JP2018044554A - 車両の電動制動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 摩擦パッドの摩耗量が正確に決定され、適切な時期に、確実に摩耗報知が行われ得るものを提供する。【解決手段】 電動制動装置は、制動操作部材の操作に応じて、車輪に固定されたブレーキディスクを2つの摩擦パッドによって挟み込み、電気モータによって2つの摩擦パッドのうちの1つを押圧して、車輪に制動力を発生する。電動制動装置は、電気モータの回転角を検出する回転角センサと、電気モータを制御するコントローラと、を備える。コントローラは、回転角に基づいて2つの摩擦パッドの摩耗量の合計である全摩耗量を決定し、全摩耗量に基づいて2つの摩擦パッドのうちで少なくとも摩耗量が大きい方の第1摩耗量を推定する。例えば、コントローラは、全摩耗量が増加するに従って、第1摩耗量と全摩耗量の半分との差が増加するように、第1摩耗量を推定する。【選択図】 図3

Description

本発明は、車両の電動制動装置に関する。
特許文献1には、「ディスクに傷をつけたり耳障りな騒音を発生させたりコストを増大させたりすることなくパッドの摩耗量の検出が可能であるとともに、パッドの偏摩耗量の検出も可能な電動ブレーキ装置を提供する」ことを目的に、「モータ33と、該モータ33の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部34と、ピストン40のストローク位置を検出する位置検出手段57と、該位置検出手段57の検出結果に基づいてモータ33を制御する制御手段とを有し、ピストン40による直線運動でパッド14,15をディスク13に押圧させて制動力を発生させるものであって、制御手段は、位置検出手段57の検出結果に基づいてパッド14,15の摩耗状態を検出する」ことが記載されている。
特許文献1に記載の装置においては、ブレーキピストンPSNの位置が検出され、この検出結果に基づいて摩擦パッド(ブレーキパッドともいう)の摩耗量が演算される。ここで、ブレーキピストンPSNの位置は、インナ側(車両の横方向における内側)の摩擦パッドMSI、アウタ側(車両の横方向における外側)の摩擦パッドMSO、及び、ブレーキディスクKTの摩耗量の合計として検出される。ブレーキディスクKTの摩耗は、インナ側、アウタ側摩擦パッドMSI、MSOに比較して十分小さいため、ピストン押圧方向の位置検出結果の変化は、摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量の合計として推定され得る。しかし、インナ側摩擦パッドMSIの摩耗量と、アウタ側摩擦パッドMSOの摩耗量とが、不均一となる場合が生じ得る。
ディスク型ブレーキ装置において、インナ側、アウタ側の摩擦パッドMSI、MSOの摩耗は、制動によって生じる他に、非制動中の引き摺りによっても発生する。ここで、「引き摺り」とは、車両の走行中(非制動時)に摩擦パッドMSI、MSOとブレーキディスクKTとが僅かに接触して、擦れ合っている状態である。制動時には、インナ側摩擦パッドMSI、及び、アウタ側摩擦パッドMSOに対する押圧力は、作用・反作用の関係でバランスしている。このため、制動によって発生する摩耗は、インナ側とアウタ側とで概ね均等である。しかし、引き摺りに起因する摩耗(「引き摺り摩耗」という)は、インナ側とアウタ側とでは接触状態(即ち、引き摺り状態)が異なるため、均等には成り難い。即ち、制動操作部材BPが操作されていない状態であっても、軽度に制動トルク(「引き摺りトルク」という)が発生され、摩擦パッドMSI、MSOの摩耗が増長され得る。
特に、電動制動装置において、浮動型キャリパ(フローティングキャリパともいう)が採用される場合には、インナ側に配置されたピストンPSNは、電気モータMTRによって、ブレーキディスクKTから離れるように引き戻すことが可能である。このため、インナ側摩擦パッドMSIの引き摺りトルクは、略「0」にされ得る。しかし、アウタ側摩擦パッドMSOには、ディスクKTからアウタ側パッドMSOを引き離す機構が存在しない。従って、インナ側パッドMSIとアウタ側パッドMSOとの引き摺りトルクには、大きな差が生じ得る。
このことについて、図7の特性図を参照して説明する。図7は、制動操作部材BPの操作回数(制動回数)Nbpとインナ側、アウタ側パッドMSI、MSOの摩耗量との関係を示した特性図である。制動回数Nbpが少ない場合(例えば、「Nbp≦nb1」の場合)、摩耗量における引き摺り摩耗の影響は少なく、インナ側、アウタ側摩耗量mi1、mo1は、略等しい(mi1=mo1)。ピストンPSNの位置情報から演算される摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)がインナ側、アウタ側摩耗量mi1、mo1に相当する。しかし、制動回数Nbpが増加するに従って、アウタ側摩耗量が増大していく。例えば、「Nbp=nb2」の場合には、「mi2>mi2」となり、各摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量は、単純に、「Mpd/2」では求められ得ない。従って、引き摺り摩耗が考慮され、より正確に摩耗報知が行われるものが切望されている。
特開平11−280799号公報
本発明の目的は、摩擦パッドの摩耗量が正確に決定され、適切な時期に、確実に摩耗報知が行われ得るものを提供することである。
本発明に係る車両の電動制動装置は、車両の制動操作部材(BP)の操作に応じて、前記車両の車輪(WH)に固定されたブレーキディスク(KT)を2つの摩擦パッド(MSI、MSO)によって挟み込み、電気モータ(MTR)によって前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)のうちの1つ(MSI)を押圧して、前記車輪(WH)に制動力を発生する。車両の電動制動装置は、前記電気モータ(MTR)の回転角(Mka)を検出する回転角センサ(MKA)と、前記電気モータ(MTR)を制御するコントローラ(CTL)と、を備える。
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記コントローラ(CTL)は、前記回転角(Mka)に基づいて前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)の摩耗量の合計である全摩耗量(Mpd)を決定し、全摩耗量(Mpd)に基づいて前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)のうちで少なくとも摩耗量が大きい方の第1摩耗量(Mpl)を推定する。また、前記コントローラ(CTL)は、「前記全摩耗量(Mpd)、前記車両の走行距離(Lsk)、及び、前記制動操作部材(BP)の操作回数(Nbp)のうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、前記第1摩耗量(Mpl)と前記全摩耗量(Mpd)の半分(Mpd/2)との差が増加するように、前記第1摩耗量(Mpl)を推定する。さらに、前記コントローラ(CTL)は、「前記全摩耗量(Mpd)、前記車両の走行距離(Lsk)、及び、前記制動操作部材(BP)の操作回数(Nbp)のうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、「1」から増加する第1摩耗係数(Kpl)を演算し、前記第1摩耗量(Mpl)を前記全摩耗量(Mpd)の半分(Mpd/2)に前記第1摩耗係数(Kpl)を乗じて推定する。
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記コントローラ(CTL)は、前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)が新品である場合に設定された基準位置(Prf)、及び、前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)が前記ブレーキディスク(KT)に接触する接触位置(Pcn)に基づいて、前記全摩耗量(Mpd)を演算する。
