JP2010248043A - 塩化ニッケル水溶液の精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供する。
【解決手段】鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法による。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
【選択図】なし
【解決手段】鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法による。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
【選択図】なし
Description
本発明は、塩化ニッケル水溶液の精製方法に関し、さらに詳しくは、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる塩化ニッケル水溶液の精製方法に関する。
塩化ニッケル水溶液の精製方法は、超合金材料やめっき材料として広く用いられている高純度電気ニッケルの製造に際して重要な技術である。高純度電気ニッケルの製造方法としては、一般に、浸出工程、浄液工程及び電解工程からなる方法が用いられる。例えば、まず、浸出工程で、原料であるニッケル硫化物を主成分とするニッケルマット、ニッケルとコバルトの混合硫化物等を塩素ガスで浸出し浸出液を得る。続いて、浄液工程で、浸出液に含まれる不純物元素を除去し高純度塩化ニッケル水溶液を得る。その後、電解工程で、該高純度塩化ニッケル水溶液を電解液として用いて、電解採取法により陰極にニッケルを電着させ、これを回収し高純度電気ニッケルを得る。
通常、原料であるニッケルマットには、コバルト、銅、鉄等の不純物元素が含有され、また、ニッケルとコバルトの混合硫化物には、コバルト、銅、亜鉛、鉄等の不純物元素が付随している。したがって、浸出液中には、ニッケルのみではなく、これらの不純物元素が含まれるため、電解工程に先立って、浸出液の浄液工程が必要となる。ところで、塩化ニッケル水溶液中で、鉄はMCl4 −、銅、亜鉛及びコバルトは、MCl4 2−(式中のMは、Cu、Zn及びCoを表す。)等の塩素イオン錯体を形成している。
従来、コバルト、銅、亜鉛、鉄等の塩素イオン錯体を形成する不純物元素の浄液工程としては、酸化中和法、イオン交換法、硫化物沈殿法、溶媒抽出法等の各種の方法を組み合わせて不純物元素を除去している。
例えば、鉄、銅又はコバルトの浄液工程としては、酸化反応と中和反応とを同時に行なう酸化中和法と称される方法(例えば、特許文献1〜4参照。)を用いた工程が知られている。この酸化中和法を用いた浄液工程では、中和剤の添加によりpHを調整するとともに、酸化剤の添加により酸化還元電位を調整することによって、前記不純物元素を水酸化物として沈澱除去する。なお、ここで、中和剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等が使用され、また酸化剤としては、塩素ガス、過酸化水素水等が使用されるのが一般的である。
例えば、鉄、銅又はコバルトの浄液工程としては、酸化反応と中和反応とを同時に行なう酸化中和法と称される方法(例えば、特許文献1〜4参照。)を用いた工程が知られている。この酸化中和法を用いた浄液工程では、中和剤の添加によりpHを調整するとともに、酸化剤の添加により酸化還元電位を調整することによって、前記不純物元素を水酸化物として沈澱除去する。なお、ここで、中和剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等が使用され、また酸化剤としては、塩素ガス、過酸化水素水等が使用されるのが一般的である。
また、亜鉛の浄液工程としては、硫酸ニッケル水溶液中の亜鉛を硫化物として除去する方法に準じて、硫化剤として硫化水素ガスを吹き込むことで亜鉛を硫化物として除去する方法が行なわれるが、硫酸ニッケル水溶液中の亜鉛の場合と比べて除去効率が低いので亜鉛を完全に除去するためには多量のニッケルの共沈殿をともなう。また、亜鉛を水酸化物として除去する場合には、pHを9〜10程度まで上昇させることになるので、この条件では大部分のニッケルも水酸化物を形成してニッケルのロス量が多くなるため、アルカリ中和法による塩化ニッケル水溶液からの亜鉛の除去は適用できない。このため、亜鉛は、高濃度塩化ニッケル水溶液中では負電荷をもつテトラクロロ亜鉛錯体を形成することを利用して、陰イオン交換樹脂による吸着除去法が提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)。この方法によれば、塩化ニッケル水溶液中の亜鉛を低濃度にまで除去することができるが、前記塩化ニッケル水溶液中に塩素錯体を形成する不純物元素が含まれるときには、その種類及び濃度によっては、陰イオン交換樹脂の寿命が短くなり処理コスト上の問題が発生する。さらに、従来のイオン交換樹脂のみによる吸着除去では、イオン交換樹脂による吸着除去前の液中の亜鉛濃度が1〜10mg/Lの範囲であることが望ましく、これ以上の濃度で亜鉛を含む塩化ニッケル水溶液では、亜鉛の除去不良又はイオン交換樹脂の早期の破過などの問題により適用することが難しかった。
一方、塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収する方法としては、アミン系抽出剤を用いる溶媒抽出法(例えば、特許文献7参照。)が行なわれている。この際、コバルト塩素イオン錯体のほかに、鉄、銅及び亜鉛の塩素イオン錯体を有機相に抽出し、塩素イオン錯体を形成しないニッケルと分離することできることが知られている。したがって、亜鉛に関しては、溶媒抽出法とイオン交換樹脂による吸着除去法を組み合わせることにより、より高濃度に亜鉛を含有する塩化ニッケル水溶液に対しても、より低濃度の亜鉛濃度まで除去可能となる。しかしながら、前記溶媒抽出法では、コバルトは比較的容易に逆抽出により回収されることができるが、有機相中に抽出された鉄、銅及び亜鉛の逆抽出には多くの工程が不可欠であった。したがって、高価な有機溶媒の再利用が必須である溶媒抽出法のみでは、塩化ニッケル水溶液中から、鉄、銅及び亜鉛の塩素イオン錯体を完全に除去することは、実用上困難であった。
