JP2005239868A - 接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた接着力、耐水性、耐用剤性、保存安定性を有する接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子分散体を提供すること。
【解決手段】 アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有する結晶性ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなる樹脂を含有する樹脂粒子の水分散体(I)と沈降防止剤(II)とを含有することを特徴とする接着剤用ポリエステル樹脂粒子水分散体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、優れた接着力、耐水性、耐用剤性、保存安定性を有する接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子分散体に関する。
ホットメルト接着剤は、有機溶剤を実質的に含まないため環境衛生上好ましく、また短時間で接着できるので生産性が良い等、種々の長所を有している。かかるホットメルト接着剤に使用される樹脂バインダ−に要求される性能としては、〔1〕加熱により容易に溶融し、被着体に対し良好な濡れ性を有し、〔2〕接着力が高く、〔3〕耐水性に優れること、等が挙げられる。ポリエステル樹脂はPET等への接着性が良好であるため、かかるホットメルト接着剤に使用されている。
ポリエステル樹脂をホットメルト接着剤として実用に供する方法としては、例えば、ポリエステル樹脂の粒子を水媒体中に分散した水分散体を用い、この水分散体を被着体に塗布する方法等がある。この水分散体は長期保存後には、容器等の底に堅い凝集物やハードケーキが沈降して水分散体が不均一状態となり、再度使用する際には凝集物やハードケーキを機械的に解砕するなどの作業が必要で、そのための設備が必要となるなどしてコスト面で不利で、また生産性が低下する等の問題もある。
この問題を解決し、接着力が高く、耐水性に優れ、かつ、保存安定性も良好な接着剤用水分散液として、例えば、親水性基及び疎水性基を併せ有し、かつGPC法による重量平均分子量が10,000〜500,000であるポリエステル樹脂(A)を必須の成分として含有する樹脂溶融体を、該ポリエステル樹脂(A)の溶融状態を維持しつつ水性媒体中に分散させて得られた球形ポリエステル樹脂粒子の分散液であって、かつ、沈降防止剤(B)を含有する分散液がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、接着力、耐水性が十分でない。
特開2002−226819(第2頁、第7−9頁)
本発明の課題は優れた接着力、耐水性、耐用剤性、保存安定性を有する接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、前記特許文献1において疎水性基としてアルキル基および/またはアルケニル基を、疎水性基としてカルボキシル基を有し、更に結晶構造を有する結晶性ポリエステル樹脂を用いると、製造方法によらずより接着力、耐水性、保存安定性に優れる接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体が得られること等を見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有する結晶性ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなる樹脂を含有する樹脂粒子の水分散体(I)と沈降防止剤(II)とを含有することを特徴とする接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体を提供するものである。
本発明の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体は接着力が強く、耐水性に優れ、保存安定性も良好である。従って、各種基材を接着するホットメルト接着剤として好適に使用することができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有する結晶性ポリエステル樹脂(A)は、例えば、
1.二塩基酸や二価のアルコールのうち結晶性成分となる成分と、アルキル基やアルケニル基を有する成分として好ましくはアルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸を必須として、必要に応じその他の二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中にて加熱下で酸価を測定しながら脱水縮合する方法、
2.末端にカルボキシル基を有する結晶性ポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる方法、
3.末端に水酸基を有するカルボキシル基含有結晶性ポリエステル樹脂を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる方法、
等の調製方法により得られる。
結晶性ポリエステル樹脂(A)の有するアルキル基、アルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
