以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる半導体パッケージ部品の模式的な断面図を、図1に示す。図1に示すように、半導体パッケージ部品50は、半導体素子6dの回路形成面6aとは反対側の表面である実装側表面6bが、素子実装体の一例である基板51の表面に接合材料52を介して接合された半導体素子実装構造を有している。このような半導体パッケージ部品としてはQFPやBGA等があり、回路形成基板等にこのような半導体パッケージ部品50が実装されることで、電子回路を形成することが可能となっている。ここで、上記素子実装体とは、上記半導体素子が接合されることにより半導体パッケージ部品が形成される上記接合対象物のことであり、樹脂基板、紙−フェノール基板、セラミック基板、ガラス・エポキシ(ガラエポ)基板、フィルム基板などの回路基板、単層基板若しくは多層基板などの回路基板、部品、筐体、又は、フレームなど、回路が形成されている対象物を意味する。
図1に示すように、半導体パッケージ部品50において、半導体素子6dは、実装側表面6b及びその周部近傍に配置された接合材料52を介して、基板51の表面における所定の位置に固定されている。このような接合材料52としては、樹脂等の接着剤や金属ペースト材料等の様々な材料を用いることができる。
また、半導体素子6dの回路形成面6aには、半導体素子6d内に形成された回路形成部(図示しない)を素子外部の回路と電気的に接続するための電極端子である複数の外部接続用電極53が形成されている。なお、このような外部接続用電極53は、導電性金属材料により形成されている。さらに、基板51の表面には、導電性金属材料により形成された複数の電極51aが配置されており、基板51の表面に固定された半導体素子6dのそれぞれの外部接続用電極53と基板51のそれぞれの電極51aとが、導電性金属材料により形成されたワイヤ54により電気的に接続されている。
このようなワイヤ54を用いたそれぞれの電極の接続方法は、一般的にワイヤボンディングと呼ばれているが、本第1実施形態の半導体パッケージ部品50におけるそれぞれの電極の接続方法は、このようなワイヤボンディングを用いた手法に限定されることなく、例えば、テープオートメーテッドボンディング(TAB)等の他のボンディング方法が用いられるような場合であってもよい。なお、半導体素子パッケージ部品50におけるこのような半導体素子実装構造を保護するために、当該実装構造全体が樹脂等を用いて封止されるような場合であってもよい。
ここで、このような構造を有する半導体素子パッケージ部品50における半導体素子6dと基板51との接合部分を説明するための部分拡大模式斜視図(一部断面有り)を図2に示す。
図2に示すように、略矩形状の半導体素子6dにおける実装側表面6bの外周端部には、湾曲凸面部の一例であるR部6eが形成されている。すなわち、半導体素子6dにおいて、図示上面である回路形成面6aの外周端部には角部分(エッジ部分)が存在しているのに対して、図示下面である実装側表面6bの外周端部には、角部分が存在することなく、滑らかな湾曲凸面で形成されたR部6eが、その外周全体に渡って形成されている。このR部6eの表面と基板51の表面とを接合するように、半導体素子6dの周部全体に接合材料52がロ字型に***されて配置された***状接合部52aが形成されている。
さらに、半導体素子6dの周方向におけるこのR部6e付近及び***状接合部52aの部分拡大断面図を図3に示す。図3に示すように、R部6eの湾曲凸面と基板51の表面にて囲まれた空間(接合材料充填用空間)Sには、接合材料52が略隙間が空くことが無いように充填されている。また、この接合材料52により形成された***状接合部52aは、略三角形状の断面を有しており、当該断面は、図示左右それぞれの方向に末広がり形状を有している。すなわち、半導体素子6dの内側方向と外側方向とのそれぞれの方向に末広がり形状を有する略三角形状の断面を、***状接合部52aは有している。
半導体素子6dを基板51に固定させる接合材料52が、半導体素子6dに形成されたR部6eの存在によって、上述のような略三角形状の断面を有するように配置されていることにより、半導体素子6dと基板51との接合強度を向上させることができる。特に、このような略三角形状の断面が、半導体素子6dの外側方向に末広がり形状を有するだけでなく、半導体素子6dの内側方向にも末広がり形状を有していること、すなわち、半導体素子6dの表面の一部と基板51の表面との間の空間である空間Sに、隙間なく接合材料52が充填されていることにより、様々な方向からの外力に対する耐力を向上させることができ、上記接合強度をさらに向上させることができる。従って、構造的強度を向上させることができる半導体素子パッケージ部品50を実現することができる。
なお、図3においては、R部6eを除く半導体素子6dの実装側表面6bと基板51の表面との間に、接合材料52が充填されている状態を示しているが、このような場合に代えて、当該部分へ接合材料52が充填されていないような場合であってもよい。ただし、構造的強度の向上のためには、当該部分にも接合材料52が充填されていることが望ましい。
次に、このような半導体素子実装構造を実現することを可能とするR部6eを有する半導体素子6dの製造方法について、具体的に説明する。
まず、このような半導体素子の製造工程において用いられるプラズマ処理装置101の構成を模式的に示す模式構成図を図4に示す。なお、図4は、プラズマ処理装置101の縦断面を示す模式構成図である。このプラズマ処理装置101は、複数の半導体素子が回路形成面(第1の表面)に形成された半導体ウェハを半導体素子の個片毎に分割することで、それぞれの半導体素子を製造する装置(半導体素子の分割装置)であって、例えば、その厚みが100μm以下というように薄化された半導体素子の製造に用いられる。
また、このような半導体素子の一連の製造工程では、まず半導体ウェハの回路形成面に半導体の主材質であるシリコンよりもプラズマエッチングされにくい材質からなる保護シートが貼り付けられ、回路形成面の反対側表面であるマスク配置側面には、半導体ウェハを半導体素子の個片毎に分割するための切断線(分割線)を画定するマスクが形成される。そしてこの状態の半導体ウェハを対象として本プラズマ処理装置101によって、プラズマダイシング及びマスク除去の各工程が行われる。
具体的に、プラズマ処理装置101の構成について図4を用いて説明する。
図4のプラズマ処理装置101において、真空チャンバ1の内部は上述の半導体ウェハを対象としたプラズマ処理を行う処理室2となっており、減圧下でプラズマを発生させるための密閉空間が形成可能となっている。処理室2内部の下方には下部電極3(第1の電極)が配置されており、下部電極3の上方には上部電極4(第2の電極)が下部電極3に対して対向配置されている。下部電極3と上部電極4とはそれぞれ略円筒形状を有しており、処理室2内において同心配置されている。
下部電極3は、処理室2の底部を埋める形で装着された2つの層である絶縁部材5A、5Bに周囲を取り囲まれ、処理室2の底部の中央部に処理対象物を保持する上面が露出されかつ固定された状態で配設されている。下部電極3はアルミニウムなどの導電体によって製作されており、上記処理対象物を保持する円盤状の電極部3aと、この電極部3aの下面より下方に突出し、その一端が真空チャンバ1の外部に露出するように形成された円柱状の支持部3bとを一体的な状態として備えている。また、この支持部3bは絶縁部材5Cを介して真空チャンバ1に保持されており、このように保持されることで、下部電極3が電気的に絶縁された状態で真空チャンバ1に装着されている。
上部電極4は、下部電極3と同様にアルミニウムなどの導電体で製作されており、円盤状の電極部4aと、この電極部4aの上面より上方に突出し、その一端が真空チャンバ1の外部に露出するように形成された円柱状の支持部4bとを一体的な状態として備えている。また、この支持部4bは真空チャンバ1と電気的に導通されるとともに、電極昇降装置24(図10参照)によって昇降可能となっている。この電極昇降装置24により上部電極4は、その昇降の上端位置であって、下部電極3との間に半導体ウェハの搬出入を行うための大きな空間が形成される位置であるウェハ搬出入位置と、その昇降の下端位置であって、上部電極4と下部電極3との間にプラズマ処理のためのプラズマ放電を発生させる放電空間が形成される位置である放電空間形成位置との間にて昇降されることが可能となっている。なお、電極昇降装置24は電極間距離変更手段として機能し、上部電極4を昇降させることにより、下部電極3と上部電極4との間の電極間距離D(図5参照)を変更することができる。
次に、下部電極3の詳細な構造および処理対象の半導体ウェハについて説明する。図4に示すように、下部電極3の電極部3aの上面は、半導体ウェハ6を載置する平面状の保持面(保持部の一例である)となっており、保持面の外縁部にはその全周渡って絶縁被覆層3fが設けられている。この絶縁被覆層3fはアルミナなどのセラミックによって形成されており、下部電極3が真空チャンバ1内に装着された状態では、図4に示すように、絶縁被覆層3fの外縁部は部分的に絶縁部材5Aによって覆われる。このような構造を有することにより、下部電極3の外縁部は放電空間内に発生したプラズマから絶縁され、異常放電の発生を防止することが可能とされている。
