JP2007143304A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】力率改善機能を有する電源回路として、電力変換効率の向上、回路構成部品の削減を図る。
【解決手段】交流電源ACからの入力交流電力を平滑整流し、整流平滑電圧Eiを、チョークコイル巻線Noを介してコンバータトランス一次巻線N1とコンバータトランス二次巻線N2との結合係数を0.8以下の疎結合として漏れインダクタンスL1を有するコンバータトランスPITに付与し、スイッチング素子Q1によるE級スイッチング動作の電圧・電流共振多重コンバータとする。そして、スイッチング素子Q1がオフのときに電圧をクランプする補助スイッチング素子Q2を備える。さらに、力率改善ダイオードD1を介して力率改善巻線No’からのパルス電圧を帰還する電圧帰還方式力率改善回路と、を備えるものである。
【選択図】図1
【解決手段】交流電源ACからの入力交流電力を平滑整流し、整流平滑電圧Eiを、チョークコイル巻線Noを介してコンバータトランス一次巻線N1とコンバータトランス二次巻線N2との結合係数を0.8以下の疎結合として漏れインダクタンスL1を有するコンバータトランスPITに付与し、スイッチング素子Q1によるE級スイッチング動作の電圧・電流共振多重コンバータとする。そして、スイッチング素子Q1がオフのときに電圧をクランプする補助スイッチング素子Q2を備える。さらに、力率改善ダイオードD1を介して力率改善巻線No’からのパルス電圧を帰還する電圧帰還方式力率改善回路と、を備えるものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、各種電子機器の電源として備えられるスイッチング電源回路に関する。
近年、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
ところで、商用電源は正弦波の交流電圧であるが、商用電源を整流素子と平滑コンデンサとを用いる平滑・整流回路において整流及び平滑を行う場合には、平滑・整流回路のピークホールド作用のために、商用電源からスイッチング電源回路には、交流電圧のピーク電圧付近の短時間だけ電流が流れ込むこととなり、正弦波とは大きく異なる歪み波形になってしまう。そして、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。又、このような歪み電流波形となることによって発生する商用電源周期の高調波を抑圧するための対策が必要とされてしまう。これらの問題を解決するために、従来において力率改善を図る技術として、いわゆるアクティブフィルタを用いる手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
図15にこのようなアクティブフィルタの基本構成を示す。図15においては、商用の交流電源ACにブリッジ整流器Diを接続している。このブリッジ整流器Diの正極/負極ラインに対してはステップアップ型のコンバータが接続され、その出力には並列に平滑コンデンサCoutが接続され、その両端電圧として直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷110に入力電圧として供給される。
そして、力率改善のための構成としては、インダクタL、高速リカバリ型の高速スイッチングダイオードD、スイッチング素子Qからなるステップアップ型のコンバータ、及び乗算器111を主なる構成要素とするステップアップ型のコンバータの制御部と、を備える。インダクタL、高速スイッチングダイオードDは、ブリッジ整流器Diの正極出力端子と、平滑コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。抵抗Riは、ブリッジ整流器Diの負極出力端子(一次側アース)と平滑コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。又、スイッチング素子Qは、例えば、MOS−FETとされ、インダクタLと高速スイッチングダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
乗算器111に対しては、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLWが接続され、さらに電圧検出ラインLVが接続される。そして、乗算器111は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流器Diの負極出力端子に流れる整流電流Iinに応じた信号を抵抗Riの両端から検出する。又、波形入力ラインLWから入力される、ブリッジ整流器Diの正極出力端子の整流電圧Vinに応じた信号を検出する。この整流電圧Vinは、商用の交流電源ACからの交流入力電圧VACの波形を絶対値化したものである。さらに、電圧検出ラインLVから入力される、平滑コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分(所定の基準電圧と直流電圧Voutとの差分を増幅した信号を変動差分と称して以下においても同様に用いる)を検出する。そして、乗算器111からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
乗算器111(ステップアップ型のコンバータの制御部)、ステップアップ型のコンバータ、では、電流検出ラインLIから検出した整流電流Iinに応じた信号と、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分とを乗算し、この乗算結果と、波形入力ラインLWから検出した整流電圧Vinに応じた信号との誤差を検出する。そしてこの誤差信号を増幅した後に、PWM(Pulse Width Modulation)変換を行い、ハイレベルとローレベルとの2値信号によって、スイッチング素子Qを制御する。このようにして、2入力フィードバック系が構成され、直流電圧Voutの値が所定の値とされるとともに、整流電圧Vinに対して整流電流Iinを相似形の波形とする。この結果、商用の交流電源ACからブリッジ整流器Diに印加される交流電圧と、ブリッジ整流器Diに流れ込む交流電流の波形も相似形となって、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。
図16(a)は、図15に示したアクティブフィルタ回路が適切に動作する場合における整流電圧Vinと整流電流Iinとを示すものである。又、図16(b)は、平滑コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)変化Pchgを示す。破線で示すラインは入出力するエネルギー(電力)平均値Pinを示すものである。すなわち、平滑コンデンサCoutは、整流電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、整流電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。図16(c)は、上記平滑コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。又、図16(d)には、平滑コンデンサCoutの両端の電圧である直流電圧Voutを示す。直流電圧Voutは整流電圧Vinの周期の第2高調波成分を主とするリップル電圧が直流電圧(例えば、375Vの直流電圧)に重畳している。
図17は、図15に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vの範囲において、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲に対応可能な構成を採っている。又、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
この図17に示す電源回路を交流入力側から順に説明する。2個のラインフィルタトランスLFTと3個のアクロスコンデンサCLによるコモンモードノイズフィルタが設けられ、この後段にブリッジ整流器Diが接続される。又、ブリッジ整流器Diの整流出力ラインには、インダクタLNと、フィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CNとから成るパイ型構成のノーマルモードノイズフィルタ125が接続される。
ブリッジ整流器Diの正極出力端子は、上記インダクタLNとチョークコイルPCC(インダクタLpcとして機能する)と高速リカバリ型の高速スイッチングダイオードD20の直列接続とを介して、平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。この平滑コンデンサCiは、図15における平滑コンデンサCoutと同様の機能を有するものである。又、チョークコイルPCCのインダクタLpcと、高速スイッチングダイオードD20は、それぞれ、図15に示したインダクタLと高速スイッチングダイオードDと同様の機能を有するものである。又、この図における高速スイッチングダイオードD20には、コンデンサCsn、抵抗Rsnの直列接続から成るRCスナバ回路が並列に接続される。
