ところで、特許文献2に開示されているような調湿システムにおいて、その能力制御を各調湿回路ごとにどのように行うかが問題となる。例えば、上記各調湿回路をマルチ式の空調システムと同様に行うと、室内の湿度をうまくコントロールできないことが考えられる。
つまり、上記空調システムの場合、例えば、冷房運転において、冷媒回路の蒸発温度が予め固定された設定温度となるように圧縮機の運転容量を制御している。このため、圧縮機運転条件によっては、ある室内の空調負荷に対して該室内ユニットの空調能力が過剰になることがある。このような場合には、その室内ユニットをサーモオフさせることで、その室内の温度を設定温度よりも低くなりすぎないようにしている。
上記調湿システムは、空調システムとは違い、その除湿運転や加湿運転が換気運転を兼ねている。このことから、室内の調湿負荷に対して調湿回路の調湿能力が過剰になった場合に、上記空調システムのようにその調湿回路をサーモオフさせてしまうと、調湿されない外気が室内に供給されてしまう。すると、室内の湿度が外気湿度に早く近づいてしまい調湿状態をうまくコントロールできないことが考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の調湿回路が接続されて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えた調湿システムにおいて、各調湿回路をできるだけサーモオフさせずに最適な調湿能力の調整を行うことにある。
第1の発明は、容量可変な圧縮機(53)を接続した熱源回路(60)に対して、吸着剤が担持された第1吸着熱交換器(51)と膨張弁(55)と吸着剤が担持された第2吸着熱交換器(52)とを接続した複数の調湿回路(50)が並列に接続されて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)と、上記熱源回路(60)の高圧側と上記第1吸着熱交換器(51)の一端とを接続して熱源回路(60)の低圧側と第2吸着熱交換器(52)の一端とを接続する第1状態と、上記熱源回路(60)の高圧側と第2吸着熱交換器(52)の一端とを接続して熱源回路(60)の低圧側と第1吸着熱交換器(51)の一端とを接続する第2状態とに切換可能な切換機構(54)と、上記切換機構(54)を切り換えて、上記熱源回路(60)の高圧側又は低圧側に接続された吸着熱交換器(51,52)の吸着剤に接触させた空気を該各吸着熱交換器(51,52)に対応する対象空間に送る調湿運転を制御する制御手段(1)とを備えた調湿システムを前提としている。
そして、上記調湿システムの制御手段(1)には、上記各調湿回路(50)の対象空間の現在湿度Miが目標湿度Msに近づくように、上記各対象空間の現在湿度Mi及び屋外の外気湿度Moの少なくとも一方と、上記各対象空間の目標湿度Msとに基づいて決定された必要調湿能力値Hsを上記各対象空間に対応する調湿回路(50)ごとに出力する目標能力決定部(3)と、上記目標能力決定部(3)から入力された各必要調湿能力値Hsに基づいて決定された上記冷媒回路(20)の設定調湿能力値Hmを出力する設定能力決定部(7)と、上記冷媒回路(20)の現在調湿能力値Hが上記設定能力決定部(7)から入力された設定調湿能力値Hmに近づくように圧縮機(53)の運転容量を制御する圧縮機制御部(9)とが設けられていることを特徴としている。
ここで、上記必要調湿能力値Hsは、上記各調湿回路(50)の対象空間の現在湿度Miを目標湿度Msにするために必要な能力値である。
第1の発明では、上記調湿回路(50)の運転状況、即ち上記現在湿度Mi、上記外気湿度Mo及び上記目標湿度Msに基づいて各調湿回路(50)ごとに最適な上記必要調湿能力値Hsを決定し、それらの必要調湿能力値Hsに基づいて上記設定調湿能力値Hmを決定している。
つまり、上記各調湿回路(50)の側から上記設定調湿能力値Hmを決定している。こうすることで、各調湿回路(50)の調湿能力を調湿負荷に近づけやすくすることができる。尚、上記調湿回路(50)の調湿能力とは、該調湿回路(50)が有する吸着熱交換器(51,52)の調湿能力のことをいう。
第2の発明は、第1の発明において、上記設定能力決定部(7)は、上記目標能力決定部(3)から入力された全ての上記必要調湿能力値Hsを積算した値を上記設定調湿能力値Hmとして上記圧縮機制御部(9)へ出力するように構成されていることを特徴としている。
第2の発明では、上記目標能力決定部(3)から入力された全ての上記必要調湿能力値Hsを積算した値が上記設定調湿能力値Hmとして上記圧縮機制御部(9)へ出力される。こうすると、全ての調湿回路(50)において、その調湿能力の不足が生じることがない。
第3の発明は、第1又は第2の発明おいて、上記制御手段(1)には、上記各調湿回路(50)に対応する対象空間の現在湿度Miと、該対象空間の目標湿度Msと、該各調湿回路(50)の第1、第2吸着熱交換器(51,52)のうち上記熱源回路(60)の低圧側に接続された吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度の現在値SHとに基づいて、上記各調湿回路(50)ごとに能力アップ又は能力ダウンを判定してその判定に対応する信号を出力する能力判定部(8a)と、上記能力判定部(8a)から入力される信号に基づいて、上記圧縮機制御部(9)に入力される設定調湿能力値Hmを現在よりも増減させる設定温度変更部(8b)とが設けられていることを特徴としている。
第3の発明では、上記能力判定部(8a)において、調湿負荷に対して調湿能力が余っている調湿回路(50)を能力ダウンと判定し、調湿負荷に対して調湿能力が足りない調湿回路(50)を能力アップと判定する。そして、その各調湿回路(50)ごとの判定結果に基づいて、上記設定温度変更部(8b)が上記圧縮機制御部(9)へ入力される設定調湿能力値Hmを変更することできる。
尚、上記能力判定部(8a)が行う判定は、例えば、除湿の場合は除湿しすぎて現在湿度Miが目標湿度Msよりも大幅に低くなる場合、加湿の場合は加湿しすぎて現在湿度Miが目標湿度Msよりも大幅に高くなる場合であって、且つそのときの調湿回路(50)の第1、第2吸着熱交換器(51,52)のうち上記熱源回路(60)の低圧側に接続された吸着熱交換器(以下、低圧側の吸着熱交換器という。)(51,52)の出口過熱度の現在値SHが上限値よりも大きい場合には、上記能力判定部(8a)は、その調湿回路(50)を能力ダウンと判定する。ここで、上記出口過熱度の上限値は、上記膨張弁(55)が最小開度のときの出口過熱度に近い値にするとよい。こうすると、能力ダウンの判定を確実に行うことができる。
