JP2003253380A - 超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼 - Google Patents

超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼

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JP2003253380A JP2002049490A JP2002049490A JP2003253380A JP 2003253380 A JP2003253380 A JP 2003253380A JP 2002049490 A JP2002049490 A JP 2002049490A JP 2002049490 A JP2002049490 A JP 2002049490A JP 2003253380 A JP2003253380 A JP 2003253380A
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Kimihiro Nishimura
公宏 西村
Toshiyuki Hoshino
俊幸 星野
Kenichi Amano
虔一 天野
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JFE Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 引張り強さが 570 MPa以上の高強度鋼に対し
て、溶接入熱が 600 kJ/cmを超える超大入熱溶接を施し
た場合であっても、溶接熱影響部について優れた靱性を
得ることができる高強度鋼を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.05
〜0.50%、Mn:0.1 〜2.0 %、Al:0.05〜1.0 %、Ti:
0.05%以下、N:0.0070%以下、P:0.020 %以下及び
S:0.0050%以下を含有する高強度鋼について、次式
(1), (2), (3)の関係を満足させ、次式(4)で規定される
炭素当量Ceqを0.36以上とする。 (%Al)≦ 0.8の場合 0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%A
l) ・・・ (1) (%Al)> 0.8の場合 −0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%
Al) ・・・ (2) (%N)−(%Ti)/3.4 < 0.0015 ・・・ (3) Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6 ・・・ (4)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、造船、建築およ
び土木等の各分野に供して好適な超大入熱溶接熱影響部
の靱性に優れた高強度鋼に関し、特に炭素当量(Ceq
が0.36以上で、かつ引張り強さ(TS)が 570 MPa以上
の高強度鋼に対して、溶接熱影響部の靱性の劣化を招く
ことなしに、溶接入熱が 600 kJ/cmを超える超大入熱溶
接の実施を可能ならしめたものである。
【0002】
【従来の技術】造船、建築および土木等の各分野で使用
される鋼材は、一般に溶接接合によって所望形状の構造
物に仕上げられている。このような構造物においては、
安全性の観点から、使用される鋼材の母材靱性は勿論の
こと、溶接熱影響部の靱性に優れることが要求される。
【0003】その際、最も問題となるのは、溶接熱影響
部のボンド部における靱性である。このボンド部は、大
入熱溶接時に溶融点直下の高温に曝されて、オーステナ
イトの結晶粒が最も粗大化し易く、また引き続く冷却に
よって、脆弱な上部ベイナイト組織に変態し易い位置だ
からである。さらに、このボンド部では、ウッドマンス
テッテン組織や島状マルテンサイトといった脆化組織が
生成し易く、このことも靱性低下の原因となっている。
【0004】従来、ボンド部の靱性の改善策としては、
TiNを微細に分散させ、オーステナイトの粗大化を抑制
すると共に、フェライト変態の核として利用する技術が
実用化されている。また、特公平3−53367 号公報や、
入熱量:230 kJ/cm の溶接ボンド部での靱性改善を目指
した特開平6−184663号公報には、希土類元素(REM)と
Tiを複合添加することにより、鋼中に微細粒子を分散さ
せてオーステナイトの粒成長を防止し、溶接部靱性の向
上を図る方法が示されている。
【0005】さらに、Tiの酸化物を分散させる技術や、
BNのフェライト核生成能を組み合わせた技術も開発さ
れている。その他、CaやREM を添加し、硫化物の形態を
制御することによって、靱性の向上を図る技術も知られ
ている。
【0006】しかしながら、上記した従来技術はそれぞ
れ、安定した靱性が得られる鋼材の製造が困難であった
り、100 kJ/cm を超える大入熱溶接では、溶接熱影響部
について十分な靱性が得られないという問題があった。
すなわち、TiNを主体に利用する技術においては、TiN
が溶解する温度域に加熱される溶接部でその効果が消失
し、また固溶TiおよびNによる基地組織の脆化によって
