JP2015017322A - 加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加工性および靭性を兼備した高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.07〜0.12%、Si:0.2%以下、Mn:0.1〜1.2%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.1%以下、N:0.008%以下、Ti:0.14〜0.20%、V:0.05〜0.15%を、C、Ti、V、SおよびNが((Ti/48)−(N/14)−(S/32))/(V/51)>1.0および(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51))>1.0(C、Ti、V、S、N:各元素の含有量(質量%))を満足するように含有し、且つ、固溶Tiが質量%で0.04%以下、炭化物として析出していないCが質量%で0.022%以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、組織全体に対するフェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の平均結晶粒径が5.0μm以下であり、TiおよびVを含む炭化物であって、前記フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状となる炭化物が析出した組織とすることで、引張強さが980MPa以上であり且つ加工性、靭性に優れた高強度熱延鋼板とする。なお、表面に溶融亜鉛めっき層を形成してもよい。なお、上記した組成に加えてさらに、Mo、Nb、Wのうちの1種以上を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用部品等の素材に好適な、引張強さ(TS):980MPa以上の高強度と、優れた加工性および靭性を兼ね備えた高強度熱延鋼板およびその製造方法に関する。
地球環境保全の観点からCO2排出量を削減すべく、自動車業界全体で自動車の燃費向上が求められている。自動車の燃費向上には、自動車を構成する各種部品を薄肉化して自動車車体の軽量化を図ることが最も有効である。また、最近では、衝突時における乗員の安全性確保の観点から、部品の高強度化が要求されている。
このような理由により、自動車用部品の素材として高強度鋼板が積極的に使用されるようになっている。特に、近年ではより一層の高強度化が推進されており、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板が要求されている。
一方、鋼板を素材とする自動車用部品の多くは、プレス加工やバーリング加工等によって複雑な成型を施すことで製造されるため、自動車部品用素材としての高強度鋼板には、強度とともに、延性、伸びフランジ性等の加工性に優れることが求められている。
また、自動車が様々な環境下で使用されることも考慮する必要があり、例えば寒冷地のような低温環境下では、自動車部品が脆性破壊するおそれがある。したがって、自動車部品用素材の高強度鋼板としては、寒冷地での使用に対応すべく、靭性に優れた高強度鋼板が求められている。
以上のように、自動車部品用素材としての高強度鋼板には、高強度であることに加えて、加工性や靭性等の諸特性を兼ね備えていることが要求されている。このような背景の下、これまでに様々な鋼板が研究されてきた。
例えば、特許文献1では、TiおよびSの含有量を(Ti/48)/(S/32)が30以上となるように規定して硫化物の量および形態を制御し、更に、圧延面における{211}面のX線ランダム強度比が2.4以下となるように集合組織を制御することで、引張強さが780MPa以上であり且つ穴拡げ性および破壊特性に優れた高強度熱延鋼板とする技術が開示されている。また、特許文献2では、結晶粒を微細化し、更に、圧延方向に平行な{211}<011>方位のX線ランダム強度比を2.5以下とする集合組織制御により、引張強さが590MPa以上であり且つ低温靭性と穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板とする技術が開示されている。
更に、特許文献3では、固溶Cと固溶Bの合計の粒界個数密度、鋼板中の粒界に析出しているセメンタイト粒径、板厚中心での平均結晶粒径の各々を制御し、且つ、板厚中心での{211}ランダム強度比が2以下となるように集合組織を制御し、更に、結晶粒内におけるTiC析出物のサイズ・密度を制御することで、引張強さが780MPa以上であり且つバーリング性に優れた高強度熱延鋼板とする技術が開示されている。また、特許文献4では、析出強化フェライト主体であって残留オーステナイトを含む混合組織とし、且つ、フェライト中に炭窒化物を相間界面析出により析出させることで、伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板(熱延鋼板)とする技術が開示されている。
これらの技術はいずれも、TiやNbの微細析出を活用し、熱延鋼板の強度と加工性の両立を図ったものである。
特許第4842413号公報 特開2012−136773号公報 特開2012−001776号公報 特開2011−225941号公報
しかしながら、特許文献1、特許文献2および特許文献3で開示されている技術ではいずれも、引張強さが980MPa以上の熱延鋼板が得られていない。一方、特許文献4で開示されている技術によると、熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とし得る。しかしながら、特許文献4で開示されている技術では、その実施例が示すように必ずしも引張強さを980MPa以上とすることができず、980MPaを大幅に下回る場合もある。また、特許文献4で開示されている技術では、熱延鋼板の伸びフランジ性や低温靭性について全く検討されておらず、改善の余地がある。
以上のように、引張強さ980MPa以上の強度を有する熱延鋼板について、高い加工性と良好な低温靭性の両立が可能な技術は知られていない。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、引張強さが980MPa以上であり且つ伸びフランジ性、延性(伸び)等の加工性が良好であり、しかも低温靭性にも優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは、熱延鋼板に関し、引張強さ980MPa以上の強度を確保しつつ、加工性および低温靭性の向上を図る手段について鋭意検討した。
鋼板の主相組織をフェライトとし、且つ微細析出物による析出強化を利用することにより、鋼板の強度と加工性(特に延性、伸びフランジ性)を両立し得ることが知られている。そこで、本発明者らはまず、微細析出物を活用して鋼板を引張強さ980MPa以上に高強度化することを試みた。
その結果、析出元素としてTiおよびVを活用すると、TiとVが複合し、鋼中に炭化物として微細かつ高密度に析出することで、極めて高い鋼板強度が得られることを見出した。そして、炭化物形成元素であるC、Ti、Vの含有量を所定の範囲とし、熱延鋼板中の固溶Ti量を抑制し、更にTiとVを含む微細な炭化物を析出させることにより、引張強さ980MPa以上の鋼板強度が得られることを知見した。更に、このようにして得られた引張強さ980MPa以上の熱延鋼板について、TiとVを含む微細な炭化物の析出形態について調査したところ、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の略矩形状であることが確認された。