上記構成によれば、引き摺り摩耗に起因する摩耗量が考慮され、摩擦パッドMSの摩耗量が、精度良く演算される。結果、摩擦パッドMSの残量があるにもかかわらず、摩耗報知が行われること、或いは、摩擦パッドMSが摩耗しているにもかかわらず、摩耗報知が行われないことが回避され、適切なタイミングにて、摩耗報知が行われ得る。
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記コントローラ(CTL)は、前記回転角(Mka)に基づいて前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)の摩耗量の合計である全摩耗量(Mpd)を決定し、前記全摩耗量(Mpd)に基づいて、「前記車両の走行距離(Lsk)、及び、前記制動操作部材(BP)の操作回数(Nbp)のうちの少なくとも1つ」に対して前記全摩耗量(Mpd)が相対的に小さい場合には、「前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)のうちのアウタ側パッド(MSO)の摩耗量(Mpo)」を「前記2つの摩擦パッド(MSI、MSO)のうちのインナ側パッド(MSI)の摩耗量(Mpi)」よりも大きく推定し、「前記車両の走行距離(Lsk)、及び、前記制動操作部材(BP)の操作回数(Nbp)のうちの少なくとも1つ」に対して前記全摩耗量(Mpd)が相対的に大きい場合には、前記インナ側パッド(MSI)の摩耗量(Mpi)を前記アウタ側パッド(MSO)の摩耗量(Mpo)よりも大きく推定する。
引き摺り摩耗は、制動負荷(特に、制動に起因する熱負荷)の影響を受ける。通常の弱い制動操作の頻度が高い場合(制動負荷が低い場合)には、引き摺り摩耗は、アウタ側パッドMSOで生じ易く、インナ側パッドMSIでは生じ難い。一方、キャリパCPのインナ側は、アウタ側に比較して冷却され難く、高温になる蓋然性が高い。このため、強い制動操作の頻度が高い場合(制動負荷が高い場合)には、制動による摩耗量がインナ側で大きくなり易い。また、ブレーキディスクKTの熱変形に起因して、引き摺り摩耗が、インナ側パッドMSIで生じ易く、アウタ側パッドMSOでは生じ難い。
上記構成によれば、制動負荷が考慮され、通常摩耗時と高負荷摩耗時とで異なる演算特性が採用され、インナ側パッドMSIの摩耗量Mpiと、アウタ側パッドMSOの摩耗量Mpoが、別個に推定される。このため、摩擦パッドMSの摩耗量の推定精度が向上され、正確な摩耗報知が行われ得る。
本発明に係る車両の電動制動装置DDSの実施形態を説明するための全体構成図である。 車輪側コントローラECWを説明するための機能ブロック図である。 摩耗量演算ブロックPMMの第1の処理例を説明するためのフロー図である。 全摩擦量Mpdを説明するための概略図である。 基準位置Prfの設定方法の例を説明するための概略図である。 摩耗量演算ブロックPMMの第2の処理例を説明するためのフロー図である。 インナ側、アウタ側の摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量の差異を説明するための特性図である。
<本発明に係る車両の電動制動装置の第1実施形態>
図1の全体構成図を参照して、車両の電動制動装置DDSの実施形態について説明する。以下の説明で、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。従って、重複説明は、省略されることがある。
電動制動装置DDSを備える車両には、制動操作部材BP、操作量センサBPA、車体側コントローラECU、制動アクチュエータBRK、通信線SGL、及び、報知装置(インジケータ)INDが備えられる。さらに、車両の各車輪WHには、ブレーキキャリパCP、ブレーキディスクKT、及び、摩擦パッドMSが備えられている。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、ブレーキディスクKTが固定される。ブレーキディスク(単に、ディスクともいう)KTを挟み込むようにブレーキキャリパCPが配置される。そして、ブレーキキャリパ(単に、キャリパともいう)CPでは、2つの摩擦パッド(ブレーキパッドであり、単に、パッドともいう)MSI、MSOが、電気モータMTRの動力によってディスクKTに押し付けられる。ディスクKTと車輪WHとは、一体となって回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(制動力)が発生される。キャリパCPとして、浮動型キャリパが採用される。
2つの摩擦パッドにおいては、ディスクKTに対して、車輪WHに近い側がアウタ側摩擦パッドMSOであり、車輪WHから遠い側がインナ側摩擦パッドMSIである。即ち、車両の横方向において、車両進行方向の中心軸に対して、外側がアウタ側パッドMSO、内側がインナ側パッドMSIである。インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOが、総称して、「摩擦パッドMS」と表記される。
制動操作部材(ブレーキペダル)BPには、制動操作量センサBPAが設けられる。制動操作量センサBPAによって、運転者による制動操作部材BPの操作量(制動操作量)Bpaが取得(検出)される。制動操作量センサBPAとして、マスタシリンダの圧力を検出するセンサ(圧力センサ)、制動操作部材BPの操作力を検出するセンサ(踏力センサ)、及び、制動操作部材BPの操作変位を検出するセンサ(ストロークセンサ)のうちで、少なくとも1つが採用される。従って、制動操作量Bpaは、マスタシリンダ圧力、ブレーキペダル踏力、及び、ブレーキペダルストロークのうちの少なくとも何れか1つに基づいて演算される。制動操作量Bpaは、車体側コントローラECUに入力される。
≪車体側コントローラECU≫
車両の車体には、車体側コントローラ(車体側電子制御ユニットともいう)ECUが設けられる。車体側コントローラECUはプロセッサを含む電気回路を備え、車体に固定される。車体側コントローラECUは、目標押圧力演算ブロックFPT、及び、車体側通信部CMUにて構成される。目標押圧力演算ブロックFPT、及び、車体側通信部CMUは、制御アルゴリズムであり、車体側コントローラECUのプロセッサにプログラムされている。ここで、車体側コントローラECUは、コントローラCTLの一部に相当する。
目標押圧力演算ブロックFPTでは、制動操作量Bpaに基づいて、目標押圧力(目標値)Fptが演算される。ここで、目標押圧力Fptは、ブレーキパッドMSがブレーキディスクKTを押す力(押圧力)の目標値である。目標押圧力Fptは、制動操作量Bpa、及び、予め設定された演算特性(演算マップ)CFptに基づいて演算される。
演算特性CFptにおいて、目標押圧力Fptは、操作量Bpaがゼロから値bp0までの範囲では、「0(ゼロ)」に演算され、操作量Bpaが値bp0を越えると、操作量Bpaの増加にしたがって単調増加するように演算される。ここで、値bp0は、制動操作部材BPの「遊び(構成部品間で自由に動ける)」に相当する、予め設定された所定値であり、「遊び値」と称呼される。
目標押圧力演算ブロックFPTにて演算された目標押圧力Fptは、通信部CMUに対して出力される。車体側通信部CMUは、通信線SGLに接続され、車輪側コントローラECWの車輪側通信部CMUとデータ信号の授受(受送信)を行う。以上、車体側コントローラECUについて説明した。
≪制動アクチュエータBRK≫
次に、制動アクチュエータBRKについて説明する。制動アクチュエータ(単に、アクチュエータともいう)BRKは、車輪と一体となって回転するディスクKTに、パッドMSを押し付ける。このときに生じる摩擦力によって、アクチュエータBRKは、車輪に制動トルクを与え、制動力を発生させ、走行中の車両を減速する。アクチュエータBRKとして、所謂、浮動型ディスクの構成が例示されている。
アクチュエータBRKは、ブレーキキャリパCP、押圧ピストンPSN、電気モータMTR、回転角センサMKA、減速機GSK、入力シャフトSFI、出力シャフトSFO、ねじ部材NJB、押圧力センサFPA、及び、車輪側コントローラECWにて構成される。
