本発明の胴巻きラベルは、容器の胴部外周面に巻き付けて装着する胴巻きラベルであって、基材フィルムと、少なくともラベル両端に設けた感熱接着剤層とからなり、前記基材フィルムは、生分解性フィルムにガスバリア層を設けたガスバリア性フィルムである。ガスバリア層は、無機酸化物の蒸着膜を形成したものであってもよく、更に前記無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたものであってもよい。生分解性、ガスバリア性に優れ、印刷適性を有し、かつ感熱接着剤層を形成し得るからである。
また、本発明の胴巻きラベルに使用する感熱接着剤層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を主成分とするディレードタック型接着剤であってもよい。該感熱接着剤によれば、流通過程でラベルが離脱せず、かつラベル−ラベル間、容器とラベル間の剥離が容易な接着強度を確保することができるからである。
本発明の胴巻きラベルは、基材フィルムの内側に印刷層が積層されていてもよい。
以下、本発明の胴巻きラベルおよび胴巻きラベル付き容器について説明する。
(1)胴巻きラベルの構成
図1に本発明の胴巻きラベルの好ましい態様を示す。本発明の胴巻きラベルは、容器に添付するための添付部(W)を有する。図1は、生分解性フィルム(11)とガスバリア層(15)とからなる基材フィルム(10)と感熱接着剤層(20)とからなり、基材フィルム(10)のラベル内側の添付部(W)のみに感熱接着剤層(20)が形成された態様である。
また、デザイン印刷層(30)を有する態様を図2に示す。図2では、添付部(W)には印刷層(30)を設けておらず、基材フィルム(10)のラベル内側に感熱接着剤層(20)が形成される態様となっている。ただし、印刷層上に感熱接着剤層(20)が形成されていてもよい。
図3は、図1の胴巻きラベルの基材フィルム(10)のラベル表面に、プライマー層(40)を有する態様を示す。なお、基材フィルム(10)を構成する生分解性フィルムやガスバリア層は単層に限定されず、いずれも2以上の積層であってもよい。
本発明において胴巻きラベルのサイズは、添付対象の容器のサイズに応じて適宜選択することができる。同様に、接着剤を塗布する添付部のサイズも、例えばラベル添付装置の使用態様などに応じて適宜選択することができる。
なお、本発明では、少なくとも胴巻きラベルの内側の始端部および終端部に感熱接着剤層を形成しているが、感熱接着剤層は胴巻きラベルの始端部および終端部に限定されるものではない。従って、胴巻きラベルの内側全面に上記感熱接着剤層を形成してもよいし、胴巻きラベルの縁内一周に亘って額縁状に感熱接着剤層を形成してもよい。また、前記胴巻きラベルの始端部の感熱接着剤層と終端部の感熱接着剤層とは同形である必要はない。
本発明の胴巻きラベルは、被着体を問わない。感熱接着剤によって接着できるものであれば、金属や合成樹脂などの各種の材質の容器に適用でき、その用途も問わない。使用後の胴巻きラベルが生分解性を有し、環境保全に優れるからである。したがって容器への収納物の種類も限定されるものでなく、清涼飲料水・調味料・酒(日本酒、麦酒、発泡酒・ワイン・焼酎・蒸留酒など)・料理用油・化粧品容器・トイレタリー・除湿剤容器・洗剤容器・アンプル瓶・栄養ドリンク・点眼薬容器・薬容器・デザートなどの容器に使用される胴巻きラベルとして好適に使用することができる。
(2)基材フィルム
本発明の胴巻きラベルを構成する基材フィルムは、生分解性フィルムにガスバリア層を設けたガスバリア性フィルムである。なお、基材フィルムの表面には、印刷性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理を施してもよい。
(i)生分解性フィルム
基材フィルムを構成する生分解性フィルムとしては、生分解性を有すると共に、無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜を設けるに足る強度を有し、特に無機酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、無機酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得るフィルムであって、胴巻きラベルとしての機械的強度を有し、感熱接着剤層を形成することができるものに限定される。
一般に、生分解性フィルムを構成する生分解性物質としては、微生物により分解しうる特性を有するものであり、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)などの微生物産生系高分子、酢酸セルロース、キトサン/セルロース/澱粉、エステル化澱粉などの天然物系高分子、ポリ−L−ラクチド(ポリ−L−乳酸)、(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリビニールアルコールなどの化学合成系高分子などがあり、いずれも好適に使用することができる。特に、ポリ−L−ラクチド(ポリ−L−乳酸)などの、乳酸、酪酸、ラクチドの(共)重合体及びその変性物、ポリε−カプロラクトンなどのラクトンの開環(共)重合体及びその変性物、ポリブチレンサクシネート・ポリエチレンサクシネートなどのサクシネート系重合体およびその変性物などの脂肪族ポリエステル系フィルムは、入手が容易であり、耐熱性および機械的強度に優れるため、好適である。
なお、上記ポリ−L−ラクチドからなるポリ乳酸には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で共重合成分としてグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などの他のヒドロキシカルボン酸単位を含んでもよい。また、添加剤として、鎖延長剤や必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加してもよい。上記の樹脂の重合法としては、例えば、脱水縮重合法、開環重合法等の方法で重合することができる。
また、生分解性フィルムは、フィルム原料となる生分解性プラスチックを、一軸、若しくは、二軸に延伸したフィルムであることが好ましい。延伸により熱収縮性を付与することができるからである。上記プラスチックは、その1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化し、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜し、または2種以上のプラスチックを混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で一軸ないし二軸方向に延伸して生分解性フィルムとすることができる。例えば、ポリ乳酸系重合体などの脂肪族ポリエステルを主成分とする二軸延伸フィルムは、Tダイ等から押し出ししたシート状物を冷却後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により二軸に延伸する方法で製造することができる。
なお、本発明における熱収縮率とは、100℃の温水による熱収縮率であって、延伸方向の熱収縮率が下記式に従うものとする。従って、縦一軸延伸フィルムの場合には、収縮方向は、フィルム流れ方向であるため、流れ方向に対する熱収縮率が5〜85%であり、横一軸延伸フィルムの場合はフィルム幅方向に収縮するため、フィルム幅方向に対する熱収縮率が5〜85%となる。なお、二軸延伸フィルムの場合には、例えば、逐次二軸延伸法や、同時二軸延伸法等がある。延伸条件としては、縦方向に熱収縮率が5〜85%、横方向に熱収縮率が5〜85%の範囲で適宜選択される。
本発明において、生分解性フィルムの膜厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmが好ましい。この範囲であれば、胴巻きラベルとしての剛性や強度を確保しうるからである。
上記生分解性フィルムは市販品であってもよく、例えば乳酸を重合して製造される生分解性フィルムとして、トウモロコシなどからつくられるデンプンや糖類を発酵させて得られる乳酸を重合して製造されるものである、三菱樹脂株式会社製の「エコロージュ」等を好適に使用することができる。
更に、本発明で使用する生分解性フィルムとして、とうもろこしのでんぷんから得られるポリ乳酸樹脂を原料とする不織布とを積層した複合シートを使用してもよい。前記の生分解性不織布としては、例えば、東京メディカル株式会社により販売されている「ハイボン」等がある。また、ポリ乳酸樹脂を原料と各種架橋剤を用いて発泡剤として二酸化炭素を用いることにより発泡成形してなる発泡生分解フィルムとを積層した複合シートとしてもよい。前記基材フィルムが、前記生分解性延伸フィルムに、発泡生分解フィルム、または、生分解性不織布を積層することによって、ラベルに断熱性を付与することができる。
(ii)ガスバリア層
