JP2009052070A - 溶銑脱りん処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶銑脱りん処理において高い脱りん効率を実現する。
【解決手段】本発明の溶銑脱りん処理方法においては、上吹ランス4をハードブローとすると共に底吹撹拌動力をソフトブローとする脱珪期と、上吹ランス4をソフトブローとすると共に底吹撹拌動力をハードブローとする脱りん期との間に、上吹ランス4をソフトブローとすると共に底吹撹拌動力をソフトブローとする造滓期を設けると共に、溶銑の温度と脱りん処理後の溶銑の炭素濃度とを制御することにより、安定的かつ高精度に低りん鋼を溶製する。
【選択図】図3

Description

本発明は、脱りん処理における脱りん効率を高め、低りん溶銑を精度よく安定的に製造する溶銑の脱りん処理方法に関する。
近年、鋼材品質に対する要求が一段と高まり、低りん鋼を安定的に溶製する方法として溶銑の脱りん処理が行われている。溶銑の脱りん処理は、脱りんに先立ち溶銑中に造滓剤を投入すると共に溶銑中に酸素を供給してSiをSiO2に酸化して除去した後、溶銑上に浮上したスラグを滓化させ、続いてスラグ−メタル界面にFeOを生成させて溶銑中のPをP25に酸化させて取り除くものである。
溶銑の脱りん処理において脱りん効率を向上させるためには、溶銑中のSiをSiO2に確実に酸化して除去するために溶銑中に酸素を十分に供給する必要がある。また、浮上したスラグとメタル(溶銑)との界面に生成したFeOに溶銑中のPが接触するように溶銑を十分に撹拌させる必要がある。
上述のように、上吹ランスからの酸素流量と底吹撹拌の流量(底吹撹拌動力)を吹錬の進行に合わせて変化させることは重要であって、これらを行っている脱りん処理方法としては特許文献1または特許文献2に示されるようなものが知られている。
特許文献1の脱りん処理方法は、上吹ランスから溶銑に酸素を吹き付けると共に底吹羽口から撹拌用ガスを溶銑に吹き込むものである。上吹ランスからの酸素流量については、吹錬進行度10%で2.0Nm3/min・tから1.5Nm3/min・tに下げ、滓化が終了する吹錬進行度80%でさらに1.0Nm3/min・tに下げる。また、底吹撹拌の流量については、吹錬進行度30%で0.05Nm3/min・tから0.2Nm3/min・tに上げている。
特許文献2の脱りん処理は、滓化が終了する吹錬進行度60%で上吹ランスからの酸素流量を1.75Nm3/min・tから0.5Nm3/min・tに下げると共に底吹撹拌の流量を0.04Nm3/min・tから0.08Nm3/min・tに上げるものである。
一方、脱りん処理においては、溶銑中のPがスラグ−メタル界面に生成したFeOと反応してP25として取り除かれるため、スラグ−メタル界面にFeOを安定的に生成させる必要がある。また、脱りん処理は溶銑の温度が高すぎると反応効率が低下するので、脱りん処理中または処理後の溶銑の温度を適正に制御する必要がある。
上述のように、溶銑の脱りん処理において、酸化鉄を溶銑中に供給したり、脱りん処理中または処理後の溶銑温度を適正に制御する技術としては、特許文献3、4に示されるようなものが知られている。
例えば、特許文献3には、上吹ランスの高さ、上吹ランスからの酸素流量、及び底吹撹拌の流量とを制御した上で、脱りん処理に必要なFeOを生成させるべく鉄鉱石やミルスケールを溶銑に投入する方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、スラグの成分を制御しつつ処理後の熱バランスに基づいて決定されたミルスケールなどを溶銑に投入し、上吹ランスからの酸素流量を調整することによって、処理後の溶銑の温度を1250〜1400℃の範囲に制御する方法が提案されている。
特開2006−152426号公報 特開2002−275519号公報 特許3486889号公報 特開2006−265623号公報
ところで、特許文献1の脱りん処理では、滓化が終了する吹錬進行度80%までは上吹ランスの高さが3.0mと高く設定されている。つまり、上吹ランスからの酸素流量は1.25〜2.0Nm3/min・tと数値的に大きく設定されているが、溶銑に対する酸素の吹き込み効果はむしろ小さい。そのため、特許文献1の脱りん処理方法では、溶銑中に酸素が十分に供給されない虞があり、溶銑中のSiやPを十分に除去できない可能性がある。
また、特許文献1の脱りん処理では、滓化が終了していない吹錬進行度30%で底吹撹拌の流量を0.04Nm3/min・tから0.08Nm3/min・tに上げており、溶銑が激しく撹拌されて浮上したスラグや溶銑が飛散する可能性がある。飛散したスラグや溶銑は上吹ランスに地金として付着し、付着した地金を除去するために生産性が大きく損なわれる。また、地金の付着が激しい場合には、脱りん処理の終了後に上吹ランスを引き上げる事が困難となり、長時間にわたって操業を実施できない事態となる。
さらに、特許文献2の低りん銑の溶製方法では、滓化が終了する吹錬進行度60%までの酸素流量は1.75Nm3/min・tと大きく、上吹ランスからの酸素の衝突により溶銑の湯面が激しく波立つ。そのため、スラグの滓化が終了する間際になるとスラグや溶銑が飛び散る可能性が高く、特許文献1の脱りん処理方法と同様に上吹ランスへの地金付着などの問題を招く。
つまり、脱りん効率を向上させるには脱りん処理の進行段階に応じて、上吹ランスからの酸素流量や底吹撹拌の流量(底吹撹拌動力)を細かく調整する必要がある。
一方、脱りん処理の後半ではスラグが浮上して溶銑の湯面を覆うため、上吹ランスから酸素を吹き付けても溶銑に酸素が届きにくくなり、スラグ−メタル界面にFeOが生成されにくくなる。そのため、特許文献3にあるように鉄鉱石やミルスケールなどの酸化鉄を溶銑に投入して酸化鉄を補充する方法も考えられる。