一方、上記現在湿度Miが目標湿度Msに近づくことなく、且つそのときの低圧側の吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度が下限値よりも小さい場合には、上記能力判定部(8a)は、その調湿回路(50)を能力アップと判定する。ここで、上記出口過熱度の下限値は、上記圧縮機(53)に液冷媒が吸入されない程度に小さな値にするとよい。こうすると、能力アップの判定を確実に行うことができる。
第4の発明は、第3の発明において、上記設定温度変更部(8b)は、上記能力判定部(8a)から入力される上記各調湿回路(50)ごとの信号が全て能力ダウンの信号である場合には、上記圧縮機制御部(9)へ入力される設定調湿能力値Hmを現在よりも低くするように構成されていることを特徴としている。
第4の発明では、上記設定温度変更部(8b)により、全ての調湿回路(50)において、それらの調湿能力が余り気味と判定された場合には、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも低くして、調湿能力が不足気味とならない範囲で、全ての調湿回路(50)の調湿能力を一律に減少させることができる。
第5の発明は、第3又は第4の発明において、上記設定温度変更部(8b)は、上記能力判定部(8a)から入力される信号の少なくとも1つが能力アップの信号である場合には、上記圧縮機制御部(9)に入力される設定調湿能力値Hmを現在よりも高くするように構成されていることを特徴としている。
第5の発明では、上記設定温度変更部(8b)により、少なくとも1つの調湿回路(50)で調湿能力が不足気味と判定された場合には、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも高くして、調湿能力が余り気味とならない範囲で、各調湿回路(50)の調湿能力を一律に増加させることができる。
第6の発明は、第1から第5の何れか1つの発明において、上記制御手段(1)には、上記対象空間の現在湿度Mi及び屋外の外気湿度Moの少なくとも一方と、該対象空間の目標湿度Msと、上記設定能力決定部(7)から入力された設定調湿能力値Hmとに基づいて、上記対象空間に対応する上記調湿回路(50)の第1、第2吸着熱交換器(51,52)のうち上記熱源回路(60)の低圧側に接続された吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度の設定値SHsを決定して出力する設定過熱度決定部(4)と、上記設定過熱度決定部(4)から入力された吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度の設定値SHsに対して、上記出口過熱度の現在値SHが近づくように該吸着熱交換器(51,52)に対応する膨張弁(55)の開度を制御する第1膨張弁制御部(5a)とが設けられていることを特徴としている。
第6の発明では、上記設定過熱度決定部(4)と上記第1膨張弁制御部(5a)とにより、上記各調湿回路(50)の調湿能力を、上記圧縮機(53)の容量制御と上記出口過熱度SHに基づく上記膨張弁(55)の開度制御とで行うことができる。これにより、各調湿回路(50)の調湿能力を調湿負荷にさらに近づけやすくすることができる。
第7の発明は、第6の発明において、上記制御手段(1)には、上記対象空間の現在湿度Mi及び屋外の外気湿度Moの少なくとも一方と、上記設定能力決定部(7)から入力された設定調湿能力値Hmとに基づいて、その対象空間に対応する上記調湿回路(50)の第1、第2吸着熱交換器(51,52)のうち上記熱源回路(60)の低圧側に接続された吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度の現在値SHが上記出口過熱度の設定値SHsとなるように、該吸着熱交換器(51,52)に対応する膨張弁(55)の開度をフィードフォワード制御により調整する第2膨張弁制御部(5b)が設けられていることを特徴としている。
第7の発明では、上記第2膨張弁制御部(5b)により、上記膨張弁(55)の開度を予め予測した開度で調整することができ、各調湿回路(50)の調湿能力を該膨張弁(55)で調整する際の変動を小さくすることができる。
第8の発明は、第6の発明において、上記制御手段(1)には、上記対象空間の現在湿度Miが目標湿度Msに近づくように、該対象空間に対応する第1膨張弁制御部(5a)へ入力される設定値SHsを変更する設定過熱度変更部(6)が設けられていることを特徴としている。
第8の発明では、上記設定過熱度変更部(6)により、上記現在湿度Miが上記目標湿度Msに近づくように、第1膨張弁制御部(5a)へ入力される設定値SHsを変更することができる。
例えば、上記対象空間の現在湿度Miが目標湿度Msに対して近づく速度が想定したよりも遅い場合、または能力が不足している方向に離れていく場合は、調湿能力を増やさなければならないので、上記設定値SHsを現在よりも小さくする。すると、上記第1膨張弁制御部(5a)が、小さくなった設定値SHsに対して上記現在値SHを近づけるように上記膨張弁(55)の弁を開く方向に制御する。これにより、上記吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒が増加して、調湿能力を増大させる。
一方、上記対象空間の現在湿度Miが目標湿度Msに対して近づく速度が想定したよりも速すぎる場合、または能力が過剰な方向に離れていく場合は、調湿能力を減らさなければならないので、上記設定値SHsを現在よりも大きくする。すると、上記第1膨張弁制御部(5a)が、大きくなった設定値SHsに対して上記現在値SHを近づけるように上記膨張弁(55)の弁を閉まる方向に制御する。これにより、上記吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒が減少して、調湿能力を減少させる。
本発明によれば、上記調湿回路(50)の運転状況に応じて決定された最適な上記必要調湿能力値Hsに基づいて上記設定調湿能力値Hmを決定している。こうすると、上述した空調システムよりも、各調湿回路(50)の調湿能力を調湿負荷に近づけやすくすることができる。
