動作領域が介在する状況で吸着部2を移動する場合に、その別の上下動作領域を通過するか、又は、その別の上下動作領域と所定の中心部との間に予め設定された通過可能領域(特別進入可能領域)を経由して吸着部2が移動する場合について説明したが、これに限らず、1の上下移動領域と他の全ての上下移動領域とに対して、それぞれ移動経路を設定し、各上下移動領域への移動に対して、開発者が設定した最適の移動経路を経由して吸着部2が移動するように制御装置9の制御を設定してもよい。
また、上記実施形態においては、吸着部2と、積込装置6の先端側の可動部32fとの間に変形部(変形連結部74)が設けられる場合について説明したが、必ずしも上記した変形部を設ける必要はなく、例えば、上下方向において変形可能な変形部と、水平方向側に移動または揺動可能な変形部とを別々の位置に設けてもよいし、それら変形部のうち片方のみを設けてもよく、または、変形部を省略してもよい。
また、上記実施形態においては、変形部の変形容易状態と変形困難状態との切り替えを制御装置9によるロック装置77の動作によって実行するように構成したが、これに限らず、他の構成を採用してもよい。例えば、制御装置9の制御を不要に変形容易状態と変形困難状態とが切り替わるようにしてもよく、例えば、上下方向に移動可能な伝達部7の軸部分として、下側にいくほど外径が大きくなる軸部分を設ける一方、吸着部2の上側に、その軸部分を囲う筒状の部位と軸部分の太い部分に嵌まる軸穴と設け、吸着部2が上昇した場合には、軸部分と軸穴との間に隙間ができて水平方向側の吸着部2の移動や揺動を許容し、吸着部2が上昇して加工材99を吊り上げた後には、軸部分の外径が大きな部分に軸穴が嵌まって吸着部2の移動や揺動が制限されるようにしてもよい。
なお、上記した実施形態から抽出可能な発明として、以下のように加工材移動装置を構成してもよい。
切削加工が行われた加工材の一部分に接触して、その加工材を吊り上げられた状態とすることが可能に前記加工材に接触する接触部と、
前記加工材を移送する移送経路の少なくとも一部を構成し、前記接触部が接触可能な吊り上げ位置にて前記加工材の下側を支持する加工材移送手段と、
上面視において、前記吊り上げ位置から離間した位置であって当該吊り上げ位置における前記加工材の長手方向に交差する第1方向側に設けられる所定の集積領域にて複数本の加工材の下側を支持可能な集積支持手段と、
前記接触部を移動させることが可能であって、前記吊り上げ位置から離間した所定の集積領域に、前記加工材を、前記第1方向に沿って複数並んだ状態とし、鉛直方向にも複数段に積み重なった状態とする積込手段と、
その積込手段によって前記吊り上げ位置から前記所定の集積領域へ前記加工材を移動する場合において、前記吊り上げ位置から移動される前記加工材の順序と、前記所定の集積領域へ積み込まれる前記加工材の順序とを異ならせることが可能に、前記加工材の一部を一時的に置くことが可能な所定の仮置き領域にて複数本の加工材の下側を支持可能な仮置き材支持手段とを備え、
上面視において、前記吊り上げ位置と、前記所定の集積領域と、前記所定の仮置き領域とが、所定の方向に、順に設けられていることを特徴とする加工材移動装置。
また、請求項2に記載の加工材移動装置は、前記接触部が上方側へ移動する制御を行う上方移動制御手段と、その上方移動制御手段による上方側への移動後に前記接触部が水平方向側へ移動する制御を行う上方水平移動制御手段と、前記上方移動制御手段と前記上方水平移動制御手段とによって前記接触部が移動する場合に、前記変形状態切替手段による前記変形容易状態と前記変形困難状態とを切り替える制御を行う第1切替制御手段と、前記接触部と一体的に設けられる部位であって、前記変形容易状態において前記変形状態切替手段の一部から離間し、前記変形困難状態において前記変形状態切替手段の一部に接触する変形切替接触部とを備え、前記第1切替制御手段は、前記加工材に前記接触部が接触する前において前記変形容易状態とし、前記接触部が前記加工材に接触して前記加工材を吊り上げるように前記上方移動制御手段によって前記接触部が上方側へ移動する過程において、前記変形容易状態から前記変形困難状態へ切り替え、その接触部の上方側への移動後において前記変形困難状態を維持し、当該変形困難状態のままで前記上方水平移動制御手段によって前記接触部が水平方向側へ移動するように、制御するものであり、前記変形切替接触部は、前記変形部よりも上方側にて前記変形状態切替手段の一部に接触可能に設けられていることを特徴とする。