JP2003071279A - ホルムアルデヒド捕捉剤とその応用 - Google Patents

ホルムアルデヒド捕捉剤とその応用

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稔 船木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 木酢液からホルムアルデヒドを効率よく除去
でき、ホルムアルデヒドを含有しないか、または含有量
が大きく低減した木酢液を製造できる、安価なホルムア
ルデヒド捕捉剤を提供する。 【解決手段】 樹皮 (好ましくは針葉樹、特にカラマツ
の樹皮) またはその抽出物 (エキス) を有効成分とする
ホルムアルデヒド捕捉剤。木酢液からホルムアルデヒド
を除去するには、樹皮または抽出を木酢液に添加し、加
熱してホルムアルデヒドを捕捉した後、そのま蒸留し
て、ホルムアルデヒドを含まないか、その含有量が低減
した木酢液を回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種材料から発生
するホルムアルデヒドを除去することができ、特に木酢
液その他の各種 (水性) 液体からホルムアルデヒドを除
去するのに適した、天然物系の安価なホルムアルデヒド
捕捉剤と、それを用いたホルムアルデヒド除去方法とに
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、シックハウス症候群が社会的に大
きな関心を集めるようになってきたことから、その主な
原因物質の1つであるホルムアルデヒドの毒性が注目さ
れるようになった。室内ホルムアルデヒド濃度につい
て、WHOでは0.08 ppm以下というガイドライン値を定
めており、我が国でも建材、家具、塗料、接着剤等から
発生するホルムアルデヒドの低減対策がとられるように
なってきた。しかし、ホルムアルデヒドの発生源は多岐
にわたるので、各種の材料から効率よくホルムアルデヒ
ドを除去できるホルムアルデヒド捕捉剤が求められてい
る。
【0003】例えば、木材の乾留または製炭(炭焼き)
の副産物として得られる木酢液は、酢酸を主成分とする
各種有機酸に加え、多様なアルコール類、フェノール
類、エステル類、アルデヒド類などを含む多くの有機成
分を含有する、酸性の水性液体であり、少量とはいえホ
ルムアルデヒドも含有している。
【0004】木酢液は土壌改良、病虫害駆除、成長促進
等の目的で、農業、特に有機農業や、園芸等に使用され
るほか、堆肥や液肥の発酵促進用添加剤、ゴミやペット
用の消臭剤、燻製等の食品添加用、医薬原料、農薬原
料、媒染剤原料等の多岐にわたる用途に使用されてい
る。最近では、アトピーや冷え性の改善などのための入
浴剤や、さらには健康飲料としての利用も始まってい
る。これらの多くの用途、特に、消臭剤、食品添加用、
入浴剤、健康飲料等の用途では、ホルムアルデヒドを全
く含まない木酢液が望まれる。また、他の用途でも、ホ
ルムアルデヒドを環境面に悪影響を与えない濃度まで低
減させた木酢液が望ましい。
【0005】木酢液の精製法としては、静置法、活性炭
による吸着法、蒸留法などがあり、これら3種類の方法
をこの順で適用して木酢液を精製することが従来より行
われている。即ち、木材乾留または炭がまから採取され
た木酢液を静置すると、上層に油、下層にタールが分離
するので、中層の赤黒い、不透明の水性液を採取する。
これが一般には粗木酢液と呼ばれている。この粗木酢液
を活性炭処理し、得られた赤褐色透明な木酢液を蒸留す
ると、無色の精製木酢液が得られる。しかし、こうして
精製された木酢液には、まだかなりの量のホルムアルデ
ヒドが含まれており、この精製方法で木酢液からホルム
アルデヒドを完全に除去することはできなかった。ホル
ムアルデヒドは水中では水和物を形成するので、水性液
体からホルムアルデヒドを単蒸留で完全に除去すること
は不可能である。
【0006】活性炭以外のホルムアルデヒド吸着剤とし
て、廃木材を炭化した木質系炭化物(即ち、木炭) を使
用することが報告されている。また、カテキンを主成分
とする緑茶の抽出物がホルムアルデヒド捕捉剤となるこ
とも報告されている。
【0007】木酢液、建材等のように大量に製造される