結晶性成分となる二塩基酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸や、アジピン酸、アゼライン酸等の脂肪族二塩基酸等が挙げられる。結晶成分となる二価のアルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオ−ル、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコール等の脂肪族ジオール類等が挙げられる。結晶性成分は、塩基酸とアルコールの両方を用いても良いし、どちらか一方を用いても良い。
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、構成する酸成分の65〜100モル%、好ましくは80〜100モル%がテレフタル酸であり、アルコール成分の70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%が1,5−ペンタンジオールである結晶性ポリエステル樹脂であれば、優れた接着力と耐水性、耐溶剤性とを合せ持つのでより好ましい。
アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等の二塩基酸やそれらの無水物が挙げられる。
必要に応じて使用するその他の二塩基酸やその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、修酸、マロン酸、コハク酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の芳香族又は脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸等が挙げられる。
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
必要に応じ使用するその他の二価のアルコールとしては、例えば、1,2−プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等のアラルキレングリコ−ルまたは脂環族のジオ−ル類等が挙げられる。
三官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
また、三官能以上の多価アルコールとして、下記に示すようなポリエポキシ化合物も挙げられる。例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、水添ビスフェノールA等の種々の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の種々のフェノ−ル性水酸基の2個を含有する化合物のポリグリシジルエーテル類;前記したフェノ−ル性水酸基の2個を含有する化合物のエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加体等の誘導体のジグリシジルエーテル類;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の、種々のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の種々の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネン、ビニルシクロヘキセン等の種々の炭化水素系ジエンのビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の種々の脂環式ポリエポキシ化合物;ポリブタジエン、ポリイソプレン等の種々のジエンポリマーのエポキシ化物;などが挙げられる。
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
製造方法2.で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等、各種の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、カージュラE10(シェルケミカル社製)、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
製造方法3.で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。なかでも、n−ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
前記した、二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
また、前記した二価のアルコールや三官能以上の多価アルコール、一価のアルコールについても、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
さらに、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等の、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、例えば、前記調製方法1.で得られるアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有する結晶性ポリエステル樹脂(A1)であれば良いが、なかでも、調製方法2.で得られる、末端にカルボキシル基を有する結晶性ポリエステル樹脂(a2)の末端カルボキシル基に、炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させてなる末端構造を持つポリエステル樹脂(A2)や、調製方法3.で得られる、末端に水酸基を有する結晶性ポリエステル樹脂(a3)の末端水酸基に、炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて得られる末端構造を有するポリエステル樹脂(A3)であれば、樹脂粒子の水性媒体中での分散が良好になることから好ましく、なかでも、水性媒体への分散性が良好なことと、接着性、耐水性、耐溶剤性がより優れることからポリエステル樹脂(A3)が特に好ましい。この際使用する結晶性ポリエステル樹脂(a2)や結晶性ポリエステル樹脂(a3)は、既にアルキル基やアルケニル基を含有していても良いし、含有していなくても良い。
