JP2018148855A - 齲蝕細菌検出用dnaチップ - Google Patents
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Abstract
Description
齲蝕は、原因細菌としてStreptococcus mutans、Streptococcus sobrinus、及び、乳酸桿菌が知られており、これら原因細菌が糖類を代謝することにより乳酸を産生し、この結果、口内環境が酸性になり、エナメル質の脱灰が起こることが知られている。
原因細菌の存在量に加え、口腔内に存在する総連鎖球菌の菌数に対するStreptococcus mutansの比率が、指標となることが報告されている。すなわち、総連鎖球菌の菌数に対するStreptococcus mutansの比率が高いと、齲蝕になり易い(例えば、非特許文献1〜3参照)。
しかしながら、Streptococcus mutansと乳酸桿菌とは培養条件が異なるため、別々に実施する必要があり、作業効率よく同時に測定できる手法はなかった。また、それらの培養法では、測定までに数日が必要であり、判定結果が得られるまでの時間が長いという問題があった。
(a)検出の対象となる1種又は2種以上の口腔内細菌のそれぞれに特異的な16SrRNAにハイブリダイズする核酸からなるプローブであって、下記(i)〜(iii)のいずれかの配列である、プローブ
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
(b)総量指標プローブ
(c)1種類又は複数種類の絶対量指標プローブ
(a)検出の対象となる1種又は2種以上の口腔内細菌のそれぞれに特異的な16SrRNAにハイブリダイズする核酸からなるプローブであって、下記(i)〜(iii)のいずれかの配列である、プローブ
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
(b)総量指標プローブ
(c)1種類又は複数種類の絶対量指標プローブ
具体的には、本発明によれば、乳酸桿菌(Lactobacilli)と、Streptococcus sobrinusと、総連鎖球菌(Streptococci)の各細菌の細菌数を、当該各細菌に特異的なDNA配列に対応するプローブを搭載したDNAチップを用いることにより、同時に且つ短時間で算出することができる。
(a)検出の対象となる1種又は2種以上の口腔内細菌のそれぞれに特異的な16SrRNAにハイブリダイズする核酸からなるプローブであって、下記(i)〜(iii)のいずれかの配列である、プローブ
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
(b)総量指標プローブ
(c)1種類又は複数種類の絶対量指標プローブ
1.プローブ(プローブセット) 前述したプローブ(a)と、プローブ(b)及び/又はプローブ(c)とは、齲蝕細菌検出用のプローブセットとして用いることができる。
以下、これら各プローブについて説明する。
検出の対象となる口腔内細菌は、乳酸桿菌(Lactobacilli)と、Streptococcus sobrinusと、総連鎖球菌(Streptococci)の内の少なくとも1種、好ましくは2種以上である。
プローブ(a)は、口腔内細菌に由来する核酸の塩基配列のうちの特定の領域中の塩基配列とハイブリダイズすることができるものである。ここで、当該核酸は、染色体DNAであることが好ましい。
本発明の検出目的となる前記口腔内細菌が有する核酸の塩基配列は、当該塩基配列そのものでなくてもよく、例えば、塩基配列の一部が欠失、置換、挿入等により変異が生じたものであってもよい。
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
総量指標プローブは、特定のプライマー対で増幅できた検体の中のすべての細菌を捕捉する目的のプローブである。細菌を検出する上では、検出対象細菌が、非検出対象細菌を含む全体の細菌の中でどの程度の割合であるのか、また、そもそも検体中にどれくらいの量の細菌が存在しているのかといった観点から細菌の総量を検出することもきわめて重要となる。