ブレーキキャリパ(単に、キャリパともいう)CPとして、浮動型キャリパが採用され得る。キャリパCPは、2つのブレーキパッド(単に、パッドともいう)MSI、MSOを介して、ブレーキディスク(単に、ディスクともいう)KTを挟み込むように構成される。キャリパCPの内部にて、押圧ピストン(ブレーキピストンであり、単に、ピストンともいう)PSNが、ディスクKTに対して移動(前進、又は、後退)される。
ピストンPSNの移動によって、摩擦パッドMSがディスクKTに押し付けられて摩擦力が発生する。ピストンPSNの移動は、電気モータMTRの動力によって行われる。具体的には、電気モータMTRの出力(軸まわりの回転力)が、入力シャフトSFIから出力される。電気モータMTRの動力は、減速機GSKを介して、入力シャフトSFIから出力シャフトSFOに伝達される。そして、出力シャフトSFOの回転動力(トルク)が、ねじ部材NJBによって、直線動力(ピストンPSNの軸方向の推力)に変換され、ピストンPSNに伝達される。その結果、ピストンPSNが、ディスクKTに対して移動される。ピストンPSNの移動によって、摩擦パッドMSが、ディスクKTを押す力(押圧力)が調整される。ディスクKTは車輪に固定されているので、摩擦パッドMSとディスクKTとの間に摩擦力が発生し、車輪の制動力が調整される。
電気モータMTRは、ピストンPSNを駆動(移動)するための動力源である。例えば、電気モータMTRとして、ブラシ付モータ、又は、ブレシレスモータが採用され得る。電気モータMTRの回転方向において、正転方向が、摩擦パッドMSがブレーキディスクKTに近づいていく方向(押圧力が増加し、制動トルクが増加する方向)に相当し、逆転方向が、摩擦パッドMSがディスクKTから離れていく方向(押圧力が減少し、制動トルクが減少する方向)に相当する。
ここで、ピストンPSNの移動方向において、前進方向が、電気モータMTRの正転方向であり、押圧力Fpaが増加する方向に対応する。また、ピストンPSNの後退方向が、電気モータMTRの逆転方向であり、押圧力Fpaが減少する方向に対応する。
回転角センサMKAによって、電気モータMTRのロータ(回転子)の位置(例えば、回転角)Mkaが検出される。検出された回転角Mkaは、車輪側コントローラECWに入力される。
押圧力センサFPAによって、ピストンPSNが摩擦パッドMSを押す力(押圧力)Fpaが検出される。検出された実際の押圧力(実押圧力)Fpaは、車輪側コントローラECWに入力される。例えば、押圧力センサFPAは、出力シャフトSFOとキャリパCPとの間に設けられる。
車輪側コントローラ(車輪側電子制御ユニットともいう)ECWは、電気モータMTRを駆動する電気回路である。車輪側コントローラECWによって、目標押圧力Fptに基づいて、電気モータMTRが駆動され、その出力が制御される。ここで、目標押圧力Fptは、通信線(信号線ともいう)SGLを介して、車体側コントローラECUから車輪側コントローラECWに伝達される。車輪側コントローラECWは、キャリパCPの内部に配置(固定)される。車輪側コントローラECWは、コントローラCTLの一部である。従って、コントローラCTLは、車体側コントローラECU、及び、車輪側コントローラECWにて構成されている。
車輪側コントローラECWは、通信部CMU、演算部ENZ、及び、駆動部DRVにて構成される。車輪側通信部CMUは、通信線SGLに接続され、車体側コントローラECUの車体側通信部CMUとデータ信号の授受を行う。
演算部ENZでは、電気モータMTRを駆動するためのスイッチング素子SW1〜SW4を制御する駆動信号Sw1〜Sw4が演算される。駆動部(駆動回路)DRVは、スイッチング素子SW1〜SW4で構成されるブリッジ回路BRGとして構成される。ブリッジ回路BRGでは、駆動信号Sw1〜Sw4に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW4の通電状態が切り替えられる。この切り替えによって、電気モータMTRが回転駆動され、その出力が調整される。以上、制動アクチュエータBRKについて説明した。
通信線SGLは、車体側コントローラECUと車輪側コントローラECWとの間の通信手段である。通信線SGLによって、車体側コントローラECUと車輪側コントローラECWとの間でデータ信号の伝達(受送信)が行われる。通信線SGLとして、シリアル通信バスが採用される。シリアル通信バスは、1つの通信経路内で、直列的に1ビットずつデータ送信される通信方法である。例えば、シリアル通信バスとして、CANバスが採用される。
報知装置(インジケータ)INDによって、摩耗報知信号Smpに基づいて、摩擦パッドMSの摩耗状態が運転者に報知される。具体的には、インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOのうちの何れか一方の摩耗量Mplが、所定摩耗mpx以上になった場合に、車輪側コントローラECWから摩耗報知信号Smpが受信され、インジケータINDによって、運転者に対して、音、光等にて報知が行われる。ここで、所定摩耗mpxは、摩耗報知のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。また、摩擦パッドMSの第1、第2摩耗量Mpl、Mpsが、逐次受信され、推定値として、インジケータ(表示装置)INDによって表示され得る(例えば、デジタル表示)。
<車輪側コントローラECW>
図2の機能ブロック図を参照して、車輪側コントローラECWについて説明する。ここで、車輪側コントローラECWは、コントローラCTLの一部に相当する。即ち、コントローラCTLは、車体側コントローラECU、及び、車輪側コントローラECWにて構成される。
車輪側コントローラECWは、車体側コントローラECUから受信された目標押圧力Fptに基づいて、電気モータMTRへの通電状態(最終的には電流の大きさと方向)を調整し、電気モータMTRの出力と回転方向を制御する。車輪側コントローラECWは、通信部CMU、演算部ENZ、及び、駆動部(駆動回路)DRVで構成される。
車輪側通信部CMUは、通信線SGLを介して、車体側コントローラECUの車体側通信部CMUと接続される。ここで、通信線SGLとして、シリアル通信バス(例えば、CAN通信)が採用される。通信線SGLを介して、目標押圧力Fptが、車体側コントローラECUから車輪側コントローラECWに送信(伝達)される。また、また、車体側、車輪側通信部CMUでは、受送信されるデータ信号(Fpt等)の誤り検出が行われる。
演算部ENZは、制御アルゴリズムであり、車輪側コントローラECW内のプロセッサにプログラムされる。演算部ENZは、指示通電量演算ブロックIST、押圧力フィードバック制御ブロックFFB、目標通電量演算ブロックIMT、パルス幅変調ブロックPWM、スイッチング制御ブロックSWT、及び、摩耗量演算ブロックPMMにて構成される。
指示通電量演算ブロックISTでは、前輪、後輪目標押圧力Fpt、及び、予め設定された演算特性(演算マップ)CIsa、CIsbに基づいて、指示通電量Istが演算される。指示通電量Istは、目標押圧力Fptが達成されるための、電気モータMTRへの通電量の目標値である。指示通電量Istの演算マップは、制動アクチュエータBRKのヒステリシスを考慮して、2つの演算特性CIsa、CIsbにて構成されている。
通電量とは、電気モータMTRの出力トルクを制御するための状態量(変数)である。電気モータMTRは電流に概ね比例するトルクを出力するため、通電量の目標値として電気モータMTRの電流目標値が用いられ得る。また、電気モータMTRへの供給電圧を増加すれば、結果として電流が増加されるため、目標通電量として供給電圧値が用いられ得る。さらに、パルス幅変調におけるデューティ比によって供給電圧値が調整され得るため、このデューティ比が通電量として用いられ得る。
押圧力フィードバック制御ブロックFFBでは、目標押圧力(目標値)Fpt、及び、実押圧力(実際値)Fpaに基づいて、補償通電量Ifpが演算される。具体的には、先ず、目標押圧力Fptと実押圧力Fpaとの偏差(押圧力偏差)eFpが演算される。補償通電量演算ブロックIFPにて、押圧力偏差eFpに基づくPID制御によって、補償通電量Ifpが演算される。指示通電量Istは目標押圧力Fptに相当する値として演算されるが、制動アクチュエータBRKの効率変動により目標押圧力Fptと実押圧力(検出値)Fpaとの間に誤差が生じる場合がある。そこで、この誤差を減少するように、補償通電量Ifpが決定される。即ち、押圧力の実際値Fpa(押圧力センサFPAの検出値)が、押圧力の目標値Fptに一致するように制御される。