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A2)の有する末端構造やポリエステル樹脂(A3)の有する末端構造を、それぞれ単独でポリエステル樹脂1分子中に含んでいても良いし、これらの末端構造を両方有していてもよい。
また、ポリエステル樹脂(A2)のなかでは、下記の一般式(1)および/または(2)で示される末端構造を有するポリエステル樹脂が、より好ましい。
Figure 2005239868
(式中のRは、炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を表す。)
一般式(1)、(2)中の炭素原子数4〜20のアルキル基や炭素原子数4〜20のアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でも良く、例えば、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ペプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
前記した調製方法で使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器等の回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、前記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
また、調製方法3.によりポリエステル樹脂(A3)を調製する際には、酸無水物の開環によって生成するカルボキシル基がさらに他の水酸基と脱水縮合反応をしない条件で開環付加反応を行う必要があり、脱水縮合反応を起こさない開環付加反応条件としては、特に限定はないが、例えば、脱水が起こる240℃程度の温度から開環付加反応温度を200℃程度に下げる、撹拌回転速度を低下させて水の蒸発を抑制する、反応系中に窒素ガス等の不活性ガスを導入している場合はその量を最小限に抑える、減圧反応を行って脱水縮合をしている場合には、その減圧反応を停止し、常圧反応に戻す等の方法が一般的である。
次に結晶性ポリエステル樹脂(A)の性状について説明する。
ポリエステル樹脂(A)は、GPC法による重量平均分子量(Mw)が10,000〜300,000であることが被着体との濡れ性が向上するなどして、接着性、耐水性、耐溶剤性が向上するので好ましく、なかでも15,000から200,000が特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂(A)を必須成分とする樹脂溶融体(I)を水性分散体とする際には、水性媒体中での分散性を良好にするために、ポリエステル樹脂(A)は、塩基性化合物で中和されるカルボキシル基を有している必要があるが、ポリエステル樹脂(A)の酸価としては、5〜140mgKOH/gの範囲であることが好ましく、なかでも6〜100mgKOH/gの範囲であることが特に好ましい。
また、結晶性ポリエステル樹脂(A)の水酸基価についても、水性媒体中での分散性を良好にするために、5〜100mgKOH/gの範囲であることが好ましく、なかでも7〜70mgKOH/gの範囲であることが特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、接着性、耐水性、耐溶剤性に優れる樹脂粒子が得られることから、その溶融粘度が1×104Pa・s となる温度(以下「T4」と略記する。)が、55〜170の範囲のものが好ましく、80〜170℃の範囲がより好ましく、90〜140℃の範囲が特に好ましい。また、同様の理由により示差走査熱量計(以下「DSC」と略記する。)による結晶融解熱量は3〜60J/gの範囲がが好ましく、5〜55J/gの範囲がより好ましく、10〜50J/gの範囲が特に好ましい。尚、本発明において結晶融解熱量の測定は、ポリエステル樹脂の温度を240℃に昇温して溶解したのち、溶解した樹脂を、直径11cm、高さ13cmのブリキ缶に500g入れて25℃で2週間放置した樹脂を破砕して無作為に取り出した3つのサンプルを用いて測定し、その平均値を求めることにより行った。
さらにDSCによるガラス転移温度(以下「Tg」と略記する。)は、接着性、耐水性、耐溶剤性に優れることから−20〜50℃の範囲であることが好ましく、−10〜30℃の範囲であることがより好ましく、−10〜10℃の範囲であることが特に好ましい。
本発明で用いる水分散体(I)の好ましい製造方法としては、例えば、
工程(1) 結晶性ポリエステル樹脂(A)と、その他必要に応じて添加剤、例えば保水剤、分散助剤などを加圧ニーダー、加熱3本ロール、2軸押出混練機などを用いて溶融混練して、樹脂溶融体を製造し、