材料からホルムアルデヒドを除去するには、その除去に
用いる物質が安価であることが必要である。例えば、緑
茶の抽出物は非常に高価であり、大量生産製品のホルム
アルデヒド除去に適用することは経済面から困難であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、木酢液をは
じめとする各種のホルムアルデヒド含有材料からホルム
アルデヒドを効果的、かつ好ましくは実質的に完全に除
去することができる、安価なホルムアルデヒド捕捉剤と
それを利用したホルムアルデヒドの除去方法を提供する
ことを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、木酢液か
らホルムアルデヒドを効率よく除去できる天然物系の安
価な材料について調査を進めた。例えば、上述した報告
に従って木炭をホルムアルデヒド吸着剤として使用し、
木酢液に木炭を加えて攪拌した後、蒸留してみたが、木
酢液に活性炭を加えて攪拌した後で蒸留するという、従
来の木酢液の精製法よりホルムアルデヒドの除去率が低
かった。従って、木炭(木質系炭化物)は、少なくとも
木酢液のような水性液体からのホルムアルデヒドの除去
には向いていないことがわかった。
【0010】これに対し、生の木質系材料である樹皮
(バーク)が、木酢液中のホルムアルデヒドを効果的に
捕捉するという予想外の事実を見出した。また、樹皮の
抽出物(エキス) についても同様の効果が認められた。
さらに、樹皮やその抽出物が、木酢液以外の各種材料か
らもホルムアルデヒドを捕捉して除去できることも確認
した。
【0011】ここに、本発明は、広義には、樹皮または
その抽出物を有効成分とするホルムアルデヒド捕捉剤で
ある。本発明によれば、ホルムアルデヒドを含有する液
体、好ましくは水性液体(例、木酢液)を、好ましくは
加熱しながら、樹皮と接触させた後、樹皮を液体から分
離することからなる、液体中のホルムアルデヒドの除去
方法が提供される。つまり、好ましくは、上記液体を樹
皮の存在下で加熱処理すればよい。
【0012】別の方法は、上記のようなホルムアルデヒ
ドを含有する液体を、好ましくは加熱しながら樹皮また
はその抽出物と接触させた後、蒸留して、ホルムアルデ
ヒドを含まないか、その含有量が低減した液体を回収す
ることからなる、液体中のホルムアルデヒドの除去方法
である。
【0013】
【発明の実施の形態】樹皮は、樹木の最外層であり、木
材として通常は利用されない部位である。丸太の製材で
は、最初の皮むき工程で樹皮が除去されるので、この工
程で大量の樹皮が発生する。しかし、これまでは、樹皮
について付加価値の高い利用法がなく、せいぜいバーク
堆肥の製造、水分蒸発を防止するための土壌カバー材等
に利用される程度で、樹皮の多くは廃棄物として処分さ
れていた。従って、樹皮がただ同然の非常に安価な材料
であることはいうまでもない。樹皮を化学的に有効な用
途に使用することはこれまでほとんど試みられたことが
ない。
【0014】本発明では、樹皮をホルムアルデヒド捕捉
剤として利用する。樹皮がホルムアルデヒドを捕捉する
メカニズムについては不明であるが、樹皮の主成分はリ
グニンおよびセルロース類であり、これらの成分や他の
樹皮の成分がホルムアルデヒドと反応して、ホルムアル
デヒドを高分子化し、化学的に固定するのではないかと
考えられる。また、樹皮は木材に固有の微細な毛細管構
造を有しており、これがホルムアルデヒドを物理的に吸
着することも考えられる。
【0015】本発明者らが各種の樹木の樹皮について、
ホルムアルデヒドの除去能力を調べた結果、広葉樹と針
葉樹を問わず、いずれの樹皮でも効果はあったが、その
種類によりホルムアルデヒドの除去能力にかなりの違い
が見られた。一般的な傾向として、ナラ等の広葉樹よ
り、マツ、スギといった針葉樹の方が、ホルムアルデヒ
ドの除去効果が大きかった。針葉樹の中でも、カラマツ
は最も高いホルムアルデヒドの除去効果を示し、後で実
施例に示すように、例えば、木酢液中のホルムアルデヒ
ドを完全に除去することができる。その際に、ホルムア
ルデヒド以外の成分には大きな変化を生じない。
【0016】樹皮の形態は特に制限されない。丸太の皮