本発明の基材フィルムは、生分解性フィルムに設けたガスバリア層を含む。ガスアリア層としては、内容物の品質保持を確保する観点から、酸素透過性、水蒸気透過性を低減しうるものを広く使用することができる。アルミ箔などもガスバリア性を有するが、焼却時にアルミ灰が残存すること、および微生物による分解がなされない。このため本発明では、無機酸化物の蒸着膜や、前記無機酸化物の蒸着膜上に、更に一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア層などを使用することが好適である。なお、ガスバリア性塗布膜は、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが相互に化学的に反応して強固な三次元網目状複合ポリマー層を形成しており、無機酸化物の蒸着膜と相乗的に作用し、酸素、水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性に優れ、耐熱水性にも優れる。なお、ガスバリア性に優れるため薄層に調製することができ、基材フィルムの生分解性を阻害しない。
(ii−1)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、生分解性フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図4を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から生分解性フィルム201を繰り出し、更に、該生分解性フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された生分解性フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した生分解性フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で生分解性フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の生分解性フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図4中、符号235は真空ポンプを表す。
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、生分解性フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、生分解性フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより生分解性フィルムの表面が清浄化され、生分解性フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と生分解性フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、生分解性フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、生分解性フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、生分解性フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために生分解性フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
本発明では、無機酸化物の蒸着膜として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
一方、本発明では、物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを生分解性フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて生分解性フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図5を参照して説明する。
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す生分解性フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された生分解性フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した生分解性フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、無機酸化物の蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、生分解性フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、生分解性フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
(ii−2)ガスバリア性塗布膜
本発明で使用するガスバリア層は、上記無機酸化物の蒸着膜に加え、ガスバリア性塗布膜を有することが好ましい。ガスバリア性塗布膜は、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の生分解性フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
また、前記ガスバリア性組成物を上記生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜180℃、かつ、上記生分解性フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1 nM(OR2)mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトラプロポキシシランSi(OC3H7)4、テトラブトキシシランSi(OC4H9)4等を例示することができる。
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH3)3、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC2H5)3、ジメチルジメトキシシラン(CH3)2Si(OCH3)2、ジメチルジエトキシシラン(CH3)2Si(OC2H5)2、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
本発明では、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH3)4、テトラエトキシジルコニウムZr(OC2H5)4、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC3H7)4、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC4H9)4、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH3)4、テトラエトキシチタニウムTi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC3H7)4、テトラnブトキシチタニウムTi(OC4H9)4、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH3)4、テトラエトキシアルミニウムAl(OC2H5)4、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC3H7)4、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC4H9)4、その他等を使用することができる。
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、生分解性フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、生分解性フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
前記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
本発明で使用するガスバリア性組成物は、前記一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。上記ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
また、ゾルゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾルゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性フィルムのガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
更に、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
