しかしながら、例えば、車両感知器が設置されていないリンクの旅行時間をプローブ情報に基づいて推定する場合において、プローブ情報のサンプル数が少ないために取得された平均速度の確実性が低い場合には、交通事象の推定の確実性も低くなる。そのため、実際には交通渋滞が生じていないにも拘わらず、「交通渋滞発生」との誤った情報を提供してしまう可能性がある。
そのような誤った情報の提供を回避するために、推定の確実性が低い場合には情報を提供しないという運用をとることもできるが、この場合には、必要数のプローブ情報が収集されて推定の確実性が高まるまでは情報提供を行えないため、交通管制センタ等からの情報提供のタイミングが遅れてしまう。例えば、必要数のプローブ情報が収集されて交通渋滞の発生が確実に検知された後でなければ、「交通渋滞発生」との情報を提供することができない。
ところが、ドライバにとっては、渋滞が発生した初期の段階や、まだ渋滞は発生していないが渋滞の原因となる交通事故等の事象が発生した段階等、推定の確実性が低いために交通管制センタ等から正式な情報が未だ提供されていない状況においても、何等かの情報を早期に入手できれば、渋滞に巻き込まれる前に迂回ルートを選択することができるため、非常に有益である。
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、交通管制センタから正式な情報が未だ提供されていない状況等であっても、発生した交通事象に関する情報等をユーザが入手することが可能な、交通情報処理装置、交通情報処理システム、プログラム、及び交通情報処理方法を得ることを目的とするものである。
本発明の第1の態様に係る交通情報処理装置は、交通に関わる情報の提供を希望する情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する第1の受信手段と、交通に関わる情報の提供が可能な情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する第2の受信手段と、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置とを結び付ける結び付け手段と、前記情報提供希望者と前記情報提供可能者との対話に関する音声データを、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置との間で中継する中継手段と、を備えることを特徴とするものである。
第1の態様に係る交通情報処理装置によれば、第1の受信手段は、情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する。また、第2の受信手段は、情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する。そして、結び付け手段は、第1の車載装置と第2の車載装置とを結び付け、中継手段は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データを、第1の車載装置と第2の車載装置との間で中継する。従って、情報提供希望者は、情報提供可能者との対話によって、必要な情報を入手することができる。その結果、例えば、何等かの交通事象が発生したが、推定の確実性が低いために交通情報処理装置から正式な情報が未だ提供されていない状況であっても、情報提供希望者は、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
本発明の第2の態様に係る交通情報処理装置は、第1の態様に係る交通情報処理装置において特に、何等かの交通事象が発生していると推定される地点に向かうと予想される車両を特定する特定手段と、当該車両に搭載された車載装置に対して、情報の提供を希望するか否かを問い合わせるための提供要否問合せデータを送信する送信手段と、をさらに備え、前記第1の受信手段は、前記提供要否問合せデータに対する回答として前記提供希望データを受信することを特徴とするものである。
第2の態様に係る交通情報処理装置によれば、特定手段は、何等かの交通事象が発生していると推定される地点に向かうと予想される車両を特定し、送信手段は、当該車両に搭載された車載装置に対して提供要否問合せデータを送信する。従って、当該車両の搭乗者は、交通情報処理装置から提供要否問合せデータを受信することによって、これから向かう先で何等かの交通事象が発生していることを知ることができる。そして、提供要否問合せデータに対して提供希望データを返信することにより、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することができる。
本発明の第3の態様に係る交通情報処理装置は、第2の態様に係る交通情報処理装置において特に、前記特定手段は、現在地から目的地までの経路内に前記地点を含む車両を、前記地点に向かうと予想される前記車両として特定することを特徴とするものである。
第3の態様に係る交通情報処理装置によれば、特定手段は、現在地から目的地までの経路内に、何等かの交通事象が発生していると推定される地点を含む車両を、当該地点に向かうと予想される車両として特定する。これにより、提供要否問合せデータの送信対象を的確に絞り込むことができる。
本発明の第4の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、何等かの交通事象が発生していると推定される地点の近傍に位置している車両を特定する特定手段と、当該車両に搭載された車載装置に対して、情報の提供が可能か否かを問い合わせるための提供可否問合せデータを送信する送信手段と、をさらに備え、前記第2の受信手段は、前記提供可否問合せデータに対する回答として前記提供可能データを受信することを特徴とするものである。
第4の態様に係る交通情報処理装置によれば、特定手段は、何等かの交通事象が発生していると推定される地点の近傍に位置している車両を特定し、送信手段は、当該車両に搭載された車載装置に対して提供可否問合せデータを送信する。これにより、提供可否問合せデータの送信対象を的確に絞り込むことができる。
本発明の第5の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記第2の受信手段は、情報提供可能者から自主的に送信された前記提供可能データを受信することを特徴とするものである。
第5の態様に係る交通情報処理装置によれば、第2の受信手段は、情報提供可能者から自主的に送信された提供可能データを受信する。従って、交通情報処理装置が交通事象の発生の推定さえも行っていないような極めて早期の段階であっても、情報提供可能者から自主的に送信された提供可能データを第2の受信手段が受信することにより、交通情報処理装置は、何等かの交通事象が発生していると推定することができる。そして、情報提供希望者が現れた場合には、情報提供可能者と情報提供希望者とを結び付けて両者に対話させることにより、情報提供希望者は、交通事象が発生した極めて早期の段階において、その交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