図5は、プラズマダイシングが開始される前の半導体ウェハ6を下部電極3に載置した状態を示す部分模式断面図である。半導体ウェハ6はシリコンを主材質とする半導体基板であり、半導体ウェハ6の表面(図5の下面側)の回路形成面6a(第1の表面)には保護シート30が貼着されている。半導体ウェハ6を下部電極3の上面である電極部3aの保持面3gの上に載置した状態では、保護シート30は保持面3gに密着することとなる。
保護シート30は、ポリイミドなどの絶縁体の樹脂を100μm程度の厚みの膜に形成した絶縁層を含んだ構成となっており、粘着材により半導体ウェハ6の回路形成面6aに剥離可能に貼り付けられる。保護シート30が貼り付けられた半導体ウェハ6を下部電極3に保持させる際には、後述するようにこの絶縁層が半導体ウェハ6を電極部3aの保持面3gによって静電吸着する際の誘電体として機能する。
また保護シート30の材質としては、後述のプラズマダイシングにおいて半導体ウェハ6の主材質であるシリコンよりもエッチングされにくい材質が選定されることが好ましい。このようにすることで、プラズマダイシングの過程でプラズマによるエッチングレート分布が均一でなく、半導体ウェハのエッチングレートに部分的なばらつきが生じる場合が生じても、保護シート30がエッチングストップ層として機能するようになっている。
また、回路形成面6aの反対側(図5において上側)の表面には、後述するプラズマダイシングにおける切断線(分割線)を画定するマスクが配置されるマスク配置面6b(第2の表面、さらに前述した実装側表面6bとなる)となっている。このマスクは、後述するようにマスク配置面6bとなる側の表面を例えば機械加工によって研削した後に、レジスト膜31aでパターニングすることにより形成され、これによりプラズマエッチングの対象となる切断線31bの部分を除く領域がレジスト膜31aで覆われる。すなわち、半導体ウェハ6における個々の半導体素子のマスク配置面6bがレジスト膜31aにて覆われる。
また、図5に示すように、下部電極3には保持面3gに開口する吸着孔3eが複数設けられており、吸着孔3eは下部電極3の内部に設けられた吸引孔3cに連通している。吸引孔3cは図4に示すように、ガスライン切換バルブ11を介して真空吸着ポンプ12に接続されており、ガスライン切換バルブ11はN2ガスを供給するN2ガス供給部13に接続されている。ガスライン切換バルブ11を切り換えることにより、吸引孔3cを、真空吸着ポンプ12またはN2ガス供給部13に選択的に接続させることが可能となっている。
具体的には、ガスライン切換バルブ11により真空吸着ポンプ12が選択されて、吸引孔3cが真空吸着ポンプ12と連通された状態において真空吸着ポンプ12を駆動することにより、それぞれの吸着孔3eから真空吸引を行って下部電極3に載置された半導体ウェハ6を真空吸着して保持することができる。従って、それぞれの吸着孔3e、吸引孔3c、及び真空吸着ポンプ12は、下部電極3の保持面3gに開口したそれぞれの吸着孔3eから真空吸引することで、保護シート30を電極部3aの保持面3gに密着させた状態で、半導体ウェハ6を真空吸着により保持する真空吸着手段となっている。
また、ガスライン切換バルブ11によりN2ガス供給部13が選択されて、吸引孔3cをN2ガス供給部13に接続させることにより、それぞれの吸着孔3eから保護シート30の下面に対してN2ガスを噴出させることができるようになっている。後述するようにこのN2ガスは、保護シート30を保持面3gから強制的に離脱させる目的のブロー用ガスである。
また、図4に示すように。下部電極3には冷却用の冷媒流路3dが設けられており、冷媒流路3dは冷却装置10と接続されている。冷却装置10を駆動することにより、冷媒流路3d内を冷却水などの冷媒が循環し、これによりプラズマ処理時に発生した熱によって昇温した下部電極3や下部電極3上の保護シート30を介して半導体ウェハ6が冷却される。なお、冷媒流路3dおよび冷却機構10は、下部電極3を冷却する冷却手段となっている。
また、図4のプラズマ処理装置101において、処理室2に連通して設けられた排気ポート1aには、排気切換バルブ7を介して真空ポンプ8が接続されている。排気切換バルブ7を排気側に切り換えて真空ポンプ8を駆動することにより、真空チャンバ1の処理室2内部が真空排気され、処理空2内を減圧することが可能となっている。また、処理室2は圧力センサ28(図4において図示省略、図7参照)を備えており、この圧力センサ28の圧力計測結果に基づいて、後述する制御装置33(図7参照)によって真空ポンプ8が制御されることにより、処理室2内を所望の圧力に減圧することが可能とされている。なお、このような所望の圧力に減圧するための真空ポンプ8の制御は、例えば、真空ポンプ8として可変容量型のものを用いて真空ポンプ8自体の真空排気能力を直接的に制御すること、あるいは、開度調整弁(バタフライ弁等)を真空排気経路に設け、その開度を制御することで間接的に真空排気能力を制御することにより行うことができる。なお、真空ポンプ8及び排気切換バルブ7が、処理室2内を所望の圧力に減圧する真空排気装置(減圧手段)となっている。また、排気切換バルブ7を大気開放側に切り換えることにより、排気ポート1aを通して処理空2内には大気が導入され、処理室2内部の圧力を大気圧に復帰させることが可能となっている。
次に上部電極4の詳細構造について説明する。上部電極4は、中央の電極部4aと電極部4aを囲むようにその外周部に固定して設けられた絶縁体からなる環状部材4fを備えている。環状部材4fの内径は下部電極3の電極部4aの外径と略同じとされており、下部電極3の周面よりも外側に広がるような形状で同心配置されており、環状部材4fは、上部電極4の下方中央部に配置された円盤状のガス吹出部4eを保持する機能を担っている。
ガス吹出部4eは、上部電極4と下部電極3の間に形成される放電空間においてプラズマ放電を発生させるためのプラズマ発生用ガスを供給する。ガス吹出部4eは、内部に多数の微細孔を有する多孔質材料を円盤状に加工した部材であり、上部電極4の電極部4aの下面、ガス吹出部4eの上面、および環状部材4fの内周面にて囲まれたガス滞留空間4g内に供給されたプラズマ発生用ガスを、これらの微細孔を介して放電空間内に満遍なく吹き出させて均一な状態で供給することが可能となっている。
支持部4b内には、ガス滞留空間4gに連通するガス供給孔4cが設けられており、ガス供給孔4cは、真空チャンバ1の外部に配置されたプラズマ発生用ガス供給装置に接続されている。このプラズマ発生装置は、異なる種類のガスを個別に供給する複数のガス供給部として第1のガス供給部20A、第2のガス供給部20B、及び第3のガス供給部20Cと、それぞれのガス供給部20A、20B、20Cより供給されるガスを混合してガス組成を均一な状態とするガス混合部(配管の結合部)19と、このガス混合部19とそれぞれのガス供給部20A、20B、20Cとの間に配置され、ガス混合部19に供給されるそれぞれのガスの供給流量を個別的に調整するガス流量調整部21とを備えている。
ガス流量調整部21は、第1のガス供給部20Aより供給されるガス流量を独自に調整する第1の流量制御バルブ23Aとガスの供給を遮断可能な第1の開閉バルブ22Aと、第2のガス供給部20Bより供給されるガス流量を独自に調整する第2の流量制御バルブ23Bとガスの供給を遮断可能な第2の開閉バルブ22Bと、第3のガス供給部20Cより供給されるガス流量を独自に調整する第3の流量制御バルブ23Cとガスの供給を遮断可能な第3の開閉バルブ22Cとを備えており、それぞれのバルブの開度制御及び開閉制御は、後述する制御装置33により行われる。
本実施形態のプラズマ処理装置101においては、例えば、第1のガス供給部20Aより六フッ化硫黄ガス(SF6)が供給可能であり、第2のガス供給部20Bよりヘリウムガス(He)が供給可能であり、第3のガス供給部20Cより酸素(O2)が供給可能とされている。このようにプラズマ発生用ガス供給装置が構成されていることにより、それぞれのガス供給部20A、20B、及び20Cより選択された1又は複数のガス供給部より供給されたガスの供給流量をガス流量調整部21にて個別に調整して、所望のガス組成及び流量の混合ガス(あるいは単独のガス)をガス混合部19に供給するとともに、ガス混合部19にて混合されたガス(混合ガス)を、ガス供給孔4c、ガス滞留空間4g、及びガス吹出部4eを通して放電空間内に供給することが可能となっている。
また、それぞれのガスの流量を個別に調整できるというガス流量調整部21の機能を用いて、ガス組成、すなわちガスの供給比率を変更することなく、供給流量のみを変更することで、処理室2内の圧力を制御することができる。具体的には、予め設定された圧力条件と圧力センサ28により検出される処理室2内の圧力に基づいて、制御装置33によりガス流量調整部21を制御することにより、処理室2内の圧力を上記圧力条件に合致するように調整することができる。従って、ガス流量調整部21は処理室2内に供給されるガス組成を調整する機能と、処理室2内の圧力を制御する機能とを併せ持っている。