一方、析出強化は通常、鋼の靭性を劣化させるため、析出強化により鋼板の強度と靭性の両立を図ることは一般的に困難とされている。そして、上記の如くTiとVを含む炭化物を析出させて鋼板の引張強さを980MPa以上とした場合も、靭性が低下する傾向を示した。
これらの事項を踏まえ、本発明者らは、析出強化鋼の靭性を向上すべく更に検討を重ねた。その結果、鋼中のTiおよびVについて、炭化物として析出可能なV量よりも炭化物として析出可能なTi量を多くする場合、すなわち、合金元素の添加量が((Ti/48)-(N/14)-(S/32))/(V/51)>1.0(Ti、V、N、Sは鋼中の各元素の含有量(質量%))を満足する場合に、鋼の低温靭性が大きく向上することを知見した。
また、低温靭性が大幅に向上する理由を明らかにするために、種々の化学組成を有するフェライト主相組織の熱延鋼板について、組織観察を行った。その結果、熱延鋼板のTi、V、N、S含有量(質量%)が((Ti/48)-(N/14)-(S/32))/(V/51)>1.0を満足する場合、フェライト粒径が小さくなることが明らかとなった。すなわち、熱延鋼板のTi、V、N、S含有量(質量%)が上記の式を満足すると、フェライト組織が細粒化され、熱延鋼板の靭性が向上することが確認された。
なお、熱延鋼板のTi、V、N、S含有量(質量%)が((Ti/48)-(N/14)-(S/32))/(V/51)>1.0を満足するとフェライト組織が細粒化する理由は定かではない。しかし、TiはVよりも炭化物を形成し易いため、炭化物として析出可能なV量よりも炭化物として析出可能なTi量を多くすると、熱延鋼板製造時、仕上げ圧延終了後の冷却過程において、Vと複合炭化物を形成しなかったTiがオーステナイト粒界に偏析して炭化物を形成し、該炭化物がフェライトの優先核生成サイトになり易いためであると推測される。
以上のように、熱延鋼板中のTi、V含有量を上式にしたがい規定することで、熱延鋼板の靭性を向上させることができる。しかしながら、このようにTi、V含有量を規定することに伴い、熱延鋼板強度の安定確保が困難になることが、新たな問題として浮上した。
熱延鋼板の高強度化に寄与する微細な炭化物(TiとVを含む炭化物)は、熱延鋼板製造時、仕上げ圧延終了後の冷却・巻き取り過程(主にオーステナイト→フェライト変態時)で析出する。そして、熱延鋼板の高強度化を図るうえでは、このように析出した微細な炭化物を、熱延鋼板をコイル状に巻き取った後においても微細な状態に維持する必要がある。しかし、熱延鋼板中のTi、V含有量を上式にしたがい規定すると、熱延鋼板中に析出した炭化物のサイズが、巻き取り後に粗大化し易くなり、必ずしも所望の熱延鋼板強度が得られないことが判明した。
上記問題に対し、本発明者らは、((Ti/48)-(N/14)-(S/32))/(V/51)>1.0を満足するように熱延鋼板のTi、V、N、S含有量(質量%)を規定した場合であっても、熱延鋼板の強度安定性を維持し、980MPa以上の引張強さを確保する手段を模索した。その結果、鋼中のC、TiおよびVについて、炭化物として析出可能なV量とTi量の合計量よりも炭化物として析出可能なC量を多くする、すなわち、合金元素の添加量が (C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51))>1.0(C、Ti、V、N、Sは鋼中の各元素の含有量(質量%))を満足し、且つ、炭化物として析出していないCを質量%で0.022%以上確保することが、極めて有効な手段であることを知見した。また、これらの条件を満足する場合には、熱延鋼板中に析出する炭化物が、その炭化物組成に関わらず微細化し、引張強さ980MPa以上の高強度熱延鋼板が安定的に得られることを知見した。また、このように引張強さ980MPa以上と高強度であっても、熱延鋼板の靭性が損なわれないことを合わせて知見した。
なお、熱延鋼板のC、Ti、V、N、S含有量(質量%)が(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51))>1.0を満足すると熱延鋼板中に析出する炭化物が細粒化する理由は必ずしも明らかでない。しかし、炭化物として析出可能なTiおよびVのモル分率よりも炭化物として析出可能なCのモル分率が多いと、TiおよびVを含む炭化物の表面にCが濃化し、その結果、炭化物のサイズ安定性が向上することが推測される。
さらに、本発明者らは、Ti、Vに加えてMo、Nb、Wを、次(1)、(2)式
((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/ (V/51) > 1.0 …(1)
(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184)) > 1.0 …(2)
を満足するように含有することで、微細な炭化物が析出し、安定して強度を向上させるとともに、フェライト粒径を細粒化させ靭性を向上させることが容易にできることを新たに知見した。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、
C :0.07%以上0.12%以下、 Si:0.2%以下、
Mn:0.1%以上1.2%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.008%以下、 Ti:0.14%以上0.20%以下、
V :0.05%以上0.15%以下
を、C、Ti、V、SおよびNが下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、且つ、固溶Tiが質量%で0.04%以下、炭化物として析出していないCが質量%で0.022%以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、組織全体に対するフェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の平均結晶粒径が5.0μm以下であり、TiおよびVを含む炭化物であって、前記フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状である炭化物が析出した組織を有し、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板。

((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/ (V/51) > 1.0 …(1)
(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184)) > 1.0 …(2)
(ここで、C、Ti、V、S、N、Nb、Mo、W:各元素の含有量(質量%))
[2] [1]において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高強度熱延鋼板。
[3] [1]または[2]において、表面にめっき層を有してなる高強度熱延鋼板。
[4] 鋼素材を、加熱し、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
C :0.07%以上0.12%以下、 Si:0.2%以下、
Mn:0.1%以上1.2%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.008%以下、 Ti:0.14%以上0.20%以下、
V :0.05%以上0.15%以下
を、C、Ti、V、SおよびNが下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、
