以下、本発明の実施の形態による往復動圧縮機として、可搬型の空気圧縮機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図において、1は実施の形態に適用される2段式の水平対向往復動型の空気圧縮機を示している。そして、空気圧縮機1は、後述のケーシング2、電動モータ3、圧縮部4、タンク18、モータ駆動制御装置22等により大略構成されている。
2は空気圧縮機1の外形をなすケーシングで、該ケーシング2は、図1に示す如く、後述の電動モータ3、圧縮部4、タンク18、モータ駆動制御装置22等を収容するものである。また、ケーシング2は、下側のベース部材2Aと上側のカバー部材(図示せず)とを対面して取付けることにより箱型状の容器として形成されている。また、ケーシング2の後側には運搬時に掴む把手2Bが設けられている。
3は図1中の右側に配設された電動モータで、該電動モータ3は、後述する圧縮部4のクランクケース5に取付けられている。この電動モータ3は、例えばブラシレスの直流3相モータ(DCモータ)によって構成され、モータ駆動制御装置22から給電されることにより回転し、圧縮部4を駆動する。また、電動モータ3は、クランクケース5と同一軸線上で対向する円筒状のモータケース3Aと、該モータケース3Aの中心部を左,右方向に延びた駆動軸としての回転軸3Bと、モータケース3A内に固定されたステータ3Cと、該ステータ3Cの内周側に位置して回転軸3Bに固着されたロータ3Dとにより大略構成されている。
ここで、電動モータ3の回転軸3Bは、一端側が圧縮部4のクランクケース5内に突出してクランク軸を構成している。一方、回転軸3Bの他端側は、モータケース3Aの右側に突出し、その突出端には電動モータ3、圧縮部4に冷却風を供給する冷却ファン3Eが取付けられている。また、電動モータ3には、回転軸3Bの回転位置を検出するために、後述する回転センサ20が取り付けられている。
4は圧縮空気を吐出する圧縮部を示している。この圧縮部4は、後述のクランクケース5に低圧側圧縮機構6と高圧側圧縮機構12とを水平方向で対向する位置に取付けることにより2段階で空気を圧縮する水平対向式の往復動機構によって構成されている。
5は左,右方向に延びる回転軸3Bの軸線を中心とする略円筒状に形成されたクランクケースを示している。このクランクケース5には、回転軸3Bの軸線を挟んで径方向の反対側、即ち、軸線を挟んで水平方向で対向する後位置と前位置にシリンダ取付部5Aとシリンダ取付部5Bとが設けられている。また、クランクケース5の一端側は、蓋体5Cによって閉塞され、他端側には電動モータ3が取付けられている。そして、クランクケース5は、ベース部材2Aの底部に取付けられている。
6はクランクケース5の後側に設けられた低圧側圧縮機構で、該低圧側圧縮機構6は、外気を吸込んで高圧側圧縮機構12に圧縮空気を供給する。そして、低圧側圧縮機構6は、水平方向の後側に延びた状態でクランクケース5のシリンダ取付部5Aに取付けられた筒状のシリンダ7と、該シリンダ7の先端(後端)に設けられた弁座部材8と、該弁座部材8の後端側に設けられたシリンダヘッド9と、シリンダ7内に往復動可能に挿嵌され弁座部材8との間に圧縮室S1を画成するピストン10と、該ピストン10を電動モータ3の回転軸3Bに連結する連接棒11と、弁座部材8に設けられた吸込弁、吐出弁(いずれも図示せず)とにより大略構成されている。
12はクランクケース5の前側に設けられた高圧側圧縮機構で、該高圧側圧縮機構12は、低圧側圧縮機構6から吐出された圧縮空気を再度圧縮し、高圧な圧縮空気として後述のタンク18に供給するものである。そして、高圧側圧縮機構12は、水平方向の前側に延びた状態でクランクケース5のシリンダ取付部5Bに取付けられた筒状のシリンダ13と、該シリンダ13の先端(前端)に設けられた弁座部材14と、該弁座部材14の前端側に設けられたシリンダヘッド15と、シリンダ13内に往復動可能に挿嵌され弁座部材14との間に圧縮室S2を画成するピストン16と、該ピストン16を電動モータ3の回転軸3Bに連結する連接棒17と、弁座部材14に設けられた吸込弁、吐出弁(いずれも図示せず)とにより大略構成されている。
ここで、低圧側圧縮機構6および高圧側圧縮機構12は、いずれもシリンダ7,13内でピストン10,16が往復動することによって、吸込行程と圧縮行程を交互に繰り返す。これにより、低圧側圧縮機構6および高圧側圧縮機構12は、圧縮室S1,S2内の空気を圧縮し、圧縮空気を吐出する。このとき、高圧側圧縮機構12は、低圧側圧縮機構6の吐出口に接続され、低圧側圧縮機構6から吐出された圧縮空気を再度圧縮する。
また、低圧側圧縮機構6および高圧側圧縮機構12は、互いに水平方向で対向しているため、低圧側圧縮機構6が吸込行程となるときには、高圧側圧縮機構12は圧縮行程となる。同様に、低圧側圧縮機構6が圧縮行程となるときには、高圧側圧縮機構12は吸込行程となる。
18はケーシング2内の前側に収容されたタンクを示している。このタンク18は、圧縮部4から吐出される圧縮空気を貯留するもので、例えば金属材料から略円筒状の密閉容器として形成されている。また、タンク18は、図1に示すように、左,右方向に延びるように横置きに配置され、ベース部材2Aの底部に取付けられている。また、タンク18には、圧縮部4の吐出配管19が接続されている。