著しい靱性の低下が見られた。また、Tiの酸化物を利用
した技術では、酸化物の微細分散が十分均質にできない
という問題があった。さらに、CaやREM を添加する技術
においても、100 kJ/cm を超える大入熱溶接では溶接熱
影響部について高靱性を確保することは困難であった。
【0007】一方、最近では、船舶、建築等の鉄骨等の
溶接構造物の製造に際し、一層の効率化が求められるよ
うになっている。溶接時間の削減は効率化に直結するも
のであり、このため大入熱溶接の適用が増加しつつあ
る。しかしながら、かような大入熱溶接を行った場合
に、安定して溶接熱影響部の高靱性を確保できる鋼材は
いまのところ存在せず、その開発が望まれていた。
【0008】この点、発明者らは先に、上記の要請に有
利に応えるものとして、新規な成分構成になる溶接熱影
響部の靱性に優れた低合金構造用鋼を開発し、特願2001
−396979号明細書において開示した。この技術は、厳格
な成分調整により、高温においてオーステナイト相とフ
ェライト相の2相となる温度域を広くし、オーステナイ
ト粒の粗大化を効果的に抑制することによって靱性の向
上を達成したものであり、この技術により、溶接入熱が
100 kJ/cmを超える大入熱溶接を施した場合であって
も、母材は勿論のこと、溶接熱影響部についても優れた
靱性を安定して得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、最近では、
鋼材の高強度化と溶接入熱のさらなる増加によって、溶
接構造物の設計、製造について一層の効率化が進められ
ている。その中で、引張り強さが 570 MPa以上の高強度
材を、溶接入熱が 600 kJ/cmを超えるような超大入熱溶
接が施工されるようになってきた。例えば、建築分野に
おいては、ボックス柱の製造に際し、スキンプレート−
ダイアフラム接合にエレクトロスラグ溶接といった溶接
入熱が1000 kJ/cmを超える超大入熱溶接施工が適用され
ている。
【0010】一般に、鋼を高強度化すればするほど、溶
接熱影響部の靱性を確保することが困難となるが、上記
した特願2001−396979号に開示の技術を適用することに
より、高強度鋼を大入熱溶接を施した場合であっても良
好な靱性を得ることができる。しかしながら、上記の技
術においても、引張り強さ(TS)が 570 MPa以上の高
強度材を溶接入熱が 600 kJ/cmを超えるような超大入熱
溶接に供した場合には、必ずしも十分な靱性が得られる
とは限らなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の問題
を有利に解決するもので、引張り強さが 570 MPa以上の
高強度材に対して、溶接入熱が 600 kJ/cmを超えるよう
な超大入熱溶接を施した場合であっても、母材は勿論の
こと、溶接熱影響部について優れた靱性を得ることがで
きる、超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼を
提案することを目的とする。
【0012】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.1 〜2.0 %、Al:0.05〜1.0 %、Ti:0.05%以
下、N:0.0070%以下、P:0.020 %以下およびS:0.
0050%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の
組成になり、しかもCおよびAl量が、次式(1), (2) (%Al)≦ 0.8の場合 0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1) (%Al)> 0.8の場合 −0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2) ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)の関係を
満足し、かつNおよびTi量が、次式(3) (%N)−(%Ti)/3.4 < 0.0015 --- (3) の関係を満足し、さらに次式(4) Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6 --- (4) で規定される炭素当量Ceqが0.36以上であり、引張り強
さ(TS)が 570 MPa以上であることを特徴とする超大
入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼。
【0013】2.上記1において、鋼材が、質量%でさ
らに、Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下、Cu:1.5 %以
下、Ni:3.5 %以下、Cr:0.8 %以下、Mo:0.5 %以
下、B:0.0030%以下、Ca:0.0030%以下、REM:0.02
%以下およびMg:0.010 %以下のうちから選んだ1種ま
たは2種以上を含有する組成になり、次式(4)' Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6+(%Ni)/40 +(%Cr)/5+(%Mo)/4+(%V)/4 --- (4)' で規定される炭素当量Ceqが0.36以上あることを特徴と