細菌の総量を検出するためには、例えば、DNAチップによる測定とは別に、独立に細菌の総量を測定することも可能であるが、DNAチップ中に細菌の総量の指標となるプローブを搭載しておくことにより操作・測定の簡便性が向上する。プローブについては、プライマー対によって増幅される塩基配列の中から、多種類の菌種に共通な塩基配列を使用してもよい。そのような配列が見つからない場合は、比較的共通な配列を複数設計し、それらを総合的に判断することで総量指標プローブとしてもよい。総量指標プローブは、好ましくは、検体に含まれる細菌に由来する核酸にハイブリダイズするプローブ、詳しくは、前記特定のプライマー対により増幅される塩基配列のうちの、検出対象となる複数種類の細菌が共通に有する塩基配列を含むプローブである。
絶対量指標プローブは、絶対量指標の核酸にのみハイブリダイズするプローブである。
本明細書において、絶対量指標とは、増幅反応やハイブリダイゼーション反応の前に、検体中に一定量添加する核酸である。絶対量指標は、通常の増幅反応を行えば増幅反応が確実に行われる核酸であり、いわゆる陽性コントロールとしての役割を果たす。
一方で、増幅後に電気泳動等で増幅鎖長を確認する場合においては、検出対象細菌とは異なる長さの増幅産物となるように設計した上で、絶対量指標由来の増幅産物を検出対象細菌のバンドとは異なる位置で検出し、ハイブリダイゼーションの前に増幅反応の成否を確認することも可能である。
特定のプライマーとは、増幅対象配列が限定されるという意味であり、プライマー対は必ずしも1対である必要はない。必要に応じて2対以上のプライマー対を用いるマルチプレックス手法も適用できる。プライマー対の例を、表3に示す。絶対量指標用プライマー対(配列番号39、40)や、細菌増幅用プライマー対(配列番号41、42)を利用することが可能である。
本発明のDNAチップは、前記1.項で説明した各種プローブが支持体となる基盤に複数配置(搭載)されたものである。
(ii)前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程
(iii)プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を前記ブロック体の各中空繊維の中空部に導入して重合反応を行い、プローブを含むゲル状物を中空部に保持させる工程
(iv)中空繊維の長手方向と交差する方向で切断して、ブロック体を薄片化する工程
中空繊維は、その長手方向の長さが同一となるように3次元に配列される(工程(i))。配列方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特開平11−108928号公報参照)や、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ね合わせ、それらの孔部に中空繊維を通過させ、その後2枚の多孔板の間隔を開いて仮固定し、2枚の多孔板間における中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させて硬化させる方法(特開2001−133453号公報参照)などが挙げられる。
包埋された配列体には、各中空繊維の中空部に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液(ゲル形成溶液)を充填し、中空部内で重合反応を行う(工程(iii))。これにより、各中空繊維の中空部に、プローブが固定されたゲル状物を保持させることができる。
前記した繊維型DNAチップとしては、例えば、三菱レイヨン社製DNAチップ(Genopal TM)等が好ましく挙げられる。
DNAチップに配置されるプローブの種類の数は、1つのDNAチップに500種類以下、好ましくは250種類以下、さらに好ましくは100種類以下が好ましい。このように配置されたプローブ数(種類)をある程度制限することにより、目的の口腔内細菌をより高感度で検出することが可能となる。なお、プローブの種類は塩基配列によって区別される。従って、通常、同じ遺伝子に由来のプローブであっても塩基配列が1個でも異なれば別の種類として特定する。
口腔内細菌数を測定する方法は、例えば、下記の工程を含む方法である。
(I)採取した口腔内試料を検体とし、検体中に含まれる細菌の核酸を抽出する工程
(II)抽出した核酸を、前述した本発明のDNAチップ(又は本発明のプローブ)に接触させる工程
(III)上記接触後のDNAチップ(又はプローブ)から得られた蛍光強度に基づいて細菌数を算出する工程
(1)工程(I)について