しかし、酸化鉄を溶銑に過剰に投入すると、酸化鉄中の酸素の一部は脱炭反応を起こして溶銑中の炭素とも反応するため、溶銑の炭素濃度が低下する。その結果、脱りん処理に続いて行われる脱炭処理においては溶銑中の炭素量が不足して出鋼時の溶鋼温度を安定的に保持できなくなる可能性がある。
また、溶銑の脱りん処理においては、脱りん反応の反応効率が高くなる温度帯に溶銑の温度を保持するのが好ましいが、特許文献4のように冷却材として酸化状態が安定しないミルスケールなどを用いると、脱りん処理中または処理後の溶銑の温度を精度良く制御できない場合がある。
本発明は、上記の問題点を解消するために為されたものであって、その目的は溶銑中のSiを確実に除去でき、浮上したスラグを十分に滓化すると共に脱りん処理における溶銑の温度を精度良く制御することにより溶銑中のPを効果的に除去でき、出鋼時の溶鋼温度を安定的に保持できる溶銑脱りん処理方法を提供するものである。
前記目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明の溶銑脱りん処理方法は、
上吹ランスから溶銑に酸素を吹き込むと共に底吹撹拌を行うことにより吹錬を行う脱りん炉にて、溶銑からSiを取り除く脱珪期と、該脱珪期に続き且つ溶銑上に浮かぶスラグを生成する造滓期と、該造滓期に続き且つ溶銑中のPを取り除く脱りん期とを経て溶銑脱りん処理を実施するに際し、
前記脱珪期の開始前に、溶銑の塩基度(CaO/SiO2)が2.5〜3.5となるようにすると共に、溶銑の湯面から上吹ランスの吹出口までの高さを1.8〜2.2mに設定し、
前記脱珪期では、上吹ランスからの酸素流量を3.0〜4.0Nm3/min・tとすると共に、式(1)で算出される底吹撹拌動力を100〜300W/tとして吹錬し、
前記造滓期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとすると共に、前記底吹撹拌動力を100〜300W/tとして吹錬し、
前記脱りん期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとすると共に、前記底吹撹拌動力を500W/t以上として吹錬して、
前記造滓期の終了後に、純鉄分が90%以上の冷却材を、投入後の溶銑の温度が1350〜1400℃となるように投入し、且つ、総酸素量から計算される脱りん後の溶銑の炭素濃度が3.2%以上となるように、酸化鉄を1.0〜10.0kg/min・tの速度で連続的に前記溶銑に投入することを特徴とする。
Figure 2009052070
本発明者らは、脱りん効率を向上させるには、まず溶銑中のSiを確実に酸化して取り除き、続いて脱りんに向けたスラグを確実に滓化して、さらにスラグと溶銑との界面にPと反応するFeOを十分に生成させる必要があると考えた。そして、そのためには上吹ランスからの酸素流量及び底吹の撹拌動力を双方とも弱くしてスラグの滓化を促進させる段階(造滓期)を、脱珪期と脱りん期の間に明確に設ける必要があることを知見して、本発明を完成するに至ったのである。
また、本発明者らは、脱りん期においては、脱りん反応が進行しやすい1350〜1400℃に溶銑の温度を制御すると共に、溶銑中のPと反応するFeOをスラグ−メタル界面に生成させるべく、上吹ランスからの酸素供給に加えて酸化鉄を溶銑に供給する必要があると考えた。そして、本発明者らは、溶銑の温度をより正確に制御するには安定した冷却効果が得られる純鉄分が高い冷却材を用いる必要があることを知見して、本発明を完成するに至ったのである。
上述した手段を講じることによって、溶銑中のSiを確実に除去でき、浮上したスラグを十分に滓化すると共に脱りん処理における溶銑の温度を精度良く制御することにより、溶銑中のPを効果的に除去でき、出鋼時の溶鋼温度を安定的に保持できる。
また、吹錬処理の各段階における上吹ランスからの酸素流量と底吹の撹拌強度を適正に制御でき、溶銑の温度と脱りん処理後の溶銑の炭素濃度とを制御でき、安定的かつ高精度に低りん鋼を溶製することができる。
本発明の溶銑脱りん処理方法により、溶銑中のSiを確実に除去でき、脱りんに向けたスラグを十分に滓化すると共に脱りん処理における溶銑の温度を精度良く制御することにより溶銑中のPを効果的に除去でき、出鋼時の溶鋼温度を安定的に保持できる。その結果、安定的かつ高精度に低りん鋼を溶製することができる。
まず、本発明に係る溶銑脱りん処理方法が行われる転炉設備1について説明する。ただし、本発明の溶銑脱りん処理方法は、この転炉設備1を使用するものに限定されるものではない。
転炉設備1は、脱りん炉2と脱炭炉を備えている。
図1に示されるように、脱りん炉2は、上方に向かって開口する炉口3を有し、この炉口3から挿入されて炉内に装入された溶銑へ酸素を吹き込む上吹ランス4が設けられている。この炉口3の上方には副原料を投入するホッパー7が配備されている。脱りん炉2の炉壁8には炉体の傾動により溶銑を出銑できるように出銑口9が形成され、脱りん炉2の炉底5には溶銑内へ撹拌用ガスを供給できるように羽口6が形成されている。
上吹ランス4は、その先端に傾斜角度が10°〜14°に設定されたノズル孔径25φ〜35φのラバールノズルを複数孔有する吹出口10を備えている。この上吹ランス4は、溶銑の湯面から吹出口10までの高さHを変更可能なように、上下に移動可能とされている。
ホッパー7は、脱りん炉2の炉口3に設けられている。ホッパー7は、冷却材12、酸化鉄13または造滓剤14を炉内に投入可能とされている。
上述した転炉設備1での溶銑精錬方法は、以下の通りである。
まず、高炉から搬送されてきた溶銑は、傾動状態の脱りん炉2に装入される。その後、脱りん炉2を上向きにし、脱りん炉2の炉口3から上吹ランス4を挿入して吹出口10から溶銑に向かって酸素ガスを吹き付ける。それと同時に、炉底5から窒素ガスやアルゴンガスなどを吹き込んで溶銑を撹拌しつつ脱りん処理が行われる。