これにより、上記各調湿回路(50)をできるだけサーモオフさせずに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第2の発明によれば、上記目標能力決定部(3)から入力された全ての上記必要調湿能力値Hsを積算した値を上記設定調湿能力値Hmに設定することにより、全ての調湿回路(50)において、できるだけサーモオフさせない範囲内で調湿能力の不足を生じさせにくくしながら最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第3の発明によれば、上記能力判定部(8a)により、各調湿回路(50)ごとに必要に応じて能力アップ又は能力ダウンを判定し、その判定結果に基づいて、上記圧縮機制御部(9)へ入力される上記設定調湿能力値Hmを変更することができる。これにより、各調湿回路(50)の能力変化に応じて上記設定調湿能力値Hmを最適に設定することができる。
また、上記第4の発明によれば、全ての調湿回路(50)において、調湿能力が余り気味と判定された場合には、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも低くして、調湿能力が不足気味とならない範囲で、全ての調湿回路(50)の調湿能力を一律に減少させることができる。これにより、全ての調湿回路(50)の調湿能力が調湿負荷に近づくので、上記各調湿回路(50)をできるだけサーモオフさせずに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第5の発明によれば、少なくとも1つの調湿回路(50)で調湿能力が不足気味と判定された場合には、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも高くして、調湿能力が余り気味とならない範囲で、各調湿回路(50)の調湿能力を一律に増加させることができる。これにより、全ての調湿回路(50)において、調湿能力不足を生じさせずに最適に調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第6の発明によれば、上記各調湿回路(50)の調湿能力を、上記圧縮機(53)の容量制御と上記出口過熱度SHに基づく上記膨張弁(55)の開度制御とで行うことができ、各調湿回路(50)の調湿能力を調湿負荷にさらに近づけやすくすることができる。これにより、上記各調湿回路(50)をできるだけサーモオフさせずにさらに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第7の発明によれば、上記第2膨張弁制御部(5b)により、上記膨張弁(55)の開度を予め予測した開度で調整することができ、各調湿回路(50)の調湿能力を調整する際の変動を小さくすることができる。これにより、上記各調湿回路(50)をできるだけ安定した状態で最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、上記第8の発明によれば、上記設定過熱度変更部(6)により、上記現在湿度Miが上記目標湿度Msに近づくように、第1膨張弁制御部(5a)へ入力される設定値SHsを変更することができる。これにより、各調湿回路(50)の調湿能力を調湿負荷にさらに近づけやすくすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の調湿システムは、圧縮機ユニット(60a)と調湿ユニット(10)とを備えている。各調湿ユニット(10)は、取り込んだ室外空気(OA)の湿度を調節して室内へ供給する。各調湿ユニット(10)は、例えば天井裏に設置される。なお、本実施形態の調湿システムには、複数の調湿ユニット(10a,10b,10c)が設けられている。これらの調湿ユニット(10a,10b,10c)は、同様の構成となっている。
〈調湿ユニットの全体構成〉
まず、調湿ユニット(10)の構成について、図1を適宜参照しながら説明する。なお、ここでの説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿ユニット(10)を前面側から見た場合の方向を意味している。
上記調湿ユニット(10)は、ケーシング(11)を備えている。また、ケーシング(11)内には、詳細は後述する冷媒回路(20)の一部を構成する調湿回路(50)が収容されている。調湿回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、四路切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が接続されている。
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。ケーシング(11)では、図1における上側の側面(即ち、前面)が前面パネル部(12)となり、下側の側面(即ち、背面)が背面パネル部(13)となっている。また、ケーシング(11)では、図1の平面図における右側の側面が第1側面パネル部(14)となり、左側の側面が第2側面パネル部(15)となっている。
ケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)に開口している。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に配置されている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に配置されている。給気口(22)は、第1側面パネル部(14)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、第2側面パネル部(15)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)と、第1仕切板(74)と、第2仕切板(75)とが設けられている。これらの仕切板(71〜75)は、何れもケーシング(11)の底板に立設されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。