前記加熱の加熱温度を1150℃以上1350℃以下とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延終了温度を880℃以上とし、前記巻き取りの巻取り温度を550℃以上700℃以下とし、前記巻き取り後の熱延コイルを水冷することを特徴とする加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/ (V/51) > 1.0 …(1)
(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184)) > 1.0 …(2)
(ここで、C、Ti、V、S、N、Nb、Mo、W:各元素の含有量(質量%))
[5] [4]において、前記巻き取り、熱延鋼板とするに代えて、巻き取り、熱延鋼板としたのちにさらに熱延鋼板表面にめっき層を形成するにあたり、前記巻き取りの巻取り温度を400℃以上700℃以下とし、前記巻き取り後の熱延コイルを水冷するかあるいは水冷することなしに、連続焼鈍処理およびめっき処理を施し、該めっき処理後に、平均冷却速度:20℃/s以上で150℃以下の温度まで冷却することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
[6] [5]において、前記めっき処理に引続き、前記めっき層の合金化処理を施し、該合金化処理後に、平均冷却速度:20℃/s以上で150℃以下の温度まで冷却することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
[7] [4]ないし[6]のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、自動車用鋼板等に好適な、引張強さ(TS)980MPa以上で、且つ、プレス加工やバーリング加工等により複雑な形状に成形可能な優れた加工性(延性、伸びフランジ性)を有し、しかも、寒冷地のような低温環境下で懸念される脆性破壊を抑制するに十分な低温靱性を備えた高強度熱延鋼板が得られる。具体的には、引張強さが980MPa以上であり且つ全伸びが15%以上、穴拡げ率が40%以上、延性脆性遷移温度が−20℃以下である熱延鋼板が得られ、産業上格段の効果を奏する。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、その組織を著しく壊すような熱処理(例えば、Ac1点以上の温度域に長時間保持する加熱処理)を施さない限り、上記の効果を維持することができる。すなわち、本発明の高強度熱延鋼板を原板とするめっき鋼板においても、上記と同様の効果を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明熱延鋼板の組織の限定理由について説明する。
本発明の熱延鋼板は、組織全体に対するフェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の平均結晶粒径が5.0μm以下であり、TiおよびVを含む炭化物であって、前記フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状である炭化物が析出した組織を有する。
フェライト相:組織全体に対する面積率で95%以上
鋼板の伸び特性を確保するうえでは、ベイナイト相やマルテンサイト相よりも伸びの大きいフェライト相の形成が必須となる。また、鋼板の伸びフランジ性を向上させるためには、鋼板組織を単相とすることが効果的である。そのため、本発明においては、熱延鋼板組織をフェライト単相とすることが望ましい。但し、完全なフェライト単相でない場合であっても、実質的にフェライト単相、すなわち、組織全体に対する面積率で95%以上がフェライト相であれば、上記の効果を十分に発揮する。したがって、フェライト相の組織全体に対する面積率は95%以上とする。
なお、本発明の熱延鋼板において、フェライト相以外の組織としては、マルテンサイト、パーライト、ベイナイト、粒界セメンタイト等が挙げられる。これらの合計は組織全体に対する面積率で約5%以下であれば許容される。
フェライトの平均結晶粒径:5.0μm以下
フェライト相の結晶粒径は、熱延鋼板の靭性に影響を及ぼす。熱延鋼板の靭性を確保するためには、フェライトの平均結晶粒径を5.0μm以下とすることが有効である。好ましくは4.0μm以下である。
TiおよびVを含む炭化物
優れた伸び特性、伸びフランジ性等の加工性を維持しつつ熱延鋼板の高強度化を図るには、上記の如く熱延鋼板の主相をフェライト相とし、フェライト相を微細炭化物の析出で強化することが有効である。なお、炭化物が微細であるほど、熱延鋼板負荷時に転位の運動を阻害する粒子数が増加するため、炭化物を析出させることによって得られる強化量は増大する。
ここで、本発明においては、熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とするために、TiおよびVを含む微細炭化物をフェライト相中に析出させる必要がある。理由は定かではないが、Tiのみからなる炭化物や、Vのみからなる炭化物は粗大化し易く、鋼板強度を安定的に確保することが困難である。そのため、本発明では、析出強化を図るための炭化物として、TiおよびVを含む炭化物を適用する。なお、ここで云う「TiおよびVを含む炭化物」としては、例えばTi-V系複合炭化物のほか、TiおよびVと共に他の炭化物形成元素(Mo、Nb、W等)を含む複合炭化物などが挙げられる。
TiおよびVを含む炭化物の形状・寸法
本発明において析出強化に寄与する炭化物(TiおよびVを含む微細炭化物)は、板状の炭化物であり、熱延鋼板の母相であるフェライト相に対して特定の方位関係を有して析出する。そのため、炭化物を観察する方位によってはその形状、大きさを正しく判定できないことがある。
本発明において析出強化に寄与する板状炭化物は、板の盤面がフェライト相の[001]方向と平行になるように(すなわち、板の盤面の法線がフェライト相の[001]方向と垂直となるように)析出する。したがって、本発明において析出強化に寄与する炭化物を、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状は略矩形状となる。そして、上記板状炭化物の板厚の寸法は、略矩形状の幅(略矩形状の2組の対向する辺のうちの、短いほうの辺)の寸法とほぼ一致する。このように、本発明において析出強化に寄与する炭化物は、フェライト相の[001]方向から観察することで、析出物の形状を正しく判定することができる。
また、炭化物が微細であるほど高い析出強化量が得られ、特にフェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状である場合、熱延鋼板が著しく高強度化する。そこで、本発明においては、熱延鋼板に析出する炭化物を、上記所定の方向から観察した場合における形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状となる炭化物(TiおよびVを含む炭化物)に規定する。このように規定することで、熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とすることができる。
なお、熱延鋼板の高強度化には、フェライト相中に析出させる炭化物のサイズだけでなく析出量も重要であり、微細な炭化物を多量に析出させるほど析出強化量は増大する。後述するように本発明では、炭化物形成元素であるC、Ti、Vの含有量を規定し、且つ鋼中に固溶するTi量を制限して炭化物の形成に寄与するTi量を確保することで、熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とするに十分な微細炭化物析出量を得ている。
次に、本発明熱延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.07%以上0.12%以下