脱りん処理が終了すると、脱りん炉2を傾動して溶銑を出銑口9から外部の取鍋に出銑し、出銑された溶銑を取鍋ごと脱炭炉に搬送する。脱炭炉では、流し込まれた溶銑に対して炉口3から挿入された上吹ランス4から酸素ガスが吹き付けられ、炉底5から窒素やアルゴンなどの撹拌用ガスで溶銑を撹拌しつつ溶銑中のCを酸素と反応させて脱炭処理が行われる。
脱炭が終わった溶鋼は、脱炭炉を傾動することで、脱炭炉から出鋼され、二次精錬設備や連続鋳造機に送られる。
ところで、本発明の溶銑脱りん処理方法は、上述した溶銑精錬方法のうち、高炉からの出銑された溶銑が脱りん炉2に流し込まれ、脱りん炉2で脱りん処理されて出銑されるまでのプロセスに関するものである。
以下に溶銑脱りん処理方法をさらに詳しく説明する。
図2、図3に示すように、本発明の溶銑脱りん処理方法の実施に際しては、脱りん効率を高めるために、吹錬処理の進行段階に応じて適正な条件で上吹ランス4からの酸素吹錬、底吹撹拌、副原料投入を実施する必要がある。
吹錬処理の進行段階には、溶銑からSiを取り除く脱珪期と、脱珪期に続いて溶銑上に浮かぶスラグ11を滓化する造滓期と、造滓期に続いて溶銑中のPを取り除く脱りん期との3つの処理段階がある。
まず、脱珪期、造滓期、脱りん期の説明を行う前に、吹錬の開始前(脱珪期の開始前)における準備段階について説明する。
図1にあるように、脱珪期の開始前においては、まず高炉から搬送されてきた溶銑が脱りん炉2の炉内に装入される。脱りん炉2に装入された溶銑に対してはホッパー7から焼石灰(CaO)などの造滓剤14が投入され、溶銑の塩基度(計算塩基度)が2.5〜3.5に調整される。また、脱りん炉2には炉口3から上吹ランス4が挿入されており、この上吹ランス4の高さHは脱りん炉2に装入された溶銑の湯面から1.8〜2.2mとされる。
塩基度は、溶銑中におけるSiO2の濃度に対するCaOの濃度の比率である。塩基度が2.5より小さいと、スラグ11の脱りん能が低くなって脱りんが十分に行われなくなったり、酸性酸化物であるSiO2が過剰になって塩基性酸化物の耐火材で主に構成される炉体の溶損が大きくなって脱りん炉2の寿命が低下したりする。また、塩基度が3.5より大きいと、過剰に加えられたCaOの一部が未溶解となり脱珪期におけるスラグ11の滓化が不十分になって脱りん効率が低下する可能性がある。そこで、本発明の溶銑脱りん処理方法では塩基度を2.5〜3.5とした。
一方、上吹ランス4は、準備段階で設定された高さのままで脱珪期から脱りん期にかけての処理に用いられる。上吹ランス4の高さが1.8m未満であると、吹出口10から溶銑の湯面までの距離が近くなりすぎて、吹き出された酸素が溶銑に強く衝突する。その結果、溶銑の飛び散り(スピッティング)が起こって歩留まりが低下する。また、飛び散った溶銑が上吹ランス4の吹出口10や炉口3に付着・堆積し正常な操業が継続できなくなる。
さらに、上吹ランス4の高さが2.2mを越えると、吹出口10から溶銑の湯面までの距離が離れすぎて、酸素が溶銑中に十分に吹き込まれなくなる。その結果、溶銑への酸素供給が不足し、脱珪期における溶銑中のSiの除去や脱りん期における溶銑中のPの除去が不十分になる。そこで、本発明の溶銑脱りん処理方法では上吹ランス4の高さを1.8〜2.2mとした。
図2(a)に示すように、脱珪期は、炉底5から撹拌用ガスを吹き込んで溶銑を撹拌しながら、上吹ランス4から酸素を溶銑に吹き込んで溶銑中のSiをSiO2に酸化させて取り除く期間である。脱珪期は、上吹ランス4から吹き込まれた酸素の積算量が吹錬の開始からトータルで3.5〜4.5Nm3/tの期間である。
図3に示すように、脱珪期においては、上吹ランス4からの酸素流量が3.0〜4.0Nm3/min・tのハードブロー(強撹拌)とされ、式(1)で算出される底吹撹拌動力が100〜300W/tのソフトブロー(弱撹拌)とされる。
上吹ランス4からの酸素流量を3.0Nm3/min・t以上とすることで、溶銑中に酸素が十分に供給されて溶銑中のSiのSiO2への酸化が効率的に行われる。また、上吹ランス4からの酸素流量を4.0Nm3/min・t以下とすることで、上吹ランス4からの酸素吹きつけにより溶銑が飛び散って上吹ランス4の吹出口10に付着堆積して操業阻害が発生することが抑制ないし防止される。
なお、底吹撹拌動力εは、公知である式(1)を用いて計算される(第101、102回西山記念技術講座、日本鉄鋼協会、1984年、第73頁)。底吹撹拌動力を100W/t以上とすることで、溶銑が十分に撹拌されて溶銑中のSiを確実に酸化させることができるようになる。また、底吹撹拌動力を300W/t以下とすることで、スラグ11により表面が十分に覆われていない溶銑を飛散させないように撹拌することが可能となり、上吹ランス4の吹出口10に溶銑が付着堆積して操業阻害が発生することを抑制ないし防止できる。
Figure 2009052070
図2(b)に示すように、脱珪期につづく造滓期は、造滓剤14により溶銑上に浮上したスラグ11の滓化を促進させて、脱りん反応に適したスラグ11を形成する期間である。造滓期は、上吹ランス4から吹き込まれた酸素の積算量が脱珪期の終了から3.5〜4.5Nm3/tの期間である。
図3に示すように、造滓期においては、上吹ランス4からの酸素流量が3.0〜4.0Nm3/min・tのハードブローから1.3〜1.6Nm3/min・tのソフトブローに切り替えられる。また、底吹撹拌動力については100〜300W/tのソフトブローのままである。
上吹ランス4からの酸素流量を1.6Nm3/min・t以下とした意味は、酸素の過剰な吹き込みによる溶銑温度の低下を抑制すると共に、スラグ11の滓化が促進するためである。また、上吹ランス4からの酸素流量を1.3Nm3/min・t以上とした意味は、酸素を溶銑に十分に吹き込んで溶銑中で脱炭反応を起こし、この脱炭反応により生じた排ガスを燃料として有効利用することが可能となるからである。