本発明の第6の態様に係る交通情報処理装置は、第5の態様に係る交通情報処理装置において特に、前記提供希望データを送信してきた車両の数が、前記提供可能データを送信してきた車両の数より多い場合に、前記提供可能データを送信してきた車両の近傍に位置して情報の提供が可能な他の車両を探索する探索手段をさらに備えることを特徴とするものである。
第6の態様に係る交通情報処理装置によれば、探索手段は、提供希望データを送信してきた車両の数が、提供可能データを送信してきた車両の数より多い場合に、提供可能データを送信してきた車両の近傍に位置して情報の提供が可能な他の車両を探索する。従って、情報提供可能者と情報提供希望者との間で一対一の対話を行う通信形態において、情報提供希望者の数に対して情報提供可能者の数が不足するという事態を回避することができる。
本発明の第7の態様に係る交通情報処理装置は、第1の態様に係る交通情報処理装置において特に、情報提供希望者が求める情報に関連する地点の近傍に位置している車両を特定する特定手段と、当該車両に搭載された車載装置に対して、情報の提供が可能か否かを問い合わせるための提供可否問合せデータを送信する送信手段と、をさらに備え、前記第2の受信手段は、前記提供可否問合せデータに対する回答として前記提供可能データを受信することを特徴とするものである。
第7の態様に係る交通情報処理装置によれば、特定手段は、情報提供希望者が求める情報に関連する地点の近傍に位置している車両を特定し、送信手段は、当該車両に搭載された車載装置に対して提供可否問合せデータを送信する。これにより、提供可否問合せデータの送信対象を的確に絞り込むことができる。また、情報提供希望者は、目的地の天候、路面状況、駐車場の混雑具合等の情報を知りたい場合に、当該目的地の位置情報を含む提供希望データを送信することにより、当該目的地又はその近傍に位置している情報提供可能者から、求める情報を入手することが可能となる。
本発明の第8の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第7のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記情報提供希望者と前記情報提供可能者との対話における音声の周波数を変更する変更手段をさらに備えることを特徴とするものである。
第8の態様に係る交通情報処理装置によれば、変更手段は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話における音声の周波数を変更する。これにより、情報提供希望者及び情報提供可能者の両者のプライバシーを保護することができる。
本発明の第9の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第8のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記情報提供可能者から提供された情報の有益度に基づく評価指標を車載装置毎に管理する管理手段をさらに備えることを特徴とするものである。
第9の態様に係る交通情報処理装置によれば、管理手段は、情報提供可能者から提供された情報の有益度に基づく評価指標を車載装置毎に管理する。従って、有益な情報を入手できた場合には情報提供希望者が情報提供可能者に対して高い評価ポイントを付与するという運用を行うことができ、評価ポイントの蓄積状況に応じてシステム利用料金を割り引く等のサービスを実施することができる。その結果、情報提供に関するインセンティブをユーザに与えることが可能となる。また、評価ポイントの低いユーザや、提供可否問合せデータを送信しても常に返信してこないユーザを、非協力ユーザとして管理することができる。従って、このような非協力ユーザに関しては、提供可否問合せデータの送信対象から除外する等の措置をとることが可能となる。さらに、情報提供可能者が複数存在する場合に、各情報提供可能者の評価ポイントの蓄積状況を情報提供可能者の識別情報と併せて表示することにより、情報提供希望者は、情報提供可能者を選択する際の判断材料として利用することができる。
本発明の第10の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第9のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記音声データを記録する記録手段をさらに備えることを特徴とするものである。
第10の態様に係る交通情報処理装置によれば、記録手段は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データを記録する。従って、記録した音声データを交通情報処理装置から他の車両のユーザに提供することにより、他の車両の搭乗者は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話における生の音声(プライバシー保護のためボイスチェンジャによって加工された音声を含む)を聴くことができるため、発生した交通事象の状況や原因を的確に把握すること等が可能となる。
本発明の第11の態様に係る交通情報処理システムは、交通情報処理装置と、車両に搭載された車載装置と、を備え、前記交通情報処理装置は、交通に関わる情報の提供を希望する情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する第1の受信手段と、交通に関わる情報の提供が可能な情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する第2の受信手段と、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置とを結び付ける結び付け手段と、前記情報提供希望者と前記情報提供可能者との対話に関する音声データを、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置との間で中継する中継手段と、を有することを特徴とするものである。
第11の態様に係る交通情報処理システムによれば、第1の受信手段は、情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する。また、第2の受信手段は、情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する。そして、結び付け手段は、第1の車載装置と第2の車載装置とを結び付け、中継手段は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データを、第1の車載装置と第2の車載装置との間で中継する。従って、情報提供希望者は、情報提供可能者との対話によって、必要な情報を入手することができる。その結果、例えば、何等かの交通事象が発生したが、推定の確実性が低いために交通情報処理装置から正式な情報が未だ提供されていない状況であっても、情報提供希望者は、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