Cは、TiおよびV等とナノサイズの炭化物(板状の炭化物であって、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状となる炭化物)を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とするためには、C含有量を0.07%以上とする必要がある。一方、C含有量が0.12%を超えると、熱延鋼板製造時、仕上げ圧延終了後の冷却過程において、巻き取り前に粗大なTiCが析出し、最終的に得られる熱延鋼板の伸びフランジ性が低下する。したがって、C含有量は0.07%以上0.12%以下とする。
Si:0.2%以下
Siは、固溶強化により鋼を強化する効果があるが、同時に鋼の靭性低下を招く。そのため、Si含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。
Mn:0.1%以上1.2%以下
Mnは、オーステナイト→フェライト変態温度を下げる効果を有することから、熱延鋼板の結晶粒を微細化して靭性向上に寄与する元素である。後述するように、本発明の熱延鋼板は、オーステナイト域で仕上げ圧延を施し、仕上げ圧延終了後の冷却・巻き取り過程でオーステナイト→フェライト変態させ実質的にフェライト単相組織とすることにより製造される。そのため、オーステナイト→フェライト変態温度が低い場合には、仕上げ圧延終了温度を低温化することができ、熱間圧延時におけるオーステナイト粒の粒成長を抑制することができる。また、仕上げ圧延終了後の冷却・巻き取り過程におけるオーステナイト→フェライト変態により得られるフェライト相の結晶粒の大きさは変態前のオーステナイト粒の大きさに依存し、変態前のオーステナイト粒が微細であるほど、オーステナイト→フェライト変態により得られるフェライト相の結晶粒も微細化する。
このような効果を得るためには、Mn含有量を0.1%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が1.2%を超えると、Mnが板厚中央に偏析して異質な組織を形成することで、熱延鋼板の伸びフランジ性が低下する。したがって、Mn含有量は0.1%以上1.2%以下とする。好ましくは0.5%以上1.1%以下である。
P:0.025%以下
Pは、固溶強化元素であるが、P含有量が0.025%を超えると偏析が顕著になり、熱延鋼板の伸びフランジ性および靭性の低下を招く。したがって、P含有量は0.025%以下とする。なお、熱延鋼板特性の観点からはP含有量を低減することが好ましいが、P含有量を極端に低減することは製造コストの高騰を招く。P含有量に関し、熱延鋼板の製造コストを大きく上昇させない実用的な下限値は0.001%程度となる。
S:0.005%以下
Sは、MnやTiと硫化物を形成し、熱延鋼板の加工性(伸び、伸びフランジ性)の低下を招く。そのため、本発明ではS含有量を極力低減することが望ましく、0.005%以下とする。但し、S含有量を極端に低減することは製造コストの高騰を招く。S含有量に関し、製造コストを大きく上昇させない実用的な下限値は0.0005%程度となる。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であるが、Al含有量が0.1%を超えると、介在物が多量に生成して熱延鋼板の伸びおよび伸びフランジ性の低下を招く。したがって、Al含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下である。なお、Al含有量の下限値は特に存在しないが、脱酸剤としての効果を十分に得るためにはAl含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
N:0.008%以下
Nは、本発明においては有害な元素であり、極力低減することが望ましい。特にN含有量が0.008%を超えると、鋼中に粗大な窒化物が生成することに起因して、熱延鋼板の伸びフランジ性が低下する。したがって、N含有量は0.008%以下とする。
Ti:0.14%以上0.20%以下
Tiは、本発明において重要な元素の一つである。Tiは、V等と共にナノサイズの炭化物、すなわち、板状の炭化物であって、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状である炭化物を形成し、母相(本発明においては実質的にフェライト単相)の析出強化に寄与する。また、V等と複合炭化物を形成しないTiは主に、熱間圧延製造時、仕上げ圧延終了後の冷却過程においてオーステナイト粒界に偏析して炭化物を形成するが、この炭化物はフェライトの核生成サイトとなり、フェライト粒の微細化に寄与する。そして、フェライト粒の微細化に伴い、熱延鋼板の強度、靭性が向上する。
このような効果を発現して所望の熱延鋼板強度(引張強さ980MPa以上)や靭性を確保するには、Ti含有量を0.14%以上とする必要がある。一方、Ti含有量が0.20%を超えると、炭化物が粗大化して形状が球状になり易く、熱延鋼板強度および伸びフランジ性の低下を招く。したがって、Ti含有量は0.14%以上0.20%以下とする。好ましくは0.15%以上0.18%以下である。
V:0.05%以上0.15%以下
Vは、本発明において重要な元素の一つである。上記したように、VはTi等と共にナノサイズの炭化物を形成し、母相の析出強化に寄与する。このような効果を発現して所望の熱延鋼板強度(引張強さ980MPa以上)を確保するには、V含有量を0.05%以上とする必要がある。一方、V含有量が0.15%を超えると、フェライト粒径が大きくなり、熱延鋼板の靭性低下を招く。したがって、V含有量は0.05%以上0.15%以下とする。好ましくは0.08%以上0.14%以下である。
上記した成分が基本の成分であるが、必要に応じて、Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を選択して含有することができる。
Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、Nb、Wはいずれも、Ti、Vとともに、ナノサイズの複合炭化物を形成し母相の強化に寄与するとともに、フェライト粒を微細にして靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を確保するためには、Mo含有量:0.02%以上、Nb含有量:0.02%以上、W含有量:0.02%以上とすることが好ましい。一方、Mo含有量:0.30%、Nb含有量:0.10%、W含有量:0.10%を超えると、延性が低下する傾向が見られる。このため、含有する場合には、Mo含有量は0.02%以上0.30%以下、Nb含有量は0.02%以上0.10%以下、W含有量は0.02%以上0.10%以下に限定することが好ましい。
本発明の熱延鋼板は、C、Ti、V、SおよびN、あるいはさらにMo、Nb、Wを、上記した範囲で且つ(1)、(2)式を満足するように含有する。
((Ti/48)−(N/14)−(S/32) +(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51) > 1.0 …(1)
(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184)) > 1.0 … (2)
(ここで、C、Ti、V、S、N、Mo、Nb、W:各元素の含有量(質量%))
上記(1)式および(2)式は、TiおよびVを含む炭化物、フェライト粒の各々を微細化して熱延鋼板の強度・靭性を高めるために満足すべき要件であり、本発明において極めて重要な指標である。なお、上記(1)、(2)式の左辺値を算出する場合には、式中に表示された元素のうち、含有しないものは零として算出するものとする。