むき工程で発生した樹皮をそのまま利用することができ
る。そのままでは大きすぎる場合には、適当な大きさに
細断して利用してもよい。また、用途によっては粉末状
とすることが好ましい場合がある。その場合には、適当
な粉砕機で粉砕して粉末化することができる。必要であ
れば、保存性を高めるために、樹皮を加熱等により滅菌
処理してもよい。
【0017】樹皮をそのまま用いる代わりに、樹皮の抽
出物(エキス)も使用できる。この場合は、樹皮による
ホルムアルデヒドの物理的な吸着は起こり得ないが、化
学的なホルムアルデヒドの除去効果を得ることができ
る。樹皮の抽出に用いる溶媒は特に制限されないが、メ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル等のアルコールを使用することが好ましい。抽出液を
濃縮して濃縮液とするか、あるいは濃縮乾固もしくは噴
霧乾燥等により固形化して、液状または固体状の樹皮の
抽出物を得ることができる。
【0018】樹皮の抽出物を利用する場合、抽出物をそ
のまま用いるのではなく、適当な担体、特に吸着性の担
体、に抽出物を固定して使用してもよい。この種の担体
の使用は、当業者には周知である。適当な担体の例とし
てゼオライトを挙げることができる。担体への固定は、
例えば、樹皮の抽出物の希釈溶液を用いて、担体への噴
霧と乾燥あるいは浸漬と乾燥等の常法に従って実施すれ
ばよい。
【0019】本発明に係るホルムアルデヒド捕捉剤 (即
ち、樹皮またはその抽出物) の使用方法は特に制限され
ない。また、ホルムアルデヒドの除去対象物も、気体
(例、空気) 、液体、固体のいずれであってもよい。
【0020】例えば、建材、家具等のホルムアルデヒド
を含有する固体の表面または内部に本発明のホルムアル
デヒド捕捉剤を存在させると、その固体から発生するホ
ルムアルデヒドを捕捉することができ、その固体から周
囲に放出されるホルムアルデヒドの量を低減することが
できる。
【0021】別の使用例として、室内のホルムアルデヒ
ド濃度を低減させるため、室内の空気を循環させる循環
装置 (換気扇、空気清浄機、空調機械等) のフィルター
に本発明のアルデヒド捕捉剤を含有させておき、循環す
る空気からホルムアルデヒドを除去することができる。
【0022】液体中のホルムアルデヒドを除去する場合
には、液体に本発明のホルムアルデヒド捕捉剤を添加
し、これを液体と接触させればよい。室温でもホルムア
ルデヒドの捕捉効果はあるが、加熱すると捕捉効果が高
まるので、加熱することが好ましい。加熱温度は50℃以
上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、さらに
より好ましくは90℃以上である。水性液体の場合には、
100 ℃前後、つまり沸騰状態に加熱することが好まし
い。接触時間 (あるいは加熱時間) は特に制限されない
が、通常は10分以上、好ましくは30分以上である。接触
時間の上限は特に制限されず、温度が低い場合には、接
触時間を長くすることが好ましい。加熱温度が100 ℃前
後の場合には、効果の飽和と効率を考えると、通常は2
時間以内で十分である。この接触中に液体を攪拌しても
よい。なお、後述するように、液体の回収のために蒸留
を行う場合、樹皮または抽出物を分離せずに蒸留を行え
ば、蒸留中にもさらに捕捉が起こるため、接触時間を、
例えば5分以下、さらには1分以下と、極めて短くする
ことも可能である。
【0023】ホルムアルデヒド捕捉剤として樹皮を使用
した場合には、好ましくは液体を加熱しながら樹皮と接
触させた後、樹皮を液体から分離 (例、濾過) すれば、
ホルムアルデヒド含有量が低減した液体が回収される。
しかし、液体の種類によっては、この接触中に、樹皮の
成分の一部が液体中に溶出することが考えられる。その
場合、溶出した成分にホルムアルデヒドが固定されるこ
とも起こり得る。従って、樹皮の分離により回収した液
体は、溶出した樹皮成分に固定されたホルムアルデヒド
を含有する可能性がある。
【0024】このような液体中に存在する、溶出成分に
固定されたホルムアルデヒドを除去するには、樹皮と接
触させた後の液体を蒸留すればよい。樹皮またはその抽
出物に捕捉されたホルムアルデヒドは高分子化してお