20は回転軸3Bの回転位置θ(θ=0°〜360°)を検出するために電動モータ3に取り付けられた回転センサで、該回転センサ20は、例えば回転軸3Bに取付けられたマグネットと該マグネットによる磁束を検出するホール素子等(いずれも図示せず)によって構成されている。そして、回転センサ20は、図3に示すように、後述のモータ駆動制御装置22に接続され、モータ駆動制御装置22に向けて回転軸3Bの回転位置θに応じた回転位置信号Sθを出力する。
また、回転センサ20の回転位置信号Sθを用いて、単位時間当たりの回転位置θの変化を検出することができる。このため、回転センサ20は、電動モータ3の回転数N(回転速度)を検出する回転数検出器としても機能している。
21はタンク18に接続された圧力検出器としての圧力センサで、該圧力センサ21は、タンク18内の圧縮空気の圧力を検出し、圧力検出値Pに応じた電圧、電流等からなる圧力信号Spを出力する。このとき、後述の制御部30では、制御を安定化させるために、タンク18内の圧力を例えば数秒間で平均化した圧力平均を用いるから、圧力検出値Pもこの圧力平均値に対応している。
22は電動モータ3に接続されたモータ駆動制御装置で、該モータ駆動制御装置22は、後述する給電部23、インバータ28、モータドライバ29、制御部30等によって構成されている。このモータ駆動制御装置22は、例えばタンク18と電動モータ3との間に配設されている。
23はインバータ28に駆動用の直流電圧を供給する給電部で、該給電部23は、電源ケーブル等を介して外部の商用電源等に接続され例えば100Vの単相交流電圧を整流するダイオードによるブリッジ回路からなる整流回路24と、該整流回路24に接続され整流された直流電圧を昇圧する昇圧回路25とによって構成されている。そして、整流回路24と昇圧回路25との間には、平滑化用のコンデンサ26が設けられている。
また、昇圧回路25は、例えばスイッチング素子25A、リアクトル(コイル)25B、ダイオード25C、コンデンサ25D等からなる昇圧チョッパ回路によって構成されている。この昇圧回路25は、その入力端子が整流回路24に接続され、出力端子がインバータ28に接続されている。
このとき、リアクトル25Bは、一端側が整流回路24側の入力端子に接続されると共に、他端側がダイオード25Cのアノードに接続されている。一方、ダイオード25Cのカソードはインバータ28に接続されている。このダイオード25Cのアノードとグランドとの間には、スイッチング素子25Aが接続されている。このスイッチング素子25Aのグランド側の端子と整流回路24のグランド側の端子との間には、電流I0を検出するための抵抗25Eが接続されている。ダイオード25Cのカソードとグランドとの間には、コンデンサ25Dが接続されている。
また、スイッチング素子25Aには力率改善回路27が接続されている。この力率改善回路27は、スイッチング素子25Aのオン/オフの切換動作を制御し、給電部23からインバータ28に供給する電圧Vと電流Iの位相を合わせて、これらを互いに比例させている。また、スイッチング素子25Aは、例えば周期的にオンとオフの切換動作を繰り返す。このため、昇圧回路25は、スイッチング素子25Aの切換え周期に応じて昇圧した直流の電圧V、電流Iを出力する。
28は電動モータ3に接続されたインバータで、該インバータ28は、例えばトランジスタ、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子(図示せず)を用いて構成されている。ここで、インバータ28は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、例えば直流の電圧V、電流Iから3相交流電力を生成する。そして、インバータ28は、この3相交流電力を電動モータ3のステータ3Cに供給し、電動モータ3を駆動する。
29はインバータ28を用いて電動モータ3に供給するモータ電力Pm(供給電力)を制御するモータドライバで、該モータドライバ29は、後述の制御部30から出力される電圧指令信号Svに応じてPWM信号を生成し、このPWM信号に応じてインバータ28のスイッチング素子のオン/オフの切換動作を制御する。これにより、モータドライバ29は、電圧指令信号Svに応じて電動モータ3のモータ電圧Vmを変化させる。このとき、モータドライバ29は、電圧指令信号Svが増加したときにはモータ電力Pmを増加させ、電圧指令信号Svが減少したときにはモータ電力Pmを減少させる。
また、モータドライバ29は、回転センサ20からの検出信号に基づいてインバータ28のスイッチング素子をオン/オフし、ステータ3Cの3相のコイルに対して電流を順次供給する。即ち、モータドライバ29は、回転センサ20による回転位置信号Sθに基づいてロータ3Dの回転位置θを監視し、この回転位置θに応じてステータ3Cの3相のコイルに供給する電流、電圧を決定する。