((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51) > 1.0 …(1)
熱延鋼板の靭性を向上させる手段としては、フェライト粒の細粒化が有効である。そこで、本発明においては、炭化物として析出可能なV量(V/51)よりも、炭化物として析出可能なTi量((Ti/48)−(N/14)−(S/32))、さらにMo、Nb、Wを含有する場合には、Ti量とMo量(Mo/96)、Nb量(Nb/93)、W量(W/184)の合計量を多くする。すなわち、本発明においては、((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51)の値を1.0超とする必要があり、1.1以上とすることが好ましい。これにより、熱延鋼板のフェライト粒が微細化して脆性遷移温度が−20℃以下にまで低下し、靭性を大きく向上することができる。但し、((Ti/48)−(N/14)−(S/32) +(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51)の値が過剰に大きくなると、炭化物が粗大化し易くなり、熱延鋼板強度が低下するおそれがあるため、2.0以下とすることが好ましい。
(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184)) > 1.0 …(2)
上記のようにC、V、Ti、あるいはさらにMo、Nb、Wの各々を所定の含有量とし、且つ(1)式を満足するように含有しただけでは、熱延鋼板の靭性は向上するものの、TiおよびVを含む炭化物が粗大化し易くなり、引張強さが980MPa未満となる場合がある。そこで、本発明では、上記に加えて更に、(2)式を満足するようにC、Ti、V、N、S、あるいはさらにMo、Nb、W各々の含有量を規定するとともに、後述するように炭化物として析出していないCを0.022%以上含むようにすることで、熱延鋼板の強度安定化を図る。
本発明においては、炭化物として析出可能なTiとVあるいはさらにMo、Nb、Wのモル分率の合計よりも、炭化物として析出可能なCのモル分率を大きくすることで、TiおよびVを含む炭化物を所望の形態(板状炭化物であって、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状となる炭化物)として安定して析出させることができる。したがって、本発明では、(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))の値を1.0超とする必要がある。好ましくは1.1以上である。これにより、引張強さ980MPa以上の熱延鋼板を安定的に実現することができる。但し、(C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))の値が過剰に高くなると、Cが粒界セメンタイトを形成し、熱延鋼板の伸びフランジ性が低下するおそれがあるため、2.5以下とすることが好ましい。
なお、後述するように本発明の熱延鋼板を製造するに際しては、熱間圧延時に鋼素材をオーステナイト域に加熱するが、1300℃以下の温度域において鋼中のTiはN或いはSと容易に化学結合して析出する。したがって、上記(1)式および(2)式において、炭化物として析出可能なTiの量は、Ti/48からNと結合する分(N/14)およびSと結合する分(S/32)を差し引いた値とした。
固溶Ti:0.04%以下
熱延鋼板の高強度化には、フェライト相中に析出させる炭化物を微細化するだけでなく、その析出量を十分に確保することも重要となる。十分な析出強化量を得るためには、析出物形成元素であるC、Ti、Vの含有量をそれぞれC:0.07%以上0.12%以下、Ti:0.14%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.15%以下とし、且つ、熱延鋼板に含まれる全Ti量のうち固溶状態で存在するTiを0.04%以下に制限する必要がある。このように固溶Ti量を制限し、残りのTiを、熱延鋼板の強度向上や靭性向上に寄与する炭化物として析出させることで、980MPa以上の引張強さを確保することができる。なお、本発明においては、固溶Ti量を極力低減することが好ましい。
炭化物として析出していないC:0.022%以上
理由は明らかでないが、炭化物として析出していないCは、熱延鋼板の高強度化に寄与する炭化物(TiおよびVを含む微細炭化物)の粗大化を抑制する効果を有する。そこで、本発明においては、炭化物として析出していないCを0.022%以上とする。これにより、TiおよびVを含む炭化物を、所望の形態(板状炭化物であって、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状となる炭化物)に安定して析出させることができる。
また、炭化物として析出していないCは、粒界に偏析することで粒界強度を高め、熱延鋼板の高強度化に寄与するとともに靭性を向上させる効果も有する。このような観点からも、炭化物として析出していないCを0.022%以上とすることが好ましい。
なお、炭化物として析出していないCが過剰になると、熱延鋼板の高強度化に寄与する炭化物の析出量が減少する。そのため、炭化物として析出していないCは0.050%以下とすることが好ましい。
本発明の熱延鋼板において、上記以外の残部はFe及び不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、Sb、Cu、Ni、As、Sn、Pbが挙げられるが、これらの合計含有量が0.2%以下であれば上記した本発明の効果に影響を及ぼすことはない。また、Zr、Ta、Cr、Co、Se、Zn或いはCa、REM、Mg、Csが含有されることも考えられるが、上記した元素のうち異種以上の合計含有量が1.0%以下であれば、上記した本発明の効果に影響を及ぼすことはない。
上記した熱延鋼板の表面に、めっき層を形成し、めっき層を有する鋼板(めっき鋼板)としてもよい。なお、めっき層としては、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層が例示できる。
次に、本発明の熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明は、所定の組成を有する鋼素材を、加熱し、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とする。この際、鋼材の加熱温度を1150℃以上1350℃以下とし、仕上げ圧延終了温度を880℃以上とし、巻取り温度を550℃以上700℃以下とし、巻き取り後の熱延コイルを水冷することを特徴とする。
本発明において、鋼の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を用いることができる。また、溶製後、偏析等の問題から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブ(鋼素材)としてもよい。
加熱温度:1150℃以上1350℃以下
上記の如くして得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施すが、本発明においては、鋼素材をオーステナイト単相域に加熱して、粗圧延前に鋼素材中の炭化物を溶解する必要がある。炭化物形成元素としてTiおよびV、あるいはさらにMo、Nb、Wを含有する本発明においては、鋼素材を1150℃以上の温度に再加熱する必要がある。一方、鋼素材の加熱温度が1350℃超と極端に高くなると、加熱に要するエネルギー及び設備への負荷が大きくなる。したがって、鋼素材の加熱温度は1350℃以下とする。