第1仕切板(74)及び第2仕切板(75)は、第1側面パネル部(14)及び第2側面パネル部(15)と平行な姿勢で設置されている。第1仕切板(74)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を右側から塞ぐように、第1側面パネル部(14)から所定の間隔をおいて配置されている。第2仕切板(75)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左側から塞ぐように、第2側面パネル部(15)から所定の間隔をおいて配置されている。
中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と直交する姿勢で、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間に配置されている。中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)から下流側仕切板(72)に亘って設けられ、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左右に区画している。
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下2つの空間に仕切られており、下側の空間が外気側通路(34)を構成し、上側の空間が内気側通路(32)を構成している。外気側通路(34)は、外気吸込口(24)と連通し、内気側通路(32)は、内気吸込口(23)と連通している。外気側通路(34)には、第1フィルタ(28)と外気湿度センサ(図示無し)とが設置されている。内気側通路(32)には、第2フィルタ(27)と室内湿度センサ(図示無し)とが設置されている。
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、調湿回路(50)の電動膨張弁(55)が収容されている。
各吸着熱交換器(51,52)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着剤を担持させたものであって、全体として長方形の厚板状あるいは扁平な直方体状に形成されている。各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に立設されている。各吸着熱交換器(51,52)は、空気中の水分を吸着する吸着動作と、吸着した水分を空気中へ放出する再生動作(脱着動作)とが行われる吸着部材を構成している。
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
上流側仕切板(71)には、開閉式のダンパ(41〜44)が4つ設けられている。各ダンパ(41〜44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、上流側仕切板(71)のうち内気側通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。また、上流側仕切板(71)のうち外気側通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。
下流側仕切板(72)には、開閉式のダンパ(45〜48)が4つ設けられている。各ダンパ(45〜48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。また、下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。また、排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。また、給気ファン室(36)には、調湿回路(50)の四路切換弁(54)が収容されている。
ケーシング(11)内において、第1仕切板(74)と第1側面パネル部(14)の間の空間は、第1バイパス通路(81)を構成している。第1バイパス通路(81)の始端は、外気側通路(34)だけに連通しており、内気側通路(32)からは遮断されている。第1バイパス通路(81)の終端は、仕切板(78)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び給気ファン室(36)から区画されている。仕切板(78)のうち給気ファン室(36)に臨む部分には、第1バイパス用ダンパ(83)が設けられている。
ケーシング(11)内において、第2仕切板(75)と第2側面パネル部(15)の間の空間は、第2バイパス通路(82)を構成している。第2バイパス通路(82)の始端は、内気側通路(32)だけに連通しており、外気側通路(34)からは遮断されている。第2バイパス通路(82)の終端は、仕切板(79)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び排気ファン室(35)から区画されている。仕切板(79)のうち排気ファン室(35)に臨む部分には、第2バイパス用ダンパ(84)が設けられている。
なお、図1の右側面図及び左側面図では、第1バイパス通路(81)、第2バイパス通路(82)、第1バイパス用ダンパ(83)、及び第2バイパス用ダンパ(84)の図示を省略している。
〈冷媒回路の構成〉
上記調湿システムは、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる冷媒回路(20)を備えている。本実施形態の冷媒回路(20)は、熱源回路(60)に複数の調湿回路(50)が並列に接続されて構成されている。
上記熱源回路(60)には、圧縮機(53)が接続されている。圧縮機(53)は、モータの回転数(即ち、容量)が可変な、いわゆるインバータ式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(53)は、例えばスクロール式の圧縮機で構成されている。上記熱源回路(60)は、調湿ユニット(10)と異なる圧縮機ユニット(60a)に収容されている。しかしながら、熱源回路(60)を複数の調湿ユニット(10)のいずれかに収容するようにしても良い。
上記圧縮機(53)の吐出側には、高圧ガス配管(65)の一端が接続している。高圧ガス配管(65)の他端側は、複数に分岐して各調湿回路(50)の流入端と接続している。圧縮機(53)の吸入側には、低圧ガス配管(66)の一端が接続している。低圧ガス配管(66)の他端側は、複数に分岐して各調湿回路(50)の流出端と接続している。