スイッチング素子Q103は、図15におけるスイッチング素子Qに相当する。力率・出力電圧制御用IC120は、この場合には力率を1に近づけるように力率改善を行うアクティブフィルタの動作を制御する集積回路(IC)とされており、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子Q103を駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成される。そして、平滑コンデンサCiの両端電圧(整流平滑電圧Ei)を分圧抵抗R5、分圧抵抗R6により分圧した電圧を、力率・出力電圧制御用IC120の端子T1に入力するようにして整流平滑電圧Eiを所定の値とする第1のフィードバック制御回路が形成される。
又、ブリッジ整流器Diの正極出力端子と一次側アース間に対して、分圧抵抗R101と分圧抵抗R102の直列接続を設け、この分圧抵抗R101と分圧抵抗R102との接続点を端子T5と接続するようにしている。これにより、端子T5には、ブリッジ整流器Diの整流電圧が分圧されて入力されることになる。又、端子T2には抵抗103の電圧、すなわち、スイッチング素子Q103のソース電流に応じた電圧が入力されている。ここで、スイッチング素子Q103のソース電流は、チョークコイルPCCに流れる電流I1のうち、磁気エネルギーを蓄えることに寄与する電流である。そして、力率・出力電圧制御用IC120の端子T5に入力される整流電圧に応じた信号と端子T2に入力される電圧の包絡線(すなわち電流I1の包絡線)に応じた信号とを相似形とする第2のフィードバック制御回路が形成される。
又、端子T4には、力率・出力電圧制御用IC120の動作電源が供給される。この端子T4には、チョークコイルPCCにおける、インダクタLpcとトランス結合された巻線N5に励起された交番電圧が、図示する整流ダイオードD11及び直列共振コンデンサC11とから成る半波整流回路により低圧直流電圧に変換されて供給される。又、端子T4は、起動抵抗Rsを介して、ブリッジ整流器Diの正極出力端子と接続される。商用の交流電源ACが投入された後、巻線N5に電圧が励起されるまでの立ち上がり時間においては、ブリッジ整流器Diの正極出力端子にて得られる整流出力が起動抵抗Rsを介して端子T4に供給される。力率・出力電圧制御用IC120は、このようにして供給される整流電圧を起動用電源として、動作を開始する。
又、端子T3からは、スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号(ゲート電圧)がスイッチング素子Q103のゲートに対して出力される。すなわち、上述した分圧抵抗R5及び分圧抵抗R6により分圧した電圧値を所定の値とする第1のフィードバック制御回路と、整流平滑電圧Eiに対して電流I1の包絡線を相似形とする第2のフィードバック制御回路との二つのフィードバック制御回路を動作させるドライブ信号がスイッチング素子Q103のゲートに対して出力される。これによって、商用の交流電源ACから流入する交流入力電流IACの波形が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じとなり、力率がほぼ1となるように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。
ここで、図17に示すアクティブフィルタの力率改善動作について、各部の波形を図18及び図19により示す。先ず、図18においては、負荷変動に応じたスイッチング素子Q103のスイッチング動作(オン:導通とオフ:切断の動作)、チョークコイルPCCのインダクタLpcに流れる電流I1が示される。図18(a)は、軽負荷時の動作を示し、図18(b)は中間負荷時の動作を示し、図18(c)は重負荷時の動作を示す。図18(a)、図18(b)、図18(c)を比較して分かるように、スイッチング素子Q103は、スイッチング周期が一定とされたうえで、重負荷の傾向となるのにしたがってオン期間が長くなっていく。このようにして負荷条件に応じて、インダクタLpcを介して平滑コンデンサCiに流入する電流I1を調整することで、交流入力電圧VACの電圧変動と負荷変動とに対する整流平滑電圧Eiの安定化が図られる。例えば、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vの範囲に対して、整流平滑電圧Eiの値は380Vで定電圧化するようにされる。整流平滑電圧Eiは、平滑コンデンサCiの両端電圧であり、後段の電流共振形コンバータに対する直流入力電圧となる。
又、図19に、交流入力電流IAC及び整流平滑電圧Eiの波形を、交流入力電圧VACとの対比により示す。なお、この図においては、交流入力電圧VACの値が100V時の実験結果を示している。この図に示されるように、交流入力電圧VACの波形と交流入力電流IACの波形とは時間の経過に対してほぼ相似形の波形となっている。つまり、力率の改善が図られている。又、このような力率の改善と共に、整流平滑電圧Eiは、380Vの平均値で安定化されることが示されている。又、図示するように、380Vに対して10Vp−pのリップル変動を有している。
再び図17に戻って、アクティブフィルタの後段の電流共振形コンバータについて説明する。電流共振形コンバータは、整流平滑電圧Eiを入力して電力変換のためのスイッチング動作を行うもので、スイッチング素子Q101、Q102によるハーフブリッジ接続したスイッチング回路を備える電流共振形コンバータを形成している。この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、スイッチング素子Q101、スイッチング素子Q102には、MOS−FETが用いられている。これらのMOS−FETには、それぞれ並列にボディダイオードDD101、ボディダイオードDD102が接続されている。スイッチング素子Q101、スイッチング素子Q102は、発振・ドライブ回路102によって、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動される。又、発振・ドライブ回路2は、制御回路1からの信号で制御され、制御回路1は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、スイッチング周波数を可変制御するように動作し、これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るようにされる。
コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q101、スイッチング素子Q102のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、スイッチング素子Q101、スイッチング素子Q102の接続点(スイッチング出力点)に一次側直列共振コンデンサC2を介して接続され、一次巻線N1の他方の端部は接地される。ここで、一次側直列共振コンデンサC2と一次側の漏れインダクタンスL1とによって直列共振回路を形成する。この直列共振回路は、スイッチング素子Q101、スイッチング素子Q102によって、スイッチング出力が供給されることで共振動作を生じる。
コンバータトランスPITの二次側には二次巻線N2が巻装される。この場合の二次巻線N2は、図示するようにしてセンタータップを施した二次巻線部N2Aと二次巻線部N2Bとを有し、このセンタータップを二次側アースに接続した上で、二次巻線部N2Aと二次巻線部N2Bの各々を整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2の各々のアノードに接続し、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2の各々のカソードを平滑コンデンサCoに接続することで両波整流回路を形成している。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。この二次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷側に供給されるとともに、上述した制御回路1に入力される。
図20は、負荷変動に対するAC電力からDC電力への電力変換効率ηAC→DC(総合効率)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの各特性を示している。この図では、交流入力電圧VACの値が100Vにおける負荷電力Poの値が300Wから0Wの変動に対する特性が示されている。又、図17は、交流入力電圧VACの変動に対する電力変換効率ηAC→DC(総合効率)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの各特性を示している。この図では、負荷電力Poの値が300Wで一定の負荷条件の下での、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vの変動に対する特性が示される。