30はインバータ28およびモータドライバ29を通じて電動モータ3に供給するモータ電力Pmを制御する制御部で、該制御部30は、目標回転数演算部30A、電源電力演算部30B、必要トルク最大電力演算部30C、吸込行程電力演算部30Dおよびマルチプレクサ30Eを備えている。この制御部30は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成されると共に、ROM等の記憶部(図示せず)に予め格納された後述のプログラムが実行されることによって、前記各演算部30A〜30Dおよびマルチプレクサ30Eとして機能する。また、制御部30には、例えば数V程度の駆動電圧を供給するための電源回路31が接続されると共に、この電源回路31は整流回路24と同様な整流回路32を通じて外部の商用電源等に接続されている。
ここで、目標回転数演算部30Aは、圧力センサ21による圧力検出値Pに基づいて電動モータ3の目標回転数N0を演算する。具体的には、目標回転数演算部30Aは、図6に示すように、圧力検出値Pが圧力下限値Pminよりも低圧となるときには最大の目標回転数Nmaxを出力し、圧力検出値Pが圧力上限値Pmaxよりも高圧となるときには最小の目標回転数Nminを出力する。
また、圧力検出値Pが圧力下限値Pminと圧力上限値Pmaxとの間の値となるときには、目標回転数演算部30Aは、目標回転数N0として、目標回転数Nmaxと目標回転数Nminとの間の値を出力する。このとき、目標回転数N0は、圧力検出値Pに比例して減少する。
電源電力演算部30Bは、例えば給電部23に接続され、リアクトル25Bに入力される電圧V0(例えば100V)と抵抗25Eに流れる電流I0(例えば15A)を用いて、外部の商用電源から電動モータ3に供給可能な電源電力P0(例えば1.5kW)を演算する。この場合、昇圧回路25は力率改善回路27によって力率を改善して動作しているから、電圧V0と電流I0の積によって電源電力P0を求めることができる。この電源電力P0は、商用電源によって予め決められた所定電力に相当する。
必要トルク最大電力演算部30Cは、回転トルク演算手段および回転トルク発生電力演算手段を構成している。この必要トルク最大電力演算部30Cは、圧力センサ21による圧力検出値Pに基づいて圧縮行程で圧縮部4に生じる最大負荷(最大トルク)を演算し、この最大トルクを発生させるために必要な最大電力P1を演算する。
これらの演算を説明すると次のようになる。前提として、圧力検出値Pはタンク18内の平均圧力に応じた値となっている。このため、圧縮部4に生じる最大負荷PMは、圧力検出値Pよりも所定の圧力差ΔP(圧力変動分)だけ高くなる(PM=P+ΔP)。このとき、この圧力差ΔPは、タンク18内の圧力(圧力検出値P)、タンク18の容積および圧縮部4の容積(各圧縮室S1,S2の容積)と一定の対応関係がある。従って、タンク18の容積、圧縮部4の容積等を予め調べておくことによって、圧力検出値P(例えばP=3.0MPa)に基づいて最大負荷PM(例えばPM=3.2MPa)を求めることができる。
そして、高圧側圧縮機構12のピストン16が上死点位置となったときに高圧側の圧縮室S2内の圧力は最高圧となるから、この上死点位置で圧縮部4の最大負荷PMが生じる。一方、低圧側圧縮機構6のピストン10が上死点位置となったときには、低圧側の圧縮室S1内の圧力は最高圧となるものの、高圧側の圧縮室S2内の圧力は最低圧となるから、圧縮部4の負荷(負荷トルク)は最大負荷PMよりも小さくなる。このため、必要トルク最大電力演算部30Cは、圧力検出値Pに基づいて、2つの圧縮機構6,12のうち高圧側圧縮機構12の圧縮行程で圧縮部4に生じる最大負荷PMを演算する。この最大負荷PMは、圧縮部4の駆動を継続するのに必要な回転トルクに対応している。
このとき、電動モータ3が発生するトルク(モータトルク)はモータ電流Imに比例する。このため、必要トルク最大電力演算部30Cは、回転トルク演算値として、最大負荷PMを乗り越えるために必要な電動モータ3の最大トルクを演算し、この最大トルクを発生させるときに必要なモータ電流Imを演算する。そして、このモータ電流Imと電動モータ3の内部抵抗Rとの積によってトルク発生電圧V1(V1=I×R)を求める。
一方、必要トルク最大電力演算部30Cは、回転センサ20による回転位置信号Sθに基づいて電動モータ3の回転数Nを演算する。ここで、電動モータ3に生じる誘起電圧V2(逆起電圧)は、電動モータ3の角速度(回転数N)に比例する。このため、回転センサ20によって検出した回転数Nに基づいて、誘起電圧V2を求める。
次に、トルク発生電圧V1と誘起電圧V2とを加算して、モータ電圧Vmを求める(Vm=V1+V2)。このモータ電圧Vmとモータ電流Imとの積によって、高圧側圧縮機構12のピストン16が上死点位置となったときに、電動モータ3に供給する最大電力P1を演算する(P1=Vm×Im)。この最大電力P1が、最大トルクを発生させるための電力演算値に相当する。
吸込行程電力演算部30Dは、目標回転数演算部30Aによる目標回転数N0、電源電力演算部30Bによる電源電力P0および必要トルク最大電力演算部30Cによる最大電力P1に基づいて、吸込行程で電動モータ3に供給する吸込行程電力P2を出力する。