本工程では、採取した口腔内試料(口腔内の細菌(細菌群))を検体とし、検体中に含まれる細菌の核酸を抽出する。検体の採取は、例えば、所望の被験者又は被験生物から行うことができる。採取する口腔内試料の種類は、特には限定されないが、例えば、唾液、プラーク(歯肉縁下プラーク、歯肉縁上プラーク)、舌苔、口腔洗浄液等を使用することができる。
採取した試料を輸送する場合は、採取した試料を密閉容器に入れて凍結させ輸送する方法や、ケース付き綿棒を用いて綿棒で試料を採取しケースに収納して輸送する方法が好ましい。
検体から得られた核酸は、そのままDNAチップ等に接触させてもよいし、PCR等により所望の塩基配列領域を増幅し、その増幅断片をDNAチップ等に接触させてもよく、限定はされない。増幅する所望の部位としては、具体的には、例えば、前記口腔内細菌の染色体DNA中のリボソームRNA (16S rRNA)遺伝子であることが好ましい。当該領域の増幅に用い得るPCRプライマーとしては、例えば、表3の配列番号41、42が好ましく挙げられる。なお、PCR法による核酸の増幅は、定法に従って行うことができる。
本工程では、工程(I)で得た核酸又はその増幅断片を、本発明に用いるプローブ又はDNAチップに接触させるが、具体的には、当該核酸等を含むハイブリダイゼーション溶液を調製し、当該溶液中の核酸等を、DNAチップに搭載されたプローブに結合(ハイブリダイズ)させる。ハイブリダイゼーション溶液は、SDSやSSC等の緩衝液を用いて、定法に従い、適宜調製することができる。
ハイブリダイゼーション反応は、ハイブリダイゼーション溶液中の核酸等が、DNAチップに搭載されたプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るよう、反応条件(緩衝液の種類、pH、温度等)を適宜設定して行うことができる。
本工程では、前記工程(I)及び(II)の手順を経て、DNAチップ(又はプローブ)から得られた蛍光強度に基づいて、検出対象菌種の細菌の細菌数を算出する。例えば、検出対象細菌を検出するためのプローブの蛍光強度とバックグラウンドの蛍光強度からSN比として示す方法がある。または、あらかじめ細菌ごとに細菌の染色体DNAの濃度を変えて複数条件にて検出し、各濃度条件で得られる蛍光強度を元に、細菌ごとに染色体DNA濃度を算出する換算係数(検量線)を取得しておき、それぞれの条件で得られた蛍光強度から染色体DNAの濃度を算出する方法などが好ましい。
<測定対象>
ATCCより購入した、各種細菌由来ゲノムDNA100pgを測定する検体とし、実施例1で設計・作製した細菌特異的プローブの性能を評価した。
細菌由来ゲノムDNAの16SrRNAの検出対象領域の配列を増幅するために、以下の反応液組成及び反応条件でPCRを実施した。PCR用キットは、Premix Ex TaqTM Hot Start Version(Takara社製)を用い、ProFlex(Applied Biosystems社製)により、増幅反応を実施した。プライマーは、以下に示すプライマー条件とした。なお、フォワードプライマーは5’末端がCy5で標識化されているものを用いて、増幅産物の末端を標識した。
フォワードプライマー
5’Cy5−TACGGGAGGCAGCAG−3’(配列番号41)
リバースプライマー
5’−CRGGGTATCTAATCCYGTT−3’ (配列番号42)
2×Premix Ex Taq(登録商標)
Hot Start Version 10μL
4μMフォワードプライマー(細菌増幅用)(配列番号41) 1μL
4μMリバースプライマー(細菌増幅用)(配列番号42) 1μL
4μMフォワードプライマー(絶対量指標増幅用)(配列番号39) 1μL
4μMリバースプライマー(絶対量指標増幅用)(配列番号40) 1μL
20pg検体由来DNA 5μL
1pg絶対量指標 1μL
合計 20μL
95℃で1分間加熱後、「解離:98℃(10sec)→アニーリング:50℃(30sec)→合成:72℃(20sec)」を1サイクルとして計40サイクル行い、4℃で冷却し、増幅産物を得た。
貫通孔型のDNAチップを、特開2007−74950号公報(メチル化DNA及び/又は非メチル化DNAの検出方法)の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造した。