工程(2) 次に、この樹脂溶融体を、ポリエステル樹脂(A)の溶融温度以上の温度に加熱し、塩基性化合物を含有させた加熱された水性媒体中に、必要により加圧下で、溶融状態で機械的手段により分散させ、
工程(3) その後、好ましくは直ちに急速冷却する、
等の工程からなる製造方法等が挙げられる。
上記の製造方法では、ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基の中和を、塩基性化合物を含有した水性媒体と混合することにより行っているが、該カルボキシル基の中和は、この方法に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基の塩基性化合物による中和を行った後、樹脂溶融体を水性媒体中に機械的手段で分散させる方法や、樹脂溶融体を水性媒体中に機械的手段で分散させたのち、攪拌下で塩基性化合物を加えて中和する方法であっても良い。
結晶性ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基を中和する塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、それらの炭酸塩、それらの酢酸塩など、更には、アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。これらのなかではアンモニア水が好ましい。また、これら塩基性化合物は単独使用でもよいし、2種類以上の併用でも構わない。
塩基性化合物の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂(A)を水性媒体中に安定に分散させるような量であれば良く制限は無いが、ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基に対して、通常0.5〜6.0倍当量である。
水性媒体は、加熱時に必要に応じて加圧してもよい。樹脂溶融体の溶融温度が低い場合は、必ずしも加圧は必要ないが、溶融温度が100℃以上の場合には、水性媒体が沸騰しないように加圧する必要がある。
前記工程(2)の樹脂溶融体を水性媒体中に機械的手段により微分散させるための装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)、連続式超音波ホモジナイザー(日本精機株式会社)、ナノマイザー(ナノマイザー社)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、ハレル型ホモジナイザー、スラッシャ(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)などが挙げられ、なかでも、回転型連続分散装置であるキャビトロンが分散能力が高く、球形樹脂粒子の製造が容易なことから好ましい。
上記回転型連続分散装置であるキャビトロンは、スリットを有するリング状の突起を備えた固定子とスリットを有するリング状の突起を備えた回転子とが間隔を保って相互に咬み合うように同軸上に設けられた構造を有する回転型連続分散装置であり、これを用いた分散方法は、固定子と回転子の中心部分に樹脂溶融体と水性媒体とを供給して、回転子を回転させながら該スリットと該間隔とを通して中心部分から外周の方向に流動させることにより、水性媒体中に樹脂溶融体を球形粒子状で分散させることを特徴とする。
本発明で用いる樹脂粒子の水分散体の粒子径は、結晶性ポリエステル樹脂(A)の酸価、中和に使用する塩基性化合物の種類と量(カルボキシル基に対する量)、ポリエステル樹脂(A)と水性媒体との重量比、等の因子を制御することにより容易に調整することができる。例えば、同一の材料、条件でもポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基に対して、中和に使用する塩基性化合物の量を多くすると、体積平均粒子が小さい球形ポリエステル粒子が得られ、塩基性化合物の量を少なくすると、体積平均粒子の大きい球形ポリエステル粒子が得られる。
本発明で用いる水分散体(I)中のポリエステル樹脂粒子は、その形状が球形である。。上記ポリエステル樹脂粒子が球形であることにより粉体としての流動性に優れ、被着体への濡れ性が向上する。本発明にいう「球形」は、真球状はもちろん、楕円状等を含む広い概念であるが、形状中に鋭利な尖点部分を含まないものをいう。接着力及び湿気に対する耐久性が向上する点から真球状が好ましい。
本発明で用いる水分散体(I)は、結晶性ポリエステル樹脂(A)と共に、他の樹脂成分、例えば、結晶性ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、ロジン、ロジンフェノ−ル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコ−ン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の成分を本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。
本発明で用いる水分散体(I)は、接着剤の使用方法、使用部位等に応じて、ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径を好適な範囲に容易に制御することにより、より好ましい接着力を得ることができる。例えば、布の表地と裏地を接着する場合などは、体積平均粒子径が0.1〜10μm程度の比較的小さいポリエステル樹脂粒子からなる接着剤が接着強度が向上する点で好ましく、また、接着芯地を調製する場合などは、体積平均粒子径が40〜250μm程度の比較的大きい球形ポリエステル粒子からなる接着剤が厚い接着層を形成することができるので好ましい。
