JP2007008066A - 感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】搬送性に優れ、高い帯電防止性能を有する感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム1と、該熱可塑性樹脂フィルム1の少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜2及び多孔性繊維膜3の少なくともいずれかを含む多孔性支持体とを有してなり、該多孔性支持体が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。
【選択図】図3

Description

本発明は、搬送性に優れ、高い帯電防止性能を有する感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法に関する。
赤外線、サーマルヘッド等を用いて原稿を穿孔製版し、これらを印刷用の版として使用する印刷方法は穿孔印刷として知られ、簡便な印刷方法として広く普及している。これらの中でも、サーマルヘッドを使用した穿孔方式はデジタル製版と呼ばれ、地汚れの発生が少ないこと、文字や図形のデジタル処理が可能なこと、簡便なこと等の理由により、現在では孔版方式の主流になっている。このような製版装置においては、近年、小さな文字から写真のハーフトーンにまで対応した解像度の高い、高品質への要求が高まり、サーマルヘッドの微小化、高精細化等の対応がなされている。また、感熱孔版印刷用マスターにおいては、使用されている熱可塑性フィルム、繊維から成る多孔性繊維膜等も薄くする対応がなされている。しかし、こうした繊維からなる多孔性繊維膜を支持体として用いた感熱孔版印刷用マスターは、以下の理由により印刷ムラが発生しやすいという問題があった。
(1)接着剤を用い多孔性繊維膜とフィルムを貼り合わせることにより、接着剤が多孔性繊維膜の繊維間に鳥の水掻きのように集積し、その部分がサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過が妨げられる。
(2)多孔性繊維膜の繊維自体がインキの通過を妨げる。
(3)多孔性繊維膜の繊維目によりフィルム面の平滑性が低下し、サーマルヘッドとの密着が悪く未穿孔部ができる。
そこで、前記問題を解決すべく、このような感熱孔版印刷用マスターについて、種々の提案がなされている。例えば、多孔性支持体として、繊度1デニール以下の合成繊維からなる薄葉紙を用いることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案では、前記課題を解決するには十分なものではなかった。また、熱可塑性樹脂フィルムに実質的に閉じた形状の放射線硬化型樹脂パターンをグラビア、オフセット、フレキソ等の印刷法により形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、印刷法では、樹脂パターンの線幅を50μm以下にすることは困難であり、印刷部が穿孔できないため、印刷ムラが生じるという問題がある。
また、水分散性ポリマーと、コロイダルシリカとを含有する分散液を熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布し、乾燥させた感熱孔版印刷用マスターが提案されており、このマスターと粘度の低いインクジェット用インクとを組み合わせて使用している(特許文献3参照)。しかし、この提案では、多孔層の開孔径が小さく、従来の孔版印刷用インキではインキの通過が悪く、十分な印刷濃度が得られないという問題がある。
また、多孔性支持体を用いない実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなる感熱孔版印刷用マスターが提案されている(特許文献4参照)。この提案によれば、熱収縮率が高く、厚み3μm以下のフィルムではサーマルヘッドによる穿孔性も良好であり、印刷品質は優れている。
しかし、この感熱孔版印刷用マスターは、コシ(stiffness)が弱く、印刷機での搬送が困難であり、搬送性をよくするため、厚い熱可塑性樹脂フィルムを使用するとサーマルヘッドによる穿孔性が低下して、印刷ムラが発生してしまうという問題がある。
また、熱可塑性樹脂フィルムの片面に流動体を塗布し、乾燥させてなる多孔性樹脂膜を有する感熱孔版印刷用マスターが提案されている(特許文献5及び6参照)。更に、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜を有し、その表面に補強の目的で多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔版印刷用マスターが提案されている(特許文献7及び8参照)。
しかし、これらの感熱孔版印刷用マスターは、確かに、上記(1)〜(3)の問題点はなく、従来のマスターよりは優れているが、従来のマスターのようなコシがないため、搬送時に発生した静電気で感熱孔版印刷用マスターが印刷機内壁面に貼り付き、スムーズな搬送、印刷ドラムへの巻装が阻害されるという問題が発生しやすくなっている。搬送時の不具合を解決するために低分子系界面活性剤タイプの帯電防止剤が使用されているのは公知であるが、低粘度であるため、多孔性支持体の最表面層だけに塗布することが非常に困難であり、ロール状にした際に、帯電防止剤の移動などが起こり皮膜連続性の欠如が起こる。その結果、十分な帯電防止性能を発揮することが不可能となり、不具合を生じる。
また、多孔性繊維膜は空隙率が高いため、帯電防止剤を塗布する際に裏抜けという現象を起こし、塗工機の搬送ロールを汚してしまうという欠点を有している。その結果、ロールに付着した材料によりタックが発生し、ロール上に塗布基材(多孔性繊維膜や多孔性樹脂膜)の一部が付着してしまうという問題が発生する。
したがって、印刷機内での静電気による搬送不良及び印刷ドラムへの巻装不良を発生させることなく、更には、帯電防止性能の劣化がなく、かつ、ロールなどへの裏抜けを防止でき、塗布基材(多孔性繊維膜や多孔性樹脂膜)の一部が付着することがない感熱孔版印刷用マスターは、未だ優れたものが提供されていないのが現状である。
特開平3−193445号公報 特開昭62−198459号公報 特開平3−240596号公報 特開昭54−33117号公報 特開平8−332785号公報 特開平10−24667号公報 特開平10−147075号公報 特開平10−236011号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、印刷機内での静電気による搬送不良及び印刷ドラムへの巻装不良を発生させることなく、更には、帯電防止性能の劣化がなく、かつ、ロールなどへの裏抜けを防止でき塗布基材の一部が付着することがない感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を帯電防止剤として用いることにより、印刷機内での静電気による搬送不良及び印刷ドラムへの巻装不良を生じることなく、更には、帯電防止性能の劣化がなく、かつ、ロールなどへの裏抜けを防止できることを知見した。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体とを有してなり、該多孔性支持体が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。該<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含む多孔性支持体を設けることにより、搬送時に起きる静電気を除電するための帯電防止機能を十分持っており、静電気による不具合が無く、搬送時に必要なコシも付与することができ、更には、ロールなどへの裏抜けの防止が可能である。
<2> 多孔性支持体が多孔性樹脂膜であり、該多孔性樹脂膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された前記<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
<3> 多孔性支持体が多孔性繊維膜であり、該多孔性繊維膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された前記<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