先ず、電力変換効率(総合効率)は、図20に示すようにして、負荷電力Poが重負荷の条件となるのにしたがって低下していく。又、交流入力電圧VACの変動に対しては、同じ負荷条件の下では、図21に示されるように、交流入力電圧VACのレベルが高くなっていくのに応じて高くなっていく傾向となっている。例えば、負荷電力Poが300Wの負荷条件で、交流入力電圧VACが100V時には、電力変換効率(総合効率)は、83.0%程度となり、交流入力電圧VACが230V時には電力変換効率(総合効率)は、89.0%程度となり、さらに、交流入力電圧VACが85V時には電力変換効率(総合効率)は、80.0%程度となる結果が得られている。
又、力率PFについては、図20に示すように、負荷電力Poの変動に対してほぼ一定となる特性が得られている。又、交流入力電圧VACの変動に対する力率PFの変動特性も、図21に示すように、交流入力電圧VACの上昇に応じて低下する傾向ではあるものの、ほぼ一定とみてよい特性となっていることが分かる。例えば、負荷電力Poが300Wの負荷条件で、交流入力電圧VACが100V時には力率PFの値は、0.96程度、交流入力電圧VACが230V時には力率PFの値は、0.94程度が得られる。
又、整流平滑電圧Eiについては、図20、図21に示されるように、負荷電力Po、交流入力電圧VACの変動に対してほぼ一定となる結果が得られている。
特開平6−327246号公報
これまでの説明から分かるように、図17に示した電源回路は、従来から知られている図15に示したアクティブフィルタを実装して構成され、このような構成を採ることによって、力率改善を図っている。
しかしながら、図17に示した構成による電源回路では、次のような問題を有している。先ず、図17に示す電源回路における電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC電力からDC電力への変換効率と、後段の電流共振形コンバータのDC電力からDC電力への変換効率とを総合したものとなる。つまり、図17に示される回路の総合的な電力変換効率(総合効率)としては、これらの電力変換効率の値を乗算した値となるものであり、各々1以下となる数の積であるので、総合効率は低下してしまう。
又、アクティブフィルタ回路はハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生が大きいため、厳重なノイズ抑制対策が必要となる。このため、図17に示した回路では、商用の交流電源ACのラインに対して、2個のラインフィルタトランスと、3個のアクロスコンデンサによるノイズフィルタを形成している。又、整流出力ラインに対しては、1個のインダクタLNと、2個のフィルタコンデンサCNから成るノーマルモードノイズフィルタを設けている。さらに、整流用の高速リカバリ型の高速スイッチングダイオードD20に対しては、RCスナバ回路を設けている。このようにして、多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
さらに、汎用ICとしての力率・出力電圧制御用IC120によって動作するスイッチング素子Q103のスイッチング周波数は60kHzで固定であるのに対して、後段の電流共振形コンバータのスイッチング周波数は80kHz〜200kHzの範囲で可変する。このようにして両者のスイッチングタイミング(クロック)は別個独立であるので、各々のクロックを基準に働く両者のスイッチング動作により、アース電位は干渉しあって不安定になり、例えば異常発振が生じやすくなる。これにより、例えば回路設計が難しいものとなったり、信頼性を劣化させたりするなどの問題も招くことになる。
又、さらに、交流入力電圧の範囲を広くする場合には、スイッチング素子の耐圧が高くなり、素子の選定が困難となる場合も生じた。
本発明のスイッチング電源回路は、交流電源からの交流電力を整流する一次側整流素子と平滑コンデンサとを具備して形成され、直流電力を生成する一次側整流回路と、前記直流電力がチョークコイル巻線の一端に印加されるチョーク装置と、前記チョークコイル巻線の他端にコンバータトランス一次巻線の一端が接続される漏れインダクタンスを有するコンバータトランスと、前記コンバータトランス一次巻線の前記一端に交流電圧を印加するために接続されるスイッチング素子と、前記コンバータトランス一次巻線の他端が一次側直列共振コンデンサと接続されて形成される一次側直列共振回路と、前記スイッチング素子に一次側並列共振コンデンサが並列に接続されて形成される一次側並列共振回路と、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、前記コンバータトランス二次巻線に接続される二次側整流回路によって出力される二次側直流出力電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、前記チョーク装置に巻装され、前記チョークコイル巻線と疎に結合される力率改善巻線と前記一次側整流素子との間に接続されて、前記力率改善巻線に発生する一方向のパルス電圧を前記平滑コンデンサに付与する力率改善ダイオードを具備する力率改善回路と、前記チョークコイル巻線に並列に接続され、前記スイッチング素子がオフのときにオンとされる補助スイッチング素子と電圧クランプ用コンデンサとの直列接続回路と、を備える。
すなわち、このスイッチング電源回路では、一次側整流回路は、交流電源からの交流電力を整流する一次側整流素子と平滑コンデンサとを具備して形成され、直流電力を生成する。チョーク装置のチョークコイル巻線の一端に直流電力が印加される。漏れインダクタンスを有するコンバータトランスのコンバータトランス一次巻線の一端がチョークコイル巻線の他端に接続される。スイッチング素子はコンバータトランス一次巻線の一端に交流電圧を印加するために接続される。一次側直列共振回路は、コンバータトランス一次巻線の他端が一次側直列共振コンデンサと接続されて形成される。一次側並列共振回路は、スイッチング素子に一次側並列共振コンデンサが並列に接続されて形成される。発振・ドライブ回路は、スイッチング素子をオン・オフ駆動する。制御回路は、コンバータトランス二次巻線に接続される二次側整流回路によって出力される二次側直流出力電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する。上述の構成によって、このスイッチング電源回路はE級スイッチング動作の電圧・電流共振多重共振コンバータとして機能し、二次側直流出力電圧として所定の電圧を得ることができる。
又、力率改善回路を備え、チョーク装置に巻装され、チョークコイル巻線と疎に結合される力率改善巻線と、一次側整流素子との間に接続されて、力率改善巻線に発生する一方向のパルス電圧を平滑コンデンサに付与する力率改善ダイオードを具備し、この構成によって力率の改善を図る。
さらに、スイッチング素子がオフのときにオンとされる補助スイッチング素子と電圧クランプ用コンデンサとの直列接続回路と、を備え、チョークコイル巻線に並列に接続され、スイッチング素子に付与される電圧をクランプする。
本発明のスイッチング電源回路によれば、アクティブフィルタを省略して力率改善機能を備えることができる。アクティブフィルタが省略されることで、スイッチング電源回路の電力変換効率特性が向上する。そして、放熱板などの省略、縮小ができる。又、アクティブフィルタを備える構成と比較すると部品点数も大幅に削減されることとなり、回路の小型軽量化、及び低コスト化が図られる。又、アクティブフィルタはハードスイッチング動作であるのに対して、本発明のスイッチングコンバータは、共振形コンバータを基としていることで、ソフトスイッチング動作となる。これによっては、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタの小型軽量化及び低コスト化に寄与することになる。さらに、異なる周波数の複数クロックが存在することはないために、複数のクロック周波数による相互干渉の問題も発生せず、信頼性も向上し、又、回路基板のパターン設計なども容易となる。さらに、スイッチング素子の耐圧も低いものとできる。
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、まず、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図13及び図14を参照して説明しておく。
図13は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC−ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、スイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1は、例えば、MOS−FETである。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。又、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。又、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZは、二次側の負荷を一次側に換算したものである。