各調湿回路(50)では、上記の第1吸着熱交換器(51)と電動膨張弁(55)と第2吸着熱交換器(52)とが順に接続されている。電動膨張弁(55)は、開度が調節自在な電子膨張弁で構成されている。更に、調湿回路(50)には、切換機構としての上記四路切換弁(54)が設けられている。
上記四路切換弁(54)は、第1から第4までのポートを有している。四路切換弁(54)の第1ポートは、高圧ガス配管(65)を介して熱源回路(60)の高圧側と繋がり、四路切換弁(54)の第2ポートは、低圧ガス配管(66)を介して熱源回路(60)の低圧側と繋がっている。また、四路切換弁(54)の第3ポートは、第1吸着熱交換器(51)の一端と繋がり、四路切換弁(54)の第4ポートは、第2吸着熱交換器(52)の一端と繋がっている。四路切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートとが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態とに切換可能となっている。即ち、図2に示す第1状態の四路切換弁(54)は、熱源回路(60)の高圧側と第1吸着熱交換器(51)の一端とを繋いで熱源回路(60)の低圧側と第2吸着熱交換器(52)の一端を繋ぐ。また、図3に示す第2状態の四路切換弁(54)は、熱源回路(60)の高圧側と第2吸着熱交換器(52)とを繋いで熱源回路(60)の低圧側と第1吸着熱交換器(51)とを繋ぐ。
〈コントローラの構成〉
上記調湿システムには、該調湿システムの調湿運転を制御するメインコントローラ(制御手段)(1)が設けられている。図9に示すように、上記メインコントローラ(1)は、複数の調湿側のサブコントローラ(1a)と1つの圧縮機側のサブコントローラ(1b)により構成されている。
上記各調湿側のサブコントローラ(1a)は、各調湿ユニット(10)ごとに設けられており、目標湿度入力部(2)と目標能力決定部(3)と設定過熱度決定部(4)と設定過熱度変更部(6)と第1、第2膨張弁制御部(5a,5b)とを備えている。上記圧縮機側のサブコントローラ(1b)は、上記圧縮機ユニット(60a)に設けられており、設定能力決定部(7)と設定温度補正部(8)とインバータ(圧縮機制御部)(9)とを備えている。
このように構成されたメインコントローラ(1)が行う調湿運転制御の中には、各調湿ユニット(10)の能力制御が含まれる。詳細は後述する。
−運転動作−
本実施形態の調湿システムの各調湿ユニット(10)は、除湿換気運転と、加湿換気運転と、単純換気運転とを選択的に行う。除湿換気運転中や加湿換気運転中の調湿ユニット(10)では、取り込んだ室外空気(OA)を湿度調節してから供給空気(SA)として室内へ供給する調湿動作が行われ、同時に取り込んだ室内空気(RA)が排出空気(EA)として室外へ排出される。一方、単純換気運転中の各調湿ユニット(10)では、取り込んだ室外空気(OA)がそのまま供給空気(SA)として室内へ供給され、同時に取り込んだ室内空気(RA)がそのまま排出空気(EA)として室外へ排出される。以下、調湿ユニット(10)の各運転について詳細に説明する。
〈除湿換気運転〉
除湿換気運転中の調湿ユニット(10)では、後述する第1動作と第2動作が所定の時間間隔(3分間隔)で交互に繰り返される。つまり、除湿換気運転での2つの動作の1回毎の動作時間は3分に設定されている。この除湿換気運転中において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)は、常に閉状態となる。
除湿換気運転中の調湿ユニット(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第1空気として取り込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第2空気として取り込まれる。
先ず、除湿換気運転の第1動作について説明する。図4に示すように、この第1動作中には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、
第1動作中の調湿回路(50)では、四路切換弁(54)が第1状態(図2に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(高圧側の吸着熱交換器)となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器(低圧側の吸着熱交換器)となる。
外気側通路(34)へ流入して外気側フィルタ(28)を通過した第1空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)で除湿された第1空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内へ供給される。
一方、内気側通路(32)へ流入して内気側フィルタ(27)を通過した第2空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で水分を付与された第2空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外へ排出される。
次に、除湿換気運転の第2動作について説明する。図5に示すように、この第2動作中には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第2動作中の調湿回路(50)では、四路切換弁(54)が第2状態(図3に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器(低圧側の吸着熱交換器)となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(高圧側の吸着熱交換器)となる。
上記外気側通路(34)へ流入して外気側フィルタ(28)を通過した第1空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)で除湿された第1空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内へ供給される。