<4> 多孔性支持体が多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を有してなり、該多孔性繊維膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された前記<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
<5> 熱可塑性マトリックス樹脂が芳香族ビニル系樹脂である前記<1>及び<4>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
<6> 導電性物質がカチオン性を示す前記<1>から<5>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<6>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質がカチオン性を示すことにより、搬送時に発生する静電気を防止でき、正常な搬送が可能である。
<7> 導電性物質が分子量100〜2,000のポリマーである前記<1>から<6>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
<8> マトリックス樹脂と導電性物質が電子線及び紫外線の少なくともいずれかにより架橋された前記<1>から<7>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<8>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、架橋により、塗工後の巻き取り時においての張り付きが生じることがなく、十分な強度を得ることが可能である。また、電子線によれば、高速硬化が可能であるため、生産性の向上を図ることができる。一方、紫外線によれば、設備が安価であり、費用面での利点がある。
<9> 熱可塑性マトリックス樹脂の50〜110℃での粘度が300〜3,000mPa・sである前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<9>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、熱可塑性マトリックス樹脂の50〜110℃での粘度が300〜3,000mPa・sであるため、塗工時における基材の巻きこみなどの不具合を生じることがなく、正常な塗工が可能である。
<10> 熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質の乾燥付着量が0.05〜1.5g/mである前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<10>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性材料の乾燥付着量が0.05〜1.5g/mであるため、良好な印刷品質が得られ、かつ、搬送時に発生する静電気を防止でき、正常な搬送が可能である。
<11> 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体を形成する多孔性支持体形成工程と、該多孔性支持体の表面に、50〜110℃での粘度が300〜3,000mPa・sである熱可塑性マトリックス樹脂、及び導電性物質を含む導電性材料を熱融着させる熱融着工程とを含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<11>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、導電性材料を熱融着させることから、塗工時に導電性材料の粘度を下げて塗工性を向上させることができる。また、該導電性材料を該多孔性支持体表面に塗布可能であり、裏抜けを防止することができる。更には、溶剤等は一切不要であり、乾燥工程も不要であるので、環境負荷の低減が可能である。
<12> 熱融着工程後に、導電性材料に電子線及び紫外線の少なくともいずれかを照射することにより、マトリックス樹脂と導電性物質を架橋させる架橋工程を更に含む前記<11>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<12>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、架橋により、塗工後の巻き取り時においての張り付きが生じることがなく、十分な強度を得ることが可能である。また、電子線によれば、高速硬化が可能であるため、生産性の向上を図ることができる。一方、紫外線によれば、設備が安価であり、費用面での利点がある。
<13> 溶剤を含有しない前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。水系及び溶剤系の材料処方となる従来の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、充分な乾燥工程が必要であり、環境負荷が大きいという問題があったが、該<13>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、溶剤を含有しないため、乾燥工程が不要であり、大気中に有害物質を放出する恐れもないなどの環境負荷の低減が可能である。
本発明によると、従来からの課題を解決でき、印刷機内での静電気による搬送不良及び印刷ドラムへの巻装不良を発生させることなく、更には、帯電防止性能の劣化がなく、かつ、ロールなどへの裏抜けを防止でき塗布基材の一部が付着することがない感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法を提供できる。
(感熱孔版印刷用マスター)
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
ここで、前記感熱孔版印刷用マスターは、例えば、図1に示すように熱可塑性樹脂フィルム1の面上に有してなる多孔性支持体が多孔性樹脂膜2であり、該多孔性樹脂膜2表面に熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含む態様、及び、図2に示すように前記多孔性支持体が多孔性繊維膜3であり、該多孔性繊維膜3表面に熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含む態様が好ましく、図3に示すように、前記多孔性支持体が多孔性樹脂膜2上に多孔性繊維膜3を有してなり、該多孔性繊維膜3表面に熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含む態様がより好ましい。
なお、前記多孔性支持体は、表面の少なくとも一部が、前記熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆されていればよい。
<熱可塑性樹脂フィルム>
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、材料、厚み、大きさ、形状などに特に制限はなく、感熱孔版印刷用マスターに通常使用されている公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記材料としては、紙、合成紙、樹脂、アルミニウム箔、これらの組み合わせなどが挙げられるが、熱可塑性樹脂が好適であり、該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、などが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体、などが挙げられ、これらの中でも、穿孔感度を上げる点から、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体が特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の滑剤、ポリシロキサン等の消泡剤などを配合することができる。更に、易滑性を付与する目的で、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ等の無機粒子;アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子などを配合したり、界面活性剤を塗布する方法等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、二軸延伸した樹脂フィルムが好ましく、該二軸延伸樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム、などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、0.1〜5.0μmが好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、薄すぎて成膜安定性が悪化したり、耐刷性が低下することがあり、5.0μmを超えると、穿孔性が低下することがある。