本発明の第12の態様に係るプログラムは、交通情報処理装置に搭載されるコンピュータを、交通に関わる情報の提供を希望する情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する第1の受信手段と、交通に関わる情報の提供が可能な情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する第2の受信手段と、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置とを結び付ける結び付け手段と、前記情報提供希望者と前記情報提供可能者との対話に関する音声データを、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置との間で中継する中継手段と、として機能させるためのプログラムである。
第12の態様に係るプログラムによれば、第1の受信手段は、情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する。また、第2の受信手段は、情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する。そして、結び付け手段は、第1の車載装置と第2の車載装置とを結び付け、中継手段は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データを、第1の車載装置と第2の車載装置との間で中継する。従って、情報提供希望者は、情報提供可能者との対話によって、必要な情報を入手することができる。その結果、例えば、何等かの交通事象が発生したが、推定の確実性が低いために交通情報処理装置から正式な情報が未だ提供されていない状況であっても、情報提供希望者は、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
本発明の第13の態様に係る交通情報処理方法は、(A)交通に関わる情報の提供を希望する情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信するステップと、(B)交通に関わる情報の提供が可能な情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信するステップと、(C)前記第1の車載装置と前記第2の車載装置とを結び付けるステップと、(D)前記情報提供希望者と前記情報提供可能者との対話に関する音声データを、前記第1の車載装置と前記第2の車載装置との間で中継するステップと、を備えることを特徴とするものである。
第13の態様に係る交通情報処理方法によれば、ステップ(A)では、情報提供希望者が搭乗する車両に搭載された第1の車載装置から、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データを受信する。また、ステップ(B)では、情報提供可能者が搭乗する車両に搭載された第2の車載装置から、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データを受信する。そして、ステップ(C)では、第1の車載装置と第2の車載装置とを結び付け、ステップ(D)では、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データを、第1の車載装置と第2の車載装置との間で中継する。従って、情報提供希望者は、情報提供可能者との対話によって、必要な情報を入手することができる。その結果、例えば、何等かの交通事象が発生したが、推定の確実性が低いために交通情報処理装置から正式な情報が未だ提供されていない状況であっても、情報提供希望者は、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
本発明によれば、交通管制センタから正式な情報が未だ提供されていない状況等であっても、発生した交通事象に関する情報等をユーザが入手することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
図1は、交通情報処理システム1の全体構成を簡略化して示す図である。交通情報処理システム1は、交通管制センタ等に設置された交通情報処理装置2と、車両3A,3Bにそれぞれ搭載された車載装置4A,4Bとを備えて構成されている。交通情報処理装置2と車載装置4A,4Bとは、無線通信によって相互に通信可能である。車載装置4A,4Bは、車両3A,3B内に装備された専用装置であってもよいし、車載装置としての機能を実現する専用アプリケーションがインストールされた携帯端末装置(例えばスマートフォン)等であってもよい。
図2は、交通情報処理装置2の構成を簡略化して示す図である。交通情報処理装置2は、CPU等の処理部11と、半導体メモリ又はハードディスク等の記憶部12とを備えて構成されている。記憶部12には、処理部11を動作させるためのプログラム13が格納されている。
図3は、プログラム13を実行することによって処理部11に実現される機能を示す図である。プログラム13を実行することにより、処理部11は、受信部21、送信部22、第1受信処理部23(第1の受信手段)、第2受信処理部24(第2の受信手段)、結び付け処理部25、探索処理部26、中継処理部27、変更処理部28、管理部29、記録部30、特定処理部31、推定処理部32、及びデータベース33として機能する。換言すれば、プログラム13は、交通情報処理装置2に搭載されるコンピュータとしての処理部11を、受信部21、送信部22、第1受信処理部23、第2受信処理部24、結び付け処理部25、探索処理部26、中継処理部27、変更処理部28、管理部29、記録部30、特定処理部31、推定処理部32、及びデータベース33として機能させるためのプログラムである。
図4は、車載装置4Aの構成を示す図である。車載装置4Aは、取得部51A、タイミング制御部52A、受信部53A、送信部54A、制御部55A、スピーカ56A、マイク57A、及び入力部58Aを備えて構成されている。
図5は、車載装置4Bの構成を示す図である。車載装置4Bは、取得部51B、タイミング制御部52B、受信部53B、送信部54B、制御部55B、スピーカ56B、マイク57B、及び入力部58Bを備えて構成されている。
以下、図1〜5を参照しつつ、本実施の形態に係る交通情報処理システム1の動作について具体的に説明する。
<第1の実施の形態>
本実施の形態では、何等かの交通事象(以下の例では交通渋滞とする)の発生を推定した交通情報処理装置2が、その推定した交通事象に関する情報提供希望者と情報提供可能者とを募る場合の動作について説明する。
図3を参照して、推定処理部32は、複数の車両から逐次送られてくるプローブ情報や、道路上に設置された車両感知器から逐次送られてくる車両感知情報等の交通情報を取得する。そして、取得した交通情報に基づいて交通状況を分析することにより、ある地点又は地域で渋滞が発生しているか否かを常時監視している。そして、ある道路区間において渋滞の発生が推定された場合には、その渋滞の始点であるおおよその地点(ボトルネック交差点)を割り出し、その渋滞始点の位置情報を含む推定結果データD1を、特定処理部31に入力する。