本発明において、ガスバリア性フィルムは、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した生分解性フィルムを20℃〜180℃、かつ生分解性フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、前記無機酸化物の蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成したバリア性フィルムを製造することができる。
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したバリア性フィルムを製造することができる。
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、本発明に係るバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
本発明で使用するガスバリア性フィルムの製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾルゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾルゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、生分解性フィルム、または、生分解性フィルム上の無機酸化物の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、生分解性フィルム、または前記無機酸化物の蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
なお、本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
(ii−3)プラズマ処理
本発明では、上記ガスバリア性塗布膜に対し、前記表面処理の中でプラズマ処理を行うことが好ましく、これによって印刷適性を向上させることができる。
ガスバリア性塗布膜に対するプラズマ処理としては、プラズマガスとして、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができ、特に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのように、酸素ガスを含む無機ガスをプラズマガスとして使用してプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能であり、これにより、ガスバリア性塗布膜の表面の変色等もなく、また、そのガスバリア性塗布膜の表面に、例えば、化学反応等によりOH基等を導入することができ、更に、ガスバリア性塗布膜中に存在するSi−C結合等をSiO2化することを可能とする。更に、上記プラズマ処理により、ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜の架橋密度等を高め、その湿度依存性等を改良し、酸素ガスに対するガスバリア性は勿論のこと、水蒸気に対するバリア性も向上し、相対的に、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性を安定して維持することを可能とし、更にまた、ガスバリア性塗布膜の面に、真空中で、酸素ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスを使用してプラズマ処理を施してプラズマ処理層を形成することにより、該プラズマ処理層に、例えば、感熱接着剤層、アンカーコート層、ヒートシール性樹脂層、その他等の基材を積層する場合、その密接着性等を向上させ、その積層強度等を著しく高めることを可能とするものである。
具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜10−10Torr位、より好ましくは、1×10-2〜1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が望ましく、更に、そのプラズマ出力としては、100〜2500W位、より好ましくは、500〜1500W位が望ましく、更にまた、その処理速度としては、100〜600m/min位、より好ましくは、200〜500m/min位が望ましい。上記の酸素ガスとアルゴンガスとの分圧比において、アルゴンガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスが還元性ガスとして働き、水酸基の導入が阻害されることから好ましくないものである。また、上記のプラズマ出力が、100W未満、更には、500W未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくいことから好ましくなく、また、1500Wを越えると、更には、2500Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるので、ガスバリア性塗布膜等の劣化により、そのものの物性が低下するという問題を引き起こすことから好ましくないものである。
更に、上記の処理速度が、100m/min未満、更には、250m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また、600m/minを越えると、更には、500m/minを越えると、ガスバリア性塗布膜の酸化が急速に進み、透明性は高くなるが、バリア性が低下して好ましくないものである。
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロ−放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の3通りの装置を利用して行うことができる。本発明においては、3.56MHzの高周波(AF)放電装置を利用して行うことができる。
(3)感熱接着剤層
胴巻きラベルを構成する感熱接着剤層としては、常温で固体のもの(ホットメルト接着剤)と、液状のもの(ディレードタック接着剤)とがある。ホットメルト接着剤は、塗布時に高温にして溶融させる必要がある上、高粘度である。これに対し、ディレードタック接着剤は、塗布時に高温にする必要はなく、また、低粘度である。
(i)ホットメルト接着剤
本発明で使用しうるホットメルト接着剤としては、熱可塑性樹脂成分からなるベースポリマーと、接着付与剤と、ワックス類等の添加剤から構成されるものが例示できる。
本発明における接着剤層がホットメルト型接着剤に用いられるポリマーとしての役割はホットメルトの柔軟性を向上させ、凝集力を付与することであり、熱可塑性ポリマーが一般的に用いられる。ポリマーを含まないホットメルトは剛性が高くなり、固くて脆くなってしまう。代表的なポリマーとしては、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー(SBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−・ロピレン−スチレンブロックポリマー(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー(SIS)、アタクチックポリプロピレン樹脂(APP)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などとそれらの誘導体があげられる。
本発明における接着剤層がホットメルト型接着剤からなる胴巻きラベルに用いられる接着剤成分のワックスとしての役割はホットメルトの溶融粘度を低下させて作業性を良好にし、ブロッキング防止、オープンタイムの調節、耐熱性向上などがある。ホットメルトにワックスを用いないと粘度が高く作業性が悪くなり、塗布時の糸引きが起こることが考えられる。代表的なワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリアワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、これらを酸化したワックス、エチレン−アクリル酸共重合体ワックス及びエチレン−メタクリル酸共重合体ワックスなどがあげられる。
本発明におけるホットメルト型接着剤に用いられる接着剤成分のタッキファイヤーとしての役割は接着力の向上、ホットメルトの濡れや作業性を良好にすることである。ホットメルトにタッキファイヤーを用いないと接着力が低下することが考えられる。代表的なタッキファイヤーとして、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル(アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのエステル化ロジンなど))、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂などがあげられる。
上記ポリマー、タッキファイヤー、ワックスを1種類あるいは2種類以上使用しても差し支えない。また、ポリマー、タッキファイヤー、ワックスの他にブロッキング防止のためにシリコーンなどを入れても構わない。本発明において熱劣化、熱分解を防ぐために、高分子量ヒンダード多価フェノール、トリアジン誘導体、高分子量ヒンダード・フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2,5−ジ−第三−ブチルヒドロキノン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの酸化防止剤を添加しても差し支えない。
ホットメルトの塗工方法としてはダイレクトロールやグラビアロールなどを用いたロールコーター方式やエクストルージョンコーター方式やスリットオリフィスコーター方式などがあるがどのような塗工方法でも差し支えなく、溶剤に溶解し塗工した後溶剤を取り除いても構わない。
本発明で使用するホットメルト型接着剤の好ましいオープンタイムは0.01秒以上10分以下で、好ましくは0.05秒以上1分以下で、さらに好ましくは0.1秒以上10秒以下である。ホットメルト型接着剤のオープンタイムが0.01秒未満であるとラベリングマシンで貼付する際被着体に付かない。また、10分以上であるとホットメルトを塗工した時すぐに巻き取るためブロッキングを起こしたり、ラベルを被着体に貼付する際にラベルをカッティングする刃にホットメルトが付いたりしてカッティング性が悪くなる。本発明におけるホットメルト型接着剤の好ましい塗工温度は、100℃〜200℃であり、そのために140℃のホットメルトの粘度が10cps〜1,000,000cpsであること好ましい。140℃の粘度が10cps未満であると塗工時、膜厚が安定しなかったり、胴巻きラベルを被着体に接着するときすぐに剥がれてしまうなどの問題がある。また、140℃のホットメルト型接着剤の粘度が1,000,000cpsを超えると塗工出来なかったり、ラベルに貼り付かなかったりする。
本発明で使用するホットメルト型接着剤の軟化点は50℃〜120℃であること、さらに好ましくは60℃〜100℃である。ホットメルト型接着剤の軟化点が50℃未満であると保存時にブロッキングする場合がある。また、軟化点が120℃を超えると胴巻きラベルを被着体に接着する時接着せず剥がれてしまったりすることがある。
ホットメルト型接着剤の塗工量は、7〜15g/m2である。ラベル基材への塗工量が7g/m2未満であるとガラス瓶やプラスチックボトル等に接着しなかったり、接着しても耐水性や耐結露性がなかったりする。一方、15g/m2超えると経済的でない。
(ii)ディレードタック接着剤
本発明で使用しうるディレードタック型接着剤としては、熱可塑性樹脂成分からなるベースポリマーと、接着付与剤と、固体可塑剤から形成るものが、好適に用いられる。
前記感熱接着剤の熱可塑性樹脂としては、接着剤のベースとなるものであり、可塑剤との相溶性があり、これにより使用時の凝集力が得られる。例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルビロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系共重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが含まれる。前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1-4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体などが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、ラベル付き容器を流通する場合にラベルが剥離しない程度の接着強度を有し、かつ使用後にラベルを容器から手で簡単に剥がすことのできる程度の易剥離性を有する点で好ましい。特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、酢酸ビニル成分を25mol%以上、35mol%以下の範囲で含有し、メルトインデックス、5以上、200以下の範囲にあることがより好ましい。上記範囲であれば容器とラベルとの接着強度、及び、ラベル同士の接着強度を0.5〜12N/15mm以下の範囲に維持することが可能であり、かつ使用後にラベルを容器から手で簡単に剥がすことのできる程度の易剥離性を確保することができる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、接着シートとした時の接着性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃程度である。前記ガラス転移温度が−10℃未満の場合には耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下しやすくなる。
上記感熱接着剤の固形可塑剤としては、常温では固体であるが、加熱により溶融して前記熱可塑性樹脂を可塑化可能な広範囲の物質を使用できる。固体可塑剤の融点は、例えば55〜120℃(例えば55〜100℃)程度、好ましくは70〜120℃(例えば70〜100℃)程度である。固体可塑剤の融点が55℃未満では、耐ブロッキング性が低下しやすく、120℃を超えると加熱により容易には溶融しにくくなる。また、特に、融点が70℃以上の固体可塑剤を用いると、温度がある程度高くても溶融して接着性を発現させることがないので、接着剤塗布後の乾燥温度を高くでき、短時間で乾燥できる。そのため、高速印刷(例えば100〜150m/分程度)に対応でき、胴巻きラベルの生産性を著しく高めることができる。これに対し、融点の低い固体可塑剤を用いると、接着剤塗布工程における乾燥を低温で行わなければならないため、塗布工程が律速となって胴巻きラベルの生産性が低下しやすい。
このような固体可塑剤として、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジナフチル等のフタル酸エステル類;イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジベンジル、イソフタル酸ジジシクロヘキシル等のイソフタル酸エステル類;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジジシクロヘキシル等のテレフタル酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸トリ(p−t−ブチルフェニル)などの前記以外のリン化合物;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスロット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、尿素誘導体、塩化パラフィン等が挙げられる。この中でも融点が50〜100℃程度のものが好ましく使用できる。
ディレードタック接着剤における固体可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば30〜1000質量部、好ましくは100〜1000質量部、さらに好ましくは150〜900質量部、特に200〜800程度である。固体可塑剤の含有量が30質量部より少ないと、加熱時に十分な接着性が発現しない場合が生じ、また、1000質量部よリ多いと、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
上記感熱接着剤の接着付与剤としては、接着剤の接着性能を向上させる作用がある。例えばテルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジンおよびそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)が挙げられる。
上記固形可塑剤、熱可塑性樹脂および接着性付与剤は、熱可塑性樹脂の粒子(固体粒子または液滴)が水中に乳化分散されているエマルション、または、熱可塑性樹脂が有機溶剤に溶解または分散して、単独あるいは2種類以上の混合物で使用することができる。また、必要に応じて分散剤や消泡剤、増粘剤等を使用することもできる。
ディレードタック接着剤中の接着付与剤の含有量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂と前記固体可塑剤との組合せに応じて適宜選択でき、通常、熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜600質量部程度であり、20〜500質量部程度が好ましい。
前記ディレードタック接着剤には、その特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、成膜助剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