但し、鋳造後粗圧延前の鋼素材が所定温度以上の温度を保持しており、鋼素材中の炭化物が十分に溶解している場合は、粗圧延前の鋼素材を加熱する工程は省略可能であり、直送圧延を行ってもよい。なお、粗圧延条件については特に限定する必要はない。
仕上げ圧延終了温度:880℃以上
仕上げ圧延終了温度が880℃未満であると、再結晶が起きず未再結晶温度域で圧延が行われるため、圧延荷重が著しく増大して熱間圧延が困難になる。したがって、仕上げ圧延終了温度は880℃以上とする。好ましくは890℃以上である。一方、仕上げ圧延終了温度が過剰に高くなると、最終的に得られる熱延鋼板のフェライト粒径が粗大化し、靭性低下の要因となる。そのため、仕上げ圧延終了温度は1020℃以下とすることが望ましい。
巻取り温度:550℃以上700℃以下
熱延鋼板の高強度化に寄与し得る炭化物(TiおよびVを含む微細炭化物)は主に巻き取り工程で析出するが、この炭化物の析出量および大きさ・形態は巻取り温度に応じて変化する。そのため、巻取り温度の適正化は本発明において重要である。
巻取り温度が700℃を超えると、TiおよびVを含む炭化物が大きくなり、フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm超または平均幅1nm超の板状形態、もしくは回転楕円体となる。そのため、熱延鋼板の引張強さを980MPa以上とすることができない。一方、巻取り温度が550℃未満では、熱延鋼板中の固溶Tiが0.04%を超え、TiおよびVを含む炭化物の析出量が不足し、980MPa以上の引張強さを確保できない。したがって、巻取り温度は550℃以上700℃以下とする。好ましくは570℃以上670℃以下である。
なお、仕上げ圧延終了後、仕上げ圧延終了温度から巻取り温度までの平均冷却速度は、15℃/s以上50℃/s以下と通常の水冷条件であれば、鋼の組織への影響が小さいため好ましい。また、上記仕上げ圧延終了温度と巻取り温度は、鋼板表面における温度である。
巻き取り後の熱延コイル:水冷
本発明の熱延鋼板は、炭化物として析出していないCを0.022%以上含むことで靭性の向上を図っている。しかしながら、本発明の熱延鋼板の主相であるフェライトは炭素を殆ど固溶しない。そのため、巻き取り後の熱延コイルを放冷或いは空冷すると、炭化物(TiおよびVを含む炭化物、またはフェライト粒の微細化に寄与する炭化物)の形成に寄与しないCは、熱延コイルが室温まで冷却される前にFeと結合し、セメンタイトとして析出してしまう。
以上のように、巻き取り後の熱延コイルを放冷あるいは空冷すると、炭化物として析出していないCを0.022%以上とすることができない。したがって、本発明では、巻き取った熱延コイルを水冷することが必要である。熱延コイルを水冷する方法としては、例えば熱間圧延ラインに併設された水槽に熱延コイルを浸漬する方法がある。熱延コイルの水冷は、巻き取り後直ちに行うことが望ましく、巻き取り後30分以内に水冷することが好ましい。また、熱延コイルの水冷は、熱延コイル全体の温度が200℃以下となるまで行うことが望ましい。
なお、本発明では、上記した巻き取り、熱延鋼板とするに代えて、巻き取り、熱延鋼板としたのちにさらに熱延鋼板表面にめっき層を形成するめっき処理を施してもよい。めっき層としては、溶融亜鉛めっき層とすることが好ましいが、それに限定されないことは言うまでもない。以下、めっき層を溶融亜鉛めっき層とする場合について説明する。
巻き取り、熱延鋼板としたのちにさらに熱延鋼板表面にめっき層(溶融亜鉛めっき層)を形成する場合には、巻き取りの巻取り温度を400℃以上700℃以下とし、巻き取り後の熱延コイルの水冷は、行っても行わなくてもよい。
巻取り温度:400℃以上700℃以下
巻取り温度が550℃未満では、熱延鋼板中に、強化に寄与する微細な炭化物の析出量が不足し強度が低下するが、めっき層を形成する場合には、巻き取り後に行う、連続焼鈍処理で熱延鋼板を加熱する際に、微細な炭化物の析出量が増大し強度が上昇する。このためめっき処理を行う場合は、巻取り温度は400℃以上としてもよい。巻取り温度が、400℃未満では高い転位密度を含むベイナイト相やマルテンサイト相が生成し,伸びや、穴拡げ性が低下する。400℃以上550℃未満でもベイナイト相が生成するが,この温度域で生成するベイナイト相は、連続焼鈍処理により転位密度が低下する。このため、伸びや穴拡げ性の低下を招かない。一方、巻取り温度が700℃超の高温となると、炭化物が粗大化し強度が低下する。また、巻き取り後に放冷した場合は、セメンタイトが析出し、炭化物として析出していないC量が0.022%未満となるが,セメンタイトとして析出した場合でも、連続焼鈍処理時の加熱中にセメンタイトが溶解するため,巻き取り後の水冷処理は行っても、また行わなくてもよい。
巻き取り後、酸洗して表面スケールを除去して、好ましくは常用の連続焼鈍装置を利用して、連続焼鈍処理とめっき処理を連続して施すことが好ましい。連続焼鈍処理は、焼鈍温度:600℃以上750℃以下で行う。
焼鈍温度:600℃以上750℃以下
連続焼鈍処理の焼鈍温度が600℃未満では,巻き取り時に析出したセメンタイトあるいは加熱途中に析出したセメンタイトが溶解せず,炭化物として析出していないC量が0.022%未満となる。一方、焼鈍温度が750℃超の高温とすると、微細炭化物が粗大化し強度が低下する。このため、連続焼鈍処理の焼鈍温度は600℃以上750℃以下に限定することが好ましい。
めっき処理は、常用の溶融亜鉛めっき処理とすることが好ましい。連続焼鈍処理を施された鋼板は、所定の温度(400〜500℃)に保持されためっき浴(溶融亜鉛めっき浴)に浸漬されて、表面に所望量のめっき層(溶融亜鉛めっき層)を付着させる。なお、めっき処理後に冷却される。
めっき処理後の冷却速度:20℃/s以上
巻き取り温度、焼鈍温度が適正範囲であれば、セメンタイトはほぼ析出していないため、めっき処理時点で、炭化物として析出していないC量が0.022%以上となっている。そのため、めっき処理後の冷却速度が、20℃/s未満では、冷却途中でセメンタイトとして析出し、炭化物として析出していないC量が0.022%未満となる。そのため、めっき処理後の冷却速度は、平均で20℃/s以上とする。なお、冷却速度の上限はとくに限定する必要はなく、20℃/s以上であれば、設備能力の範囲で冷却を行えばよい。めっき処理後の冷却は、上記した冷却速度で150℃以下の温度まで冷却することが好ましい。
めっき処理を行ったのち、さらに、めっき層の合金化処理を施しても良い。めっき層の合金化処理としては、常用の加熱温度:450〜550℃の温度に加熱し、冷却する処理とすることが好ましい。冷却としては、平均の冷却速度で20℃/s以上とすることが好ましい。
合金化処理後の冷却速度:20℃/s以上
巻取り温度及び焼鈍温度が上記した適正な範囲で、めっき処理後の冷却速度が上記した範囲内であれば、合金化処理の時点でもセメンタイトはほぼ析出しておらず,炭化物として析出していないC量が0.022%以上となっている。冷却速度が20℃/s未満では、冷却中にセメンタイトが析出し炭化物として析出していないC量が0.022%未満となる。そのため、合金化処理後の冷却速度は、平均で20℃/s以上とすることが好ましい。なお、冷却速度の上限はとくに限定する必要はなく、20℃/s以上であれば、設備能力の範囲で冷却を行えばよい。合金化処理後の冷却は、上記した冷却速度で150℃以下の温度まで冷却することが好ましい。
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造して肉厚250mmのスラブ(鋼素材)とした。これらのスラブを加熱し、粗圧延し、仕上げ圧延を施した後水冷し、コイルに巻き取り、板厚2.6mmの熱延鋼板とした。また、巻き取ったコイルのうち一部に対しては、巻き取り後30分以内に水槽に浸漬することにより水冷を行った(浸漬時間:2時間以上)。残りのコイルは水冷を行なわず放冷とした。スラブの加熱温度、仕上げ圧延終了温度、巻き取り温度および巻き取り後の水冷の有無を表2に示す。