<多孔性支持体>
前記多孔性支持体は、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
−多孔性樹脂膜−
前記多孔性樹脂膜は、膜の内部及び表面に多数の空隙を有する構造を有するものであれば、空隙の形状、平均孔径、空隙率などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記空隙の形状としては、厚み方向に連続構造であるものが好ましく、例えば、不定形の棒状、球状、又は枝状に連結した(和紙のような短い構成単位が絡み合っているものではなく、印刷などで形成される単純な形状の組み合わせでもない)複雑な三次元構造を有するもの、いわゆる糸瓜に似た構造、ハニカム状構造、蜂の巣状構造などが好適である。
前記空隙の平均孔径は2〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。前記平均孔径が2μm未満であると、インキ通過性が悪く、そのため、十分なインキ通過量を得るために低粘度インキを用いれば、画像にじみや印刷中に印刷ドラムの側部や巻装されているマスターの後端から印刷インキがしみ出す現象が発生する。また、多孔性樹脂膜内の空膜率が低くなることが多く、サーマルヘッドによる穿孔を阻害しやすくなることがある。一方、平均孔径が50μmを超えると、多孔性樹脂膜によるインキの抑制効果が低くなり、印刷時に印刷ドラムとフィルムの間のインキが過剰に押し出され、裏汚れやにじみ等の不具合が発生することがある。特に、多孔性樹脂膜内の空隙の平均孔径が20μm以下である場合、多孔性樹脂膜層が厚い程印刷インキが通りにくくなるので、この層の厚みによってインキの印刷用紙への転写量を制御することができる。そして、前記多孔性樹脂膜の厚みが不均一であると印刷むらを生じることがあるので、厚みは均一であることが望ましい。
前記多孔性樹脂膜の厚みは、2〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。前記厚みが2μmに満たない場合には、サーマルヘッドによる穿孔後に穿孔部の背後に多孔性樹脂膜が残りにくく、インキ転写量が制御されずに印刷物の裏汚れが発生しやすい。また、多孔性樹脂膜のインキ転写量抑制効果は膜が厚いほど大きく、印刷時の紙へのインキ転写量は多孔性樹脂膜の厚みによって調節できるが、厚みが100μmを超えるとインキ通過性が悪くなることがある。
前記多孔性樹脂膜の密度は、通常0.01〜1g/cmが好ましく、0.1〜0.7g/cmがより好ましい。前記密度が0.01g/cm未満であると、膜の強度が不足し、また膜自体も壊れやすいことがある。一方、前記密度が1g/cmを超えると、印刷時のインキ通過性が悪くなることがある。
前記多孔性樹脂膜の付着量は、0.1〜35g/mが好ましく、0.5〜25g/mがより好ましく、1〜11g/mが更に好ましい。前記付着量の増大はインキの通過を妨げて画質を悪くし、0.1g/m未満であると、インキ転写量の制御が困難となり、35g/mを超えると、インキの通過を妨げて画像を悪くすることがある。
前記構造を有する多孔性樹脂膜の第1の形成方法としては、例えば、特開平10−24667号公報に開示されているように、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒と貧溶媒がたがいによく溶ける場合に用いられ、樹脂とその樹脂に対する良溶媒と貧溶媒を含む流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に半析出状態で塗布し、乾燥して形成する。この樹脂、その良溶媒、及び貧溶媒を含む流動体は乾燥過程において、良溶媒が先に蒸発し、相対的に貧溶媒が増加し、樹脂の濃縮等により樹脂が析出して、三次元網状構造を形成する。この第1の形成方法では、一般的に糸瓜状構造の多孔性樹脂膜が形成され、エーテルやアセトン等、蒸発の速い溶剤を選択して生産性を高めることができる。
前記多孔性樹脂膜を構成する樹脂材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー等のビニル系樹脂;ポリブチレン樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂;アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロース等のセルロース誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の目的であるインキ通過性の優れる多孔性樹脂膜を形成するためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
前記多孔性樹脂膜には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、例えば、フィラー、帯電防止剤、スティック防止剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
前記フィラーは、多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシ等を調節するために添加される。ここで、前記フィラーとは、顔料、紛体や繊維状物質も含まれる概念であり、これらの中でも、特に、針状、板状、又は繊維状のフィラーが好ましい。
前記フィラーとしては、例えば、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノライト、石膏繊維等の鉱物系針状フィラー;非酸化物系針状ウイスカー、複酸化物系ウイスカー等の人工鉱物系針状フィラー;マイカ、ガラスフレーク、タルク等の板状フィラー;カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の天然又は合成の繊維状フィラーなどが挙げられる。
前記顔料としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等からなる有機ポリマー粒子;カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料が使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの添加量は、前記樹脂100質量部に対し5〜200質量部が好ましい。前記フィラーの添加量が5質量部未満であると、カールが発生しやすくなることがあり、200質量部を超えると多孔性樹脂膜の強度が低下することがある。
前記多孔性樹脂膜の第2の形成方法としては、多孔性樹脂膜を構成する樹脂の良溶媒と貧溶媒がたがいに混ざり合わない場合に用いられ、例えば、特開平11−23885号公報に開示されているように、W/O型(油中水型)エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成する方法である。このW/O型エマルションから形成される多孔性樹脂膜は一般的にハニカム状構造、蜂の巣状の三次元網状構造を有している。この第2の形成方法により形成される多孔性樹脂膜は、W/O型エマルションを主体とする流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して形成されるものであり、主として水の部分が乾燥後、インクが通過する孔となり、溶剤中の樹脂(フィラー、乳化剤等の添加物が含まれていてもよい)が構造体となる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系誘導体、これらの変性物、又はこれらの共重合体などが挙げられ、これらの中でも、ビニルブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂が特に好ましい。