以上の状況から、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これらの金属元素を、簡便な設備でかつ低コストで効率的に除去する方法が求められている。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法について、鋭意研究を重ねた結果、塩化ニッケル水溶液を酸化中和処理に付すし、予備的に鉄を除去する第1工程、溶媒抽出処理に付し、鉄を除去しかつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去する第2工程、イオン交換処理に付し、亜鉛を除去する第3工程、及び、酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去する第4工程を順次行なったところ、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記第1工程は、下記の(イ)〜(ニ)の要件を満足することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
(イ)塩化ニッケル水溶液(A)の組成は、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
(ロ)pHは、2.2〜2.4である。
(ハ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVである。
(ニ)塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度は、10mg/L以下である。
(イ)塩化ニッケル水溶液(A)の組成は、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
(ロ)pHは、2.2〜2.4である。
(ハ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVである。
(ニ)塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度は、10mg/L以下である。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記第2工程は、下記の(ホ)、(ヘ)の要件を満足することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
(ホ)前記有機相は、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる。
(ヘ)塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下である。
(ホ)前記有機相は、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる。
(ヘ)塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下である。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記第3工程は、下記の(ト)の要件を満足することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
(ト)塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度は、0.01mg/L以下である。が提供される。
(ト)塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度は、0.01mg/L以下である。が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記第4工程は、下記の(チ)〜(ル)の要件を満足することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
(チ)前記希釈後のCl濃度は、120〜140g/Lである。
(リ)pHは、4.3〜4.6である。
(ヌ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVである。
(ル)塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度は、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下である。
(チ)前記希釈後のCl濃度は、120〜140g/Lである。
(リ)pHは、4.3〜4.6である。
(ヌ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVである。
(ル)塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度は、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下である。
本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法を詳細に説明する。
本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。
本発明において、上記工程を順次行なうことが重要である。これによって、コバルト、銅、亜鉛、鉄等の塩素イオン錯体を形成する不純物元素を含有する塩化ニッケル水溶液の精製方法において、従来、実用上の問題があった各種浄液方法の特性を効果的に組み合わせて、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる。
すなわち、まず、第1工程では、酸化中和処理を採用して、後続の溶媒抽出処理においてコバルトの抽出を大きく妨害する鉄を、その妨害を排除するため予備的に除去する。一般的に、酸化中和処理では、その条件により、鉄を十分に除去し、さらにコバルト、銅等の除去も可能であるが、ニッケルは勿論、有価金属であるコバルトの共沈殿による除去は経済的に好ましくないので、鉄の予備的な除去に留める。
すなわち、まず、第1工程では、酸化中和処理を採用して、後続の溶媒抽出処理においてコバルトの抽出を大きく妨害する鉄を、その妨害を排除するため予備的に除去する。一般的に、酸化中和処理では、その条件により、鉄を十分に除去し、さらにコバルト、銅等の除去も可能であるが、ニッケルは勿論、有価金属であるコバルトの共沈殿による除去は経済的に好ましくないので、鉄の予備的な除去に留める。