一方、造滓期における底吹撹拌動力を300W/t以下とした意味は、脱珪期と同様に溶銑に対する撹拌が大きくなりすぎて上吹ランス4に溶銑が付着堆積して操業阻害が発生することを抑制ないし防止するためである。
図2(c)に示すように、造滓期につづく脱りん期は、溶銑と溶銑上に浮上したスラグ11との界面にFeOを生成させ、FeOで溶銑中のPを酸化し、溶銑中のPをP25として取り除く期間である。脱りん期は、上吹ランス4から吹き込まれた酸素の積算量が造滓期の終了から7.0〜9.0Nm3/tの期間である。
図3に示すように、脱りん期においては、上吹ランス4からの酸素流量が1.3〜1.6Nm3/min・tのソフトブローとされ、底吹撹拌動力については100〜300W/tのソフトブローから500W/t以上のハードブローに切り替えられる。
脱りん期における上吹ランス4からの酸素流量を1.3Nm3/min・t以上とした理由は、脱りん反応に必要なFeOをスラグ−メタル界面に生成させることができるからである。また、脱りん期における脱炭反応を抑制して溶銑中の炭素濃度を高くすることが可能となるからである。
また、上吹ランス4からの酸素流量を1.6Nm3/min・t以下とした理由は、溶銑の湯面に対する酸素の衝突を弱くすることで、脱炭に消費される酸素の比率を低減すると共に鉄の酸化に消費される酸素の比率を高め、脱りん期において溶銑の脱炭を抑制することで、脱りん処理につづく脱炭処理において溶銑の炭素濃度を下げすぎないようにするためである。このようにすることで、脱炭処理において溶銑中に十分な炭素濃度を確保して、出鋼時の溶鋼温度を安定的に保持することが可能となる。
一方、脱りん期における底吹撹拌動力を500W/t以上としたのは、浮上したスラグ11と溶銑との界面に生成したFeOに溶銑中のPが接触するように溶銑を十分に撹拌させて、脱りん効率を向上させることが可能となるからである。
なお、脱りん期においては、スラグ11により溶銑の表面が覆われているので、底吹撹拌動力をある程度高くしても上吹ランス4に溶銑が付着することがなく、操業阻害は脱珪期や造滓期ほどには問題にならない。そのため、底吹撹拌動力は、脱珪期や造滓期に比べて大きな500W/t以上として、溶銑中のPの酸化を促進させることが望ましい。
脱りん期においては、冷却材12を投入して溶銑の温度を1350〜1400℃となるように制御する。冷却材12は、スクラップなどのように酸化鉄の含有量が少なく純鉄分が90%以上のものを採用する。冷却材12に酸化状態が安定していないミルスケールなどの酸化鉄を多く用いると、冷却材12の冷却能力が変動しやすくなり、溶銑の温度を1350〜1400℃に制御することが困難になるからである。
加えて、脱りん期においては、総酸素量から計算される脱りん処理後の溶銑の炭素濃度が3.2%以上となるように、酸化鉄13を1.0〜10.0kg/min・tの速度で連続的に溶銑に投入する。なお、酸化鉄13には焼結鉱や鉄鉱石などが用いられる。酸化鉄13は、スラグ11と溶銑の界面においてFeOによる溶銑中のPの酸化が安定的にかつ連続して行われるように、FeO源として溶銑中に連続的に供給される。
酸化鉄13の投入速度を1.0kg/min・t以上とすることで、スラグ11中の酸化鉄の濃度を高めることができ、溶銑中のPの酸化を確実に行うことが可能となる。また、酸化鉄13の投入速度が10.0kg/min・tを超えると、酸化鉄13によりスラグ11が冷却されてスラグ11の滓化が阻害され、脱りん効率が低下する。
酸化鉄13の投入量は、上吹ランス4からの酸素と酸化鉄13による総脱炭量を見積もり、処理後の溶銑中の炭素濃度が3.2%以上となるように設定する。例えば、図4に示されるように炭素濃度が3.2%より低くいと、同溶銑温度における液相線温度が上昇し、溶銑が固体になりやすくなる(溶銑の粘度が上がる)。その結果、炉ロ3や取鍋内に溶銑が付着しやすくなり、生産性を阻害する可能性がある。
そのため、溶銑の温度を炭素濃度3.2%における液相線+50℃〜液相線+100℃、つまり、溶銑の温度を1350〜1400℃に設定する。なお、溶銑の温度の下限を液相線+50℃とするのは、溶銑の温度のばらつきを考慮したものである。
以上述べた如く、本発明の溶銑脱りん処理方法においては、上吹ランス4をハードブローとすると共に底吹撹拌動力をソフトブローとする脱珪期と、上吹ランス4をソフトブローとすると共に底吹撹拌動力をハードブローとする脱りん期との間に、上吹ランス4をソフトブローとすると共に底吹撹拌動力をソフトブローとする造滓期を設けると共に、溶銑の温度と脱りん処理後の溶銑の炭素濃度とを制御することにより、安定的かつ高精度に低りん鋼を溶製することができる。
以下に実施例及び比較例を用いて本発明の溶銑脱りん処理方法をさらに詳しく説明する。
前述した如く、本発明者らは造滓期を酸素積算量により定義しているが、まずは、造滓期の酸素積算量の範囲を明らかにするために予備実験を行った。
予備実験は、準備段階として前チャージから残留するスラグの影響を排除するため脱りん炉2の排さいを行い、次いで排さい後の脱りん炉2にSi濃度0.45%の溶銑90tを装入した。続いて、塩基度を3.0にするように焼石灰(造滓剤14)を溶銑中に投入し、上吹ランス4の高さを2.0mに設定した。
続いて、脱珪期として、上吹ランス4からの酸素流量を3.5Nm3/min・tのハードブローとし、底吹撹拌動力を280W/tのソフトブローとして上吹ランス4からの酸素積算量が吹錬開始から3.6Nm3/tまで吹錬を行った。
酸素積算量3.6Nm3/tで脱珪期が終了すると次に造滓期が開始されるが、この造滓期についてはどの程度までを造滓期として良いかが決定されていない。そこで、造滓期の吹錬の条件については、底吹撹拌動力を280W/tのソフトブローに固定し、上吹ランス4からの酸素流量のみを1.4Nm3/min・tのソフトブローに変化させ、その上で上吹ランス4からの酸素積算量が脱珪期の終了から3.4、3.5、4.0、4.5、4.6Nm3/tの5チャージそれぞれ吹錬を行った。