前記W/O型エマルションの形成には、比較的親油性の強いHLBが4〜6の界面活性剤が有効であるが、水相にもHLBが8〜20の界面活性剤を使用するとより安定で均一なW/O型エマルションが得られる。高分子界面活性剤の使用も、より安定で均一なエマルションを得る方法の一つである。また、水系にはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの増粘剤の添加がエマルションの安定化に有効である。
前記多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、及びコシ等を調節するために、多孔性樹脂膜中には、更に必要に応じてフィラーなどの添加剤を添加することができる。その中で特に針状、板状、もしくは繊維状のフィラーが好ましい。なお、フィラーとしては、前記第1の形成方法と同様なものから適宜選択することができる。
前記第1及び第2形成方法における多孔性樹脂膜の乾燥後付着量は0.3〜30g/mが好ましい。0.3g/mより小さいとインキ付着量が制御されずに印刷物の裏移りが悪くなることがある。多孔性樹脂膜の感熱フィルムとは反対側にインキ通過性支持体として多孔性薄葉紙を接着剤などで貼り合わせない場合にはマスター自体のコシが弱くなり扱いが困難なので多孔膜自体の乾燥後付着量は20g/m以上であることがより好ましい。一方、付着量が30g/mを超えるとインクの通過を阻害して画像が悪くなることがある。
−多孔性繊維膜−
前記多孔性繊維膜としては、材料、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記材料としては、例えば、ガラス、セピオライト、各種金属等の鉱物繊維;羊毛、絹等の動物繊維;綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプ等の天然繊維;スフ、レーヨン等の再生繊維;ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成繊維;カーボンファイバー等の半合成繊維;ウィスカ構造を有する無機繊維などの薄葉紙が挙げられる。これらの中でも、天然繊維を含むものが好適である。
前記多孔性繊維膜は、ポリエステルやアクリルなどの合成樹脂で形成された合成繊維を用いることにより強度や吸湿による寸法変化、及び強度低下などの不具合を防止することが期待できる。坪量及び厚みには望ましい範囲があるがこれに限定されるものではない。
また、前記多孔性繊維膜は、合成繊維と天然繊維との複合繊維を含有することが好ましい。この場合、天然繊維を使用することによるコスト低減が大幅なメリットとなる。しかし、天然繊維を複合させることにより、強度低下が懸念されるので、強度低下の影響が無視できる範囲での配合比率として、合成繊維は95〜30%で天然繊維は5〜70%が好ましく、合成繊維は95〜60%で天然繊維は5〜40%がより好ましい。
前記多孔性繊維膜を構成する繊維状物質の太さ(例えば、直径)、長さ、形状については、特に制限はなく、熱可塑性樹脂フィルムの穿孔直径、フィルムの厚みなどに応じて適宜選択することができ、前記繊維状物質の直径(太さ)は20μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。前記直径が1μm未満であると引張り強度が弱くなることがあり、20μmを超えるとインキ通過が妨げられて繊維による白抜け画像が生じることがある。
前記繊維状物質の長さは0.1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。前記繊維状物質の長さが0.1mm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、10mmを超えると、分散を均一に行うのが困難になることがある。
前記多孔性繊維膜の坪量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜20g/mが好ましく、3〜10g/mがより好ましい。前記坪量が20g/mを超えると、インキの通過性が低下して画像鮮明性が低下することがあり、1g/m未満であると、インキ透過性支持体として十分な強度が得られないことがある。
前記多孔性繊維膜としては、市販品であってもよいし、適宜形成したものであってもよい。なお、前記多孔性繊維膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特公昭49−18728号公報、特公昭49−8809号公報などに記載の方法により形成することができる。また、繊維の態様としても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、短繊維を湿式抄紙した抄造紙、不織布、織物、スクリーン紗などが挙げられ、これらの中でも生産性、コスト面より抄造紙が好ましい。
<導電性材料>
前記導電性材料としては、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−熱可塑性マトリックス樹脂−
前記マトリックス樹脂は、熱可塑性を有するマトリックス樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱可塑性を有することは必要である。熱可塑性を有しないと、熱融着ができなくなり、更には多孔性支持体において裏抜けが起こり、ロール汚れ及びロールからのタック引きなどが発生し、環境性及び生産性の観点からも好ましくない。
前記熱可塑性マトリックス樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、芳香族ビニル系樹脂、これらと他の基幹モノマーとの共重合体、汎用エンジニアリングプラスチックス、スーパーエンジニアリングプラスチックス、などが挙げられる。これらの中でも、形成材料などとしての用途が多く、商品の寿命が長い樹脂に好適であることから、芳香族ビニル系樹脂が好ましい。
前記芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、などが挙げられる。
ポリエチレンと他の基幹モノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、などが挙げられる。
前記汎用エンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、などが挙げられる。
前記スーパーエンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、などが挙げられる。
前記導電性材料の粘度は、50℃〜110℃において300〜3,000mPa・sであることが好ましく、300〜1,000mPa・sであることがより好ましい。前記粘度が300mPa・s未満であると、裏抜けが生じて塗工ロール上に多孔性支持体の一部が付着してしまうことがある。また、前記粘度が3,000mPa・sを超えると、印刷ドラムへの巻装が阻害されることがある。
−導電性物質−
前記導電性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電性材料がカチオン性を示すことにより、確実に搬送時に起きる静電気による不具合を無くし、搬送性を保つ観点から、カチオン性重合体が好ましい。
前記カチオン性重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エレガン264WAX(日本油脂株式会社)などが挙げられる。
前記導電性物質の分子量は、特に制限はないが、多孔性支持体に効率よく分散させる観点から、100〜2,000であることが好ましく、300〜1,000がより好ましい。
前記導電性物質の熱可塑性マトリックス樹脂に対する配合量は、特に制限はないが、熱可塑性マトリックス樹脂100質量部に対し、1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。前記配合量が1質量部未満であると、帯電防止効果が得にくいことがあり、20質量部を超えると、得られる導電性材料の、熱可塑性、カチオン性等の各種特性が低下することがある。