前記成膜助剤としては、例えば、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのグリコールエーテル類及びグリコールエステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチルなどの可塑剤;ベンジルアルコール、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶剤などが挙げられる。このような成膜助剤を接着剤中に添加すると、接着剤塗工工程において、より短時間の乾燥で均質な接着剤層を形成でき、生産効率の一層の効率化を図ることができる。前記成膜助剤の添加量は、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部程度である。
上述のような熱可塑性樹脂成分からなるベースポリマーと、接着付与剤と、固形可塑剤とを溶媒に分散させてなるディレードタック型接着剤は、エマルジョンの状態でグラビアコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、リップコート法、ナイフコート法等のような通常の感熱接着剤を塗布するための手段を用いて、基材フィルムの印刷層を形成している方の面の全面にまたは部分的に塗布して感熱接着剤層を形成させ、例えば、40〜60℃の温度で乾燥することにより、容器用ラベルが得られる。
ディレードタック型接着剤層は、接着層に接着性が生じている間に生分解性ラベルの全面、または、部分的(一個所のみ、若しくは、散点状や、線状、格子状に形成してもよい。)にコーティングすることができる。
部分的にコーティングする場合、それぞれ必要な接着強度を得るために、第一接着部と、第二接着部の塗り幅としては、3mm〜25mmであることが好ましい。
ディレードタック型接着剤の塗布量は、1.5〜15g/m2程度が好ましく、3〜8g/m2程度がより好ましい。塗布量が1.5g/m2以下の場合、充分な接着強度が得られないため、好ましくない。また、塗布量が15g/m2以上の場合、充分な接着強度が得られるが、乾燥速度が遅くなるため、生産性が悪く、また、ラベルを容器から剥がして分別する際、ラベルを剥がしにくく、容器の糊残りを生じやすいため、好ましくない。また、該接着剤を重ねて塗布する場合もあり、生産性が下がるため、好ましくない。
なお、ディレードタック型接着剤は市販品を使用することもでき、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を主成分とする感熱接着剤としては、中央理化工業株式会社製「リカボンド」、ダイセル化学工業株式会社製「エコブリッド」、大日本インキ化学工業株式会社製「ディックシールDLA」等を好適に使用することができる。
本発明で使用する感熱接着剤は、上記したようにラベル−ラベル間の接着強度が0.5〜12N/15mmであることが好ましい。使用後にラベル−ラベル間の剥離が容易だからであり、容器の接着剤を残存させることが少ない。また、前記感熱接着剤層は、容器とラベルとの接着強度も0.5〜12N/15mmであることが好ましい。使用後にラベルを容器から手で簡単に剥がし取ることができ、容器とラベルとの分別が容易だからである。
また、本発明では、当該ラベルを貼り付けたラベル付き容器を水中に一日浸漬後、水から取り出し、容器からラベルの接着強度、及び、当該ラベルの両端部を重ね合わされたラベルの端部同士の接着強度が、0.5〜12N/15mmであることが好ましい。接着強度が上記範囲であれば、水中に浸してもしわが寄ったりラベルの位置ずれやラベルの脱落を生じることがなく、かつ、容器からラベルを剥がす際、容易に手で剥がすことができるからである。浸水後の接着強度が、0.5N/15mm以下の場合、冷蔵庫に保存したり、露店や、クーラーボックス等で水に入れて冷やす際、しわが寄ったり、ラベルの位置ずれ、更には、ラベルの脱落を生じる場合がある。一方、浸水後の接着強度が、15N/15mm以上の場合には、容器からラベルを剥がす際、容易に手で剥がすことができなくなり、分別回収性に劣る場合がある。
(4)デザイン印刷層
本発明の胴巻きラベルは、基材フィルムのラベル内側に印刷層が積層されていてもよい。印刷層は、胴巻きラベルの全長に亘って形成されていてもよく、感熱接着剤層にはデザイン印刷層を設けなくてもよい。また、デザイン印刷層は、基材フィルムの外側に印刷されていてもよい。デザイン印刷層の厚みは、例えば1〜8μm、好ましくは2〜5μm程度である。なお、基材フィルムの外側にデザイン印刷層を形成する場合には、形成したデザイン印刷層を保護するために、後記するように、透明ニス等によって形成されるオーバーコート層を設けておくのが望ましい。
印刷方法に限定はなく、例えばグラビア印刷で印刷層を形成することができる。印刷層としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
このようなインキビヒクルとしては、基材フィルムと接着性があり、必要な耐性を有している一般的に用いられているインキが使用でき、中でも、耐熱性に富むインキからなることが好ましい。例えば、ウレタン樹脂系インキ組成物、アクリル樹脂系インキ組成物、または塩素化ポリプロピレン系インキ組成物からなるインキを使用することが望ましい。その他、インク用バインダーがコーンスターチ変性物などの天然物を原料とする変性樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂などからなる場合には、印刷インキ付きラベル全体が使用後に廃棄しても自然分解することができるため好ましい。なお、インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるために沸点の低い溶剤を用いるが、乾燥が速すぎると印刷物がかすれたり、うまく印刷できない場合があり、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、印刷は、裏印刷でも、表印刷でもよい。
(5)プライマー層
本発明において、本発明に係る胴巻きラベルを構成する前記の基材フィルムには、少なくともラベルの始端部側の表面にプライマー層を予め形成することが好ましい。
ラベルの始端部側の表面に予め、プライマー層を形成することによって、ラベル−ラベル間の重ね合わせ部の接着強度を向上させることができるという利点を奏する。具体的に、ラベル表面に、予め、プライマー層を形成することができる。
プライマー層としては、例えば、塩素化ポリプロピレン系、エチル−酢酸ビニル系、スチレン−マレイン酸系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、有機チタネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系、アクリル系などの非硬化型または、硬化型のプライマーコート剤が挙げられる。
上記プライマー組成物は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法などによりコーティングし、該コーティング膜を乾燥させて溶媒や希釈剤を除去し、更に必要に応じてエージング処理などを行ってプライマー層とすることができる。
(6)外層
本発明の胴巻きラベルは、前記基材フィルムの表面側に更に外層を設けてもよい。このような外層としては、胴巻きラベルの用途や意匠性などによって適宜選択することができ、ラベル表面の滑り性を付与する場合にはOPニスを、ラベルを触ったときの触感を付与する場合にはスエードインキによる印刷層を、マット感を付与する場合にはマットOPなどを使用することが好ましい。なお、外層が印刷層であってもよく、外層が印刷層と他の層などの、2以上の層からなる積層であってもよい。なお、このような外層として、ポリ乳酸を使用すれば、生分解性がより向上する。
外層の厚さは、外層の形成方法などによって相違するが、例えば外層用フィルムを貼付する場合には、厚さ6〜100μm、好ましくは9〜50μmである。
(7)内層
本発明の胴巻きラベルは、前記基材フィルムに内層を設けてもよい。内層を配設することで、例えば蒸着膜の保護層とすることができる。このような内層としては、ポリ乳酸を使用することができ、これによって生分解性が向上する。
内層の厚さは、内層の形成方法などによって相違するが、例えば内層用フィルムを貼付する場合には、厚さ6〜100μm、好ましくは9〜50μmである。
(8)胴巻きラベル
本発明の胴巻きラベルは、生分解性フィルムにガスバリア層を設けたガスバリア性フィルムからなる基材フィルムと、前記基材フィルムのラベル両端に設けられた感熱接着剤層とからなる。ラベル両端に設けられた感熱接着剤層によって、容器に直接ラベルを添付することができるため、容器にラベルを添付する際に、予め筒状に成形する必要はない。また、特定のガスバリア層を形成することで高機能のガスバリア性能を確保しうるため、基材フィルム厚に対する生分解性フィルム厚を薄層とすることができ、このため優れた生分解性を確保することができる。このため、容器に直接添付する生分解性胴巻きラベルである。