目標通電量演算ブロックIMTでは、電気モータMTRへの最終的な目標値である目標通電量Imtが演算される。目標通電量演算ブロックIMTでは、指示通電量Istが補償通電量Ifpによって調整され、目標通電量Imtが演算される。具体的には、指示通電量Istに対して、補償通電量Ifpが加えられて、目標通電量Imtが演算される。
目標通電量Imtの符号(値の正負)に基づいて電気モータMTRの回転方向が決定され、目標通電量Imtの大きさに基づいて電気モータMTRの出力(回転動力)が制御される。具体的には、目標通電量Imtの符号が正符号である場合(Imt>0)には、電気モータMTRが正転方向(押圧力の増加方向)に駆動され、目標通電量Imtの符号が負符号である場合(Imt<0)には、電気モータMTRが逆転方向(押圧力の減少方向)に駆動される。また、目標通電量Imtの絶対値が大きいほど電気モータMTRの出力トルクが大きくなるように制御され、目標通電量Imtの絶対値が小さいほど出力トルクが小さくなるように制御される。
パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imtに基づいて、パルス幅変調を行うための指示値(目標値)が演算される。具体的には、パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imt、及び、予め設定される特性(演算マップ)に基づいて、パルス幅のデューティ比Dut(周期的なパルス波において、その周期に対するオン状態のパルス幅の割合)が決定される。併せて、パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imtの符号(正符号、或いは、負符号)に基づいて、電気モータMTRの回転方向が決定される。例えば、電気モータMTRの回転方向は、正転方向が正(プラス)の値、逆転方向が負(マイナス)の値として設定される。入力電圧(電源電圧)、及び、デューティ比Dutによって最終的な出力電圧が決まるため、パルス幅変調ブロックPWMでは、電気モータMTRの回転方向と、電気モータMTRへの通電量(即ち、電気モータMTRの出力)が決定される。
さらに、パルス幅変調ブロックPWMでは、所謂、電流フィードバック制御が実行される。この場合、通電量センサIMAの検出値(例えば、実際の電流値)Imaが、パルス幅変調ブロックPWMに入力される。そして、目標通電量Imtと、実際の通電量(電流センサIMAの検出値)Imaとの偏差eImに基づいて、偏差eImが「0」に近づくように、デューティ比Dutが修正(微調整)される。この電流フィードバック制御によって、高精度なモータ制御が達成され得る。
スイッチング制御ブロックSWTは、デューティ比(目標値)Dutに基づいて、ブリッジ回路BRGを構成するスイッチング素子SW1〜SW4に駆動信号Sw1〜Sw4を出力する。駆動信号Sw1〜Sw4によって、各スイッチング素子が、「通電状態とされるか、或いは、非通電状態とされるか」が指示される。デューティ比Dutが大きいほど、単位時間当りの通電時間が長くされ、より大きな電流が電気モータMTRに流される。
駆動部DRVは、電気モータMTRを駆動するための電気回路である。駆動回路DRVは、ブリッジ回路BRG、及び、通電量センサ(電流センサ)IMAにて構成される。図2は、電気モータMTRとして、ブラシ付モータ(単に、ブラシモータともいう)が採用される場合の駆動回路DRVの例である。
ブリッジ回路BRGは、双方向の電源を必要とすることなく、単一の電源で電気モータMTRへの通電方向が変更され、電気モータMTRの回転方向(正転方向、又は、逆転方向)が制御され得る回路である。ブリッジ回路BRGは、スイッチング素子SW1〜SW4によって構成される。スイッチング素子SW1〜SW4は、電気回路の一部をオン(通電)/オフ(非通電)できる素子である。スイッチング素子SW1〜SW4は、演算部ENZからの駆動信号Sw1〜Sw4によって駆動される。夫々のスイッチング素子の通電/非通電の状態が切り替えられることによって、電気モータMTRの回転方向と出力トルクとが調整される。例えば、スイッチング素子SW1〜SW4として、MOS−FET、IGBTが採用される。
電気モータMTRが正転方向に駆動される場合には、スイッチング素子SW1、SW4が通電状態(オン状態)にされ、スイッチング素子SW2、SW3が非通電状態(オフ状態)にされる。逆に、電気モータMTRが逆転方向に駆動される場合には、スイッチング素子SW1、SW4が非通電状態(オフ状態)にされ、スイッチング素子SW2、SW3が通電状態(オン状態)にされる。
通電量センサ(電流センサ)IMAが、ブリッジ回路BRGに設けられる。通電量センサIMAは、電気モータMTRの通電量(実際値)Imaを取得する。例えば、モータ電流センサIMAによって、モータ通電量Imaとして、実際に電気モータMTRに流れる電流値が検出され得る。
電気モータMTRには、ロータの回転角(実際値)Mkaを取得(検出)する回転角センサ(回転角センサ)MKAが設けられる。回転角Mkaは、車輪側コントローラECWに入力される。
電気モータMTRとして、ブラシ付モータに代えて、ブラシレスモータが採用され得る。ブラシレスモータでは、回転子(ロータ)が永久磁石に、固定子(ステータ)が巻線回路(電磁石)とされる構造で、回転角センサMKAによってロータの回転角Mkaが検出され、回転角Mkaに合わせてスイッチング素子が切り替えられることによって、供給電流が転流される。
ブラシレスモータが採用される場合、ブリッジ回路BRGは、6つのスイッチング素子によって構成される。ブラシ付モータの場合と同様に、デューティ比Dutに基づいて、スイッチング素子の通電状態/非通電状態が制御される。実際の回転角Mkaに基づいて、3相ブリッジ回路を構成する6つのスイッチング素子が制御される。スイッチング素子によって、ブリッジ回路のU相、V相、及びW相のコイル通電量の方向(即ち、励磁方向)が順次切り替えられて、電気モータMTRが駆動される。ブラシレスモータの回転方向(正転、或いは、逆転方向)は、ロータと励磁する位置との関係によって決定される。
押圧力センサFPAによって、ピストンPSNが摩擦パッドMSを押す力(押圧力)Fpaが検出される。即ち、FPAによって、摩擦パッドMSがディスクKTに押圧される力が検出される。押圧力センサFPAは、ねじ部材NJBとキャリパCPとの間に設けられる。例えば、押圧力センサFPAはキャリパCPに固定され、ピストンPSNが摩擦パッドMSから受ける反力(反作用)が押圧力Fpaとして取得される。押圧力(実際値)Fpaは、車輪側コントローラECW(特に、押圧力フィードバック制御ブロックFFB)に入力される。
蓄電池BAT、及び、発電機ALTが、車両の車体側に設けられる。蓄電池BAT、及び、発電機ALTは、電力線PWLを経由して、車体側コントローラECU、及び、車輪側コントローラECWに電力を供給する。即ち、電気モータMTRへの電力は、蓄電池BAT等によって供給される。
摩耗量演算ブロックPMMでは、押圧力Fpa、及び、回転角Mkaに基づいて、摩耗報知信号Smpが演算される。摩耗量演算ブロックPMMの詳細な処理については後述する。摩耗報知信号Smpが、摩耗量演算ブロックPMMから送信されると、インジケータINDによって、運転者への摩耗報知が行われる。
<摩耗量演算ブロックPMMの第1処理例>
図3のフロー図、及び、図4の概略図を参照して、摩耗量演算ブロックPMMの第1の処理例について説明する。上述したように、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。
ステップS110にて、制動操作量Bpaが読み込まれる。ステップS120にて、制動操作量Bpaに基づいて、「制動操作が行われているか、否か(制動操作の有無)」が判定される。例えば、「Bpa>bp0」の場合に、制動操作があることが判定され、「Bpa≦bp0」の場合には、制動操作がないことが判定される。ステップS120が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS110に戻される。ステップS120が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS130に進む。