導電性材料を熱可塑性樹脂に内部添加する方法において、低分子型の帯電防止剤を熱可塑性樹脂に内部添加する方法は、帯電防止剤を樹脂原料に混合したり、成形時に混合したりして使用できるため、製造工程が簡単になる。しかし、高い帯電防止性能を発揮させるためには添加量を多くする必要があり、樹脂の機械的特性を損なうことがある。さらに、帯電防止剤のブリードアウトによる機能発現であるため、帯電防止性能が水洗や摩擦等に容易に失われて、永久的な帯電防止性を保持させることが困難である。一方、四級アンモニウム塩基を有するカチオン性化合物が各種熱可塑性樹脂の有効な帯電防止剤であることはすでに知られている。これらのカチオン性重合体も他の高分子型帯電防止剤と同様に、耐久性は良好であったが、十分な帯電防止効果を得る為には添加量を多くする必要がありコスト的に高くなるなどの問題を抱えており、十分満足できるものではなかった。本発明で使用するカチオン性重合体は各種熱可塑性樹脂に対する分散性に優れ、該カチオン性重合体を熱可塑性樹脂の帯電防止剤として用いた場合には、少量の添加により帯電防止効果を発揮させることが可能である。該カチオン性重合体を含有している熱可塑性樹脂組成物は、表面固有抵抗率が低く、水洗いや布拭きなどによる性能の低下が小さく永久的な帯電防止能力を有していることから感熱孔版印刷用マスターの支持体表面に塗布する材料としては最も好ましい。
−その他の成分−
前記導電性材料には、紫外線による架橋を可能にするために、光重合開始剤を用いることもできる。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ベンゾフェノン、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、などが挙げられる。
前記導電性材料を多孔性支持体に含有させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該多孔性支持体に付着させることが好ましい。
付着させる該導電性材料を含有する膜(例えば、多孔性繊維膜、多孔性樹脂膜)における含有量(付着量)は、0.05〜1.5g/mであることが好ましく、0.2〜0.9g/mであることがより好ましい。前記含有量が、0.05g/m未満であると、搬送時に生じる静電気を除電しきれなく、更には十分な帯電防止性能が得られないため搬送不良となることがあり、1.5g/mを超えると、インキ通過性を阻害してしまい、不鮮明な画像となることがある。
前記乾燥付着量を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性材料塗工前の全重量を測定しておき、かつ、導電性材料塗工後の全重量を測定したならば、塗工後の全重量と塗工前の全重量との差を全塗工面積で除することにより、湿潤付着量(g/m)を求めた後、該湿潤付着量に塗布液固形分を乗ずることにより、乾燥付着量を算出する方法(以下、単に「液減量法」という。)が挙げられる。
また、前記導電性材料において、熱可塑性マトリックス樹脂と導電性物質は、多孔性繊維膜に塗布した場合には、塗工後の巻き取り時においての張り付きが生じることがなく、十分な強度を得ることが可能であることから、電子線及び紫外線の少なくともいずれかにより架橋されることがより好ましい。
前記電子線により架橋させる場合には、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、エレクトロカーテン型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いて行われ、電子線の照射エネルギーとしては、50〜1,000keVが好ましく、100〜300keVがより好ましい。
前記紫外線により架橋させる場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ、無電極放電ランプDバルブなどの光源を用いることが好ましい。これらの中でも、320〜450nmの発光波長の間に連続波長を有するメタルハライドランプ又は無電極放電ランプDバルブが、硬化速度が高い点で好適である。
なお、電子線又は紫外線を照射すると雰囲気温度が上昇し、熱可塑性樹脂フィルムなどが収縮するおそれがあるため、冷却装置などを用いて冷却することが好ましい。また、空気中の酸素による架橋阻害を防止するため、窒素などの不活性ガスでパージさせることが好ましい。
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱融着防止層、接着層、などが挙げられる。
前記熱融着防止層は、前記感熱孔版印刷用マスターにおける熱可塑性樹脂フィルムのサーマルヘッドに接触する片面に穿孔時の融着を防止するために設けられる。
前記熱融着防止層は、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、フッソ系樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、耐熱剤、酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料、分散助剤、防腐剤、消泡剤等からなる薄層を設けることが望ましい。
前記熱融着防止層の厚みは、0.005〜0.4μmが好ましく、0.01〜0.4μmがより好ましい。
前記熱融着防止層の形成方法としては、特に限定されないが、水、溶剤等に希釈した溶液をロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーター等を用いて塗布し、乾燥するのが好ましい。
前記接着層は、必要に応じて熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを接着するために設けられる。
接着に使用する接着剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、電離放射線硬化型接着剤、などが挙げられる。
前記接着層の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、接着剤により接着する方法、バインダー繊維を含む多孔性支持体と熱可塑性フィルムとを熱により融着する方法、前記接着剤をブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、バーコーター等を用いて塗布し、乾燥する方法、などが挙げられる。
前記接着剤としては、導電性材料と同様の観点から、前記接着剤が完全に硬化するまでの粘度は50〜110℃において300〜3,000mPa・sが好ましく、300〜1,000mPa・sがより好ましい。
前記接着剤の付着量は、従来の感熱孔版印刷用マスター(熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜との積層品)とは異なり穿孔阻害の影響を考慮する必要はないので、所望の接着強度が得られ、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の孔を閉塞しない範囲であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜5.0g/mが好ましく、0.1〜3.0g/mがより好ましい。
(感熱孔版印刷用マスターの製造方法)
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法は、多孔性支持体形成工程と、熱融着工程とを含んでなり、更に必要に応じて、架橋工程、その他の工程を含んでなる。
−多孔性支持体形成工程−
前記多孔性支持体形成工程は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体を形成する工程である。
前記多孔性樹脂膜の形成方法としては、前記熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する工程である。
前記多孔性樹脂膜塗布液は、少なくとも樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなり、油中水型のものが好ましい。
前記多孔性樹脂膜の形成方法としては、上述したように、前記第1の形成方法(特開平10−24667号公報参照)、又は前記第2の形成方法(特開平11−23885号公報参照)などが挙げられる。
前記多孔性繊維膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したように、短繊維を湿式抄紙した抄造紙であってもよいし、不織布や織物であってもよいし、スクリーン紗などであってもよく、生産性、コスト面等より抄造紙が好ましく用いられる。