これらの演算を説明すると次のようになる。まず、吸込行程電力演算部30Dは、目標回転数N0で1回転するときの時間を周期T0として算出し、この周期T0と電源電力P0との積によって電動モータ3が1回転する間に電動モータ3に供給する電源電力量W0を演算する。
また、ピストン16が上死点を乗り越えるときには圧縮部4の負荷は大きく、それ以外のときには圧縮部4の負荷は小さい。このとき、圧縮部4の負荷が大きい高負荷時間T1は、圧縮部4の構造等によって電動モータ3が1回転する間(周期T0)のうち予め決められた所定の割合(例えばT1=T0/4)となっている。これに加え、最大電力P1に基づいて、ピストン16が上死点を乗り越えるときに必要なモータ電力Pmの時間変化を求めることができる。即ち、圧縮部4の負荷の時間変化は、図8中の特性線に示すように、予め把握することができるから、この負荷の時間変化に基づいて、必要なモータ電力Pmの時間変化を求めることができる。
この結果、高負荷時間T1でのモータ電力Pmの時間変化を積分することによって、ピストン16が上死点を乗り越えるときに必要な高負荷時電力量W1を求めることができる。このため、吸込行程電力演算部30Dは、電源電力量W0から高負荷時電力量W1を減算して低負荷時電力量W2(W2=W0−W1)を算出する。そして、周期T0から高負荷時間T1を減算した低負荷時間T2(T2=T0−T1)で低負荷時電力量W2を平均化することによって、例えば吸込行程のように圧縮部4の負荷が小さいときに電動モータ3に供給する吸込行程電力P2を演算する。
マルチプレクサ30Eは、供給電力増加手段を構成すると共に、吸込行程電力演算部30Dと一緒に供給電力減少手段を構成している。このマルチプレクサ30Eは、目標回転数演算部30Aによる目標回転数N0、必要トルク最大電力演算部30Cによる最大電力P1、吸込行程電力演算部30Dによる吸込行程電力P2および回転センサ20からの回転位置θ(回転位置信号Sθ)に基づいて、モータドライバ29に向けて電圧指令信号Svを出力する。
具体的には、マルチプレクサ30Eは、後述する周期測定モードを予め実行しておくことによって、圧縮部4の負荷が最大になる回転位置として、ピストン16が上死点位置となる回転位置θ1を予め記憶している。このため、マルチプレクサ30Eは、回転センサ20からの回転位置信号Sθによって圧縮部4の各圧縮機構6,12が吸込行程、圧縮行程のいずれの状態であるかを把握することができる。このとき、例えば高圧側圧縮機構12が吸込行程にあり低圧側圧縮機構6が圧縮行程にあるときには、圧縮部4の負荷が小さく、高圧側圧縮機構12が圧縮行程にあり低圧側圧縮機構6が吸込行程にあるときには、圧縮部4の負荷が大きくなる。
このため、マルチプレクサ30Eは、回転位置θを用いて、圧縮部4の負荷が大きいか否かを把握し、圧縮部4の負荷に応じて電圧指令信号Svを変化させる。例えば高圧側圧縮機構12が吸込行程にあるときのように、圧縮部4の負荷が小さい低負荷時には、マルチプレクサ30Eは、吸込行程電力P2および目標回転数N0に基づいてモータ電圧Vmを演算し、このモータ電圧Vmに応じた電圧指令信号Svを出力する。
一方、例えば高圧側圧縮機構12のピストン16が上死点付近にあるときのように、圧縮部4の負荷が大きい高負荷時には、マルチプレクサ30Eは、最大電力P1に基づいて電動モータ3のモータトルクを発生させるために必要なモータ電力Pmを算出する。具体的には、マルチプレクサ30Eは、ピストン16が上死点に近付く手前からピストン16が上死点に到達するまでの間は、圧縮部4の負荷の増加割合を予測すると共に、この増加割合に応じて吸込行程電力P2から最大電力P1まで増加する電力を算出する。また、マルチプレクサ30Eは、ピストン16の上死点を超えた直後で圧縮部4の負荷が十分に低下しない範囲では、このときの負荷の予測値に応じて吸込行程電力P2よりも大きな電力を算出する。
そして、圧縮部4の負荷が大きい高負荷時には、マルチプレクサ30Eは、この算出したモータ電力Pmおよび目標回転数N0に基づいてモータ電圧Vmを演算し、このモータ電圧Vmに応じた電圧指令信号Svを出力する。
以上のように、マルチプレクサ30Eは、圧縮部4の負荷が小さい低負荷時には、電源電力P0よりも小さい吸込行程電力P2を電動モータ3に供給する。この低負荷時に電動モータ3を回転させるためのトルクは、図7に示すように、電源電力P0によって発生するトルクよりも減少する。このため、電動モータ3に吸込行程電力P2を供給しても、電動モータ3の回転を維持することができる。
一方、タンク18の圧力が所定の圧力よりも上昇した状態では、高負荷時に電動モータ3を回転させるためのトルクは、図7に示すように、電源電力P0によって発生するトルクよりも増加する。これに対し、マルチプレクサ30Eは、圧縮部4の負荷が大きい高負荷時には、電源電力P0よりも一時的に大きなモータ電力Pmを電動モータ3に供給する。特に、ピストン16が上死点位置となって圧縮部4の負荷が最大となるきには、最大電力P1を電動モータ3に供給する。これにより、電動モータ3は、モータトルクを増加させるから、ピストン16は確実に上死点位置を乗り越えることができ、電動モータ3の脱調を防止することができる。