一方、内気側通路(32)へ流入して内気側フィルタ(27)を通過した第2空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で水分を付与された第2空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外へ排出される。
〈加湿換気運転〉
加湿換気運転中の調湿ユニット(10)では、後述する第1動作と第2動作が所定の時間間隔(4分間隔)で交互に繰り返される。つまり、加湿換気運転での2つの動作の1回毎の動作時間は3分に設定されている。この加湿換気運転中において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)は、常に閉状態となる。
加湿換気運転中の調湿ユニット(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第2空気として取り込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第1空気として取り込まれる。
先ず、加湿換気運転の第1動作について説明する。図6に示すように、この第1動作中には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第1動作中の調湿回路(50)では、四路切換弁(54)が第1状態(図2に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(高圧側の吸着熱交換器)となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器(低圧側の吸着熱交換器)となる。
上記内気側通路(32)へ流入して内気側フィルタ(27)を通過した第1空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)で水分を奪われた第1空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外へ排出される。
一方、外気側通路(34)へ流入して外気側フィルタ(28)を通過した第2空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で加湿された第2空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内へ供給される。
次に、加湿換気運転の第2動作について説明する。図7に示すように、この第2動作中には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第2動作中の調湿回路(50)では、四路切換弁(54)が第2状態(図3に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器(低圧側の吸着熱交換器)となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(高圧側の吸着熱交換器)となる。
内気側通路(32)へ流入して内気側フィルタ(27)を通過した第1空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)で水分を奪われた第1空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外へ排出される。
一方、外気側通路(34)へ流入して外気側フィルタ(28)を通過した第2空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で加湿された第2空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内へ供給される。
〈単純換気運転〉
単純換気運転中における調湿ユニット(10)の動作について、図8を参照しながら説明する。
単純換気運転中の調湿ユニット(10)では、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第2外気側ダンパ(44)、第1給気側ダンパ(45)、第2給気側ダンパ(46)、第1排気側ダンパ(47)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、単純換気運転中において、上記熱源回路(60)の圧縮機(53)は停止状態となる。
単純換気運転中の調湿ユニット(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ取り込まれる。外気吸込口(24)を通って外気側通路(34)へ流入した室外空気は、第1バイパス通路(81)から第1バイパス用ダンパ(83)を通って給気ファン室(36)へ流入し、その後に給気口(22)を通って室内へ供給される。
また、単純換気運転中の調湿ユニット(10)では、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ取り込まれる。内気吸込口(23)を通って内気側通路(32)へ流入した室内空気は、第2バイパス通路(82)から第2バイパス用ダンパ(84)を通って排気ファン室(35)へ流入し、その後に排気口(21)を通って室外へ排出される。
本実施形態の調湿システムでは、複数調湿ユニット(10)がこのような3つの運転を選択的に行いながら、各室内の調湿を行う。
〈調湿ユニットの能力制御〉
上記調湿システムの能力制御について、図9を用いて説明する。尚、上記調湿ユニット(10)の調湿能力とは該調湿ユニット(10)が有する調湿回路(50)の吸着熱交換器(51,52)の調湿能力のことを言う。
上記調湿側のサブコントローラ(1a)にある目標能力決定部(3)は、上記各目標湿度入力部(2)から入力された目標湿度Msと上記外気湿度センサ(図示無し)から入力された外気湿度Moとに基づいて必要調湿能力値Hsを演算する。ここで、上記目標能力決定部(3)は、上記目標湿度Msと上記外気湿度Moと上記必要調湿能力値Hsとの関係が予め定められた相関式を有している。そして、この相関式に基づいて、上記目標湿度Ms及び上記外気湿度Moから上記必要調湿能力値Hsを演算する。
尚、この演算は、上記各調湿回路(50)の四路切換弁(54)が第1状態又は第2状態に切り換えられている間に単位時間ごとに行われる。そして、その切換時から現在までの間に演算された複数の必要調湿能力値Hsのうち、最も大きな必要調湿能力値Hsを上記圧縮機側のサブコントローラ(1b)にある設定能力決定部(7)へ出力する。
