JP2010240826A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体表面に、下部層(Ti化合物層)と上部層(α型酸化アルミニウム)からなる硬質被覆層が化学蒸着で形成された表面被覆切削工具において、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置を用いてプローブ径5nmで上記下部層と上部層との界面を解析した場合に、上記下部層と上部層との界面を中心とした±5nmの界面領域のみに、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上が合計で1〜5原子%存在する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、例えば鋼や鋳鉄などの、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合にも、硬質被覆層がすぐれた密着強度を有するため、切刃にチッピング(微小欠け)の発生なく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン基超硬合金製基体(以下、超硬基体という)あるいはTiCN基サーメット基体(以下、サーメット基体という。また、超硬基体とサーメット基体とを総称して、工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム(以下、Al23 で示す)層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具が広く知られており、この被覆工具は、鋼や鋳鉄などの切削加工において、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
また、工具基体とこの上に蒸着形成される硬質被覆層との接合強度を高めるために、工具基体表面に、Fe、NiあるいはCoの単一金属層、複合金属層を0.2〜2μm程度の厚さで被覆することも知られている。
特公昭50−14237号公報 特開昭53−23810号公報
近年の切削加工の省力化および省エネ化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化、高効率化の傾向にあり、その反面、工具寿命の延命化を図るという点から硬質被覆層の厚膜化も求められているが、下部層としてTi化合物層、上部層としてAl23 層からなる硬質被覆層を形成した従来被覆工具を用いて、例えば鋼の断続切削を高速条件で行うと、前記Al23 層は高温強度、靭性が十分でないため、硬質被覆層のチッピング、剥離等を生じやすく、また、工具基体と硬質被覆層の接合強度を高めるために、工具基体表面に金属Fe、NiあるいはCoを被覆したとしても、下部層―上部層間での密着強度が十分でないために、チッピング、剥離等が発生し、これを原因として、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、被覆工具の耐チッピング性、耐剥離性を改善すべく、硬質被覆層の層構造について鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
被覆工具の硬質被覆層のうち、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上から形成されるTi化合物層からなる下部層は、それ自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与し、また、Al23 層からなる上部層は、耐酸化性と熱的安定性にすぐれ、さらに高硬度を有するが、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削では、下部層−上部層間の密着強度が十分でない。
そこで、下部層−上部層間の密着強度を高めるため、両層の密着界面領域の改質について、数多くの実験を重ねた結果、下部層と上部層との界面領域(下部層と上部層との界面を中心とした±5nmの範囲内の領域)のみに微量のZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上が存在(偏在)している場合に、該Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上の原子は、下部層のTi化合物層および上部層のAl23 層との間に強固なケミカルボンドを形成し、その結果として、下部層と上部層間の密着強度が高められることを見出したのである。
より具体的には、例えば、下部層形成後上部層形成前に、下部層表面を、Zr化合物を含有するガス雰囲気中で短時間処理(以下、「Zr処理」という)し、ついで、上部層を蒸着形成することによって、微量のZr原子を、上記下部層と上部層との界面領域のみに存在(偏在)させることができ、そして、これによって、Ti化合物層からなる下部層とAl23 層からなる上部層との密着強度が向上し、その結果、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工においても、チッピング、剥離の発生なく、長期の使用に亘って優れた切削性能を発揮することができることを見出したのである。
また、Zr原子ばかりでなく、Lu原子、Y原子、Cr原子それぞれ単独の場合も、さらには、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のうちの2種以上の場合も、これらを下部層と上部層との界面領域のみに存在(偏在)させた場合には、Ti化合物層からなる下部層とAl23 層からなる上部層との密着強度が向上し、その結果、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工においても、チッピング、剥離の発生なく、長期の使用に亘って優れた切削性能を発揮することができることを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層からなる硬質被覆層を化学蒸着で形成した表面被覆切削工具において、