次に、所定の酸素積算量まで吹錬が終了した後、造滓期が確実に行われた否かを判断すべく、吹錬を一旦中断してスラグ11の滓化状況(スラグの滓化性)を目視で確認すると共に溶銑中のPの濃度を測定して吹錬中断時の脱りん率を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2009052070
「スラグの滓化性」は、炉内のスラグ11を目視で観察し固体物がない場合の滓化性を○、固体物がある場合を×と評価するものである。
「吹錬中断時の脱りん率」については、(処理前における溶銑中のPの濃度−吹錬中断時の溶銑中のPの濃度)÷(処理前における溶銑中のPの濃度)で求められる。
表1の「スラグの滓化性」の評価結果について着目すると、酸素積算量3.4Nm3/tでは炉内に固体物が残存しており滓化は終了していない。これに対して、酸素積算量3.5Nm3/t以上では炉内に固体物がなく滓化が終了している。このことから、造滓期は酸素積算量で3.5Nm3/t以上にするのが好ましいと判断される。
一方、造滓期において脱りん率で30%以上の範囲まで脱りん処理を行うことは、本来脱りん期で行うべき脱りんを造滓期で行うことになり、造滓期を必要以上に行うことになるため好ましくない。この点に鑑みて表1の「吹錬中断時の脱りん率」の評価結果について着目すると、酸素積算量4.5Nm3/tまで造滓期の吹錬を行っても吹錬中断時の脱りん率は30%未満であるが、酸素積算量4.6Nm3/tでは吹錬中断時の脱りん率が30%となっている。このことから、造滓期の酸素積算量の上限は4.5Nm3/tに決定される。
これら表1の結果を総合的に判断し、脱珪期の終了から酸素積算量が3.5〜4.5Nm3/tの期間を本発明の造滓期とすることにした。
次に、吹錬開始前の溶銑の「塩基度」及び「上吹ランス高さ」、脱珪期、造滓期、脱りん期の各段階における「上吹ランス酸素流量」及び「底吹撹拌動力」、脱りん期における「酸化鉄の投入速度」、「冷却材純鉄分」の各種操業条件を変化させて評価を行った。
結果を表2〜表5に示す。
Figure 2009052070
Figure 2009052070
[実施例1〜3]
表2、3に示すように、実施例1〜3は「塩基度(計算塩基度)」が2.5〜3.5を満たすように造滓剤14を加えた例であり、比較例1、2は「塩基度」が2.4及び3.7となるように造滓剤14を加えた例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例1〜3においては、表3の「処理後溶銑条件」における「溶銑中P濃度」(以下、「処理後のP濃度」という)に着目すると、処理後のP濃度が0.015〜0.018%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
ところが、塩基度が2.4である比較例1では、「処理後のP濃度」が0.040%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より高くなっている。これは、塩基度が2.5より小さい場合、スラグ11の脱りん能が低くなって脱りんが十分に行われなくなるためだと思われる。
また、塩基度が3.7の比較例2では「処理後のP濃度」が0.040%と閾値0.020%より高くなり、脱りん効率が実施例1〜3より低くなっている。これは、塩基度が3.5より大きい場合、脱珪期でスラグ11の滓化が不十分になるためだと思われる。
つまり、上述の実施例1〜3及び比較例1、2から、溶銑の塩基度を2.5〜3.5に調整してから脱りん処理を開始することで、スラグ11の脱りん能を下げることなく高い脱りん効率で脱りん処理を行うことが可能である。
[実施例4〜6]
表2、3に示すように、実施例4〜6は「上吹ランス高さ」が1.8〜2.2mとなるように設定して脱りん処理を行った例であり、また比較例3、4は「上吹ランス高さ」を1.7m及び2.3mに設定して脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例4〜6では、「処理後のP濃度」が0.015〜0.018%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっており、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
ところが、「上吹ランス高さ」が2.3mの比較例4において、「処理後のP濃度」が0.039%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より高くなっている。これは、上吹ランス4から溶銑の湯面までの距離が長くなり、酸素が溶銑中に十分に吹き込まれなくなって脱りん期において溶銑中のPが十分に除去されなったためと考えられる。
一方、「上吹ランスの高さ」が1.7mの比較例3においては、「処理後のP濃度」が0.019%と閾値0.020%より低くなっているものの、「上吹ランスへの地金付着」及び「炉口への地金付着」の評価項目に着目すると、「上吹ランスへの地金付着」が36%と閾値の12%より高くなっており、また「炉口への地金付着」が65%と閾値の15%より高くなっている。これは、上吹ランス4から溶銑の湯面までの距離が短くなり、酸素により飛び散った地金(溶銑)が上吹ランス4や炉口3へ付着したためと考えられる。
なお、「上吹ランスへの地金付着」は、上吹ランス4の長さに対する地金が付着した長さの比率で示される。また、「炉口への地金付着」は、脱りん処理の終了後に脱りん炉2を傾動させて炉口3の写真を撮影し、設計上の炉口3の面積と写真から測定された炉口3の面積との差(減少分)を求め、この面積の差を設計上の炉口3の面積で除したものである。