ここで、渋滞の発生を早期に検知すべく、推定処理部32は、渋滞が始まる兆候が現れた段階で、渋滞の発生を推定する。例えば、道路毎に予め規定している平均走行速度に対して実際の平均走行速度が10%低下した場合や、道路毎に予め規定している車両停止時間に対して実際の車両停止時間が10%増加した場合等に、渋滞の発生を推定する。
特定処理部31は、推定結果データD1に基づいて、提供要否問合せデータD2及び提供可否問合せデータD3を送信すべき車載装置を特定する。ここで、提供要否問合せデータD2は、交通に関わる情報の提供が可能なユーザ(情報提供可能者)と対話することによって、情報提供可能者から情報の提供を受けることを希望するか否かを、車両の搭乗者(ドライバ又は同乗者)に問い合わせるためのデータである。また、提供可否問合せデータD3は、交通に関わる情報の提供を受けることを希望するユーザ(情報提供希望者)と対話することによって、情報提供希望者に情報を提供することが可能か否かを、車両の搭乗者に問い合わせるためのデータである。
特定処理部31は、各車両から送られてくるプローブ情報やルート設定情報等に基づいて、各車両の現在地、目的地、及び現在地から目的地までの経路を、データベース33によって管理している。そして、推定した渋滞発生地点に向かうことが予想される一又は複数の車両(以下の例では車両3Bとする)を、提供要否問合せデータD2の送信対象として特定する。具体的には、現在地から目的地までの経路内に、推定した渋滞発生地点を含む車両を、その渋滞発生地点に向かうことが予想される車両として特定する。また、特定処理部31は、渋滞始点の近傍を走行している一又は複数の車両(以下の例では車両3Aとする)を、提供可否問合せデータD3の送信対象として特定する。
提供要否問合せデータD2は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Bの車載装置4Bに向けて無線送信される。また、提供可否問合せデータD3は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Aの車載装置4Aに向けて無線送信される。
図5を参照して、提供要否問合せデータD2は、受信部53Bによって受信され、受信部53Bから制御部55Bに入力される。制御部55Bは、情報の提供を受けることを希望するか否かを車両3Bの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、車両3Bの車内の任意の箇所に設けられたスピーカ56B(カーナビのスピーカとの兼用も可)から音声出力する。なお、音声出力に代えて、カーナビの画面やヘッドアップディスプレイ等への文字メッセージ又は画像の表示によって、情報提供の要否を問い合わせてもよい。
ここで、取得部51Bは、車両3Bに搭載されている車輪速センサ、GPS(Global Positioning System)受信機、ジャイロセンサ、及び車間距離センサ等の検出信号に基づいて、車両3Bの運転状況に関する運転状況情報S31を取得している。運転状況情報S31は、取得部51Bからタイミング制御部52Bに入力される。タイミング制御部52Bは、運転状況情報S31に基づき、車両3Bが右折又は左折を実行中である、車両3Bが一定速度以上で走行中である、車両3Bが交差点内を走行中である、及び、車両3Bと前後の車両との車間距離が一定値以内である等の、車両3Bのドライバの注意力が散漫になると危険な状況においては、スピーカ56Bからの問合せの音声出力を行わず、その危険な状況が解消した後に問合せの音声出力を行う。これにより、車両3Bの運転の安全を確保することが可能となる。なお、一定時間(例えば数分間)が経過してもその危険な状況が解消されない場合には、車載装置4Bから交通情報処理装置2に対して「回答不能状態である」旨を示す情報を送信し、車両3Bの搭乗者への問合せを行わないようにしてもよい。
車両3Bの搭乗者は、情報の提供を受けることを希望する場合には、その旨を示す提供希望データD4を、入力部58Bから入力する。提供希望データD4の入力は、例えば、車両3B内に備えられたステアリングスイッチ等のボタンの押下、又は、カーナビのタッチパネル等のパネルの操作によって行うことができる。提供希望データD4は、制御部55Bから送信部54Bに入力され、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供希望データD4には、車載装置4Bの識別情報が含まれている。なお、車両3Bの搭乗者が情報の提供を希望しない旨のデータを入力部58Bから入力した場合、又は、一定時間内にいずれの回答も入力しなかった場合には、情報の提供を希望しない旨のデータが送信部54Bから交通情報処理装置2に送信される。
図4を参照して、提供可否問合せデータD3は、受信部53Aによって受信され、受信部53Aから制御部55Aに入力される。制御部55Aは、情報の提供が可能であるか否かを車両3Aの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、車両3Aの車内の任意の箇所に設けられたスピーカ56A(カーナビのスピーカとの兼用も可)から音声出力する。なお、音声出力に代えて、カーナビの画面やヘッドアップディスプレイ等への文字メッセージ又は画像の表示によって、情報提供の要否を問い合わせてもよい。
ここで、取得部51Aは、車両3Aに搭載されている車輪速センサ、GPS受信機、ジャイロセンサ、及び車間距離センサ等の検出信号に基づいて、車両3Aの運転状況に関する運転状況情報S31を取得している。運転状況情報S31は、取得部51Aからタイミング制御部52Aに入力される。タイミング制御部52Aは、運転状況情報S31に基づき、車両3Aが右折又は左折を実行中である、車両3Aが一定速度以上で走行中である、車両3Aが交差点内を走行中である、及び、車両3Aと前後の車両との車間距離が一定値以内である等の、車両3Aのドライバの注意力が散漫になると危険な状況においては、スピーカ56Aからの問合せの音声出力を行わず、その危険な状況が解消した後に問合せの音声出力を行う。これにより、車両3Aの運転の安全を確保することが可能となる。なお、一定時間(例えば数分間)が経過してもその危険な状況が解消されない場合には、車載装置4Aから交通情報処理装置2に対して「回答不能状態である」旨を示す情報を送信し、車両3Aの搭乗者への問合せを行わないようにしてもよい。
車両3Aの搭乗者は、情報を提供することが可能である場合には、その旨を示す提供可能データD5を、入力部58Aから入力する。提供可能データD5の入力は、例えば、車両3A内に備えられたステアリングスイッチ等のボタンの押下、又は、カーナビのタッチパネル等のパネルの操作によって行うことができる。提供可能データD5は、制御部55Aから送信部54Aに入力され、送信部54Aから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供可能データD5には、車載装置4Aの識別情報が含まれている。なお、車両3Aの搭乗者が情報を提供できない旨のデータを入力部58Aから入力した場合、又は、一定時間内にいずれの回答も入力しなかった場合には、情報を提供できない旨のデータが送信部54Aから交通情報処理装置2に送信される。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された提供希望データD4、及び、車載装置4Aから無線送信された提供可能データD5を受信する。第1受信処理部23は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供希望データD4を抽出し、抽出した提供希望データD4を結び付け処理部25に入力する。また、第2受信処理部24は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供可能データD5を抽出し、抽出した提供可能データD5を結び付け処理部25に入力する。