次に、本発明で用いる沈降防止剤(II)について説明する。沈降防止剤(II)としては、例えば、従来より水系塗料等で使用されている水溶性樹脂が挙げられ、例えば、非イオン性水溶性樹脂、イオン性水溶性樹脂、無水マレイン酸共重合体系水溶性樹脂、水溶性天然高分子等が挙げられる。
前記非イオン性水溶性樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
非イオン性水溶性樹脂としては、例えば、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アクリル酸系重合体のアミン塩、アクリル酸系重合体のナトリウム塩、アクリル酸系重合体のリチウム塩、アクリル酸系重合体のアンモニウム塩等が挙げられる。
無水マレイン酸共重合体系水溶性樹脂としては、例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
水溶性天然高分子としては、例えば、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。沈降防止剤(II)としては非イオン性水溶性樹脂が好ましく、セルロース誘導体が水分散体(I)中のポリエステル樹脂粒子との相互作用が少なく、しかも広範囲のpH領域(水素イオン濃度域)で使用できるなど、作業性が極めて良いためより好ましく、その中でも特にヒドロキシエチルセルロースが最適である。
沈降防止剤(II)の使用量としては、貯蔵安定性が良好で耐水性の低下がないことから、ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲が好ましく、なかでも0.1〜15重量部が特に好ましい。
また、本発明の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子分散体には、沈降防止剤(II)と共に、必要に応じて界面活性剤をも併用することができる。前記界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等の両イオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、シリコン、フッソ系等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤の添加方法は特に限定されないが、沈降防止剤(II)として上記したような各種の水溶性樹脂の水溶液を用いる場合、該水溶液中に水溶性樹脂と共に添加して用いるのが通常である。
本発明の接着剤用ポリエステル樹脂粒子水分散体の製造方法としては、例えば、前記水分散体(I)の製造時および/または製造後に沈降防止剤(II)を添加する等の製造方法が挙げられる。
水分散体(I)の製造時に沈降防止剤(II)を添加する方法としては、例えば、(イ)前記水分散体(I)の製造工程(2)で用いる水性媒体中に沈降防止剤(II)を予め含有させておく方法や、(ロ)前記水分散体(I)の製造工程(1)で用いるポリエステル樹脂(A)を必須成分とする樹脂溶融体に沈降防止剤(II)を予め含有させておく方法などが挙げられる。
水分散体(I)の製造後に沈降防止剤(II)を添加する方法としては、例えば、(ハ)製造された分散体(I)に、沈降防止剤(II)を後で添加する方法や、(ニ)製造された水分散体(I)から樹脂粒子を分離し、分離した樹脂粒子を乾燥して樹脂粒子パウダーとしておき、再び水性媒体中に樹脂粒子パウダーと沈降防止剤(II)と、好ましくは更にポリエステル樹脂(A)の親水性基を中和する物質を添加して、ポリエステル樹脂粒子を分散させるなどの方法を挙げることができるが、(ハ)の製造方法が最も簡便であり好ましい。
本発明の接着剤用ポリエステル樹脂粒子水分散体中のポリエステル樹脂粒子の粒子径は、体積平均粒子径で通常0.1〜20μmであるが、接着性向上の観点より0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0μmである。本発明にいう平均粒子径とは、粒度分布測定機であるコールターマルチサイザ−2(ベックマン・コールター社製)で測定した50%体積平均粒子径の値をいう。
本発明の接着剤用ポリエステル樹脂粒子水分散体中のポリエステル樹脂粒子の粒度分布とは、コールターマルチサイザー2を用いた体積粒子径の分布測定において、16%径と84%径の比の平方根で表される値「√(D16/D84)」をいうが、ここで16%径とは体積粒子径の大きい側から粒子の重量を積算したときの重量が全重量の16%となる位置にある粒子の体積粒子径であり、同様に84%径は粒子の重量を積算したときの重量が全重量の84%となる位置にある粒子の体積粒子径をいう。この数値が大きいほど粒度分布の広がりが大きく、小さいほど粒度分布の広がりは小さいことを示す。この数値が1.36以下であることは、ポリエステル樹脂粒子として極めて粒度分布が狭く、従来の機械的粉砕法によるホットメルト接着剤と比較して被着体への濡れ性が格段に向上することにより接着強度が高く、かつ低温で接着できる等作業性にも優れることを表す。