上記設定能力決定部(7)では、各目標能力決定部(3)から入力された必要調湿能力値Hsの積算値を演算した後、その積算値を設定調湿能力値Hmとして上記設定温度補正部(8)と、上記調湿側のサブコントローラ(1a)にある設定過熱度決定部(4)及び第2膨張弁制御部(5b)とに出力する。
上記設定温度補正部(8)は、能力判定部(8a)と設定温度変更部(8b)とからなり、上記各調湿ユニット(10)からフィードバックされた室内湿度Mi及び出口過熱度SHと、上記各目標湿度入力部(2)から入力された目標湿度Msとから上記設定調湿能力値Hmを必要に応じて変更する。つまり、目標湿度Msと外気湿度Moから演算された設定調湿能力値Hmを室内湿度Miに基づいて補正している。
具体的に、上記能力判定部(8a)は、上記各調湿ユニット(10)ごとに能力アップ又は能力ダウンを判定してその判定に応じた信号を上記設定温度変更部(8b)へ出力するように構成されている。
上記能力判定部(8a)が、上記調湿ユニット(10)を能力アップと判定する条件について述べる。判定対象の調湿ユニット(10)が除湿換気運転又は加湿換気運転している場合は、現在湿度Miが目標湿度Msに近づくことなく、且つ低圧側の吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度が下限値よりも小さい場合に能力アップと判定する。つまり、上記調湿ユニット(10)の調湿能力が調湿負荷よりも小さい場合に能力アップと判定する。尚、上記出口過熱度の下限値は、上記圧縮機(53)に液冷媒が吸入されない程度に小さな値に設定されている。
次に、上記能力判定部(8a)が、上記調湿ユニット(10)を能力ダウンと判定する条件について述べる。判定対象の調湿ユニット(10)が除湿換気運転している場合は、除湿しすぎて現在湿度Miが目標湿度Msよりも大幅に低くなる場合であって、且つ低圧側の吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度が上限値よりも大きい場合に能力ダウンと判定する。
一方、判定対象の調湿ユニット(10)が加湿換気運転している場合は、加湿しすぎて現在湿度Miが目標湿度Msよりも大幅に高くなる場合であって、且つ低圧側の吸着熱交換器(51,52)の出口過熱度が上限値よりも大きい場合に能力ダウンと判定する。つまり、上記調湿ユニット(10)の調湿能力が調湿負荷よりも大きい場合に能力ダウンと判定する。尚、上記出口過熱度の上限値は、上記膨張弁(55)が最小開度のときの出口過熱度に近い値に設定されている。このように各調湿ユニット(10)ごとに能力アップ及び能力ダウンが判定されて、その判定に対応した信号が上記設定温度変更部(8b)へ出力される。
上記設定温度変更部(8b)では、上記能力判定部(8a)から入力される全ての信号が能力ダウンの信号である場合には、上記圧縮機制御部(9)へ入力される設定調湿能力値Hmを現在よりも低くした設定調湿能力値Hmsを上記インバータ(9)へ出力する。又、上記能力判定部(8a)から入力される信号の少なくとも1つが能力アップの信号である場合には、上記圧縮機制御部(9)に入力される設定調湿能力値Hmを現在よりも高くした設定調湿能力値Hmsを上記インバータ(9)へ出力する。
上記インバータ(9)では、上記設定温度変更部(8b)から出力された設定調湿能力値Hmsと上記圧縮機ユニット(60a)からフィードバックされた現在調湿能力値Hとの偏差e2が入力され、この偏差e2が圧縮機(53)の運転周波数fに変換された後に上記圧縮機ユニット(60a)へ入力されて上記圧縮機(53)の運転周波数fが変更される。
具体的に、上記設定調湿能力値Hmsに対して上記現在調湿能力値Hが低いときには、上記運転周波数fは現在よりも高くなる。逆に、上記設定調湿能力値Hmsに対して上記現在調湿能力値Hが高いときには、上記運転周波数fは現在よりも低くなる。このようにして、上記圧縮機(53)の運転周波数が制御されて、上記冷媒回路(20)の現在調湿能力値Hは上記設定調湿能力値Hmsに近づく。
上記設定過熱度決定部(4)では、上記設定温度補正部(8)から入力された設定調湿能力値Hmと上記各調湿ユニット(10)からフィードバックされた室内湿度Miと上記外気湿度センサから入力された外気湿度Moと上記目標湿度入力部(2)から入力された目標湿度Msとに基づいて出口過熱度設定値SHsを演算した後、その出口過熱度設定値SHsを上記設定過熱度変更部(6)に出力する。
ここで、上記設定過熱度決定部(4)は、上記目標湿度Msと上記外気湿度Moと上記室内湿度Miと上記設定調湿能力値Hmと上記出口過熱度設定値SHsとの関係が予め定められた相関式を有している。そして、この相関式に基づいて、上記目標湿度Msと上記外気湿度Moと上記室内湿度Miと上記設定調湿能力値Hmとから上記出口過熱度設定値SHsを演算する。
上記設定過熱度変更部(6)では、上記目標湿度入力部(2)から入力された目標湿度Msと上記各調湿ユニット(10)からフィードバックされた室内湿度Miに基づいて、上記設定過熱度決定部(4)から入力された出口過熱度設定値SHsを必要に応じて変更する。
具体的に、まず、上記調湿ユニット(10)が除湿換気運転を行っている場合について述べる。現在湿度Miが目標湿度Msに近づく速さが所定値よりも速い場合には、現在湿度Miが目標湿度Msよりもなるべく低くならないように、上記設定値SHsを現在よりも高くした設定値SHsを上記第1膨張弁制御部(5a)へ出力する。一方、現在湿度Miが目標湿度Msに近づく速さが所定値よりも遅い場合には、除湿能力を増やさなければならないので、上記設定値SHsを現在よりも低くした設定値SHsを上記第1膨張弁制御部(5a)へ出力する。
次に、上記調湿ユニット(10)が加湿換気運転を行っている場合について述べる。現在湿度Miが目標湿度Msに近づく速さが所定値よりも速い場合には、現在湿度Miが目標湿度Msよりもなるべく高くならないように、上記設定値SHsを現在よりも高くした設定値SHsを上記第1膨張弁制御部(5a)へ出力する。一方、現在湿度Miが目標湿度Msに近づく速さが所定値よりも遅い場合には、加湿能力を増やさなければならないので、上記設定値SHsを現在よりも低くした設定値SHsを上記第1膨張弁制御部(5a)へ出力する。