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrの容量(キャパシタンス)とにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11の容量とにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。又、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
図14は、上記図13に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
又、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
又、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
又、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
本実施の形態としては、上記基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを電源回路に適用する。図1の回路図に示す、実施形態のスイッチング電源回路は、所謂、E級スイッチングコンバータを電源回路に適用して、E級スイッチング動作の多重共振コンバータを構成するとともに、力率改善回路及びアクティブ回路を用いた電圧クランプ回路を具備するものである。力率改善回路としては、チョーク装置のチョークコイル巻線と疎に結合される力率改善巻線に発生するパルス電圧を、力率改善ダイオードを介して平滑コンデンサに付与することによって、力率の向上を図り、交流入力電圧が広範囲に及んでも良好な力率を維持した。さらに、電圧クランプ回路を付加して、交流入力電圧が高圧に及んでも対応可能とした。
図1に示す実施形態のスイッチング電源回路について、商用の交流電源AC側から、順に以下に説明する。商用の交流電源ACの2相の入力ラインは、コモンモードチョークコイルCMCと2個のアクロスコンデンサCLとからなるコモンモードノイズフィルタを介して整流素子の一種であるブリッジ整流器Diに接続される。ここで、コモンモードノイズフィルタは、商用の交流電源ACのラインとスイッチング電源回路の二次側との間に発生するコモンモードノイズを除去する機能を有している。
交流電力は、4本の低速型の整流素子(ダイオード)をブリッジ接続して形成したブリッジ整流器Diにより整流され、脈流電力を発生させ、その脈流電力は、スイッチング速度の速い力率改善ダイオードD1及び力率改善巻線No’を介して平滑コンデンサCiに充電される。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。すなわち、ブリッジ整流器Diと平滑コンデンサCiとで、整流平滑回路を構成する。ここにおいて、力率改善ダイオードD1は後述する力率改善回路10のを構成する。力率改善ダイオードD1の作用については、力率改善回路10の全体の作用とともに後述する。ここで、整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。この整流平滑電圧Eiが、後段のE級スイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
E級スイッチングコンバータは、チョーク装置PCC、コンバータトランスPIT、一次側直列共振コンデンサC2、一次側並列共振コンデンサCr及びスイッチング素子Q1を主要部として形成される。すなわち、E級スイッチングコンバータは以下のように構成される。
平滑コンデンサCiの一端とチョーク装置PCCのチョークコイル巻線Noの一端が接続されて、整流平滑電圧Eiが、このチョークコイル巻線Noの一端に印加される。そして、チョークコイル巻線Noの他方の端子に、漏れインダクタンスを有するコンバータトランスPITのコンバータトランス一次巻線N1の一端が接続される。又、コンバータトランス一次巻線N1のこの一端が一次側直列共振コンデンサC2と接続されている。そして、一次側の漏れインダクタンス成分(図1において、インダクタンスL1で表す)及びチョークコイル巻線Noの有するインダクタンス成分(図1において、インダクタンスLoで表す。以下、チョークコイル巻線Noのインダクタンス成分と省略する)と一次側直列共振コンデンサC2の容量とによって一次側直列共振周波数が支配を受ける一次側直列共振回路が形成される。
又、チョークコイル巻線NoのインダクタンスLo及びインダクタンスL1と一次側並列共振コンデンサCrの容量によって一次側並列共振周波数が支配を受ける一次側並列共振回路が形成される。そして、一次側直列共振回路及び一次側並列共振回路に交流電力を供給するスイッチング素子Q1がコンバータトランス一次巻線N1の他方の端子に接続される。ここで、発振・ドライブ回路2がスイッチング素子Q1を駆動し、スイッチング素子Q1はMOS−FETとされ、コンバータトランスPITは、結合係数kの値を小さくして、比較的漏れインダクタンスの値が大きい構造とされている。
なお、共振周波数が「支配を受ける」とは、主としてこれらの要素によって共振周波数が定まることを言うものである。例えば、一次側直列共振周波数は、インダクタンスL1、インダクタンスLo及び一次側直列共振コンデンサC2のみならず、平滑コンデンサCi等によっても影響されるが、一次側直列共振コンデンサC2の容量の値に較べて平滑コンデンサCiの容量の値が非常に大きいので、比較的に一次側直列共振周波数に対する影響は少ない。又、一次側並列共振周波数は、平滑コンデンサCi等によっても影響されるが比較的に一次側並列共振周波数に対する影響は少ないものである。このように影響が比較的に大きなインダクタンス又は容量を構成する部分が、共振周波数を支配するものである。
そして、コンバータトランスのコンバータトランス二次巻線N2が二次側直列共振コンデンサC4と接続され、二次側の漏れインダクタンス成分(図1において、インダクタンスL2で表す)と二次側直列共振コンデンサC4の容量とによって共振周波数が支配を受ける二次側直列共振回路を形成する。そして、二次側直列共振回路から二次側整流回路(整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4で構成されるブリッジ整流回路と平滑コンデンサCoで形成される)によって出力される二次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路2に供給する制御回路1を備えている。
さらに、ブリッジ整流器Diからの電流を平滑コンデンサCiに流すとともに、力率改善巻線に発生するパルス電圧を平滑コンデンサに付与するための力率改善ダイオードD1とフィルタコンデンサCNとを具備する力率改善回路10を備えている。なお、フィルタコンデンサCNはノーマルモードノイズを除去するためのフィルタとしても機能する。
又、さらに、チョークコイル巻線Noの両端に、電圧クランプ用コンデンサC3と補助スイッチング素子Q2との直列回路によって形成されるアクティブ回路を用いた電圧クランプ回路を並列に接続している。力率改善回路10及びアクティブ回路を用いた電圧クランプ回路の作用については後述する。
すなわち、上述したように、実施形態では、一次側がE級スイッチング動作の電圧電流共振コンバータであり、二次側が電流共振回路を有する多重共振コンバータによって電力電送を行う。又、力率改善巻線No’に発生するパルス電圧を、力率改善ダイオードを介して平滑コンデンサに帰還する電圧帰還方式の力率改善回路を備える。さらに、スイッチング素子Q1に加わる電圧を抑えるためにアクティブ素子である補助スイッチング素子Q2と電圧クランプ用コンデンサC3を有するクランプ回路、及び二次側直流出力電圧の値を所定の値とするために、制御回路1を備え、制御回路1からの信号を発振・ドライブ回路2に加え、発振・ドライブ回路2から出力される駆動信号によってスイッチング素子Q1のゲートを駆動する。
以下に、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路の細部の構成についてより詳細に説明をする。
まず、コンバータトランスPITの詳細について説明する。コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを絶縁するとともに電圧の変換を行う機能を有するが、さらに、E級スイッチングコンバータを機能させるための共振回路の一部を構成するインダクタンスL1としても機能する。ここで、インダクタンスL1は、コンバータトランスPITによって形成される漏れインダクタンス成分である。図2に示すコンバータトランスPITの断面図に沿って、具体的な構造を説明する。
コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。そして、一次側と二次側の巻装部については、相互に独立するようにして分割し、例えば樹脂などによって形成されるボビンBが備えられる。そして、コンバータトランス一次巻線N1及びコンバータトランス二次巻線N2が巻装されたボビンBをEE字形コアに取り付けることで、コンバータトランス一次巻線N1と制御巻線Ngとが同一の巻装領域に、コンバータトランス二次巻線N2が異なる巻装領域に分離され、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにしてコンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