なお、モータ電圧Vmに応じてモータ電流Imも変化する。このため、マルチプレクサ30Eは、モータ電流Imの平均値が所定の定格電流値(例えば15A)を超えない範囲で、モータ電圧Vm(電圧指令信号Sv)を設定している。
次に、制御部30による電動モータ3の駆動制御について、図2ないし図5を参照しつつ詳細に説明する。
まず、制御部30が駆動すると、制御部30のCPUはROM等の記憶部から図4に示すメインプログラムを読込む。そして、CPUは、以下の処理を行う。
まず、ステップ1では各種の変数等をリセットする初期化処理を行う。このとき、後述する割込み処理プログラムで使用するモードは起動モードに設定される。そして、ステップ2では、割込み処理プログラムによる割込みを許可状態にする。
次に、ステップ3では、空気圧縮機1に設けられた操作スイッチ(図示せず)がオン状態か否かを判定する。そして、ステップ3で「YES」と判定したときには、ステップ4に移行して電動モータ3を駆動するモータ駆動処理を行う。
このモータ駆動処理では、制御部30は例えばタンク18の圧力に応じて電動モータ3の駆動、停止を制御する圧力開閉制御を行う。具体的には、圧力センサ21による圧力検出値Pが圧力上限値Pmaxよりも上昇したときに電動モータ3を停止し、圧力検出値Pが圧力下限値Pminよりも低下したときに電動モータ3の駆動を再開する。これにより、制御部30は、圧力下限値Pminと圧力上限値Pmaxとの間の範囲内にタンク18内の圧力を保持する。
一方、ステップ3で「NO」と判定したときには、ステップ5に移行して電動モータ3を停止するモータ停止処理を行う。ステップ4,5が終了すると、空気圧縮機1に対する電力供給が停止されるまで、ステップ3以降の処理を繰り返す。
次に、制御部30による割込み処理について、図5を参照しつつ説明する。この割込み処理は、予め決められたサンプリング周期(例えば200ms)毎に実行されるものである。
まず、ステップ11では、現在のモードが起動モード、周期測定モード、制御モードのいずれであるかを判定する。そして、ステップ11で起動モードであると判定したときには、ステップ12に移って所謂ブーストラップ駆動を行うために、例えばインバータ28に付加されたコンデンサを充電する等の起動処理を行う。
次に、ステップ13では、起動処理が完了したか否かを判定する。そして、ステップ13で「NO」と判定したときには、起動処理を続行するために、起動モードを保持した状態でリターンする。一方、ステップ13で「YES」と判定したときには、ステップ14に移って起動モードから周期測定モードに変更してリターンする。
また、ステップ11で周期測定モードであると判定したときには、ステップ15に移って圧縮部4の周期を測定する処理を行う。具体的には、高圧側圧縮機構12のピストン16が上死点となる回転位置θ1を検出するために、例えばモータ電流Imを予め決められた一定の値に保持しつつ電動モータ3に対して所定の電力を供給する。この状態で、回転センサ20による回転位置信号Sθを用いて、電動モータ3が1回転する間に回転速度(回転数N)が下がる位置(最低となる位置)を検出する。
なお、ステップ12の周期測定の処理では、モータ電流Imを一定値に保持する代わりに、モータ電圧Vmを一定値に保持してもよい。この場合、上死点位置に対応した回転位置θ1として、モータ電流Imが増加した位置(最大となる位置)を検出するものである。
次に、ステップ16では、上死点位置(回転位置θ1)の検出が完了したか否かを判定する。そして、ステップ16で「NO」と判定したときには、周期測定を続行するために、周期モードを保持した状態でリターンする。一方、ステップ16で「YES」と判定したときには、ステップ17に移ってステップ15で検出した回転位置θ1を上死点に対応する位置として記憶する。その後、ステップ18に移って周期測定モードから制御モードに変更してリターンする。
また、ステップ11で制御モードであると判定したときには、ステップ19に移って回転センサ20による回転位置信号Sθを用いて、圧縮部4の負荷が増大して電動モータ3のトルクが不足し易い状態か否か、即ち現在の回転位置θが上死点に対応した回転位置θ1の近傍か否かを判定する。ここで、上死点の手前で高圧側圧縮機構12内の圧力(負荷)が上昇するのに対し、上死点を超えると負荷は一気に小さくなる。このため、例えば回転センサ20が電動モータ3の1回転を12ステップに分割して検出する場合には、現在の回転位置θが上死点の手前の3ステップから後側の1ステップの範囲内((θ1−90°)<θ<(θ1+30°))か否かによって、圧縮部4の負荷が増大している状態か否かを判定する。
そして、ステップ19で「YES」と判定したときには、ステップ20に移って、圧力検出値Pに基づいて必要トルク最大電力演算部30Cによる最大電力P1を演算する。また、マルチプレクサ30Eは、この最大電力P1に基づいて現在の回転位置θで回転トルクの発生に必要なモータ電力Pmを演算する。ステップ21では、この演算したモータ電力Pmと目標回転数N0とに基づいて、電圧指令信号Svを演算し、モータドライバ29に向けて出力する。ステップ21が終了すると、リターンする。