次に、第2工程では、3級アミンを抽出剤として含有する有機相を用いる溶媒抽出処理を採用し、コバルトを除去し回収することが主目的である。その際、塩化ニッケル水溶液中でコバルトよりも強固な塩素イオン錯体が形成する鉄、亜鉛及び銅は、有機相に抽出され水相から除去される。ここで、コバルトを完全に抽出する条件下には、形成される有機相の再生利用に困難性が生じるので、コバルトの分離を、残留する鉄を十分に除去し、かつ後続のイオン交換処理の負荷を低減するため予備的に亜鉛を除去する程度に留める。なお、銅の一部も付随して除去する。
続いて、第3工程では、陰イオン交換樹脂を用いるイオン交換処理を採用し、残留した亜鉛のみを除去する。すなわち、イオン交換処理の経済性を確保するためには、第2工程での予備的な亜鉛の除去が不可欠である。
最後に、第4工程では、酸化中和処理を採用し、第3工程で残留された銅とコバルトをCl濃度を調整した液中から除去する。
最後に、第4工程では、酸化中和処理を採用し、第3工程で残留された銅とコバルトをCl濃度を調整した液中から除去する。
(1)第1工程
上記第1工程は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る工程である。
上記第1工程は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る工程である。
上記第1工程としては、特に限定されるものではないが、下記の(イ)〜(ニ)の要件を満足することが好ましい。
(イ)塩化ニッケル水溶液(A)の組成は、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度g0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
(ロ)pHは、2.2〜2.4である。
(ハ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVである。
(ニ)塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度は、10mg/L以下である。
(イ)塩化ニッケル水溶液(A)の組成は、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度g0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
(ロ)pHは、2.2〜2.4である。
(ハ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVである。
(ニ)塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度は、10mg/L以下である。
すなわち、上記塩化ニッケル水溶液(A)としては、特に限定されるものではなく、原料を塩素浸出又は塩酸溶解して得られた、塩酸酸性の粗塩化ニッケル水溶液が好ましく用いられる。例えば、塩化ニッケル水溶液(A)の組成としては、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
上記酸化中和処理の条件としては、特に限定されるものではなく、pHが2.2〜2.4で、かつ酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が900〜1000mVであることが好ましい。すなわち、pHが2.2未満では、鉄の除去が不十分であり、一方、pHが2.4を超えると、鉄の除去が過剰となり、ニッケル及びコバルトの共沈殿が生じる。また、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が900mV未満では、鉄の酸化が不足であり除去が不十分であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が1000mVを超えると、コバルト及びニッケルの共沈殿が生じる。
上記第1工程で得られる塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度としては、本工程では、前述したように、鉄の予備的な除去を目的とするので、鉄以外の、例えばコバルト等の共沈殿を抑える条件下で、かつ溶媒抽出での妨害を排除することができる濃度、例えば、10mg/L以下であれば十分である。
(2)第2工程
上記第2工程は、上記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る工程である。
上記第2工程は、上記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る工程である。
上記第2工程としては、特に限定されるものではないが、下記の(ホ)、(ヘ)の要件を満足することが好ましい。
(ホ)前記有機相は、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる。
(ヘ)塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下である。
(ホ)前記有機相は、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる。
(ヘ)塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下である。
すなわち、上記有機相としては、特に限定されるものではなく、3級アミンとしては、トリノルマルオクチルアミン又はトリイソオクチルアミンが用いられるが、トリノルマルオクチルアミンが好ましい。また、トリノルマルオクチルアミンの濃度が20容量%未満では、有機相へのコバルト抽出量が少なく、設備が大きくなり、一方、その濃度が40容量%を超えると、有機相の粘性が高くなり、油水分離が悪化する。
上記第2工程で得られる塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度としては、特に限定されるものではないが、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下になるようにすることが好ましい。すなわち、本工程では、前述したように、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去することを目的にするので、コバルトの分離を、残留する鉄を十分に除去し、かつ後続のイオン交換処理の負荷を低減するため予備的に亜鉛を除去する程度に留めるものである。