また、基材フィルムは生分解性フィルムであるが、該生分解性フィルムが熱収縮性を有する場合には、本発明の胴巻きラベルをシュリンクラベルとして使用することができる。上記したように、生分解性フィルムが延伸されたものである場合に、たとえば縦一軸延伸フィルムの場合には、収縮方向は、フィルム流れ方向であるため、流れ方向に対する熱収縮率が5〜85%であり、横一軸延伸フィルムの場合はフィルム幅方向に収縮するため、フィルム幅方向に対する熱収縮率が5〜85%となる。二軸延伸フィルムの場合には、例えば、縦方向に熱収縮率が5〜85%、横方向に熱収縮率が5〜85%の範囲に調製しうる。この基材フィルムに無機酸化物の蒸着層を形成し、および前記ガスバリア性塗布膜を積層した場合でも、これらは生分解性フィルム厚に対して薄層であるから、得られる胴巻きラベルは、生分解性フィルムの熱収縮率に対応したシュリンク特性を発揮しうる。従って、本発明の胴巻きラベルは、胴巻きシュリンクラベル、生分解性胴巻きシュリンクラベルとなりうる。
しかも、前記感熱接着剤が水道水に対する上記耐水性を有する場合には、冷蔵を要する液体用の容器に好適に使用することができる。この点で、冷蔵用胴巻きラベルとなりうる。
(9)胴巻きラベルの製造方法
本発明の胴巻きラベルが、図2に示すように、基材フィルムのラベル内側にデザイン印刷層を有する場合には、予め基材フィルムにデザイン印刷層を形成し、次いで添付部に感熱接着剤層を形成することが簡便である。なお、胴巻きラベルが外層を有する場合には、上記基材フィルムにデザイン印刷層を形成した後に反転させて、例えばOPニスなどによる印刷を行うことで形成することができる。
本発明の胴巻きラベルにおいて、感熱接着剤層を形成するには、ダイレクトロールやグラビアロールなどを用いたロールコーター方式やエクストルージョンコーター方式やスリットオリフィスコーター方式などがあり、本発明ではどのような塗工方法でも差し支えなく、溶剤に溶解し塗工した後溶剤を取り除いても構わない。例えば、予め基材フィルムにデザイン印刷層や外層を形成した積層フィルムに接着剤コーターや接着剤アプリケーターを用いて感熱接着剤を塗工する方法を採用することができる。なお、本発明において感熱接着剤層の形成は、胴巻きラベルを容器に添付する際に、感熱接着剤のない胴巻きラベル原反ロールを所定サイズに切断した後に、該胴巻きラベルに感熱接着剤層を形成し、ついで容器に添付するものであってもよい。これによれば、感熱接着剤層を活性化するための温風の加熱装置を設けることなく活性化した感熱接着剤層を有する胴巻きラベルを調製することができ、これをただちに容器に添付すれば、効率的に胴巻きラベル付き容器を製造することができる。
本発明の胴巻きラベルには、開封用ミシン目が上端部から下端部まで刻設されてもよい。更に、ラベル開封用の摘み片(切離開始部)を起点として、2条の縦ミシン目を設けてもよく、該ミシン目によりラベルを容易に破断することが可能である。該ミシン目は、2条に限らず、1条、あるいは、3条以上の複数条を設けることも可能である。なお、ミシン目は、例えば、レーザー光を用いて包材の厚さ方向に所定深さまで切り込みをいれて形成させる方法周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てて形成させる方法等により施すことができる。なお、該ミシン目は、ラベルを製造する工程で、適宜の段階で施すことができ、これにより使用後に容器に添付したラベルを手で剥がす場合には、開封用ミシン目によりラベルを容易に剥離することができる。
(10)容器
本発明の胴巻きラベルを添付しうる容器としては特に制限はなく、上記感熱接着剤によって接着しうる樹脂であればよい。従って、本発明の胴巻きラベルが適用される被着体としては、ガラス容器;PETなどの合成樹脂性容器;セラミック容器などの無機物容器;アルミや鉄、SUSなどの金属製容器;ガラス、合成樹脂、セラミック、金属、紙などを含む複合材からなる容器がある。一方、容器が生分解性を有する場合には、使用後に土中で分解することもでき、焼却処理を不要とすることができ、好適である。また、こうような生分解性の容器はガスバリア性に劣るが、本発明のガスバリア性に優れる胴巻きラベルを被覆することで、容器にガスバリア性を付与することができる。
このような生分解性の容器としては、上記生分解性フィルムの項で記載した、ポリε−カプロラクトン、ポリブチレンサクシネート・ポリエチレンサクシネート、ポリ−L−ラクチド(ポリ−L−乳酸)などの脂肪族ポリエステル、セルロース、キトサン、リグニン、澱粉、水分、グラフト澱粉等の天然物、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバレレート共重合体、プルラン、バクテリアセルロース等のように、微生物産生系高分子などを原料とする容器を好適に使用することができる。
前記のポリ乳酸としては、トウモロコシなどからつくられるデンプンや糖類を発酵させて得られる乳酸を重合して製造することができる。なお、ポリ乳酸には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などの他のヒドロキシカルボン酸単位を共重合成分として含んでいてもよい。更に、鎖延長剤残基や、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加するものであってもよい。乳酸や他の共重合成分の重合法としては、例えば、脱水縮重合法、開環重合法等の方法で重合することができる。
一方、本発明で使用する容器は、生分解性プラスチックに限定されるものでない。前記容器が合成樹脂製容器である場合には、PETなどのポリエステル樹脂を使用すれば、軽量で、機械的強度、耐熱性、ガス遮断性、耐薬品性、保香性、衛生性等に優れるため好ましい。本発明で使用する容器が樹脂からなる場合には、このような樹脂を射出成形、真空成形、圧空成形等することにより製造することができる。
本発明において、口部に装着されるキャップ本体は、耐熱性、耐圧性、耐水性、遮光性を有することが必要である。前記のキャップ本体は、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、ポリアセタール系樹脂、その他等の耐熱性等に富む樹脂を使用することができる。また、キャップ本体が生分解性を有するものの場合には、容器と同様に、ポリ乳酸などからなるキャップを使用することが好ましい。該キャップは、上記樹脂を射出成形法等を利用して製造することができる。
上記において、ピルファープループ性機能を有する環状体を設けたキャップ等であってもよい。この場合も、上記のような樹脂を使用し、その形状に合致した成形金型等を使用し、射出成形法等を利用して製造することができる。
また、上記のキャップには、酸素ガスバリア性を付与するために、アルミニウム等の金属製、あるいは上記の耐熱性等に富む樹脂層の内面側に酸素ガスバリア性樹脂層を設けた構造からなるプラスチック製キャップを使用することができる。また、プラスチックキャップの仕様としては、酸素ガス吸収性樹脂層をインシェルモールドによりキャップ内面側に形成する1ピース仕様のものでも良く、あるいは、同機能を有するシート、いわゆるライナーを内面側に貼り合わせる2ピース仕様のものでも良い。
容器の形状としては、胴部の胴巻きラベル接着部の容器横断面が丸型に限定されず、四角、八角などの多角型であってもよい。また、胴巻きラベル接着部の容器胴部が、胴部の全長に亘って同一径である場合に限定されず、容器の胴部縦断面が四角である以外に、たとえばひょうたん型などであってもよい。
(11)胴巻きラベル付き容器の製造方法
本発明の胴巻きラベル付き容器は、前記胴巻きラベルを容器に添付することで製造することができる。一般的に使用されているラベリングマシンを用いて、本発明の胴巻きラベルを加熱し、該ラベルに設けられた感熱接着剤を活性化させ、次に、容器全体を熱風などで加熱しながら前記ラベルを押圧して容器に胴巻きラベルを添付する。
具体的には、ロールラベルの原反ロールをラベリングマシンの原反ロール供給部に装着する。原反ロールから引き出した胴巻きラベルをテンションローラによって張力を一定に維持しつつ引出装置を経て切断装置へ移送する。切断装置において、胴巻きラベルを所定サイズに切断し、切断装置の近傍にある移送ドラムを介して貼着ドラムへ移送する。貼着ドラムに対峙する加熱装置で胴巻きラベルの感熱接着剤を加熱し、このラベルを貼着ドラムの回転によって容器の貼地点へ向けて移送する。搬送装置によって供給される容器と接触し、ラベルを容器に接着、巻回、および固定される。容器とラベルとの接着は、ラベルの始端貼付部と容器とを接着させ、次いで前記ラベルの残部を容器の外周に巻きつけ、次いで前記始端貼付部のラベル表面と前記終端貼付部のラベル最内層と終端貼付部の接着剤を介して接着させことで行うことができる。なお、容器にラベルを添付する際には、容器に添付されたラベルを熱板等により押圧してもよい。
胴巻きラベルの加熱は、ラベルを容器に装着する前のいずれかの適宜の段階で複数回行ってもよく、ラベルの感熱接着剤をたとえば90〜100℃程度にヒーターからの熱風で再加熱して活性化させた状態で容器にラベルを密着させ、ラベル付き容器を製造してもよい。なお、ラベルを添付する際には、容器全体を熱風や水蒸気、水蒸気が結露した湯気により加熱するスチームや高周波シール、赤外線などの輻射熱を作用させて加熱しながらラベルを押圧して容器に添付してもよい。
(12)胴巻きラベル付き容器