また、図4に示すように、下部電極3は、マッチング回路16を介して高周波電源部17に電気的に接続されている。高周波電源部17を駆動することにより、接地部9に接地された真空チャンバ1と導通した上部電極4と下部電極3の間には高周波電圧が印加される。これにより、処理室2内部では上部電極4と下部電極3との間の放電空間においてプラズマ放電が発生し、処理室2内に供給されたプラズマ発生用ガスがプラズマ状態に移行する。また、マッチング回路16は、このプラズマ発生時において処理室2内のプラズマ放電回路と高周波電源部17のインピーダンスを整合させる機能を有している。なお、本実施形態においては、高周波電源部17とマッチング回路16とが高周波電力印加装置の一例となっている。
さらに下部電極3には、RFフィルタ15を介して静電吸着用DC電源部18が接続されている。静電吸着用DC電源部18を駆動することにより、図6(A)のプラズマ処理装置101の模式図に示すように、下部電極3の表面には負電荷(図中「−」にて示す)が蓄積される。そしてこの状態で図6(B)のプラズマ処理装置101の模式図に示すように、高周波電源部17を駆動して処理室2内にプラズマ34(図中点表示部分にて示す)を発生させると、保持面3g上に保護シート30を介して載置された半導体ウェハ6と接地部9とを接続する直流印加回路32が処理室2内のプラズマ34を介して形成される。これにより、下部電極3、RFフィルタ15、静電吸着用DC電源部18、接地部9、プラズマ34、及び半導体ウェハ6を順次結ぶ閉じた回路が形成され、半導体ウェハ6には正電荷(図中「+」にて示す)が蓄積される。
そして導電体により形成された下部電極3の保持面3gに蓄積された負電荷「−」と、半導体ウェハ6に蓄積された正電荷「+」との間には、誘電体としての絶縁層を含む保護シート30を介してクーロン力が作用し、このクーロン力によって半導体ウェハ6は下部電極3に保持される。このとき、RFフィルタ15は、高周波電源部17の高周波電圧が、静電吸着用DC電源部18に直接印加されることを防止する。なお、静電吸着用DC電源部18の極性は正負逆でもよい。なお、このようにプラズマ処理装置101において、実質的にプラズマの発生に寄与している構成部分をまとめて、プラズマ発生装置ということもできる。
また、上記構成において、静電吸着用DC電源部18は、下部電極3に直流電圧を印加することにより、保護シート30で隔てられた半導体ウェハ6と下部電極3の保持面3gとの間に作用するクーロン力を利用して、半導体ウェハ6を静電吸着する静電吸着手段となっている。すなわち、下部電極3に半導体ウェハ6を保持させる保持手段は、保持面3gに開口する複数の吸着孔3eを介して保護シート30を真空吸着する真空吸着手段と、上述の静電吸着手段との2種類を使い分けできるようになっている。
また、下部電極3と同様に上部電極4にも冷却用の冷媒流路4dが設けられており、冷媒流路4dは冷却装置10と接続されている。冷却装置10を駆動することにより、冷媒流路4d内を冷却水などの冷媒が循環し、これによりプラズマ処理時に発生した熱によって昇温した上部電極4を冷却することが可能となっている。
また、処理室2の側面には、処理対象物である半導体ウェハ6の出し入れ用の開口部1bが設けられている(図10参照)。開口部1bの外側には扉開閉装置26によって昇降する扉25が設けられており、扉25を昇降させることにより開口部1bが開閉される。図10は、扉開閉装置26により扉25を下降させて開口部1bを開放した状態で半導体ウェハ6を出し入れする状態を示している。
また、図10に示すように、半導体ウェハ6の出し入れ時には、電極昇降装置24により上部電極4を上昇させてウェハ搬出入位置に位置させて、上部電極4と下部電極3との間に搬送用のスペースを確保する。そしてこの状態で、半導体ウェハ6を吸着保持した吸着ヘッド27を、アーム27aを操作することによって開口部1bを介して処理室2内に進入させる。これにより、下部電極3上への半導体ウェハ6の搬入および処理済みの半導体ウェハ6(半導体装置)の搬出が行われる。
次にこのような構成を有するプラズマ処理装置101における制御系の構成について、図7に示す制御系のブロック図を用いて以下に説明する。
図7に示すように、制御装置33は、各種のデータや処理プログラムを記憶する記憶部92と、これらのデータや処理プログラムに基づいて、プラズマ処理装置101における各構成部の動作制御を行うことでプラズマ処理の制御を行うプロセス制御部91とを備えている。記憶部92は、プラズマ処理条件81(プラズマ条件または運転条件というような場合であってもよい)や、プラズマ処理の動作プログラム82を記憶しており、プロセス制御部91は、動作プログラム82及びプラズマ処理条件81に基づいてプラズマ処理の制御を行う。操作・入力部94はキーボードなどの入力手段であり、プラズマ処理条件などのデータ入力や操作コマンドの入力を行う。表示部93はディスプレイ装置であり、操作入力時の案内画面などの表示を行う。なお、図示しないが、制御装置33が外部入出力インターフェースを備えて、装置外部との情報の受け渡しが行われるような場合であってもよい。
ここで、本第1実施形態のプラズマ処理装置101において用いられるプラズマ処理条件について説明する。プラズマエッチングにおいては、半導体ウェハ6の表面沿いの方向よりも厚み方向に強いエッチング特性(すなわち、当該厚み方向を主方向としたエッチング特性)を有する異方性エッチングと、当該表面沿いの方向と厚み方向とに略等しいエッチング特性を有する等方性エッチングというエッチング特性が異なる2種類のエッチングがある。本発明においては、プラズマダイシング処理の途中において、エッチング特性を切り換える(すなわち変更する)ことにより、異方性エッチング又は等方性エッチングのいずれか一方を実施した後、他方に切り換えて実施することにより、半導体ウェハのダイシング処理が行われる。
このような異方性エッチングと等方性エッチングを行うためのプラズマ処理条件81の一例を図13のデータテーブルに示す。図13に示すように、プラズマ処理条件81は、例えば、それぞれのプラズマ発生用ガスのガス組成と、処理室2内の圧力と、上部電極4と下部電極3との間に印加される高周波の周波数(放電周波数)との組み合わせ条件により決定される。具体的には、異方性エッチング用のプラズマ処理条件81Aとしては、混合ガスのガス組成(すなわち、それぞれのガスの混合比)がSF6とO2とを10:2の比率として、圧力を100Paとし、そして周波数を60MHzとする組み合わせの条件となっている。また、等方性エッチング用のプラズマ処理条件81Bとしては、ガス組成がSF6とHeとを10:30の比率として、圧力を10Paとし、そして周波数を13.56MHzとする組み合わせの条件となっている。
なお、このようなエッチング特性の切り換えは、上述のようにガス組成、圧力、及び周波数の組み合わせにより決定されるプラズマ条件81Aと81Bとを切り換えることにより行うが好ましいが、このような条件のみに限られるものではない。このような場合に代えて、例えば、ガス組成、圧力、及び周波数のうちのいずれか1つのパラメータのみを切り換えるような場合であっても、エッチング特性の切り換えを行うことができる。このようなエッチング特性の切り換えにおいては、ガス組成が最も有効なパラメータであり、その次に、圧力、周波数の順序となる。例えば、ガス組成のみを変更することで上記エッチング特性の切り換えを行うような場合にあっては、SF6:O2:Heのガス組成を、10:2:0から10:0:30と変更することで、異方性エッチングから等方性エッチングへの切り換えを行うことができる。また、処理室2内の圧力のみを変更することで上記エッチング特性の切り換えを行うような場合にあっては、圧力を低下させる(例えば、100Paから10Paとする)ことで、異方性エッチングから等方性エッチングへの切り換えを行うことができる。また、高周波の周波数のみを変更することで上記エッチング特性の切り換えを行うような場合にあっては、周波数を低くする(例えば、60Hzから13.56Hzとする)ことで、異方性エッチングから等方性エッチングへの切り換えを行うことができる。なお、これらのパラメータの他にも、例えば、高周波出力(例えば、500〜3000Wの範囲で設定される)やガス供給流量も一のパラメータとして用いられる。
また、異方性エッチング用のガス組成としては、デポジション(deposition:蒸着又は堆積)しやすい反応生成物を生じるようなガス組成を用いることが好ましい。例えば、異方性エッチング用のガス組成として、酸素を含むガス組成を用いることで、反応生成物としてシリコンのフッ素酸化物(SixFyOz)を生成することができる(ここで、x、y、zは整数)。このフッ素酸化物は、シリコンよりもエッチングされ難いという特性を有している。このような特性を利用することで、半導体ウェハにおいて、異方性エッチングの実施によりその表面に溝部を形成するとともに、当該形成された溝部の内側面に生成されたフッ素酸化物を付着させて膜を形成することができる(側壁デポジション)。一方、加速されたイオンによる物理的エッチングにより、上記溝部の底面にはフッ素酸化物が付着し難い。これにより、上記溝部の内側面は底面に比べてエッチングされ難くすることができ、その結果として当該エッチングを半導体ウェハの厚み方向に強く行うことが可能となり、より理想に近い異方性エッチングを実現することができる。従って、異方性エッチング用のガス組成としては、異方性エッチングを促進させるようなガス組成、すなわち側壁デポジションを起こし易いガス組成を用いることが好ましい。