一方、ステップ19で「NO」と判定したときには、ステップ22に移って、吸込行程電力演算部30Dは、吸込行程電力P2を演算する。その後、ステップ23では、マルチプレクサ30Eは、この吸込行程電力P2と目標回転数N0とに基づいて電圧指令信号Svを演算し、モータドライバ29に向けて出力する。ステップ23が終了すると、リターンする。
本実施の形態による空気圧縮装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、図2ないし図9を参照しつつ、その動作について説明する。
まず、電源ケーブルを商用電源に接続した状態で操作スイッチ(図示せず)をオンにすると、制御部30は起動モードを実行して電動モータ3を起動した後、周期測定モードを実行して圧縮部4の最大負荷PMが生じる位置としてピストン16の上死点に対応した回転位置θ1を検出する。その後、制御部30は、制御モードに移行して電動モータ3をタンク18内の圧力に応じて回転駆動する。
そして、制御部30は、圧力センサ21による圧力検出値Pが圧力上限値Pmaxよりも上昇したときに電動モータ3を停止し、圧力検出値Pが圧力下限値Pminよりも低下したときに電動モータ3の駆動を再開する。これにより、制御部30は、圧力下限値Pminと圧力上限値Pmaxとの間の範囲内にタンク18内の圧力を保持する。
また、制御部30の目標回転数演算部30Aは、図6に示すように、圧力センサ21による圧力検出値Pに基づいて電動モータ3の目標回転数N0を演算する。そして、制御部30は、電動モータ3の回転数Nが目標回転数N0となるように、モータ電流Imおよびモータ電圧Vmを制御する。
ここで、ピストン10,16を往復動させて空気を圧縮する圧縮部4では、電動モータ3が1回転する間に、圧縮部4の負荷は大きく変動する。例えば図8に示すように、圧縮部4の吸込行程では負荷が小さくなるのに対し、圧縮行程では負荷が大きくなる。特に、高圧側圧縮機構12のピストン16が上死点に達して圧縮室S2が最縮小する回転位置θ1では、圧縮部4の負荷は最大値(最大負荷PM)となる。
なお、低圧側圧縮機構6による負荷は高圧側圧縮機構12による負荷に比べて小さい。このため、図8では、この低圧側圧縮機構6による負荷変動は無視している。
電動モータ3の慣性が大きい場合には、電動モータ3の1回転の間で圧縮部4の負荷が変動しても、その慣性力によって安定した回転を継続することができる。これに対し、例えば小型の電動モータ3を用いた場合には、電動モータ3の慣性が小さいから、圧縮部4の負荷の変動に伴って、電動モータ3の回転数(回転速度)にばらつきが生じる。
例えば図8中に破線で示す第1の比較例は、モータ電圧Vmを一定値とした場合を示している。この場合、圧縮部4の負荷が増加するのに伴って、電動モータ3の回転速度が低下する。これにより、モータ電流Imが増加して、電動モータ3が発生するモータトルクが増加するから、ピストン16は上死点位置を乗り越えることができる。しかし、この場合には、電動モータ3の1回転する間に回転速度に変動が生じてしまう。
また、図8中に一点鎖線で示す第2の比較例は、例えば回転センサ20によって検出した回転数Nと目標回転数N0との差分が小さくなるように、モータ電圧Vm、モータ電流ImをPID制御した場合を示している。この場合、圧縮部4の負荷が増加するのに伴って、モータ電圧Vmおよびモータ電流Imはいずれも増加し、ピストン16の上死点位置で最大値となる。これにより、電動モータ3の回転速度は圧縮部4の負荷に拘らず一定となる。
しかし、第2の比較例の場合、電動モータ3に供給するモータ電力Pmは、圧縮部4の負荷の変動に拘らず、電動モータ3が1回転する間でほぼ全体に亘って電源電力P0よりも小さい値となっている。このため、さらに小型な電動モータ3を用いる場合には、モータトルクを増加させるために、電動モータ3の回転数を低下させる必要があり、圧縮部4から吐出される圧縮空気の吐出量が減少するという問題がある。
これに対し、本実施の形態では、電動モータ3の1回転の間でピストン16が上死点を乗り越えるのに必要な回転トルクを演算すると共に、この回転トルクを発生させるための最大電力P1を演算する。そして、ピストン16が上死点に近付くに従って、モータ電力Pmを電源電力P0よりも増加させて、徐々に最大電力P1に近付ける。これにより、ピストン16は確実に上死点位置を乗り越えることができる。
一方、ピストン16が上死点を超えた後は、圧縮部4の負荷が大きく低下し、大きなモータトルクは不要になる。このため、モータ電力Pmを電源電力P0よりも低下させる。これにより、電動モータ3の回転速度(回転数N)は、第2の比較例に比べて、全体として僅かに低下するものの、ほぼ同程度の値に設定することができる。
また、モータ電力Pmは、ピストン16が上死点の近傍に位置する短時間の間だけ増加するものの、その平均値は、電源電力P0よりも低下する。このとき、モータ電力Pmが電源電力P0よりも増加する割合(電力アップ率)は、図9の特性線に示すように、圧縮機4の負荷(タンク18の圧力)に応じて変化する。即ち、圧縮部4の負荷が大きいときには、電源電力P0に対するモータ電力Pmの増加割合が大きく、圧縮部4の負荷が小さいときには、電源電力P0に対するモータ電力Pmの増加割合が小さくなる。