本発明の胴巻きラベル付き容器は、ガスバリア性に優れる。また、容器がガスバリア性に劣る場合であっても、本発明の胴巻きラベルのガスバリア性によって内容物を酸化などから保護することができる。このような胴巻きラベル付き容器は、容器にラベル添付後に内容物を充填してもよく、容器に内容物を充填し、必要に応じて滅菌した後にラベルを添付してもよい。特に、内容物充填後にラベルを添付する方法は、空容器の搬送工程が不要となり、必要時に必要量を製造することができ、在庫管理が容易で、広い保管スペースを不要とすることができる。したがって、例えば、容器をプリフォームから要時調製し、無菌充填装置で滅菌した内容物を充填し密封し、その後に本発明の胴巻きラベルを容器に添付すると、非加熱製品を製造することができる。該製品は、内容物の品質に優れ、ラベル添付後の容器のガスバリア性に優れるため品質保持機能に優れ、内容物充填後のラベル添付によって在庫管理が容易で空容器の移送などの工程も不要となり、使用後は生分解性によって焼却などを行うことなく分解し、環境保護に適する。
更に、本発明の胴巻きラベル付き容器は、耐水性に優れ、ラベルを添付したラベル付き容器を水中に一日浸漬後、水から取り出し、容器からラベルの接着強度、及び、当該ラベルの両端部を重ね合わされたラベルの端部同士の接着強度が、0.5〜12N/15mmであるから、水中に浸してもしわが寄ったりラベルの位置ずれやラベルの脱落を生じることがない。このため、露店やクーラーボックス等で水に入れて冷やして使用することもでき、冷蔵庫で保存することもできる。なお、接着強度が上記範囲であるから、使用後に容器からラベルを剥がす容易に剥がすことができ、分別回収性に優れる。
本発明の胴巻きラベル付き容器は各種用途に使用することができる。その内容物としては、ビール、ワイン、ビタミン飲料、乳・乳飲料、ジュース、炭酸飲料、水、お茶等の飲料水、あるいは、油脂、調味料、医薬品、化粧品、洗剤、その他種々の液状食品などがある。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
(1) 厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「エコロージュSA101」)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記二軸延伸ポリ乳酸フィルムのコロナ処理面に、厚さ100Åの有機酸化珪素膜の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面、
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:1.0(単位:slm)、
真空チャンバー内の真空度;2〜6×10-6mBar、
蒸着チャンバー内の真空度;2〜5×10-3mBar、
冷却・電極ドラム供給電力;10kW、
ライン速度;100m/min、
次に、上記で膜厚100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その有機酸化珪素膜の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー10kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=8.0:2.0(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧7×10-5mBar、処理速度100m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、有機酸化珪素膜の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
布してプライマー層を形成した。
(2) 次いで、前記有機酸化珪素膜を形成した二軸延伸ポリ乳酸フィルムの前記プラズマ処理面にウレタン系インキ(大日精化工業株式会社製、品名「ハイラミック 耐磨用白100/NBハードナー5」)を使用し、グラビア印刷方式にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷模様層を形成した。
(3) 次いで前記印刷模様層上に、感熱接着剤層として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を主成分とするディレードタック剤(中央理化工業株式会社製、品名「リカボンドAP−A0101」)を使用して、不揮発成分61%となるように溶剤で希釈してグラビアコート法にて、ラベルの始端部とラベルの終端部となる部分に、塗布量6.5g/m2、幅10mmで塗布し、しかる後、基材フィルムの始端部側の表面にプライマー層(大日精化工業株式会社製、品名「セカダイン」)をグラビア版にて塗布量3g/m2、幅10mmで塗布し、胴巻きラベル用積層フィルムを得た。
(4) 得られた積層フィルムを高さ100mm、幅240mmにカットして、本発明に係る枚葉の胴巻きラベルを得た。
(実施例2)
(1) 厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「エコロージュSA101」)を使用し、これを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムのコロナ処理面にアルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面:コロナ処理面、
蒸着源:アルミニウム、
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入前):2〜10×10-5mbar、
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):1〜10×10-4mbar、
ライン速度:600m/min、
次に、上記で厚さ200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、上記の実施例1と同様にして、プラズマ処理面を形成した。
(2) 次いで、前記酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した二軸延伸ポリ乳酸フィルムの前記プラズマ処理面にウレタン系インキ(大日精化工業株式会社製、品名「ハイラミック 耐磨用白100/NBハードナー5」)を使用し、グラビア印刷方式にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷模様層を形成した。
(3) 次いで前記印刷模様層上に、感熱接着剤層として、ディレードタック剤(中央理化工業株式会社製、品名「リカボンドAP−A0101」)を使用して、不揮発成分61%となるように溶剤で希釈してグラビアコート法にて、ラベルの始端部とラベルの終端部となる部分に、塗布量6.5g/m2、幅10mmで塗布し、しかる後、基材フィルムの始端部側の表面にプライマー層(大日精化工業株式会社製、品名「セカダイン」)をグラビア版にて塗布量3g/m2、幅10mmで塗布し、胴巻きラベル用積層フィルムを得た。
(4) 得られた積層フィルムを高さ100mm、幅240mmにカットして、本発明に係る枚葉の胴巻きラベルを得た。
(実施例3)
(1) 厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「エコロージュSA101」)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムのコロナ処理面に、厚さ100Åの有機酸化珪素膜の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面、
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:1.0(単位:slm)、
真空チャンバー内の真空度;2〜6×10-6mBar、
蒸着チャンバー内の真空度;2〜5×10-3mBar、
冷却・電極ドラム供給電力;10kW、
ライン速度;100m/min、
次に、上記で膜厚100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その有機酸化珪素膜の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー10kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=8.0:2.0(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧7×10-5mBar、処理速度100m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、有機酸化珪素膜の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
他方、下記の表1に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040)、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液を得た。
次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m