本発明の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体は様々な基材を接着する接着剤として用いる事ができるが、中でも布地を接着する接着剤として好ましく使用することができる。この布地の素材は特に制限は無く、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート、トリアセテート等の半合成繊維;ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成繊維等が挙げられる。なかでも、合成繊維を素材とした布地に対して好ましく使用することができ、ポリエステルを素材とした布地に対してより好ましく使用できる。また、布地としては織布に対してでも不織布に対してでも好適に使用することができる。
本発明の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体を熱融着の接着剤(ホットメルト接着剤)として実用に供する際の布地への塗布及び熱融着する方法としては、例えば、接着剤用ポリエステル樹脂粒子分散体をそのまま基布の表面に噴霧し、加熱乾燥融着するスプレー方式、前記分散体を、細孔を持ったコーティング用スクリーンを用いて基布の表面にドット状にコートし、加熱乾燥融着するペーストドット方式、前記分散体を、細孔を持ったコーティング用スクリーンを用いて基布の表面にドット状に塗布しアンカー層を形成させた後、更に接着用ポリエステル樹脂粒子等の粉末接着剤を散布後、余剰の粉末接着剤を除去し、加熱乾燥融着するダブルドット方式等の方法があり、基布の種類に応じて使い分けることができる。なかでも、本発明の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体は、前記ダブルドット方式のアンカー層の形成に特に好ましく用いることができる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。例中「部」及び「%」は、特にことわりがない限り重量基準である。
本実施例において、GPC法による重量平均分子量の測定は、Shodex GPC SYSTEM−21〔昭和電工(株)製〕を使用して行なった。
樹脂または樹脂粒子の溶融粘度は、高化式フロ−テスタ−〔島津製作所(株)製、CFT−500〕を使用して測定した。測定条件は、昇温速度6℃/分、荷重10Kg、ダイス1mmφ×1mmである。また、結晶融解熱の測定は、示差走査熱量計〔セイコー電子製熱分析システム(DSC220)〕を使用して昇温速度10℃/分で行なった。またTgの測定は結晶融解熱の測定後液体窒素で急冷して、再び昇温速度10℃/分の条件で測定した。
合成例1〔結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成〕
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ−及び精留塔を備えた内容量3リットルのフラスコに1,5−ペンタンジオール979部(89.5モル%対アルコール成分)、トリメチロ−ルプロパン55部(3.9モル%対アルコール成分)、PEG−1500〔日本油脂株式会社製のポリエチレングリコール;水酸基価198.6mgKOH/g〕137部(2.3モル%対アルコール成分)を仕込み、さらに1時間を要して温度を150℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド1.2部、テレフタル酸1566部(92.1モル%対酸成分)を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から245℃まで6時間を要して温度を上げ、245℃でさらに14時間脱水縮合反応を継続し、その後も酸価をモニターして、酸価が7.7mgKOH/gで、反応温度を230℃に降温し、無水フタル酸120部(7.9モル%対酸成分)を加え、その後30分間付加反応させ酸価が26.7mgKOH/gで、カ−ジュラE10〔シェルケミカル社製の分岐脂肪酸(炭素原子数10)のグリシジルエステル〕115部(4.3モル%対アルコール成分)加え、さらに30分間反応を行った。最終的に酸価が16.9mgKOH/gでGPC法による重量平均分子量が42,000、溶融粘度が1×104Pa・s となる温度(T4)が105℃、Tgが1℃、結晶融解熱量が25.3J/gであるポリエステル樹脂を得た。これを結晶性ポリエステル樹脂(A2−1)と略記する。
合成例2(同上)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ−及び精留塔を備えた内容量3リットルのフラスコに1,5−ペンタンジオール979部(93.5モル%対アルコール成分)、トリメチロ−ルプロパン55部(4.1モル%対アルコール成分)、PEG−1500の137部(2.4モル%対アルコール成分)を仕込み、さらに1時間を要して温度を150℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド1.2部、テレフタル酸1566部(96.1モル%対酸成分)を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から245℃まで6時間を要して温度を上げ、245℃でさらに14時間脱水縮合反応を継続し、その後も酸価をモニターして、酸価が7.7mgKOH/gでドデセニル無水コハク酸100部(3.9モル%対酸成分)を加え、その後30分間反応を行った。最終的に酸価が16.7mgKOH/gで、GPC法による重量平均分子量が38,500、T4が120℃、Tgが3℃、結晶融解熱量が35.1J/gであるポリエステル樹脂を得た。これを結晶性ポリエステル樹脂(A3−1)と略記する。