−熱融着工程−
前記熱融着工程は、前記多孔性支持体の表面に、50〜110℃での粘度が熱可塑性マトリックス樹脂、及び導電性物質を含む導電性材料を熱融着により塗布する工程である。
前記熱可塑性マトリックス樹脂の粘度は、上述のように、50〜110℃で300〜3,000mPa・sであることが必要である。前記粘度が300mPa・s未満であると、裏抜けが生じて塗工ロール上に多孔性支持体の一部が付着してしまい、前記粘度が3,000mPa・sを超えると、印刷ドラムへの巻装が阻害され、いずれも塗工不良となる。
前記熱融着する方法としては、特に制限はないが、例えば、前記導電性材料を、90℃に加熱し、粘度が300〜3,000mPa・sになったことを確認して塗布することが好ましい。
なお、前記導電性材料は、上述のように、多孔性支持体に熱融着させることから、溶剤を含有する必要がない。このように溶剤を含有しないことにより、感熱孔版印刷用マスター製造時に、乾燥工程が不要になり、大気中に有害物質を放出する恐れもないなどの環境負荷の低減を図ることができる。
−架橋工程−
前記架橋工程は、導電性材料に電子線及び紫外線の少なくともいずれかを照射することにより、マトリックス樹脂と導電性物質を架橋させる工程である。前記架橋工程は、多孔性繊維膜に塗布した場合には、塗工後の巻き取り時においての張り付きが生じることがなく、十分な強度を得ることが可能であることから、含んでいることが好ましい。
架橋させる際の電子線及び紫外線のそれぞれによる好ましい方法については、「感熱孔版印刷用マスター」の項で説明した通りである。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スティック防止層形成工程などが挙げられる。
前記多孔性繊維膜と前記多孔性樹脂膜を有するフィルムとを貼り合わせる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、少なくとも該多孔性樹脂膜の最表面層が乾燥し、皮膜化した後に、接着剤が塗布された多孔性繊維膜と貼り合せることが好ましい。前記多孔性樹脂膜が形成される前に多孔性繊維膜を積層すると、多孔性樹脂膜の形成を阻害して所望の多孔性樹脂膜が得られない。また、接着剤は多孔性樹脂膜の孔を閉塞する恐れが有るため、多孔性繊維膜に塗布した方が好ましい。
前記多孔性繊維膜と前記多孔性樹脂膜を有するフィルムとを貼り合わせる(ラミネートする)場合に用いる接着剤としては、インキ通過性の面より多孔性樹脂膜の孔を塞がないような高粘度の状態のものが好ましく、前記接着剤が完全に硬化するまでの粘度は50から110℃において300〜3,000mPa・sが好ましく、300〜1,000mPa・sがより好ましい。
この場合、前記接着剤として溶剤型接着剤を使用すると多孔性樹脂膜が侵され、孔を閉塞してしまうため、少なくとも多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜とが積層される時点において溶剤はない方が好ましく、この点から、無溶剤型接着剤、水性・エマルション型接着剤が好適に用いられる。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)酢酸エチル等の有機溶剤で希釈された塗布液を多孔性繊維膜に塗布し、乾燥した後、多孔性樹脂膜と貼り合せる方法、(2)無溶剤のまま塗布する方法、などが挙げられ、これらの中でも、環境面及び残留溶剤が発生しない点から無溶剤のまま塗布する方法が好適である。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、オフセットグラビアコーティング法、キスコーティング法、バーコーティング法等が好適に挙げられる。
また、前記接着剤の塗布は、例えば、図4に示すような装置により好適に行うことができる。
該装置による接着剤の塗布方法について説明すると、まず、支持体ロール11より多孔性繊維膜を引き出して、接着剤を、90℃に加熱したコーティングロール12を用いて前記多孔性繊維膜の一方の面に塗布した後、連続的に多孔性繊維膜とのニップ工程に搬送する。次に、多孔性樹脂膜が塗布された熱可塑性樹脂フィルムをフィルムロール13から引き出して、多孔性樹脂膜を有する面と多孔性繊維膜の接着剤の塗布面とをニップロール14でニップした後、鏡面ロール16上に密着させて搬送しながら、電離放射線装置15で電離放射線を照射して接着層を硬化させて、ラミネートを行い巻き取りロール17に巻き取る。
このような装置により接着剤を塗布すると、導電性材料を硬化させることができ、強度を高めることができる。
前記接着剤としては、所定の接着強度を得るため及び上記条件を満たすため、特にポリウレタン系接着剤が好適である。該ポリウレタン系接着剤としては、低付着量にて所望の接着強度が得られる無溶剤型ポリウレタン接着剤が好適である。水性・エマルション型ポリウレタン接着剤では塗布時、多孔性繊維膜の伸縮が発生し、カール等を悪化させるという面からも無溶剤型ポリウレタン接着剤が好適に用いられる。
前記無溶剤型ポリウレタン接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、(1)ポリオール成分とイソシアネート成分の反応により得られる一液湿気硬化型のウレタンプレポリマー、(2)ポリオール成分とイソシアネート成分に分かれた二液硬化型の接着剤が挙げられる。
前記ポリオール成分としては、両末端に水酸基を有し、液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記イソシアネート成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,4−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−,m−及びp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサヒドロメタキシリデンジイソシアネート(HXDI)、リジンジイソシアネートアルキルエステル(該アルキルエステルのアルキル部分は1〜6個の炭素原子を有することが好ましい)等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;トルイレン−2,4−ジイソシアネート(TD1)、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多孔性繊維膜に無溶剤型ポリウレタン接着剤を塗布する場合、粘度が高すぎると繊維が脱落して塗布不良が発生するので、ロールを加熱することで粘度を下げて塗布することが好ましい。
前記接着剤の付着量は、従来の感熱孔版印刷用マスター(熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜との積層品)とは異なり穿孔阻害の影響を考慮する必要はないので、所望の接着強度が得られ、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の孔を閉塞しない範囲であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜5.0g/mが好ましく、0.1〜3.0g/mがより好ましい。
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法により製造された感熱孔版印刷用マスターは、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、従来からの改題を解決できる高品質なものである。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
〔実験1〕
(実施例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
まず、以下のようにして熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との積層体を作製した。 下記組成の多孔性樹脂膜塗布液を溶解乃至分散し、これにヒドロキシエチルセルロース(HEC)1質量%含有水25.0質量部を撹袢しながらゆっくりと添加して、白濁したエマルション塗布液を調製した。
<多孔性樹脂膜塗布液の処方>
・アセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、KS−1)・・・2.5質量部
・タルク・・・0.8質量部
・界面活性剤(日光ケミカル株式会社製、SO15U)・・・0.1質量部
・界面活性剤(信越化学工業株式会社製、KF6012)・・・0.1質量部
・界面活性剤(ジョンソン社製、J711)・・・0.2質量部
・酢酸エチル・・・43.0質量部
次に、得られたエマルション塗布液を、共重合ポリエステルフィルム(厚み2.0μm、150℃における熱収縮率42%)上に、ダイコーティング方式にて乾燥後付着量が3.0g/mとなるように塗布し、乾燥させて、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との長尺の積層体を作成し、ロール状に巻き取り、図4に示すフィルムロール3にセットした。
<多孔性繊維膜の作製>
まず、繊度0.2デシテックス、繊維長3mmの未延伸ポリエステル繊維(テイジン株式会社製、テピルスTK08PN)40質量%と、繊度1.5デシテックス、繊維長5mmのポリエステルバインダー繊維(鞘成分:低融点PET、熱溶融温度110℃、芯成分:PET/ユニチカ株式会社製、メルティ4080)60質量%とを混合し、円網抄紙機により多孔性繊維膜を作製した(以上、多孔性支持体形成工程)。
得られた多孔性繊維膜の坪量は7.5g/mであり、厚みは28μmであった。
<導電性材料の塗布>
次に、得られた多孔性繊維膜表面に、帯電防止及び多孔性支持体補強のため、下記組成の導電性材料Aを、90℃に加熱し、粘度が1,000mPa・sになったことを確認した後に、熱融着して、長尺の多孔性繊維膜を作成し、図4に示す支持体ロール1にセットした(以上、熱融着工程)。
また、このときの液減量法により測定した導電性材料Aの乾燥付着量(以下、単に「乾燥付着量」という。)は0.3g/mであった。
−導電性材料Aの組成−
・芳香族ビニル系樹脂・・・95.0質量部
・エレガン264WAX
(日本油脂株式会社製、分子量:約400、カチオン性重合体)・・・5.0質量部
<貼り合わせ>
予め、下記の組成分を約90℃で溶融混合を行い、90℃で1,000mPa・sの電離放射線硬化性接着剤を準備した。
−電離放射線硬化性接着剤の組成−
・ポリウレタンアクリレート樹脂
(ビームセット502H、荒川化学工業株式会社製)・・・70.0重量部
図4に示すように、得られた電離放射線硬化性接着剤を90℃に加熱したコーティングロール12を用い、付着量が0.2g/mとなるように、前記長尺の多孔性繊維膜を支持ロール11から引き出して、多孔性繊維膜の一方の面に塗布した後、連続的に多孔性繊維膜とのニップ工程に搬送した。次いで、前記長尺の多孔性樹脂膜が塗布された熱可塑性樹脂フィルムを、フィルムロール13から引き出し、その多孔性樹脂膜を有する面と長尺の多孔性繊維膜の接着剤の塗布面とをニップロール14でニップし、その後に鏡面ロール16上に密着させて搬送しながら、電離放射線装置15で5Mradの電離放射線を照射して接着層を硬化させ、ラミネートを行い巻き取りロール17に巻き取った。
<熱融着防止剤の塗布>
次に、下記組成からなる熱融着防止剤を、熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用い塗布し、乾燥した後に巻き取り、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。なお、前記感熱孔版印刷用マスターは、各組成からも判るように、溶剤を使用していない。
−電離放射線硬化性接着剤の組成−
・シリコーンオイル(KF864、信越シリコーン社製)・・・0.5重量部
・トルエン(東ソー株式会社製)・・・100.0重量部
(実施例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aの乾燥付着量を0.8g/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(実施例3)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aの乾燥付着量を0.7g/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(実施例4)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aの乾燥付着量を0.05g/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(実施例5)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aの乾燥付着量を0.04g/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(実施例6)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、多孔性繊維膜を設けず、かつ、導電性材料Aを多孔性樹脂膜表面に、実施例1に記載したのと同じ方法により塗布した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料の乾燥付着量は0.3g/mであった。
(実施例7)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、多孔性樹脂膜を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Aの乾燥付着量は0.3g/mであった。
(実施例8)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との貼り合わせの前に、導電性材料Aを塗布した多孔性繊維膜表面に、架橋工程として、125kV−5Mradの条件で連続的に電子線を照射して、前記導電性材料Aを架橋させた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Aの乾燥付着量は0.3g/mであった。
(実施例9)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aを、下記組成の導電性材料Bに変更し、かつ、多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との貼り合わせの前に、該導電性材料Bを塗布した多孔性繊維膜表面に、架橋工程として、80W/cmの紫外線ランプで連続的に紫外線を照射して、前記導電性材料Bを架橋させた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Bの乾燥付着量は0.3g/mであった。
−導電性材料Bの組成−
・芳香族ビニル系樹脂・・・95.0質量部
・エレガン264WAX
(カチオン性重合体、日本油脂株式会社製、分子量:約400)・・・5.0質量部
・イルガキュア184
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、光重合開始剤)・・・2.5質量部
(実施例10)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、導電性材料Aを、下記組成の導電性材料Cに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Cの乾燥付着量は0.3g/mであった。
−導電性材料Cの組成−
・ビームセット575
(荒川化学工業株式会社製、ポリウレタン系樹脂)・・・95.0質量部
・エレガン264WAX
(日本油脂株式会社製、分子量:約400、カチオン性重合体)・・・5.0質量部
(実施例11)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、実施例1において、導電性材料Aを、下記組成の導電性材料Dに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Dの乾燥付着量は0.3g/mであった。
−導電性材料Dの組成−
・芳香族ビニル系樹脂・・・95.0質量部
・ナイスポールP−200
(日華化学株式会社製、分子量:約500、アニオン性重合体)・・・5.0質量部