また、往復動型の圧縮部4では、電動モータ3が1回転する間で圧縮部4の負荷が大きくなるのは、ピストン16が上死点付近に位置したときだけである。このため、モータ電力Pmは、電源電力P0よりも増加する時間よりも、電源電力P0よりも減少している時間の方が長くなる。従って、電動モータ3に供給する電力量を低下させることができ、エネルギー消費量を低減することができる。
かくして、本実施の形態によれば、制御部30は、必要トルク最大電力演算部30Cを用いて、圧力センサ21による圧力検出値Pに基づいて圧縮部4の負荷が最大の状態で必要な回転トルクを演算すると共に、この回転トルク演算値を発生させるための最大電力P1を演算する。そして、マルチプレクサ30Eは、電動モータ3が1回転する間で圧縮部4の負荷が大きいときには、最大電力P1に基づいて電動モータ3に供給するモータ電力Pmを予め決められた電源電力P0よりも一時的に増加させる。一方、マルチプレクサ30Eは、電動モータ3が1回転する間で圧縮部4の負荷が小さいときには、最大電力P1に基づいて電動モータ3に供給するモータ電力Pmを電源電力P0よりも減少した吸込行程電力P2に設定する。
これにより、電動モータ3が1回転する間に圧縮部4の負荷が大きく変動する場合でも、圧縮部4の負荷が大きくなるときに、モータ電力Pmを増加させて圧縮部4の最大負荷PMに応じた最大電力P1に近付けることができる。これにより、ピストン16は確実に上死点位置を乗り越えることができる。
この結果、慣性の小さい小型の電動モータ3を用いた場合でも、圧縮部4の負荷が大きい高圧側圧縮機構12の圧縮行程で電動モータ3の脱調が生じることがなく、安定して電動モータ3を回転駆動させることができる。また、小型の電動モータ3を用いた場合でも、電動モータ3の回転速度のばらつきを低下させつつ、できるだけ高い回転数で電動モータ3を駆動することができる。このため、圧縮空気の吐出量を確保しつつ、電動モータ3の回転を安定化することができると共に、空気圧縮機1を小型化して可搬性を高めることができる。
また、圧縮部4が吸込行程を行うときには、負荷が小さくなるから、電動モータ3に必要な回転トルクも小さくなる。ここで、特許文献1に記載された圧縮機では、回転数に基づいて電動モータに供給する電力を制御しているから、電動モータによって無駄な回転トルクを発生させていることなり、電動モータに必要以上のエネルギーを供給していた。
これに対し、本実施の形態では、制御部30は、電動モータ3が1回転する間で圧縮部4の負荷が小さいときには、モータ電力Pmを吸込行程電力P2に設定する。このとき、モータ電力Pmは、電源電力P0よりも増加する時間に比べて、電源電力P0よりも減少している時間の方が長くなるから、モータ電力Pmの平均値は電源電力P0よりも小さくなる。また、電動モータ3は無駄なトルクを発生することがないから、エネルギー効率を高めることができる。この結果、例えば第1,第2の比較例に比べて、電動モータ3に供給する電力量を低下させることができ、エネルギー消費量を低減することができる。
また、制御部30は、周期測定モードによって圧縮部4の負荷が最大となるときの回転位置θ1を最大負荷位置として測定する。このため、制御部30は、電動モータ3の回転位置θが回転位置θ1の近傍か否かに応じて、モータ電力Pmを電源電力P0よりも増加させるか、減少させるかを判断することができ、圧縮部4の負荷を直接的に測定する必要がなくなる。
さらに、圧縮部4は、低圧段から高圧段に向けて圧縮空気の圧力を順次上昇させるために互いに直列に接続された2個の圧縮機構6,12を備える構成とした。このため、制御部30は、これらの圧縮機構6,12のうち最高圧段となる高圧側圧縮機構12の負荷が最大となる位置の近傍で、モータ電力を電源電力P0よりも増加させ、それ以外の位置でモータ電力を電源電力P0よりも減少させる。これにより、圧縮部4が複数個の圧縮機構6,12を備える場合でも、電動モータ3を安定して駆動することができる。
なお、前記実施の形態では、図5中のステップ15〜17が周期測定手段の具体例を示している。
また、前記実施の形態では、電圧指令信号Svを用いてモータ電圧Vmを増加させることによって、電動モータ3が発生するトルクを制御する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばd軸をトルク軸とし、q軸を励磁電流軸としたd−q制御を行う場合には、電流値が同じでも電流位相角βを現在値よりも大きくすると、トルク軸の電流値が増えるので、発生トルクも増加する。このため、電流位相角βを増加または減少させることによって、電動モータ3が発生するトルクを制御してもよく、モータ電圧Vmと電流位相角βの両方を制御する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、圧縮部4は低圧側圧縮機構6と高圧側圧縮機構12とが互いに水平方向で対向する水平対向式往復動型の空気圧縮機1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2つの圧縮機構がV形に傾斜して配置された圧縮部でもよい。