ステップS130にて、押圧力Fpa、回転角Mka、及び、基準位置Prfが読み込まれる。ここで、基準位置Prfは、摩擦パッドMSが新品である場合(即ち、摩耗量が「0」であり、摩擦パッドMSが最も厚い場合)における、ピストンPSNの位置(対応する電気モータMTRの回転角Mka)である。基準位置Prfは、コントローラCTL内に予め記憶されている。また、後述する方法にて、適宜、基準位置Prfが学習され得る。
ステップS140にて、押圧力Fpa、及び、回転角Mkaに基づいて、接触位置Pcnが決定される。接触位置Pcnは、摩擦パッドMSがディスクKTに接し始めた時点における、電気モータMTRの回転角Mkaである。具体的には、回転角Mkaの変化量に対する、押圧力Fpaの変化量が、所定値dfxを超過した時点の回転角Mkaが、接触位置Pcnとして決定される。ここで、所定値dfxは、摩擦パッドMSとディスクKTとの接触開始を判定するためのしきい値であり、予め設定されている。
ステップS150にて、接触位置Pcn、及び、基準位置Prfに基づいて、全摩耗量Mpdが演算される。具体的には、基準位置Prfと接触位置Pcnとの差が、全摩耗量Mpdとして決定される。即ち、全摩耗量Mpdは、2つの摩擦パッドMSが新品である時点から、摩耗した量であり、2つの摩擦パッドMSの摩耗量の合計である。従って、ステップS150では、電気モータMTRの回転角Mkaに基づいて、2つの摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量の合計である全摩耗量Mpd(=「Mpl+Mps」)が決定される。
≪摩擦パッドMSの全摩耗量Mpd≫
ここで、図4の概略図を参照して、摩擦パッドMS(インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOの総称)の摩耗について説明する。図4において、ピストンPSNの中心線Jpsの上部が、摩擦パッドMSが新品であって、摩耗量が「0」である場合を示す。また、中心線Jpsの下部は、摩擦パッドMSの摩耗量が大となった場合が図示されている。
強度を維持するために、インナ側パッドMSIは、インナ側裏板UIIと一体となって成形され、アウタ側パッドMSOは、アウタ側裏板UIOと一体となって成形されている。浮動型キャリパCPの場合、アウタ側裏板UIOがキャリパCPの爪部に固定され、インナ側裏板UIIがピストンPSNによって押圧される。従って、アウタ側裏板UIO、アウタ側パッドMSO、ブレーキディスクKT、インナ側パッドMSI、インナ側裏板UIIの順で、キャリパCPとピストンPSNとの間に、各部材が配置されている。上述したように、インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOが摩耗していない状態での接触位置Pcnが、基準位置Prfとして設定される。
インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOが摩耗すると、接触位置Pcnは、ピストンPSNの前進方向(図中の左方向)に変化する。また、ブレーキディスクKTの摩耗量は、摩擦パッドMSの摩耗量と比較して、極めて少ない。従って、インナ側パッドMSIの摩耗量と、アウタ側パッドMSOの摩耗量との合計が、全摩耗量Mpdとして検出される。以上、全摩耗量Mpdについて説明した。
図3に戻り、処理の流れについて説明を続ける。ステップS160にて、全摩耗量Mpd、及び、第1、第2演算特性(演算マップ)CHml、CHmsに基づいて、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsが演算される。第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsは、引き摺り摩耗に起因する摩耗量の差を考慮するための係数である。ここで、第1摩耗係数Kplは、引き摺り摩耗が生じ易い側に対応し、「第1摩耗係数」と称呼される。また、第2摩耗係数Kpsは、引き摺り摩耗が生じ難い側に対応し、「第2摩耗係数」と称呼される。なお、引き摺り摩耗が生じ易い側と、生じ難い側は、アクチュエータBRK(特に、キャリパCP)の構成において、予め決まっている。例えば、引き摺り摩耗が生じ易い側は、キャリパCPのアウタ側であり、引き摺り摩耗が生じ難い側はインナ側である。第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsは、予め設定された第1、第2演算特性(演算マップ)CHml、CHmsとして決定される。
具体的には、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsは、全摩耗量Mpdが「0(即ち、摩擦パッドMSが新品の状態)」から所定値mpoまでは、「1」に決定される。即ち、「Mpd<mpo」の条件では、2つの摩擦パッドMSにおいて、摩耗量の差が生じていないように、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsが決定される。そして、全摩耗量Mpdが所定値mpo以上では、摩耗差が考慮されて、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsが決定される。引き摺り摩耗が生じ易い側では、全摩耗量Mpdが所定値mpoから増加するに従って、第1摩耗係数Kplが、「1」から増加される。例えば、第1摩耗係数Kplは、破線にて示すように、全摩耗量Mpdの増加に対して、「下に凸」の非線形特性として決定される。
一方、引き摺り摩耗が生じ難い側では、全摩耗量Mpdが所定値mpoから増加するに従って、第2摩耗係数Kpsが、「1」から減少される。例えば、第2摩耗係数Kpsの減少は、破線にて示すように、全摩耗量Mpdの増加に対して、「上に凸」の非線形特性として決定される。なお、第1摩耗係数Kplと第2摩耗係数Kpsとの和は、「2」となるように(即ち、第1摩耗係数Kplと第2摩耗係数Kpsとの平均値が「1」となるように)、第1、第2演算マップCHml、CHmsは設定されている。
ステップS170にて、全摩耗量Mpd、及び、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsに基づいて、2つの摩擦パッドMSの各摩耗量Mpl、Mpsが演算される。ここで、摩耗量Mplは、引き摺り摩耗が生じ易い側における摩擦パッドに対応し、「第1摩耗量」と称呼される。また、摩耗量Mpsは、引き摺り摩耗が生じ難い側における摩擦パッドに対応し、「第2摩耗量」と称呼される。具体的には、第1摩耗量Mplは、全摩耗量Mpdの半分に、第1摩耗係数Kplが乗算されて決定される(Mpl=Mpd・Kpl/2)。即ち、第1摩耗量Mplは、全摩耗量Mpdが増加するに従って、第1摩耗量Mplと全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)との差が増加するように推定される。
また、第2摩耗量Mpsは、全摩耗量Mpdの半分に、第2摩耗係数Kpsが乗算されて決定される(Mps=Mpd・Kps/2)。即ち、第2摩耗量Mpsも、全摩耗量Mpdが増加するに従って、第2摩耗量Mpsと全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)との差が増加するように推定される。ここで、「Kpl+Kps=2」の関係にあるため、第1摩耗量Mplと第2摩耗量Mpsとの和は、全摩耗量Mpdに一致する。
ステップS180にて、第1摩耗量Mplに基づいて、「第1摩耗量Mplが所定摩耗mpx以上であるか、否か」が判定される。ここで、所定摩耗mpxは、摩耗判定に採用されるしきい値であり、予め設定された所定値である。「Mpl<mpx」であり、ステップS180が否定される場合(「NO」の場合)には、摩耗報知が行われず、処理は、ステップS110に戻される。一方、「Mpl≧mpx」であり、ステップS180が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS190に進む。