(比較例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、多孔性繊維膜への導電性材料Aの塗布を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(比較例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例6において、多孔性樹脂膜への導電性材料Aの塗布を行わない以外は、実施例6と同様にして、比較例2の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(比較例3)
実施例7において、多孔性繊維膜への導電性材料Aの塗布を行わない以外は、実施例7と同様にして、比較例3の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
(比較例4)
実施例1において、導電性材料Aを55℃に加熱し、粘度が3,500mPa・sで塗布した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Aの乾燥付着量は0.3g/mであった。
(比較例5)
実施例1において、導電性材料Aを105℃に加熱し、粘度が250mPa・sで塗布した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
また、このときの導電性材料Aの乾燥付着量は0.3g/mであった。
−評価−
得られた実施例1〜11及び比較例1〜5の感熱孔版印刷用マスターについて、印刷濃度、印刷白抜け、平滑度、静電気による不具合を、(株)リコー製孔版印刷装置サテリオA401を用いて試験し、下記の基準で評価した。それらの結果を表1に示す。
(1)印刷濃度
ベタ部の画像濃度をマクベス濃度計にて測定した。
(2)印刷白抜け(印刷ムラ)
印刷面を肉眼で観察し、以下の3段階評価を行った。
〔評価基準〕
○:印刷白抜けがほとんどない。
△:印刷白抜けがややあるが実用上の支障はないレベルである。
×:印刷白抜けが多く、実用不可能。
(3)平滑度
王研式平滑度試験機(熊谷理機工業社製、KY−55型)を用い、JAPAN TAPPI No.5 B法で規定される王研式平滑度を、23℃、65%RHの雰囲気下で24時間調湿し、3箇所の測定値を平均して測定値とすることにより求めた。
(4)静電気による不具合
10℃、20%RHの雰囲気下で24時間調湿し、製版及び印刷を連続50回繰り返した後の搬送性を、以下の4段階評価を行った。
○:印刷機内での静電気により不具合が発生しない。
△:印刷機内での静電気により搬送不良はないものの若干搬送挙動が不自然である。
×:印刷機内での静電気により搬送不良はないものの搬送挙動が不自然である。
××:印刷機内での静電気により印刷機内壁面に貼り付き、スムーズな搬送、印刷ドラムへの巻装が阻害される。
Figure 2007008066
表1の結果から、実施例1〜11の感熱孔版印刷用マスターにおいては、印刷機内壁面への貼り付きやスムーズな搬送、印刷ドラムへの巻装が阻害されるといった静電気による不具合がないことが判った。また、従来の低分子系帯電防止剤の様に、移動による帯電防止性能の劣化がなく、ロールなどへの裏抜けを防止でき、塗布基材(多孔性繊維膜や多孔性樹脂膜)の一部が付着することがないことが判った。特に、熱可塑性マトリックス樹脂として芳香族ビニル系樹脂を使用し、かつ、導電性材料がカチオン性を示す実施例1〜9の感熱孔版印刷用マスターにおいては、帯電性が更に向上することが判った。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、印刷機内での静電気による搬送不良及び印刷ドラムへの巻装不良を発生させることなく、更には、帯電防止性能の劣化がなく、かつ、ロールなどへの裏抜けを防止でき、塗布基材の一部が付着することがないので、孔版印刷に好適に用いられる。
図1は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図である。 図2は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図である。 図3は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図である。 図4は、接着剤の塗布方法の一例を示す図である。
符号の説明
1 熱可塑性樹脂フィルム
2 多孔性樹脂膜
3 多孔性繊維膜
11 支持ロール
12 コーティングロール
13 フィルムロール
14 ニップロール
15 電離放射線装置
16 鏡面ロール
17 巻き取りロール

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体とを有してなり、該多孔性支持体が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質を含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
  2. 多孔性支持体が多孔性樹脂膜であり、該多孔性樹脂膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
  3. 多孔性支持体が多孔性繊維膜であり、該多孔性繊維膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
  4. 多孔性支持体が多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を有してなり、該多孔性繊維膜表面が、熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質で被覆された請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
  5. 熱可塑性マトリックス樹脂が芳香族ビニル系樹脂である請求項1から4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  6. 導電性物質がカチオン性を示す請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  7. 導電性物質が分子量100〜2,000のポリマーである請求項1から6のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  8. マトリックス樹脂と導電性物質が電子線及び紫外線の少なくともいずれかにより架橋された請求項1から7のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  9. 熱可塑性マトリックス樹脂の50〜110℃での粘度が300〜3,000mPa・sである請求項1から8のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  10. 熱可塑性マトリックス樹脂及び導電性物質の乾燥付着量が0.05〜1.5g/mである請求項1から9のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  11. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体を形成する多孔性支持体形成工程と、該多孔性支持体の表面に、50〜110℃での粘度が300〜3,000mPa・sである熱可塑性マトリックス樹脂、及び導電性物質を含む導電性材料を熱融着させる熱融着工程とを含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
  12. 熱融着工程後に、導電性材料に電子線及び紫外線の少なくともいずれかを照射することにより、マトリックス樹脂と導電性物質を架橋させる架橋工程を更に含む請求項11に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
  13. 導電性材料が溶剤を含有しない請求項11及び12のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008201040A (ja) * 2007-02-21 2008-09-04 Tohoku Ricoh Co Ltd マスタ、印刷方法、印刷プログラム、記録媒体及び印刷装置
JP2009056654A (ja) * 2007-08-30 2009-03-19 Tohoku Ricoh Co Ltd 孔版印刷装置

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