下部層は、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、また、上部層は、1〜15μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層からなり、さらに、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置を用いてプローブ径5nmで上記下部層と上部層との界面を解析した場合に、上記下部層と上部層との界面を中心とした±5nmの界面領域のみに、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上が合計で1〜5原子%存在することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層について、より詳細に説明する。
(a)下部層(Ti化合物層)
Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、硬質被覆層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と中間層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する接合強度を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理によるZr、Lu、Y、Crの存在(偏在)する界面領域の形成
上記Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理は、Ti化合物層からなる下部層と、Al23 層からなる上部層との密着強度を高めるための処理であって、
(イ)例えば、Zr処理は、
反応ガス(容量%): ZrCl 2〜5%, 残部H
雰囲気圧力: 3〜5 kPa、
処理温度: 1000〜1100 ℃、
処理時間: 1〜5 min
の条件でZr原子を下部層の表面に微量付着させ、その後、通常条件でAl23 層を蒸着形成することによって、下部層と上部層との界面領域のみに微量のZr原子が存在(偏在)する領域を形成することができる。
(ロ)また、Lu処理は、上記Zr処理における反応ガスを、
反応ガス(容量%): LuCl 2〜5%, 残部H
に変更することによって、下部層と上部層との界面領域のみに微量のLu原子が存在(偏在)する領域を形成することができる。
(ハ)同様に、Y処理は、反応ガスをYCl 2〜5容量%,残部Hに変更することによって、Cr処理は、反応ガスをCrCl 2〜5容量%,残部Hに変更することによって、下部層と上部層との界面領域のみに、それぞれ、微量のY原子、Cr原子が存在(偏在)する領域を形成することができる。
(ニ)下部層と上部層との界面領域のみに、微量のZr原子、Lu原子、Y原子およびCr原子のうちの2種以上が存在(偏在)する領域を形成するためには、
反応ガス(容量%): ZrCl、LuCl、YCl、CrClのうちの2種以上の成分ガスを合計量で2〜5%, 残部H
からなる反応ガスを使用すればよい。
上記反応ガスを用い、
雰囲気圧力: 3〜5 kPa、
処理温度: 1000〜1100 ℃、
処理時間: 1〜5 min
の条件でZr原子、Lu原子、Y原子およびCr原子の2種以上を下部層の表面に微量付着させ、その後、通常条件でAl23 層を蒸着形成することによって、下部層と上部層との界面領域のみに微量のZr原子、Lu原子、Y原子およびCr原子のうちの2種以上が存在(偏在)する領域を形成することができる。
より具体的に言えば、例えば、Zrの存在(偏在)する界面領域の形成については、
反応ガス(容量%):TiCl4.2%, N20%,CHCN 0.6%, 残部H
雰囲気圧力: 7 kPa、
処理温度: 900 ℃、
処理時間: 600 min、
の条件でTi化合物層(下部層)を蒸着形成した後、
反応ガス(容量%): ZrCl3%, 残部H
雰囲気圧力: 4 kPa、
処理温度: 1000 ℃、
処理時間: 3 min
の条件でZr処理を行って、Zr原子を下部層の表面に微量付着させ、その後、
反応ガス(容量%): AlCl3%, CO6%,HCl 8%,HS0.4%,残部H
雰囲気圧力: 7 kPa、
処理温度: 1000 ℃、
処理時間: 300 min、
の条件でAl23 層(上部層)を蒸着形成した硬質被覆層について、その硬質被覆層の縦断面を観察すると、図1として示す高分解能透過型顕微鏡写真(倍率:20000倍)にみられるように、下部層と上部層との界面領域のみ(界面を中心にして±5nmの範囲内の領域)にZr存在(偏在)領域が形成されていることがわかる。
そして、Zrの存在(偏在)する上記界面領域を、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置を用いてプローブ径5nmで測定解析すると、下部層と上部層との界面を中心にして±5nmの範囲内の領域のみに微量(1〜5原子%)のZr原子が存在(偏在)することがわかり、一方、下部層と上部層との界面を中心にして±5nm以外の領域(例えば、界面中心からAl23 層内部へ深さ10nmの位置あるいは界面中心からTi化合物層内部へ深さ10nmの位置)においては、Zrは全く検出されなかった。
Lu、Y、Crの存在(偏在)する界面領域の形成についても上記と同様であり、Ti化合物層(下部層)を蒸着形成した後、Lu処理、Y処理、Cr処理を行って、Lu原子、Y原子、Cr原子を下部層の表面に微量付着させ、その後Al23 層(上部層)を蒸着形成すると、下部層と上部層との界面領域のみ(界面を中心にして±5nmの範囲内の領域)にLu、Y、Cr存在(偏在)領域が形成され、しかも、下部層と上部層との界面を中心にして±5nmの範囲内の領域のみに微量(1〜5原子%)のLu原子、Y原子、Cr原子が存在(偏在)し、一方、下部層と上部層との界面を中心にして±5nm以外の領域(例えば、界面中心からAl23 層内部へ深さ10nmの位置あるいは界面中心からTi化合物層内部へ深さ10nmの位置)においては、Lu原子、Y原子、Cr原子の存在(偏在)は全く検出されない。
上記Zr、Lu、Y、Crの各原子の存在(偏在)割合は、上記条件のうち、特に、Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理におけるZrCl、LuCl、YCl、CrClの濃度によって影響を受けるが、Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理におけるZrCl、LuCl、YCl、CrClの(合計)濃度を上記条件から外れた低濃度条件で行った場合には、Zr、Lu、Y、Crの各原子の存在(偏在)割合は合計で1原子%未満となり、この場合には、下部層と上部層に対する十分に強固なケミカルボンドが形成されないため、密着強度の向上効果は期待できない。