ステップS190にて、摩耗報知を実行するための摩耗報知信号Smpが形成される。摩耗報知信号Smpが、通信線SGLを介して、車輪側コントローラECWから車体側コントローラECUに向けて送信される。そして、インジケータINDによって、運転者に、摩擦パッドMSの残量が僅かになったことが報知される。
ステップS160での第2摩耗係数Kpsの演算、及び、ステップS170での第2摩耗量Mpsの演算が省略され得る。全摩耗量Mpdに基づいて、2つのブレーキパッドMSI、MSOのうちで摩耗量が大きい方の第1摩耗量Mplが演算される。さらに、ステップS180、及び、ステップS190が省略されて、第1、第2摩耗量Mpl、Mpsが、摩耗量演算ブロックPMMから、インジケータINDに向けて出力される。この場合、インジケータINDには、第1、第2摩耗量Mpl、Mpsが、値として表示される。例えば、摩擦パッドMSの「残量が、10%、及び、15%であること」が、インジケータINDに表示される。
全摩耗量Mpdの大きさに基づいて、引き摺り摩耗に起因する摩耗量が考慮される。このため、より正確な摩擦パッドMSの摩耗量が演算され得る。結果、摩擦パッドMSの残量があるにもかかわらず、摩耗報知が行われること、或いは、摩擦パッドMSが摩耗しているにもかかわらず、摩耗報知が行われないことが抑制され、適切なタイミングにて、摩耗報知が行われ得る。
上記実施形態では、2つの摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量の和(即ち、「Mpl+Mps」)である全摩耗量Mpdに基づいて、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsが決定された。これに代えて、制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つに基づいて、第1、第2摩耗係数Kpl、Kpsが演算され得る。これは、全摩耗量Mpdの増加が、制動回数Nbp、及び、走行距離Lskに対して、概ね比例することに因る。
ここで、制動回数Nbpは、制動操作部材BPが操作された回数であり、制動操作量Bpaに基づいてカウントされる。車両の走行距離Lskは、車輪速度Vwaに基づいて演算される。ここで、車輪速度Vwaは、車輪WHに設けられた車輪速度センサVWAによって検出される。なお、制動回数(操作回数ともいう)Nbp、及び、走行距離Lskは、摩擦パッドMSが新品に交換された際に、「0」にリセットされる。
第1演算特性CHml(引き摺り摩耗が生じ易い側に対応する第1演算マップ)では、「制動回数(操作回数)Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mpoまでは、第1摩耗係数Kplは、「1」に決定される。そして、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定値mpoから増加するに従って、第1摩耗係数Kplが、「1」から増加される。例えば、第1摩耗係数Kplは、「制動回数Nbp、走行距離Lsk」の増加に対して、「1」から「下に凸」の非線形特性にて増加される。
また、第2演算特性CHms(引き摺り摩耗が生じ難い側に対応する第2演算マップ)では、「制動回数Nbpが、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mpoまでは、第2摩耗係数Kpsは、「1」に決定される。そして、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定回値mpoから増加するに従って、第2摩耗係数Kpsが、「1」から減少される。例えば、第2摩耗係数Kpsが、「制動回数Nbp、走行距離Lsk」の増加に対して、「1」から「上に凸」の非線形特性にて減少される。
上記同様に、第1摩耗係数Kplと第2摩耗係数Kpsとの和は、「2」となるように(即ち、第1摩耗係数Kplと第2摩耗係数Kpsとの平均値が「1」となるように)、第1、第2演算マップCHml、CHmsが設定される。
第1の処理例では、電気モータMTRの回転角Mkaに基づいて、2つの摩擦パッドMSI、MSOの摩耗量の合計である全摩耗量Mpd(=Mpl+Mps)が決定され、全摩耗量Mpdに基づいて2つの摩擦パッド(MSI、MSO)のうちで少なくとも摩耗量が大きい方の第1摩耗量Mplが推定される。
具体的には、第1の処理例では、「第1摩耗量Mplは、全摩耗量Mpd、走行距離Lsk、及び、操作回数Nbpのうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、第1摩耗量Mplと全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)との差が増加するように推定される。また、第2摩耗量Mpsも、「全摩耗量Mpd、走行距離Lsk、及び、制動回数Nbpのうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、第2摩耗量Mpsと全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)との差が増加するように推定される。
例えば、第1の処理例では、「全摩耗量Mpd、走行距離Lsk、及び、制動回数Nbpのうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、「1」から増加する第1摩耗係数Kplが演算され、全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)に第1摩耗係数Kplが乗ぜられて、第1摩耗量Mpl(摩耗が大である方)が推定される。また、「全摩耗量Mpd、走行距離Lsk、及び、制動回数Nbpのうちの少なくとも1つ」が増加するに従って、「1」から減少する第2摩耗係数Kpsが演算され、全摩耗量Mpdの半分(Mpd/2)に第2摩耗係数Kpsが乗ぜられて、第2摩耗量Mps(摩耗が少である方)が推定される。
上記構成によって、引き摺り摩耗に起因する摩耗量(即ち、2つの摩擦パッドMSI、MSOにおける摩耗量の差)が考慮される。このため、摩擦パッドMSの摩耗量が高精度に演算される。従って、適切なタイミングでの摩耗報知が実行され得る。
<基準位置Prfの設定方法>
図5の概略図を参照して、基準位置Prfの設定方法の例について説明する。基準位置Prfは、新品の摩擦パッドMSが、キャリパCPに取り付けられる際に記憶される。さらに、ピストンPSNが、適宜、最後端にまで移動されて、基準位置Prfの学習が行われ得る。
図5の概略図において、ピストンPSNの中心線Jpsの上部が、ピストンPSNが、最後端まで後退され、ストッパSTPに当接した状態を示す。また、中心線Jpsの下部は、ピストンPSNが前進され、接触位置Pcnにある場合が図示されている。
摩擦パッドMSが新品である場合において、「キャリパCPの形状」、「ピストンPSNの軸方向長さ」、「インナ側、アウタ側裏板UII、UIOの厚さ」、及び、「インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOの厚さ」は、既知である。即ち、各部材の幾何学的な寸法は、予め定まっているため、ピストンPSNがストッパSTPに接触した状態に基づいて、基準位置Prfが設定され得る。具体的には、ピストンPSNがストッパSTPに当接する後端位置Pstから、所定距離dpoだけ離れた位置が、基準位置Prfに相当する。所定距離dpoは、各部材の幾何学的関係に基づいて、予め設定された所定値である。
基準位置Prfは、「所定時間の経過後」、及び、「所定制動回数後」のうちの少なくとも1つに基づいて、再設定され得る。基準位置Prf、及び、接触位置Pcnは、回転角Mkaに基づいて、決定されるが、基準位置Prfが再設定(再学習)されることによって、より正確な摩耗推定が行われ得る。