2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
(2) 次いで、前記バリア性フィルムの前記ガスバリア性塗布膜にウレタン系インキ(大日精化工業株式会社製、品名「ハイラミック 耐磨用白100/NBハードナー5」)を使用し、グラビア印刷方式にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷模様層を形成した。
(3) 次いで前記印刷模様層上に、感熱接着剤層として、ディレードタック剤(中央理化工業株式会社製、品名「リカボンドAP−A0101」)を使用して、不揮発成分61%となるように溶剤で希釈してグラビアコート法にて、ラベルの始端部とラベルの終端部となる部分に、塗布量6.5g/m2、幅10mmで塗布し、しかる後、基材フィルムの始端部側の表面にプライマー層(大日精化工業株式会社製、品名「セカダイン」)をグラビア版にて塗布量3g/m2、幅10mmで塗布し、胴巻きラベル用積層フィルムを得た。
(4) 得られた積層フィルムを高さ100mm、幅240mmにカットして、本発明に係る枚葉の胴巻きラベルを得た。
(実施例4)
(1) 厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「エコロージュSA101」)を使用し、これを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムのコロナ処理面にアルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面:コロナ処理面、
蒸着源:アルミニウム、
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入前):2〜10×10-5mbar、
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):1〜10×10-4mbar、
ライン速度:600m/min、
次に、上記で厚さ200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、上記の実施例1と同様にして、プラズマ処理面を形成した。
他方、下記の表2に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)イソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコー、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液を得た。
次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m
2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
(2) 次いで、前記バリア性フィルムの前記ガスバリア性塗布膜にウレタン系インキ(大日精化工業株式会社製、品名「ハイラミック 耐磨用白100/NBハードナー5」)を使用し、グラビア印刷方式にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷模様層を形成した。
(3) 次いで前記印刷模様層上に、感熱接着剤層として、ディレードタック剤(中央理化工業株式会社製、品名「リカボンドAP−A0101」)を使用して、不揮発成分61%となるように溶剤で希釈してグラビアコート法にて、ラベルの始端部とラベルの終端部となる部分に、塗布量6.5g/m2、幅10mmで塗布し、しかる後、基材フィルムの始端部側の表面にプライマー層(大日精化工業株式会社製、品名「セカダイン」)をグラビア版にて塗布量3g/m2、幅10mmで塗布し、胴巻きラベル用積層フィルムを得た。
(4) 得られた積層フィルムを高さ100mm、幅240mmにカットして、本発明に係る枚葉の胴巻きラベルを得た。
(比較例1)
(1) 厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「エコロージュSA101」)に実施例1の(1)と同様に操作してプラズマ処理を行い、該プラズマ処理面にウレタン系インキ(大日精化工業株式会社製、品名「ハイラミック 耐磨用白100/NBハードナー5」)を使用し、グラビア印刷方式にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷模様層を形成した。
(2) 次いで前記印刷模様層上に、感熱接着剤層として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を主成分とするディレードタック剤(ダイセル化学工業株式会社製、品名「KP011」)を使用して、不揮発成分61%となるように溶剤で希釈してグラビアコート法にて、ラベルの始端部とラベルの終端部となる部分に、塗布量6.5g/m2、幅10mmで塗布した。
(3) その後、基材フィルムの始端部側の表面にプライマー層(大日精化工業株式会社製、品名「セカダイン」)をグラビア版にて塗布量3g/m2、幅10mmで塗布し、胴巻きラベル用積層フィルムを得た。
(4) 得られた積層フィルムを高さ100mm、幅240mmにカットして、胴巻きラベルとした。
(比較例2)
比較例1で使用する二軸延伸ポリ乳酸フィルムに代えて、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した以外は比較例1と同様に操作して、胴巻きラベルとした。
(実験)
実施例1〜4、比較例1,2で得た胴巻きラベル(高さ100mm、幅240mm)を、高さ230mm、外周230mmのポリ乳酸製ボトルの外周の、高さ100mmに亘って同一径で構成された筒状部の表面に、ラベリングマシンを用いて巻き付け、100℃〜110℃で1秒間加熱して接着性を持たせたボトル/ラベル間接着部によって接着し、加熱して接着性を持たせたラベル/ラベル間接着部によって、ラベル/ラベル間を接着し、胴巻きラベル付容器を得た。
実施例1〜4、比較例1,2で得た胴巻きラベルのガスバリア性、生分解性、および前記胴巻きラベルを添付した容器における胴巻きラベルと容器との接着強度、剥離性、アルカリ処理適正、耐水性を評価した。なお、各特性は、下記に従って評価した。結果を表3に示す。
(1)ガスバリア性
(i)酸素透過度の測定:
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
(ii)水蒸気透過度の測定:
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。結果を表2に示す。なお、表2において、酸素透過度の単位は、〔cc/m2/day・23℃・90%RH〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m2/day・40℃・90%RH〕である。
(2)接着強度;
実施例1〜4、および比較例1、2のラベルをポリ乳酸製ボトルのフラット面に貼り付け、室温で1週間エージングを行った。
次に試験片を長さ10mm、幅15mmに切出し、これを引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、JIS K6848に準じて、180度剥離により300mm/分の引張速度で測定し、以下の基準で評価した。なお、表3中には、15mm当たりの接着強度(単位:N/15mm)を記載した。
○:接着強度が0.5〜12N/15mmであってラベルとポリ乳酸製ボトルが充分接着しているが、手で容易に剥離できる。
×:接着強度が0.5N/15mm未満であって、他のラベル付容器に接触した場合、容易にラベルの位置ずれが生じる。
(3)剥離性;
ラベルの隅から手でラベルをポリ乳酸製ボトルから剥離し、ポリ乳酸製ボトルの表面に糊(または、ラベル)の残り具合を目視で評価した。
○:糊(または、ラベル)残りがない。
×:糊(または、ラベル)残りが容器に付着している。
(4)耐水性;
前記ラベルを添付した容器を水温5°Cの水道水に1日浸漬した後に水から取り出し、ラベルが添付された容器を長さ10mm、幅15mmに切出して試験片とし、この試験片を引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、JIS K6848に準じて、180度剥離により300mm/分の引張速度で測定し、以下の基準で評価した。
○:接着強度が1N/15mm以上あって、接着ラベルとポリ乳酸製ボトルが充分接着しているが、手で容易に剥離できる。
×:接着強度が1N/15mm未満で、自然剥離しやすい。
または、15N/15mm以上では剥離するのに強い力が必要になり、ラベルが破けてポリ乳酸製ボトルに残る。
(5)生分解性;
実施例1〜4、比較例1、2のラベルを100mm×100mmの大きさに切出し、試料片とした。これを深さ10cmの土中に埋め、3ケ月間放置後、堀り出し、生分解性を以下の基準で評価した。
○:3ケ月間放置後の試料の重量が、放置前の試料の重量と比較して、半分以下に分解している。
×:3ケ月間放置後の試料の重量が、放置前の試料の重量と比較して、ほぼ同じであり、分解していない。