なお、Lu原子の存在(偏在)は上記の作用に加えて、下部層と上部層間のクリープ特性を向上させるという効果があり、さらに、Y原子、Cr原子の存在(偏在)は上記の作用に加えて、上部層の成膜初期にAl粒子を微粒化することにより、密着性の向上効果、耐摩耗性の向上効果を高めるという作用がある。
一方、Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理におけるZrCl、LuCl、YCl、CrClの(合計)濃度を上記条件から外れた高濃度で行った場合には、下部層と上部層との界面を中心にして±5nm以内の領域のZr、Lu、Y、Crの含有割合が多くなるとともに、より下部層内部へ、あるいは、より上部層内部へとZr、Lu、Y、Crの各原子が浸透し偏在するようになるが、界面領域でのZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子の存在割合が合計で5原子%を超えると、界面領域においてZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子同士の金属結合が発生し、密着強度が低下することとなり、さらに、界面領域を超えて下部層内部、上部層内部へとZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子が浸透すると、下部層内部、上部層内部に金属Zr、金属Lu、金属Y、金属Crが析出し、下部層の高温強度、上部層の高温硬さを低下せしめるためである。
したがって、この発明では、下部層と上部層との界面を中心にして±5nm以内の領域のみにZr、Lu、Y、Crの各原子が存在(偏在)するようにするため、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子の割合を合計で1〜5原子%と定めた。
なお、この発明でいうZr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理により形成されるZr、Lu、Y、Crの存在(偏在)する界面領域とは、下部層と上部層との界面を中心にした±5nmの範囲内の領域のみにZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子が存在するということであるが、このZr、Lu、Y、Crは、下部層と上部層の中間的な層として存在するのではなく、また、Zr層、Lu層、Y層、Cr層として独立してあるいは識別される層を形成しているわけではない。
したがって、下部層と上部層との界面に、所謂、層が形成されるか否かという点で、工具基体表面にFe、NiあるいはCoの単一金属層、複合金属層を0.2〜2μmの層厚で形成している先に示した先行技術文献(特許文献1、2)記載のものとは、下部層と上部層間の界面構造は明白に異なり区別されるべきものである。
(c)上部層(Al23 層)
上部層を構成するAl23 層は、高温硬さおよび耐熱性にすぐれ、高熱発生を伴う高速断続切削加工において、基本的な役割として耐摩耗性を維持する。
この発明では、Zr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理によって、下部層と上部層の密着強度を高めているので、このような被覆工具を高速断続切削加工に用いたような場合には、耐チッピング性、耐剥離性等が向上し、その結果、長期の使用に亘って、すぐれた切削特性を発揮することができる。
ただ、上部層の平均層厚が1μm未満では、厚膜化による工具寿命の長寿命化を期待することができず、また、下部層との密着強度を高めたことから上部層の厚膜化も可能となるが、上部層の平均層厚が15μmを超えるようになると、切刃部にチッピング、欠損、剥離等が発生し易くなることから、上部層の平均層厚は、1〜15μmと定めた。
この発明の被覆工具は、Ti化合物層からなる下部層の最表面にZr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理を施し、下部層と上部層との界面の特定領域のみにZr、Lu、Y、Crの存在(偏在)する界面領域を形成すことにより、下部層(Ti化合物層)と上部層(Al23 層)との間に強固なケミカルボンドを形成し、その結果として、下部層と上部層間の密着強度が高められ、例えば鋼や鋳鉄などの、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合にも、硬質被覆層がすぐれた密着強度を有するため、切刃にチッピング(微小欠け)の発生なく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することができる
本発明被覆工具1の下部層と上部層との界面領域のみに、一例として、Zrが存在(偏在)することを示す高分解能透過型顕微鏡写真(倍率:20000倍)である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも2〜4μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG160412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG160412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
ついで、表4〜8に示される条件にて、下部層の最表面にZr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理を施し、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上の原子を下部層の表面に微量付着させ、
ついで、表3に示される条件にて、表9、表11〜14に示される組み合わせおよび目標層厚で、Al23 層を上部層として蒸着形成する、
ことにより本発明被覆工具1〜13、21〜33、41〜53、61〜73、81〜93をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、下部層の最表面にZr処理、Lu処理、Y処理、Cr処理のいずれをも施さない(Zr、Lu、Y、Crの存在(偏在)する界面領域を形成しない)以外は、本発明被覆工具1〜13と全く同様にして、下部層(Ti化合物層)および上部層(Al23 層)を蒸着形成することにより、表10に示される比較被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