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ−及び精留塔を備えた内容量3リットルのフラスコにビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2、水酸基価360mgKOH/g)1,234部、ジエチレングリコ−ル274部、トリメチロ−ルプロパン110部を仕込み、1時間をかけて温度を140℃まで上げて撹拌を行いながらジブチル錫オキサイド1.25部を投入した。その後テレフタル酸1,122部を仕込み、さらに3時間を要して温度を245℃まで上げ、生成する水を留去しながら245℃でさらに4時間脱水縮合反応を継続し、その後も酸価をモニターして、酸価が5.8mgKOH/gでドデセニル無水コハク酸の114部を加え、その後30分間付加反応させ最終的に酸価が16.3mgKOH/gで、GPC法による重量平均分子量が75,000、T4が110℃、Tgが50℃であるポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂の結晶融解熱を測定したところ融解熱のピークは現れず、結晶構造を有さなかった。これをポリエステル樹脂(x1)と略記する。
実施例1
結晶性ポリエステル樹脂(A2−1)を150℃に加熱して樹脂溶融体とし、キャビトロンCD1010(株式会社ユ−ロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した1.0%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットル〔ポリエステル樹脂(A2−1)中のカルボキシル基の理論中和量の2倍量〕の速度で、上記樹脂溶融体と同時にキャビトロンに移送した。回転子の回転速度が7500rpm、圧力が5Kg/cm2 の運転条件でポリエステル樹脂(A2−1)を分散させて温度135℃の分散体を製造し、10秒間で温度を35℃まで冷却して出口から取り出した。この接着剤用ポリエステル樹脂粒子分散体中のポリエステル樹脂粒子の形状を下記の定義に従って判定したところ、形状は球形で、造粒が極めて良好であった。不揮発分の濃度は50.4%であった。コールターマルチサイザー2による測定により、ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は1.8μmであり、その粒度分布は1.36であった。
ポリエステル樹脂粒子の形状の定義。顕微鏡による目視観察(300倍)により以下の定義に従って判定(以下同様)。
(1)球形 目視によりほぼ完全な球体と認められるもの又は、楕円体でその長軸の長さ(a)と短軸の長さ(b)との比(a/b)が2未満のものが、顕微鏡の視野中に個数基準で80%以上存在するもの(10視野の平均値)。
(2)ひも状 楕円体で、その長軸の長さ(a)と短軸の長さ(b)との比(a/b)が2以上のものが、顕微鏡の視野中に個数基準で20%以上存在するもの(10視野の平均値)。
(3)不定形 形状に一定の規則性が認められず破砕された形状であって、尖った部分があるもの。
この得られた水分散体100gに、沈降防止剤(II)であるCELLOSIZE HEC QP−4400H(ユニオン・カーバイド日本株式会社製のヒドロキシエチルセルロース系水性樹脂)の3%水溶液17gを添加し、不揮発分が44%の接着剤用ポリエステル樹脂粒子水分散体を得た。これを水分散体(C−1)と略記する。
得られた水分散体(C−1)の接着強度、耐水性、耐溶剤性の測定ならびに貯蔵安定性の評価を以下のように行った。結果を第1表に示す。
<試験片作製法>
水分散体(C−1)を、固形分換算で塗布量が25g/mとなるように市販のポリエステル布に均一に散布し、次いで、その塗装面に市販のポリエステル布を重ね合わせ、ホットプレス機によって上下から熱圧着した。接着条件は、圧力3Kg/cm2 で140℃/8秒間である。
<接着強度の試験法>
テンシロン引張り試験機を使用し、JIS L−1086(接着剤の剥離試験方法)に従い、180゜剥離接着力として評価した。測定条件は、温度20℃、相対湿度60%である。
<耐水性の試験法>
熱圧着後の試験片を温度60℃の温水に30分間恒温条件下に保持した後、上記接着力の試験法に従って剥離接着力を測定した。
<耐溶剤性の試験法>
熱圧着後の試験片を室温の石油ベンゼンに30分間恒温条件下に保持した後、上記接着力の試験法に従って剥離接着力を測定した。
<貯蔵安定性の測定方法>
水分散体(C−1)を、気密性の高いガラス容器に入れ、40℃の恒温器に1ヶ月間放置し、樹脂粒子の沈降の程度を目視確認するとともに、スパチュラで沈降物の堅さを確認し、以下の基準で評価した。
○:沈降がなく、分散液に流動性がある。
×:沈降が著しくガラス容器の底にハードケーキとして沈降しており、機械的解砕を必要とした。
実施例2
実施例1のポリエステル樹脂(A2−1)の代わりにポリエステル樹脂(A3−1)を使用した以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が1.2μmで、粒度分布が1.34のポリエステル樹脂粒子分散体を得た。この水分散体中のポリエステル樹脂粒子の形状を判定したところ球形であった。得られた水分散体と沈降防止剤(II)とを実施例1と同様に混合し水分散体(C−2)を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1のポリエステル樹脂(A2−1)の代わりにポリエステル樹脂(A3−2)を使用した以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が1.9μmで、粒度分布が1.35のポリエステル樹脂粒子分散体を得た。