する超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明す
る。前掲特願2001−396979号明細書において開示したと
おり、 910℃以上の平衡状態においてオーステナイト相
とフェライト相の2相である温度域幅が25℃以上であ
り、かつその2相域の低温側にオーステナイト単相であ
る温度域が存在すれば、オーステナイト粒の粗大化が効
果的に抑制され、ひいては溶接後の溶接熱影響部につい
ても粗大粒の生成が抑制され、かつ組織の微細化が達成
されるため、良好な靱性を得ることができる。この発明
も、基本的には、上記特願2001−396979号明細書に開示
の技術を踏襲する。
【0015】図1(a), (b)にそれぞれ、市販の計算ソフ
トによって算出した、従来鋼およびこの発明鋼のFe−C
状態図を比較して示す。同図(a) に示したとおり、従来
の鋼では、高温域における(α+γ)2相領域が非常に
狭く、 910℃以上において(α+γ)2相領域である温
度域幅が25℃以上であるC量範囲は存在しない。これに
対し、同図(b) に示したとおり、この発明に従い成分調
整した鋼では、(α+γ)2相領域が大幅に拡大され、
910℃以上において(α+γ)2相領域である温度域幅
が25℃以上であるC量範囲が広く存在することが分か
る。ここに、(α+γ)2相領域である温度域幅を25℃
以上と規定したのは、25℃以上でないと高温時の粒成長
を有効に抑制できないからである。
【0016】この発明では、さらに、溶接熱影響部の高
靱性を得るためには、上記した(α+γ)2相領域の低
温側にオーステナイト単相領域が存在する必要があるこ
とを突き止めた。すなわち、溶接熱影響部は高温に曝さ
れ、その後冷却されるわけであるが、(α+γ)2相域
から一旦オーステナイト単相域となる場合には、その後
の冷却過程でオーステナイト粒界および粒内の変態核か
らγ→α変態により組織の微細化による高靱化が達成さ
れる。しかしながら、高温域で(α+γ)2相域のみの
場合、核生成からの変態はなく、室温までの冷却時に高
温加熱段階から存在するフェライト粒の粗大化が起こる
ため、高靱性が得られない。
【0017】なお、図1(b) は、Al:1.0 mass%を含有
した鋼におけるFe−C状態図であるが、C≦0.22mass%
の範囲では、1300℃以上で(α+γ)2相領域である温
度域幅が25℃以上あることが分かる。しかしながら、C
<0.03mass%ではオーステナイト単相である温度域が存
在しないので、高靱性の溶接熱影響部を得ることができ
ない。
【0018】この発明の対象鋼種は、いわゆる低合金溶
接構造用鋼と呼ばれるもので、例えばJIS G 3160に示さ
れているSM 570では、板厚:100 mm以下の場合、化学成
分がC:0.18mass%以下, Si:0.55mass%以下, Mn:1.
60mass%以下, P:0.035 mass%以下, S:0.035 mass
%以下で、TSが 570 MPa以上、720 MPa 以下の鋼が規
定されている。また、建築構造用 590 MPa級高性能鋼
(SA 440)として、化学成分がC:0.18mass%以下, S
i:0.55mass%以下, Mn:1.60mass%以下, P:0.035 m
ass%以下, S:0.008 mass%以下で、TSが 590 MPa
以上、740 MPa 以下の鋼が規定されている。なお、11ma
ss%以上のCrを添加したフェライト系ステンレス鋼は、
910 ℃以上で(α+γ)2相域である温度域が25℃以上
であり、その低温側にオーステナイト単相も存在する
が、高合金鋼であるので、本発明の技術範囲外である。
【0019】この発明においては、具体的には低合金鋼
の範囲で鋼の成分を調整することによって得ることがで
きるが、図1(a), (b)は計算状態図であるので、実際に
は綿密な実験により成分組成を規定する必要がある。以
下、この発明に従う高強度鋼について、特に好適な成分
組成範囲について説明する。なお、成分に関する「%」
表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。 C:0.01〜0.15% Cは、構造用鋼として必要な強度を得るのに有用な元素
であるが、0.01%に満たないとその添加効果に乏しく、
一方0.15%を超えると母材および溶接部の靱性を劣化さ
せるので、Cは0.01〜0.15%の範囲に限定する。
【0020】Si:0.05〜0.50% Siは、製鋼上、少なくとも0.05%を必要とし、一方0.50
%を超えると母材の靱性を劣化させるので、Siは0.05〜
0.50%の範囲に限定する。
【0021】Mn:0.1 〜2.0 % Mnは、母材の強度を確保するために 0.1%以上は必要で
あるが、2.0 %を超えると溶接部の靱性を劣化させるの
で、Mnは 0.1〜2.0 %の範囲に限定する。
【0022】Al:0.05〜1.0 % Alは、この発明において重要な合金成分であり、0.05%
以上の添加を必要とするが、高温でのオーステナイト粒
の成長を抑制する効果と相反して、Alの添加はマトリッ
クスの脆化を招く傾向にある。従って、この発明で対象
とする炭素当量Ceq≧0.36の高強度鋼の場合には、その
上限を 1.0%とする必要がある。それ故、Alは0.05〜1.