つまり、上吹ランス4を溶銑の液面から1.8〜2.2mの高さに設定して脱りん処理を行うことで、溶銑の飛び散り(スピッティング)を抑え、地金が上吹ランス4や炉口3に対して付着することを抑制ないし防止しながら高い脱りん効率で脱りん処理することが可能となる。
[実施例7〜9]
表2、3に示すように、実施例7〜9は脱珪期において「上吹ランス酸素流量」が3.0〜4.0Nm3/min・tとなるように脱りん処理を行った例であり、比較例5、6は酸素流量2.8Nm3/min・t及び4.2Nm3/min・tで脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例7〜9では、「処理後のP濃度」が0.016〜0.020%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
また、「上吹ランス酸素流量」が2.8Nm3/min・tの比較例5においては、「処理後のP濃度」が0.018%と閾値0.020%より低くなっているものの、酸素流量が少なくなりすぎて操業上許容できる操業時間を超える傾向がある。
つまり、実施例7では脱珪期を完了するのに必要とされる所要時間は1.1分、実施例8では1.0分、実施例9では1.0分、また比較例6では0.8分であり、いずれも閾値1.2分より短くて実操業上許容される操業時間を満たしている。しかし、比較例5では脱珪期を完了するのに1.4分かかり、閾値1.2分より時間が長くて実操業上許容される操業時間を満たしていない。そのため、「上吹ランス酸素流量」が2.8Nm3/min・tの操業条件は比較例とした。
一方、「上吹ランス酸素流量」が4.2Nm3/min・tの比較例6においては、「処理後のP濃度」が0.017%と閾値0.020%より低くなっているものの、「上吹ランスへの地金付着」が35%と、実操業上要求される閾値12%より高くなっている。これは、上吹ランス4からの酸素流量が大きくなって溶銑が飛び散り、上吹ランス4の吹出口10に付着堆積したためと考えられる。
つまり、脱珪期においては上吹ランス4から酸素流量を3.0〜4.0Nm3/min・tとすることで、溶銑の飛び散り(スピッティング)や溶銑の上吹ランス4に対する地金付着を抑制ないし防止しながら吹錬することが可能となる。
[実施例10〜12]
表2、3に示すように、実施例10〜12は「脱珪期における底吹撹拌動力」を100〜300W/tとして脱りん処理を行った例であり、比較例7は「脱珪期における底吹撹拌動力」を320W/tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例10〜12では、「処理後のP濃度」が0.017〜0.018%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
また、「脱珪期における底吹撹拌動力」が320W/tの比較例7では、「処理後のP濃度」が0.012%と閾値0.020%より低くなっているものの、「上吹ランスへの地金付着」が34%と実操業上要求される閾値12%より高くなっている。これは、溶銑の撹拌が強くなりすぎて湯面が波立ち、上吹ランス4の吹出口10に付着堆積する地金(溶銑)が増えたためと考えられる。
つまり、脱珪期においては底吹撹拌動力を300W/t以下として吹錬することで、溶銑の飛び散り(スピッティング)や地金の上吹ランス4に対する付着を抑制ないし防止しながら脱りん処理することが可能となる。
[実施例13〜15]
表2、3に示すように、実施例13〜15は「造滓期における上吹ランス酸素流量」が1.3〜1.6Nm3/min・tを満足するように脱りん処理を行った例であり、比較例8、9は「造滓期における上吹ランス酸素流量」を1.2Nm3/min・t及び1.7Nm3/min・tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例13〜15では、「処理後のP濃度」が0.015〜0.016%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
また、「造滓期における上吹ランス酸素流量」が1.2Nm3/min・tの比較例8では、「処理後のP濃度」が0.018%と閾値0.020%より低くなっているものの、「排ガス中の一酸化炭素濃度」が35%と実操業上要求される閾値50%より低くなっており、排ガスの有効利用が困難になっている。これは、上吹ランス4からの酸素が溶銑に十分に吹き込まれなくなって溶銑中で脱炭反応が生じにくくなり、排ガス中の一酸化炭素濃度が低くなって排ガスの有効利用が困難になったためと考えられる。
なお、「排ガス中の一酸化炭素濃度」は、排ガス中の一酸化炭素の平均濃度で評価している。
一方、「造滓期における上吹ランス酸素流量」が1.7Nm3/min・tの比較例9では、「処理後のP濃度」が0.039%と閾値の0.020%より高くなっていて、脱りん処理が適正に行われていないことがわかる。また、比較例9では、「スラグの滓化性」の評価も×となっていて、スラグ11が十分に滓化されていない。これは、酸素の過剰な吹き込みによって溶銑温度が低下して、スラグ11の滓化が促進されなかったためであると考えられる。
さらに、比較例9では、「上吹ランスへの地金付着」が31%と閾値12%より高くなっていて、上吹ランス4へ地金が多く付着している。これは、上吹ランス4から溶銑に酸素が強く吹きつけられて、溶銑(地金)が飛び散って上吹ランス4の吹出口10に付着堆積したためと考えられる。
つまり、造滓期においては上吹ランス4からの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとして吹錬することで、排ガスの有効利用が可能となり、また溶銑の飛び散り(スピッティング)や地金の上吹ランス4に対する付着を抑制ないし防止することができる。そして、その上でスラグ11を確実に滓化し、造滓期に続く脱りん期で高い脱りん効率で脱りん処理を行うことが可能となる。