このEE字形コアの中央磁脚に対しては、1.6mmのギャップGを形成する。これによって、一次側と二次側との結合係数kの値としては、0.8以下を得ている。このようにして、大きなインダクタンス値の漏れインダクタンスL1を得るようにしている。なお、ギャップGは、E型コアCR1及びE型コアCR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成している。又、コンバータトランス一次巻線N1の巻数は48T(ターン)、コンバータトランス二次巻線N2の巻数は30T(ターン)、制御巻線Ngは1T(ターン)とし、コア材は、EER―35(コア材名称)とした。
チョーク装置PCCはチョークコイル巻線Noがコアに巻装されて形成されるものであり、図2に示すコンバータトランスPITと同様の構造を有している。すなわち、チョーク装置PCCは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアを備える。そして、チョークコイル巻線Noと力率改善巻線No’の巻装部については、相互に独立するようにして分割し、例えば樹脂などによって形成されるボビンBが備えられる。そして、チョークコイル巻線No及び力率改善巻線No’が巻装されたボビンBをEE字形コアに取り付けることで、チョークコイル巻線Noと力率改善巻線No’とが異なる巻装領域に分離され、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。
チョークコイル巻線Noの有するインダクタンスLoの値は、1mH(ミリ・ヘンリー)、力率改善巻線No’の有するインダクタンスLo’の値は、82μH(マイクロ・ヘンリー)とした。このようなインダクタンスはチョークコイル巻線Noと力率改善巻線No’が疎結合とされることによって主として生じるものであり、両方の巻線における結合係数kの値は、0.83とした。
又、コンバータトランスPITとチョーク装置PCCとを、図3又は図4に示すように一体構成としても良いものである。図3に示す構成においては、上述した図2に示すコンバータトランスPITの構成にさらにチョークコイル用コアを追加してこのコアにチョークコイル巻線No及び力率改善巻線No’を追加している。図2に示すギャップGは、図3ではギャップG1で表され、チョークコイル用コア側に形成されたギャップG2はインダクタンスLo及びインダクタンスLo’の飽和を防止するためのものである。ギャップG2は、チョークコイル用コアを構成するE型コアの中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成している。なお、ギャップG2は0.8mmとしている。
又図4に示す別の例では、直交フェライト磁芯を2組、組み合わせて直交フェライトトランスとしている。このような構成においては、コンバータトランス一次巻線N1及び制御巻線Ngとコンバータトランス二次巻線N2との結合係数kの値は、コア部分を介しての結合が少ないために必然的に小さくなるものである。又、コンバータトランス一次巻線N1、制御巻線Ng及びコンバータトランス二次巻線N2に鎖交する磁束と、チョークコイル巻線No及び力率改善巻線No’に鎖交する磁束とは直交するので、コンバータトランスPITの機能とチョーク装置PCCの機能とは磁気的には分離されていることとなる。図4に示すギャップG3は、コンバータトランスPIT及びチョーク装置PCCの両方の特性を定めるのに寄与するものである。
なお、図3,図4のいずれの構造においても、コンバータトランス一次巻線N1とコンバータトランス二次巻線N2との結合係数kの値は図2示すものと等しく0.8以下とし、チョークコイル巻線Noと力率改善巻線No’との結合係数kの値は0.85以下とし、コンバータトランス一次巻線N1の巻数は48T(ターン)、コンバータトランス二次巻線N2の巻数は30T(ターン)、制御巻線Ngは1T(ターン)、インダクタンスLoの値は1mH、インダクタンスLo’ の値は82μHとなるようにしている。
コンバータトランスPITの二次側では、コンバータトランス一次巻線N1により誘起された交番電圧に相似した電圧波形がコンバータトランス二次巻線N2に発生する。このコンバータトランス二次巻線N2に対しては、二次側直列共振コンデンサC4を直列に接続している。これにより、コンバータトランス二次巻線N2側から見た漏れインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC4とによって二次側直列共振回路を形成する。この二次側直列共振回路の共振周波数は、上述した一次側直列共振コンデンサC2と漏れインダクタンスL1とによって定まる一次側直列共振周波数の周波数とほぼ等しくなるように本実施形態では設定されているが、二次側直列共振回路の共振周波数は、一次側直列共振周波数との関係では適宜、定め得るものである。又、二次側直列共振回路を設けることなく、部分電圧共振回路を二次側に設けるものとしても良いものである。
スイッチング素子Q1は、上述したようにMOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD1を内蔵する。又、一次側直列共振コンデンサC2の値は0.022μF(マイクロ・ファラッド)とし、一次側並列共振コンデンサCrの値は、1000pF(ピコ・ファラッド)とした。
又、二次側整流回路は、二次側直列共振コンデンサC4が直列接続されたコンバータトランス二次巻線N2に対して、高速で働く、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4で構成されるブリッジ整流器Doと平滑コンデンサCoを接続することで、ブリッジ型全波整流回路として形成される。このブリッジ型全波整流回路は、ブリッジ整流器Doの入力側の一端を、二次側直列共振コンデンサC4を介してコンバータトランス二次巻線N2の一端に接続し、ブリッジ整流器Doの入力側の他端をコンバータトランス二次巻線N2の他端に接続する。又、ブリッジ整流器Doの出力側の一端を、平滑コンデンサCoの一端に接続し、ブリッジ整流器Doの出力側の他端を平滑コンデンサCoの他端に接続する。ここで、二次側直列共振コンデンサC4の値は0.068μFとした。
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoと所定の値の基準電圧値との差に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じて主としてはスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。又、スイッチング周波数とともに一周期におけるスイッチング素子Q1のオンとなる時間の比率である時比率を変化させるようにしても良い。
このようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンスが変化し、コンバータトランスPITのコンバータトランス一次巻線N1からコンバータトランス二次巻線N2側に伝送される電力量、又、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoの大きさを基準電圧と一致させる動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
続いて、力率改善回路10の構成をより詳細に説明する。この力率改善回路10は、商用の交流電源ACから整流平滑電圧Eiを得るための整流平滑回路における整流電流経路に対して挿入されるようにして設けられる。実施形態の力率改善回路10は、力率改善ダイオードD1及びフィルタコンデンサCNを備えて成る。そして、力率改善ダイオードD1のカソードと力率改善巻線No’の一端とが接続され、力率改善ダイオードD1のアノードにブリッジ整流器Diの出力側の一端とフィルタコンデンサCNの一端とが接続されている。そして、フィルタコンデンサCNの他端と平滑コンデンサCiと力率改善巻線No’の他端とが相互に接続されている。ここで、フィルタコンデンサCNの値は1μF(マイクロ・ファラッド)程度とした。
さらに、続いて、アクティブ回路を用いた電圧クランプ回路について詳細に説明する。アクティブ回路のアクティブ素子としては、補助スイッチング素子Q2が用いられ、この補助スイッチング素子Q2を制御するためにコンバータトランスPITには、コンバータトランス一次巻線N1と直列であって電圧が加算される方向に、制御巻線Ngが設けられ、この制御巻線Ngからの電圧が抵抗Rg1と抵抗Rg2とで分圧されて補助スイッチング素子Q2として機能するMOSFETのゲートに加えられるようになされている。
補助スイッチング素子Q2のドレインには、電圧クランプ用コンデンサC3が接続されている。すなわち、電圧クランプ用コンデンサC3と補助スイッチング素子Q2とは直列接続回路を形成している。そして、この電圧クランプ用コンデンサC3と補助スイッチング素子Q2との直列接続回路は、チョークコイル巻線Noに並列に接続されている。電圧クランプ用コンデンサC3の値は、0.068μFとし、抵抗Rg1の値は220Ω(オーム)、抵抗Rg2の値は100Ωとしている。