0 %の範囲に限定する。
【0023】Ti:0.05%以下 Tiは、鋼板の強度を高めるのに有用な元素であり、また
溶接熱影響部の靱性を劣化させる固溶Nの固定元素とし
ても有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.05%を
超えると靱性を劣化させるので、0.05%以下の範囲で含
有させるものとした。なお、後述するN含有量が0.0015
%以下の場合には、特に固溶Nを固定する必要がないの
で、この場合には必ずしもTiを含有させる必要はない。
【0024】N:0.0070%以下 Nは、不純物として鋼中に不可避に混入してくる元素で
あるが、含有量が0.0070%を超えると鋼材の靱性を劣化
させるので、Nは0.0070%以下に抑制するものとした。
【0025】P:0.020 %以下、S:0.0050%以下 Pは、含有量が 0.020%を超えると溶接部の靱性を劣化
させるので、0.020 %以下に抑制するものとした。同じ
く、Sも、0.0050%を超えて含有されると母材および溶
接部の靱性を劣化させるので、0.0050%以下に抑制する
ものとした。
【0026】以上、基本成分の適正組成範囲について説
明したが、この発明では各成分が上記の組成範囲を単に
満足しているだけでは不十分で、 910℃以上の平衡状態
においてオーステナイト相とフェライト相の2相である
温度域幅が25℃以上であり、かつその2相域の低温側に
オーステナイト単相である温度域が存在することが必要
である。そのためには、次式(1), (2) (%Al)≦ 0.8の場合 0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1) (%Al)> 0.8の場合 −0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2) ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)の関係を
満足させることが重要である。
【0027】さて、表1に示すように、SiおよびMn量は
一定に固定し、C量とAl量を種々に変化させた鋼を製造
し、溶接熱影響部を模擬した再現熱サイクル試験を行っ
たのち、シャルピー衝撃試験を行って各鋼の靱性につい
て調査した。図2に、試験片に付与した再現熱サイクル
パターンを示す。このパターンは、1000 kJ/cm程度の超
大入熱溶接の熱影響部を模擬したものである。
【0028】また、図3に、シャルピー衝撃試験結果を
示す。図中の各記号は、その位置のAl,C量の組成を有
する鋼の0℃における吸収エネルギー(vE0)の値を示し
たもので、○は vE-40 ≧150 J の場合、△は 150J>
vE-40 ≧70Jの場合、そして×は vE-40 <70Jの場
合である。
【0029】
【表1】
【0030】図3に示したとおり、鋼中のCおよびAl量
が、上掲式(1), (2)の関係を満足し、かつAl≦1.0 %の
領域において、溶接熱影響部に関しとりわけ優れた高靱
性が得られている。しかしながら、上記の領域内であっ
ても、炭素当量Ceqが0.36以上の場合には十分な靱性が
得られない場合が散見された。
【0031】そこで、次に発明者らは、この点を解決す
べくさらに検討を重ねた結果、Ceq≧0.36でTS≧570
MPa の高強度鋼について、溶接入熱が 600 kJ/cmを超え
るような超大入熱溶接施工時における靱性の改善のため
には、CとAl量の関係だけでなく、NとTi量の関係も重
要で、上掲式(1), (2)を満足させた上で、さらにNおよ
びTi量について、次式(3) (%N)−(%Ti)/3.4 < 0.0015 --- (3) ここで、(%M)はM元素の含有量(mass%)の関係を
満足させることによって、0℃におけるシャルピー吸収
エネルギー(vE 0)が 150J以上という優れた靱性が安定
して得られることが究明されたのである。
【0032】以上、基本成分について説明したが、本発
明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させる
ことができる。 Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下 NbおよびVはいずれも、鋼板の強度を高めるのに有用な
元素であるが、含有量が 0.1%を超えると靱性を劣化さ
せるので、いずれも 0.1%以下で含有させるものとす
る。
【0033】Cu:1.5 %以下、Ni:3.5 %以下、Cr:0.