また、プラズマ処理装置101においては、プラズマダイシング工程とアッシング工程とを行うことができ、プラズマダイシング工程における上述以外の条件としては、上部電極4と下部電極3との間の電極間距離Dの条件があり、例えば電極間距離Dとして5〜50mmの範囲で最適と考えられる値(電極間距離D1とする)が、プラズマ処理条件81A及び81Bとして設定されている。一方、アッシング工程におけるプラズマ処理条件としては、例えば、高周波出力が100〜1000W、圧力が5〜100Pa、電極間距離Dが50〜100mmの範囲内で最適と考えられる値(電極間距離D2とする)が設定されている。
なお、このような異方性エッチング用プラズマ処理条件81A、等方性エッチング用プラズマ処理条件81B、及びアッシング工程用のプラズマ処理条件のそれぞれは、制御装置33の記憶部92に記憶されており、動作プログラム82に基づいて、各工程毎に必要なプラズマ処理条件81が選択されて、プロセス制御部91により、当該選択されたプラズマ処理条件81に基づいて、プラズマ処理が行われる。
動作プログラム82に基づいて行われるプラズマ処理においては、図7に示すように、ガス流量調整部21、ガスライン切換バルブ11、高周波電源部17、静電吸着用DC電源部18、排気切換バルブ7、真空ポンプ8、真空吸着ポンプ12、扉開閉装置26、及び電極昇降装置24の各部が、プロセス制御部91により制御される。
また、圧力センサ28の圧力検出結果に基づいて、プロセス制御部91のよりガス流量調整部21が制御されてそれぞれのガスの供給量の総量が調整されることで、処理室2の内部の圧力を、プラズマ処理条件81に合致させるように制御することができる。
さらに、図7に示すように、制御装置33には、プラズマ処理時間の計測を行う処理時間計測部95が備えられており、異方性エッチング又は等方性エッチングの処理時間の計測を行い、当該計測結果が、例えば、それぞれのプラズマ処理条件81に含まれている処理時間の条件に到達したときに、プロセス制御部91により当該処理を終了させるような制御を行うことが可能となっている。
次に、このような構成を有するプラズマ処理装置101を用いて行われる半導体素子の製造方法およびこの半導体素子の製造方法の過程において実行される半導体ウェハの分割方法(ダイシング処理)について、以下に説明する。また、半導体ウェハ6に対する処理内容を説明するための模式説明図を図8(A)〜(H)に示し、当該製造方法の手順を示すフローチャートを図9に示し、これらの図面を中心に参照しながら説明を行う。
まず、図8(A)に示す状態において、半導体ウェハ6には複数の半導体素子が形成されており、さらにその厚みが100μm以下となるように薄化処理が施された後の半導体ウェハである。また、半導体ウェハ6の回路形成面6aには、粘着剤を介して保護シート30が剥離可能に貼り付けられており、以降において施されるそれぞれの処理の際に回路形成面6aが損傷を受けることを防止している。なお、保護シート30は、回路形成面6aの全面を覆い且つ半導体ウェハ6から外側にはみ出すことのないよう、半導体ウェハ6の外形形状と同じ形状に整形したものが用いられる。これにより、プラズマ処理において保護シート30がプラズマに対して露呈することがなく、プラズマによる保護シート30のダメージを防止することができる。また、半導体ウェハ6の回路形成面6aには、外部接続用電極53が形成されているが、図8(A)〜(H)においては、その図示を省略している。
次に、図8(B)に示すように、半導体ウェハ6の回路形成面6aの裏面であるマスク配置面6bに、半導体ウェハ6を半導体素子の個片毎に分割するための切断線を画定するマスクを形成する。樹脂より成るレジスト膜31を半導体ウェハ6のマスク配置面6bの全面を覆って形成する。その後、図8(C)に示すように、レジスト膜31をフォトリソグラフィによってパターニングして、切断線31bに相当する部分のみを約20μm幅で除去する。これにより、半導体ウェハ6のマスク配置面6bには切断線31bの部分を除く領域がレジスト膜31aによって覆われたマスクが形成され、この状態のマスク付きの半導体ウェハ6が、プラズマ処理の対象となる。
以下、このマスク付きの半導体ウェハ6を対象としたプラズマ処理方法について、図9のフローチャートに沿って、図10から図12に示すプラズマ処理装置101の模式図を参照しながら説明する。なお、プラズマ処理装置101における以降のそれぞれの動作の制御は、制御装置33の記憶部92内に保持されている動作プログラム82に基づいて、プロセス制御部91により各構成部が制御されることにより行われる。
まず、図9のフローチャートのステップS1において、図10に示すように、マスク付きの半導体ウェハ6が処理室2内に搬入される。この搬入動作に際しては、上部電極4を電極昇降装置24によって上昇させた状態で、アーム27aを操作して、吸着ヘッド27にマスクを介して保持された半導体ウェハ6を開口部1bから処理室2内に搬入し、半導体ウェハ6を下部電極3上に保護シート30を介して載置する。
次に、真空吸着ポンプ12を駆動してそれぞれの吸着孔3eから真空吸引し、半導体ウェハ6の真空吸着をON状態にするとともに、静電吸着用DC電源部18をON状態にする(ステップS2)。この真空吸着により、処理室内2において保護シート30を下部電極3の保持面3gに密着させた状態で、半導体ウェハ6を下部電極3によって保持する。
この後、図11に示すように扉25が閉じられ、電極昇降装置24により上部電極4を下降させる(ステップS3)。このとき、制御装置33において、記憶部92に保持されているそれぞれのプラズマ処理条件81の中から、動作プログラム82に基づいてプロセス制御部91によりプラズマダイシング工程における異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aが選択されて取り出されるとともに、この異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aに含まれる電極間距離Dの条件に基づいて、上部電極4と下部電極3との間の電極間距離Dが例えば5〜50mmの範囲内の所定の条件(すなわち、電極間距離D1)に設定される。
次いで真空ポンプ8を作動させ、処理室2内の減圧を開始する(ステップS4)。処理室2内が所定の真空度に到達したならば、上記選択された異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aに基づいて、ガス流量調整部21により選択されたガスが所定のガス組成かつ所定の流量に調整されて処理室2内に供給される(ステップS5)。具体的には、異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aに基づいて、第1の開閉バルブ22Aが開放されて、第1のガス供給部20AからSF6が第1の流量制御バルブ23Aによりその供給流量が調整されてガス混合部19に供給されるとともに、第3の開閉バルブ部22Cが開放されて、第3のガス供給部20CからO2が第3の流量制御バルブ23Cによりその供給流量が調整されてガス混合部19に供給される。なお、このとき、第2の開閉バルブ22Bは閉止された状態とされ、Heの供給は行われない。また、ガス混合部19において、SF6とO2とが10:2のガス組成となるように混合されて、処理室2内に供給される。
そしてガス供給過程において、処理室2内の圧力を圧力センサ28により検出してプラズマ処理条件81Aの中の圧力条件(例えば、100Pa)と比較し、当該検出された圧力が当該圧力条件に示す圧力に到達したことを確認する(ステップS6)。すなわち、下部電極3と上部電極4との電極間距離D、処理室2に供給されるガス組成、ならびに処理室2内の圧力を、異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aに設定する。
そして上記条件設定が完了した後、プラズマ処理条件81Aの高周波の周波数及び出力条件に基づいて、高周波電源部18を駆動して上部電極4と下部電極3との間に、当該条件に合致する高周波電圧を印加し、プラズマ放電を開始する(ステップS7)。これにより、上部電極4と下部電極3との間の放電空間において、供給された混合ガスをプラズマ状態に移行させる。このプラズマ発生により、当該プラズマがマスク側(レジスト膜31a側)から半導体ウェハ6に照射される。このプラズマの照射により、半導体ウェハ6の主材質であるシリコンのうち、レジスト膜31aに覆われていない切断線31bの部分のみが、当該プラズマによってプラズマエッチングされる。
これとともに、プラズマによって上部電極4と下部電極3との間の放電空間には直流印加回路32が形成される(図6参照)。これにより、下部電極3と半導体ウェハ6との間には静電吸着力が発生し、半導体ウェハ6は下部電極3に静電吸着力により保持される。このため保護シート30は下部電極3の保持面3gに良好に密着し、半導体ウェハ6はプラズマ処理過程において安定して保持されるとともに、下部電極3に備えられた冷却機能によって保護シート30が良好に冷却され、プラズマ放電によって発生する熱による熱ダメージが防止される。