次に、上記の本発明被覆工具1〜13、21〜33、41〜53、61〜73、81〜93の硬質被覆層の下部層と上部層との界面近傍について、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置(Noran社製VoyagerIV)を用いてプローブ径5nmで解析したところ、下部層と上部層との界面領域、即ち、下部層と上部層との界面を中心とした±5nmの範囲内の領域、のみにZr、Lu、Y、Crの存在(偏在)を検出することができた。
具体的には、Zr、Lu、Y、Crの存在割合は以下の手順で求めた。
試料について、界面部平均厚さ100nm以下の断面薄片サンプルを作成し、高分解能透過型顕微鏡において、加速電圧200kV、倍率20000倍、プローブ径5nmの条件にてエネルギー分散型X線分析装置測定を行い、試料各ポイントにおけるZrの存在割合を測定し、界面においては10点測定を行った平均割合をZr、Lu、Y、Crの存在割合として決定した。
表9〜14に、上記測定で求めたZr、Lu、Y、Crの各原子の存在割合(原子%)を示す。
また、本発明被覆工具1〜13、21〜33、41〜53、61〜73、81〜93および比較被覆工具1〜13の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
Figure 2010240826
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つぎに、上記の本発明被覆工具1〜13、21〜33、41〜53、61〜73、81〜93および比較被覆工具1〜13の各種の被覆工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
[切削条件A]
被削材:JIS・SNCM420の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 375 m/min、
切り込み: 2.4 mm、
送り: 0.24 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件でのニッケルクロムモリブデン鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、200m/min)、
[切削条件B]
被削材:JIS・FCD500の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 370 m/min、
切り込み: 2.6 mm、
送り: 0.33 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、180m/min)、
[切削条件C]
被削材:JIS・S30Cの長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 370 m/min、
切り込み: 1.45 mm、
送り: 0.50 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、250m/min)
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表15〜17に示した。
Figure 2010240826
Figure 2010240826
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表9〜17に示される結果から、本発明被覆工具1〜13、21〜33、41〜53、61〜73、81〜93は、硬質被覆層の下部層と上部層との界面領域に微量のZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子の少なくともいずれかが存在し、強固なケミカルボンドで下部層と上部層間の密着強度を高めていることから、高い発熱を伴い、かつ、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する各種の鋼や鋳鉄の高速断続切削でも、硬質被覆層の耐チッピング性が著しく改善され、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を示す。
しかるに、硬質被覆層の下部層と上部層との間に微量のZr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子が存在する界面領域が形成されていない比較被覆工具1〜13においては、高速断続切削という厳しい切削条件下では、硬質被覆層の層間密着強度が不十分であるために、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、特に高い発熱を伴い断続的かつ衝撃的な負荷がかかる高速断続切削加工においてすぐれた耐チッピング性を示すものであるが、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工にも使用できることは勿論であって、この場合にも、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化が十分期待できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層からなる硬質被覆層を化学蒸着で形成した表面被覆切削工具において、
    下部層は、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、また、上部層は、1〜15μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層からなり、さらに、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置を用いてプローブ径5nmで上記下部層と上部層との界面を解析した場合に、上記下部層と上部層との界面を中心とした±5nmの界面領域のみに、Zr原子、Lu原子、Y原子、Cr原子のいずれか1種又は2種以上が合計で1〜5原子%存在することを特徴とする表面被覆切削工具。
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