[実施例16〜18]
表2、3に示すように、実施例16〜18は「造滓期における底吹撹拌動力」が100〜300W/tを満足するように脱りん処理を行った例であり、比較例10は「造滓期における底吹撹拌動力」を320W/tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例16〜18では、「処理後のP濃度」が0.018〜0.020%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
また、「造滓期における底吹撹拌動力」が320W/tの比較例10では、「処理後のP濃度」は0.018%と閾値0.020%より低くなっているものの、「上吹ランスへの地金付着」が36%と閾値の12%より高くなっている。これは、溶銑の撹拌が強くなって溶銑の湯面が波立ち、飛び散って上吹ランス4の吹出口10に付着堆積する地金(溶銑)が増加したためと考えられる。
つまり、造滓期においては底吹撹拌動力を300W/t以下として吹錬することで、溶銑の飛び散り(スピッティング)や地金の上吹ランス4に対する付着を抑制ないし防止できる。加えて、ソフトブローによりスラグ11の滓化を十分に行え、溶銑中のPを確実に反応させて高い脱りん効率で脱りん処理することが可能になる。
Figure 2009052070
Figure 2009052070
[実施例19、20]
表4、5に示すように、実施例19、20は「脱りん期における上吹ランス酸素流量」が1.3〜1.6Nm3/min・tを満足するように脱りん処理を行った例であり、比較例11〜16は「脱りん期における上吹ランス酸素流量」を0.5〜1.2Nm3/min・tまたは1.7〜1.8Nm3/min・tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例19、20では、「処理後のP濃度」が0.017〜0.019%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
また、「脱りん期における上吹ランス酸素流量」が0.5〜1.2Nm3/min・tの比較例11〜14では、「処理後のP濃度」は0.015〜0.019%と閾値0.020%よりもいずれも低くなっているものの、排ガス中の一酸化炭素濃度が21〜40%と低くなり、排ガスとしての有効利用が困難になっている。これは、溶銑に吹き込まれる酸素が少なくなり、脱炭反応が抑制されて排ガス中の一酸化炭素濃度が低下したためと考えられる。
一方、「脱りん期における上吹ランス酸素流量」が1.7〜1.8Nm3/min・tの比較例15、16では、「処理後のP濃度」が0.038〜0.041%と閾値0.020%よりもいずれも高くなっており、脱りん処理が適正に行われていない。これは、溶銑の表面に対して上吹ランス4から酸素が激しく衝突し、スラグ11を押しのけて溶銑中に酸素が届きやすくなった結果として溶銑中のCと反応する酸素の比率が上がると共にスラグ11中でFeOの生成に寄与する酸素の比率が下がり、脱りん効率が低下したためと考えられる。
つまり、脱りん期においては上吹ランス酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとして吹錬することで、吹錬後の排ガスの有効利用を可能としつつ高い脱りん効率で脱りん処理を行うことが可能である。
[実施例21〜23]
表4、5に示すように、実施例21〜23は「脱りん期における底吹撹拌動力」が500W/t以上を満足するように脱りん処理を行った例であり、比較例17は「脱りん期における底吹撹拌動力」を450W/tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例21〜23では、「処理後のP濃度」が0.012〜0.014%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
これに対して、「脱りん期における底吹撹拌動力」が450W/tの比較例17では、「処理後のP濃度」が0.040%と閾値の0.020%より高くなり、脱りん処理が適正に行われていない。これは、脱りん炉2内における溶銑の攪拌が不十分になり、スラグ11と溶銑との界面においてPの酸化が進みにくくなって、脱りん効率が低下したためと考えられる。
つまり、脱りん期においては底吹撹拌動力を500W/t以上として吹錬することで、高い脱りん効率を維持しつつ脱りん処理することが可能となる。
[実施例24、25]
表4、5に示すように、実施例24、25は「酸化鉄の投入速度」が1.0〜10.0kg/min・tを満足するように脱りん処理を行った例であり、比較例18、19は、投入速度を0.8kg/min・t及び11.0kg/min・tとして脱りん処理を行った例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例24、25では、「処理後のP濃度」が0.017〜0.018%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
これに対して、「酸化鉄の投入速度」が0.8kg/min・tの比較例18では、「処理後のP濃度」が0.043%と、実操業上要求される脱りん処理後のP濃度の閾値0.020%より高くなっており、脱りんの効率が低くなっている。これは、スラグ11中の酸化鉄の濃度が低下し、スラグ11と溶銑との界面にFeOが生成されにくくなって溶銑中のPが除去されにくくなったためと考えられる。
一方、「脱りん期における酸化鉄の投入速度」が11.0kg/min・tの比較例19でも、「処理後のP濃度」が0.042%と、実操業上要求される脱りん処理後のP濃度の閾値0.020%より高くなっており、脱りんの効率が低くなっている。さらに、比較例19では「スラグの滓化性」の評価も×となっており、スラグ11の滓化が十分に行われていない。これは、酸化鉄13によりスラグ11が過冷却されてスラグ11の滓化が阻害され、脱りん効率がかえって低下したためと考えられる。