また、このプラズマエッチングは、異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aに基づいて行われていることより、そのエッチング特性は、半導体ウェハ6の厚み方向に大きくなる。従って、図8(D)に示すように、それぞれの切断線31bに相当する半導体ウェハ6の表面を、その厚み方向にエッチングを行い、この切断線31bの幅に略相当するような幅の切断溝6cが形成される。
また、ステップS8において、この切断溝6cの深さが所定の深さに到達するまで、例えば、処理時間計測部95により計測された時間が、異方性エッチング用プラズマ処理条件81Aの処理時間の条件を経過するまで、ステップS7の異方性エッチングによるプラズマダイシングが行われる。
ステップS8において、当該所定時間を経過したものと判断された場合には、異方性エッチングを終了するとともに、プロセス制御部91により等方性エッチング用プラズマ
処理条件81Bが選択されて、当該条件に基づいて、ガス流量調整部21により選択されたガスが所定のガス組成かつ所定の流量に調整されて処理室2内に供給される(ステップS9)。具体的には、等方性エッチング用プラズマ処理条件81Bに基づいて、第1の開閉バルブ22Aが開放されて、第1のガス供給部20AからSF6が第1の流量制御バルブ23Aによりその供給流量が調整されてガス混合部19に供給されるとともに、第2の開閉バルブ部22Bが開放されて、第2のガス供給部20BからHeが第2の流量制御バルブ23Bによりその供給流量が調整されてガス混合部19に供給される。なお、このとき、第3の開閉バルブ22Cは閉止された状態とされ、O2の供給は行われない。また、ガス混合部19において、SF6とHeとが10:30のガス組成となるように混合されて、処理室2内に供給される。
そしてガス供給過程において、圧力センサ28により検出される処理室2内の圧力がプラズマ処理条件81Bの中の圧力条件(例えば、10Pa)に到達したことを確認する(ステップS10)。なお、下部電極3と上部電極4との電極間距離D1はそのままの状態に保たれる。
その後、プラズマ処理条件81Bの高周波の周波数及び出力条件に基づいて、高周波電源部18を駆動して上部電極4と下部電極3との間に、当該条件に合致する高周波電圧を印加し、プラズマ放電を開始することで、等方性エッチングによるプラズマダイシングを開始する(ステップS11)。
この等方性エッチングは、半導体ウェハ6の表面沿いの方向のエッチング特性と、厚み方向のエッチング特性とが略同じであるという特徴を有していることにより、プラズマが照射される部分においては、上記それぞれの方向に略均等にエッチングが施されることとなる。ただし実際には、等方性エッチングにおいても厚み方向のエッチング特性が表面沿いの方向のエッチング特性よりもやや強くなる傾向にあるが、上記異方性エッチングとは明らかに異なるエッチング特性を示すことには変わりはない。
このように等方性エッチングを用いたプラズマダイシングが行われると、図8(E)に示すように、上記異方性エッチングにより形成されたそれぞれの切断溝6cは、半導体ウェハ6の厚み方向だけでなく、表面沿いの方向にもその内周面の全体に対してエッチングが施されることとなる。従って、それぞれの切断溝6cは、その幅方向にやや拡大されながらその深さ方向にも拡大され、当該深さが半導体ウェハ6の全厚みに到達することで、半導体ウェハ6はそれぞれの半導体素子6dの個片毎に分割される(プラズマダイシング工程)。また、エッチング特性は、それぞれの切断溝6cの上部である入り口付近程強く、底部へ行くに従って弱くなる傾向にある。従って、このような等方性エッチングを施すことにより、図8(E)に示すように、それぞれの半導体素子6dにおける切断線に接する端部に湾曲凸面部であるR(アール)部6eを形成することができ、特に、それぞれの半導体素子6dのマスク配置面6b側に位置される端部(角部分)及びその矩形状平面の四隅部のそれぞれにR部6eが形成される。
なお、ステップS12において、この切断溝6cの深さが半導体ウェハ6の全厚みに到達するまで、例えば、処理時間計測部95により計測された時間が、等方性エッチング用プラズマ処理条件81Bの処理時間の条件を経過するまで、ステップS11の等方性エッチングによるプラズマダイシングが行われる。
ステップS12において、当該所定時間を経過したものと判断された場合には、等方性エッチングを終了する。これにより、半導体ウェハ6はそれぞれの半導体素子6dの個片に分割されるとともに、それぞれの半導体素子6dの端部にR部6eが形成されて、プラズマダイシング工程が完了する。
このプラズマダイシング工程が完了する際には、混合ガスの供給や高周波電圧の印加が停止されることとなる。その後、プラズマアッシング工程に移行するための電極間距離変更をおこなう(ステップS13)。具体的には、プロセス制御部91によりプラズマアッシング用のプラズマ処理条件が選択されて、当該条件に基づいて、図12に示すように電極昇降装置24により上部電極4を上昇させて、上部電極4と下部電極3との間の電極間距離を電極間距離D2に設定する。このようなプラズマアッシングによりマスク除去を行う際の電極間距離D2は、上述のプラズマダイシングにおける電極間距離D1よりも広く設定するようにしている。
その後、上記プラズマ処理条件に基づいてそれぞれのガス供給部20A〜20Cの中より選択されたガス供給部からプラズマアッシング用ガス(例えば、酸素)を、そのガス組成及び供給流量を調整しながら供給する(ステップS14)。そしてガス供給過程において処理室2内のガス圧力を検出して上記プラズマ処理条件と比較し、当該圧力が上記条件に示す圧力に到達したことを確認する(ステップS15)。
その後、高周波電源部18を駆動して上部電極4と下部電極3との間に高周波電圧を印加し、プラズマ放電を開始する(ステップS16)。これにより、上部電極4と下部電極3との間の放電空間において、供給されたガスをプラズマ状態に移行させる。このようにして発生したプラズマが、半導体ウェハ6のマスク配置面6b側に作用することにより、有機物よりなるレジスト膜31aはプラズマによってアッシング(灰化)される。
そしてこのアッシングが進行することにより、レジスト膜31aが徐々に消滅し、最終的には、図8(F)に示すように半導体ウェハ6のマスク配置面6aからマスクが完全に除去される。このマスク除去工程における高周波電源の出力は、上記プラズマ処理条件に基づいて、例えば100〜1000Wの範囲で設定された所定の値とされる。そしてマスクが完全に除去された後、プラズマ放電を停止する。
その後、真空ポンプ8の作動を停止し(ステップS17)、排気切換バルブ7を切り換えて大気開放を行う(ステップS18)。これにより、処理室2内の圧力が大気圧に復帰する。そして真空吸着をOFF状態にするとともに、静電吸着用DC電源をOFFにする(ステップS19)。これにより、それぞれの半導体素子6dの個片毎に分割され保護テープ30に保持された状態の半導体ウェハ6の吸着保持が解除される。
さらにその後、プラズマ処理後の半導体ウェハ6の搬出が行われる(ステップS20)。すなわち、吸着孔3eからN2ガスをブローしながら、吸着ヘッド27によって半導体ウェハ6を吸着保持して処理室2の外へ搬出する。これにより、プラズマ処理装置101において、プラズマダイシング及びアッシングの各工程を連続して行うプラズマ処理が終了する。
そして、保護シート30とともに搬出された半導体ウェハ6は、シート剥離工程に送られ、半導体素子6cの個片毎に分割して得られた半導体装置の回路形成面6aから、保護シート30を剥離する。このシート剥離は、図8(G)及び(H)に示すように、保持用の粘着シート37をそれぞれの半導体素子6dのマスク配置面6bに貼り付けて各半導体素子6dを粘着シート37に保持させた後に行われる。これにより半導体素子の製造工程が完了する。
ここで、上述のようにエッチング特性の異なる2種類のプラズマエッチングを組み合わせて行うようなプラズマダイシングが施されることにより形成された半導体素子6dの部分拡大断面図及び上面図を図14及び図15に示す。
図14に示すように、半導体素子6dのマスク配置面6b側におけるそれぞれの端部(図示上面側の端部)には、R部6eが形成されている。また、図15に示すように、半導体素子6dの矩形状の4つの隅(角)部分にもR部6eが形成されている。このように薄化された半導体素子6dの端部や角部分にR部6eを形成することにより、その抗折強度を向上させることができ、チップ欠け等の発生を抑制することができる半導体素子6dを、ダイシング処理を施すことで形成することができる。