また、圧縮部4は2個の圧縮機構6,12を直列に接続する構成としたが、複数の圧縮機構がそれぞれ並列にタンクに接続される構成としてもよい。この場合、電動モータが1回転する間で各圧縮機構のピストンが上死点付近に位置する2箇所でモータ電力を増加し、他の位置ではモータ電力を減少させる構成としてもよい。さらに、圧縮部4は2個の圧縮機構6,12を備える構成としたが、3個以上の圧縮機構を備えた圧縮部でもよく、単一の圧縮機構からなる圧縮部でもよい。
また、前記実施の形態では、商用電源による電圧V0および電流I0を測定し、これらの電圧V0および電流I0に基づいて所定電力としての電源電力P0を求める構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、所定電力は、空気圧縮機1の仕様等によって予め決められた一定の電力値であってもよい。
さらに、前記実施の形態では、往復動圧縮機として空気圧縮装置1を例に挙げて説明したが、例えば窒素等の他の気体を圧縮する気体圧縮機に適用してもよく、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機等にも広く適用できるものである。
以上の実施の形態で述べたように、請求項1の発明によれば、制御部は、電動モータが1回転する間で圧縮部の負荷が大きいときには、回転トルク発生電力演算手段による電力演算値に基づいて電動モータに対する供給電力を所定電力よりも一時的に増加させる供給電力増加手段を備える構成とした。このため、電動モータが1回転する間に圧縮部の負荷が大きく変動する場合でも、圧縮部の負荷が大きくなるときに電動モータに対する供給電力を一時的に増加させて、ピストンを確実に上死点位置を乗り越えさせることができる。
この結果、慣性の小さい小型の電動モータを用いた場合でも、圧縮部の負荷が大きい圧縮行程で電動モータの脱調が生じることがなく、安定して電動モータを回転駆動させることができる。また、小型の電動モータを用いた場合でも、電動モータの回転速度のばらつきを低下させつつ、できるだけ高い回転数で電動モータを駆動することができる。このため、圧縮空気の吐出量を確保しつつ、電動モータの回転を安定化することができると共に、圧縮機を小型化して可搬性を高めることができる。
請求項2の発明によれば、制御部は、電動モータが1回転する間で圧縮部の負荷が小さいときには、回転トルク発生電力演算手段による電力演算値に基づいて電動モータに対する供給電力を所定電力よりも減少させる供給電力減少手段を備える構成とした。これにより、電動モータに対する供給電力は、所定電力よりも増加する時間に比べて、所定電力よりも減少している時間の方が長くすることができるから、供給電力の平均値を所定電力よりも小さくすることができる。また、電動モータは無駄なトルクを発生することがないから、エネルギー効率を高めることができる。この結果、電動モータに供給する電力量を低下させることができ、エネルギー消費量を低減することができる。
請求項3の発明によれば、制御部は、圧縮部の負荷が最大となるときの回転位置を最大負荷位置として測定する周期測定手段を備える構成とした。このため、制御部の供給電力増加手段は、電動モータの回転位置が最大負荷位置の近傍か否かに応じて、電動モータに対する供給電力を所定電力よりも増加させる時点を判断することができ、圧縮部の負荷を直接的に測定する必要がなくなる。
請求項4の発明によれば、制御部は、圧縮部の負荷が最大となるときの回転位置を最大負荷位置として測定する周期測定手段を備える構成とした。このため、制御部の供給電力増加手段は、電動モータの回転位置が最大負荷位置の近傍か否かに応じて、電動モータに対する供給電力を所定電力よりも増加させる時点を判断することができる。また、制御部の供給電力減少手段は、電動モータの回転位置が最大負荷位置の近傍か否かに応じて、電動モータに対する供給電力を所定電力よりも減少させるかを判断することができる。このため、圧縮部の負荷を直接的に測定する必要がなくなる。
請求項5の発明によれば、圧縮部は、低圧段から高圧段に向けて圧縮空気の圧力を順次上昇させるために互いに直列に接続された複数個の圧縮機構を備える構成とした。このため、制御部の供給電力増加手段は、例えばこれら複数個の圧縮機構のうち最高圧段の圧縮機構の負荷が最大となる位置の近傍で、電動モータに対する供給電力を所定電力よりも一時的に増加させることができる。これにより、圧縮部が複数個の圧縮機構を備える場合でも、電動モータを安定して駆動することができる。
請求項6の発明によれば、圧縮部は、低圧段から高圧段に向けて圧縮空気の圧力を順次上昇させるために互いに直列に接続された複数個の圧縮機構を備える構成とした。このため、制御部の供給電力増加手段は、例えばこれら複数個の圧縮機構のうち最高圧段の圧縮機構の負荷が最大となる位置の近傍で、電動モータに対する供給電力を所定電力よりも一時的に増加させることができる。また、制御部の供給電力減少手段は、例えばこれら複数個の圧縮機構のうち最高圧段の圧縮機構の負荷が最大となる位置の近傍以外で電動モータに対する供給電力を所定電力よりも減少させることができる。これにより、圧縮部が複数個の圧縮機構を備える場合でも、電動モータを安定して駆動することができる。