結び付け処理部25は、パケット交換(又は回線交換)の通信方式における中央交換機と同様の機能を有し、提供希望データD4内に含まれている車載装置4Bの識別情報と、提供可能データD5内に含まれている車載装置4Aの識別情報とに基づいて、情報提供希望者の車載装置4Bと情報提供可能者の車載装置4Aとを互いに結び付ける。つまり、車載装置4Bが搭載された車両3Bの搭乗者(情報提供希望者)と、車載装置4Aが搭載された車両3Aの搭乗者(情報提供可能者)とが車載装置4A,4Bを介して対話(通話)できるように、両者を仲介する。
結び付け処理部25は、車載装置4A,4Bの結び付けの結果を示すデータD6を中継処理部27に入力した後、情報提供希望者及び情報提供可能者に対話の開始を促すための対話開始データD7を送信部22に入力する。対話開始データD7は、送信部22から車載装置4A,4Bに向けて無線送信される。
図5を参照して、対話開始データD7は、受信部53Bによって受信され、受信部53Bから制御部55Bに入力される。制御部55Bは、対話の開始を促すための所定の音声メッセージをスピーカ56Bから音声出力する。同様に、図4を参照して、対話開始データD7は、受信部53Aによって受信され、受信部53Aから制御部55Aに入力される。制御部55Aは、対話の開始を促すための所定の音声メッセージをスピーカ56Aから音声出力する。これにより、情報提供希望者と情報提供可能者との対話が開始される。
図5を参照して、情報提供希望者の音声は、車両3Bの車内の任意の箇所(例えばステアリング又はその近傍)に設けられたマイク57B(カーナビのマイクとの兼用も可)によって集音され、音声データD8として制御部55Bに入力される。制御部55Bは、マイク57Bから入力された音声データD8に対してAD変換及びデータパケット化等のデータ処理を施した後に、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて音声データD8を送信する。同様に、図4を参照して、情報提供可能者の音声は、車両3Aの車内の任意の箇所に設けられたマイク57Aによって集音され、音声データD9として制御部55Aに入力される。制御部55Aは、マイク57Aから入力された音声データD9に対してAD変換及びデータパケット化等のデータ処理を施した後に、送信部54Aから交通情報処理装置2に向けて音声データD9を送信する。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された音声データD8、及び、車載装置4Aから無線送信された音声データD9を受信し、これらの音声データD8,D9を中継処理部27に入力する。中継処理部27は、車載装置4Bから受信した音声データD8のデータパケットに車載装置4Aの宛先アドレスを付加して変更処理部28に入力する。また、中継処理部27は、車載装置4Aから受信した音声データD9のデータパケットに車載装置4Bの宛先アドレスを付加して変更処理部28に入力する。
さらに、中継処理部27は、音声データD8,D9を記録部30に記録する。記録部30に記録された情報提供希望者と情報提供可能者との会話に関する音声データD8,D9は、他のユーザに公開することが可能である。情報提供希望者の人数に比して情報提供可能者の人数が少ない場合には、情報提供可能者とマッチングされない情報提供希望者が生じる。このような場合には、情報提供希望者は、記録部30に記録された他者同士の会話を聴くことにより、自身が求めている情報を入手できる可能性がある。なお、他のユーザが複数の会話ファイルのリストの中から必要な会話ファイルを検索する際の便宜を考慮して、情報提供希望者と情報提供可能者との会話を簡単な音声認識処理によって解析し、「事故」「渋滞」「路面状況」「天気」等のキーワードを抽出して、各会話ファイルにタグ情報を付してもよい。さらに、タグ情報に含まれる様々なキーワードのうち、頻出するキーワード(例えば上位10件のキーワード)を並べた一覧表を地域別に作成し、インターネット上の所定の公開サイトにおいて当該一覧表を公開してもよい。これにより、ユーザは、パソコンや携帯端末等からインターネットを通じて公開サイトにアクセスして一覧表を閲覧することにより、各地域で発生している可能性が高い特定の交通事象等を推定することができる。例えば、ある地域に関する一覧表に「事故」及び「渋滞」なるキーワードが含まれている場合には、その地域において事故による渋滞が発生している可能性が高いと、ユーザは推定することができる。また、登録ユーザに対しては、キーワードの一覧表だけでなく、関連する会話ファイルを上記公開サイト上で公開してもよい。
変更処理部28は、ボイスチェンジャとしての機能を有しており、中継処理部27から入力された音声データD8に対して音声周波数をシフトする等の加工を施すことにより、情報提供希望者自身の声色とは異なる声色の音声データD10として出力する。同様に、変更処理部28は、中継処理部27から入力された音声データD9に対して音声周波数をシフトする等の加工を施すことにより、情報提供可能者自身の声色とは異なる声色の音声データD11として出力する。音声データD10は、送信部22から車載装置4Aに向けて無線送信され、音声データD11は、送信部22から車載装置4Bに向けて無線送信される。
図5を参照して、音声データD11は、受信部53Bによって受信され、受信部53Bから制御部55Bに入力される。制御部55Bは、音声データD11をスピーカ56Bから音声出力する。同様に、図4を参照して、音声データD10は、受信部53Aによって受信され、受信部53Aから制御部55Aに入力される。制御部55Aは、音声データD10をスピーカ56Aから音声出力する。
このように、交通情報処理装置2を経由して音声データD8〜D11を車載装置4A,4B間で送受信することにより、情報提供希望者と情報提供可能者とがピアツーピアで対話することができ、情報提供希望者は、渋滞状況や渋滞原因等の自身が求める情報を情報提供可能者から入手することができる。
なお、両者が対話可能な状態を無制限に放置しておくのは通信トラフィック上好ましくないため、対話可能時間を一定時間(例えば数分)以内に制限しておき、制限時間が近づくと対話の終了を促すメッセージを交通情報処理装置2から車載装置4A,4Bに送信するとともに、制限時間に達すると対話を強制的に終了するのが望ましい。