8 %以下、Mo:0.5 %以下 Cu,Ni,CrおよびMoはいずれも、鋼板の強度向上に有用
な元素であるが、Cuは含有量が 1.5%を超えると熱間脆
性を生じて鋼板の表面性状を劣化させ、Niは高価であ
り、Crは含有量が 0.8%を超えると溶接熱影響部の靱性
を劣化させ、Moは含有量が 0.5%を超えると靱性に悪影
響を及ぼすので、それぞれ上記の範囲で含有させるもの
とする。
【0034】B:0.0030%以下、Ca:0.0030%以下、 R
EM:0.02%以下、Mg:0.010 %以下 Bは、微量で高強度化に寄与する有用元素であるが、含
有量が0.0030%を超えると溶接熱影響部の靱性を劣化さ
せるので、Bは0.0030%以下で含有させるものとする。
Caは、Sの固定による靱性向上に有用な元素であるが、
含有量が0.0030%を超えるとその効果は飽和するので、
Caは0.0030%以下で含有させるものとする。REMは、靱
性の向上に有効に寄与するが、含有量が0.02%を超える
とその効果は飽和するので、上限を0.02%とした。Mg
は、結晶粒の細粒化に有用な元素であるが、含有量が
0.010%を超えるとその効果は飽和に達するので、上限
を 0.010%とした。
【0035】なお、この発明では、引張り強さが 570 M
Pa以上の高強度鋼を対象とするが、かかる高強度を得る
ためには炭素当量(Ceq)を0.36以上にすることが不可
欠なので、次式(4) または(4)' Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6 --- (4) Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6+(%Ni)/40 +(%Cr)/5+(%Mo)/4+(%V)/4 --- (4)' で規定するCeqが0.36以上になるように成分調整するこ
とも、この発明の要件である。
【0036】また、この発明の溶接構造用鋼を製造方法
は、特に制限されることはなく、従来から公知の方法に
従って製造すれば良い。例えば、上記の好適成分組成に
調製した溶鋼を、連続鋳造でスラブとしたのち、1000〜
1250℃に加熱してから、熱間圧延を施すことにより製造
しても良いし、熱間圧延により所望の板厚、形状とした
のち、熱処理を施して製造しても良い。熱処理として
は、公知の焼入れ、焼戻し、あるいは2回の焼入れ、焼
戻しが有利に適合する。
【0037】
【実施例】表2に示す種々の成分組成に調整した鋼スラ
ブを、1100℃に加熱後、熱間圧延により85mmの厚鋼板と
した。得られた各鋼板の板厚1/4位置から、JIS 4 号
引張試験片を採取し、引張試験を行って母材の降伏強さ
(YP)および引張強さ(TS)を求めた。また、同じ
く各鋼板の板厚1/4 位置から、JIS 4 号衝撃試験片を
採取し、シャルピー試験を行って母材の0℃における吸
収エネルギー(vE0)を求めた。また、各鋼板から採取し
た継手用試験板に、図4に示すような開先を準備し、エ
レクトロスラグ溶接(溶接入熱:1000 kJ/cm)により溶
接継ぎ手を作製した。その後、図5に示すように、溶接
継ぎ手部から切り欠き位置をボンド部とするJIS 4 号衝
撃試験片を採取し、試験温度:0℃でのシャルピー衝撃
試験を行って、継ぎ手ボンド部の0℃における吸収エネ
ルギー(vE0)を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】表3に示したとおり、発明例はいずれも、
溶接入熱:1000kJ/cm の超大入熱溶接施工を施した場合
であっても、ボンド部での vE0 が 150J以上と優れた
溶接熱影響部靱性が得られることが分かる。
【0041】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、Ceq≧0.
36でTS≧570 MPa の高強度鋼に対して、600 kJ/cm を
超えるような超大入熱溶接を施した場合であっても、母
材については言うまでもなく、溶接熱影響部について優
れた靱性を得ることができる。従って、この発明は、構
造物の大型化や施工能率の向上に寄与するところ大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の概念を説明するために市販の計算
ソフトによって算出した従来鋼の平衡状態図(a) および
この発明鋼の平衡状態図(b) である。
【図2】 試験片に付与した再現熱サイクルパターンを
示した図である。
【図3】 溶接熱影響部の靱性に及ぼすC量とAl量の影
響を示したグラフである。
【図4】 エレクトロスラグ溶接における開先形状を示
した図である。
【図5】 溶接継ぎ手部からのJIS 4 号衝撃試験片の採
取要領を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.01〜0.15%、 Si:0.05〜0.50%、 Mn:0.1 〜2.0 %、 Al:0.05〜1.0 %、 Ti:0.05%以下、 N:0.0070%以下、 P:0.020 %以下および S:0.0050%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にな
    り、しかもCおよびAl量が、次式(1), (2) (%Al)≦ 0.8の場合 0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1) (%Al)> 0.8の場合 −0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2) ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)の関係を
    満足し、かつNおよびTi量が、次式(3) (%N)−(%Ti)/3.4 < 0.0015 --- (3) の関係を満足し、さらに次式(4) Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6 --- (4) で規定される炭素当量Ceqが0.36以上であり、引張り強
    さ(TS)が 570 MPa以上であることを特徴とする超大
    入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼材が、質量%でさ
    らに、 Nb:0.1 %以下、 V:0.1 %以下、 Cu:1.5 %以下、 Ni:3.5 %以下、 Cr:0.8 %以下、 Mo:0.5 %以下、 B:0.0030%以下、 Ca:0.0030%以下、 REM:0.02%以下および Mg:0.010 %以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なり、次式(4)' Ceq=(%C)+(%Si)/24+(%Mn)/6+(%Ni)/40 +(%Cr)/5+(%Mo)/4+(%V)/4 --- (4)' で規定される炭素当量Ceqが0.36以上あることを特徴と
    する超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた高強度鋼。
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