上記溶媒抽出処理の条件としては、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル水溶液(C)中の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度において所望値が得られるように、抽出段、洗浄段及び逆抽出段の各段数、OA比、流量等の制御因子が管理される。
(3)第3工程
上記第3工程は、上記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る工程である。
上記第3工程は、上記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る工程である。
上記第3工程において、特に限定されるものではなく、下記の(ト)の要件を満足することが好ましい。
(ト)塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度は、0.01mg/L以下である。
すなわち、上記第3工程で得られる塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度としては、0.01mg/L以下であることが好ましい。これによって、亜鉛濃度が十分に低い塩化ニッケル水溶液が得られる。
(ト)塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度は、0.01mg/L以下である。
すなわち、上記第3工程で得られる塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度としては、0.01mg/L以下であることが好ましい。これによって、亜鉛濃度が十分に低い塩化ニッケル水溶液が得られる。
上記イオン交換処理としては、特に限定されるものではなく、市販の陰イオン交換樹脂を用いて、混合物の撹拌法又は充填した樹脂層を通液させるカラム法で行なわれる。ここで、その条件としては、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度が所望値になるように、液と樹脂も割合、接触時間等の制御因子が管理される。
(4)第4工程
上記第4工程は、上記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る工程である。
上記第4工程は、上記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る工程である。
上記第4工程において、特に限定されるものではなく、下記の(チ)〜(ル)の要件を満足することが好ましい。
(チ)前記希釈後のCl濃度は、120〜140g/Lである。
(リ)pHは、4.3〜4.6である。
(ヌ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVである。
(ル)塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度は、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下である。
(チ)前記希釈後のCl濃度は、120〜140g/Lである。
(リ)pHは、4.3〜4.6である。
(ヌ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVである。
(ル)塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度は、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下である。
すなわち、Cl濃度を調整する際、上記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は低ニッケル濃度の塩化ニッケル水溶液で希釈して、希釈後のCl濃度を120〜140g/Lに低下させる。これによって、コバルト等の塩素イオン錯体を不安定化させることができ、酸化中和処理による除去が行なえる。
上記酸化中和処理の条件としては、特に限定されるものではなく、pHが4.3〜4.6で、かつ酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が1050〜1150mVであることが好ましい。すなわち、pHが4.3未満では、コバルト及び銅の除去が不十分であり、一方、pHが4.6を超えると、ニッケルの共沈殿が生じる。また、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が1050mV未満では、コバルト及び銅の酸化が不足であり除去が不十分であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が1150mVを超えると、排ガス系への酸化剤(塩素ガス)のロスが多くなり、好ましくない。
上記第4工程で得られる塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度としては、特に限定されるものではないが、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下であることが好ましい。これによって、銅及びコバルト濃度が十分に低い塩化ニッケル水溶液が得られる。
以上の第1〜4工程を順次行なうことにより、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる。
以上の第1〜4工程を順次行なうことにより、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた金属の分析は、ICP発光分析法および原子吸光分光光度計で行なった。
(実施例1)
図1に示す本発明の概略工程図にしたがって、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造した。
(1)酸化中和工程(脱Fe)
Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである粗塩化ニッケル水溶液に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付した。ここで、酸化中和処理のpHは、2.2〜2.4であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVであった。
その結果を、図2に示す。図2は、pHと得られた塩化ニッケル水溶液(終液)の鉄濃度の関係を示す。図2より、得られた塩化ニッケル水溶液(終液)の鉄濃度は、10mg/L以下であった。
図1に示す本発明の概略工程図にしたがって、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、これら金属元素を効率的に除去し、高純度の塩化ニッケル水溶液を製造した。
(1)酸化中和工程(脱Fe)
Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである粗塩化ニッケル水溶液に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付した。ここで、酸化中和処理のpHは、2.2〜2.4であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVであった。
その結果を、図2に示す。図2は、pHと得られた塩化ニッケル水溶液(終液)の鉄濃度の関係を示す。図2より、得られた塩化ニッケル水溶液(終液)の鉄濃度は、10mg/L以下であった。
(2)溶媒抽出工程(脱Fe、Cu、Zn、Co)
Ni濃度が170〜190g/L、Cu濃度が16〜50mg/L、Zn濃度が10〜30mg/L、及びCo濃度が3.7〜7.6g/Lである塩化ニッケル水溶液からなる水相と、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液を得た。
その結果、3段の抽出段で得られた塩化ニッケル水溶液のニッケル、銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ171〜183g/L、0.1〜5.0mg/L、0.002〜0.07mg/L、1mg/L以下および2〜8mg/Lであり、銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ、10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下という要件を満足していた。
Ni濃度が170〜190g/L、Cu濃度が16〜50mg/L、Zn濃度が10〜30mg/L、及びCo濃度が3.7〜7.6g/Lである塩化ニッケル水溶液からなる水相と、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液を得た。
その結果、3段の抽出段で得られた塩化ニッケル水溶液のニッケル、銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ171〜183g/L、0.1〜5.0mg/L、0.002〜0.07mg/L、1mg/L以下および2〜8mg/Lであり、銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ、10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下という要件を満足していた。
(3)イオン交換工程(脱Zn)
図3は、亜鉛濃度が93mg/Lの塩化ニッケル水溶液を、陰イオン交換樹脂(アンバーライト IRA96SB)と接触してイオン交換処理に付した際の終液の亜鉛濃度と亜鉛吸着量の関係を示す。
図3より、溶媒抽出法により亜鉛を0.1mg/L以下に低減させた塩化ニッケル水溶液に対して、陰イオン交換樹脂による亜鉛の吸着除去を行なうことにより、0.01mg/L以下の亜鉛濃度まで除去できることが分かる。これによって、電気ニッケル中の亜鉛品位についても1ppm以下を満たすことが可能である。
図3は、亜鉛濃度が93mg/Lの塩化ニッケル水溶液を、陰イオン交換樹脂(アンバーライト IRA96SB)と接触してイオン交換処理に付した際の終液の亜鉛濃度と亜鉛吸着量の関係を示す。
図3より、溶媒抽出法により亜鉛を0.1mg/L以下に低減させた塩化ニッケル水溶液に対して、陰イオン交換樹脂による亜鉛の吸着除去を行なうことにより、0.01mg/L以下の亜鉛濃度まで除去できることが分かる。これによって、電気ニッケル中の亜鉛品位についても1ppm以下を満たすことが可能である。
(4)酸化中和工程(脱Cu、Co)
Ni濃度が177g/L、Cu濃度が0.9mg/L、及びCo濃度が7mg/Lである塩化ニッケル水溶液を水で希釈し、Cl濃度を120〜140g/Lに調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付した。ここで、酸化中和処理のpHは、4.3〜4.6であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVであった。
その結果を図4に示す。図4は、反応時間経過による銅とコバルトの濃度変化を示す。
図4より、20分間以上の反応時間で、塩化ニッケル水溶液中のコバルト及び銅を、それぞれ0.4mg/L以下、0.1mg/L以下の濃度にまで除去することができることが分かる。
Ni濃度が177g/L、Cu濃度が0.9mg/L、及びCo濃度が7mg/Lである塩化ニッケル水溶液を水で希釈し、Cl濃度を120〜140g/Lに調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付した。ここで、酸化中和処理のpHは、4.3〜4.6であり、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVであった。
その結果を図4に示す。図4は、反応時間経過による銅とコバルトの濃度変化を示す。
図4より、20分間以上の反応時間で、塩化ニッケル水溶液中のコバルト及び銅を、それぞれ0.4mg/L以下、0.1mg/L以下の濃度にまで除去することができることが分かる。