Figure 2015017322
Figure 2015017322
上記した方法により得られた熱延鋼板から試験片を採取し、以下に示す方法により組織観察、化学分析、引張試験、穴拡げ試験、衝撃試験を行い、フェライト相の面積率、フェライト相の平均結晶粒径、TiおよびVを含む炭化物の形状および大きさ、固溶Ti量、炭化物として析出していないC量、引張強さ、全伸び、穴拡げ率(伸びフランジ性)、延性脆性遷移温度を求めた。
(i)組織観察
得られた熱延鋼板(板厚方向中央部)から試験片を採取し、試験片の圧延方向断面を機械的に研磨し、ナイタールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率3000倍にて10視野分撮影した。そして、得られた組織写真(SEM写真)を用い、画像解析装置によりフェライト相、フェライト相以外の組織の種類、および、フェライト相の面積率を求めた。また、フェライト相の平均結晶粒径は、上記により得られた組織写真(SEM写真)を用い、JIS G 0551の規定に準拠した切断法により求めた。
また、得られた熱延鋼板から作製した薄膜(試験片)を、透過電子顕微鏡(倍率:100,000倍以上)によって観察し、TiおよびVを含む炭化物の形状と大きさを求めた。
透過電子顕微鏡による観察は、母相であるフェライト相に対して[001]結晶方向、つまりフェライト相の[001]結晶方向から行い、EDS分析によりTiおよびVを検出した炭化物の形状と大きさを求めた。なお、観察方向を限定したのは、TiおよびVを含む炭化物がフェライト相に対して特定の方位関係を有して析出するためである。
TiおよびVを含む炭化物は、板状炭化物であり、板の盤面がフェライト相の[001]方向と平行になるように(すなわち、板の盤面の法線がフェライト相の[001]方向と垂直となるように)析出する。そのため、TiおよびVを含む炭化物を、フェライト相の[001]方向から観察すると、矩形状に観察される。
上記した方法により矩形状に観察される個々の炭化物について、最も寸法の大きい部分の長さを矩形の長さ、最も寸法の小さい部分の長さを矩形の幅とした。100個以上の炭化物について矩形の長さと幅を測定し、それぞれの算術平均値を矩形の平均長さ、矩形の平均幅とした。
(ii)化学分析
固溶Ti量分析は、非特許文献(城代哲史、外3名、「高強度鋼中合金元素の固溶定量法の開発」、材料とプロセス、日本鉄鋼協会、2010年、Vol.23、No.2、p.1348)に記載の方法にしたがい行った。すなわち、得られた熱延鋼板(板厚方向中央部)から採取した試験片を、10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液中で電解し、電解直後の電解液を採取し、EDTA水溶液を加えてからICP質量分析装置で鉄濃度(Cfe)、Ti濃度(Cti)およびV濃度(Cv)を測定した。また、試験片に含まれる鉄以外の元素をスパーク放電発光分光分析法で定量し、それらの合計値を100%から減算して、試験片のFe濃度(Fe%)を算出した。これらの値を用い、固溶Ti量、固溶V量を次式より求めた。
固溶Ti量=(Cti/Cfe)×Fe%
固溶V量=(Cv/Cfe)×Fe%
なお、本発明の熱延鋼板に含まれるTi-V系複合炭化物の大きさは極めて微細なため、一般的によく用いられる析出量分析、すなわち鋼板を電解し、フィルター上に捕集した残渣を定量する方法では、炭化物がフィルターの孔からろ過漏れし、正しく定量できない。TiおよびVの鋼中での正確な析出量もしくは固溶量を知るためには、上記分析方法が必要である。
炭化物として析出していないC量は、上記の方法で求めた固溶Ti量、固溶V量および抽出残渣法により求めた。
上記の方法で求めた固溶Ti量を用い、(Ti−固溶Ti量−(S×48/32)−(N×48/14))の値を算出することで、試験片に含まれるTiのうち炭化物として析出したTi量を求めた。この析出したTi量には、微細なTi-V系複合炭化物(TiおよびVを含む炭化物)として析出したTiに加え、圧延中に析出しフェライトの核生成サイトとなるTi炭化物として析出したTiが含まれる。なお、上記の式において、Ti、S、Nは、試験片のTi含有量、S含有量、N含有量(いずれも質量%)である。また、上記の方法で求めた固溶V量を用い、(V−固溶V量)の値を算出することで、試験片に含まれるVのうち炭化物として析出したV量を求めた。なお、上記の式においてVは、試験片のV含有量(質量%)である。
更に、10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液を電解液として用い、試験片を電解した後、孔径0.2mmのフィルター上に捕集した抽出残渣の化学分析を行い、炭化物となったFe量を求めた。
これらの分析結果から、炭化物として析出していないC量(質量%)を、以下の式により算出した。以下の式においてCは、試験片のC含有量(質量%)である。
炭化物として析出していないC量=C−((炭化物として析出したTi量/48)+(炭化物として析出したV量/51))×12−(Fe析出量×12/(56×3))
なお、上記の式から明らかであるように、炭化物として析出していないC量とは、Ti-V複合系炭化物(Ti,V)C、Ti炭化物およびセメンタイトFe3C以外の形態のC量である。
(iii)引張試験
得られた熱延鋼板から、圧延直角方向を引張方向とするJIS5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠した引張試験を行い、引張強さ(TS)および全伸び(El)を測定した。
(iv)穴拡げ試験
得られた熱延鋼板から、試験片(大きさ:130 mm×130 mm)を採取し、該試験片に初期直径d0:10mmの穴を打ち抜き加工(クリアランス:試験片板厚の12.5%)で形成した。これら試験片を用いて、穴拡げ試験を実施した。すなわち、該穴にポンチ側から頂角:60°の円錐ポンチを挿入し、該穴を押し広げ、亀裂が鋼板(試験片)の板厚を貫通したときの穴の径d(mm)を測定し、次式で穴拡げ率λ(%)を算出した。
穴拡げ率λ(%)={(d−d0)/d0}×100
(v)衝撃試験
JIS Z 2242(2005) の規定に準拠し、2.5mmサブサイズのVノッチ試験片でシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面率が50%となる温度を延性脆性遷移温度vTrs(℃)として求めた。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2015017322
本発明例はいずれも、引張強さ980MPa以上の高強度と伸び15%以上且つ穴拡げ率40%以上の優れた加工性を兼備し、しかも延性脆性遷移温度vTrsが−20℃以下と良好な低温靭性を有する。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所定の高強度を確保できていないか、十分な穴拡げ率が確保できていないか、十分な靭性が確保できていない。
(実施例2)
表4に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造して肉厚250mmのスラブ(鋼素材)とした。これらのスラブ(鋼素材)を、表5に示す加熱温度に加熱し、粗圧延と表5に示す仕上げ圧延終了温度で圧延を終了する仕上げ圧延とを施した後、表5に示す冷却速度(平均冷却速度)で水冷する冷却を施し、表5に示す巻取り温度でコイルに巻き取り、板厚2.6mmの熱延鋼板とした。なお、一部のコイルについては、巻き取り後、30分以内に水槽に浸漬するコイル水冷を実施した。なお、浸漬時間は2時間以上とした。それ以外のコイルについては、コイル水冷を行わず、放冷とした。