また、情報提供希望者が情報提供可能者から入手した情報の有益度等に応じて、情報提供希望者が情報提供可能者を評価できるようにしてもよい。図5を参照して、対話が終了した後、情報提供希望者は、「非常に役立った」「役立った」「役に立たなかった」等の複数の段階によって情報の有益度を評価するための評価データD12を、入力部58Aから入力する。評価データD12は、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された評価データD12を受信し、中継処理部27に入力する。中継処理部27は、評価データD12を車載装置4Aの識別情報とともに管理部29に入力する。
管理部29は、情報提供者が提供する情報の有益度に応じた情報提供者のランク(評価指標)を、車載装置毎に管理している。例えば、「非常に役立った」との評価がなされた場合には評価ポイントが「2」だけ加算され、「役立った」との評価がなされた場合には評価ポイントが「1」だけ加算され、「役に立たなかった」との評価がなされた場合には評価ポイントが「1」だけ減算される。そして、付与されている評価ポイントの値に応じて、「A」「B」「C」等の複数の段階によって情報提供者がランク付けされている。管理部29は、評価データD12で示される評価内容に基づいて、車載装置4Aに対応して付与されている評価ポイントを増減する。
本実施の形態に係る交通情報処理装置2(及び交通情報処理システム1、プログラム13、及び交通情報処理方法)によれば、第1受信処理部23は、情報提供希望者が搭乗する車両3Bに搭載された車載装置4Bから、情報の提供を希望する旨を示す提供希望データD4を受信する。また、第2受信処理部24は、情報提供可能者が搭乗する車両3Aに搭載された車載装置4Aから、情報の提供が可能である旨を示す提供可能データD5を受信する。そして、結び付け処理部25は、車載装置4Aと車載装置4Bとを結び付け、中継処理部27は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データD8〜D11を、車載装置4Aと車載装置4Bとの間で中継する。従って、情報提供希望者は、情報提供可能者との対話によって、必要な情報を入手することができる。その結果、例えば、何等かの交通事象が発生したが、推定の確実性が低いために交通情報処理装置2から正式な情報が未だ提供されていない状況であっても、情報提供希望者は、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
また、交通事故やデモ隊の行進等のように、車両感知情報やプローブ情報等によっては直接的に認識できないイベントが発生した場合、これまでは、スタッフが現場に出向いてイベントの内容を確認したり、イベントの内容について警察から情報の提供を受ける等して、当該イベントに関する情報を収集し、その情報をシステムにデータ入力するまでは、当該イベントに関する詳細情報をユーザへ提供することができなかった。従って、イベントが実際に発生してから、当該イベントに関する詳細情報がユーザに提供されるまでの間に、非常に大きなタイムラグが生じていた。これに対し、本実施の形態に係る交通情報処理装置2によれば、イベントを目撃した情報提供可能者から情報提供希望者に対して当該イベントに関する情報を提供することができるため、イベントが発生してから情報提供希望者に情報が提供されるまでのタイムラグが、スタッフが現場に出向く場合等と比較して非常に小さい。その結果、情報提供の遅れに起因してユーザが交通規制や交通渋滞等に巻き込まれることとなる確率が大幅に低減されるため、ユーザにとって非常に有用である。
また、特定処理部31は、何等かの交通事象が発生していると推定される地点に向かうと予想される車両3Bを特定し、送信部22は、当該車両3Bに搭載された車載装置4Bに対して提供要否問合せデータD2を送信する。従って、当該車両3Bの搭乗者は、交通情報処理装置2から提供要否問合せデータD2を受信することによって、これから向かう先で何等かの交通事象が発生していることを知ることができる。そして、提供要否問合せデータD2に対して提供希望データD4を返信することにより、発生した交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することができる。
また、特定処理部31は、現在地から目的地までの経路内に、何等かの交通事象が発生していると推定される地点を含む車両3Bを、当該地点に向かうと予想される車両として特定する。これにより、提供要否問合せデータD2の送信対象を的確に絞り込むことができる。
また、特定処理部31は、何等かの交通事象が発生していると推定される地点の近傍に位置している車両3Aを特定し、送信部22は、当該車両3Aに搭載された車載装置4Aに対して提供可否問合せデータD3を送信する。これにより、提供可否問合せデータD3の送信対象を的確に絞り込むことができる。
また、変更処理部28は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話における音声の周波数を変更する。これにより、情報提供希望者及び情報提供可能者の両者のプライバシーを保護することができる。
また、管理部29は、情報提供者から提供された情報の有益度に基づく評価指標を車載装置毎に管理する。従って、有益な情報を入手できた場合には情報提供希望者が情報提供可能者に対して高い評価ポイントを付与するという運用を行うことができ、評価ポイントの蓄積状況に応じてシステム利用料金を割り引く等のサービスを実施することができる。その結果、情報提供に関するインセンティブをユーザに与えることが可能となる。また、評価ポイントの低いユーザや、提供可否問合せデータD3を送信しても常に返信してこないユーザを、非協力ユーザとして管理することができる。従って、このような非協力ユーザに関しては、提供可否問合せデータD3の送信対象から除外する等の措置をとることが可能となる。さらに、情報提供可能者が複数存在する場合に、各情報提供可能者の評価ポイントの蓄積状況を情報提供可能者の識別情報と併せて表示(後述の図6参照)することにより、情報提供希望者は、情報提供可能者を選択する際の判断材料として利用することができる。
また、記録部30は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話に関する音声データD8,D9を記録する。従って、記録した音声データD8,D9を交通情報処理装置2から他の車両のユーザに提供することにより、他の車両の搭乗者は、情報提供希望者と情報提供可能者との対話における生の音声(プライバシー保護のためボイスチェンジャによって加工された音声を含む)を聴くことができるため、発生した交通事象の状況や原因を的確に把握すること等が可能となる。
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、何等かの交通事象を引き起こし得るイベントを確認した車両3Aの搭乗者が、自主的に情報を提供しようとする場合の動作について説明する。