り、蒸留中に留出してこないので、溶出成分に捕捉され
たホルムアルデヒドを含まない留出物を回収することが
できる。こうして、ホルムアルデヒド含有量が低減し、
条件によってはホルムアルデヒドが完全に除去された液
体を回収することができる。
【0025】蒸留する場合には、樹皮を液体から分離せ
ずに、液体中に存在させたまま蒸留してもよい。それに
より、蒸留中も樹皮による液体中のホルムアルデヒドの
捕捉がさらに起こる。特に、蒸留前の接触時に加熱を行
わないか、加熱温度が低い場合には、蒸留中の加熱によ
ってホルムアルデヒドの捕捉が著しく進行し、蒸留が進
むにつれて、ホルムアルデヒド含有量が低減した留出液
が得られる傾向があるので、樹皮を分離せずに蒸留を行
うことが有利である。
【0026】ホルムアルデヒド捕捉剤として樹皮の抽出
物を使用した場合には、液体中に抽出物が少なくとも部
分的に溶解することが多いので、ホルムアルデヒドが除
去された液体を回収するには一般に蒸留が必要となる。
この場合も、蒸留中も樹皮の抽出物によるホルムアルデ
ヒドの捕捉が進行する可能性がある。
【0027】ホルムアルデヒドが除去された液体を回収
するための蒸留条件は、液体の種類により異なり、当業
者が容易に実験で定めることができる。前述したよう
に、液体が水性液体であると、ホルムアルデヒドは水和
物として留出するので、ホルムアルデヒドを含有する液
体を単蒸留しても、ホルムアルデヒドを完全に除去する
ことはできない。本発明によれば、予め、樹皮またはそ
の抽出物を液体と接触させることにより、これに液体中
のホルムアルデヒドの少なくとも一部が捕捉されるた
め、この接触処理を行わない場合に比べて、ホルムアル
デヒドの含有量が著しく低減し、場合によってはホルム
アルデヒドを全く含有しない液体を回収することができ
る。従って、本発明に従ってホルムアルデヒドを除去す
る液体としては、水性液体が好ましい。本発明における
水性液体とは、水が主成分である液体のみならず、ホル
ムアルデヒドとの水和物の形成が可能な量より多量の水
分、例えば、5質量%以上の水分を含有する全ての液体
を包含する。
【0028】本発明に従ってホルムアルデヒドを除去す
ることができる水性液体の1例は、木酢液である。ホル
ムアルデヒド除去処理に用いる木酢液は、木材の乾留で
得られた直後のもの、これを静置して上層の油分と下層
のタール分を除去した粗木酢液、またはこれをさらに活
性炭処理した木酢液のいずれでもよい。
【0029】乾留直後または粗木酢液中のホルムアルデ
ヒドの含有量は、乾留条件や樹種によっても異なるが、
通常は5〜50 mg/100ml 程度と考えられる。粗木酢液を
そのまま蒸留しても、ホルムアルデヒドは水和物として
水と一緒に留出するため、留出物中のホルムアルデヒド
の含有量はそれほど変化せず、逆に含有量がやや高くな
ることもある。上記のホルムアルデヒドの含有量は、木
酢液の多くの用途において一応は許容できる範囲である
が、特に消臭剤、食品添加用、入浴剤、健康飲料等の用
途では、ホルムアルデヒドをさらに低下させるか、ある
いは全く含まない木酢液が望まれる。
【0030】本発明によれば、木酢液に、好ましくは加
熱しながら樹皮またはその抽出物を接触させた後、好ま
しくはその接触状態を保持しながら、蒸留することによ
って、ホルムアルデヒド含有量が5mg/100 ml 以下、好
ましくは2mg/100 ml 以下、最も好ましくは実質的に0
になるように、木酢液からホルムアルデヒドを除去する
ことができる。蒸留では、必要により、ホルムアルデヒ
ド含有量が所定値以下の留分だけを回収してもよい。そ
の場合、残液は、再びホルムアルデヒドの除去処理に再
循環することもできる。
【0031】木酢液に樹皮を接触させる場合、接触させ
る樹皮の量は、木酢液1リットル当たり30〜300 g、好
ましくは50〜200 g、最も好ましくは80〜150 gの範囲
がよい。抽出物を使用する場合には、抽出物の濃度によ
っても異なるので、実験により適当に決定すればよい
が、通常は木酢液1リットル当たり5g〜50gの量で十
分である。前述したように、接触中は木酢液を加熱する
ことが好ましい。
【0032】
【実施例】以下の実施例では、はんの木の乾留により得