以上より、実施例1では、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである粗塩化ニッケル水溶液から、酸化中和工程による鉄の除去、溶媒抽出工程による鉄、銅、亜鉛及びコバルトの除去、イオン交換工程による亜鉛の除去及び酸化中和工程による銅とコバルトの除去を順次行なうことにより、Fe濃度が10mg/L以下、Cu濃度が0.1mg/L以下、Zn濃度が0.01mg/L以下、及びCo濃度が1mg/L以下の高純度の塩化ニッケル水溶液を製造することができる。
以上より明らかなように、本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する粗塩化ニッケル水溶液から、簡便な設備でかつ低コストで効率的に高純度の塩化ニッケル水溶液を製造する方法として好適である。
1 粗塩化ニッケル水溶液
2 酸化中和工程(脱Fe)
3 溶媒抽出工程(脱Fe、Cu、Zn、Co)
4 イオン交換工程(脱Zn)
5 酸化中和工程(脱Cu、Co)
6 高純度塩化ニッケル水溶液
2 酸化中和工程(脱Fe)
3 溶媒抽出工程(脱Fe、Cu、Zn、Co)
4 イオン交換工程(脱Zn)
5 酸化中和工程(脱Cu、Co)
6 高純度塩化ニッケル水溶液
Claims (5)
- 鉄、銅、亜鉛及びコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(A)から、これら金属元素を除去して、塩化ニッケル水溶液を精製する方法であって、
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法。
第1工程:前記塩化ニッケル水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、予備的に鉄を除去した塩化ニッケル水溶液(B)を得る。
第2工程:前記塩化ニッケル水溶液(B)からなる水相と3級アミンを抽出剤として含有する有機相とを接触して溶媒抽出処理に付し、鉄を除去し、かつ予備的に銅、亜鉛及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(C)を得る。
第3工程:前記塩化ニッケル水溶液(C)を陰イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理に付し、亜鉛を除去した塩化ニッケル水溶液(D)を得る。
第4工程:前記塩化ニッケル水溶液(D)を水又は塩化ニッケル水溶液で希釈し、Cl濃度を調整した後、酸化剤として塩素ガスを吹込み、かつ中和剤として炭酸ニッケルを添加して酸化中和処理に付し、銅及びコバルトを除去した塩化ニッケル水溶液(E)を得る。 - 前記第1工程は、下記の(イ)〜(ニ)の要件を満足することを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
(イ)塩化ニッケル水溶液(A)の組成は、Ni濃度が170〜210g/L、Fe濃度が1〜3g/L、Cu濃度が0.01〜0.05g/L、Zn濃度が0.01〜0.03g/L、及びCo濃度が3〜10g/Lである。
(ロ)pHは、2.2〜2.4である。
(ハ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、900〜1000mVである。
(ニ)塩化ニッケル水溶液(B)の鉄濃度は、10mg/L以下である。 - 前記第2工程は、下記の(ホ)、(ヘ)の要件を満足することを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
(ホ)前記有機相は、トリノルマルオクチルアミンが20〜40容量%で残部が芳香族炭化水素からなる。
(ヘ)塩化ニッケル水溶液(C)の銅、亜鉛、鉄及びコバルト濃度は、それぞれ10mg/L以下、0.1mg/L以下、1mg/L以下及び10mg/L以下である。 - 前記第3工程は、下記の(ト)の要件を満足することを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
(ト)塩化ニッケル水溶液(D)の亜鉛濃度は、0.01mg/L以下である。 - 前記第4工程は、下記の(チ)〜(ル)の要件を満足することを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
(チ)前記希釈後のCl濃度は、120〜140g/Lである。
(リ)pHは、4.3〜4.6である。
(ヌ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、1050〜1150mVである。
(ル)塩化ニッケル水溶液(E)の銅及びコバルト濃度は、それぞれ0.1mg/L以下、及び1mg/L以下である。
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JP2009101127A JP2010248043A (ja) | 2009-04-17 | 2009-04-17 | 塩化ニッケル水溶液の精製方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015209582A (ja) * | 2014-04-30 | 2015-11-24 | 住友金属鉱山株式会社 | 3級アミン抽出剤による溶媒抽出方法 |
WO2017126442A1 (ja) * | 2016-01-21 | 2017-07-27 | Jx金属株式会社 | 無水塩化ニッケル及びその製造方法 |
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2009
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EP3406568A4 (en) * | 2016-01-21 | 2019-08-21 | JX Nippon Mining & Metals Corporation | ANHYDROUS NICKEL CHLORIDE AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME |
US10882757B2 (en) | 2016-01-21 | 2021-01-05 | Jx Nippon Mining & Metals Corporation | Anhydrous nickel chloride and method for producing the same |
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