図4を参照して、何等かの交通事象を引き起こし得るイベントを車両3Aの搭乗者が目撃し、情報を提供することが可能である場合には、車両3Aの搭乗者は、情報提供が可能である旨を示す提供可能データD5を、入力部58Aから入力する。例えば、交通量が増えた、交通事故が発生した、デモ隊の行進が始まった、局地的豪雨が発生している等の、交通渋滞を引き起こし得るイベントを目撃した場合に、車両3Aの搭乗者は提供可能データD5を入力部58Aから入力する。提供可能データD5は、制御部55Aから送信部54Aに入力され、送信部54Aから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供可能データD5には、車載装置4Aの識別情報が含まれている。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Aから無線送信された提供可能データD5を受信する。また、第2受信処理部24は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供可能データD5を抽出し、抽出した提供可能データD5を特定処理部31に入力する。
特定処理部31は、入力された提供可能データD5に基づいて、提供要否問合せデータD2及び提供可否問合せデータD3を送信すべき車載装置を特定する。
特定処理部31は、各車両から送られてくるプローブ情報やルート設定情報等に基づいて、各車両の現在地、目的地、及び現在地から目的地までの経路を、データベース33によって管理している。そして、提供可能データD5を送信してきた車両3Aの現在地に向かうことが予想される一又は複数の車両(以下の例では車両3Bとする)を、提供要否問合せデータD2の送信対象として特定する。また、特定処理部31は、提供可能データD5を送信してきた車両3Aを、提供可否問合せデータD3の送信対象として特定する。
ここで、交通情報処理装置2が車載装置4Aから提供可能データD5を受信した場合であっても、車両3Aの現在地と、プローブ情報及び車両感知情報等に基づいて推定処理部32が何等かの交通事象の発生を推定している地点又は地域とが重複していない場合には、提供要否問合せデータD2及び提供可否問合せデータD3を送信しないようにしてもよい。これにより、ユーザの誤操作やいたずら目的での提供可能データD5の送信に対して、交通情報処理装置2が応答しないことにより、交通情報処理装置2の処理負荷を軽減することができる。一方、車両3Aの現在地と、プローブ情報及び車両感知情報等に基づいて推定処理部32が何等かの交通事象の発生を推定している地点又は地域とが重複していない場合であっても、提供要否問合せデータD2及び提供可否問合せデータD3を送信してもよい。これにより、プローブ情報等によっては未だ検知できていない交通事象に関する情報を、情報提供希望者がいち早く入手できる可能性がある。
提供要否問合せデータD2は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Bの車載装置4Bに向けて無線送信される。また、提供可否問合せデータD3は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Aの車載装置4Aに向けて無線送信される。
図5を参照して、提供要否問合せデータD2は、受信部53Bによって受信され、受信部53Bから制御部55Bに入力される。制御部55Bは、情報の提供を受けることを希望するか否かを車両3Bの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、スピーカ56Bから音声出力する。
車両3Bの搭乗者は、情報の提供を受けることを希望する場合には、その旨を示す提供希望データD4を、入力部58Bから入力する。提供希望データD4は、制御部55Bから送信部54Bに入力され、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供希望データD4には、車載装置4Bの識別情報が含まれている。
図4を参照して、提供可否問合せデータD3は、受信部53Aによって受信され、受信部53Aから制御部55Aに入力される。制御部55Aは、情報の提供が可能であるか否かを車両3Aの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、スピーカ56Aから音声出力する。
車両3Aの搭乗者は、情報を提供することが可能である場合には、その旨を示す提供可能データD5を、入力部58Aから入力する。提供可能データD5は、制御部55Aから送信部54Aに入力され、送信部54Aから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供可能データD5には、車載装置4Aの識別情報が含まれている。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された提供希望データD4、及び、車載装置4Aから無線送信された提供可能データD5を受信する。第1受信処理部23は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供希望データD4を抽出し、抽出した提供希望データD4を結び付け処理部25に入力する。また、第2受信処理部24は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供可能データD5を抽出し、抽出した提供可能データD5を結び付け処理部25に入力する。
ここで、車両3B以外の車両からも提供希望データD4を受信した場合(つまり、提供希望データD4を送信してきた車両の数が、提供可能データD5を送信してきた車両の数より多い場合)は、探索処理部26は、追加の情報提供可能者を探索すべく、情報提供可能者が不足している旨(及びその不足数)を示すデータD13を、特定処理部31に入力する。特定処理部31は、提供可能データD5を送信してきた車両3Aの近傍に位置している他の車両をデータベース33に基づいて特定し、当該他の車両に対して提供可否問合せデータD3を送信部22から送信する。
車両3Aの近傍に位置している他の車両の搭乗者は、車両3Aの搭乗者が確認した交通事故等のイベントを同じく確認している可能性が高いため、当該他の車両の搭乗者が情報提供可能者として追加されることによって、当該他の車両の搭乗者から情報提供希望者に必要な情報が提供されることが期待される。なお、本実施の形態では情報提供希望者と情報提供可能者とがピアツーピアで対話することを前提としているため、情報提供可能者が不足している場合には追加の情報提供可能者を探索するが、三者以上の複数人での同時対話が行えるようシステムを構成することもでき、この場合には追加の情報提供可能者の探索は必ずしも必要でない。また、ここで説明した情報提供可能者が不足している場合の追加の情報提供可能者の探索処理は、上記第1の実施の形態にも適用可能である。
以降の動作は、上記第1の実施の形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
本実施の形態に係る交通情報処理装置2(及び交通情報処理システム1、プログラム13、及び交通情報処理方法)によれば、第2受信処理部24は、情報提供可能者から自主的に送信された提供可能データD5を受信する。従って、交通情報処理装置2が交通事象の発生の推定さえも行っていないような極めて早期の段階であっても、情報提供可能者から自主的に送信された提供可能データD5を第2受信処理部24が受信することにより、交通情報処理装置2は、何等かの交通事象が発生していると推定することができる。そして、情報提供希望者が現れた場合には、情報提供可能者と情報提供希望者とを結び付けて両者に対話させることにより、情報提供希望者は、交通事象が発生した極めて早期の段階において、その交通事象に関する情報を情報提供可能者から入手することが可能となる。