特に、ピストンPSNの後端位置Pstへの引き戻しは、運転者が加速操作部材(アクセルペダル)APを操作している場合に行われる。ピストンPSNが後端位置Pstにある状態で、運転者が制動操作部材BPを急操作した場合、電動制動装置DDSの作動遅れが懸念され得る。しかしながら、ピストンPSNの引き戻しが、加速操作部材APが操作されている場合に行われるため、電動制動装置DDSの作動遅れの懸念が解消され得る。
<摩耗量演算ブロックPMMの第2処理例>
図6のフロー図を参照して、摩耗量演算ブロックPMMの第2の処理例について説明する。非制動時の引き摺り摩耗は、制動負荷(特に、制動に起因する熱負荷)の影響を受ける。具体的には、制動負荷が低い場合(即ち、通常の弱い制動操作の頻度が高い場合)には、アウタ側パッドMSOで引き摺り摩耗が生じ易く、インナ側パッドMSIで引き摺り摩耗が生じ難い。逆に、制動負荷が高い場合(即ち、強い制動操作の頻度が高い場合)には、インナ側パッドMSIで摩耗が生じ易く、アウタ側パッドMSOで摩耗が生じ難い。これは、キャリパCPのインナ側は、アウタ側に比較して冷却され難いことに因る。制動負荷が高い場合には、ブレーキディスクKTの熱変形(所謂、熱倒れ)によって、アウタ側パッドMSOの引き摺り摩耗が減少され、インナ側パッドMSIの引き摺り摩耗が増大される。加えて、パッド温度が高いほど、制動中の摩耗量が大きいため、インナ側パッドMSOの摩耗が大きくなる。
第2の処理例では、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」に対する全摩耗量Mpdの比率に基づいて、制動負荷が考慮され、インナ側、アウタ側パッドMSI、MSOの摩耗量Mpi、Mpoが、別々に推定される。
ステップS210にて、制動操作量Bpaが読み込まれる。ステップS220にて、制動操作量Bpaに基づいて、「制動操作が行われているか、否か」が判定される。例えば、「Bpa>bp0」の場合に、制動操作があることが判定され、「Bpa≦bp0」の場合には、制動操作がないことが判定される。ステップS220が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS210に戻される。ステップS220が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS230に進む。
ステップS230にて、押圧力Fpa、回転角Mka、及び、基準位置Prf(摩擦パッドMSの新品状態におけるピストンPSNの位置)が読み込まれる。さらに、ステップS230では、制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つが読み込まれる。ここで、制動回数Nbpは、制動操作部材BPの操作回数であり、制動操作量Bpaに基づいて演算される。また、車両の走行距離Lskは、車輪WHに設けられた車輪速度センサVWAの検出信号(車輪速度Vwa)に基づいて演算される。なお、制動回数Nbp、及び、走行距離Lskは、摩擦パッドMSが新品に交換された時点にて、「0」にリセットされる。
ステップS240にて、ステップS140と同様の方法によって、押圧力Fpa、及び、回転角Mkaに基づいて、接触位置Pcnが決定される。接触位置Pcnは、ディスクKTに対する摩擦パッドMSの接触開始時点の回転角Mkaである。ステップS250にて、接触位置Pcn、及び、基準位置Prfに基づいて、全摩耗量Mpdが演算される。具体的には、基準位置Prfと接触位置Pcnとの差が、全摩耗量Mpd(2つの摩擦パッドMSの摩耗量の合計)として決定される。
ステップS260にて、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」、及び、全摩耗量Mpdに基づいて、「通常演算マップCHmi、CHmoを選択するか、否か」が判定される。ここで、通常演算マップCHmi、CHmoは、上記の「制動負荷が低い場合」に対応している。また、通常演算マップCHmi、CHmoが選択されない場合には、上記の「制動負荷が高い場合」に対応した高負荷演算マップCHmj、CHmpが採用される。
具体的には、ステップS260では、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」に対する全摩耗量Mpdの比率が演算される(例えば、「Mpd/Nbp」、「Mpd/Lsk」)。そして、「演算結果が、所定比率sfx未満であるか、否か」が判定される。演算結果(「Mpd/Nbp」等)が、所定比率sfx未満である場合には、ステップS260が肯定され、通常演算マップCHmi、CHmoが選択される。即ち、処理は、ステップS270に進む。一方、演算結果が、所定比率sfx以上である場合には、ステップS260が否定され、高負荷演算マップCHmj、CHmpが選択される。即ち、処理は、ステップS280に進む。ここで、所定比率sfxは、制動負荷が低負荷であるか、高負荷であるかを判定するためのしきい値(予め設定された所定値)である。
ステップS270では、制動負荷が相対的に低い、通常摩耗時の摩耗量を演算するためのインナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoが演算される。ここで、インナ側摩耗係数Kpiは、インナ側パッドMSIに対応し、アウタ側摩耗係数Kpoは、アウタ側パッドMSOに対応している。具体的には、全摩耗量Mpd、及び、通常摩耗時の演算特性CHmi、CHmoに基づいて、インナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoが演算される。全摩耗量Mpdが「0」から所定値mppまでは、インナ側パッドMSIとアウタ側パッドMSOとの間には摩耗量の差が生じないため、インナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoは、「1」に決定される。
通常摩耗時に引き摺り摩耗が相対的に生じ難いインナ側の演算特性CHmiでは、全摩耗量Mpdが所定値mpp以上では、全摩耗量Mpdが所定値mppから増加するに従って、インナ側摩耗係数Kpiが、「1」から減少される。一方、通常摩耗時に引き摺り摩耗が相対的に生じ易いアウタ側の演算特性CHmoでは、全摩耗量Mpdが所定値mppから増加するに従って、アウタ側摩耗係数Kpoが、「1」から増加される。なお、上記の第1、第2演算特性CHml、CHmsと同様に、インナ側摩耗係数Kpiとアウタ側摩耗係数Kpoとの和は、「2」となるように設定されている。さらに、アウタ側摩耗係数Kpoは、全摩耗量Mpdの増加に対して、「下に凸」の非線形特性に設定され、インナ側摩耗係数Kpiは、全摩耗量Mpdの増加に対して、「上に凸」の非線形特性に設定され得る。
ステップS280では、制動負荷が相対的に高い、高負荷摩耗時の摩耗量を演算するためのインナ側摩耗係数Kpi(インナ側パッドMSIに対応)、及び、アウタ側摩耗係数Kpo(アウタ側パッドMSOに対応)が演算される。具体的には、全摩耗量Mpd、及び、高負荷摩耗時の演算特性CHmj、CHmpに基づいて、インナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoが演算される。全摩耗量Mpdが「0」から所定値mpqまでは、インナ側パッドMSIとアウタ側パッドMSOとの間には摩耗量の差が生じないため、インナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoは、「1」に決定される。ここで、所定値mpqは、所定値mppよりも小さい値である。
高負荷摩耗時に引き摺り摩耗が相対的に生じ易いインナ側の演算特性CHmjでは、全摩耗量Mpdが所定値mpq以上では、全摩耗量Mpdが所定値mpqから増加するに従って、インナ側摩耗係数Kpiが、「1」から増加される。一方、高負荷摩耗時に引き摺り摩耗が相対的に生じ難いアウタ側の演算特性CHmpでは、全摩耗量Mpdが所定値mpqから増加するに従って、アウタ側摩耗係数Kpoが、「1」から減少される。なお、通常摩耗時の演算特性CHmi、CHmoと同様に、インナ側摩耗係数Kpiとアウタ側摩耗係数Kpoとの和は、「2」となるように設定されている。さらに、インナ側摩耗係数Kpiは、全摩耗量Mpdの増加に対して、「下に凸」の非線形特性に設定され、アウタ側摩耗係数Kpoは、全摩耗量Mpdの増加に対して、「上に凸」の非線形特性に設定され得る。