また、このようなプラズマダイシングにおける異方性エッチングの処理時間は、例えば、マスクにより画定される切断線31bの線幅寸法と半導体ウェハ6の厚み寸法とに基づいて決定することができ、例えば、上記線幅寸法に基づいて、半導体ウェハ6の厚み寸法の1/2程度の深さの切断溝6cを形成するのに要する時間を、当該処理時間として決定することができる。また、等方性エッチングの処理時間は、切断線31bの線幅寸法と形成される半導体素子6dに求められる抗折強度から求めることができるR部6eの形成領域(形成範囲)の大きさとに基づいて決定することができる。例えば、抗折強度を高めたい場合には、R部6eの形成領域を大きくする(例えば、Rサイズを大きく採る)必要がある。あるいは、このようなR部6eの形成領域の大きさは、製造される半導体パッケージ部品50における半導体素子6dのR部6eの湾曲凸面と基板51の表面との間の性都合材料52の充填用の空間Sの大きさに基づいて求めることができる。
具体的な例を用いて、このようなそれぞれの処理時間の決定方法、すなわちプラズマエッチングの特性の切り換えのタイミングの決定方法について説明する。例えば、異方性エッチングを行った後に、等方性エッチングを行うような場合であって、厚さ50μmの半導体ウェハ6を用いて、要求される抗折強度より決定されるR部6eの大きさがR15μmであるそれぞれの半導体素子6dを形成するような場合について考えると、半導体ウェハ6の厚み方向における異方性エッチングによるエッチング量は35μmとなり、等方性エッチングによるエッチング量は15μmとなる。
ここで、異方性エッチングのエッチングレートをS1μm/minとし、等方性エッチングのエッチングレートをS2μm/minとすると、異方性エッチングの処理時間T1(sec)と等方性エッチングの処理時間T2(sec)は、数(1)、(2)のように算出することができる。
T1=(35μm/S1)×60 ・・・(1)
T2=(15μm/S2)×60 ・・・(2)
このようにして算出されたそれぞれの処理時間T1、T2は理論値であるので、これらに基づいて実際にプラズマエッチングを実験的に行って、その結果分割処理された半導体素子6dに形成されたR部6eの大きさを計測することで、それぞれの処理時間T1、T2の補正を行って、最適な処理時間を求めることができる。なお、異方性エッチングを先に行う場合においては、異方性エッチングの処理時間T1が、エッチング特性の切り換えのタイミングとなる。
また、プラズマダイシング処理において、異方性エッチングと等方性エッチングとの切り換えを複数回繰り返して行う場合には、それぞれの等方性エッチングの処理時間の合計時間によって、R部6eの大きさを決定することができる。
なお、上述のプラズマダイシングにおいては、エッチング特性が異なる2種類のエッチングとして、異方性エッチングを施した後に、等方性エッチングを施すような場合について説明したが、本実施形態はこのような場合にのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、先に等方性エッチングを施して、その後、異方性エッチングを施すことでプラズマダイシングを行うような場合であってもよい。このように先に等方性エッチングを施すような場合であっても、そのエッチング特性により切断線31bの形成位置を厚み方向にエッチングを行うことで切断溝6cを形成することができるとともに、当該形成の際に切断溝6cを幅方向にもエッチングすることでR部6eの形成を行うことができる。さらに、このようにR部6eが形成された切断溝6cに対して、異方性エッチングを施すことで、R部6eの形状を保持しながら切断溝6cの深さを半導体ウェハ6の厚さにまで拡大してダイシングを行うことができる。
次に、このように製造された半導体ウェハ6におけるそれぞれの半導体素子6dを用いて、半導体パッケージ部品50を製造する方法について説明する。この説明にあたって、半導体ウェハ6より個片に分割された半導体素子6dを取り出して、基板51への実装を行う半導体素子実装装置201の模式図を図16に示す。
図16に示すように、半導体素子実装装置201は、分割処理された半導体ウェハ6が、それぞれの半導体素子6dを取り出し可能に載置される素子供給部210と、半導体パッケージ部品50のベースとなる複数の基板51が載置される基板載置部220と、素子供給部210に載置された半導体ウェハ6より、一の半導体素子6dを吸着保持して取り出し、当該半導体素子6dを基板載置部220の上方に移動させて、一の基板51の上面への実装を行う実装ヘッド230とを備えている。なお、実装ヘッド230は、上記吸着保持を行う吸着ノズル231を備えている。また、実装ヘッド230は、半導体ウェハ6の表面沿いの方向への実装ヘッド230の移動を行う図示しない移動装置が備えられている。
このような半導体素子実装装置201を用いて行われる半導体素子6dの基板51への実装動作について、図17(A)〜(D)の模式説明図と、図18(A)、(B)の模式説明図とを用いて、具体的に説明する。
まず、図16において、分割処理が行われた半導体ウェハ6が載置された素子供給部210の上方に、実装ヘッド230が移動され、取り出しが行われる半導体素子6dと、吸着ノズル231との位置合わせが行われる。一方、素子供給部210には、図17(A)に示すように、粘着シート37に貼着された半導体素子6dを粘着シート37の下方から突き上げることにより、当該半導体素子6dを粘着シート37から剥離させて、吸着ノズル231による取り出しの補助を行う突き上げ装置211が備えられており、この突き上げ装置211には、当該突き上げ動作を行う昇降可能な突き上げピン212が装備されている。
この吸着ノズル231と取り出しが行われる半導体素子6dとの位置合わせの際に、当該半導体素子6dと突き上げ装置211との位置合わせも同時的に行われる。この位置合わせが行われた状態が、図17(A)に示す状態であり、この状態においては、突き上げピン212は、突き上げ装置211の内部に格納された状態にある。
その後、図17(B)に示すように、吸着ノズル231の先端が半導体素子6dの回路形成面6aに当接されて吸着保持が行われるとともに、突き上げ装置211の突き上げピン212の上昇が開始される。図17(C)に示すように、さらに上昇された突き上げピン212は、粘着シート37を貫通して、粘着シート37から半導体素子6dを剥離させる。さらに、図17(D)に示すように、この突き上げ動作と連動して、吸着ノズル231が上昇することで、半導体ウェハ6から半導体素子6dが取り出される。この半導体素子6dの粘着シート37からの剥離動作の際に、半導体素子6dの実装側表面6bの端部にR部6eが形成されていることにより、その剥離性を良好なものとすることができる。特に、薄化された半導体素子6dの上記剥離性が良好とされることにより、当該剥離の際に半導体素子6dを損傷させる恐れを低減することができ、その後に形成される半導体パッケージ部品50の構造的強度が(当該損傷の発生により)低下することを確実に防止することができる。
その後、図16の半導体素子実装装置201において、実装ヘッド230が、素子供給部210の上方から、基板載置部220の上方へと移動される。基板載置部220においては、複数の基板51が載置されており、その上面における半導体素子6dの実装位置には、予め接合材料52が例えば塗布供給されている。
このような状態の基板51の上方に、半導体素子6dを吸着保持した状態の吸着ノズル231を移動させて、図18(A)に示すように、基板51における実装位置と吸着ノズル231との位置合わせを行う。その後、図18(B)に示すように、吸着ノズル231を下降させることで、接合材料52を介在させて、半導体素子6dを基板51の実装位置に押し付けるようにして接合する。このような動作を行うことで、半導体素子6dの実装側表面6bの端部に形成されたR部6eと基板51の表面との間に、略隙間が空くことが無いように接合材料を充填させることができる。その後、吸着ノズル231による吸着保持を解除することで、半導体素子6dが基板51に実装される。
さらにその後、半導体素子6dの外部接続用電極53を基板51の電極51aにワイヤ54で接続することで、図1に示すような半導体パッケージ部品50が完成する。
上記第1実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
まず、薄化された半導体ウェハ6をそれぞれの半導体素子6dの個片に分割するダイシング工程において、ダイサーやレーザ光を用いることなく、プラズマエッチングを施すことで行うことにより、当該ダイシングの際に半導体ウェハ6の欠片が発生することを確実に防止することができ、ダイシングにおける加工歩留まりの低下を抑制することができる。
また、このようなプラズマダイシングにおいて、互いにそのエッチング特性が異なる異方性エッチングと等方性エッチングとを使い分けて、いずれか一方の特性のエッチングを施した後、エッチング条件の変更(切り換え)を行い、他方の特性のエッチングを行うことで、抗折強度を向上させることができるような加工を半導体素子6dに対して施すことができる。