た木酢液を使用して、本発明によるホルムアルデヒドの
除去効果を例証する。試験に使用した木酢液は、乾留直
後のものから、数カ月まで静置したものまでに及んだ。
使用した木酢液のホルムアルデヒド含有量が異なるの
は、静置時間の影響もあり、木酢液の静置時間が長いほ
どホルムアルデヒド含有量は低くなる傾向がある。
【0033】試料中のホルムアルデヒドの定量は、HPLC
(高速液体クロマトグラフィー) 法によるピーク面積の
測定により、既知濃度のホルムアルデヒド水溶液から作
製した検量線に基づいて行った。具体的には、木酢液の
試料0.1 mlをアセトニトリル100 mlに溶かして得た溶液
1mlに、DPNH (2,4-ジニトロフェニルヒドラジン) のア
セトニトリル溶液 (飽和溶液の5倍希釈) 10 ml と3.8N
過塩素酸水溶液50μlを加えてホルムアルデヒドをヒド
ラゾン化し、必要に応じて固形物を濾去してから10μl
ずつHPLC分析に供した。溶離には、アセトニトリル50%
水溶液 (A液)とアセトニトリル100 % (B液) とを使
用し、サンプルの注入前に、A液100 %でカラムを安定
化させ、サンプル10μl を注入してから、35分でA液が
60%、B液が40% (即ち、30分でアセトニトリル濃度は
50%→70%) になるように直線的にグランジエント溶離
した。カラム温度は50℃、流量は1.0 ml/min、測定波長
は365 nmであった。
【0034】
【実施例1】カラマツ樹皮を粉砕機で粉砕して得た、粉
末状の樹皮をホルムアルデヒド捕捉剤として使用した。
【0035】還流冷却器を取り付けた3リットルのナス
フラスコに、木酢液 (ホルムアルデヒド含有量=13.31
mg/100 ml)1リットルを入れ、50g、100 g、150 gま
たは200 gのカラマツ樹皮の粉末を加えて、100 ℃に1
時間加熱し、木酢液を樹皮と接触させた。その後、還流
冷却器を取り外して蒸留を行い、100 mlずつ留分を集め
て、各留分のホルムアルデヒド含有量を定量した。
【0036】その結果、初留(1本目の留分)から4本
目までの留分の平均で、樹皮粉末の添加量が50gの場合
はホルムアルデヒドの80%が除去されており、添加量が
100gまたはそれ以上では、完全にホルムアルデヒドが
除去されていた。
【0037】
【実施例2】カラマツ樹皮の粉末の添加量を100 gに固
定し、木酢液と樹皮の接触中の温度を室温 (約20℃) 、
50℃、80℃、100 ℃に変化させた以外は、実施例1と同
様にして、木酢液からのホルムアルデヒドの除去を行っ
た。接触時間はいずれも1時間であった。接触後に木酢
液を蒸留し、100 mlずつ留分を集めて、1〜4本目の留
分のホルムアルデヒド含有量を定量した結果を、表1お
よび図1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1および図1からわかるように、蒸留前
の1時間の接触中に100 ℃に加熱した場合には、1本目
(初留)から4本目の全ての留分において、ホルムアル
デヒドは検出されず、完全にホルムアルデヒドが除去さ
れた木酢液が得られた。
【0040】一方、接触時の加熱温度が100 ℃より低く
なるほど、各留分中のホルムアルデヒド含有量が高くな
る傾向があった。これらの場合、初留に比べて、蒸留が
進むにつれて、留分のホルムアルデヒド含有量が低減し
た。これは、樹皮の存在下で蒸留を行ったため、蒸留中
の加熱により木酢液中のホルムアルデヒドの捕捉が蒸留
中にも進行したためと考えられる。そのため、接触時の
温度が室温または50℃と低い場合でも、4本目の留分で
は、ホルムアルデヒド含有量が著しく低減した木酢液を
得ることができた。
【0041】
【実施例3】本実施例は、樹皮の樹木種を変更した場合
の結果を示す。ホルムアルデヒド含有量 7.399 mg/100
mlの木酢液500 mlに、各種樹種 (広葉樹のナラ、シウリ
ザクラ、アサダ、および針葉樹のスギ、エゾマツ、カラ
マツ、トドマツ) の樹皮を実施例1と同様に粉砕した粉
末50gを加え、100 ℃に1時間還流加熱した。その後、
樹皮粉末を存在させたまま蒸留を行って、約40 ml ずつ
留分を集めて、各留分のホルムアルデヒド含有量を測定