また、探索処理部26は、提供希望データD4を送信してきた車両の数が、提供可能データD5を送信してきた車両の数より多い場合に、提供可能データD5を送信してきた車両3Aの近傍に位置して情報の提供が可能な他の車両を探索する。従って、情報提供可能者と情報提供希望者との間で一対一の対話を行う通信形態において、情報提供希望者の数に対して情報提供可能者の数が不足するという事態を回避することができる。
<第3の実施の形態>
本実施の形態では、車両3Bの搭乗者が、目的地の天候、路面状況、駐車場の混雑具合等の情報を知りたい場合に、目的地又はその近傍に位置している情報提供可能者に対して必要な情報を要求する場合の動作について説明する。
図5を参照して、目的地の天候等の情報を知りたい車両3Bの搭乗者は、目的地の位置情報を含む提供希望データD4を、入力部58Aから入力する。提供希望データD4は、制御部55Bから送信部54Bに入力され、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供希望データD4には、車載装置4Bの識別情報が含まれている。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された提供希望データD4を受信する。また、第1受信処理部23は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供希望データD4を抽出し、抽出した提供希望データD4を特定処理部31に入力する。
特定処理部31は、入力された提供希望データD4に基づいて、提供要否問合せデータD2及び提供可否問合せデータD3を送信すべき車載装置を特定する。
特定処理部31は、各車両から送られてくるプローブ情報やルート設定情報等に基づいて、各車両の現在地、目的地、及び現在地から目的地までの経路を、データベース33によって管理している。そして、提供希望データD4に含まれる目的地又はその近傍に位置している一又は複数の車両(以下の例では車両3Aとする)を、提供可否問合せデータD3の送信対象として特定する。また、特定処理部31は、提供希望データD4を送信してきた車両3Bを、提供要否問合せデータD2の送信対象として特定する。
提供可否問合せデータD3は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Aの車載装置4Aに向けて無線送信される。また、提供要否問合せデータD2は、特定処理部31から送信部22に入力され、送信部22から車両3Bの車載装置4Bに向けて無線送信される。
図4を参照して、提供可否問合せデータD3は、受信部53Aによって受信され、受信部53Aから制御部55Aに入力される。制御部55Aは、情報の提供が可能であるか否かを車両3Aの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、スピーカ56Aから音声出力する。
車両3Aの搭乗者は、情報を提供することが可能である場合には、その旨を示す提供可能データD5を、入力部58Aから入力する。提供可能データD5は、制御部55Aから送信部54Aに入力され、送信部54Aから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供可能データD5には、車載装置4Aの識別情報が含まれている。
図5を参照して、提供要否問合せデータD2は、受信部53Bによって受信され、受信部53Bから制御部55Bに入力される。制御部55Bは、情報の提供を受けることを希望するか否かを車両3Bの搭乗者に問い合わせるための所定の音声メッセージを、スピーカ56Bから音声出力する。
車両3Bの搭乗者は、情報の提供を受けることを希望する場合には、その旨を示す提供希望データD4を、入力部58Bから入力する。提供希望データD4は、制御部55Bから送信部54Bに入力され、送信部54Bから交通情報処理装置2に向けて無線送信される。提供希望データD4には、車載装置4Bの識別情報が含まれている。
ここで、複数の車両から提供可能データD5が送信されてきた場合(つまり、情報提供可能者が複数存在する場合)には、複数の情報提供可能者の中から一人の情報提供可能者を情報提供希望者が自由に選択できる構成としてもよい。図6は、車両3Bの目的地近傍のマップを模式的に示す図である。このマップは、車両3Bのカーナビの画面等に表示される。上記第1の実施の形態で説明した通り、管理部29は情報提供者のランクを車載装置毎に管理しており、付与されている評価ポイントの値に応じて、「A」「B」「C」等の複数の段階によって情報提供者がランク付けされている。
情報提供可能者が複数存在する場合には、図6に示すように、各情報提供可能者が搭乗している車両の現在地を示すマーク(図中の黒丸)に近接して、各情報提供可能者に現在設定されているランクが表示される。情報提供希望者は、表示されているランクを参考にして、対話したい情報提供可能者を自由に選択することができる。
なお、各情報提供可能者が搭乗している車両の現在地に関する情報、及び各情報提供可能者に現在設定されているランクに関する情報は、交通情報処理装置2から車載装置4Bに送信される。また、ここで説明した情報提供可能者が複数存在している場合の情報提供希望者による選択処理は、上記第1の実施の形態にも適用可能である。
図3を参照して、受信部21は、車載装置4Bから無線送信された提供希望データD4、及び、車載装置4Aから無線送信された提供可能データD5を受信する。第1受信処理部23は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供希望データD4を抽出し、抽出した提供希望データD4を結び付け処理部25に入力する。また、第2受信処理部24は、受信部21が外部から受信する様々なデータの中から提供可能データD5を抽出し、抽出した提供可能データD5を結び付け処理部25に入力する。
以降の動作は、上記第1の実施の形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
本実施の形態に係る交通情報処理装置2(及び交通情報処理システム1、プログラム13、及び交通情報処理方法)によれば、特定処理部31は、情報提供希望者が求める情報に関連する地点の近傍に位置している車両3Aを特定し、送信部22は、当該車両3Aに搭載された車載装置4Aに対して提供可否問合せデータD5を送信する。これにより、提供可否問合せデータD5の送信対象を的確に絞り込むことができる。また、情報提供希望者は、目的地の天候、路面状況、駐車場の混雑具合等の情報を知りたい場合に、当該目的地の位置情報を含む提供希望データD4を送信することにより、当該目的地又はその近傍に位置している情報提供可能者から、求める情報を入手することが可能となる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。