具体的には、例えば、プラズマダイシングにおいて、先に異方性エッチングを施すことで、マスクにより画定された切断線31bが配置されている半導体ウェハ6の表面部分に、厚み方向に強いエッチング特性により微細な幅の溝として切断溝6cを形成することができる。その後、エッチング特性を等方性エッチングに切り換えて、当該形成された切断溝6cの内周面に対して、半導体ウェハ6の厚み方向だけでなく、その表面沿いの方向にもエッチングを施すことで、切断溝6cを深さ方向だけでなく、幅方向にもエッチングを行うことができる。このようなエッチングを施すことで、半導体素子6dの端部や角部分に湾曲凸面部であるR部6eを形成するとともに、切断溝6cの底部を保護シート30の表面にまで到達させて、半導体ウェハ6の分割を行うことができる。このように分割されたそれぞれの半導体素子6dの端部や角部分にR部6eを形成することで、半導体素子6d自体の抗折強度を向上させることができ、薄化された半導体素子であっても高い強度を有する半導体素子を提供することができる。
従って、薄化された半導体ウェハ6に対するダイシング処理を、欠片の発生を防止して損傷の発生を防止するだけでなく、それぞれの半導体素子6dにR部6eを形成することで、抗折強度を向上させることができる。
このようなダイシング処理を行うことで、半導体素子6dの実装側表面6bの端部にR部6eを容易に形成することができ、また、R部6eを形成させるための複雑な処理を行う必要もない。
さらに、このような構造の半導体素子6dのR部6eの湾曲凸面と基板51の表面との間に接合材料52が充填されるような構造を有する半導体パッケージ部品50においては、様々な方向からの外力に対抗する構造を有することとなり、より高い構造的強度を得ることができる。
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、半導体素子へのR部の形成方法は、上記第1実施形態によるような場合のみに限られるものではない。上記第1実施形態とは異なる方法により半導体素子にR部の形成を行いながら半導体素子を製造する方法を、本発明の第2の実施形態として以下に説明する。
まず、このような半導体素子の製造工程において用いられるプラズマ処理装置300の構成を模式的に示す模式構成図を図19に示す。このプラズマ処理装置300は、複数の半導体素子が形成された半導体ウェハに対して、プラズマエッチングを施すことにより、それぞれの半導体素子の個片への分割処理(プラズマダイシング処理)を行う装置である。まず、このプラズマ処理装置300の概略構成について図19を用いて以下に説明する。
図19に示すように、プラズマ処理装置300は、半導体ウェハ1に対してプラズマ処理を行うための密閉された空間である処理室312をその内部に形成する真空チャンバ311を備えている。この真空チャンバ311の内部には、下部電極313と上部電極314とが互いに対向して平行に配置されている。また、下部電極313の図示上面には、略円盤状の半導体ウェハ301を載置可能な載置面313aが形成されており、この載置面313aには、半導体ウェハ301が絶縁リング318によりその周囲全体が囲まれた状態にて載置されるようになっている。このような絶縁リング318は、異常放電の防止や下部電極313をプラズマから保護する機能を有している。また、この載置面313aは、真空吸引又は静電吸引によって当該載置された半導体ウェハ301を解除可能に吸引保持する機能を有している。
また、上部電極314には、この上部電極314と下部電極313との間に形成された空間(放電空間)内にプラズマ発生用ガスを供給するための通路であるガス供給孔314aが上部電極314の内部を貫通するように形成されている。また、上部電極314において、真空チャンバ311の外部に連通するように形成されたガス供給孔314aの一端は、真空チャンバ311の外部に備えられたプラズマ発生用ガス供給部317と接続されており、プラズマ発生用ガス供給部317より例えばフッ素系のプラズマ発生用ガスをガス供給孔314aを通して処理室312内の供給することが可能となっている。なお、プラズマ発生用ガス供給部317とガス供給孔314aの上記一端との間のガス供給用通路の途中には、当該供給されるガス流量を所望の流量に調整するガス流量調整部の一例である流量調整バルブ316が備えられている。さらに、上部電極314の図示下面には多孔質プレート315が装備されており、ガス供給孔314aを通じて供給されたプラズマ発生用ガスが、この多孔質プレート315を介して、下部電極313の載置面313aに載置された半導体ウェハ1に対して均一に吹き付けるように、処理室312内に供給することが可能となっている。
また、プラズマ処理装置300には、処理室312内を排気することで、処理室312内を所望の圧力に減圧する(すなわち真空化する)真空排気装置の一例である排気ポンプ319が備えられている。また、下部電極313には高周波電源部320が電気的に接続されており、高周波電源部320により下部電極313に高周波電圧を印加することが可能となっている。
このような構成のプラズマ処理装置300においては、下部電極313の載置面313aに半導体ウェハ301を載置して真空チャンバ311を密閉した後、排気ポンプ319により処理室312内を排気して真空化するとともに、プラズマ発生用ガス供給部317より所定の量のプラズマ発生用ガスを処理室312内に供給した状態で、高周波電源部320を駆動して下部電極313に高周波電圧を印加することにより、上部電極314と下部電極313との間の放電空間にフッ素系のプラズマを発生させることができる。このように発生されたプラズマを半導体ウェハ301の表面に対して照射することにより、当該照射された表面をエッチング(すなわち、プラズマエッチング)することができる。なお、プラズマ処理装置300においては、下部電極313の内部に冷媒を循環させることで、下部電極313の載置面313aを通して載置されている半導体ウェハ301を冷却する冷却ユニット321が備えられている。このように冷却ユニット321が備えられていることにより、プラズマ処理の際に発生した熱により半導体ウェハ301が所定温度以上に昇温することを防止することが可能となっている。
次に、このような構成のプラズマ処理装置300を用いて行われる半導体ウェハ301の分割処理を含むそれぞれの半導体素子の一連の製造工程について、以下に説明する。当該説明にあたって、この半導体素子の製造工程の手順を示すフローチャートを図20に示し、さらにこの製造工程の手順を説明するための模式説明図を図21(A)〜(D)及び図22(A)〜(D)に示す。
まず、図20のフローチャートのステップS31において、図21(A)に示すように半導体ウェハ301における第1の表面である回路形成面301aに対して、成膜、露光、エッチング等の処理を施すことにより、半導体素子となる複数の回路形成部302の形成を行う(半導体素子形成工程)。さらに、それぞれの回路形成部302には、回路形成面301aから露出するように導電性材料により複数の外部接続用電極303が形成される。このようにそれぞれの回路形成部302及び外部接続用電極303が形成された半導体ウェハ301は、その形成状態に不良箇所がないかどうかを判断するために、それぞれの回路形成部302及び外部接続用電極303の形成状態の検査が行われる(半導体素子検査工程、ステップS32)。なお、このような検査において不良であると判断された半導体素子に対しては、半導体ウェハ301におけるその位置情報を記憶すること等により、その後半導体素子として使用されることがないような必要な処置が採られる。
また、上記検査工程が完了した半導体ウェハ301が、その後行われるそれぞれの処理の際に回路形成面301aが損傷を受けることがないように、回路形成面301aに保護シート304が粘着剤を介して剥離可能に貼着される。なお、この保護シート304は、回路形成面301aの全面を覆いかつ半導体ウェハ301の端部から外側にはみ出すことがないように半導体ウェハ301の外形形状と略同じ形状に整形したものが用いられる。このような形状の保護シート304が用いられることにより、その後の処理、例えばプラズマ処理において、半導体ウェハ301からはみ出した保護シート304がプラズマによって焼損するというダメージの発生を防止することができる。
次に、図20のステップS33において、半導体ウェハ301の厚みの薄化を行う研磨工程が行われる。具体的には、図21(C)に示すように、半導体ウェハ301の回路形成面301aを図示下側として、保護シート304を介して半導体ウェハ301を研磨装置の保持テーブル332上に載置するとともに、その載置位置を保持させる。この状態において、半導体ウェハ301の回路形成面301aの反対側の表面である被処理面301b(第2の表面、その後、実装側表面となる)に対して、研削ホイール331を用いて研磨が行われる。研削ホイール331の図示下面には研削用砥石が固着されており、この砥石を半導体ウェハ301の被処理面301bに接触させながらその表面沿いに回転させることで、被処理面301bの研削が行われる。このような研磨処理により、半導体ウェハ301は100μm以下程度の厚み、例えば、本第2実施形態では厚みが50μmとなるように薄化が行われる。