なお、制御巻線Ngは、一次巻線N1から積み上げるように巻かれているが、補助スイッチング素子Q2として機能するMOSFETFETのソースがコンバータトランス一次巻線N1の一方の端子に接続されているので、巻線を積み上げるように接続されているのであり、別巻線として設けても良いものである。又、上記したような回路形態では、制御巻線Ngによって発生する電圧の極性は、スイッチング素子Q1がオフ(非導通)となる場合に補助スイッチング素子Q2がオン(導通)となるように接続されている。抵抗Rg1と抵抗Rg2の抵抗値の比率を変化させることによって、補助スイッチング素子Q2がオン(導通)となる時間が調整可能とされている。又、補助スイッチング素子Q2はボディダイオードDD2を内蔵しており、一方向きの電流に対しては、オン・オフの切り替え制御を可能とし、他方向の電流はオン状態とし、両方向に電流を通過させることができるようになされている。
次に、実施形態のスイッチング電源回路の各部の作用を順に説明する。説明を容易にする観点から、まず、力率改善回路及び電圧クランプ回路が無いものとして実施形態の要部の一つであるE級スイッチングコンバータについて説明し、つづいて、力率改善回路10の作用を説明し、さらに、電圧クランプ回路について説明をする。
E級スイッチングコンバータは、最も原理的には、一次側の一次側直列共振コンデンサC2と一次側並列共振コンデンサCrとコンバータトランス一次巻線に発生する漏れインダクタンスL1とチョークコイル巻線NoのインダクタンスLoと二次側に接続される負荷インピーダンスを一次側に換算した一次側換算負荷インピーダンスとスイッチング素子Q1(ボディダイオードDDを含む、以下の説明において特に断らない限り同様とする)とで構成される電圧電流共振コンバータに整流平滑電圧Eiが供給されるものと考えることができる。
このような構成のE級スイッチングコンバータは、交流的に共振周波数に支配を与える部分のみに注目すると、スイッチング素子Q1をオン・オフすることによって、以下の共振現象を引き起こす。まず、一次側の一次側直列共振回路よって電流共振が生じ、一次側並列列共振によって電圧共振が生じる。一方、チョークコイル巻線NoのインダクタンスLoの値は、この共振回路の共振周波数に対しては、比較的に大きなインピーダンスを有するようになされているので、インダクタンスLoを流れる電流は直流に近いものとなる。この結果、チョークコイル巻線Noの両端に生じる電圧及びコンバータトランスPITのコンバータトランス一次巻線N1に流れる電流のいずれもが正弦波にちかいものとなる。そして、コンバータトランスPITのコンバータトランス二次巻線N2に発生する電圧もほぼ正弦波となる。
このようにして、コンバータトランス二次巻線N2に発生する電圧を整流平滑する二次側では、ブリッジ整流回路によってコンバータトランス二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。又、二次側においても上述したように二次側共振回路が形成されているので、一次側共振周波数と二次側共振周波数とがちかい場合には、コンバータトランス二次巻線N2に発生する電圧は、より正弦波に近いものとなる。この二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。又、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
さらに、一次側の共振回路の共振周波数と二次側の共振回路の共振周波数の共振周波数がほぼ等しく設定されている場合には、一次側から二次側への周波数に対する電力電送特性は、僅かな周波数の変動によって極めて敏感なものとなる。すなわち、実施形態においては、E級スイッチングコンバータを用いることによって一次側の共振回路のQ値を高くし、さらに、二次側にもほぼ一次側と同様な共振周波数の直列共振回路を配することによって、僅かな周波数の違いによって電送する電力の量を大きく変化させることができるものである。このことは、二次側直流出力電圧Eoを所定の値に保つ場合においては、広範囲な負荷変動にもかかわらず、制御回路1がごく僅かに周波数を変化させる信号を、発振・ドライブ回路2を介してスイッチング素子Q1に供給すれば、安定した定電圧特性が得られること意味するものである。
このようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンスが変化し、コンバータトランスPITのコンバータトランス一次巻線N1からコンバータトランス二次巻線N2に伝送される電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoの値が所定値に保たれる。なお、本実施形態においては、一次側の共振回路の共振周波数と二次側の共振回路の共振周波数の共振周波数がほぼ等しく設定したが、上述したように相互の周波数の関係は適宜定め得るものである。
次に、実施形態の別の要部である力率改善回路10の作用を説明する。上述のE級スイッチングコンバータの作用の説明においては、力率改善回路10が存在しないものとして説明をしたが、実際には、力率改善回路10を実施形態のE級スイッチングコンバータは有する。
すなわち、上述した力率改善巻線No’の両端に生じる正弦波電圧のうち、一方向の電圧は力率改善ダイオードD1を介して平滑コンデンサCiに印加される。この結果、力率改善ダイオードD1に高周波(交流)電流が一次側のブリッジ整流器Diからの電流に加算され、最終的には交流入力電流IACとなるので、交流入力電流IACの導通角を広げる作用を生じることとなる。よって、力率が改善される。なお、力率改善巻線No’とチョークコイル巻線Noの巻線比は、電力仕様、電圧仕様に応じて最適なる力率となるように設定することができるものである。
さらに、つづけて、実施形態の又別の要部である電圧クランプ回路の作用を説明する。上述したように、スイッチング素子Q1がオフ(非導通)となる場合に補助スイッチング素子Q2がオン(導通)となるように接続されているので、スイッチング素子Q1がオフ(非導通)となった場合に生じる高電圧が、電圧クランプ用コンデンサC3を介して補助スイッチング素子Q2によってクランプされる。これによって、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものとできる。
(実施形態の要部の動作波形と測定データ)
以上、本実施形態のスイッチング電源回路の構成及び作用の説明をおこなって来たが、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路の要部の動作波形を図5に示し、測定データを図6及び図7に示す。
以上、本実施形態のスイッチング電源回路の構成及び作用の説明をおこなって来たが、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路の要部の動作波形を図5に示し、測定データを図6及び図7に示す。
図5は、入力交流電圧100V、最大負荷電力の300Wにおける力率改善回路10の主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。図5の上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図1を参照)、交流入力電流IAC(図1を参照)、電圧V2(図1を参照)、電流I3(図1を参照)、電圧V3(図1を参照)、二次側直流出力電圧Eo(図1を参照)のリップル成分であるΔEoの各々を示す。
図5の電圧V2及び電流I3の波形図において、斜線を施した部分は、スイッチング素子Q1のスイッチング波形と同じ周期でスイッチングしていることを示すものである。ここで、力率改善ダイオードD1に流れる電流I3は、上述したように、一方向の一次側直列共振電流及び一次側の整流電流の和に基づくものであり、この電流によって交流入力電流IACの流通期間が拡大されることを電流I3は表している。又、二次側直流出力電圧Eoは、所定値である175V(ボルト)を平均値として、交流入力電圧VACの半分の周期のピーク値50mVのリップル電圧が重畳する。
図6は、交流入力電圧VACの値が100Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から300W(最大負荷電力)の範囲での負荷変動に対する整流平滑電圧Ei、力率PF、及び交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。又、図7は、負荷電力を300W(最大負荷電力)一定とする負荷条件下で、交流入力電圧VACの値を85Vから144Vまで変化させた範囲における、整流平滑電圧Ei、力率PF及び電力変換効率ηAC→DCを示している。ここで、実線は、入力交流電圧が100Vの場合を示し、破線は、入力交流電圧が230Vの場合を示すものである。