ただし、搭載させたプローブは、表1の配列番号1〜7、23に示す配列情報をもつプローブを用いた。
以下のように各溶液を混合し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。
1M Tris−HCl 48μL
1M NaCl 48μL
0.5% Tween20 20μL
水 64μL
合計 200μL
ハイブリダイゼーション後、下記の条件でDNAチップを洗浄した。0.24M Tris・HCl/0.24M NaCl/0.05% Tween−20溶液1000μLで220秒の洗浄を12回繰り返し、続いて、0.24M Tris・HCl/0.24M NaCl1000μLで220秒の洗浄を4回繰り返した。
洗浄終了後に、各チップを室温の0.24M Tris・HCl/0.24M NaCl混合溶液に移した。
前記洗浄後、ジェノパールリーダー(型式:GR-S1、三菱レイヨン社製)を用い、下記条件でDNAチップの各スポットの蛍光強度を測定した。
中心励起波長 :633nm
露光時間 :0.1、1、4、40秒
検出対象細菌用プローブを搭載したスポットの蛍光強度から、バックグラウンド値(プローブを搭載していないスポットの蛍光強度の中央値)を減算し、ハイブリダイゼーションに由来する蛍光強度を算出した。その結果、表4に示すとおり、いずれの細菌由来ゲノムDNAにおいても陽性コントロールの役割でもある総量指標のプローブの蛍光強度が認められ、反応の妥当性が確認できた。さらに、本発明の各細菌プローブにおいて、目的の細菌のみ蛍光強度が得られた。以上の結果より、本発明のプローブはいずれも特異性の高いプローブであることが示された。
<DNAの調製>
成人健常者5名の協力により、唾液評価試験を実施した。この5名の被験者をA、B、C、D、Eとし、唾液を評価した。
唾液採取は、γコレクトスワブRI(栄研化学)を1分間口に含み唾液を採取する方法とした。γコレクトスワブRIをチューブ中の水に浸漬し室温で5分静置し、細菌成分を溶出させた。その後、γコレクトスワブRIを取り出し、チューブを遠心分離機にかけた。得られたペレットに対し、DNeasy Blood&Tissue Kit(QIAGEN)を用いてDNAを抽出した。
DNA解析のためのPCR、検出条件は実施例2と同様の条件にて実施した。ただし、DNAチップに搭載させたプローブは、表1の配列番号1、4、6、7、8、23に示す配列情報をもつプローブを用いた。
検出対象細菌用プローブを搭載したスポットの蛍光強度から、バックグラウンド値(プローブを搭載していないスポットの蛍光強度の中央値)を減算し、ハイブリダイゼーションに由来す蛍光強度を算出した。
さらに、実施例2のように、濃度既知の細菌DNAを複数評価することにより、検量線を作成し、蛍光強度を唾液1ml中の細菌数へ換算した。その結果、表5に示すとおり、目的の細菌5種類の存在量及び総連鎖球菌(Streptococci)の菌数に対するStreptococcus mutansの比率を算出することが出来た。
Claims (3)
- 下記プローブ(a)と、下記プローブ(b)及び(c)のうち少なくとも一方のプローブとを搭載したDNAチップ。
(a)検出の対象となる1種又は2種以上の口腔内細菌のそれぞれに特異的な16SrRNAにハイブリダイズする核酸からなるプローブであって、下記(i)〜(iii)のいずれかの配列である、プローブ
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
(b)総量指標プローブ
(c)1種類又は複数種類の絶対量指標プローブ - DNAチップの形態が繊維型DNAチップである、請求項1に記載のDNAチップ。
- 下記プローブ(a)と、下記プローブ(b)及び(c)のうち少なくとも一方のプローブとを含む、齲蝕細菌検出用プローブセット。
(a)検出の対象となる1種又は2種以上の口腔内細菌のそれぞれに特異的な16SrRNAにハイブリダイズする核酸からなるプローブであって、下記(i)〜(iii)のいずれかの配列である、プローブ
(i)配列番号2〜7に示される塩基配列から選ばれる少なくとも1つの配列
(ii)前記(i)の配列の相補配列
(iii)前記(i)又は(ii)の配列と実質的に同一の配列
(b)総量指標プローブ
(c)1種類又は複数種類の絶対量指標プローブ
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