つまり、脱りん期においては酸化鉄13を投入速度1.0〜10.0kg/min・tとして投入しつつ脱りん処理することで、スラグ11の滓化性を損なわないように高い脱りん効率で溶銑脱りん処理することが可能となる。
[実施例26〜28]
表4、5に示すように、実施例26〜28は「脱りん処理後における溶銑の温度」が1350〜1400℃を満足するように脱りん期において冷却材12を投入した例であり、比較例20、21は「脱りん処理後における溶銑の温度」が1410℃及び1340℃になるように脱りん期において冷却材12を投入した例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例26〜28では、「処理後のP濃度」が0.018〜0.020%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
一方、「脱りん処理後における溶銑の温度」が1410℃になるように脱りん期において冷却材12を投入した比較例20では、「処理後のP濃度」が0.040%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より高くなっており、脱りん効率が低下している。これは、脱りん処理後における溶銑の温度が高くなりすぎて、脱りん反応に好適な温度帯からずれ、脱りん期における脱りん効率が低下したためと考えられる。
また、「脱りん処理後における溶銑の温度」が1340℃になるように脱りん期において冷却材12を投入した比較例21は、「処理後のP濃度」は0.016%と閾値0.020%より低くなっているものの、「炉口への地金付着」が40%と閾値の15%より高くなっている。これは、脱りん処理後における溶銑の温度が低くなり、溶銑の粘度が上がって付着しやすくなった溶銑が炉口に付着したためと考えられる。
つまり、脱りん処理後の溶銑の温度を1350〜1400℃にするように冷却材12を投入しながら脱りん処理することで、炉口への地金付着を抑制ないし防止しつつ高い脱りん効率で脱りん処理することが可能である。
[実施例29、30]
表4、5に示すように、実施例29、30は、純鉄分が90%以上の冷却材12を脱りん処理で投入した例であり、比較例22〜24は純鉄分が78〜88%となる冷却材12を投入した例である。他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
実施例29、30では、「処理後のP濃度」が0.018〜0.019%と、実操業上要求される処理後のP濃度の閾値0.020%より低くなっていて、脱りん処理が適正に行われていることがわかる。
これに対して、比較例22〜24では、「溶銑温度差」が−35や30℃のように大きな範囲で変動している。その結果、比較例23のように「処理後のP濃度」が0.037%と閾値0.020%を超えて高くなったり、比較例22のように「炉口への地金付着」が42%と閾値の15%を超えて大きくなったりする。これは、冷却材12の冷却能力が変動して脱りん処理後における溶銑の温度が高くなったり低くなったりし、その結果脱りん効率が低下したり地金が炉口3へ飛散して付着したりししたためと考えられる。
つまり、脱りん期においては純鉄分が90%以上の冷却材12を使用することで、冷却材12に冷却能力を安定して発揮させることが可能となり、脱りん効率の低下や炉口3への溶銑の付着を招くことなく溶銑の温度を正確に制御することが可能になる。
本発明の脱りん炉の断面図である。 本発明の溶銑脱りん処理方法を示す説明図である。 本発明の溶銑脱りん処理方法における酸素流量と底吹撹拌動力の推移を示す説明図である。 溶銑中の炭素濃度と溶銑の温度との関係を示す図である。
符号の説明
1 転炉設備
2 脱りん炉
3 炉口
4 上吹ランス
5 炉底
6 羽口
7 ホッパー
8 炉壁
9 出銑口
10 吹出口
11 スラグ
12 冷却材
13 酸化鉄
14 造滓剤

Claims (1)

  1. 上吹ランスから溶銑に酸素を吹き込むと共に底吹撹拌を行うことにより吹錬を行う脱りん炉にて、溶銑からSiを取り除く脱珪期と、該脱珪期に続き且つ溶銑上に浮かぶスラグを生成する造滓期と、該造滓期に続き且つ溶銑中のPを取り除く脱りん期とを経て溶銑脱りん処理を実施するに際し、
    前記脱珪期の開始前に、溶銑の塩基度(CaO/SiO2)が2.5〜3.5となるようにすると共に、溶銑の湯面から上吹ランスの吹出口までの高さを1.8〜2.2mに設定し、
    前記脱珪期では、上吹ランスからの酸素流量を3.0〜4.0Nm3/min・tとすると共に、式(1)で算出される底吹撹拌動力を100〜300W/tとして吹錬し、
    前記造滓期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとすると共に、前記底吹撹拌動力を100〜300W/tとして吹錬し、
    前記脱りん期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとすると共に、前記底吹撹拌動力を500W/t以上として吹錬して、
    前記造滓期の終了後に、純鉄分が90%以上の冷却材を、投入後の溶銑の温度が1350〜1400℃となるように投入し、且つ、総酸素量から計算される脱りん後の溶銑の炭素濃度が3.2%以上となるように、酸化鉄を1.0〜10.0kg/min・tの速度で連続的に前記溶銑に投入することを特徴とする溶銑脱りん処理方法。
    Figure 2009052070
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