図6、図7から読み取れる代表特性の一部を紹介すると、例えば、交流入力電圧VACが100V、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.80、負荷電力Poが300W〜15Wの範囲で力率PFの値は0.75以上である。又、交流入力電圧VACが230V、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.83、負荷電力Poが300W〜50Wの範囲で力率PFの値は0.75以上である。
上述した実施形態のスイッチング電源回路の一側面を要約すれば、交流電源ACからの交流電力を整流する一次側整流素子Diと平滑コンデンサCiとを具備して形成され、直流電力を生成する一次側整流回路と、直流電力がチョークコイル巻線Noの一端に印加されるチョーク装置PCCと、チョークコイル巻線Noの他端にコンバータトランス一次巻線N1の一端が接続される漏れインダクタンスL1を有するコンバータトランスPITと、コンバータトランス一次巻線N1の一端に交流電圧を印加するために接続されるスイッチング素子Q1と、コンバータトランス一次巻線N1の他端が一次側直列共振コンデンサC2と接続されて形成される一次側直列共振回路と、スイッチング素子Q1に一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続されて形成される一次側並列共振回路と、スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路2と、コンバータトランス二次巻線N2に接続される二次側整流回路によって出力される二次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路1と、チョーク装置PCCに巻装され、チョークコイル巻線Noと疎に結合される力率改善巻線No’と一次側整流素子Diとの間に接続されて、力率改善巻線No’に発生する一方向のパルス電圧を平滑コンデンサCiに付与する力率改善ダイオードD1を具備する力率改善回路と、チョークコイル巻線Noに並列に接続され、スイッチング素子Q1がオフのときにオンとされる補助スイッチング素子Q2と電圧クランプ用コンデンサC3との直列接続回路と、を備えるものである。
このような実施形態のスイッチング電源回路では、図17に背景技術として示すスイッチング電源回路の場合よりも電力変換効率ηAC→DCが向上している。又、実施形態のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、図17を参照した説明からも分かるように、スイッチング素子Q103と、これらを駆動するための力率・出力電圧制御用IC120等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、フィルタコンデンサCN、力率改善ダイオードD1及び力率改善巻線No’を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。これにより、力率改善機能を有する電源回路として、図17に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。又、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
又、実施形態のスイッチング電源回路では、E級スイッチングコンバータ及び力率改善回路10の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図17に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。特に、E級スイッチングコンバータに入力される電流を直流電流にちかづけることができるのでスイッチングノイズのレベルは非常に小さなものとできる。
さらに加えて、実施形態のスイッチング回路においては、一次側の直列共振回路及び一次側の並列共振回路とともに二次側の直列共振回路を備えるので極めて僅かな周波数の変化によって二次側直流出力電圧Eoを所定電圧に維持することができ、ノイズフィルタの設計も容易なものとできる。このような理由から、1個のコモンモードチョークコイルCMCと2個のアクロスコンデンサCLから成る1段のノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。又、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、1個のフィルタコンデンサCNのみにより十分な対策が可能である。
又、スイッチング素子Q1と二次側の整流ダイオードDo1及び整流ダイオードDo2、さらに、力率改善ダイオードD1などもスイッチング素子Q1に同期して動作するものである。したがって、アース電位としては、図17の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
(二次側回路の変形例)
実施形態において置き換え可能な二次側回路の変形例を図8ないし図12に示す。図8に示す二次側整流回路は、倍電圧全波整流回路を構成する。すなわち、コンバータトランス二次巻線についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にしてコンバータトランス二次巻線部N2A、コンバータトランス二次巻線部N2Bに2分割する。コンバータトランス二次巻線部N2A、コンバータトランス二次巻線部N2Bには、同じ巻数(ターン数)が設定される。コンバータトランス二次巻線N2のセンタータップは、二次側アースに接続される。又、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2A側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC4を直列に接続し、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2B側の端部に対しても同一容量の二次側直列共振コンデンサC4を直列に接続する。これにより、コンバータトランス二次巻線部N2Aの漏れインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC4の容量から成る第1の二次側直列共振回路と、コンバータトランス二次巻線部N2Bの漏れインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC4の容量から成る第1の二次側直列共振回路と略等しい共振周波数を有する第2の二次側直列共振回路とが形成される。
実施形態において置き換え可能な二次側回路の変形例を図8ないし図12に示す。図8に示す二次側整流回路は、倍電圧全波整流回路を構成する。すなわち、コンバータトランス二次巻線についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にしてコンバータトランス二次巻線部N2A、コンバータトランス二次巻線部N2Bに2分割する。コンバータトランス二次巻線部N2A、コンバータトランス二次巻線部N2Bには、同じ巻数(ターン数)が設定される。コンバータトランス二次巻線N2のセンタータップは、二次側アースに接続される。又、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2A側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC4を直列に接続し、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2B側の端部に対しても同一容量の二次側直列共振コンデンサC4を直列に接続する。これにより、コンバータトランス二次巻線部N2Aの漏れインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC4の容量から成る第1の二次側直列共振回路と、コンバータトランス二次巻線部N2Bの漏れインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC4の容量から成る第1の二次側直列共振回路と略等しい共振周波数を有する第2の二次側直列共振回路とが形成される。
そして、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2A側の端部を、二次側直列共振コンデンサC4の直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。又、コンバータトランス二次巻線N2におけるコンバータトランス二次巻線部N2B側の端部を、二次側直列共振コンデンサC4の直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。そして、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。又、整流ダイオードDo2、整流ダイオードDo4の各アノードの接続点は二次側アースに接続する。