次に、このように薄化が行われた半導体ウェハ301の被処理面301bに、それぞれの半導体素子の分割位置に合わせて分割用溝部301cを形成する(溝形成工程(ハーフカットダイシング)、ステップS34)。具体的には、図21(D)に示すように、保護シート304を介して半導体ウェハ301をダイサーの保持テーブル342上に載置するとともにその載置位置を保持させて、半導体ウェハ301の被処理面301bに対して、円盤型回転刃341を用いて分割用溝部301cを形成する。半導体ウェハ301においては、それぞれの回路形成部302が格子状に配列されており、それぞれの回路形成部302、すなわちそれぞれの半導体素子を個別に分割できるようにその分割位置が格子状に定められている。円盤型回転刃341を回転駆動させながら、半導体ウェハ301の被処理面301bに円盤型回転刃341を接触させて上記分割位置に沿って直線的に移動させることで、当該分割位置に沿って格子状の分割用溝部1cを形成することができる。なお、このような円盤型回転刃341としては、いわゆるダイサーを用いることができる。
ここで、このように形成された分割用溝部301cの拡大断面図を図23に示す。図23に示すように、分割用溝部301cはその底面が回路形成面301aに到達しないようにその深さ寸法Lが決定されて形成されている(すなわち、ハーフカットが行われている)。このように形成することで、この分割用溝部301cの形成によりそれぞれの半導体素子が個片に分割されてしまうことが防止されている。ここで、「分割用溝部」とは、半導体ウェハ301の被処理面301bに形成された凹部であって、その底面が回路形成面301aに到達していないもののことをいう。すなわち、このような凹部の底面が回路形成面301aに到達(すなわち貫通)しているようなものは、本明細書においては分割用溝部301cとは言わない。
また、このような分割用溝部301cの深さ寸法Lは、最終的に形成されるそれぞれの半導体素子の厚さ寸法以上となるように決定される。本実施形態においては、薄化された半導体ウェハ301の厚さ寸法50μmに対して、分割用溝部301cの深さ寸法Lが25μmとされており、最終的に形成される半導体素子の厚さ寸法が25μmとなっている。また、この場合、分割用溝部301cの底面と回路形成面301aとの間の距離寸法は、分割用溝部301cとしてその形状が保持できる最小限の距離寸法を考慮して、例えば5〜25μmの範囲で決定することができる。また、研磨工程(ステップS33)及び溝形成工程(ステップS34)のような機械的加工が施されることにより、図23に示すように半導体ウェハ301の被処理面301bと分割用溝部301cの内表面の近傍には、付加された応力が残留するダメージ層301fが形成されることとなる。
このように分割用溝部301cの底面と回路形成面301aとの間の距離寸法の下限が5μmとして規定していることに対する第1の理由は、上記ハーフカットダイシングの後の半導体ウェハ301の強度を確保するためであり、第2の理由は、保護シート304がプラズマに曝される時間を少なくするためである。半導体ウェハ301の被処理面301bに形成されたダメージ層301fを除去するためには、被処理面301bをその表面より少なくとも5μmの厚さ除去する必要がある。しかしながら、分割用溝部301cの底面と回路形成面301aとの間の距離寸法が5μm未満であれば、被処理面301bに形成されたダメージ層301fが除去される前に分割用溝部301cが除去されてしまうこととなり、被処理面301bのダメージ層301fを完全に除去するまで、分割用溝部301cが形成されていた部分に相当する保護シート304が高温のプラズマにさらされることとなる。そのため、被処理面301bのダメージ層301fの除去完了前に、分割用溝部301cが除去されないようにすることで、このような問題の発生を未然に防止可能とし、分割用溝部301cの底面と回路形成面301aとの間の距離寸法の下限を5μm以上として規定している。
次に、このように分割用溝部301cが形成された半導体ウェハ301に対して、プラズマエッチングを行う(プラズマエッチング工程、ステップS35)。本第2実施形態においては、半導体ウェハ301の表面にマスク層を形成することなく、このプラズマエッチングが行われる。
具体的には、図19に示すプラズマ処理装置300において、下部電極313の載置面313aに、分割用溝部301cが形成された被処理面301bを上面として、保護シート304を介して半導体ウェハ301を載置する。その後、真空チャンバ311を密閉し、排気ポンプ319を駆動して処理室312内を真空化するとともに、プラズマ発生用ガス供給部317より流量調整バルブ316にて調整された流量のガスを、ガス供給孔314a及び多孔質プレート315を通して処理室312内に供給する。このような状態にて高周波電源部320により下部電極313に高周波電圧を印加することで、上部電極314と下部電極313との間の放電空間にプラズマを発生させることができる。
図22(A)に示すように、当該放電空間にて発生されたプラズマ351は、下部電極313の載置面313aに載置された状態の半導体ウェハ301の被処理面301bの全体とそれぞれの分割用溝部301cの内表面に対して照射される。このようにプラズマが照射されることで、被処理面301bの全体と分割用溝部301cの内表面のそれぞれに対してエッチングが施されることとなる。
半導体ウェハ301の被処理面301bの全体に対してプラズマエッチングが施されることにより、半導体ウェハ301の厚みが薄化され、それとともに、それぞれの分割用溝部301cの内表面に対してプラズマエッチングが施されることにより、それぞれの分割用溝部301cが除去される。このようにそれぞれの分割用溝部301cが除去されることで、図22(B)に示すように、半導体ウェハ301は、上記分割位置に沿ってそれぞれの半導体素子301dの個片に分割されることとなる。ここで「分割用溝部301cが除去される」とは、分割用溝部301cの底面に対してエッチングが施されることで当該底面が回路形成面301aに近づけられ、最終的に当該底面が回路形成面301aと合致されることで当該底面が消滅状態とされることをいう。すなわち、分割用溝部301cが除去されることで、半導体ウェハ301において分割位置に沿って、被処理面301bと回路形成面301aとが貫通された状態とされることとなる。
ここで個片に分割された状態の半導体素子301dにおける上記分割位置付近の部分拡大断面図を図24に示す。図24に示すように、プラズマエッチングが施されることにより、被処理面301bとともに分割用溝部301cの内表面もエッチングされることとなるが、従来のプラズマエッチングのように被処理面301bにマスク層が配置されていないため、分割用溝部301cの入り口端部の形成される角部(エッジ部)も同様にエッチングが施されることとなり、その結果、当該角部が除去されて、半導体素子301dの被処理面301b側の端部には、湾曲凸面部の一例であるR(アール)部301eが形成されることとなる。なお、分割用溝部301cに対するプラズマエッチングにより、半導体ウェハ301の厚み方向を主としてエッチングが行われるが、そのエッチング特性により半導体ウェハ301の表面沿いの方向にも僅かにエッチングが行われることとなる。このようなエッチング特性は、それぞれのR部301eの形成に寄与することとなるが、分割用溝部301cの幅寸法が当該エッチングにより拡大されることを考慮して、予め分割用溝部301cの幅寸法を決定しておくことが望ましい。
また、半導体ウェハ301の被処理面301bとそれぞれの分割用溝部301cの内表面に対して、プラズマエッチングが施されることで、それぞれの半導体素子301dへの分割処理が行われるとともに、上記機械的加工により生じたダメージ層301fを除去することができる。
プラズマ処理装置300においてこのようなプラズマエッチングが完了すると、高周波電源部320による高周波電圧の印加、プラズマ発生用ガス供給部317よりのガスの供給、及び排気ポンプ319の駆動が停止され、その後、真空チャンバ311が開放されて、半導体ウェハ301が取り出される。
プラズマ処理装置300から取り出された半導体ウェハ301に対して、図22(C)に示すように、被処理面301bに粘着シート(ダイボンディングシート)306を貼り付ける(ダイボンディングシート貼付け工程、ステップS36)。それとともに、図22(D)に示すように、半導体ウェハ301の回路形成面301aを保護していた保護シート304が剥離される。ここでこの粘着シート306は、半導体ウェハ301よりも大きなサイズを有しており、さらにその周囲に図示しないウェハリング(治具)によって固定されており、このウェハリングを把持することで半導体ウェハ301のハンドリングを行うことが可能となっている。以上で半導体素子の製造工程が完了する。
このように粘着シート306に貼着された状態のそれぞれの半導体素子301dの回路形成面301aを、例えば吸着ノズルにて吸着保持し、その状態で吸着ノズルを上昇させることで、吸着保持された半導体素子301dを粘着シート306から剥離して取り出すことができる。
このようにして形成された半導体素子301dにおいては、その実装側表面301bの端部にR部301eが形成されることとなり、このような半導体素子301dを用いて、上記第1実施形態の半導体パッケージ部品50と同様に、その構造的強度が向上された半導体パッケージ部品を製造することができる。
さらに、上記第2実施形態による方法では、マスクの配置及び除去という工程を不要としながら、R部を有する半導体素子を製造することができ、半導体素子の製造の効率化を図ることができる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。