得られた熱延鋼板の一部について、酸洗して表面スケールを除去した後に、連続焼鈍設備を用いて、表5に示す条件で焼鈍処理と、溶融亜鉛めっき処理とを施した。なお、溶融亜鉛めっき処理は、連続焼鈍処理後の鋼板を460℃の溶融亜鉛めっき浴(0.13%Al-Zn)に浸漬し、溶融亜鉛めっき層を表面に付着させ、めっき鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板)とした。溶融亜鉛めっき処理後の冷却は、表5に示す平均冷却速度となるように、ガス冷却または水冷とした。さらに、一部のめっき鋼板には、溶融亜鉛めっき層の合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。なお、合金化処理温度は520℃とした。合金化処理後の冷却は、表5に示す平均冷却速度となるように、ガス冷却または水冷とした。
Figure 2015017322
Figure 2015017322
得られた熱延鋼板から、実施例1と同様に、試験片を採取し、実施例1と同様な方法により組織観察、化学分析、引張試験、穴拡げ試験、衝撃試験を行い、フェライト相の面積率、フェライト相の平均結晶粒径、TiおよびVを含む炭化物の形状および大きさ、固溶Ti量、炭化物として析出していないC量、引張強さ、全伸び、穴拡げ率(伸びフランジ性)、延性脆性遷移温度を求めた。
なお、炭化物として析出していないC量は、実施例1と同様に化学分析で、固溶Ti量、固溶V量と同様に、固溶Mo量、固溶Nb量、固溶W量を求めたのち、得られた固溶Mo量、固溶Nb量、固溶W量を用い、(Mo−固溶Mo量)、(Nb−固溶Nb量)、(W−固溶W量)の値を算出することで、Mo、Nb、Wのうち炭化物として析出したMo、Nb、W量を求めて、試験片に含まれるTi、Vのうち炭化物として析出したTi、V量に加えて、炭化物として析出していないC量を求めた。
得られた結果を表6に示す。
Figure 2015017322
本発明例はいずれも、引張強さ980MPa以上の高強度と伸び15%以上且つ穴拡げ率40%以上の優れた加工性を兼備し、しかも延性脆性遷移温度vTrsが−20℃以下と良好な低温靭性を有する。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所定の高強度を確保できていないか、十分な穴拡げ性が確保できないか、十分な靭性が確保できていない。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.07%以上0.12%以下、 Si:0.2%以下、
    Mn:0.1%以上1.2%以下、 P :0.025%以下、
    S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
    N :0.008%以下、 Ti:0.14%以上0.20%以下、
    V :0.05%以上0.15%以下
    を、C、Ti、V、SおよびNが下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、且つ、固溶Tiが質量%で0.04%以下、炭化物として析出していないCが質量%で0.022%以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    組織全体に対するフェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の平均結晶粒径が5.0μm以下であり、TiおよびVを含む炭化物であって、前記フェライト相の[001]方向から観察したときの形状が、平均長さ8nm以下、平均幅1nm以下の矩形状である炭化物が析出した組織を有し、
    引張強さが980MPa以上であることを特徴とする加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板。

    ((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51)>1.0 … (1)
    (C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))>1.0 … (2)
    ここで、C、Ti、V、S、N、Nb、Mo、W:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 表面にめっき層を有してなる請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
  4. 鋼素材を、加熱し、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.07%以上0.12%以下、 Si:0.2%以下、
    Mn:0.1%以上1.2%以下、 P :0.025%以下、
    S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
    N :0.008%以下、 Ti:0.14%以上0.20%以下、
    V :0.05%以上0.15%以下
    を、C、Ti、V、SおよびNが下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、
    前記加熱の加熱温度を1150℃以上1350℃以下とし、
    前記仕上げ圧延の仕上げ圧延終了温度を880℃以上とし、
    前記巻き取りの巻取り温度を550℃以上700℃以下とし、前記巻き取り後の熱延コイルを水冷することを特徴とする加工性および靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

    ((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))/(V/51)>1.0 … (1)
    (C/12)/((Ti/48)−(N/14)−(S/32)+(V/51)+(Mo/96)+(Nb/93)+(W/184))>1.0 … (2)
    ここで、C、Ti、V、S、N、Nb、Mo、W:各元素の含有量(質量%)
  5. 前記巻き取り、熱延鋼板とするに代えて、巻き取り、熱延鋼板としたのちにさらに熱延鋼板表面にめっき層を形成するにあたり、前記巻き取りの巻取り温度を400℃以上700℃以下とし、前記巻き取り後の熱延コイルを水冷するかあるいは水冷することなしに、連続焼鈍処理およびめっき処理を施し、該めっき処理後に、平均冷却速度:20℃/s以上で150℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項4に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記めっき処理に引続き、前記めっき層の合金化処理を施し、該合金化処理後に、平均冷却速度:20℃/s以上で150℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項5に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.02%以上0.30%以下、Nb:0.02%以上0.10%以下、W:0.02%以上0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
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