このようにして、コンバータトランス二次巻線部N2A,二次側直列共振コンデンサC4、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、及び平滑コンデンサCoから成る、第1の二次側直列共振回路を備える第1の倍電圧半波整流回路と、コンバータトランス二次巻線部N2B,二次側直列共振コンデンサC4、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、及び平滑コンデンサCoから成る、第2の二次側直列共振回路を備える第2の倍電圧半波整流回路とが形成されることになる。このようにして平滑コンデンサCoに対しては、コンバータトランス二次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期では、コンバータトランス二次巻線部N2Bの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC4の両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期では、コンバータトランス二次巻線部N2Aの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC4の両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、コンバータトランス二次巻線部N2A、コンバータトランス二次巻線部N2Bの誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られる。
図9に示す二次側整流回路は、倍電圧半波整流回路を構成する。すなわち、コンバータトランス二次巻線N2の漏れインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC4の容量から成る二次側直列共振回路とが形成される。そして、コンバータトランス二次巻線N2に発生される一方の極性の電圧は、整流ダイオードDo2を介して二次側直列共振コンデンサC4を充電し、他方の極性の電圧は、整流ダイオードDo1を介してコンデンサCoを充電する。二次側直列共振コンデンサC4に充電された電圧とコンデンサCoに充電された電圧とは加算されるので、コンバータトランス二次巻線N2の誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られる。
図10に示す二次側整流回路は、部分電圧共振コンデンサC5とコンバータトランス二次巻線N2の漏れインダクタンス成分で部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4で構成されるブリッジ整流素子を用いた全波整流回路である。
図11に示す二次側整流回路は、部分電圧共振コンデンサC5とコンバータトランス二次巻線部N2A及びコンバータトランス二次巻線部N2Bの漏れインダクタンス成分で部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1及び整流ダイオードDo2で構成されるセンタータップ両波整流回路である。
図12に示す二次側整流回路は、部分電圧共振コンデンサC5とコンバータトランス二次巻線N2の漏れインダクタンス成分で部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1及び整流ダイオードDo2で構成される倍電圧半波整流回路である。
上述した二次側回路の変形例において、整流回路を倍電圧整流回路とした場合には、いずれの場合にも二次側巻線で発生する電圧に応じた二倍の電圧値の直流電圧を得ることができ、二次側に二次側直列共振コンデンサC4を設けて直列共振回路を形成する場合、部分電圧共振コンデンサC5を設けて部分電圧共振回路を形成する場合のいずれも、直列共振回路、又は、部分電圧共振回路を設けない場合(二次巻線にこれらの回路を接続すること無く、二次巻線と整流素子と平滑コンデンサから構成される通常の二次側整流回路の場合)に較べて、損失が低減できるので、効率が向上する。
なお、これまでに説明した実施形態の電源回路の具体的設計例は、交流入力電圧VACは、100Vの商用の交流電源が入力されることを前提としているのであるが、本発明は、交流入力電圧VACの値として、特に限定があるものではない、例えば、200Vの商用の交流電源入力に対応した設計として場合にも、本願発明に基づいた構成とすることで同様の効果が得られる。又、例えば、一次側電圧共振形コンバータの細部の回路形態や、二次側直列共振回路を含んで形成する二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。又、スイッチング素子については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。又、上記各実施形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、10 力率改善回路、AC 商用の交流電源、Cr 一次側並列共振コンデンサ、C2 一次側直列共振コンデンサ、C3 電圧クランプ用コンデンサ、C4 二次側直列共振コンデンサ、C5 部分共振コンデンサ、CL アクロスコンデンサ、CMC コモンモードチョークコイル、CN フィルタコンデンサ、Ci、Co 平滑コンデンサ、CR1、CR2 コア、D1 力率改善ダイオード、Do1、Do2、Do3,Do4 整流ダイオード、DD、DD1、DD2 ボディダイオード、Di、Do ブリッジ整流器、Ei 整流平滑電圧、Eo 二次側直流出力電圧、G、G1、G2、G3 ギャップ、I1、I2、I3 電流、IAC 交流入力電流、PCC チョーク装置(チョークコイル)、LFT ラインフィルタトランス、N1 コンバータトランス一次巻線(一次巻線)、N2 コンバータトランス二次巻線(二次巻線)、N2A、N2B コンバータトランス二次巻線部(二次巻線部)、Ng 制御巻線、No チョークコイル巻線、No’ 力率改善巻線、PF 力率、PIT コンバータトランス、Q1 スイッチング素子、Q2 補助スイッチング素子、Rg1、Rg2 抵抗、V1、V2、V3 電圧、VAC 交流入力電圧、ηAC→DC 電力変換効率
Claims (4)
- 交流電源からの交流電力を整流する一次側整流素子と平滑コンデンサとを具備して形成され、直流電力を生成する一次側整流回路と、
前記直流電力がチョークコイル巻線の一端に印加されるチョーク装置と、
前記チョークコイル巻線の他端にコンバータトランス一次巻線の一端が接続される漏れインダクタンスを有するコンバータトランスと、
前記コンバータトランス一次巻線の前記一端に交流電圧を印加するために接続されるスイッチング素子と、
前記コンバータトランス一次巻線の他端が一次側直列共振コンデンサと接続されて形成される一次側直列共振回路と、
前記スイッチング素子に一次側並列共振コンデンサが並列に接続されて形成される一次側並列共振回路と、
前記スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路と、
前記コンバータトランス二次巻線に接続される二次側整流回路によって出力される二次側直流出力電圧の値を所定の値とするような制御信号を前記発振・ドライブ回路に供給する制御回路と、
前記チョーク装置に巻装され、前記チョークコイル巻線と疎に結合される力率改善巻線と前記一次側整流素子との間に接続されて、前記力率改善巻線に発生する一方向のパルス電圧を前記平滑コンデンサに付与する力率改善ダイオードを具備する力率改善回路と、
前記チョークコイル巻線に並列に接続され、前記スイッチング素子がオフのときにオンとされる補助スイッチング素子と電圧クランプ用コンデンサとの直列接続回路と、
を備えるスイッチング電源回路。 - 前記コンバータトランスのコンバータトランス二次巻線に接続される二次側整流回路は、二次側直列共振コンデンサを有する全波ブリッジ整流回路、倍電圧全波回路又は倍電圧半波回路のいずれかである請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 前記コンバータトランスのコンバータトランス二次巻線に接続される二次側整流回路は、部分電圧共振コンデンサを有する全波ブリッジ整流回路、センタータップ両波整流回路又は倍電圧半波回路のいずれかである請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 前記コンバータトランス及び前記チョーク装置は、E字型フェライト磁芯を組み合わせ、又は直交型フェライト磁心を組み合わせて、一体形成されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005334138A JP2007143304A (ja) | 2005-11-18 | 2005-11-18 | スイッチング電源回路 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2005334138A Pending JP2007143304A (ja) | 2005-11-18 | 2005-11-18 | スイッチング電源回路 |
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-
2005
- 2005-11-18 JP JP2005334138A patent/JP2007143304A/ja active Pending
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