上記第2膨張弁制御部(5b)では、上記設定能力決定部(7)から出力された設定調湿能力値Hmと上記調湿ユニット(10)からフィードバックされた室内湿度Miと上記外気湿度センサから入力された外気湿度Moと上記目標湿度入力部(2)から入力された目標湿度Msとに基づいてフィードフォワード制御で上記膨張弁(55)の開度値EVb1が決定される。
ここで、上記第2膨張弁制御部(5b)は、上記目標湿度Msと上記外気湿度Moと上記室内湿度Miと上記設定調湿能力値Hmと上記開度値EVb1との関係が予め定められた相関式を有している。そして、この相関式に基づいて、上記目標湿度Msと上記外気湿度Moと上記室内湿度Miと上記設定調湿能力値Hmとから上記開度値EVb1を演算する。
そして、上記第1膨張弁制御部(5a)から出力された上記膨張弁(55)の開度値EVa1と上記第2膨張弁制御部(5b)から出力された上記膨張弁(55)の開度値EVb1とに基づいた開度値EVが上記調湿ユニット(10)に入力されて上記膨張弁(55)の開度が変更される。
このように、上記圧縮機(53)の運転容量と上記各膨張弁(55)の開度とが調整されて、上記室内湿度Miが上記目標湿度Msに近づく。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記調湿ユニット(10)の運転状況に応じて決定された最適な上記必要調湿能力値Hsに基づいて上記設定調湿能力値Hmを決定している。これにより、上記各調湿ユニット(10)をできるだけサーモオフさせずに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、上記目標能力決定部(3)から入力された全ての上記必要調湿能力値Hsを積算した値を上記設定調湿能力値Hmに設定することにより、全ての調湿ユニット(10)において、できるだけサーモオフさせない範囲内で調湿能力の不足を生じさせにくくしながら最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、上記能力判定部(8a)により、各調湿ユニット(10)ごとに必要に応じて能力アップ又は能力ダウンを判定し、その判定結果に基づいて、上記圧縮機制御部(9)へ入力される上記設定調湿能力値Hmを変更することができる。これにより、各調湿ユニット(10)の能力変化に応じて上記設定調湿能力値Hmを最適に設定することができる。
また、本実施形態によれば、全ての調湿ユニット(10)において、調湿能力が余り気味と判定された場合には、上記設定温度補正部(8)が、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも低くして、調湿能力が不足気味とならない範囲で、全ての調湿ユニット(10)の調湿能力を一律に減少させることができる。これにより、全ての調湿ユニット(10)の調湿能力が調湿負荷に近づくので、上記各調湿ユニット(10)をできるだけサーモオフさせずに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、少なくとも1つの調湿ユニット(10)で調湿能力が不足気味と判定された場合には、上記設定温度補正部(8)が、上記設定調湿能力値Hmを現在よりも高くして、調湿能力が余り気味とならない範囲で、各調湿ユニット(10)の調湿能力を一律に増加させることができる。これにより、全ての調湿ユニット(10)において、調湿能力不足を生じさせずに最適に調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、上記各調湿ユニット(10)の調湿能力を、上記圧縮機(53)の容量制御と上記出口過熱度SHに基づく上記膨張弁(55)の開度制御とで行うことができ、各調湿ユニット(10)の調湿能力を調湿負荷にさらに近づけやすくすることができる。これにより、上記各調湿ユニット(10)をできるだけサーモオフさせずにさらに最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、上記第2膨張弁制御部(5b)により、上記膨張弁(55)の開度を予め予測した開度で調整することができ、各調湿ユニット(10)の調湿能力を調整する際の変動を小さくすることができる。これにより、上記各調湿ユニット(10)をできるだけ安定した状態で最適な調湿能力の調整を行うことができる。
また、本実施形態によれば、上記設定過熱度変更部(6)により、上記現在湿度Miが上記目標湿度Msに近づくように、第1膨張弁制御部(5a)へ入力される設定値SHsを変更することができる。これにより、各調湿ユニット(10)の調湿能力を調湿負荷にさらに近づけやすくすることができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
本実施形態では、上記目標能力決定部(3)において、目標湿度Msと外気湿度Moとに基づいて必要調湿能力値Hsを演算しているが、これに限定されず、目標湿度Msと外気湿度Moと現在湿度Miとに基づいて必要調湿能力値Hsを演算してもよい。又、相関式のパラメータに吸着熱交換器(51,52)の調湿容量値を加えてもよい。
本実施形態では、上記設定過熱度決定部(4)が、設定調湿能力値Hmと室内湿度Miと外気湿度Moと目標湿度Msとに基づいて出口過熱度設定値SHsを演算しているが、これに限定されず、現在湿度Mi及び屋外の外気湿度Moの一方と設定調湿能力値Hmと目標湿度Msとに基づいて出口過熱度設定値SHsを演算してもよい。
本実施形態では、上記第2膨張弁制御部(5b)が、設定調湿能力値Hmと室内湿度Miと外気湿度Moと目標湿度Msとに基づいて電動膨張弁(55)の開度を調整しているが、これに限定されず、現在湿度Mi及び屋外の外気湿度Moの一方と設定調湿能力値Hmと目標湿度Msとに基づいて電動膨張弁(55)の開度を調整してもよい。
本実施形態では、上記目標能力決定部(3)、上記設定過熱度決定部(4)及び上記第2膨張弁制御部(5b)は相関式を有しているが、それに限定されず、例えばその相関式に基づいて作成したマップであってもよい。尚、上記マップを用いれば、数式とは違い、煩雑な計算を避けることができる。
本実施形態によれば、全ての調湿ユニット(10)が除湿換気運転又は加湿換気運転を行っている場合について示したが、全ての調湿ユニット(10)のうち除湿換気運転するものと加湿換気運転するものとが混在していてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。