した。結果を表2および図2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】表2および図2からわかるように、いずれ
の樹種でもホルムアルデヒドの低減効果は認められた
が、樹種によりその効果に優劣はあった。一般的な傾向
としては広葉樹より針葉樹の方がホルムアルデヒドの低
減効果が高く、中でもカラマツが最も高い効果を示し、
ホルムアルデヒドを完全に除去することができた。
【0044】
【実施例4】本実施例は、樹皮の抽出物を使用する場合
を例示する。カラマツの樹皮100 gを実施例1と同様に
粉砕してから、エタノール3リットル中で3時間還流加
熱して、抽出を行った。濾過により樹皮を除去して得ら
れた抽出液を蒸発乾固し、乾燥固形状態の抽出物を得
た。
【0045】ホルムアルデヒド含有量 5.414 mg/100 ml
の木酢液200 mlに対して、上記抽出物1〜5gを加え、
100 ℃に1時間還流加熱してから、蒸留を行い、留出し
た木酢液全体のホルムアルデヒド含有量を定量した。測
定結果を表3および図3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】樹皮の抽出物を使用しても、ホルムアルデ
ヒド含有量の低減効果が認められた。但し、樹皮の抽出
物を利用した場合には、木酢液中のホルムアルデヒドを
完全に除去することはできなかった。樹皮の場合には、
樹皮中の毛細管構造による物理的な除去効果も加わるた
めであることも考えられるが、その理由は不明である。
ホルムアルデヒドの低減効果は、抽出物の添加量が4〜
5gの時が最も高かった。但し、添加量が5gになる
と、蒸留中に突沸が起きた。
【0048】
【実施例5】木酢液 (ホルムアルデヒド含有量 5.622 m
g/100 ml) 1リットルに、(1) カラマツ樹皮の粉末100
g、(2) カラマツの木質部分の粉末 (粉砕おがくず) 10
0 g、(3) 活性炭10g、のいずれかを加え、100 ℃に1
時間還流加熱した。その後、還流冷却器を取り外して蒸
留を行い、60 ml ずつ留分を集めて、各留分のホルムア
ルデヒド含有量を定量した。
【0049】別に蒸留操作のみの比較例として、上記木
酢液をそのまま蒸留し、60 ml ずつの留分を集めて、各
留分のホルムアルデヒド含有量を定量した。1本目 (初
留) から5本目までの留分のホルムアルデヒド含有量の
結果を表4および図4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】本発明に従って、木酢液を樹皮の存在下で
加熱してから蒸留した場合は、著しいホルムアルデヒド
低減効果が表れ、3本目の留分からはホルムアルデヒド
を含有しない木酢液を回収することができた。
【0052】これに対し、蒸留だけではホルムアルデヒ
ド含有量を低減させることはできなかった。さらに、蒸
留前に、活性炭またはカラマツの木質部分の存在下で加
熱処理した場合にも、ホルムアルデヒド含有量が低減し
た留分を得ることはできなかった。つまり、同じカラマ
ツでも、木質部分ではなく、樹皮を使うことではじめ
て、ホルムアルデヒドの捕捉が可能となる。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、多くが廃棄物として処
分されていた素材である樹皮を、ホルムアルデヒド捕捉
剤として有効利用することができる。それにより、非常
に安価で、特に木酢液のような水性液体からのホルムア
ルデヒドの除去に関しては、従来より使用されてきた活
性炭や木炭より高いホルムアルデヒドの除去効果を示
し、条件によってはホルムアルデヒドの完全な除去も可
能な、ホルムアルデヒド捕捉剤が提供される。もちろ
ん、廃棄物として処分する樹皮量を低減できるという副
次的効果もある。
【0054】本発明により、従来の精製法は困難であっ
た、木酢液からのホルムアルデヒドの完全な除去が可能
となる。また、ホルムアルデヒドを完全に除去しなくて
もよい用途に対しては、ホルムアルデヒド含有量を低減
した木酢液を提供することができる。それにより、刺激
が解消または低減した、安全性の高い木酢液を製造する
ことが可能となり、木酢液の用途の拡大と高品質化を図