この水分散体中のポリエステル樹脂粒子の形状を判定したところ球形であった。得られた水分散体と沈降防止剤(II)とを実施例1と同様に混合し水分散体(C−3)を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1のポリエステル樹脂(A2−1)の代わりにポリエステル樹脂(x2)を使用した以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が1.9μmで、粒度分布が1.35のポリエステル樹脂粒子分散体を得た。この水分散体中のポリエステル樹脂粒子の形状を判定したところ球形であった。得られた水分散体と沈降防止剤(II)とを実施例1と同様に混合し水分散体(C−4)を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
Figure 2005239868

Claims (11)

  1. アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有する結晶性ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなる樹脂を含有する樹脂粒子の水分散体(I)と沈降防止剤(II)とを含有することを特徴とする接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  2. 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度が、1×104Pa・s となる温度が55〜170℃で、かつ、示差走査熱量計による結晶融解熱量が3〜60J/gである請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  3. 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)法による重量平均分子量(Mw)が10,000〜300,000のポリエステル樹脂で、アルキル基またはアルケニル基が炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基である請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  4. 結晶性ポリエステル樹脂(A)が、炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基が結合している酸無水物を、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させて得られるポリエステル樹脂である請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  5. 結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が、−20〜50℃である請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  6. 結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分の65〜100モル%がテレフタル酸であり、アルコール成分の70〜100モル%が1,5−ペンタンジオールである請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  7. 前記樹脂粒子が、前記ポリエステル樹脂(A)として酸価5〜140mgKOH/gで、GPC法による重量平均分子量(Mw)が10,000〜300,000であるポリエステル樹脂を用い、このポリエステル樹脂を必須成分として含有する樹脂溶融体を、溶融状態で、塩基性化合物を含有する加熱された水性媒体中に粒子状で分散させて、カルボキシル基の中和と該樹脂溶融体の溶融状態での分散とを行うことにより得られるものである請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  8. 前記水性分散体(I)中の樹脂粒子が、体積平均粒子径0.1〜10μmの樹脂粒子である請求項1記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  9. 前記沈降防止剤(II)が、非イオン性水溶性樹脂である請求項1〜8のいずれか1項記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  10. 前記沈降防止剤(II)が、セルロース誘導体である請求項1〜8のいずれか1項記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。
  11. 前記沈降防止剤(II)の使用量が、前記ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.1〜15重量部である請求項9または10記載の接着剤用球形ポリエステル樹脂粒子水分散体。




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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112208398A (zh) * 2019-07-09 2021-01-12 北京地平线机器人技术研发有限公司 一种座椅调节方法及装置

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