ステップS290では、ステップS270、又は、ステップS280にて演算されたインナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoに基づいて、インナ側、アウタ側摩耗量Mpi、Mpoが演算される。具体的には、インナ側摩耗量Mpiは、全摩耗量Mpdの半分に、インナ側摩耗係数Kpiが乗算されて決定される(Mpl=Mpd・Kpi/2)。また、アウタ側摩耗量Mpoは、全摩耗量Mpdの半分に、アウタ側摩耗係数Kpoが乗算されて決定される(Mps=Mpd・Kpo/2)。ここで、「Kpi+Kpo=2」であるため、インナ側摩耗量Mpiとアウタ側摩耗量Mpoとの和は、全摩耗量Mpdに一致する。
ステップS300にて、個別に推定された、インナ側、アウタ側摩耗量Mpi、Mpoが、車体側コントローラECUに送信される。そして、インジケータINDにて、インナ側、アウタ側摩耗量Mpi、Mpoが表示される。また、ステップS300にて、インナ側摩耗量Mpi、及び、アウタ側摩耗量Mpoのうちの大きい方が、所定摩耗mpx以上である場合には、摩耗報知を実行するための摩耗報知信号Smpが、車体側コントローラECUに送信される。そして、インジケータINDによって、運転者に、摩擦パッドMSの残量が僅かになったことが報知され得る。
第1処理例の演算特性CHml、CHmsと同様に、第2処理例の演算特性CHmi、CHmo、CHmj、CHmpにおいても、全摩耗量Mpdに代えて、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」に基づいて、インナ側、アウタ側摩耗係数Kpi、Kpoが演算され得る。
ステップS270の通常摩耗時のインナ側演算特性CHmiでは、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mppまでは、インナ側摩耗係数Kpiが「1」に決定され、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定値mppから増加するに従って、インナ側摩耗係数Kpiが、「1」から減少される。また、通常摩耗時のアウタ側演算特性CHmoでは、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mppまでは、アウタ側摩耗係数Kpoが「1」に決定され、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定値mppから増加するに従って、アウタ側摩耗係数Kpoが、「1」から増加される。さらに、全摩耗量Mpdに基づく場合と同様に、通常摩耗時の演算特性CHmi、CHmoは、非線形特性として設定され得る。
ステップS280の高負荷摩耗時のインナ側演算特性CHmjでは、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mpq(<mpp)までは、インナ側摩耗係数Kpiが「1」に決定され、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定値mpqから増加するに従って、インナ側摩耗係数Kpiが、「1」から増加される。また、高負荷摩耗時のアウタ側演算特性CHmpでは、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、「0」から所定値mpqまでは、アウタ側摩耗係数Kpoが「1」に決定され、「制動回数Nbp、及び、走行距離Lskのうちの少なくとも1つ」が、所定値mpqから増加するに従って、アウタ側摩耗係数Kpoが、「1」から減少される。さらに、全摩耗量Mpdに基づく場合と同様に、高負荷摩耗時の演算特性CHmj、CHmpは、非線形特性として設定され得る。
非制動中の引き摺り摩耗は、熱の影響を受け、高温で生じ易くなる。また、キャリパCPの冷却性能は、アウタ側に比較して、インナ側で劣る。このため、制動負荷が高い場合には、インナ側パッドMSIにて、引き摺り摩耗が生じ易くなる。第2の処理例では、制動負荷が考慮されて、通常摩耗時と高負荷摩耗時とで異なる演算特性が採用される。結果、摩擦パッドMSの摩耗量の推定精度が向上され、正確な摩耗報知が行われ得る。
BRK…アクチュエータ、ECU…車体側コントローラ、ECW…車輪側コントローラ、SGL…信号線、CTL…コントローラ、MTR…電気モータ、KT…ブレーキディスク、MS…摩擦パッド、Mpd…全摩耗量、Mpl…第1摩耗量(摩耗量が大きい方)、Mps…第2摩耗量(摩耗量が小さい方)、Kpl…第1摩耗係数(第1摩耗量Mplに対応)、Kps…第2摩耗係数(第2摩耗量Mpsに対応)、MSI…インナ側摩擦パッド、MSO…アウタ側摩擦パッド、Mpi…インナ側摩耗量(インナ側摩擦パッドMSIに対応)、Mpo…アウタ側摩耗量(アウタ側摩擦パッドMSOに対応)、Kpi…インナ側摩耗係数(インナ側摩耗量Mpiに対応)、Kpo…アウタ側摩耗係数(アウタ側摩耗量Mpoに対応)


Claims (5)

  1. 車両の制動操作部材の操作に応じて、前記車両の車輪に固定されたブレーキディスクを2つの摩擦パッドによって挟み込み、電気モータによって前記2つの摩擦パッドのうちの1つを押圧して、前記車輪に制動力を発生する車両の電動制動装置であって、
    前記電気モータの回転角を検出する回転角センサと、
    前記電気モータを制御するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記回転角に基づいて前記2つの摩擦パッドの摩耗量の合計である全摩耗量を決定し、
    全摩耗量に基づいて前記2つの摩擦パッドのうちで少なくとも摩耗量が大きい方の第1摩耗量を推定する、車両の電動制動装置。
  2. 請求項1に記載の車両の電動制動装置において、
    前記コントローラは、
    前記全摩耗量、前記車両の走行距離、及び、前記制動操作部材の操作回数のうちの少なくとも1つが増加するに従って、前記第1摩耗量と前記全摩耗量の半分との差が増加するように、前記第1摩耗量を推定する、車両の電動制動装置。
  3. 請求項1、又は、請求項2に記載の車両の電動制動装置において、
    前記コントローラは、
    前記全摩耗量、前記車両の走行距離、及び、前記制動操作部材の操作回数のうちの少なくとも1つが増加するに従って、「1」から増加する第1摩耗係数を演算し、
    前記第1摩耗量を前記全摩耗量の半分に前記第1摩耗係数を乗じて推定する、車両の電動制動装置。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車両の電動制動装置において、
    前記コントローラは、
    前記2つの摩擦パッドが新品である場合に設定された基準位置、及び、前記2つの摩擦パッドが前記ブレーキディスクに接触する接触位置に基づいて、前記全摩耗量を演算する、車両の電動制動装置。
  5. 車両の制動操作部材の操作に応じて、前記車両の車輪に固定されたブレーキディスクを2つの摩擦パッドによって挟み込み、電気モータによって前記2つの摩擦パッドのうちの1つを押圧して、前記車輪に制動力を発生する車両の電動制動装置であって、
    前記電気モータの回転角を検出する回転角センサと、
    前記電気モータを制御するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記回転角に基づいて前記2つの摩擦パッドの摩耗量の合計である全摩耗量を決定し、
    前記全摩耗量に基づいて、
    前記車両の走行距離、及び、前記制動操作部材の操作回数のうちの少なくとも1つに対して前記全摩耗量が相対的に小さい場合には、前記2つの摩擦パッドのうちのアウタ側パッドの摩耗量を前記2つの摩擦パッドのうちのインナ側パッドの摩耗量よりも大きく推定し、
    前記車両の走行距離、及び、前記制動操作部材の操作回数のうちの少なくとも1つに対して前記全摩耗量が相対的に大きい場合には、前記インナ側パッドの摩耗量を前記アウタ側パッドの摩耗量をよりも大きく推定する、車両の電動制動装置。
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