ることができる。それにより、例えば、入浴剤、健康飲
料、消臭剤を始めとする各種用途における木酢液の普及
を安心して推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を示すグラフである。
【図2】実施例の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【図4】実施例の結果を示すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年9月17日(2002.9.1
7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B27K 5/00 B27K 5/00 E 4D017 // A23L 1/015 A23L 1/015 4D076 2/38 2/38 C 4G066 Z A61K 7/50 A61K 7/50 (72)発明者 佐藤 圭介 北海道北見市とん田東町635番地 佐藤林 業株式会社内 Fターム(参考) 2B230 CB00 EA08 4B017 LG20 LL09 LP07 4B035 LC05 LC09 LE01 LE03 LE05 LG37 LK19 LP59 4C080 AA05 AA06 BB05 CC02 CC12 HH03 HH05 HH09 JJ03 JJ04 KK08 LL10 MM24 MM32 NN04 QQ03 4C083 AA111 AA112 CC25 DD23 EE42 4D017 AA03 BA04 CA12 CA14 CB01 4D076 AA16 AA22 GA06 HA11 JA01 4G066 AC02B AC07B BA09 CA52 DA10

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹皮またはその抽出物を有効成分とする
    ホルムアルデヒド捕捉剤。
  2. 【請求項2】 樹皮が針葉樹の樹皮である、請求項1記
    載のホルムアルデヒド捕捉剤。
  3. 【請求項3】 樹皮がカラマツ樹皮である、請求項2記
    載のホルムアルデヒド捕捉剤。
  4. 【請求項4】 抽出物が樹皮のアルコール抽出物であ
    る、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホルムアルデ
    ヒド捕捉剤。
  5. 【請求項5】 樹皮の抽出物が担体に固定されている、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のホルムアルデヒド
    捕捉剤。
  6. 【請求項6】 ホルムアルデヒドを含有する液体を請求
    項1〜5のいずれか1項に記載の樹皮からなるホルムア
    ルデヒド捕捉剤と接触させた後、樹皮を液体から分離す
    ることからなる、液体中のホルムアルデヒドの除去方
    法。
  7. 【請求項7】 ホルムアルデヒドを含有する液体を請求
    項1〜5のいずれか1項に記載のホルムアルデヒド捕捉
    剤と接触させた後、蒸留して、ホルムアルデヒドを含ま
    ないか、その含有量が低減した液体を回収することを特
    徴とする、液体中のホルムアルデヒドの除去方法。
  8. 【請求項8】 ホルムアルデヒド捕捉剤と接触中に液体
    を加熱する請求項6または7記載の方法。
  9. 【請求項9】 液体が水性液体である請求項6〜8のい
    ずれか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 液体が木酢液である請求項9記載の方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106541474A (zh) * 2016-11-24 2017-03-29 黄鹉伈 兼具保温和净化空气作用的木材及其制备方法与应用
CN108719215A (zh) * 2018-03-28 2018-11-02 宜州市壮之都丝绸家纺有限公司 一种蚕的高产养殖方法

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